薄膜型NDフィルター
【課題】 長期に亘って安定した分光特性を有するNDフィルターを提供することを目的とする。また、多数の濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを容易に且つ一体化して供給可能とするNDフィルターの構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とする。また、本発明に係る他の薄膜型NDフィルター61は、光透過性の基板62上に1層以上の透明誘電体膜63a,63b,63cと光吸収膜64a,64bとが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、上記透明誘電体膜63a,63b,63cは同一膜内において略等しい膜厚を有し、上記光吸収膜64a,64bは同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とする。
【解決手段】 本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とする。また、本発明に係る他の薄膜型NDフィルター61は、光透過性の基板62上に1層以上の透明誘電体膜63a,63b,63cと光吸収膜64a,64bとが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、上記透明誘電体膜63a,63b,63cは同一膜内において略等しい膜厚を有し、上記光吸収膜64a,64bは同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学薄膜からなる薄膜型NDフィルター(Neutral Density filter)と、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来ビデオカメラにおいては、被写体輝度が高すぎる場合には、例えばCCD(Charge Coupled Device)等の感光面へ所定量以上の光量が入射しないように絞りを最小径に絞ってメカニカルな構造で対応していた。しかし、絞りの最小径を小さくしすぎると光の干渉により解像度が劣化する問題があり、通常はNDフィルターを装着して解像度を落とさないで入射光量を規制する方法が用いられている。
【0003】このようなNDフィルターは、可視全域に亘って分光特性が均一であるという特性が求められる。この特性を実現するものとしては薄膜型のNDフィルターが知られており、例えば特開平5−93811号公報においては、Ti,CrまたはNiのいずれかの材料からなる金属膜と、MgF2,SiO2のいずれかからなる誘電体膜とを積層したNDフィルターが開示されている。また、特開平7−63915号公報には、2種類以上の金属酸化物を用いた技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらのNDフィルターは、最適設計することにより可視全域に亘って分光特性が均一な特性を得ることができるが、吸収層としてTi,Cr,Ni等からなる数nm〜十数nmの厚みの金属膜、または吸収がある金属酸化膜を、SiO2等からなる誘電体膜と積層した構造を有している。このため、80℃程度の環境下においては上述した金属膜または吸収がある金属酸化膜の酸化が進み、透過率が使用初期の値と比べて大きくなるため、被写体輝度が高くなってしまうという問題がある。
【0005】したがって、使用環境に因らず、長期に亘って安定した分光特性を有するNDフィルターは、未だ確立されていないのが現状である。
【0006】また、NDフィルターは、均一な分光特性の他に複数の透過率を減衰させる機能が求められる。例えば、NDフィルターなしの場合の透過率を100%とすると、1濃度の透過率は32%、2濃度の透過率は10%、3濃度の透過率は3.3%などのように複数の透過率を実現すること機能が求められる。従来、このような機能を有する構造は、NDフィルターを1枚、2枚、3枚と貼り合わせることにより作製されている。すなわち、例えば図23及び図24に示すように第1のNDフィルター101、第2のNDフィルター102、第3のNDフィルター103を透明フィルム基板104を介してベース105に貼り合わせることにより作製されている。ここで、図24は図23中の線分X−X'における断面図である。
【0007】このような構造の場合、図24に示す位置に入射した光線1乃至光線4は、光線1はその光路上にNDフィルターが存在しないためNDフィルターを透過することはなく、光線2は第1のNDフィルター101を透過し、光線3は第1のNDフィルター101及び第2のNDフィルター102を透過し、光線4は第1のNDフィルター101、第2のNDフィルター102及び第3のNDフィルター103を透過することとなる。このときの各光線の透過率は例えば図25のようになり、複数の透過率を実現することができる。
【0008】しかしながら、このように複数のNDフィルターを貼り合わせて精度良くNDフィルターを作製するのは、非常に手間がかかる作業である。
【0009】また、最近では、ビデオカメラ等の小型化及び高性能化の観点からNDフィルターの一体化及び濃度数の増大が望まれている。
【0010】したがって、本発明は、従来の問題点に鑑みて創案されたものであり、長期に亘って安定した分光特性を有するNDフィルターを提供することを目的とする。
【0011】また、本発明の他の目的は、多数の濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを容易に且つ一体化して供給可能とするNDフィルターの構造及びその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成する本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とするものである。
【0013】以上のように構成された本発明に係る薄膜型NDフィルターでは、所望の透過率を得るための光吸収層として低級金属窒化膜を使用しているため、光吸収層が酸化されにくい。これにより、光吸収層の酸化による透過率の変化が抑制され、長期間に亘って分光特性が均一なものとされる。
【0014】また、以上の目的を達成する本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とするものである。
【0015】以上のように構成された本発明に係る薄膜型NDフィルターにおいては、多濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを1枚の基板上に一体形成することができる。
【0016】また、本発明に係る薄膜型NDフィルターの製造方法は、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターの製造方法であって、1層以上の透明誘電体膜を同一膜内において略等しい膜厚に形成する工程と、光吸収膜を同一膜内において異なる膜厚を有するように形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0017】以上のような本発明に係る薄膜型NDフィルターの製造方法では、多濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを容易に且つ確実に1枚の基板上に一体形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】本発明に係る薄膜型NDフィルター(Neutral Density filter)は、光透過性の基板上に、1層以上の透明誘電体膜と、低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とするものである。
【0020】図1に本発明に係る薄膜型NDフィルターの一例の要部断面図を示す。本発明に係る薄膜型NDフィルター1(以下、単にNDフィルター1と呼ぶ。)は、光透過性の基板2上に、光学多層体3が設けられてなるものである。
【0021】光透過性の基板2は、光透過性を有するものであれば特に材料が限定されることがなく、種々のものを用いることが可能である。このような基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンサルファイド(PES)等の高分子ポリマー系材料からなるフィルム基板や薄膜ガラス基板等を用いることができる。なお、生産効率の観点からは、後述するロールコーティングが可能となる可撓性を有する基板が好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むという点においても優れている。
【0022】光学多層体3は、一層以上の透明誘電体膜4と、光吸収膜5とが積層形成されてなるものである。その層数は、特に限定されるものではなく任意であるが、図1においては、透明誘電体膜4が3層、光吸収膜5が2層の5層構造としている。
【0023】透明誘電体膜4は、透明な誘電体からなる薄膜であり、例えばSiO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3等の材料により構成することができる。そして、これらの透明誘電体膜4は、Si、Ti、Nb、Ta、Al等の金属ターゲットを用いたリアクティブスパッタリングにより形成することができ、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kがk<0.1となるように形成される。
【0024】透明誘電体膜4の各層の厚みは特に限定されるものではなく、これらの総体としての光学多層体3がNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の光量減衰率を有するように、且つNDフィルターの使用帯域において略平坦な透過率の減衰特性を有するように、光吸収膜の各層の厚みとともに調整して予め決められる。すなわち、上述したような材料を適当に選択し、各層の膜厚を最適設定して透明誘電体膜4を構成することにより、NDフィルターの使用帯域において所望の透過率及び略平坦な透過率の減衰特性を備えたNDフィルターを得ることができる。
【0025】光吸収膜5は、低級窒化金属膜によりなるものである。そして、このような低級窒化金属膜は、例えばTiNx、NbNx、TaNx、AlNx等の低級窒化物をリアクティブスパッタリングにより成膜することで形成され、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kが1以上となるように形成される。
【0026】通常、光吸収膜は、透明誘電体膜と当接されて積層されるため透明誘電体膜の酸化物からの酸化を受け易い。そして、透明誘電体膜が酸化されることにより、透明誘電体膜の透過率が変化してしまい、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域において透過率が大きくなってしまう。そして、光吸収膜の透過率が変化しまうとNDフィルター自体の分光特性が変化してしまい、長期間に亘って安定して均一な分光特性を有するNDフィルターを構成することができない。
【0027】そこで、NDフィルター1においては、光吸収膜5を低級窒化金属膜により構成する。低級窒化金属膜は、酸化物を有する層と当接して積層した場合においても、該酸化物からの影響を受けにくく、酸化しにくい。したがって、光吸収膜5を低級窒化金属膜により構成することにより、光吸収膜5は該光吸収膜5に当接して積層された透明誘電体膜4の酸化物からの酸化を受けにくく、酸化しにくい光吸収膜を構成することができる。すなわち、透過率の変化が抑制された光吸収膜を構成することができる。これにより、例えば80℃程度の高温環境においても酸化が抑制され、透過率の変化が抑制された光吸収膜5を構成することが可能であり、安定して均一な分光特性を有するNDフィルターを構成することができる。したがって、NDフィルター1においては、光吸収膜5を低級窒化金属膜により構成することで、長期間に亘って安定して均一な分光特性を有するNDフィルターが実現されている。
【0028】このような低級窒化金属膜からなる光吸収膜5の各層の厚みは、これらの総体としての光学多層体3が、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の光量減衰率、すなわち所定の透過率を有するように透明誘電体膜4の各層の厚みとともに調整して予め決められる。すなわち、上述したような材料を適当に選択し、各層の膜厚を最適設定して光吸収膜5を構成することにより、NDフィルターの使用帯域において所望の透過率及び略平坦な透過率の減衰特性を備えたNDフィルターを得ることができる。
【0029】そして、光透過性の基板2上に、上述した1層以上の透明誘電体膜4と、上述した光吸収膜5とを積層形成して構成した光学多層体3を形成することにより、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域において略平坦な透過率の減衰特性を有し、且つ長期間に亘って安定して均一な分光特性を有するNDフィルターを実現することができる。
【0030】本発明に係るNDフィルターの具体的な例を図2に示す。図2に示すNDフィルター11の構成は以下の通りである。また、NDフィルター11の透過率特性を図3に示す。
【0031】NDフィルター11の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0032】なお、各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0033】
各膜の設計条件 SiO2 :n=1.47、k=0(波長400nm)
n=1.46、k=0(波長550nm)
n=1.46、k=0(波長700nm)
NbNx :n=2.23、k=1.93(波長400nm)
n=2.52、k=2.37(波長550nm)
n=2.78、k=2.71(波長700nm)
Nb2O5:n=2.51、k=0(波長400nm)
n=2.31、k=0(波長550nm)
n=2.26、k=0(波長700nm)
【0034】以上のように構成されたNDフィルター11においては、従来のNDフィルターとは異なり、光吸収膜が窒化されているため、該光吸収膜は当接して積層された透明誘電体の酸化物からの酸化を受けにくく、例えば80℃程度の高温環境においても分光透過率の変化が少ないものとされている。
【0035】また、図4に、NDフィルター11の2つのサンプル、サンプル−1及びサンプル−2に対して高温試験を行った後の透過率変化量を示す。高温試験は、NDフィルター11を80℃で48時間保持することにより行った。図4から、通常のNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においての透過率の変化量が非常に少なく、且つ上記の範囲において略平坦な透過率の減衰特性が実現されていることが判る。
【0036】また、比較として、図5に示すような従来の吸収を持つ金属酸化膜を用いたNDフィルター21に対して上記と同様にして高温試験を行った後の透過率変化量を図7に示す。そして、図6に示すようなNbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いたNDフィルター31について上記と同様にして高温試験を行った後の透過率変化量を図8に示す。なお、NDフィルター21及びNDフィルター31の構成は以下の通りである。
【0037】NDフィルター21の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0038】各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0039】NDフィルター21の各膜の設計条件Ti :n=1.89、k=2.6TiOx :n=2.2、k=1.97TiO2 :n=2.39、k=0SiO2 :n=1.46、k=0
【0040】NDフィルター31の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0041】各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0042】NDフィルター31の各膜の設計条件SiO2 :n=1.46、k=0Nb :n=1.95、k=2.56
【0043】図7及び図8より、従来の吸収を持つ金属酸化膜を用いたNDフィルター、及びNbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いたNDフィルターでは、高温試験後の透過率変化量は、本発明を適用したNDフィルター11と比較して非常に大きくなっていることが判る。また、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においての透過率の変化量は均一でなく、波長によって変化量が大幅に変化していることが判る。これらのことから、本発明を適用することにより、例えば80℃程度の高温環境においても通常のNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においての透過率の変化量が非常に少なく、且つ上記の範囲において略平坦な透過率の減衰特性を備え、長期的に安定した透過率特性を有する信頼性の高いNDフィルターが実現可能であるといえる。
【0044】また、本発明を適用して構成したNDフィルターの他の例を図9に及び図10示す。図9及び図10R>0に示すNDフィルター12及びNDフィルター13の構成は以下の通りである。また、NDフィルター12の透過率特性を図11に、NDフィルター13の透過率特性を図12に示す。
【0045】NDフィルター12の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0046】NDフィルター13の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0047】なお、各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0048】
各膜の設計条件 SiO2 :n=1.47、k=0(波長400nm)
n=1.46、k=0(波長550nm)
n=1.46、k=0(波長700nm)
NbNx :n=2.23、k=1.93(波長400nm)
n=2.52、k=2.37(波長550nm)
n=2.78、k=2.71(波長700nm)
Nb2O5:n=2.51、k=0(波長400nm)
n=2.31、k=0(波長550nm)
n=2.26、k=0(波長700nm)
【0049】図11及び図12より判るように、以上のように構成されたNDフィルター12及びNDフィルター13は従来のNDフィルターとは異なり、光吸収膜が窒化されているため、該光吸収膜は当接して積層された透明誘電体の酸化物からの酸化を受けにくく、全体的に透過率の変化が少ないものとされている。そして、通常のNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においては、波長による透過率の変化の差が非常に少なく、略平坦な透過率の減衰特性が実現されていることが判る。
【0050】このような本発明に係るNDフィルター1は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0051】図13は、上述したNDフィルターの製造に用いる成膜装置の概略を示す構成図である。この成膜装置40は、一方のロールから他方のロールにフィルムを送る間にそのフィルムに加工を施す、いわゆるロールコーティング法によりフィルム状の基板上に成膜を行うものである。
【0052】成膜装置40は、例えば真空ポンプ(図示せず)に接続された排気系42と、雰囲気ガスあるいは反応ガスを導入するためのガス導入系43、43'、43''とが設けられた真空チャンバ41によって、外気を遮断することが可能となっている。
【0053】また、ガス導入系43、43'、43''には、マスフローコントロールが備えられ、例えばアルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス等の導入ガスの流量を調整可能とされており、さらに、プラズマエミッションコントロール53により制御されるピエゾ・バルブ43b、43b'により、より正確、且つ迅速に導入ガス流量を制御可能とされている。
【0054】真空チャンバ41の内部には、フィルム状の基板2を連続して送り出すための送りロール44、キャンロール45、および送り出された基板2を巻き取るための巻き取りロール46が設けられ、これらのロール間における基板1の走行経路にガイドロール47a乃至47eが、適宜に配置されている。
【0055】さらに、フィルムの走行パス上にMボックス48bとRFプラズマ電源48cとが接続され、基板2の一面側に対してその表面をクリーニングするためのプラズマ電極48aと、その表面上に薄膜を形成するための蒸着源49A、蒸着源49B及び蒸着源49Cとが備えられている。そして、蒸着源49Aには、スパッタ電源51が、デュアルカソードである蒸着源49B及び蒸着源49Cにはスパッタ電源52が接続される。
【0056】なお、ここでは、蒸着源49Aは光吸収膜5を、蒸着源49B及び49Cは透明誘電体膜4を形成するようになっており、それぞれの材料に合わせてターゲットが選ばれる。また、形成された薄膜の透過率を確認するための光学モニタ50がガイドロール47eの近傍に付設されている。
【0057】この成膜装置40では、送りロール44が回転してこれに巻回されている基板1が送り出されると、巻き取りロール46が回転し、図13に示すような経路をたどった基板2を巻き取る構成とされている。この際、送りロール44と巻き取りロール46の回転速度を調節することで、両者間における基板2の走行速度を制御することができる。また、一旦送りロール44から送り出された基板1は、ガイドロール47a乃至ガイドロール47c、キャンロール45、ガイドロール47d、47eを介して巻き取りロール46に巻き取られる。この走行経路において、基板2は、その一面側に順次以下の処理が施される。
【0058】すなわち、最初にプラズマ電極48が発生させるプラズマ放電によって基板2の表面洗浄が行われる。次いで、キャンロール45の蒸着源49Aと対向する位置に達すると、ここでは、蒸着源49Aのスパッタリングによって光吸収膜5が形成される。さらに、キャンロール45の蒸着源49B及び蒸着源49cと対向する位置に達すると、ここで、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cのスパッタリングによって透明誘電体膜4が順に形成されるが、それとともに、送りロール44と巻き取りロール46を回転させながら成膜することによって、これらの層を基板2上に連続的に形成することができる。なお、成膜された基板2は、光学モニタ50によって透過率が逐次監視されている。
【0059】以下、より具体的に説明する。まず、例えばPETフィルムからなる帯状の基板2を用意する。そして、この基板2を成膜装置40の送りロール44に巻回し、基板2が上述した経路に沿って巻き取りロール46まで走行するように調製する。さらに、真空チャンバ41を密閉したうえで、その内部を排気系42により真空引きした後、ガス導入系43、43'を開いて例えばArやO2などのガスを導入する。
【0060】続いて、プラズマ電極48にプラズマ放電を発生させ、蒸着源49B及び蒸着源49Cにおいてそれぞれ蒸着を開始させておき、この状態で送りロール44と巻き取りロール46とを回転させ、送りロール44に巻回されている基板2を送り出すと同時に巻き取りロール46で巻き取るようにする。その際、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cへの投入電力は蒸着速度を決めるため、基板2の走行速度との間で適宜調製するようにする。
【0061】これにより、基板2は、ガイドロール47a、47bの間を走行するときに表面をプラズマ洗浄され、ガイドロール47cを介してキャンロール45の蒸着源49Aと対向する位置を通過する。そして、キャンロール45の蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板2の上に、スパッタリングにより透明誘電体膜4が形成される。このとき、蒸着源49B及び蒸着源49Cをともに稼働させた場合には二層の透明誘電体膜4を形成することができ、蒸着源49Bもしくは蒸着源49Cのみを稼働させた場合には、一層の透明誘電体膜4を形成することができる。この後、基板2は、光学モニタ50により透過率のチェックを受け、ガイドロール47d、47eを介して巻き取りロール46に巻き取られるが、収容される基板2には、一面側に透明誘電体膜4が形成されている。
【0062】以上の操作により、所定の長さの基板2について成膜し終えたら、一旦、プラズマ電極48、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cを停止させ、送りロール44に基板2を巻き戻す。なお、送りロール44と巻き取りロール46を互換できるようにし、巻き取り後に巻き取りロール46を取り外し、送りロール44位置に取り付けるようにしても良い。
【0063】次に、プラズマ電極48、蒸着源49A、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cを再び稼働させ、上記の工程と同様にして送りロール44と巻き取りロール46とを回転させ、送りロール44に巻回されている基板2を送り出すと同時に巻き取りロール46で巻き取るようにする。
【0064】そして、基板2がガイドロール47a乃至ガイドロール47cを介してキャンロール45の蒸着源49Aと対向する位置に達すると、基板2の透明誘電体膜4上に、スパッタリングにより光吸収膜5が形成される。さらに、基板2がキャンロール45の蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板2の光吸収膜5上に、スパッタリングにより透明誘電体膜4が形成される。
【0065】この後、基板2は、光学モニタ50により透過率のチェックを受け、ガイドロール47d、47eを介して巻き取りロール46に巻き取られ、収容される基板2には、一面側に透明誘電体膜4及び光吸収膜5が積層形成されている。以上のような透明誘電体膜4および光吸収膜5を1度に形成する工程を繰り返すことで、容易に透明誘電体膜4と光吸収膜5とを所望の層数で周期的に形成することができる。
【0066】以上により、基板2の一面側に1層以上の透明誘電体膜4と消衰係数kが1以上である低級金属窒化膜からなる光吸収膜5とが積層された光学多層体3が形成され、NDフィルター1が製造される。
【0067】なお、基板2と光学多層体3との間に密着層を設けた構成としても良い。基板2と光学多層体3との間に、両者の密着性を向上させるとともに光学多層体3に生じる応力を緩和することができる。密着層は、例えばケイ素(Si)により構成される。また、この他にも、Tiなどの化学的活性を発揮することができる材料であれば特に限定されるものではない。また、密着層の厚みは、例えば1nm以上10nm以下程度とすることが好ましい。密着層の厚みがあまり薄すぎる場合には、十分な密着性が得られず、両者の界面に膜剥がれやクラックを生じる虞がある。また、密着層の厚みがあまり厚すぎる場合には、透過率が減少し、可視光領域で均一な光学的特性を得られない虞があるからである。このような密着層は、例えばDCスパッタリングにより形成することができる。
【0068】次に、本発明に係る他のNDフィルターについて説明する。本発明に係るNDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とするものである。
【0069】図14に本発明に係るNDフィルターの一例の要部断面図を示す。本発明に係るNDフィルター61は、光透過性の基板62上に、1層以上の透明誘電体膜63と光吸収膜64とが積層形成されてなるものである。ここで、透明誘電体膜63としては、第1の透明誘電体膜63aと第2の透明誘電体膜63bと第3の透明誘電体膜63cとが形成され、光吸収膜64としては、第1の光吸収膜64aと第2の光吸収膜64bとが形成されている。
【0070】光透過性の基板62は、光透過性を有するものであれば特に材料が限定されることがなく、種々のものを用いることが可能である。このような基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンサルファイド(PES)等の高分子ポリマー系材料からなるフィルム基板や薄膜ガラス基板等を用いることができる。なお、生産効率の観点からは、後述するロールコーティングが可能となる可撓性を有する基板が好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むという点においても優れている。
【0071】透明誘電体膜63は、透明な誘電体からなる薄膜であり、例えばSiO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3等の材料により構成することができる。そして、これらの透明誘電体膜63は、Si、Ti、Nb、Ta、Al等の金属ターゲットを用いたリアクティブスパッタリングにより形成することができ、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kがk<0.1となるように形成される。
【0072】透明誘電体膜63の各層の厚みは特に限定されるものではなく、これらの総体としてのNDフィルターが、使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の光量減衰率を有するように、且つNDフィルターの使用帯域において略平坦な透過率の減衰特性を有するように、光吸収膜の各層の厚みとともに調整して予め決められる。すなわち、上述したような材料を適当に選択し、各層の膜厚を最適設定して透明誘電体膜63を構成することにより、NDフィルターの使用帯域において所望の透過率及び略平坦な透過率の減衰特性を備えたNDフィルターを得ることができる。ただし、透明誘電体膜63は、図14に示すように同一膜内においては、一律略等しい膜厚とされる。すなわち、図14においては、第1の透明誘電体膜63aの膜厚は、一律略等しい膜厚D1とされ、第2の透明誘電体膜63bの膜厚は、一律略等しい膜厚D2とされ、第3の透明誘電体膜63cの膜厚は、一律略等しい膜厚D3とされている。また、第1の透明誘電体膜63aの屈折率は、N1であり、第2の透明誘電体膜63bの屈折率は、N2であり、第3の透明誘電体膜63cの屈折率は、N3である。
【0073】光吸収膜64は、Ti、Nb、Ta、Al等の金属膜、またはTiOx、NbOx、TaOx、AlOx等の低級酸化物、またはTiNx、NbNx、TaNx、AlNx等の低級窒化物、またはTiOxNy、NbOxNy、TaOxNy、AlOxNy等の低級酸化窒化物よりなるものである。そして、このような光吸収膜64は、金属膜の場合はスパッタリングにより、それ以外の場合はリアクティブスパッタリングにより成膜することで形成され、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kが1以上となるように形成される。
【0074】このような光吸収膜64の各層の厚みは、図14に示すように同一膜内においてステップ状に異なる膜厚とされる。そして、同一膜内における各部位の膜厚は、これらの総体としてのNDフィルターが、使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の種類の光量減衰率、すなわち所定の種類の透過率を有するように透明誘電体膜63の各層の厚みとともに調整して予め決められる。
【0075】例えば図14においては、第1の光吸収膜64aの膜厚は、1濃度の膜厚d11、2濃度の膜厚d12、3濃度の膜厚d13、及び4濃度の膜厚d14の4種類のステップ状の異なる膜厚とされている。また、第2の光吸収膜64bの膜厚は、1濃度の膜厚d21、2濃度の膜厚d22、3濃度の膜厚d23、及び4濃度の膜厚d24の4種類のステップ状の異なる膜厚とされている。なお、第1の光吸収膜64aの屈折率は、n1であり、第2の光吸収膜64bの屈折率は、n2である。
【0076】ここで、NDフィルターの光量減衰率は光吸収層の膜厚に依存するため、光吸収層の厚みを変化させることにより光量減衰率を調整することができる。したがって、このように光吸収膜64が同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有することにより、NDフィルター自体に、部位によって異なる光量減衰率、すなわち透過率を付与することが可能となる。その結果、NDフィルター61においては、光吸収膜64がこのような構成を有することにより複数のNDフィルターを貼り合わせることなく、複数の光量減衰率、透過率を有する多濃度のNDフィルターが実現されている。
【0077】すなわち、光透過性の基板62上に、上述した1層以上の透明誘電体膜63と、上述した光吸収膜64とを積層形成して構成することにより、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域において略平坦な透過率の減衰特性を備え、且つ多濃度を有するNDフィルターを実現することができる。
【0078】なお、NDフィルター61における同一部位での各光吸収膜64の膜厚は、同一膜厚とする必要はなく、これらの総体としてのNDフィルターが本発明の効果を発揮し、所定の多濃度を有するように設定されれば良い。また、複数の光吸収膜64のうちに、同一膜内においてその膜厚が一律略等しい光吸収膜64が存在しても、他の光吸収膜64が同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有し、全ての光吸収膜64が同一膜内において一律略等しい膜厚を有していない限り、本発明の実現を妨げるものではない。
【0079】上述したように、以上のように構成されたNDフィルター61では、同一膜内において膜厚が略等しい透明誘電体膜63と、同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有する光吸収膜64とを備えることにより、複数の光量減衰率、透過率を有する多濃度のNDフィルターを実現することができる。そして、図14に示すような構造とした場合には、例えば図15に示すような4濃度のNDフィルターを実現することができる。
【0080】そして、このように多濃度のNDフィルターを1枚の基板上に一体形成することが可能となるため、NDフィルターの薄膜化が可能となる。また、NDフィルターの濃度数を容易に増やすことが可能となるため、ビデオカメラ等に用いた場合に高画質化を図ることができる。
【0081】このような本発明に係るNDフィルター61は、膜厚制御部材である膜厚制御板71及び73を用いて基板に対する蒸着面積を規制することにより膜厚を制御しながら透明誘電体膜及び光吸収膜を蒸着形成することにより作製することができる。すなわち、基板と蒸着源との間に所定のパターンを有する膜厚制御部材を配し、蒸着源に対して基板を所定の方向に移動させながら蒸着することができ、具体的には、例えば図13に示した成膜装置40に図16及び図18に示すような専用の膜厚制御部材である膜厚制御板71及び73を使用して、NDフィルター1を作製する場合と同様の手法で作製することができる。膜厚制御板71及び73を使用すること以外は、NDフィルター1の製造方法と同じであるため、ここでは、膜厚制御板71及び73についてのみ説明することとし、各製造工程の詳細な説明は省略する。
【0082】膜厚制御板71を用いてNDフィルター61を作製する場合、膜厚制御板71は図19に示すようにキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配される。膜厚制御板71は、図16に示すように、基板62の長手方向及び幅方向の二方向での蒸着面積を規制するためにステップ状に形成された開口部72を有している。このような開口部72を備えて構成された膜厚制御板71を、基板62が図16における矢印A方向に走行するようにキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配した状態でNDフィルター1の場合と同様にして成膜を行う。
【0083】基板62がキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより光吸収膜64が蒸着形成される。このとき、基板62の幅方向においては、蒸着時間を制御することにより異なる複数の膜厚が形成される。すなわち、基板62を走行させながら蒸着を行う際に、膜厚制御板71の開口部72における基板62の走行方向の長さを変えることにより蒸着面積を規制することで基板62における同一部に対する蒸着時間が制御される。これにより、図16及び図17に示すように基板62の幅方向において膜厚制御板71の形状に対応して4種類の異なる膜厚を有する光吸収膜64が成膜される。また、基板62の長手方向に関しては開口部72の形状で蒸着面積が規制されることにより同一膜厚で蒸着される。
【0084】そして、基板62がキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより透明誘電体膜63が蒸着形成される。このとき、蒸着時間を制御するために図18に示すような膜厚制御板73が、キャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとの間に配される。しかしながら、膜厚制御板73においては、基板62の幅方向での蒸着膜厚を変化させるための開口形状は形成されておらず、略長方形の開口部74が形成されているので、透明誘電体膜63は基板62の長手方向と幅方向において略等しい均一な膜厚に成膜される。
【0085】以上のように、専用の膜厚制御板71及び73を使用して透明誘電体膜63及び光吸収膜64を基板62上に蒸着形成することにより、容易に透明誘電体膜63と光吸収膜64とを所望の層数で周期的に形成することができる。
【0086】以上により、基板62の一面側に同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有する光吸収膜64と、同一膜内において略等しい均一な膜厚を有する透明誘電体膜63とが積層された4濃度のNDフィルター61が製造される。
【0087】上記においては、光吸収膜が同一膜内において異なる膜厚を有するNDフィルターの一例として、光吸収膜がステップ状に異なる膜厚を有するNDフィルターについて説明したが、以下では、他の例として光吸収膜が連続的に異なるNDフィルターについて説明する。
【0088】図20に本発明に係るNDフィルターの他の例の要部断面図を示す。本発明に係るNDフィルター81は、光透過性の基板62上に、1層以上の透明誘電体膜63と光吸収膜84とが積層形成されてなるものである。ここで、透明誘電体膜63としては、第1の透明誘電体膜63aと第2の透明誘電体膜63bと第3の透明誘電体膜63cとが形成され、光吸収膜84としては、第1の光吸収膜84aと第2の光吸収膜84bとが形成されている。図20のNDフィルター81が図14のNDフィルター61と異なる点は、光吸収膜84が光吸収膜64のようにステップ状に異なる膜厚を有するのではなく、連続的に異なる膜厚を有する点のみであるので、ここでは光吸収膜84についてのみ説明し、NDフィルター61と同じ部分については同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0089】光吸収膜84は、Ti、Nb、Ta、Al等の金属膜、またはTiOx、NbOx、TaOx、AlOx等の低級酸化物、またはTiNx、NbNx、TaNx、AlNx等の低級窒化物、またはTiOxNy、NbOxNy、TaOxNy、AlOxNy等の低級酸化窒化物よりなるものである。そして、このような光吸収膜84は、金属膜の場合はスパッタリングにより、それ以外の場合はリアクティブスパッタリングにより成膜することで形成され、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kがk>0.5となるように形成される。
【0090】このような光吸収膜84の各層の厚みは、図20に示すように所定の傾斜を有し同一膜内において連続的に異なる膜厚とされる。そして、光吸収膜84の傾斜、すなわち各部位の膜厚は、これらの総体としてのNDフィルターが、使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の種類の光量減衰率、すなわち所定の種類の透過率を有するように透明誘電体膜63の各層の厚みとともに調整して予め決められる。
【0091】ここで、NDフィルターの光量減衰率は光吸収層の膜厚に依存するため、光吸収層の厚みを変化させることにより光量減衰率を調整することができる。したがって、このように光吸収膜64が同一膜内において連続的に異なる膜厚を有することにより、NDフィルター自体に、部位によって異なる光量減衰率、すなわち透過率を付与することが可能となる。その結果、NDフィルター81においては、光吸収膜84がこのような構成を有することにより複数のNDフィルターを貼り合わせることなく、光量減衰率、すなわち透過率が連続的に変化するNDフィルターが実現されている。
【0092】したがって、光透過性の基板62上に、上述した1層以上の透明誘電体膜63と、上述した光吸収膜84とを積層形成して構成することにより、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域において略平坦な透過率の減衰特性を備え、且つ光量減衰率、すなわち透過率が連続的に変化したNDフィルターを実現することができる。
【0093】そして、このように光量減衰率、すなわち透過率が連続的に変化したNDフィルターを1枚の基板上に一体形成することが可能となるため、NDフィルターの薄膜化が可能となる。また、NDフィルターの濃度を連続的に変化させることが可能となるため、ビデオカメラ等に用いた場合に高画質化を図ることができる。
【0094】このような本発明に係るNDフィルター81は、例えば図13に示した成膜装置40に図21及び図18に示すような専用の膜厚制御板91及び73を使用してNDフィルター61を作製する場合と同様の手法で作製することができる。膜厚制御板71の代わりに膜厚制御板91を使用すること以外は、NDフィルター61の製造方法と同じであるため、ここでは、膜厚制御板91についてのみ説明することとし、各製造工程の詳細な説明は省略する。
【0095】膜厚制御板91を用いてNDフィルター61を作製する場合、膜厚制御板91は図19に示すようにキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配される。膜厚制御板91は、図21に示すように、基板62の長手方向及び長手方向に垂直な方向、すなわち幅方向の二方向での蒸着膜厚を制御するために傾斜部を有して形成された開口部92を有している。このような開口部92を備えて構成された膜厚制御板91を、基板62が図21における矢印B方向に走行するようにキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配した状態でNDフィルター1の場合と同様にして成膜を行う。
【0096】基板62がキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより光吸収膜84が蒸着形成される。このとき、基板62の幅方向においては、蒸着時間を制御することにより異なる複数の膜厚が形成される。すなわち、基板62を走行させながら蒸着を行う際に、膜厚制御板91の開口部92における基板62の走行方向の長さを変えることにより蒸着面積を規制することで基板62における同一部に対する蒸着時間が制御される。これにより、図21及び図22に示すように基板62の幅方向において膜厚制御板91の形状に対応して連続して異なる膜厚を有する光吸収膜84が成膜される。また、基板62の長手方向に関しては開口部92の形状で蒸着面積が規制されることにより同一膜厚で蒸着される。
【0097】そして、基板62がキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより透明誘電体膜63が蒸着形成される。このとき、蒸着時間を制御するために図18に示すような膜厚制御板73が、キャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとの間に配される。しかしながら、膜厚制御板73においては、基板62の幅方向での蒸着膜厚を変化させるための開口形状は形成されておらず、略長方形の開口部74が形成されているので、透明誘電体膜63は基板62の長手方向と幅方向において略等しい均一な膜厚に成膜される。
【0098】以上のように、専用の膜厚制御板91及び73を使用して透明誘電体膜63及び光吸収膜84を基板62上に積層形成することにより、容易に透明誘電体膜63と光吸収膜84とを所望の層数で周期的に形成することができる。
【0099】以上により、基板62の一面側に同一膜内において連続的に異なる膜厚を有する光吸収膜84と、同一膜内において略等しい均一な膜厚を有する透明誘電体膜63とが積層されたNDフィルター81が製造される。
【0100】
【発明の効果】本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなるものである。
【0101】以上のように構成された本発明に係る薄膜型NDフィルターでは、所望の透過率を得るための光吸収層として低級金属窒化膜を形成しているため、酸化されにくい光吸収層を実現している。これにより、光吸収層の酸化による透過率の変化が抑制することができ、長期間に亘って安定して均一な分光特性を有する信頼性の高いNDフィルターを実現することができる。
【0102】また、本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、上記透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、上記光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有してなるものである。
【0103】また、本発明に係る薄膜型NDフィルターの製造方法は、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターの製造方法であって、上記1層以上の透明誘電体膜を同一膜内において略等しい膜厚に形成する工程と、上記光吸収膜を同一膜内において異なる膜厚を有するように形成する工程とを有してなるものである。
【0104】以上のような本発明によれば、光吸収膜が同一膜内において異なる膜厚を有するように形成される。これにより、本発明においては、多数の濃度または連続的に変化する減衰率を有するNDフィルターを1枚の基板上に一体形成することが可能となるため、NDフィルターの薄膜化を図ることが可能となる。また、従来の複数のNDフィルターを貼り合わせるタイプと比較して濃度数を容易に増やすことが可能となるため、例えばビデオカメラ等に用いた場合に高画質化を図ることができる。
【0105】したがって、本発明によれば多数の濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを、容易に且つ一体化して供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図2】本発明に係る薄膜型NDフィルターの具体的な構成例を示す要部断面図である。
【図3】本発明に係る薄膜型NDフィルターの透過率特性を示す特性図である。
【図4】本発明に係る薄膜型NDフィルターの高温試験後の透過率変化量を示す特性図である。
【図5】吸収を持つ金属酸化膜を用いた薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図6】NbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いた薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図7】吸収を持つ金属酸化膜を用いた薄膜型NDフィルターの高温試験後の透過率変化量を示す特性図である。
【図8】NbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いた薄膜型NDフィルターの高温試験後の透過率変化量を示す特性図である。
【図9】本発明に係る薄膜型NDフィルターの他の構成例を示す要部断面図である。
【図10】本発明に係る薄膜型NDフィルターの他の構成例を示す要部断面図である。
【図11】本発明に係る薄膜型NDフィルターの透過率特性を示す特性図である。
【図12】本発明に係る薄膜型NDフィルターの透過率特性を示す特性図である。
【図13】成膜装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図14】本発明に係る薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図15】本発明に係る4濃度の薄膜型NDフィルターの透過率特性の一例を示す特性図である。
【図16】膜厚制御板の一構成例を示す平面図である。
【図17】基板上に光吸収層が形成された状態を示す図である。
【図18】膜厚制御板の一構成例を示す平面図である。
【図19】膜厚制御板を備えた成膜装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図20】本発明に係る薄膜型NDフィルターの他の構成例を示す要部断面図である。
【図21】膜厚制御板の他の構成例を示す平面図である。
【図22】基板上に光吸収層が形成された状態を示す図である。
【図23】第1のNDフィルター、第2のNDフィルター及び第3のNDフィルターが透明フィルム基板を介してベースに貼り合わされた状態を示す平面図である。
【図24】図23中の線分X−X'における断面図である。
【図25】透過率特性を示す特性図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,61,81 薄膜型NDフィルター
2,62,82 基板
3 光学多層体
4,63、83透明誘電体膜
5、64,84 光吸収膜
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学薄膜からなる薄膜型NDフィルター(Neutral Density filter)と、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来ビデオカメラにおいては、被写体輝度が高すぎる場合には、例えばCCD(Charge Coupled Device)等の感光面へ所定量以上の光量が入射しないように絞りを最小径に絞ってメカニカルな構造で対応していた。しかし、絞りの最小径を小さくしすぎると光の干渉により解像度が劣化する問題があり、通常はNDフィルターを装着して解像度を落とさないで入射光量を規制する方法が用いられている。
【0003】このようなNDフィルターは、可視全域に亘って分光特性が均一であるという特性が求められる。この特性を実現するものとしては薄膜型のNDフィルターが知られており、例えば特開平5−93811号公報においては、Ti,CrまたはNiのいずれかの材料からなる金属膜と、MgF2,SiO2のいずれかからなる誘電体膜とを積層したNDフィルターが開示されている。また、特開平7−63915号公報には、2種類以上の金属酸化物を用いた技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらのNDフィルターは、最適設計することにより可視全域に亘って分光特性が均一な特性を得ることができるが、吸収層としてTi,Cr,Ni等からなる数nm〜十数nmの厚みの金属膜、または吸収がある金属酸化膜を、SiO2等からなる誘電体膜と積層した構造を有している。このため、80℃程度の環境下においては上述した金属膜または吸収がある金属酸化膜の酸化が進み、透過率が使用初期の値と比べて大きくなるため、被写体輝度が高くなってしまうという問題がある。
【0005】したがって、使用環境に因らず、長期に亘って安定した分光特性を有するNDフィルターは、未だ確立されていないのが現状である。
【0006】また、NDフィルターは、均一な分光特性の他に複数の透過率を減衰させる機能が求められる。例えば、NDフィルターなしの場合の透過率を100%とすると、1濃度の透過率は32%、2濃度の透過率は10%、3濃度の透過率は3.3%などのように複数の透過率を実現すること機能が求められる。従来、このような機能を有する構造は、NDフィルターを1枚、2枚、3枚と貼り合わせることにより作製されている。すなわち、例えば図23及び図24に示すように第1のNDフィルター101、第2のNDフィルター102、第3のNDフィルター103を透明フィルム基板104を介してベース105に貼り合わせることにより作製されている。ここで、図24は図23中の線分X−X'における断面図である。
【0007】このような構造の場合、図24に示す位置に入射した光線1乃至光線4は、光線1はその光路上にNDフィルターが存在しないためNDフィルターを透過することはなく、光線2は第1のNDフィルター101を透過し、光線3は第1のNDフィルター101及び第2のNDフィルター102を透過し、光線4は第1のNDフィルター101、第2のNDフィルター102及び第3のNDフィルター103を透過することとなる。このときの各光線の透過率は例えば図25のようになり、複数の透過率を実現することができる。
【0008】しかしながら、このように複数のNDフィルターを貼り合わせて精度良くNDフィルターを作製するのは、非常に手間がかかる作業である。
【0009】また、最近では、ビデオカメラ等の小型化及び高性能化の観点からNDフィルターの一体化及び濃度数の増大が望まれている。
【0010】したがって、本発明は、従来の問題点に鑑みて創案されたものであり、長期に亘って安定した分光特性を有するNDフィルターを提供することを目的とする。
【0011】また、本発明の他の目的は、多数の濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを容易に且つ一体化して供給可能とするNDフィルターの構造及びその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成する本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とするものである。
【0013】以上のように構成された本発明に係る薄膜型NDフィルターでは、所望の透過率を得るための光吸収層として低級金属窒化膜を使用しているため、光吸収層が酸化されにくい。これにより、光吸収層の酸化による透過率の変化が抑制され、長期間に亘って分光特性が均一なものとされる。
【0014】また、以上の目的を達成する本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とするものである。
【0015】以上のように構成された本発明に係る薄膜型NDフィルターにおいては、多濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを1枚の基板上に一体形成することができる。
【0016】また、本発明に係る薄膜型NDフィルターの製造方法は、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターの製造方法であって、1層以上の透明誘電体膜を同一膜内において略等しい膜厚に形成する工程と、光吸収膜を同一膜内において異なる膜厚を有するように形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0017】以上のような本発明に係る薄膜型NDフィルターの製造方法では、多濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを容易に且つ確実に1枚の基板上に一体形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】本発明に係る薄膜型NDフィルター(Neutral Density filter)は、光透過性の基板上に、1層以上の透明誘電体膜と、低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とするものである。
【0020】図1に本発明に係る薄膜型NDフィルターの一例の要部断面図を示す。本発明に係る薄膜型NDフィルター1(以下、単にNDフィルター1と呼ぶ。)は、光透過性の基板2上に、光学多層体3が設けられてなるものである。
【0021】光透過性の基板2は、光透過性を有するものであれば特に材料が限定されることがなく、種々のものを用いることが可能である。このような基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンサルファイド(PES)等の高分子ポリマー系材料からなるフィルム基板や薄膜ガラス基板等を用いることができる。なお、生産効率の観点からは、後述するロールコーティングが可能となる可撓性を有する基板が好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むという点においても優れている。
【0022】光学多層体3は、一層以上の透明誘電体膜4と、光吸収膜5とが積層形成されてなるものである。その層数は、特に限定されるものではなく任意であるが、図1においては、透明誘電体膜4が3層、光吸収膜5が2層の5層構造としている。
【0023】透明誘電体膜4は、透明な誘電体からなる薄膜であり、例えばSiO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3等の材料により構成することができる。そして、これらの透明誘電体膜4は、Si、Ti、Nb、Ta、Al等の金属ターゲットを用いたリアクティブスパッタリングにより形成することができ、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kがk<0.1となるように形成される。
【0024】透明誘電体膜4の各層の厚みは特に限定されるものではなく、これらの総体としての光学多層体3がNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の光量減衰率を有するように、且つNDフィルターの使用帯域において略平坦な透過率の減衰特性を有するように、光吸収膜の各層の厚みとともに調整して予め決められる。すなわち、上述したような材料を適当に選択し、各層の膜厚を最適設定して透明誘電体膜4を構成することにより、NDフィルターの使用帯域において所望の透過率及び略平坦な透過率の減衰特性を備えたNDフィルターを得ることができる。
【0025】光吸収膜5は、低級窒化金属膜によりなるものである。そして、このような低級窒化金属膜は、例えばTiNx、NbNx、TaNx、AlNx等の低級窒化物をリアクティブスパッタリングにより成膜することで形成され、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kが1以上となるように形成される。
【0026】通常、光吸収膜は、透明誘電体膜と当接されて積層されるため透明誘電体膜の酸化物からの酸化を受け易い。そして、透明誘電体膜が酸化されることにより、透明誘電体膜の透過率が変化してしまい、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域において透過率が大きくなってしまう。そして、光吸収膜の透過率が変化しまうとNDフィルター自体の分光特性が変化してしまい、長期間に亘って安定して均一な分光特性を有するNDフィルターを構成することができない。
【0027】そこで、NDフィルター1においては、光吸収膜5を低級窒化金属膜により構成する。低級窒化金属膜は、酸化物を有する層と当接して積層した場合においても、該酸化物からの影響を受けにくく、酸化しにくい。したがって、光吸収膜5を低級窒化金属膜により構成することにより、光吸収膜5は該光吸収膜5に当接して積層された透明誘電体膜4の酸化物からの酸化を受けにくく、酸化しにくい光吸収膜を構成することができる。すなわち、透過率の変化が抑制された光吸収膜を構成することができる。これにより、例えば80℃程度の高温環境においても酸化が抑制され、透過率の変化が抑制された光吸収膜5を構成することが可能であり、安定して均一な分光特性を有するNDフィルターを構成することができる。したがって、NDフィルター1においては、光吸収膜5を低級窒化金属膜により構成することで、長期間に亘って安定して均一な分光特性を有するNDフィルターが実現されている。
【0028】このような低級窒化金属膜からなる光吸収膜5の各層の厚みは、これらの総体としての光学多層体3が、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の光量減衰率、すなわち所定の透過率を有するように透明誘電体膜4の各層の厚みとともに調整して予め決められる。すなわち、上述したような材料を適当に選択し、各層の膜厚を最適設定して光吸収膜5を構成することにより、NDフィルターの使用帯域において所望の透過率及び略平坦な透過率の減衰特性を備えたNDフィルターを得ることができる。
【0029】そして、光透過性の基板2上に、上述した1層以上の透明誘電体膜4と、上述した光吸収膜5とを積層形成して構成した光学多層体3を形成することにより、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域において略平坦な透過率の減衰特性を有し、且つ長期間に亘って安定して均一な分光特性を有するNDフィルターを実現することができる。
【0030】本発明に係るNDフィルターの具体的な例を図2に示す。図2に示すNDフィルター11の構成は以下の通りである。また、NDフィルター11の透過率特性を図3に示す。
【0031】NDフィルター11の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0032】なお、各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0033】
各膜の設計条件 SiO2 :n=1.47、k=0(波長400nm)
n=1.46、k=0(波長550nm)
n=1.46、k=0(波長700nm)
NbNx :n=2.23、k=1.93(波長400nm)
n=2.52、k=2.37(波長550nm)
n=2.78、k=2.71(波長700nm)
Nb2O5:n=2.51、k=0(波長400nm)
n=2.31、k=0(波長550nm)
n=2.26、k=0(波長700nm)
【0034】以上のように構成されたNDフィルター11においては、従来のNDフィルターとは異なり、光吸収膜が窒化されているため、該光吸収膜は当接して積層された透明誘電体の酸化物からの酸化を受けにくく、例えば80℃程度の高温環境においても分光透過率の変化が少ないものとされている。
【0035】また、図4に、NDフィルター11の2つのサンプル、サンプル−1及びサンプル−2に対して高温試験を行った後の透過率変化量を示す。高温試験は、NDフィルター11を80℃で48時間保持することにより行った。図4から、通常のNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においての透過率の変化量が非常に少なく、且つ上記の範囲において略平坦な透過率の減衰特性が実現されていることが判る。
【0036】また、比較として、図5に示すような従来の吸収を持つ金属酸化膜を用いたNDフィルター21に対して上記と同様にして高温試験を行った後の透過率変化量を図7に示す。そして、図6に示すようなNbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いたNDフィルター31について上記と同様にして高温試験を行った後の透過率変化量を図8に示す。なお、NDフィルター21及びNDフィルター31の構成は以下の通りである。
【0037】NDフィルター21の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0038】各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0039】NDフィルター21の各膜の設計条件Ti :n=1.89、k=2.6TiOx :n=2.2、k=1.97TiO2 :n=2.39、k=0SiO2 :n=1.46、k=0
【0040】NDフィルター31の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0041】各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0042】NDフィルター31の各膜の設計条件SiO2 :n=1.46、k=0Nb :n=1.95、k=2.56
【0043】図7及び図8より、従来の吸収を持つ金属酸化膜を用いたNDフィルター、及びNbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いたNDフィルターでは、高温試験後の透過率変化量は、本発明を適用したNDフィルター11と比較して非常に大きくなっていることが判る。また、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においての透過率の変化量は均一でなく、波長によって変化量が大幅に変化していることが判る。これらのことから、本発明を適用することにより、例えば80℃程度の高温環境においても通常のNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においての透過率の変化量が非常に少なく、且つ上記の範囲において略平坦な透過率の減衰特性を備え、長期的に安定した透過率特性を有する信頼性の高いNDフィルターが実現可能であるといえる。
【0044】また、本発明を適用して構成したNDフィルターの他の例を図9に及び図10示す。図9及び図10R>0に示すNDフィルター12及びNDフィルター13の構成は以下の通りである。また、NDフィルター12の透過率特性を図11に、NDフィルター13の透過率特性を図12に示す。
【0045】NDフィルター12の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0046】NDフィルター13の構成光透過性基板:PET基板(厚み188μm)
【0047】なお、各膜の複素屈折率の、実部n及び消衰係数kは以下のような条件で設計した。
【0048】
各膜の設計条件 SiO2 :n=1.47、k=0(波長400nm)
n=1.46、k=0(波長550nm)
n=1.46、k=0(波長700nm)
NbNx :n=2.23、k=1.93(波長400nm)
n=2.52、k=2.37(波長550nm)
n=2.78、k=2.71(波長700nm)
Nb2O5:n=2.51、k=0(波長400nm)
n=2.31、k=0(波長550nm)
n=2.26、k=0(波長700nm)
【0049】図11及び図12より判るように、以上のように構成されたNDフィルター12及びNDフィルター13は従来のNDフィルターとは異なり、光吸収膜が窒化されているため、該光吸収膜は当接して積層された透明誘電体の酸化物からの酸化を受けにくく、全体的に透過率の変化が少ないものとされている。そして、通常のNDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域においては、波長による透過率の変化の差が非常に少なく、略平坦な透過率の減衰特性が実現されていることが判る。
【0050】このような本発明に係るNDフィルター1は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0051】図13は、上述したNDフィルターの製造に用いる成膜装置の概略を示す構成図である。この成膜装置40は、一方のロールから他方のロールにフィルムを送る間にそのフィルムに加工を施す、いわゆるロールコーティング法によりフィルム状の基板上に成膜を行うものである。
【0052】成膜装置40は、例えば真空ポンプ(図示せず)に接続された排気系42と、雰囲気ガスあるいは反応ガスを導入するためのガス導入系43、43'、43''とが設けられた真空チャンバ41によって、外気を遮断することが可能となっている。
【0053】また、ガス導入系43、43'、43''には、マスフローコントロールが備えられ、例えばアルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス等の導入ガスの流量を調整可能とされており、さらに、プラズマエミッションコントロール53により制御されるピエゾ・バルブ43b、43b'により、より正確、且つ迅速に導入ガス流量を制御可能とされている。
【0054】真空チャンバ41の内部には、フィルム状の基板2を連続して送り出すための送りロール44、キャンロール45、および送り出された基板2を巻き取るための巻き取りロール46が設けられ、これらのロール間における基板1の走行経路にガイドロール47a乃至47eが、適宜に配置されている。
【0055】さらに、フィルムの走行パス上にMボックス48bとRFプラズマ電源48cとが接続され、基板2の一面側に対してその表面をクリーニングするためのプラズマ電極48aと、その表面上に薄膜を形成するための蒸着源49A、蒸着源49B及び蒸着源49Cとが備えられている。そして、蒸着源49Aには、スパッタ電源51が、デュアルカソードである蒸着源49B及び蒸着源49Cにはスパッタ電源52が接続される。
【0056】なお、ここでは、蒸着源49Aは光吸収膜5を、蒸着源49B及び49Cは透明誘電体膜4を形成するようになっており、それぞれの材料に合わせてターゲットが選ばれる。また、形成された薄膜の透過率を確認するための光学モニタ50がガイドロール47eの近傍に付設されている。
【0057】この成膜装置40では、送りロール44が回転してこれに巻回されている基板1が送り出されると、巻き取りロール46が回転し、図13に示すような経路をたどった基板2を巻き取る構成とされている。この際、送りロール44と巻き取りロール46の回転速度を調節することで、両者間における基板2の走行速度を制御することができる。また、一旦送りロール44から送り出された基板1は、ガイドロール47a乃至ガイドロール47c、キャンロール45、ガイドロール47d、47eを介して巻き取りロール46に巻き取られる。この走行経路において、基板2は、その一面側に順次以下の処理が施される。
【0058】すなわち、最初にプラズマ電極48が発生させるプラズマ放電によって基板2の表面洗浄が行われる。次いで、キャンロール45の蒸着源49Aと対向する位置に達すると、ここでは、蒸着源49Aのスパッタリングによって光吸収膜5が形成される。さらに、キャンロール45の蒸着源49B及び蒸着源49cと対向する位置に達すると、ここで、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cのスパッタリングによって透明誘電体膜4が順に形成されるが、それとともに、送りロール44と巻き取りロール46を回転させながら成膜することによって、これらの層を基板2上に連続的に形成することができる。なお、成膜された基板2は、光学モニタ50によって透過率が逐次監視されている。
【0059】以下、より具体的に説明する。まず、例えばPETフィルムからなる帯状の基板2を用意する。そして、この基板2を成膜装置40の送りロール44に巻回し、基板2が上述した経路に沿って巻き取りロール46まで走行するように調製する。さらに、真空チャンバ41を密閉したうえで、その内部を排気系42により真空引きした後、ガス導入系43、43'を開いて例えばArやO2などのガスを導入する。
【0060】続いて、プラズマ電極48にプラズマ放電を発生させ、蒸着源49B及び蒸着源49Cにおいてそれぞれ蒸着を開始させておき、この状態で送りロール44と巻き取りロール46とを回転させ、送りロール44に巻回されている基板2を送り出すと同時に巻き取りロール46で巻き取るようにする。その際、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cへの投入電力は蒸着速度を決めるため、基板2の走行速度との間で適宜調製するようにする。
【0061】これにより、基板2は、ガイドロール47a、47bの間を走行するときに表面をプラズマ洗浄され、ガイドロール47cを介してキャンロール45の蒸着源49Aと対向する位置を通過する。そして、キャンロール45の蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板2の上に、スパッタリングにより透明誘電体膜4が形成される。このとき、蒸着源49B及び蒸着源49Cをともに稼働させた場合には二層の透明誘電体膜4を形成することができ、蒸着源49Bもしくは蒸着源49Cのみを稼働させた場合には、一層の透明誘電体膜4を形成することができる。この後、基板2は、光学モニタ50により透過率のチェックを受け、ガイドロール47d、47eを介して巻き取りロール46に巻き取られるが、収容される基板2には、一面側に透明誘電体膜4が形成されている。
【0062】以上の操作により、所定の長さの基板2について成膜し終えたら、一旦、プラズマ電極48、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cを停止させ、送りロール44に基板2を巻き戻す。なお、送りロール44と巻き取りロール46を互換できるようにし、巻き取り後に巻き取りロール46を取り外し、送りロール44位置に取り付けるようにしても良い。
【0063】次に、プラズマ電極48、蒸着源49A、蒸着源49Bおよび蒸着源49Cを再び稼働させ、上記の工程と同様にして送りロール44と巻き取りロール46とを回転させ、送りロール44に巻回されている基板2を送り出すと同時に巻き取りロール46で巻き取るようにする。
【0064】そして、基板2がガイドロール47a乃至ガイドロール47cを介してキャンロール45の蒸着源49Aと対向する位置に達すると、基板2の透明誘電体膜4上に、スパッタリングにより光吸収膜5が形成される。さらに、基板2がキャンロール45の蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板2の光吸収膜5上に、スパッタリングにより透明誘電体膜4が形成される。
【0065】この後、基板2は、光学モニタ50により透過率のチェックを受け、ガイドロール47d、47eを介して巻き取りロール46に巻き取られ、収容される基板2には、一面側に透明誘電体膜4及び光吸収膜5が積層形成されている。以上のような透明誘電体膜4および光吸収膜5を1度に形成する工程を繰り返すことで、容易に透明誘電体膜4と光吸収膜5とを所望の層数で周期的に形成することができる。
【0066】以上により、基板2の一面側に1層以上の透明誘電体膜4と消衰係数kが1以上である低級金属窒化膜からなる光吸収膜5とが積層された光学多層体3が形成され、NDフィルター1が製造される。
【0067】なお、基板2と光学多層体3との間に密着層を設けた構成としても良い。基板2と光学多層体3との間に、両者の密着性を向上させるとともに光学多層体3に生じる応力を緩和することができる。密着層は、例えばケイ素(Si)により構成される。また、この他にも、Tiなどの化学的活性を発揮することができる材料であれば特に限定されるものではない。また、密着層の厚みは、例えば1nm以上10nm以下程度とすることが好ましい。密着層の厚みがあまり薄すぎる場合には、十分な密着性が得られず、両者の界面に膜剥がれやクラックを生じる虞がある。また、密着層の厚みがあまり厚すぎる場合には、透過率が減少し、可視光領域で均一な光学的特性を得られない虞があるからである。このような密着層は、例えばDCスパッタリングにより形成することができる。
【0068】次に、本発明に係る他のNDフィルターについて説明する。本発明に係るNDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とするものである。
【0069】図14に本発明に係るNDフィルターの一例の要部断面図を示す。本発明に係るNDフィルター61は、光透過性の基板62上に、1層以上の透明誘電体膜63と光吸収膜64とが積層形成されてなるものである。ここで、透明誘電体膜63としては、第1の透明誘電体膜63aと第2の透明誘電体膜63bと第3の透明誘電体膜63cとが形成され、光吸収膜64としては、第1の光吸収膜64aと第2の光吸収膜64bとが形成されている。
【0070】光透過性の基板62は、光透過性を有するものであれば特に材料が限定されることがなく、種々のものを用いることが可能である。このような基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンサルファイド(PES)等の高分子ポリマー系材料からなるフィルム基板や薄膜ガラス基板等を用いることができる。なお、生産効率の観点からは、後述するロールコーティングが可能となる可撓性を有する基板が好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むという点においても優れている。
【0071】透明誘電体膜63は、透明な誘電体からなる薄膜であり、例えばSiO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3等の材料により構成することができる。そして、これらの透明誘電体膜63は、Si、Ti、Nb、Ta、Al等の金属ターゲットを用いたリアクティブスパッタリングにより形成することができ、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kがk<0.1となるように形成される。
【0072】透明誘電体膜63の各層の厚みは特に限定されるものではなく、これらの総体としてのNDフィルターが、使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の光量減衰率を有するように、且つNDフィルターの使用帯域において略平坦な透過率の減衰特性を有するように、光吸収膜の各層の厚みとともに調整して予め決められる。すなわち、上述したような材料を適当に選択し、各層の膜厚を最適設定して透明誘電体膜63を構成することにより、NDフィルターの使用帯域において所望の透過率及び略平坦な透過率の減衰特性を備えたNDフィルターを得ることができる。ただし、透明誘電体膜63は、図14に示すように同一膜内においては、一律略等しい膜厚とされる。すなわち、図14においては、第1の透明誘電体膜63aの膜厚は、一律略等しい膜厚D1とされ、第2の透明誘電体膜63bの膜厚は、一律略等しい膜厚D2とされ、第3の透明誘電体膜63cの膜厚は、一律略等しい膜厚D3とされている。また、第1の透明誘電体膜63aの屈折率は、N1であり、第2の透明誘電体膜63bの屈折率は、N2であり、第3の透明誘電体膜63cの屈折率は、N3である。
【0073】光吸収膜64は、Ti、Nb、Ta、Al等の金属膜、またはTiOx、NbOx、TaOx、AlOx等の低級酸化物、またはTiNx、NbNx、TaNx、AlNx等の低級窒化物、またはTiOxNy、NbOxNy、TaOxNy、AlOxNy等の低級酸化窒化物よりなるものである。そして、このような光吸収膜64は、金属膜の場合はスパッタリングにより、それ以外の場合はリアクティブスパッタリングにより成膜することで形成され、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kが1以上となるように形成される。
【0074】このような光吸収膜64の各層の厚みは、図14に示すように同一膜内においてステップ状に異なる膜厚とされる。そして、同一膜内における各部位の膜厚は、これらの総体としてのNDフィルターが、使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の種類の光量減衰率、すなわち所定の種類の透過率を有するように透明誘電体膜63の各層の厚みとともに調整して予め決められる。
【0075】例えば図14においては、第1の光吸収膜64aの膜厚は、1濃度の膜厚d11、2濃度の膜厚d12、3濃度の膜厚d13、及び4濃度の膜厚d14の4種類のステップ状の異なる膜厚とされている。また、第2の光吸収膜64bの膜厚は、1濃度の膜厚d21、2濃度の膜厚d22、3濃度の膜厚d23、及び4濃度の膜厚d24の4種類のステップ状の異なる膜厚とされている。なお、第1の光吸収膜64aの屈折率は、n1であり、第2の光吸収膜64bの屈折率は、n2である。
【0076】ここで、NDフィルターの光量減衰率は光吸収層の膜厚に依存するため、光吸収層の厚みを変化させることにより光量減衰率を調整することができる。したがって、このように光吸収膜64が同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有することにより、NDフィルター自体に、部位によって異なる光量減衰率、すなわち透過率を付与することが可能となる。その結果、NDフィルター61においては、光吸収膜64がこのような構成を有することにより複数のNDフィルターを貼り合わせることなく、複数の光量減衰率、透過率を有する多濃度のNDフィルターが実現されている。
【0077】すなわち、光透過性の基板62上に、上述した1層以上の透明誘電体膜63と、上述した光吸収膜64とを積層形成して構成することにより、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域において略平坦な透過率の減衰特性を備え、且つ多濃度を有するNDフィルターを実現することができる。
【0078】なお、NDフィルター61における同一部位での各光吸収膜64の膜厚は、同一膜厚とする必要はなく、これらの総体としてのNDフィルターが本発明の効果を発揮し、所定の多濃度を有するように設定されれば良い。また、複数の光吸収膜64のうちに、同一膜内においてその膜厚が一律略等しい光吸収膜64が存在しても、他の光吸収膜64が同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有し、全ての光吸収膜64が同一膜内において一律略等しい膜厚を有していない限り、本発明の実現を妨げるものではない。
【0079】上述したように、以上のように構成されたNDフィルター61では、同一膜内において膜厚が略等しい透明誘電体膜63と、同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有する光吸収膜64とを備えることにより、複数の光量減衰率、透過率を有する多濃度のNDフィルターを実現することができる。そして、図14に示すような構造とした場合には、例えば図15に示すような4濃度のNDフィルターを実現することができる。
【0080】そして、このように多濃度のNDフィルターを1枚の基板上に一体形成することが可能となるため、NDフィルターの薄膜化が可能となる。また、NDフィルターの濃度数を容易に増やすことが可能となるため、ビデオカメラ等に用いた場合に高画質化を図ることができる。
【0081】このような本発明に係るNDフィルター61は、膜厚制御部材である膜厚制御板71及び73を用いて基板に対する蒸着面積を規制することにより膜厚を制御しながら透明誘電体膜及び光吸収膜を蒸着形成することにより作製することができる。すなわち、基板と蒸着源との間に所定のパターンを有する膜厚制御部材を配し、蒸着源に対して基板を所定の方向に移動させながら蒸着することができ、具体的には、例えば図13に示した成膜装置40に図16及び図18に示すような専用の膜厚制御部材である膜厚制御板71及び73を使用して、NDフィルター1を作製する場合と同様の手法で作製することができる。膜厚制御板71及び73を使用すること以外は、NDフィルター1の製造方法と同じであるため、ここでは、膜厚制御板71及び73についてのみ説明することとし、各製造工程の詳細な説明は省略する。
【0082】膜厚制御板71を用いてNDフィルター61を作製する場合、膜厚制御板71は図19に示すようにキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配される。膜厚制御板71は、図16に示すように、基板62の長手方向及び幅方向の二方向での蒸着面積を規制するためにステップ状に形成された開口部72を有している。このような開口部72を備えて構成された膜厚制御板71を、基板62が図16における矢印A方向に走行するようにキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配した状態でNDフィルター1の場合と同様にして成膜を行う。
【0083】基板62がキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより光吸収膜64が蒸着形成される。このとき、基板62の幅方向においては、蒸着時間を制御することにより異なる複数の膜厚が形成される。すなわち、基板62を走行させながら蒸着を行う際に、膜厚制御板71の開口部72における基板62の走行方向の長さを変えることにより蒸着面積を規制することで基板62における同一部に対する蒸着時間が制御される。これにより、図16及び図17に示すように基板62の幅方向において膜厚制御板71の形状に対応して4種類の異なる膜厚を有する光吸収膜64が成膜される。また、基板62の長手方向に関しては開口部72の形状で蒸着面積が規制されることにより同一膜厚で蒸着される。
【0084】そして、基板62がキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより透明誘電体膜63が蒸着形成される。このとき、蒸着時間を制御するために図18に示すような膜厚制御板73が、キャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとの間に配される。しかしながら、膜厚制御板73においては、基板62の幅方向での蒸着膜厚を変化させるための開口形状は形成されておらず、略長方形の開口部74が形成されているので、透明誘電体膜63は基板62の長手方向と幅方向において略等しい均一な膜厚に成膜される。
【0085】以上のように、専用の膜厚制御板71及び73を使用して透明誘電体膜63及び光吸収膜64を基板62上に蒸着形成することにより、容易に透明誘電体膜63と光吸収膜64とを所望の層数で周期的に形成することができる。
【0086】以上により、基板62の一面側に同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有する光吸収膜64と、同一膜内において略等しい均一な膜厚を有する透明誘電体膜63とが積層された4濃度のNDフィルター61が製造される。
【0087】上記においては、光吸収膜が同一膜内において異なる膜厚を有するNDフィルターの一例として、光吸収膜がステップ状に異なる膜厚を有するNDフィルターについて説明したが、以下では、他の例として光吸収膜が連続的に異なるNDフィルターについて説明する。
【0088】図20に本発明に係るNDフィルターの他の例の要部断面図を示す。本発明に係るNDフィルター81は、光透過性の基板62上に、1層以上の透明誘電体膜63と光吸収膜84とが積層形成されてなるものである。ここで、透明誘電体膜63としては、第1の透明誘電体膜63aと第2の透明誘電体膜63bと第3の透明誘電体膜63cとが形成され、光吸収膜84としては、第1の光吸収膜84aと第2の光吸収膜84bとが形成されている。図20のNDフィルター81が図14のNDフィルター61と異なる点は、光吸収膜84が光吸収膜64のようにステップ状に異なる膜厚を有するのではなく、連続的に異なる膜厚を有する点のみであるので、ここでは光吸収膜84についてのみ説明し、NDフィルター61と同じ部分については同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0089】光吸収膜84は、Ti、Nb、Ta、Al等の金属膜、またはTiOx、NbOx、TaOx、AlOx等の低級酸化物、またはTiNx、NbNx、TaNx、AlNx等の低級窒化物、またはTiOxNy、NbOxNy、TaOxNy、AlOxNy等の低級酸化窒化物よりなるものである。そして、このような光吸収膜84は、金属膜の場合はスパッタリングにより、それ以外の場合はリアクティブスパッタリングにより成膜することで形成され、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で消衰kがk>0.5となるように形成される。
【0090】このような光吸収膜84の各層の厚みは、図20に示すように所定の傾斜を有し同一膜内において連続的に異なる膜厚とされる。そして、光吸収膜84の傾斜、すなわち各部位の膜厚は、これらの総体としてのNDフィルターが、使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の通常可視光域で所定の種類の光量減衰率、すなわち所定の種類の透過率を有するように透明誘電体膜63の各層の厚みとともに調整して予め決められる。
【0091】ここで、NDフィルターの光量減衰率は光吸収層の膜厚に依存するため、光吸収層の厚みを変化させることにより光量減衰率を調整することができる。したがって、このように光吸収膜64が同一膜内において連続的に異なる膜厚を有することにより、NDフィルター自体に、部位によって異なる光量減衰率、すなわち透過率を付与することが可能となる。その結果、NDフィルター81においては、光吸収膜84がこのような構成を有することにより複数のNDフィルターを貼り合わせることなく、光量減衰率、すなわち透過率が連続的に変化するNDフィルターが実現されている。
【0092】したがって、光透過性の基板62上に、上述した1層以上の透明誘電体膜63と、上述した光吸収膜84とを積層形成して構成することにより、NDフィルターの使用帯域、すなわち例えば波長400nm〜700nm程度の可視光域において略平坦な透過率の減衰特性を備え、且つ光量減衰率、すなわち透過率が連続的に変化したNDフィルターを実現することができる。
【0093】そして、このように光量減衰率、すなわち透過率が連続的に変化したNDフィルターを1枚の基板上に一体形成することが可能となるため、NDフィルターの薄膜化が可能となる。また、NDフィルターの濃度を連続的に変化させることが可能となるため、ビデオカメラ等に用いた場合に高画質化を図ることができる。
【0094】このような本発明に係るNDフィルター81は、例えば図13に示した成膜装置40に図21及び図18に示すような専用の膜厚制御板91及び73を使用してNDフィルター61を作製する場合と同様の手法で作製することができる。膜厚制御板71の代わりに膜厚制御板91を使用すること以外は、NDフィルター61の製造方法と同じであるため、ここでは、膜厚制御板91についてのみ説明することとし、各製造工程の詳細な説明は省略する。
【0095】膜厚制御板91を用いてNDフィルター61を作製する場合、膜厚制御板91は図19に示すようにキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配される。膜厚制御板91は、図21に示すように、基板62の長手方向及び長手方向に垂直な方向、すなわち幅方向の二方向での蒸着膜厚を制御するために傾斜部を有して形成された開口部92を有している。このような開口部92を備えて構成された膜厚制御板91を、基板62が図21における矢印B方向に走行するようにキャンロール45と蒸着源49Aとの間に配した状態でNDフィルター1の場合と同様にして成膜を行う。
【0096】基板62がキャンロール45と蒸着源49Aとが対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより光吸収膜84が蒸着形成される。このとき、基板62の幅方向においては、蒸着時間を制御することにより異なる複数の膜厚が形成される。すなわち、基板62を走行させながら蒸着を行う際に、膜厚制御板91の開口部92における基板62の走行方向の長さを変えることにより蒸着面積を規制することで基板62における同一部に対する蒸着時間が制御される。これにより、図21及び図22に示すように基板62の幅方向において膜厚制御板91の形状に対応して連続して異なる膜厚を有する光吸収膜84が成膜される。また、基板62の長手方向に関しては開口部92の形状で蒸着面積が規制されることにより同一膜厚で蒸着される。
【0097】そして、基板62がキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cと対向する位置に達すると、基板62の上に、スパッタリングにより透明誘電体膜63が蒸着形成される。このとき、蒸着時間を制御するために図18に示すような膜厚制御板73が、キャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとが対向する位置においてキャンロール45と蒸着源49B及び蒸着源49Cとの間に配される。しかしながら、膜厚制御板73においては、基板62の幅方向での蒸着膜厚を変化させるための開口形状は形成されておらず、略長方形の開口部74が形成されているので、透明誘電体膜63は基板62の長手方向と幅方向において略等しい均一な膜厚に成膜される。
【0098】以上のように、専用の膜厚制御板91及び73を使用して透明誘電体膜63及び光吸収膜84を基板62上に積層形成することにより、容易に透明誘電体膜63と光吸収膜84とを所望の層数で周期的に形成することができる。
【0099】以上により、基板62の一面側に同一膜内において連続的に異なる膜厚を有する光吸収膜84と、同一膜内において略等しい均一な膜厚を有する透明誘電体膜63とが積層されたNDフィルター81が製造される。
【0100】
【発明の効果】本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなるものである。
【0101】以上のように構成された本発明に係る薄膜型NDフィルターでは、所望の透過率を得るための光吸収層として低級金属窒化膜を形成しているため、酸化されにくい光吸収層を実現している。これにより、光吸収層の酸化による透過率の変化が抑制することができ、長期間に亘って安定して均一な分光特性を有する信頼性の高いNDフィルターを実現することができる。
【0102】また、本発明に係る薄膜型NDフィルターは、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、上記透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、上記光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有してなるものである。
【0103】また、本発明に係る薄膜型NDフィルターの製造方法は、光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターの製造方法であって、上記1層以上の透明誘電体膜を同一膜内において略等しい膜厚に形成する工程と、上記光吸収膜を同一膜内において異なる膜厚を有するように形成する工程とを有してなるものである。
【0104】以上のような本発明によれば、光吸収膜が同一膜内において異なる膜厚を有するように形成される。これにより、本発明においては、多数の濃度または連続的に変化する減衰率を有するNDフィルターを1枚の基板上に一体形成することが可能となるため、NDフィルターの薄膜化を図ることが可能となる。また、従来の複数のNDフィルターを貼り合わせるタイプと比較して濃度数を容易に増やすことが可能となるため、例えばビデオカメラ等に用いた場合に高画質化を図ることができる。
【0105】したがって、本発明によれば多数の濃度または連続的に変化する減衰率を有する薄膜型NDフィルターを、容易に且つ一体化して供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図2】本発明に係る薄膜型NDフィルターの具体的な構成例を示す要部断面図である。
【図3】本発明に係る薄膜型NDフィルターの透過率特性を示す特性図である。
【図4】本発明に係る薄膜型NDフィルターの高温試験後の透過率変化量を示す特性図である。
【図5】吸収を持つ金属酸化膜を用いた薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図6】NbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いた薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図7】吸収を持つ金属酸化膜を用いた薄膜型NDフィルターの高温試験後の透過率変化量を示す特性図である。
【図8】NbとSiO2との積層構造からなる光学多層体を用いた薄膜型NDフィルターの高温試験後の透過率変化量を示す特性図である。
【図9】本発明に係る薄膜型NDフィルターの他の構成例を示す要部断面図である。
【図10】本発明に係る薄膜型NDフィルターの他の構成例を示す要部断面図である。
【図11】本発明に係る薄膜型NDフィルターの透過率特性を示す特性図である。
【図12】本発明に係る薄膜型NDフィルターの透過率特性を示す特性図である。
【図13】成膜装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図14】本発明に係る薄膜型NDフィルターの一構成例を示す要部断面図である。
【図15】本発明に係る4濃度の薄膜型NDフィルターの透過率特性の一例を示す特性図である。
【図16】膜厚制御板の一構成例を示す平面図である。
【図17】基板上に光吸収層が形成された状態を示す図である。
【図18】膜厚制御板の一構成例を示す平面図である。
【図19】膜厚制御板を備えた成膜装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図20】本発明に係る薄膜型NDフィルターの他の構成例を示す要部断面図である。
【図21】膜厚制御板の他の構成例を示す平面図である。
【図22】基板上に光吸収層が形成された状態を示す図である。
【図23】第1のNDフィルター、第2のNDフィルター及び第3のNDフィルターが透明フィルム基板を介してベースに貼り合わされた状態を示す平面図である。
【図24】図23中の線分X−X'における断面図である。
【図25】透過率特性を示す特性図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,61,81 薄膜型NDフィルター
2,62,82 基板
3 光学多層体
4,63、83透明誘電体膜
5、64,84 光吸収膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とする薄膜型NDフィルター。
【請求項2】 上記低級金属窒化膜の複素屈折率における消衰係数kが、可視光域において1以上であることを特徴とする請求項1記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項3】 光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、上記透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、上記光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とする薄膜型NDフィルター。
【請求項4】 上記光吸収膜が同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有することを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項5】 上記光吸収膜が同一膜内において連続的に異なる膜厚を有することを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項6】 上記光吸収膜は低級金属窒化膜からなることを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項7】 上記光吸収膜の複素屈折率における消衰係数kが、可視光域において1以上であることを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項8】 光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターの製造方法であって、上記1層以上の透明誘電体膜を同一膜内において略等しい膜厚に形成する工程と、上記光吸収膜を同一膜内において異なる膜厚を有するように形成する工程とを有することを特徴とする薄膜型NDフィルターの製造方法。
【請求項9】 上記基板に対する蒸着面積を規制することにより膜厚を制御しながら上記透明誘電体膜及び上記光吸収膜を蒸着形成することを特徴とする請求項8記載の薄膜型NDフィルターの製造方法。
【請求項10】 上記基板と蒸着源との間に所定のパターンを有する膜厚制御部材を配し、上記蒸着源に対して上記基板を所定の方向に移動させながら蒸着することを特徴とする請求項9記載の薄膜型NDフィルターの製造方法。
【請求項11】 上記光吸収膜として低級金属窒化膜を形成することを特徴とする請求項8記載の薄膜型NDフィルターの製造方法。
【請求項1】 光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と低級金属窒化膜とが積層形成されてなることを特徴とする薄膜型NDフィルター。
【請求項2】 上記低級金属窒化膜の複素屈折率における消衰係数kが、可視光域において1以上であることを特徴とする請求項1記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項3】 光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターであって、上記透明誘電体膜は同一膜内において略等しい膜厚を有し、上記光吸収膜は同一膜内において異なる膜厚を有することを特徴とする薄膜型NDフィルター。
【請求項4】 上記光吸収膜が同一膜内においてステップ状に異なる膜厚を有することを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項5】 上記光吸収膜が同一膜内において連続的に異なる膜厚を有することを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項6】 上記光吸収膜は低級金属窒化膜からなることを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項7】 上記光吸収膜の複素屈折率における消衰係数kが、可視光域において1以上であることを特徴とする請求項3記載の薄膜型NDフィルター。
【請求項8】 光透過性の基板上に1層以上の透明誘電体膜と光吸収膜とが積層形成されてなる薄膜型NDフィルターの製造方法であって、上記1層以上の透明誘電体膜を同一膜内において略等しい膜厚に形成する工程と、上記光吸収膜を同一膜内において異なる膜厚を有するように形成する工程とを有することを特徴とする薄膜型NDフィルターの製造方法。
【請求項9】 上記基板に対する蒸着面積を規制することにより膜厚を制御しながら上記透明誘電体膜及び上記光吸収膜を蒸着形成することを特徴とする請求項8記載の薄膜型NDフィルターの製造方法。
【請求項10】 上記基板と蒸着源との間に所定のパターンを有する膜厚制御部材を配し、上記蒸着源に対して上記基板を所定の方向に移動させながら蒸着することを特徴とする請求項9記載の薄膜型NDフィルターの製造方法。
【請求項11】 上記光吸収膜として低級金属窒化膜を形成することを特徴とする請求項8記載の薄膜型NDフィルターの製造方法。
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図22】
【図13】
【図15】
【図16】
【図20】
【図23】
【図18】
【図19】
【図21】
【図24】
【図25】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図22】
【図13】
【図15】
【図16】
【図20】
【図23】
【図18】
【図19】
【図21】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2003−322709(P2003−322709A)
【公開日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−128689(P2002−128689)
【出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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