説明

薬剤供給装置

【課題】設置にかかる作業を容易化した薬剤供給装置を提供する。
【解決手段】筐体の前面上部内側に横長に収まり、投入された薬剤をホッパー内へ排出する薬剤フィーダ60を有し、薬剤フィーダ60が、それぞれ上方を開口し横並びに連なり一列をなした複数のセル61を有し、各セル61が、それぞれ薬剤を収容して列に沿って移動自在に構成され、移動方向の端部80L,80Rには、端部80L,80Rに至ったセル61内の薬剤をホッパー内に排出する排出部を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を袋や瓶などの容器に充填する機能を備えた薬剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種類別に薬剤を収納したタブレットケースを複数備え、入力された処方データに基づいて、タブレットケースから所定の種類の薬剤を取り出してホッパー内に集め、集めた薬剤をホッパーから袋や瓶などの容器に充填し、所望の種類の薬剤が充填された容器を自動で作成する薬剤供給装置が知られている。この種の薬剤供給装置において、タブレットケースにセットされていない薬剤を容器に充填する必要が生じた場合に、当該薬剤を薬剤供給装置に追加するための薬剤フィーダを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の薬剤供給装置では、薬剤フィーダを介して薬剤供給装置に薬剤を追加する場合、作業者は、薬剤供給装置の本体から、この本体の前面側に薬剤フィーダを引き出した後、薬剤フィーダの所定の箇所に薬剤を投入し、再び、薬剤フィーダを薬剤供給装置に収納する、という作業を行う。
【特許文献1】特開2004−203433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した薬剤供給装置では、薬剤フィーダに薬剤を投入する際に本体の前面側に薬剤フィーダを引き出す必要がある。このため、薬剤供給装置を設置する際は、薬剤フィーダを引き出すことを想定して、薬剤供給装置の前方に薬剤フィーダ分のスペースが確実に確保された設置場所を用意する必要があり、薬剤供給装置を設置する作業が困難化していた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、設置にかかる作業を容易化した薬剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、筐体内に、種類別に薬剤を収納した複数のタブレットケースを備え、タブレットケースから任意に取り出された薬剤を収容するホッパーと、このホッパー内に集めた薬剤を袋や瓶などの容器に充填する機能を備えた薬剤供給装置において、前記筐体の前面上部内側に横長に収まり、投入された薬剤を前記ホッパー内へ排出する薬剤フィーダを有し、前記薬剤フィーダが、それぞれ上方を開口し横並びにつらなり一列をなした複数のセルを有し、各セルが、それぞれ薬剤を収容して前記列に沿って移動自在に構成され、移動方向の端部には、該端部に至ったセル内の薬剤を前記ホッパー内に排出する排出部を備えたことを特徴とする。
【0005】
ここで、上記発明の薬剤供給装置において、前記複数のセルが、前記列に沿った一方向または他方向に移動可能に構成されて、各移動方向の各端部には、該端部に至ったセル内の薬剤を前記ホッパー内に排出する排出部を備えるようにしてもよい。
【0006】
また、上記発明の薬剤供給装置において、前記複数のセルが、一対の軸間に巻回されて水平移動する無端ベルトに取り付けられ、該無端ベルトが一方向または他方向に択一的に移動し、前記端部に至ったベルト上面におけるセルが前記軸位置で反転し、ベルト下面に移動するときに、該セル内の薬剤が落下して、前記排出部を経て前記ホッパー内に排出されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薬剤供給装置の設置場所に、薬剤フィーダ分のスペースを確保する必要がなく、設置にかかる作業が容易化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本実施形態にかかる薬剤供給装置1の斜視図であり、図2は、前面パネル2を取外した状態における薬剤供給装置1の正面図であり、図3は、正面右側の側面パネル3を取外した状態における薬剤供給装置1の側面図である。
薬剤供給装置1は、病院や調剤薬局などに設置され、所定の種類、数量の薬剤が充填された分包を一包ずつ作成し、供給する装置である。薬剤供給装置1には、パーソナルコンピュータ(不図示)が接続されており、薬剤供給装置1によって作成される分包に充填される薬剤の種類、数量は、作業者がこのパーソナルコンピュータに入力する。
【0009】
図1〜図3に示すように、薬剤供給装置1は、略直方体形状の筐体5を備え、この筐体5は、前面パネル2、側面パネル3、背面パネル6(図3)、上面パネル7、及び、下面パネル8を備えている。前面パネル2には、図1に示すように、作業者が薬剤供給装置1が作成した分包を取り出すための取出口10が設けられている。また、前面パネル2の上部には、コントロールパネル11が設けられている。このコントロールパネル11は、液晶表示パネルからなる表示部12と、複数の操作スイッチを備える入力部13とを備えており、作業者は、表示部12に表示された各種情報を参照するとともに、入力部13の操作スイッチを操作して薬剤供給装置1に対し各種指示を行う。また、前面パネル2の下部は、開放可能であり、開放した状態で後述する包装機21を引き出し可能な構成となっている。
図1に示すように、前面パネル2の上部には、薬剤フィーダ60が設けられている。この薬剤フィーダ60については、後述する。
【0010】
筐体5の内部において、上部には、薬剤供給機構部20が設けられている。この薬剤供給機構部20は、制御部の制御の下、分包に充填する所定の種類、数量の薬剤を排出するものである。なお、制御部は、図示は省略するが、薬剤供給装置1の各部を中枢的に制御するものであり、制御回路を備えている。
薬剤供給機構部20は、図2及び図3に示すように、薬剤を種類別に収納したタブレットケース22を複数収納するタブレットケース収納部23を備えている。タブレットケース22は、上下方向に細長い直方体の形状をしており、タブレットケース収納部23において直立した状態で前後左右に並んで配置される。
【0011】
タブレットケース22は、上端が開口しており、この開口に連通して、薬剤を収納する薬剤収納部24が形成されている。開口には、開閉自在に蓋体25が設けられている。薬剤収納部24に薬剤を収納する際は、蓋体25を開いて開口を露出し、この開口を介して薬剤収納部24に薬剤を収納する。
薬剤収納部24の下方には、整列盤26が設けられており、この整列盤26の下方には、駆動部27が設けられている。薬剤収納部24に収納された薬剤は、整列盤26において整列し、駆動部27に向けられた揺動アーム(不図示)の揺動運動に従って、1錠ずつタブレットケース22から下方へ向かって落下する構成となっている。また、駆動部27には、整列盤26から落下する薬剤を検出する薬剤検出センサ(不図示)が設けられており、薬剤検出センサの検出値は、薬剤の数となって制御部に出力される。
【0012】
薬剤供給機構部20の下方には、タブレットケース22から落下した薬剤をホッパー29に導入する薬剤導入部30が設けられている。この薬剤導入部30には、所定のタブレットケース22から落下した薬剤をホッパー29へ搬送するベルトコンベア31が設けられている。このベルトコンベア31は、図2の矢印Y1に示す方向に回転し、ベルトコンベア31の上方に位置するタブレットケース22から落下した薬剤を、コンベア端部31Aまで搬送し、このコンベア端部31Aからホッパー29に向けて薬剤を落下させて、ホッパー29に薬剤を導入する(図2の矢印Y2参照)。また、薬剤導入部30には、傾斜板32が設けられている。この傾斜板32は、左方に向かうに従って下方に傾斜しており、傾斜板32の上方に位置するタブレットケース22から落下した薬剤をホッパー29に導入する(図2の矢印Y3参照)。これらベルトコンベア31及び傾斜板32によってタブレットケース22から落下した薬剤は、確実にホッパー29に導入される構成となっている。
【0013】
本実施形態では、ホッパー29が正面中央右寄りに配置されている。従って、ホッパー29が正面中央に設けられた場合と比較して、傾斜板32が急勾配となり、この傾斜板32の上方に位置するタブレットケース22から落下する薬剤を、ベルトコンベアを用いることなく、確実にホッパー29へ導入することができる。このため、本実施形態では、ベルトコンベア31が一台である。
【0014】
薬剤導入部30の下方には、ホッパー29及び包装機21などを収納する包装機収納部35が設けられている。
ホッパー29には、上述したように、タブレットケース22から落下した薬剤が導入される。ホッパー29は、上面が広く開口するとともに、下方へ向かうに従って縮径しており、下端に下端開口29Aが形成されている。この下端開口29Aには、包装紙に充填するノズル36が連結部37を介して連結されており、薬剤導入部30からホッパー29に導入された薬剤は、下端開口29Aを介してノズル36に排出され、ノズル36によって包装紙に充填される。
【0015】
包装機21は、制御部の制御の下、包装紙に所定の文字や画像を印字し、包装紙に薬剤を充填し、一包毎に区画し、一包毎に切断して、所望の種類、数量の薬剤が充填された分包を連続して作成し、取出口10まで搬送する装置である。
図2に示すように、包装機21は、熱溶着可能な包装紙(不図示)を巻きまわすためのロール40と、包装紙に文字や図形などを印刷するプリンタ41と、上述したノズル36と、シリコンゴムからなる熱シールヘッド42と、ロール40から引き出された包装紙を搬送するローラ43と、包装紙を切断するカッター44と、分包を取出口まで搬送するコンベア45と、を備えている。なお、49は、コンベア45を駆動するモータである。
【0016】
ここで、包装機21の基本的な動作について説明すると、ロール40に巻回された包装紙は上面が開き、下端で折られた断面略V字状を呈しており、ローラ43等によってロール40から斜め向かって右斜め下方に引き出された後、プリンタ41によりその表面に印字が成される。次に、ノズル36から排出される薬剤が包装紙内に充填され、熱シールヘッド42による熱溶着で、包装紙は一包毎に区画される。区画されて分包化された包装紙はカッター44で切断され、これにより、所望の種類、数量の薬剤が充填された分包が一包毎に作成される。作成された分包は、コンベア45で取出口10に搬送される。
包装機21は、引出レール46を介して前方へ引き出し自在に設けられた台座47に載置されている。従って、包装機21を前方へ引き出した状態でメンテナンスなどを行うことができる。なお、図3において、48は、包装機21と下部構造体7B間に着脱自在にコネクタ接続された包装機21用のハーネスであり、包装機21の引出量を充分に許容できる長さを有している。
【0017】
次いで、薬剤フィーダ60について説明する。
図4(A)は、薬剤フィーダ60の斜視図であり、図4(B)は、薬剤フィーダ60が備えるセル61の斜視図である。
薬剤フィーダ60は、分包に充填すべき薬剤であって、タブレットケース22にセットされていない薬剤(以下、「不足薬剤」という)がある場合に、当該薬剤を薬剤供給装置1に追加するためのものである。より詳細には、薬剤フィーダ60は、この薬剤フィーダ60に投入された薬剤を所定のタイミングでホッパー29に導入するためのものである。
【0018】
図4に示すように、薬剤フィーダ60は、正面左方に設けられた軸62と、正面右方に設けられた従動プーリ63との間に巻き回され、この従動プーリ63の動きに従って、水平方向に移動する無端ベルト65を備えている。従動プーリ63には、駆動モータ66の出力軸に連結された駆動プーリ67がベルト68を介して接続されており、駆動モータ66の駆動に応じて、従動プーリ63が回転し、この従動プーリ63の動きに従って、無端ベルト65が移動する。駆動モータ66は、正逆回転可能に構成されており、駆動モータ66の正逆回転に応じて、無端ベルト65は、図4の矢印Y4方向、または、矢印Y5方向へ移動する。本実施形態では、作業者は、無端ベルト65を矢印Y4方向へ移動させるか、または、矢印Y5方向へ移動させるかを、入力部13を操作して選択することができる。
【0019】
無端ベルト65の表面には、複数のセル61が設けられている。このセル61は、図4(B)に示すように、上面に開口70が形成された略箱状の形状をしており、内部に薬剤が収容される薬剤収容部71が形成されるとともに、前面72、背面73、側面74、及び、底面75を備えている。なお、図4(B)では、説明の便宜のため、図中に矢印で示すように前後、左右、上下が規定されているものとする。開口70の前後方向の一辺の長さT1は、底面75の前後方向の一辺の長さT2よりも長く形成されており、セル61は、上方へ向かって広く開口した形状となっており、開口70を介して薬剤収容部71に薬剤を収容しやすくなっている。また、前面72は、後方に向かうに従って下方に傾斜しており、この傾斜によって薬剤収容部71に薬剤を収容しやすくなっている。各セル61は、セル61の底面75と無端ベルト65の表面を連結する連結部材76を介して無端ベルト65の表面に取り付けられている。
【0020】
図4(A)に示すように、セル61は、無端ベルト65の表面に横並びに連動して一列に設けられている。具体的には、各セル61は、それぞれのセル61の側面が向かい合う形で横並びに整列して無端ベルト65の表面の全域に亘って取り付けられている。そして、軸62と従動プーリ63との間で巻き回されて左右方向に延びる列が上下方向に2つ形成された無端ベルト65の列のうち、上方に形成された上列65Aの上面に位置するセル61は、上方に向かって開口した状態となる。これら無端ベルト65の上列65Aに位置して上方に開口する複数のセル61によって、作業者が不足薬剤を収納するための不足薬剤投入部78が形成される。作業者は、不足薬剤投入部78の所定のセル61に不足薬剤を投入することにより、薬剤供給装置1に不足薬剤を追加する。
【0021】
この薬剤フィーダ60は、図1に示すように、薬剤供給装置1の前面パネル2の上部に設けられている。具体的には、図1に示すように、前面パネル2の上端部であって、上面パネル7より一段下がった位置には、左右に細長い水平面状の不足薬剤投入面80が形成されている。この不足薬剤投入面80には、前後方向の長さがT3、左右方向の長さがT4の切り欠き部79が形成されている。そして、この切り欠き部79に対応する位置に上述した不足薬剤投入部78が位置した状態で、薬剤フィーダ60が設けられている。切り欠き部79の前後方向の長さT3は、セル61の開口70の前後方向の長さT1と略同一に形成され、切り欠き部79の左右方向の長さT4は、不足薬剤投入部78の左右方向の長さT5(図4(A)参照)と略同一に形成されており、図1に示すように、切り欠き部79から不足薬剤投入部78のみが露出する構成となっている。
【0022】
作業者が不足薬剤を薬剤供給装置1に投入する際は、不足薬剤投入面80の切り欠き部79から露出する不足薬剤投入部78の所定のセル61に所定の種類、数量の薬剤を投入する。ここで、本実施形態に係る薬剤供給装置1では、薬剤フィーダ60が筐体5の中に納まっており、薬剤フィーダ60を引き出すことなく、薬剤フィーダ60に薬剤を投入することができる。従って、薬剤供給装置1を設置する際に、薬剤フィーダ60を引き出すことを想定して、薬剤フィーダ分のスペースを確保する必要がなくなり、設置にかかる作業を容易化することができる。特に、本実施形態では、不足薬剤投入部78において、多数のセル61が横並びに並んだ状態となっており、多数の分包に係る不足薬剤を薬剤フィーダ60に投入することができる構成となっている。
【0023】
薬剤フィーダ60は、この薬剤フィーダ60の不足薬剤投入部78の所定のセル61に投入された不足薬剤を所定のタイミングでホッパー29に導入する。ここで、不足薬剤がホッパー29に導入されるまでの基本的な動作について図4(A)を用いて説明する。なお、無端ベルト65は、矢印Y4方向に移動するものとする。
薬剤供給装置1による分包の作成が開始されると、無端ベルト65は、1つの分包の作成につき、矢印Y4方向に1つのセル分だけ移動する。この無端ベルト65の移動に伴い、無端ベルト65の従動プーリ63側の端部に形成された端部80Rにおいて、位置A1に位置するセル61は、位置A2へ移動する。その際、位置A1において上方へ向かっていた開口70が、位置A2において下方へ向かうこととなり、その過程において、セル61の薬剤収容部71に収容されていた不足薬剤が、端部80Rに形成された排出部81Rに排出される。
【0024】
図3に示すように、排出部81Rとホッパー29との間には、排出部81Rに排出された不足薬剤をホッパー29に導くための排出シュータ82Rが設けられている。排出部81Rに排出された不足薬剤は、図3の矢印Y6に示すように、排出シュータ82Rを介してホッパー29内に導入される。以上のようにして、薬剤フィーダ60に投入された不足薬剤は、ホッパー29に導入されることとなる。
なお、無端ベルト65が矢印Y5方向に移動する場合は、軸62位置に形成された排出部81Lにおいて不足薬剤が排出され、この排出部81Lに連結して設けられた排出シュータ(不図示)を介して不足薬剤がホッパー29に導入される。
【0025】
次いで、分包を作成する際の薬剤供給装置1の動作について説明する。
まず、医師などの処方箋に基づいて、作業者は、薬剤供給装置1に接続されたパーソナルコンピュータに、分包に充填すべき薬剤の種類、数量を入力する。パーソナルコンピュータは、入力されたデータに基づいて、充填すべき薬剤に不足薬剤が存在するか否かを判別する。そして、不足薬剤が存在する場合、パーソナルコンピュータは、薬剤フィーダ60の不足薬剤投入部78のどのセル61に、どの種類の薬剤をいくつ投入すべきかを作業者に報知する。具体的には、最初に排出部81R,81Lに薬剤を排出するセル61を1番目のセル61とし、次に薬剤を排出するセル61を2番目のセル61とする、といった形で、不足薬剤投入部78のセル61を薬剤が排出される順に順番付ける。そして、パーソナルコンピュータは、作業者に対し、何番目のセル61にどの種類の薬剤をいくつ収容すべきかを報知する。なお、当該報知は、ディスプレイへの表示や、紙への印刷によって行われる。
【0026】
図5は、作業者が薬剤フィーダ60に薬剤を投入する際の動作を説明するための図である。
作業者が、薬剤フィーダ60に薬剤を投入する場合、一般に、利き腕の手で不足薬剤を掴み、所定のセル61に投入する。例えば、右利きの作業者は、一般に、右手で不足薬剤を掴んでセル61に投入する。そして、利き腕が位置する側のセル61から順に不足薬剤を投入するほうが、作業者にとって、スムーズに不足薬剤を投入することができる。具体的には、右手で不足薬剤を投入する場合は、図5(A)の矢印Y7に示すように、正面右側に位置するセル61から順に不足薬剤を投入するほうが、スムーズに不足薬剤を投入することができ、また、左手で不足薬剤を投入する場合は、図5(B)の矢印Y8に示すように、正面左側に位置するセル61から順に不足薬剤を投入するほうが、スムーズに不足薬剤を投入することができる。
【0027】
そして、本実施形態では、作業者は、自身の利き腕に応じて、投入しやすい側のセル61から順に不足薬剤を投入する。具体的には、右利きの作業者は、不足薬剤投入部78の右端のセル61を1番目のセル61として、パーソナルコンピュータによる報知に基づいて、セル61に薬剤を投入していき、左利きの作業者は、不足薬剤投入部78の左端のセル61を1番目のセル61として、パーソナルコンピュータによる報知に基づいて、セル61に薬剤を投入していく。
【0028】
不足薬剤投入部78の所定のセル61に薬剤を投入した後、作業者は、入力部13によって、無端ベルト65を図4(A)矢印Y4に示す方向、及び、矢印Y5に示す方向のうちどちらの方向に移動するかを入力する。具体的には、図5(A)に示すように、右手によって正面右側のセル61から順に不足薬剤を投入した場合は、図4(A)の矢印Y4方向に無端ベルト65が移動するよう入力する。これにより、正面右端のセル61から順に不足薬剤が排出部81Rに排出されることとなる。一方、図5(B)に示すように、左手によって正面左側のセル61から順に不足薬剤を投入した場合は、矢印Y5方向に無端ベルト65が移動するよう入力する。これにより、正面左端のセル61から順に不足薬剤が排出部81Lに排出されることとなる。
【0029】
上記作業の終了後、薬剤供給装置1による分包の作成が開始される。ここで、1つの分包の作成の動作について説明すると、制御部は、パーソナルコンピュータに入力されたデータに基づいて、当該分包に充填すべき薬剤が収納されているタブレットケース22を特定する。そして、制御部は、駆動部27を制御して、タブレットケース22から薬剤を排出する。このとき、剤検出センサは、タブレットケース22から排出される薬剤を検出するとともに、検出値を制御部に出力する。制御部は、剤検出センサから入力された検出値に基づいて、タブレットケース22から排出された薬剤の数量をカウントし、所定の数量が排出された段階で、駆動部27を制御して、薬剤の排出を停止する。タブレットケース22から排出された薬剤は、薬剤導入部30によってホッパー29内に導入される。
【0030】
同時に、制御部の制御の下、駆動モータ66が駆動して、無端ベルト65がセル61の1個分だけ移動し、端部80L,80Rに位置するセル61に収容されている薬剤が排出部81L,81Rに排出される。具体的には、図4(A)の矢印Y4方向に無端ベルト65が移動する場合は、位置A1から位置A2にセル61が移動し、このセル61に投入されていた薬剤が排出部81Rに排出される。一方、図4(A)の矢印Y5方向に無端ベルト65が移動する場合には、位置A3から位置A4にセル61が移動し、このセル61に投入されていた薬剤が排出部81Lに排出される。排出部81R,81Lに排出された不足薬剤は、上述したように排出シュータ82を介してホッパー29内に導入される。
こうして、タブレットケース22、及び、薬剤フィーダ60からホッパー29内に薬剤が導入される。ホッパー29内に導入された薬剤は、ノズル36を介して包装紙に充填される。薬剤が充填された包装紙は、上述したように、熱シールヘッド42によって区画され、カッター44で切断される。これにより、所望の種類、数量の薬剤が充填された分包が作成される。薬剤供給装置1は、パーソナルコンピュータに入力されたデータに基づいて、上述した分包の作成を連続して行う。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態では、筐体5の前面上部内側に、薬剤フィーダ60が設けられている。そして、薬剤フィーダ60は、上方を開口し横並びに連なり一列をなした複数のセル61を有しており、各セル61は、無端ベルト65の移動に伴って移動自在に構成されており、無端ベルト65の移動方向における端部80L,80Rにおいて、セル61に収容された薬剤が排出部81L,81Rに排出され、ホッパー29内に導入される。
この構成により、作業者は、薬剤フィーダ60を筐体5に納めた状態のまま、この薬剤フィーダ60を介して薬剤を薬剤供給装置1に追加することができる。従って、薬剤供給装置1を設置する際に、薬剤フィーダ60を引き出すことを想定して、薬剤フィーダ分のスペースを確保する必要がなくなり、設置にかかる作業を容易化することができる。特に、本実施形態では、不足薬剤投入部78において、多数のセル61が横並びに並んだ状態となっており、多数の分包に係る不足薬剤を薬剤フィーダ60に投入することができる構成となっている。
【0032】
また、本実施形態では、作業者は、無端ベルト65の移動方向を図4(A)の矢印Y4方向、及び、矢印Y5方向のいずれかを選択することができる。つまり、セル61が一方向または他方向に移動自在に構成されている。そして不足薬剤を不足薬剤投入部78に投入する際、作業者は、自身の利き腕に応じて、不足薬剤投入部78の右端のセル61、もしくは、左端のセル61から順番に不足薬剤を投入した後、投入した順番に応じて無端ベルト65の移動方向を選択する。この場合、作業者は、自身の利き腕にとって、最もスムーズに不足薬剤を投入できることとなり、作業者の利便性の向上を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態では、セル61が一対の軸62、従動プーリ63間に巻回されて水平移動する無端ベルト65に取り付けられ、無端ベルト65が一方向または他方向に択一的に移動し、端部80L,80Rに至ったベルト上面におけるセル61が、軸62、または、従動プーリ63位置で反転し、ベルト下面に移動するときに、セル61の不足薬剤が落下して、排出部81L,81Rを経てホッパー29内に排出される。この構成のため、薬剤フィーダ60に投入された不足薬剤は、排出部81L,81Rを介して確実にホッパー29内に導入される。
【0034】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】薬剤供給装置の斜視図である。
【図2】薬剤供給装置の正面図である。
【図3】薬剤供給装置の側面図である。
【図4】(A)は、薬剤フィーダの斜視図であり、(B)は、セルの斜視図である。
【図5】(A)は、右手を用いて薬剤フィーダに不足薬剤を投入する際の作業について説明するための図であり、(B)は、左手を用いて薬剤フィーダに不足薬剤を投入する際の作業について説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
1 薬剤供給装置
5 筐体
22 タブレットケース
23 タブレットケース収納部
29 ホッパー
60 薬剤フィーダ
61 セル
62 軸
63 従動プーリ(軸)
65 無端ベルト
80L,80R 端部
81L,81R 排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、種類別に薬剤を収納した複数のタブレットケースを備え、タブレットケースから任意に取り出された薬剤を収容するホッパーと、このホッパー内に集めた薬剤を袋や瓶などの容器に充填する機能を備えた薬剤供給装置において、
前記筐体の前面上部内側に横長に収まり、投入された薬剤を前記ホッパー内へ排出する薬剤フィーダを有し、
前記薬剤フィーダが、それぞれ上方を開口し横並びにつらなり一列をなした複数のセルを有し、各セルが、それぞれ薬剤を収容して前記列に沿って移動自在に構成され、移動方向の端部には、該端部に至ったセル内の薬剤を前記ホッパー内に排出する排出部を備えたことを特徴とする薬剤供給装置。
【請求項2】
前記複数のセルが、前記列に沿った一方向または他方向に移動可能に構成されて、各移動方向の各端部には、該端部に至ったセル内の薬剤を前記ホッパー内に排出する排出部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項3】
前記複数のセルが、一対の軸間に巻回されて水平移動する無端ベルトに取り付けられ、該無端ベルトが一方向または他方向に択一的に移動し、前記端部に至ったベルト上面におけるセルが前記軸位置で反転し、ベルト下面に移動するときに、該セル内の薬剤が落下して、前記排出部を経て前記ホッパー内に排出されることを特徴とする請求項2に記載の薬剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−83496(P2010−83496A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252493(P2008−252493)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】