説明

薬剤ケース

【課題】薬剤を薬剤ケースから間違えることなく取り出せるようにした薬剤ケースを提供すること。
【解決手段】薬剤ケース10Aは、前壁部11、一対の側壁部12、13、後壁部14、底壁部15を有して上部を開口した筐体状に形成する。薬剤ケース10Aの前部にスライド案内部18を配置し、スライド案内部18の後方に板状のブリスターパックを収納する薬剤収納部17を設け、スライド案内部18の前方にバラ状のブリスターパックを収納する小収納部19を設ける。前壁部11と小収納部19との間には、傾斜壁部21、凹部22を薬剤ケース10Aの幅方向に沿って並列に配設した表示部20を形成する。傾斜壁部21には、注意事項を記したシールカードを貼り付け、凹部22には、変動する情報「在庫あり」のカードを入れたカードケースを収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を包装した包装袋、主に錠剤を包装した錠剤ブリスターパック(以下、ブリスターパックという)を収納する薬剤ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、薬剤ケース10は、通常、調剤室内に設置された調剤台1の上部ユニット2に配置された複数段の棚板上にそれぞれ載置されている。それぞれの薬剤ケース10は、合成樹脂で形成されてそれぞれ引き出し可能に配置されている。通常、薬剤ケースは、取り出しやすいように前部が開放されたオープンタイプと、埃の侵入を嫌うために上部を塞ぐように形成したクローズタイプとを有している。この薬剤ケース10には、錠剤を密封して包装したブリスターパックが収納されている。ブリスターパックは、例えば、1個ずつ包装した錠剤を、縦横にミシン目を介して並列させて1枚の板状に形成したものや、1枚の板状のものからミシン目に沿って切り取られてバラ状にしたものがあり、それぞれ薬剤ケース10内に収納されている。
【0003】
例えば、錠剤ブリスターパックを収納する従来の薬剤ケースは、特許文献1により知られている。これによると、図9に示すように、薬剤ケース30は前壁部31、一対の側壁部32、33、後壁部34、底壁部35を有して上方が開口した筐体状に形成されている。底壁部35の上方には、錠剤前後方向にブリスターパックを摺動案内する案内面36を設け、案内面36の前方にブリスターパックの端数を収納する端数収納部37を上部が開放された状態で形成している。又、後壁部34には、引き出したブリスターパックが棚板から落下しないように後壁部34の上面より上方に突出したストッパー部38が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−9663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の薬剤ケース30には、前壁部31に薬剤名が表示できるホルダーが備えられて、薬剤名を表示することはできるものの、その他の情報、例えばバラ状の薬剤があるかどうかとか、取り出す薬剤に間違いがないかどうかとか等、他の情報を表示する箇所を設けていなかった。そのため、薬剤ケース30のいずれかの壁部に、メモ程度に書込んだ付箋をクリップ等で留めることによって他の情報を表示することにしていた。そのため、使用中に、付箋が床に落下したり、薬剤ケース30内に入り込んだりして付箋が所定の薬剤ケース30から外れると、所定の薬剤ケース30に収納されている薬剤の各種の情報を伝達することができずに、間違った薬剤を取り出してしまう虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、薬剤ケースに収納された薬剤に関する情報を確実に伝達して、間違った薬剤を取り出す虞のないように形成された薬剤ケースを提供することを目的とする。そのため、本発明に係る薬剤ケースは、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1に係る発明は、前壁部、一対の側壁部、底壁部、後壁部を有して上部が開口された筐体状の薬剤ケースにおいて、後部に大収納部、前部に小収納部を形成するように仕切り板で仕切るように構成された薬剤ケースであって、前記前壁部と前記小収納部との間に、薬剤の情報を伝達する表示部が配設されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るものであって、前記表示部が、前記前壁部側に向かって下傾する傾斜壁部を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係るものであって、前記表示部が、前記傾斜壁部に隣接して下方に延設する凹部を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係るものであって、前記傾斜壁部の上面が、前記一対の側壁部の上面と略同一高さに形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項2又は3に係るものであって、前記一対の側壁部の上面前部が前方に向かって下傾して形成され、前記傾斜壁部の上面が、前記側壁部の上面より下方に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、前壁部と小収納部との間に、薬剤の情報を伝達する表示部を配設したことから、シールを貼り付ける表示壁として使用することができる。貼り付けられたシールに各種の注意事項等を記載することにより、この薬剤ケースに収納されている薬剤に関する様々な情報を伝達することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、表示部が、上方位置から見ても見やすいように前壁部側に向かって下傾する傾斜壁部を形成したことから、シールを貼り付ける表示壁として使用することができ、貼り付けられたシールに各種の注意事項等を記載することにより、薬剤名以外の情報を伝達することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、表示部が、傾斜壁部に隣接した位置に、下方に向かう凹部を形成しているから、カードを凹部内に挿入することによって薬剤の変動する情報、例えば、在庫があるかどうかの情報を伝達することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、前記傾斜壁部の上面を、前記一対の側壁部の上面と略同一高さに形成することによって、請求項1又は2の効果をクローズタイプの薬剤ケースに適用することができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、前記一対の側壁部の上面前部が前方に向かって下傾して形成され、前記傾斜壁部の上面が、前記側壁部の上面より下方に形成されていることによって、請求項1又は2の効果をオープンタイプの薬剤ケースに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】オープンタイプの薬剤ケースを示す斜視図である。
【図2】図1における側面断面図である。
【図3】図1における薬剤ケースの前部を示す拡大斜視図である。
【図4】図1における凹部を示す側面断面図である。
【図5】図1における傾斜壁部・凹部に表示シールを表示した状態を示す斜視図である。
【図6】クローズタイプの薬剤ケースを示す斜視図である。
【図7】図6における側面断面図である。
【図8】調剤台を示す斜視図である。
【図9】従来の薬剤ケースを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明による薬剤ケースの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態としてオープンタイプの薬剤ケース10Aを示す斜視図であり、図2はその側面断面図である。図1〜2に示すように、薬剤ケース10Aは、透明の樹脂材、例えばポリスチレンで形成され、前壁部11、一対の側壁部12、13、後壁部14、底壁部15を備えて上方が開口した筐体状に形成されている。底壁部15は一対の側壁部12、13の下面位置より僅かに高い位置に配置されている。一対の側壁部12、13、後壁部14及び後述のスライド案内部18とで囲まれた部位に大収納部としての薬剤収納部17を形成している。なお、以下の説明にあたっては、前壁部11側を薬剤ケース10Aの前方、後壁部14側を後方という。
【0019】
前壁部11の上面11aは一対の側壁部12、13より低位置に形成され、一対の側壁部12、13の上面12a、13aにおける前壁部11側は、低位置に形成された前壁部11の上面11a両端に向かって下方に傾斜して形成されている。
【0020】
一方、薬剤収納部17の前部において底壁部15から連接して上方に向かって湾曲したスライド案内部18が配置されている。前壁部11とスライド案内部18との間には、空間部を有して小収納部19が配置され、小収納部19の前方には、表示部20が形成されている。つまり、大収納部としての薬剤収納部17と、小収納部19とはスライド案内部18によって仕切られることになる。
【0021】
図2〜4に示すように、表示部20は、薬剤ケース10Aの幅方向に対して傾斜壁部21と凹部22とを隣接して配置している。傾斜壁部21は、後面が垂直面であって、前面が下傾して形成されている。凹部22は、前面側に立設する仕切り壁部23と傾斜壁部21の側面と、一方の側壁部13とスライド案内部18とで囲まれた空間部で形成されるとともに、凹部22の底面22aは傾斜壁部21の下部より下方の位置で、底壁部15より高い位置に形成されている。なお、仕切り壁部23の上面は傾斜壁部21の傾斜面の下端部辺りかそれより下方の位置から下方に向かって形成されている。
【0022】
前壁部11と傾斜壁部21および仕切り壁部23との間には、細長の僅かなスペース24が形成され、スペース24は、例えば、図5に示すように、薬剤名を記載したカード3を挿入したカードケース4を収納可能に形成されている。
【0023】
次に、上記のように形成された薬剤ケース10Aの使用状態について説明する。薬剤ケース10Aは、図8に示すような調剤台1に複数段に積み込まれてそれぞれ異なる薬剤が収納されている。それぞれの薬剤ケース10Aは引き出し可能に配置されて、それぞれの薬剤を取り出すことができる。それぞれの薬剤ケース10Aにおいては、薬剤収納部17に、例えば、錠剤を入れたブリスターパック8が収納されている。薬剤収納部17に収納されるブリスターパック8は、複数枚の板状に形成されたものであり、小収納部19には、1枚の板状のブリスターパックからミシン目に沿って切り取られたバラ状のブリスターパック8Aが収納されている。
【0024】
上記のように構成された薬剤ケース10Aにおいて、薬剤名や、収納された薬剤に関する注意事項、あるいはその他の情報は、スペース24を含めて表示部20によって表示される。例えば、図5に示すように、1個の薬剤ケース10Aに収納されている薬剤に関し、薬剤名を記載したカード3は、カードケース4に挿入されて、スペース24内に収納される。薬剤ケース10Aの前壁部11は透明な樹脂材で形成されているから、薬剤名を確認することができる。
【0025】
また、傾斜壁部21には、その薬剤に関する注意事項、例えば「規格注意」や「類似薬あり」等を記載したシールカード5が貼り付けられる。傾斜壁部21に「規格注意」の表示があれば、取り出す薬剤が、規格通りの薬剤かどうかの確認をすることができる。又、「類似薬あり」の表示があれば、間違い易い類似品を確認することによって必要な薬剤を注意して取り出すことができる。
【0026】
さらに、凹部22には、収納されている薬剤の個数の変化に対応した表示板を表示することができる。例えば、薬剤収納部17に収納されている薬剤の在庫のありなしを表示する。この場合、1枚のカード6に「在庫あり」を表示して凹部22内に挿入する。カード6の表示部を仕切り壁部23上に現れるようにしてカードケース7を凹部22内に挿入する。在庫がない場合には、カードケース7を逆様にして凹部22内に挿入すると、「在庫あり」の表示は、スペース24に挿入したカード3により凹部22内に隠れることから、在庫なしと判断されることになる。
【0027】
上述のように、実施形態の薬剤ケース10Aは、薬剤の入った板状のブリスターパック8が収納された薬剤収納部17やバラ状のブリスターパック8Aを収納する小収納部19の前方に傾斜壁部21及び凹部22を有する表示部20を形成したことから、収納されている薬剤に関して、薬剤名以外の情報を伝達することができて、必要な薬剤を確実に取り出すことができる。また、このオープンタイプの薬剤ケース10Aでは、薬剤を取りやすく、場合によっては、薬剤ケース10Aを引き出さずに薬剤を取り出すことも可能である。
【0028】
なお、シールカード5又はカード6に記されている内容は、上記に限定するものではなく、必要な情報を適宜に記すことができる。
【0029】
次に第2の実施形態としてクローズタイプの薬剤ケース10Bについて、図6〜7に基づいて説明する。なお、第1の実施形態における薬剤ケース10Aと同一の部位については、前述と同様の符号を付記するものとする。
【0030】
図6〜7に示すように、薬剤ケース10Bは、透明の樹脂材、例えばポリスチレンで形成され、前壁部11B、一対の側壁部12B、13B、後壁部14、底壁部15を備えて上方が開口した筐体状に形成されている。底壁部15Bは、底面に形成された水平部151と前方に形成された仕切り板としての垂直部152とを備え、一対の側壁部12B、13B、後壁部14及び底壁部15Bで囲まれた部位に大収納部としての薬剤収納部17Bを形成している。薬剤収納部17Bには、所定数の錠剤が入った板状のブリスターパックが収納される。
【0031】
前壁部11Bは、上部前壁部111Bと下部前壁部112Bが形成され、上部前壁部111Bは、一対の側壁部12B、13Bの上部において一対の側壁部12B、13Bから前方に突出した位置にあり、前壁部11Bの下面は、一対の側壁部12B、13Bの下面より上方の位置にある。また、前壁部11Bの上面11bは、一対の側壁部12B、13Bの上面に対して僅かに下方の位置にあり、一対の側壁部12B、13Bの前端部において、一対の側壁部12B、13Bから下傾した位置で前壁部11Bの両端部と連接している。
【0032】
下部前壁部112Bは、上部前壁部111Bの後方位置にあり、一対の側壁部12B、13Bの下部に連接している。
【0033】
底壁部15Bの水平部151は、一対の側壁部12B、13Bの下面位置より僅かに上方の位置に形成され、垂直部152は、下部前壁部112Bより僅かに後方の位置において、水平部151の前端部から立ち上がるように連接されている。
【0034】
一方、上部前壁部111Bの後方には、スペース24を挟んで表示部20が形成されている。表示部20は、第1の実施形態に対して上方の位置に配置されている違いがあるものの、第1の実施形態と同様の形状をした傾斜壁部21と凹部22とを備えている。また、薬剤ケース10Bの前方上部において、表示部20と底壁部15Bの垂直部152の上部との間に小収納部19Bが形成されている。つまり、薬剤収納部17Bと小収納部19Bとは、底壁部15Bの垂直部152で仕切られることになる。
【0035】
小収納部19Bの底部19aは傾斜壁部21の上端部から後方に向かって傾斜する傾斜面部191と、傾斜面部191に連接されるとともに下部前壁部112Bの上端面に連接して、底壁部15Bの垂直部152の上部付近前面側に連接する水平面部192とを有して形成されている。小収納部19Bには、1枚の板状のブリスターパックからミシン目に沿って切り取られたバラ状のブリスターパックが収納される。傾斜面部191は、バラ状のブリスターパックをスライドさせながら取り出せるように形成されている。
【0036】
凹部22は、前面側に立設する仕切り壁部23と傾斜壁部21の側面と、一方の側壁部13Bと底壁部15Bの垂直部152とで囲まれた空間部で形成されている。なお、仕切り壁部23の上面は傾斜壁部21の傾斜面の下面付近かそれより下方の位置から下方に向かって形成されている。
【0037】
上記のように形成された薬剤ケース10Bの使用状態は、第1の実施形態と同様に、薬剤名を記載したカード3はカードケース4に挿入されてスペース24内に収納される。また、傾斜壁部21には、注意事項を記載したシールカード5が貼り付けられ、凹部22には「在庫あり」が記載されたカード6を挿入したカードケース7が挿入される。
【0038】
なお、第2の実施形態においても、シールカード5又はカード6に記されている内容は、上記に限定するものではなく、必要な情報を適宜に記すことができる。
【符号の説明】
【0039】
10A、10B、薬剤ケース
11、前壁部
12、13、側壁部
14、後壁部
15、底壁部
17、薬剤収納部(大収納部)
19、小収納部
20、表示部
21、傾斜壁部
22、凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁部、一対の側壁部、底壁部、後壁部を有して上部が開口された筐体状の薬剤ケースにおいて、後部に大収納部、前部に小収納部を形成するように仕切り板で仕切るように構成された薬剤ケースであって、
前記前壁部と前記小収納部との間に、薬剤の情報を伝達する表示部が配設されていることを特徴とする薬剤ケース。
【請求項2】
前記表示部が、前記前壁部側に向かって下傾する傾斜壁部を備えていることを特徴とする請求項1記載の薬剤ケース。
【請求項3】
前記表示部が、前記傾斜壁部に隣接して下方に延設する凹部を備えていることを特徴とする請求項2記載の薬剤ケース。
【請求項4】
前記傾斜壁部の上面が、前記一対の側壁部の上面と略同一高さに形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の薬剤ケース。
【請求項5】
前記一対の側壁部の上面前部が前方に向かって下傾して形成され、前記傾斜壁部の上面が、前記側壁部の上面より下方に形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の薬剤ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−76810(P2012−76810A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224979(P2010−224979)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000213138)中日産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】