説明

薄畳の製造方法及び薄畳

【課題】 薄畳の製造が容易であるとともに、タッカー針を使用しないため、安全性が高く、しかも、切断した畳表の端部の解れを防止できる薄畳の製造方法、及び、タッカー針を使用しないため、安全性が高いとともに、端部における切断部位のい草が解れることがない薄畳を提供する。
【解決手段】薄畳を構成する建材畳床20の角部Cの下面に相対し、相交差する畳表22の短辺側端部25,長辺側端部26のカット予定部分の周辺部位のい草同士を瞬間接着剤にて結合して一体化する。その後、建材畳床20の端面に対して斜状となるようにそれぞれカットする。その後、各端部の切断部位K1,K2を非瞬間接着剤にて建材畳床20に接着固定する。その後、畳表22の短辺側端部25,長辺側端部26を建材畳床20に縫着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の板敷き床や、座敷等に設置して使用する薄畳の製造方法及び薄畳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、畳の風合いは人気が高く、家庭の板敷き床等又は展示場や旅館の大広間等に置き畳を設置したり、建物の一室の床面に敷き込み畳を敷き詰めて和室を形成したりすることが行われている。このような置き畳又は敷き込み畳の畳床として適用されるのは、通常、日本工業規格(JISA 5914)により寸法形状が定められた建材畳床である。
【0003】
又、芯材としての天然藁を束ねた従来式の建材畳床を、気密性が高い鉄筋コンクリート造の建物に長期間設置すると、芯材に湿気が滞留してダニ等の害虫が繁殖する原因となるため、吸湿が起こらない合成樹脂板からなる芯材を有するものも、近年は広く普及している。
【0004】
前記建材畳床の厚み寸法は5〜6cm程度を有しているため、例えば、板敷き床を施した居間等に隣接する和室に敷き込んだ場合には、板敷き床の表面と畳表との間に5〜6cmの段差が生じることになる。このため、板敷き床と和室の境界に沿って設ける敷居又は上がり框の厚み寸法を5〜6cmに設定する必要があり、これらの敷居又は上がり框が脚の不自由な高齢者や身体障害者等にとって歩行の障害になる。
【0005】
そこで、芯材を薄くして建材畳床の全体の厚み寸法を抑えることができる薄畳が提案されている。なお、薄畳は、建材畳床の厚み寸法は30mm以下のものをいう。このような薄畳は、厚みが薄いため、バリアフリーの要望に応えることができ、床暖房の際にも、厚みが薄いため、床からの熱を効率的に畳表まで伝達することができる。
【0006】
ところで、薄畳では、図8に示すように建材畳床20の相直交する2方向のうちの1方向の両端部において、畳表22の端部を建材畳床20の上面側から下面側に巻付け、他の1方向の両端部においても、畳表22の端部を建材畳床20の上面側から下面側に巻付け、該建材畳床20に対して畳表22の端部を畳糸30で縫着するタイプのものがある。
【0007】
このタイプの薄畳では、図5(a)、及び図5(b)に示すように、畳表22の巻き付け時においては、建材畳床20における相直交する2方向のうちの1方向の端部A側の畳表22の端部(25を付した部位)と、他の1方向の端部側Bの畳表22の端部(26を付した部位)とは、建材畳床20の角部C近傍において、交差して重ね合わさる。図5(a)、及び図5(b)は、端部A側の畳表22の端部と、端部側Bの畳表22の端部とが交差して重ね合わさった状態を示している。
【0008】
畳表22の端部同士が交差している部分は、建材畳床20の厚み方向において、交差していない他の部分よりも厚くなるため、図7に示すように、畳表22の端部の互いに交差する部位において、建材畳床20の角部Cを通過する仮想線D上で切断して、畳表22の端部同士が交差しないようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、従来は、上記のように切断した部位においては、畳表を構成すべく麻糸や、綿糸とともに織り込まれた天然い草が解れてしまう問題があった。これは、天然い草を拘束していた前記麻糸や綿糸が、切断した部位では、拘束力が無くなってしまうからである。この解れを防止するために、切断した部位の天然い草が、解れないようにタッカーを使用して、タッカー針を打ち込むことが考えられる。しかし、タッカーを使用すると、薄畳の製造に手間がかかる問題がある。又、タッカー針は外れやすい問題があるとともに、タッカー針は、薄畳の下面から上向きに打ち込まれるため、薄畳を使用時に、畳表の上面からタッカー針の先端が飛び出る可能性もある。
【0010】
本発明の目的は、薄畳の製造が容易であるとともに、タッカー針を使用しないため、安全性が高く、しかも、切断した畳表の端部のい草の解れを防止できる薄畳の製造方法、及び、タッカ針を使用しないため、安全性が高いとともに、端部における切断部位が解れることがない薄畳を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、畳床の各端部に畳表を巻付けて、前記畳床の各端部下面に対して該畳表の各端部を取着するステップと、前記畳床の角部下面に取着された前記畳表の各端部において、互いに交差する部位に設けられるカット予定部分の周辺部位のい草同士を結合して一体化する解れ防止ステップと、前記畳表の各端部の前記カット予定部分をカットするステップと、前記各端部のカットした切断部位を接着剤にて、前記畳床に接着固定した後、前記畳表の端部を前記畳床に縫着するステップを備えたことを特徴とする薄畳の製造方法を要旨とするものである。なお、本明細書では、単にい草というときは、天然い草と、人工い草を含む趣旨である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記畳表の各切断部位は、前記畳床の端面に対して斜状となるようにそれぞれカットすることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記解れ防止ステップにおいて、瞬間接着剤にて、カット予定部分の周辺部位のい草同士を結合して一体化することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2において、前記畳表は熱溶着性の合成樹脂からなる人工い草にて形成され、前記解れ防止ステップにおいて、カット予定部分の周辺部位の人工い草を加熱溶融した後、固化することにより一体化することを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、畳床の端部に対して畳表が巻付けられ、前記畳床の端部下面に対して該畳表の端部が取着され、前記畳床の角部下面に対応する前記畳表の各端部が、互いに交差しないようにそれぞれカットされ、前記各端部のカットされた切断部位がい草同士を互いに結合する一体化手段にて一体化され、前記畳表の端部を前記畳床に縫着されていることを特徴とする薄畳を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、薄畳の製造が容易であるとともに、タッカー針を使用しないため、安全性が高く、しかも、畳表の端部における斜状に切断した切断部位の解れを防止できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、畳床の角部の下面に対応する畳表の端部同士が互いに交差しないように、簡単に切断することができる。
請求項3の発明によれば、解れ防止ステップにおいて、瞬間接着剤にて、カット予定部分の周辺部位のい草同士を結合して一体化することにより、切断部位の解れを容易に防止できる。
【0017】
請求項4の発明によれば、解れ防止ステップにおいて、カット予定部分の周辺部位の人工い草を加熱溶融した後、固化することにより一体化することにより、切断部位の解れを容易に防止できる。
【0018】
請求項5の薄畳は、タッカー針を使用しないため、安全性が高いとともに、端部における切断部位が解れることがない効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した薄畳10の製造方法、及び薄畳10の一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
まず、本実施形態の薄畳10の概略について説明すると、図10に示すように、薄畳10は、建材畳床20、及び、建材畳床20に対して巻き付けられて取着された畳表22を備えている。なお,図10は、薄畳10を下面から見た斜視図である。
【0020】
この薄畳10の製造方法を以下に説明する。
図1に示すように建材畳床20は、上から順に保護紙11,上側のプラスチック段ボール板12,インシュレーションボード13,下側のプラスチック段ボール板14及び裏シート15が積層されている。薄畳10の厚みは、本実施形態では、15mmとされており、建材畳床20の厚みは、薄畳10の厚みから畳表22の厚みを差し引いた値とされている。なお、薄畳10の厚みは、25mm,20mmや、或いはそれ以下の厚みであってもよい。
【0021】
前記建材畳床20を構成する各部材を上記のように積層した状態で、その長手方向に沿って畳用ミシン等を用いて畳糸24により、縫製結合する(図1参照)。前記保護紙11は、建材畳床20の端部における前記畳表22とプラスチック段ボール板12との間の摩擦を低減化し、畳表22の擦り切れを防止するものである。前記保護紙11としては、炭酸カルシウム含有紙又は押出し発泡ポリスチレンペーパ等を挙げることができるが、常温での乾燥及び湿気状態で形状変形が生じないものであればよい。
【0022】
前記プラスチック段ボール板12,14は、波形状に形成した合成樹脂製中芯の片面又は両面に合成樹脂製ライナを貼付けてなる独立密閉空気室を有する圧縮強度の比較的高い板材から構成されている。しかし、この構成に限定するものではなく、市販のものであればどのようなものでも良い。
【0023】
前記インシュレーションボード13は、撓剛性が建材畳床(JIS A5914)と同等以上の強度を有する板材であれば良いが、常温での乾燥及び湿気状態で形状変形が生じないものであればよい。前記裏シート15は、ポリプロピレン製のシート材等の合成樹脂製シートが挙げられる。この裏シート15の材質は、常温での乾燥及び湿気状態で形状変形が生じないものが好ましい。この裏シート15により、薄畳10の反り防止が図られる。
【0024】
本実施形態では、建材畳床20から前記保護紙11及び裏シート15を省いたもの(上側のプラスチック段ボール板12,インシュレーションボード13,下側のプラスチック段ボール板14)が、薄畳用芯材として構成されている。
【0025】
次に、建材畳床20の大きさを、家の間取りに合わせて1畳分の四角形状となるように切断する。続いて、図2に示すように、畳表22の上に建材畳床20を載置する。なお、畳表22は、建材畳床20に対して巻き付けができるように大きさに形成されている。そして、図2に示すように、建材畳床20の下面の各辺に沿って、仮止めテープとして両面テープ16を貼着する。なお、図2は、建材畳床20を下面側から見た状態の斜視図である。
【0026】
そして、図3(a)に示すように、畳表22の長手方向の両端部である一対の短辺側端部25を、建材畳床20にそれぞれ巻き付け(図3(b),図3(c)参照)、両面テープ16を介して、建材畳床20の下面に貼着する(図4(a)、及び図4(b)参照)。
【0027】
そして、建材畳床20に巻き付けした畳表22の短辺側端部25と、建材畳床20の下面に対して接着テープ27を貼着する(図4(b)参照)。なお、接着テープ27は、必要に応じて短辺側端部25を建材畳床20に対して貼着するものであり、両面テープ16によって短辺側端部25の建材畳床20に対する仮止めが十分にできている場合には、接着テープ27の貼着工程は省略してもよい。
【0028】
次に、図3(a)に示すように建材畳床20の端面20aに相対して配置された畳表22の短辺側端部25において、長辺側の端面20bに近接する部位α(ハッチングで示す部位)に対し、一体化手段としての瞬間接着剤を塗布する。又、建材畳床20の下面に配置された畳表22の短辺側端部25において、建材畳床20の角部Cを通過する仮想線Dに近接する部位β(ハッチングで示す部位)に対して、一体化手段としての瞬間接着剤を塗布して、同部位を該接着剤にて一体化する。このように、瞬間接着剤を塗って固化するステップは、解れ防止ステップに相当する。
【0029】
畳表22の短辺側端部25、及び長辺側端部26において、仮想線D上の部分は、カット予定部分に相当する。該瞬間接着剤により、部位α,βの天然い草同士は短時間で一体化され、後に、前記仮想線D等に沿って短辺側端部25が切断された際、部位α,βの天然い草の解れを防止できる。なお、瞬間接着剤としては、シアノアクリレート系接着剤を使用することができ、特に増粘剤を添加した瞬間接着剤が好ましく、このタイプのものを使用することにより、植物繊維、多孔質材質に対しても強力に素早く接着する。
【0030】
次に、図4(a)に示すように、短辺側端部25の端縁から、建材畳床20の長辺側の端面20bに沿うように,切り込みを入れて、短辺側端部25の一部を切り離す。この切り込みの切り込み量は、端面20aの高さ(建材畳床20の厚み)と建材畳床20の下面に巻き付けた長さの合計分に相当する。
【0031】
次に、前記仮想線Dに沿って、建材畳床20の下面の角部に位置する短辺側端部25の端を切断し、図4(a)に示す三角片25aを切り取る。続いて、畳表22の長辺側端部26の下面(裏面)に対して、水蒸気を吹き付けて適度に湿らせる。続いて、畳表22の長辺側端部26の下面(裏面)において、建材畳床20の長手方向に延びる端面20bに沿う部分(図4(a)のハッチング部分P)を切らない程度に、治具にて筋を付ける。前記水蒸気の吹きつけにより畳表22の短手方向に延びる天然い草が柔らかくなって、長辺側端部26の曲げ加工がしやすくなり、長辺側端部26を建材畳床20に対して巻き付けする際に、畳表22(天然い草)に折れ片が発生しないようにしている。
【0032】
続いて、畳表22の短手方向の両端部である一対の長辺側端部26を、建材畳床20にそれぞれ巻き付け、両面テープ16を介して、建材畳床20の下面に貼着する(図5(a),図5(b)参照)。そして、建材畳床20に巻き付けした畳表22の長辺側端部26と、建材畳床20の下面に対して接着テープ28を貼着する(図6参照)。なお、接着テープ28は、必要に応じて長辺側端部26を建材畳床20に対して貼着するものであり、両面テープ16によって長辺側端部26の建材畳床20に対する仮止めが十分にできている場合には、接着テープ28の貼着工程は省略してもよい。
【0033】
次に、図5(a)に示すように建材畳床20の端面20bに相対して配置された畳表22の長辺側端部26において、短辺側の端面20aに近接する部位ε(ハッチングで示す部位)に対し、部位αと同様に一体化手段としての瞬間接着剤を塗布する。次に、図5(a)に示すように、建材畳床20の下面に配置された畳表22の長辺側端部26において、建材畳床20の角部Cを通過する仮想線Dに近接する部位γ(ハッチングで示す部位)に対して、部位βと同様に一体化手段としての瞬間接着剤を塗布する。該瞬間接着剤により、部位γ,εの天然い草同士は短時間で一体化され、後に、前記仮想線D等に沿って長辺側端部26が切断された際、部位γ,εの天然い草の解れを防止できる。このように、瞬間接着剤を塗って固化するステップは、解れ防止ステップに相当する。
【0034】
ここで、図5(a)に示すように、畳表22の巻き付け時において、建材畳床20における相直交する2方向(長手方向と短手方向)のうちの1方向(長手方向)の端部である短辺側端部25と、他の1方向(短手方向)の端部である長辺側端部26とは、建材畳床20の角部C近傍において、交差して重ね合わさっている。
【0035】
そこで、図6に示すように畳表22の端部の互いに交差する部位に対し、建材畳床20の角部Cを通過する仮想線D上で切断(カット)する。仮想線Dは、建材畳床20の互いに直交する端面20a,20bに対して斜状となるように延びているため、短辺側端部25,及び長辺側端部26は、建材畳床20の互いに直交する端面20a,20bに対して斜状となるようにカットされる。
【0036】
このカット時においては、前記瞬間接着剤を使用して、斜状にカットした切断部位K1,K2を含む周辺の部位の天然い草は互いに一体化して結合されている。この瞬間接着剤の使用により、斜状の切断部位K1,K2を含む周辺の部位β,γのは、短時間に一体化され、切断部位K1,K2において、同部位の天然い草の解れを防止できる。又、部位α,εにおいても、建材畳床20に対して、短時間に接着固定され、同部位の天然い草の解れを防止できる。
【0037】
次に、前記瞬間接着剤を塗布した部位を含む範囲に対して、非瞬間接着剤を塗布する。非瞬間接着剤としては、畳表22を構成する天然い草(植物繊維)と、建材畳床20とを接着するものであれば、限定するものではないが、ホットメルト接着剤が好ましい。ホットメルト接着剤は、EVA系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、熱可塑性ゴム系ホットメルト接着剤等を挙げることができる。ここで、非瞬間接着剤とは、前記瞬間接着剤よりも、接着時間を要するものをいう。ホットメルト接着剤は、接着剤を接着する部位に塗布した後、加熱溶融して畳表22の端部における接着部位に浸透することができ、冷却後は、強力な接着力を有するので好ましい。
【0038】
非瞬間接着剤にて、切断部位K1,K2を接着した後、接着テープ27、28を剥がし、図8に示すように畳糸30で、建材畳床20に巻き付けした畳表22の各端部を建材畳床20に対して、縫着する。
【0039】
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1) 本実施形態の薄畳10は、建材畳床20の角部Cの近辺における、畳表22の切断部位K1,K2等の周辺の部位α,β、γ,εが、非瞬間接着剤にて建材畳床20に対して接着固定されているため、薄畳10の製造時において、部位α,β、γ,εの天然い草が解れることがない。
【0040】
(2) 本実施形態では、建材畳床20の端部に対して、畳表22の短辺側端部25と長辺側端部26とを巻き付け、建材畳床20の角部Cに対応する畳表22の各端部において、畳表22のカット予定部分の周辺の部位α,β、γ,εの天然い草は、予め瞬間接着剤にて一体化するようにした。そして、建材畳床20の角部Cの下面に対応する畳表22の短辺側端部25,長辺側端部26が互いに交差しないように、建材畳床20の端面に対して斜状となるようにそれぞれカットした。このカット時において、切断部位K1,K2近辺の天然い草は、瞬間接着剤により、一体化されているため、解れることがない。
【0041】
そして、該部位β、γは、さらに、非瞬間接着剤にて建材畳床20に接着固定した。その後、畳表22の短辺側端部25,長辺側端部26を建材畳床20に縫着するようにした。この結果、タッカーを使用しないため薄畳10の製造が容易であるとともに、タッカー針を使用しないため、安全性が高く、しかも、畳表22の斜状に切断した切断部位K1,K2の解れを防止できる薄畳10を容易に得ることができる効果がある。
【0042】
(3) 本実施形態では、瞬間接着剤を使用した後に、更に、非瞬間接着剤にて短辺側端部25,長辺側端部26を建材畳床20に接着するため、畳表22の短辺側端部25、長辺側端部26の切断部位K1,K2の解れの発生をより確実に防止できる。
【0043】
(4) 本実施形態の製造方法によって得られた薄畳10は、タッカー針を使用していないため、安全性が高いとともに、切断部位K1,K2が解れることがない効果を奏する。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく下記のように変更してもよい。
○ 前記実施形態では、建材畳床20から前記保護紙11及び裏シート15を省いたもの(上側のプラスチック段ボール板12,インシュレーションボード13,下側のプラスチック段ボール板14)が、薄畳用芯材として構成されている。この薄畳用芯材としては、インシュレーションボード13(JIS A 5905),プラスチック段ボール板12,14及び発泡ウレタンや発泡ポリスチレン等を板状に成型してなる合成樹脂発泡体9のいずれか1つ、或いは、インシュレーションボード13,プラスチック段ボール板12,14及び合成樹脂発泡体9の内の2つ以上を積層したものでもよい。これらの薄畳用芯材及び、保護紙11及び裏シート15で構成された建材畳床は、常温での乾燥及び湿気状態で形状変形が生じないものが好ましい。
【0045】
○ 図9、図10に示すように、前記瞬間接着剤及び非瞬間接着剤にて接着した部位を覆うように接着テープ32を貼着してもよい。このようにすると、接着剤にて接着された部位を接着テープ32にて覆うことができ、畳表22の端部の切断部位における天然い草の解れをより確実に防止できる。
【0046】
○ 前記実施形態では、畳表22は天然い草にて構成したが、天然い草の代わりに、畳表22を熱溶着性の合成樹脂としてポリエステル樹脂からなる細いパイプ状の人工い草にて形成することもできる。合成樹脂は、ポリエステル繊維にて限定するものではなく、熱用着性を備えていれば他の合成樹脂にて人工い草を構成してもよい。この場合、瞬間接着剤を使用する代わりに、建材畳床20の角部Cの近辺における、畳表22のカット予定部分の周辺の部位α,β、γ,εをアイロンや、ハンダこてにて加熱することにより、カット予定部分の周囲部分の人工い草を溶融した後、固化して互いに一体化する。本実施形態では、アイロンや、ハンダこての加熱手段により、加熱溶融された熱溶着性の合成樹脂(人工い草)が一体化手段に相当する。
【0047】
本実施形態によれば、畳表22のカット予定部分の周辺の部位α,β、γ,εに対して熱を加えるだけで、当該部分の人工い草が互いに一体化できるため、畳表22の切断部位K1,K2等の周辺の部位α,β、γ,εの人工い草の解れの発生を確実に防止できる。又、瞬間接着剤にて接着する必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0048】
○ 前記実施形態では、薄畳は1畳の大きさとしたが、大きさに限定されるものではなく、例えば半畳の大きさとしてもよい。
以下には、特許請求の範囲に記載した請求項以外に上記実施形態から把握される技術的思想について記載する。
【0049】
(1) 請求項5に記載の薄畳において、前記畳表の各切断部位は、前記畳床の端面に対して斜状となるようにそれぞれカットされていること。こうすると、畳床の角部の下面に対応する畳表の端部同士が互いに交差しないように、容易に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】建材畳床の斜視図。
【図2】薄畳の製造方法の一工程を示す建材畳床の斜視図。
【図3】(a)は建材畳床の斜視図、(b)は要部断面図、(c)は同じく要部断面図。
【図4】(a)は建材畳床の斜視図、(b)は要部断面図。
【図5】(a)は建材畳床の斜視図、(b)は要部側面図。
【図6】(a)は薄畳の製造方法の一工程を示す薄畳の底面図、(b)は要部側面図。
【図7】薄畳の製造方法の一工程を示す薄畳の底面図。
【図8】薄畳の製造方法の一工程を示す薄畳の底面図。
【図9】薄畳の製造方法の一工程を示す薄畳の底面図。
【図10】薄畳10を下面から見た斜視図。
【符号の説明】
【0051】
10…薄畳
20…建材畳床
20a,20b…端面
22…畳表
25…短辺側端部
26…長辺側端部
C…角部
K1,K2…切断部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳床の各端部に畳表を巻付けて、前記畳床の各端部下面に対して該畳表の各端部を取着するステップと、
前記畳床の角部下面に取着された前記畳表の各端部において、互いに交差する部位に設けられるカット予定部分の周辺部位のい草同士を結合して一体化する解れ防止ステップと、
前記畳表の各端部の前記カット予定部分をカットするステップと、
前記各端部のカットした切断部位を接着剤にて、前記畳床に接着固定した後、前記畳表の端部を前記畳床に縫着するステップを備えたことを特徴とする薄畳の製造方法。
【請求項2】
前記畳表の各切断部位は、前記畳床の端面に対して斜状となるようにそれぞれカットすることを特徴とする請求項1に記載の薄畳の製造方法。
【請求項3】
前記解れ防止ステップにおいて、瞬間接着剤にて、カット予定部分の周辺部位のい草同士を結合して一体化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄畳の製造方法。
【請求項4】
前記畳表は熱溶着性の合成樹脂からなる人工い草にて形成され、
前記解れ防止ステップにおいて、カット予定部分の周辺部位の人工い草を加熱溶融した後、固化することにより一体化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄畳の製造方法。
【請求項5】
畳床の端部に対して畳表が巻付けられ、前記畳床の端部下面に対して該畳表の端部が取着され、前記畳床の角部下面に対応する前記畳表の各端部が、互いに交差しないようにそれぞれカットされ、前記各端部のカットされた切断部位がい草同士を互いに結合する一体化手段にて一体化され、前記畳表の端部を前記畳床に縫着されていることを特徴とする薄畳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−77553(P2006−77553A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265974(P2004−265974)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(595110092)株式会社国枝 (3)
【Fターム(参考)】