説明

薬剤噴霧装置および薬剤噴霧方法

【課題】噴霧する薬剤液の固形成分の析出による二流体ノズルの詰まりを防止すること。
【解決手段】薬剤液Dを送る液配管1と空気Abを送る空気配管2とに接続される二流体ノズル3を有した薬剤噴霧装置104において、液配管1に接続されて当該液配管1に薬剤液Dを供給する薬剤液供給手段5と、液配管1に接続されて当該液配管1に水Wを供給する水供給手段6と、薬剤液供給手段5から液配管1への薬剤液Dの流通と水供給手段6から液配管1への水Wの流通とを選択的に切り換える液切換手段7と、薬剤液供給手段5における薬剤液Dの供給圧力を検出する圧力計5dと、液切換手段7を薬剤液供給手段5側に切り換えると共に薬剤液供給手段5を駆動した状態で、圧力計5dで検出された圧力を入力し、入力した圧力が所定の閾値を超えた場合、液切換手段7を水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止する制御手段19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤噴霧装置に関し、特に、排ガス処理システムにおいて排ガスに含まれるNOxおよび水銀を除去するための薬剤を噴霧する薬剤噴霧装置および薬剤噴霧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、石炭焚き排ガスや重質油燃焼排ガスなどの排ガスを処理する排ガス処理システムにおいて、排ガスに対してアルカリ吸収液(塩化アンモニウム水溶液など)の薬剤により排ガスに含まれる水銀(金属水銀または水銀化合物)を除去する排ガス処理装置が開示されている。
【0003】
また、従来、例えば、特許文献2には、液体噴射口から噴射される液体を気流によって微粒化して微細霧を形成する二流体ノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−230137号公報
【特許文献2】特開2007−144396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の排ガス処理装置において、特許文献2に示すような二流体ノズルを適用し、薬剤液を微細霧として噴霧する薬剤噴霧装置を備えることが好ましい。しかし、排ガス処理装置では、300℃〜350℃の高温の排ガスに対して薬剤を噴霧することになるため、当該温度環境下に置かれたノズル内での薬剤液の沸騰により薬剤(例えば、塩化アンモニウム水溶液)の固形成分がノズル内に析出することが問題となる。具体的には、析出した固形成分により二流体ノズルが詰まるおそれがある。しかも、析出した固形成分に排ガスの煤塵が付着すると、さらに二流体ノズルが詰まるおそれがある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、噴霧する薬剤液の固形成分の析出による二流体ノズルの詰まりを防止することのできる薬剤噴霧装置および薬剤噴霧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の薬剤噴霧装置は、薬剤液を送る液配管と空気を送る空気配管とに接続されると共に、煙道内に配置され、前記液配管から供給された薬剤液を前記空気配管から供給された空気の気流によって微粒化することで微細霧を形成し前記煙道に噴霧する二流体ノズルを有した薬剤噴霧装置において、前記液配管に接続されて当該液配管に薬剤液を供給する薬剤液供給手段と、前記液配管に接続されて当該液配管に水を供給する水供給手段と、前記薬剤液供給手段から前記液配管への薬剤液の流通と前記水供給手段から前記液配管への水の流通とを選択的に切り換える液切換手段と、前記薬剤液供給手段における薬剤液の供給圧力を検出する圧力計と、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段を駆動した状態で、前記圧力計で検出された圧力を入力し、入力した圧力が所定の閾値を超えた場合、前記液切換手段を前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この薬剤噴霧装置によれば、高温(例えば、300℃〜350℃)の排ガスにより薬剤液が蒸発して固形成分が析出し始めても、薬剤液の供給量が低下したことを検出することで、液配管および二流体ノズルに水を供給する。この結果、噴霧する薬剤液の固形成分の析出による二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0009】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する空気供給手段と、前記空気配管での空気の流通を開閉する空気開閉手段と、前記液配管での薬剤液または水の流通を開閉する液開閉手段と、を備え、前記制御手段は、前記薬剤液の供給を開始する場合、前記空気供給手段を駆動すると共に前記空気開閉手段を開状態とし、その後、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側に切り換え、かつ前記薬剤液供給手段を駆動すると共に前記液開閉手段を開状態とすることを特徴とする。
【0010】
この薬剤噴霧装置によれば、薬剤液の供給を開始するとき、二流体ノズルから空気を先に噴射させ、その後に薬剤液を噴射させる。この結果、先に噴射された空気により二流体ノズル内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液の蒸発による固形成分の析出を防止でき、二流体ノズル内部の詰まりを防止できる。また、先に噴射された空気により、後に噴射される薬剤液が微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0011】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記制御手段は、前記薬剤液の供給を停止する場合、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側から前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止し、その後、前記液開閉手段を閉状態とし、その後、前記空気開閉手段を閉状態とすると共に前記空気供給手段の駆動を停止することを特徴とする。
【0012】
この薬剤噴霧装置によれば、薬剤液の供給を停止するとき、二流体ノズルからの薬剤液の噴射を止めて水を噴射させ、その後、二流体ノズルからの水の噴射を先に止めた後に空気の噴射を止める。この結果、二流体ノズルを水で洗浄し、かつ洗浄後には空気で水分を飛ばして、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0013】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記空気配管での空気の流通量を調整する空気量調整手段と、前記液配管での薬剤液の流通量を調整する液量調整手段と、を備え、前記制御手段は、前記煙道に流通する排ガスの流量増加に伴い、空気量調整手段により空気の流通量を増加させた後、液量調整手段により薬剤液の流通量を増加させることを特徴とする。
【0014】
この薬剤噴霧装置によれば、排ガスの流量増加に伴い、薬剤液の噴霧量を増加させることができる。しかも、この薬剤噴霧装置によれば、薬剤液の噴霧量を増加させる場合、空気の流通量を増加させてから、薬剤液の流通量を増加させる。このため、先に流通量が増加された空気により、後に流通量が増加された薬剤液が微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0015】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記制御手段は、前記排ガスの流量減少に伴い、液量調整手段により薬剤液の流通量を減少させた後、空気量調整手段により空気の流通量を減少させることを特徴とする。
【0016】
この薬剤噴霧装置によれば、排ガスの流量減少に伴い、薬剤液の噴霧量を減少させることができる。しかも、この薬剤噴霧装置によれば、薬剤液の噴霧量を減少させる場合、薬剤液の流通量を減少させてから、空気の流通量を減少させる。このため、先に流通量が減少された薬剤液が、流通量が減少される前の空気により微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0017】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する空気供給手段と、前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する予備空気供給手段と、前記空気供給手段から前記空気配管への空気の流通と前記予備空気供給手段から前記空気配管への空気の流通とを選択的に切り換える空気切換手段と、前記空気配管における空気の流量を検出する空気流量計と、を備え、前記制御手段は、前記空気切換手段を空気供給手段側に切り換えている状態で、前記空気流量計で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合、前記空気切換手段を前記予備空気供給手段側に切り換えることを特徴とする。
【0018】
この薬剤噴霧装置によれば、空気供給手段による空気の送り量が減少した場合、予備空気供給手段に切り換えるため、予備空気供給手段の空気により、排ガス熱による二流体ノズル内部の薬剤液の蒸発を防止することから、析出した固形成分による二流体ノズル内部の詰まりを防止できる。また、予備空気供給手段の空気により薬剤液が微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0019】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する空気供給手段と、前記空気配管での空気の流通を開閉する空気開閉手段と、前記液配管での薬剤液または水の流通を開閉する液開閉手段と、前記空気配管における空気の流量を検出する空気流量計と、を備え、前記制御手段は、前記液開閉手段および前記空気開閉手段を開状態とし、前記空気流量計で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側から前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止し、その後、前記液開閉手段を閉状態とした後、前記空気開閉手段を閉状態とすると共に前記空気供給手段の駆動を停止することを特徴とする。
【0020】
この薬剤噴霧装置によれば、空気供給手段による空気の送り量が減少した場合、煙道への薬剤液の供給を停止し、水を供給させた後に空気を停止する。この結果、二流体ノズルを水で洗浄し、かつ洗浄後には空気で水分を飛ばすので、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させず、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0021】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記液配管と前記空気配管とに接続されると共に、煙道内に配置され、前記液配管から供給された薬剤液を前記空気配管から供給された空気の気流によって微粒化することで微細霧を形成し前記煙道に噴霧する予備二流体ノズルと、前記二流体ノズルの前記液配管への接続と前記予備二流体ノズルの前記液配管への接続とを選択的に切り換えるノズル液切換手段と、前記二流体ノズルの前記空気配管への接続と前記予備二流体ノズルの前記空気配管への接続とを選択的に切り換えるノズル空気切換手段と、を備えることを特徴とする。
【0022】
この薬剤噴霧装置によれば、二流体ノズルの点検をする場合や二流体ノズルが万一詰まった場合でも、予備二流体ノズルを用いることで、薬剤液の噴霧を継続して行うことができ、排ガス処理システムの稼動に影響を与える事態を防止できる。
【0023】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記制御手段は、前記二流体ノズルと前記予備二流体ノズルとを切り換える場合、前記液切換手段を前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止し、その後、前記ノズル空気切換手段を切り換えた後に前記ノズル液切換手段を切り換え、その後、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段を駆動することを特徴とする。
【0024】
この薬剤噴霧装置によれば、二流体ノズルを予備二流体ノズルに切り換える場合、二流体ノズルからの薬剤液の噴射を止めて水を噴射させ、その後、予備二流体ノズルには、空気を先に切り換えてから、水に切り換えつつ薬剤液に切り換える。この結果、切り換えられた予備二流体ノズルに対し、先に噴射された空気により予備二流体ノズル内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液の蒸発による固形成分の析出を防止でき、予備二流体ノズル内部の詰まりを防止できる。また、先に噴射されている空気により、後に噴射される薬剤液が微粒化されることから、噴射口に薬剤液を残留させないので、噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、詰まりを防止できる。しかも、薬剤液が供給される前に水が供給されるので、使用前に予備二流体ノズルを洗浄できる。
【0025】
また、本発明の薬剤噴霧装置では、前記煙道には、その内部空間に連通する一方で前記内部空間から隔離される外部空間をなす外部空間形成部を備え、少なくとも前記二流体ノズルが前記外部空間形成部に配置されていることを特徴とする。
【0026】
この薬剤噴霧装置によれば、煙道の内部空間を開放させずに排ガス処理システムの稼動中であっても二流体ノズルや予備二流体ノズルの取り付けおよび取り外しを行うことができるので、排ガス処理システムの稼動に影響を与える事態を防止できる。
【0027】
上述の目的を達成するために、本発明の薬剤噴霧方法は、二流体ノズルにより薬剤液を空気の気流によって微粒化することで微細霧を形成し煙道に噴霧する薬剤噴霧方法において、薬剤液を噴霧させた状態で、前記二流体ノズルに供給する薬剤液の供給圧力が所定の閾値を超えた場合、前記薬剤液を水に切り換えて噴射させることを特徴とする。
【0028】
この薬剤噴霧方法によれば、高温(例えば、300℃〜350℃)の排ガスにより薬剤液が蒸発して固形成分が析出し始めても、薬剤液を水に切り換えて二流体ノズルに水を供給することで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0029】
また、本発明の薬剤噴霧方法では、前記二流体ノズルに薬剤液の供給を開始する場合、空気を供給した後に、薬剤液を供給することを特徴とする。
【0030】
この薬剤噴霧方法によれば、先に噴射された空気により二流体ノズル内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液の蒸発による固形成分の析出を防止でき、二流体ノズル内部の詰まりを防止できる。また、先に噴射された空気により、後に噴射される薬剤液が微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0031】
また、本発明の薬剤噴霧方法では、前記二流体ノズルへの薬剤液の供給を停止する場合、薬剤液を水に切り換え、その後、水の供給を止めた後、空気の供給を止めることを特徴とする。
【0032】
この薬剤噴霧方法によれば、二流体ノズルを水で洗浄し、かつ洗浄後には空気で水分を飛ばして、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0033】
また、本発明の薬剤噴霧方法では、前記煙道に流通する排ガスの流量増加に伴い、空気の流通量を増加させた後、薬剤液の流通量を増加させることを特徴とする。
【0034】
この薬剤噴霧方法によれば、先に流通量が増加された空気により、後に流通量が増加された薬剤液が微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0035】
また、本発明の薬剤噴霧方法では、前記煙道に流通する排ガスの流量減少に伴い、薬剤液の流通量を減少させた後、空気の流通量を減少させることを特徴とする。
【0036】
この薬剤噴霧方法によれば、先に流通量が減少された薬剤液が、流通量が減少される前の空気により微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0037】
また、本発明の薬剤噴霧方法では、前記二流体ノズルに空気を供給する予備空気供給手段を有し、前記二流体ノズルに供給する空気の流量が所定の閾値を下回った場合、前記予備空気供給手段に切り換えることを特徴とする。
【0038】
この薬剤噴霧方法によれば、予備空気供給手段の空気により、二流体ノズル内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液の蒸発による固形成分の析出を防止でき、二流体ノズル内部の詰まりを防止できる。また、予備空気供給手段の空気により薬剤液が微粒化されることから、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させないので、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0039】
また、本発明の薬剤噴霧方法では、前記二流体ノズルに供給する空気の流量が所定の閾値を下回った場合、薬剤液を水に切り換え、その後、水の供給を止めた後、空気の供給を止めることを特徴とする。
【0040】
この薬剤噴霧方法によれば、二流体ノズルを水で洗浄し、かつ洗浄後には空気で水分を飛ばすので、二流体ノズルの噴射口に薬剤液を残留させず、二流体ノズルの噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズルの詰まりを防止できる。
【0041】
また、本発明の薬剤噴霧方法では、予備二流体ノズルを有し、前記二流体ノズルと前記予備二流体ノズルとを切り換える場合、薬剤液を水に切り換え、その後、前記二流体ノズルと前記予備二流体ノズルとを切り換え、その後、水を薬剤液に切り換えることを特徴とする。
【0042】
この薬剤噴霧方法によれば、切り換えられたノズルに対し、先に噴射された空気により予備二流体ノズル内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液の蒸発による固形成分の析出を防止でき、予備二流体ノズル内部の詰まりを防止できる。また、先に噴射されている空気により、後に噴射される薬剤液が微粒化されることから、噴射口に薬剤液を残留させないので、噴射口への排ガス中の煤塵の付着を防いで、詰まりを防止できる。しかも、薬剤液が供給される前に水が供給されるので、使用前に予備二流体ノズルを洗浄できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、噴霧する薬剤液の固形成分の析出による二流体ノズルの詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る薬剤噴霧装置が適用される排ガス処理システムの概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る薬剤噴霧装置の概略図である。
【図3】図3は、二流体ノズルの概略図である。
【図4】図4は、図3におけるα−α断面図である。
【図5】図5は、図3に示す二流体ノズルを煙道から取り外す概略図である。
【図6】図6は、制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は、制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、排ガス流量に応じた薬剤液噴霧量制御を示すグラフである。
【図13】図13は、制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図14】図14は、制御手段の動作を示すフローチャートである。作用を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0046】
本実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、薬剤噴霧装置が適用される排ガス処理システムの概略図である。
【0047】
図1に示すように、排ガス処理システム100は、発電プラントや工場などのボイラ101から排出される排ガスGが煙道102を通過し煙突103から放出される過程で、当該排ガスGに含まれる水銀(金属水銀(Hg)や水銀化合物)、窒素酸化物(NOx)、煤塵、および硫黄酸化物(SOx)を除去するものである。
【0048】
具体的には、ボイラ101直後の煙道102に、薬剤噴霧装置104により薬剤液としての塩化アンモニウム(NHCl)水溶液を噴霧する。噴霧された薬剤液は、NHガスとHClガスとして還元脱硝装置105に送られる。NH3ガスは、還元脱硝装置105の脱硝触媒105a上で排ガスGに含まれる窒素酸化物(NOx)を還元脱硝し(下記式(1)参照)、HClガスは、還元脱硝装置105の水銀酸化触媒105b上で排ガスGに含まれる水銀(主に金属水銀(Hg))を水銀酸化する(下記式(2)参照)。
4NO+4NH+O → 4N+6HO・・・(1)
Hg+1/2O+2HCl → HgCl+HO・・・(2)
【0049】
還元脱硝装置105において窒素酸化物の還元と水銀の酸化がされた排ガスGは、さらに煙道102を通過し、ボイラ101に供給される燃焼用空気Aaと熱交換器106により熱交換され、続いて、電気集塵機107により煤塵を除去された後、脱硫装置108に送られる。脱硫装置108は、湿式脱硫装置として構成されており、先に水銀酸化された排ガスG中のHgClは脱硫装置の石灰石膏スラリー中の水分に溶解し、硫黄酸化物は石灰石膏スラリー中に吸収され、排ガスGから分離して除去される。排ガスGは、このようにして浄化され、煙突103から放出される。
【0050】
上述の薬剤噴霧装置104について図を参照して説明する。図2は、薬剤噴霧装置を示し、図3〜図5は、二流体ノズルを示す。
【0051】
図2に示すように、薬剤噴霧装置104は、薬剤液Dを送る液配管1と、空気Abを送る空気配管2とを有している。液配管1および空気配管2は、二流体ノズル3に接続されている。
【0052】
二流体ノズル3は、排ガス処理システム100の煙道102内に配置され、液配管1から供給された薬剤液Dを、空気配管2から供給された空気Abの気流によって微粒化することで薬剤液Dの微細霧を形成し煙道102に噴霧するものである。図3に示すように、本実施の形態の二流体ノズル3は、二重管構造に形成されており、内側の内管3aの基端に液配管1が接続され、外側の外管3bの基端に空気配管2が接続されている。そして、内管3aの先端部から薬剤液Dが噴射されると共に、外管3bの先端部から空気Abが噴射され、空気Abの気流により薬剤液Dが微細霧となる。なお、二流体ノズル3は、液配管1から供給された薬剤液Dを、空気配管2から供給された空気Abの気流によって微粒化することで薬剤液Dの微細霧を形成し煙道102に噴霧するものであれば、二重管構造に限定されるものではない。
【0053】
二流体ノズル3は、排ガスGが通過する煙道102の内部空間Sに連通される一方で内部空間Sから隔離される外部空間をなす外部空間形成部4に配置されている。外部空間形成部4は、煙道102の外側に基端が固定されて煙道102の内部空間Sに連通すると共に先端が開口する固定筒4aと、固定筒4aの基端と先端との間を開放する一方で固定部4aの基端と先端との間を閉塞する態様で固定筒4aの外部からハンドル4bにより回転操作される弁4cと、固定筒4aの先端の開口に基端がボルト4dにより着脱可能に取り付けられ、自身の先端において二流体ノズル3を気密性を有しつつ煙道102の内外に移動可能に支持する支持筒4eと、支持筒4eの先端にボルト4fによって二流体ノズル3を固定する固定部4gとを備えている。
【0054】
図4(a)に示すように、二流体ノズル3は、円筒状の固定管4aの内部にオフセットされて設けられ、弁4cは、ハンドル4bを回転させることで、図4(b)に示すように全周が固定管4aの内面に接触して固定管4aの先端と基端との間を二分して閉塞させる閉塞状態となる一方で、図4(a)に示すように固定管4aの先端と基端との間を開放させる開放状態となる。
【0055】
この外部空間形成部4は、煙道102の内部空間Sをその外部に通じさせることなく二流体ノズル3の煙道102への取り付けまたは取り外しを可能とするものである。図3および図4(a)は、二流体ノズル3を煙道102に取り付けた状態である。この状態から二流体ノズル3を外すには、図5(a)に示すように、二流体ノズル3を液配管1および空気配管2から分離させる。その後、固定部4gを支持筒4eから外し、二流体ノズル3を支持筒4eを介して煙道102の外側に移動させた後、図4(b)に示すように、ハンドル4bを回して弁4cを閉鎖状態とする。次に、図5(b)に示すように、支持筒4eを固定筒4aから外すことで、二流体ノズル3が煙道102から取り外される。また、二流体ノズル3を煙道102に取り付けるには、上記手順を逆に行えばよい。
【0056】
また、図2に示すように、薬剤噴霧装置104は、液配管1に薬剤液供給手段5が接続されている。薬剤液供給手段5は、薬剤液Dが貯留される薬剤液タンク5aと、薬剤液タンク5aと液配管1との間を接続する薬剤液配管5bと、薬剤液配管5bに設けられて薬剤液配管5bを介して薬剤液タンク5aに貯留された薬剤液Dを液配管1に送る薬剤液ポンプ5cと、薬剤液ポンプ5cによる薬剤液Dの供給圧力を検出する圧力計5dとを有している。
【0057】
また、薬剤噴霧装置104は、液配管1に水供給手段6が接続されている。水供給手段6は、水源6aと、水源6aと液配管1との間を接続する水配管6bとを有している。なお、水源6aは、一般水道である場合、水道圧力を利用して水Wを液配管1に送ることが可能であるが、水が貯留されるタンクである場合では、水配管6bに水ポンプ(図示せず)を設ければよい。また、高圧で水を送る場合は、水源6aとして消火栓を利用してもよい。
【0058】
また、薬剤噴霧装置104は、液切換手段7が設けられている。液切換手段7は、薬剤液供給手段5から液配管1への薬剤液Dの流通と、水供給手段6から液配管1への水Wの流通とを選択的に切り換えるもので、液配管1と薬剤液配管5bと水配管6bとが合流する部分に設けられた切換弁として構成されている。なお、液切換手段7は、前記切換弁に代えて、薬剤液配管5bと水配管6bとにそれぞれ開閉弁を設けてもよい。
【0059】
また、薬剤噴霧装置104は、液配管1に液開閉手段8が設けられている。液開閉手段8は、液配管1での薬剤液Dまたは水Wの流通を開閉するもので、開閉弁として構成されている。
【0060】
また、薬剤噴霧装置104は、液配管1に液量調整手段9が設けられている。液量調整手段9は、液配管1での薬剤液Dまたは水Wの流通量を調整するもので、流量調整弁として構成されている。なお、流量調整弁の最大絞りを流量0とすることで、液量調整手段9を液開閉手段8として構成できる。本実施の形態では、図2において液開閉手段8と液量調整手段9とを共に示す。
【0061】
また、薬剤噴霧装置104は、空気配管2に空気供給手段10が接続されている。空気供給手段10は、送風機10aと、送風機10aと空気配管2との間を接続する送気配管10bとを有し、空気配管2に空気Abを供給する。
【0062】
また、薬剤噴霧装置104は、空気配管2に予備空気供給手段11が接続されている。予備空気供給手段11は、予備送風機11aと、予備送風機11aと空気配管2との間を接続する送気配管11bとを有し、空気配管2に空気Acを供給する。なお、予備空気供給手段11の予備送風機11aは、排ガス処理システム100において、ボイラ101に燃焼用空気Aaを送る送風機109(図1参照)など、既設の送風機を利用してもよい。
【0063】
また、薬剤噴霧装置104は、空気切換手段12が設けられている。空気切換手段12は、空気供給手段10から空気配管2への空気Abの流通と、予備空気供給手段11から空気配管2への空気Acの流通とを選択的に切り換えるもので、空気配管2と送気配管10bと送気配管11bとが合流する部分に設けられた切換弁として構成されている。なお、空気切換手段12は、前記切換弁に代えて、送気配管10bと送気配管11bとにそれぞれ開閉弁を設けてもよい。
【0064】
また、薬剤噴霧装置104は、空気配管2に空気開閉手段13が設けられている。空気開閉手段13は、空気配管2での空気Ab,Acの流通を開閉するもので、開閉弁として構成されている。
【0065】
また、薬剤噴霧装置104は、空気配管2に空気量調整手段14が設けられている。空気量調整手段14は、空気配管2での空気Ab,Acの流通量を調整するもので、流量調整弁として構成されている。なお、流量調整弁の最大絞りを流量0とすることで、空気量調整手段14を空気開閉手段13として構成できる。本実施の形態では、図2において空気開閉手段13と空気量調整手段14とを共に示す。
【0066】
また、薬剤噴霧装置104は、空気配管2に、当該空気配管2における空気Ab,Acの流量を検出する空気流量計15が設けられている。
【0067】
また、薬剤噴霧装置104は、予備二流体ノズル3’が設けられている。予備二流体ノズル3’は、上述した二流体ノズル3と同様のもので、液配管1と空気配管2とに接続されている。そして、薬剤噴霧装置104は、二流体ノズル3の液配管1への接続と予備二流体ノズル3’の液配管1への接続とを選択的に切り換えるノズル液切換手段(切換弁)16が設けられている。さらに、薬剤噴霧装置104は、二流体ノズル3の空気配管2への接続と予備二流体ノズル3’の空気配管2への接続とを選択的に切り換えるノズル空気切換手段(切換弁)17が設けられている。
【0068】
また、二流体ノズル3および予備二流体ノズル3’が設置された煙道102には、その内部空間Sに流通する排ガスGの流量(ボイラ101の負荷変動)を検出する排ガス流量計18が設けられている。
【0069】
また、薬剤噴霧装置104は、制御手段19が設けられている。制御手段19は、マイコンなどで構成され、薬剤噴霧装置104を統括的に制御するものである。制御手段19は、薬剤液供給手段(薬剤液ポンプ5c,圧力計5d)5と、液切換手段7と、液開閉手段8と、液量調整手段9と、空気切換手段12と、空気開閉手段13と、空気量調整手段14と、空気流量計15と、ノズル液切換手段16と、ノズル空気切換手段17と、排ガス流量計18とに接続されている。また、制御手段19は、図示しないROMやRAMなどの記憶部に、圧力計5dで検出される薬剤液Dの供給圧力の所定の閾値情報が予め格納されている。また、制御手段19は、図示しない記憶部に、排ガス流量計18で検出される排ガスGの流量(ボイラ101の負荷変動)の所定の閾値情報が予め格納されている。
【0070】
なお、制御手段19は、ボイラ101の負荷変動を把握するにあたり、排ガス流量計18からの排ガス流量の入力に代えて、図2に示すように、排ガス処理システム100が発電プラント50に適用されている場合での発電プラント50の発電量や、図1に示す排ガス処理システム100におけるボイラ101に燃焼用空気Aaを送る送風機109の風量(送風機109のダクト開度や差圧)や、図1に示す排ガス処理システム100の熱交換器106後流で電気集塵機107に排ガスGを送る送風機110の風量(送風機110のダクト開度や差圧)などを入力してもよい。この場合、制御手段19は、図示しない記憶部に、発電プラント50の発電量の所定の閾値情報や、排ガス処理システム100の送風機109,110の風量の閾値情報が予め格納されている。
【0071】
以下に、制御手段19による薬剤噴霧装置104の制御について図を参照して説明する。図6〜図11、図13および図14は、制御手段19の動作を示すフローチャートである。
【0072】
薬剤噴霧装置104の起動時(排ガス処理システム100におけるボイラ101の起動時を含む)には、図6に示すように、制御手段19は、空気供給手段10を駆動すると共に空気開閉手段13を閉状態から開状態とする(ステップST1)。その後、制御手段19は、液切換手段7を薬剤液供給手段5側に切り換え、かつ薬剤液供給手段5を駆動すると共に液開閉手段8を閉状態から開状態とする(ステップST2)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、煙道102への薬剤液Dの供給を開始する場合、二流体ノズル3から空気Abを先に噴射させ、その後に薬剤液Dを噴射させる。
【0073】
薬剤噴霧装置104の停止時(排ガス処理システム100におけるボイラ101の停止時を含む)には、図7に示すように、制御手段19は、液切換手段7を薬剤液供給手段5側から水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止する(ステップST11)。その後、制御手段19は、液開閉手段8を開状態から閉状態とする(ステップST12)。その後、制御手段19は、空気開閉手段13を開状態から閉状態とすると共に空気供給手段10の駆動を停止する(ステップST13)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、煙道102への薬剤液Dの供給を停止する場合、二流体ノズル3からの薬剤液Dの噴射を止めて水Wを噴射させ、その後、二流体ノズル3からの水Wの噴射を先に止めた後に空気Abの噴射を止める。
【0074】
薬剤噴霧装置104の起動中(排ガス処理システム100におけるボイラ101の起動中を含む)において、図8に示すように、制御手段19は、液切換手段7を薬剤液供給手段5側に切り換えると共に薬剤液供給手段5を駆動している状態で、圧力計5dで検出された薬剤液Dの供給圧力を入力し、入力した圧力が所定の閾値を超えた場合(ステップST21:Yes)、液切換手段7を薬剤液供給手段5側から水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止する(ステップST22)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、高温(300℃〜350℃)の排ガスGにより薬剤液Dが蒸発して固形成分が析出し薬剤液Dの供給量が低下したことを検出した場合、液配管1および二流体ノズル3に水Wを供給する。
【0075】
なお、ステップST22の後、制御手段19は、所定時間(例えば、10分程度)経過した場合(ステップST23:Yes)、薬剤液供給手段5を駆動すると共に液切換手段7を水供給手段6側から薬剤液供給手段5側に切り換える(ステップST24)。その後、制御手段19は、圧力計5dで検出された薬剤液Dの供給圧力を再び入力し、入力した圧力が所定の閾値を超えていなければ(ステップST25:No)、図8における薬剤噴霧装置104の起動中の制御を終了する。一方、制御手段19は、ステップST25において、入力した圧力が所定の閾値を超えた場合(ステップST25:Yes)、薬剤噴霧装置104に何らかの故障が発生したとして後述の故障時の制御に移行する(ステップST26)。
【0076】
故障時の制御では、図9に示すように、制御手段19は、液切換手段7を薬剤液供給手段5側から水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止する(ステップST261)。その後、制御手段19は、ノズル空気切換手段17を予備二流体ノズル3’側に切り換えた後(ステップST262)、ノズル液切換手段16を予備二流体ノズル3’側に切り換える(ステップST263)。その後、液切換手段7を薬剤液供給手段5側に切り換えると共に薬剤液供給手段5を駆動する(ステップST264)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、二流体ノズル3を予備二流体ノズル3’に切り換える場合、二流体ノズル3からの薬剤液Dの噴射を止めて水Wを噴射させ、その後、予備二流体ノズル3’には、空気Abを先に切り換えてから、水Wに切り換えつつ薬剤液Dに切り換える。そして、二流体ノズル3を煙道102から取り外して点検する。
【0077】
また、薬剤噴霧装置104の起動中(排ガス処理システム100におけるボイラ101の起動中を含む)において、制御手段19は、排ガスGの流量の増加に伴い薬剤液Dの供給量を増す。図10に示すように、制御手段19は、排ガスGの流量増加を検出または予測した場合(ステップST31:Yes)、空気量調整手段14により空気Ab(Ac)の流通量を増加させる(ステップST32)。その後、制御手段19は、液量調整手段9により薬剤液Dの流通量を増加させる(ステップST33)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、薬剤液Dの噴霧量を増加させる場合、空気Abの流通量を増加させてから、薬剤液Dの流通量を増加させる。
【0078】
また、薬剤噴霧装置104の起動中(排ガス処理システム100におけるボイラ101の起動中を含む)において、制御手段19は、排ガスGの流量の減少に伴い薬剤液Dの供給量を減らす。図11に示すように、制御手段19は、排ガスGの流量減少を検出または予測した場合(ステップST41:Yes)、液量調整手段9により薬剤液Dの流通量を減少させる(ステップST42)。その後、制御手段19は、空気量調整手段14により空気Ab(Ac)の流通量を減少させる(ステップST43)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、薬剤液Dの噴霧量を減少させる場合、薬剤液Dの流通量を減少させてから、空気Abの流通量を減少させる。
【0079】
ここで、排ガスGの流量は、上述したように排ガス流量計18による検出により直接的に把握することができる。この場合、制御手段19は、排ガス流量計18から入力した排ガスGの流量が所定の閾値を超えた場合にボイラ101の負荷上昇と把握でき、一方、排ガスGの流量が所定の閾値を下回った場合にボイラ101の負荷低下と把握できる。その他、排ガスGの流量は、発電プラント50の発電量や、排ガス処理システム100の送風機109または送風機110の風量(送風機109,110のダクト開度や差圧)により間接的に把握できる。この場合、制御手段19は、発電プラント50から入力した発電量が所定の閾値を超えた場合に、ボイラ101の稼働率が上昇しているのでボイラ101の負荷上昇により排ガスGの流量が増加したと把握でき、一方、発電量が所定の閾値を下回った場合に、ボイラ101の稼働率が低下しているのでボイラ101の負荷低下により排ガスGの流量が減少したと把握できる。また、制御手段19は、排ガス処理システム100の送風機109,110から入力した風量が所定の閾値を超えた場合に、ボイラ101の稼働率が上昇しているのでボイラ101の負荷上昇により排ガスGの流量が増加したと把握でき、一方、送風機109,110から入力した風量が所定の閾値を下回った場合に、ボイラ101の稼働率が低下しているのでボイラ101の負荷低下により排ガスGの流量が減少したと把握できる。
【0080】
なお、制御手段19は、日中または夜間などの時間や、季節などにより発電プラント50の発電量が変動することから、これに基づいて排ガスGの流量変動を予測できる。そして、図12のグラフに、排ガスGの流量変動の検出(排ガス流量計18)による薬剤液噴霧量制御と、排ガスGの流量変動の予測による薬剤液噴霧量制御との関係を示す。すなわち、図12に示すように、流量検出の場合は、ボイラ101の負荷変動に追従して薬剤液噴霧量を増減でき、一方、流量予測の場合は、ボイラ101の負荷変動を先回りして薬剤液噴霧量を増減できる。これらは、必要に応じていずれかを適宜選択すればよい。
【0081】
また、薬剤噴霧装置104の起動中(排ガス処理システム100におけるボイラ101の起動中を含む)において、図13に示すように、制御手段19は、空気切換手段12を空気供給手段10側に切り換えている状態で、空気流量計15で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合(ステップST51:Yes)、空気切換手段12を予備空気供給手段11側に切り換える(ステップST52)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、空気供給手段10による空気Abの送り量が減少した場合、予備空気供給手段11に切り換える。
【0082】
また、薬剤噴霧装置104の起動中(排ガス処理システム100におけるボイラ101の起動中を含む)において、図14に示すように、制御手段19は、空気流量計15で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合(ステップST61:Yes)、液切換手段7を薬剤液供給手段5側から水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止する(ステップST62)。その後、制御手段19は、液開閉手段8を開状態から閉状態とする(ステップST63)。その後、制御手段19は、空気開閉手段13を開状態から閉状態とすると共に空気供給手段10の駆動を停止する(ステップST64)。すなわち、薬剤噴霧装置104は、予備空気供給手段11を有さなければ、空気供給手段10による空気Abの送り量が減少した場合、煙道102への薬剤液Dの供給を停止し、水Wを供給させた後に空気Abを停止する。
【0083】
上述したように、本実施の形態の薬剤噴霧装置104は、薬剤液Dを送る液配管1と空気Abを送る空気配管2とに接続されると共に、煙道102内に配置され、液配管1から供給された薬剤液Dを空気配管2から供給された空気Abの気流によって微粒化することで微細霧を形成し煙道102に噴霧する二流体ノズル3を有した薬剤噴霧装置104において、液配管1に接続されて当該液配管1に薬剤液Dを供給する薬剤液供給手段5と、液配管1に接続されて当該液配管1に水Wを供給する水供給手段6と、薬剤液供給手段5から液配管1への薬剤液Dの流通と水供給手段6から液配管1への水Wの流通とを選択的に切り換える液切換手段7と、薬剤液供給手段5における薬剤液Dの供給圧力を検出する圧力計5dと、液切換手段7を薬剤液供給手段5側に切り換えると共に薬剤液供給手段5を駆動した状態で、圧力計5dで検出された圧力を入力し、入力した圧力が所定の閾値を超えた場合、液切換手段7を水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止する制御手段19とを備える。
【0084】
この薬剤噴霧装置104によれば、高温(300℃〜350℃)の排ガスGにより薬剤液Dが蒸発して固形成分が析出し始めても、薬剤液Dの供給量が低下したことを検出することで、二流体ノズル3の詰まりとして、液配管1および二流体ノズル3に水を供給する。この結果、噴霧する薬剤液Dの固形成分の析出による二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0085】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、空気配管2に接続されて当該空気配管2に空気Abを供給する空気供給手段10と、空気配管2での空気Abの流通を開閉する空気開閉手段13と、液配管1での薬剤液Dまたは水Wの流通を開閉する液開閉手段8とを備え、制御手段19は、薬剤液Dの供給を開始する場合、空気供給手段10を駆動すると共に空気開閉手段13を開状態とし、その後、液切換手段7を薬剤液供給手段5側に切り換え、かつ薬剤液供給手段5を駆動すると共に液開閉手段8を開状態とする。
【0086】
この薬剤噴霧装置104によれば、薬剤液Dの供給を開始するとき、二流体ノズル3から空気Abを先に噴射させ、その後に薬剤液Dを噴射させる。この結果、先に噴射された空気Abにより二流体ノズル3内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液Dの蒸発による固形成分の析出を防止でき、二流体ノズル3内部の詰まりを防止することが可能になる。また、先に噴射された空気Abにより、後に噴射される薬剤液Dが微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0087】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、制御手段19は、薬剤液Dの供給を停止する場合、液切換手段7を水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止し、その後、液開閉手段8を閉状態とし、その後、空気開閉手段13を閉状態とすると共に空気供給手段10の駆動を停止する。
【0088】
この薬剤噴霧装置104によれば、薬剤液Dの供給を停止するとき、二流体ノズル3からの薬剤液Dの噴射を止めて水Wを噴射させ、その後、二流体ノズル3からの水Wの噴射を先に止めた後に空気Abの噴射を止める。この結果、二流体ノズル3を水Wで洗浄し、かつ洗浄後には空気Abで水分を飛ばして、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0089】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、空気配管2での空気Abの流通量を調整する空気量調整手段14と、液配管1での薬剤液Dの流通量を調整する液量調整手段9とを備え、制御手段19は、煙道102に流通する排ガスGの流量増加に伴い、空気量調整手段14により空気Abの流通量を増加させた後、液量調整手段9により薬剤液Dの流通量を増加させる。
【0090】
この薬剤噴霧装置104によれば、排ガスGの流量増加に伴い、薬剤液Dの噴霧量を増加させることが可能になる。しかも、この薬剤噴霧装置104によれば、薬剤液Dの噴霧量を増加させる場合、空気Abの流通量を増加させてから、薬剤液Dの流通量を増加させる。このため、先に流通量が増加された空気Abにより、後に流通量が増加された薬剤液Dが微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0091】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、制御手段19は、排ガスGの流量減少に伴い、液量調整手段9により薬剤液Dの流通量を減少させた後、空気量調整手段14により空気Abの流通量を減少させる。
【0092】
この薬剤噴霧装置104によれば、排ガスGの流量減少に伴い、薬剤液Dの噴霧量を減少させることが可能になる。しかも、この薬剤噴霧装置104によれば、薬剤液Dの噴霧量を減少させる場合、薬剤液Dの流通量を減少させてから、空気Abの流通量を減少させる。このため、先に流通量が減少された薬剤液Dが、流通量が減少される前の空気Abにより微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0093】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、空気配管2に接続されて当該空気配管2に空気Abを供給する空気供給手段10と、空気配管2に接続されて当該空気配管2に空気Acを供給する予備空気供給手段11と、空気供給手段10から空気配管2への空気Abの流通と予備空気供給手段11から空気配管2への空気Acの流通とを選択的に切り換える空気切換手段12と、空気配管2における空気Ab,Acの流量を検出する空気流量計15とを備え、制御手段19は、空気切換手段12を空気供給手段10側に切り換えている状態で、空気流量計15で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合、空気切換手段12を予備空気供給手段11側に切り換える。
【0094】
この薬剤噴霧装置104によれば、空気供給手段10による空気Abの送り量が減少した場合、予備空気供給手段11に切り換えるため、予備空気供給手段11の空気Acにより、排ガス熱による二流体ノズル3内部の薬剤液Dの蒸発を防止することから、析出した固形成分による二流体ノズル3内部の詰まりを防止することが可能になる。また、予備空気供給手段11の空気Acにより薬剤液Dが微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0095】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、空気配管2に接続されて当該空気配管2に空気を供給する空気供給手段10と、空気配管2での空気Abの流通を開閉する空気開閉手段13と、液配管1での薬剤液Dまたは水Wの流通を開閉する液開閉手段8と、空気配管2における空気Abの流量を検出する空気流量計15とを備え、制御手段19は、液開閉手段8および空気開閉手段13を開状態とし、空気流量計15で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合、液切換手段7を薬剤液供給手段5側から水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止し、その後、液開閉手段8を閉状態とした後、空気開閉手段13を閉状態とすると共に空気供給手段10の駆動を停止する。
【0096】
この薬剤噴霧装置104によれば、空気供給手段10による空気Abの送り量が減少した場合、煙道102への薬剤液Dの供給を停止し、水Wを供給させた後に空気Abを停止する。この結果、二流体ノズル3を水Wで洗浄し、かつ洗浄後には空気Abで水分を飛ばすので、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させず、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0097】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、液配管1と空気配管2とに接続されると共に、煙道102内に配置され、液配管1から供給された薬剤液Dを空気配管2から供給された空気Abの気流によって微粒化することで微細霧を形成し煙道102に噴霧する予備二流体ノズル3’と、二流体ノズル3の液配管1への接続と予備二流体ノズル3’の液配管1への接続とを選択的に切り換えるノズル液切換手段16と、二流体ノズル3の空気配管2への接続と予備二流体ノズル3’の空気配管2への接続とを選択的に切り換えるノズル空気切換手段17とを備える。
【0098】
この薬剤噴霧装置104によれば、二流体ノズル3の点検をする場合や二流体ノズル3が万一詰まった場合でも、予備二流体ノズル3’を用いることで、薬剤液Dの噴霧を継続して行うことができ、排ガス処理システム100の稼動に影響を与える事態を防止することが可能になる。
【0099】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、制御手段19は、二流体ノズル3と予備二流体ノズル3’とを切り換える場合、液切換手段7を水供給手段6側に切り換えると共に薬剤液供給手段5の駆動を停止し、その後、ノズル空気切換手段17を切り換えた後にノズル液切換手段16を切り換え、その後、液切換手段7を薬剤液供給手段5側に切り換えると共に薬剤液供給手段5を駆動する。
【0100】
この薬剤噴霧装置104によれば、二流体ノズル3を予備二流体ノズル3’に切り換える場合、二流体ノズル3からの薬剤液Dの噴射を止めて水Wを噴射させ、その後、予備二流体ノズル3’には、空気Abを先に切り換えてから、水Wに切り換えつつ薬剤液Dに切り換える。この結果、切り換えられた予備二流体ノズル3’に対し、先に噴射された空気Abにより予備二流体ノズル3’内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液Dの蒸発による固形成分の析出を防止でき、予備二流体ノズル3’内部の詰まりを防止することが可能になる。また、先に噴射された空気Abにより、後に噴射される薬剤液Dが微粒化されることから、噴射口に薬剤液Dを残留させないので、噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、詰まりを防止することが可能になる。しかも、薬剤液Dが供給される前に水Wが供給されるので、使用前の予備二流体ノズル3’を洗浄することが可能になる。
【0101】
また、本実施の形態の薬剤噴霧装置104では、煙道102には、その内部空間Sに連通する一方で内部空間Sから隔離される外部空間をなす外部空間形成部4を備え、少なくとも二流体ノズル3が外部空間形成部4に配置されている。
【0102】
この薬剤噴霧装置104によれば、煙道102の内部空間Sを開放させずに排ガス処理システム100の稼動中であっても二流体ノズル3や予備二流体ノズル3’の取り付けおよび取り外しを行うことができるので、排ガス処理システム100の稼動に影響を与える事態を防止することが可能になる。
【0103】
本実施の形態の薬剤噴霧方法は、二流体ノズル3により薬剤液Dを空気Abの気流によって微粒化することで微細霧を形成し煙道102に噴霧する薬剤噴霧方法において、薬剤液Dを噴霧させた状態で、二流体ノズル3に供給する薬剤液Dの供給圧力が所定の閾値を超えた場合、薬剤液Dを水Wに切り換えて噴射させる。
【0104】
この薬剤噴霧方法によれば、高温(例えば、300℃〜350℃)の排ガスGにより薬剤液Dが蒸発して固形成分が析出し始めても、薬剤液Dを水Wに切り換えて二流体ノズル3に水を供給することで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0105】
また、本実施の形態の薬剤噴霧方法では、二流体ノズル3に薬剤液Dの供給を開始する場合、空気Abを供給した後に、薬剤液Dを供給する。
【0106】
この薬剤噴霧方法によれば、先に噴射された空気Abにより二流体ノズル3内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液Dの蒸発による固形成分の析出を防止でき、二流体ノズル3内部の詰まりを防止することが可能になる。また、先に噴射された空気Abにより、後に噴射される薬剤液Dが微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0107】
また、本実施の形態の薬剤噴霧方法では、二流体ノズル3への薬剤液Dの供給を停止する場合、薬剤液Dを水Wに切り換え、その後、水Wの供給を止めた後、空気Abの供給を止める。
【0108】
この薬剤噴霧方法によれば、二流体ノズル3を水Wで洗浄し、かつ洗浄後には空気Abで水分を飛ばして、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0109】
また、本実施の形態の薬剤噴霧方法では、煙道102に流通する排ガスGの流量増加に伴い、空気Abの流通量を増加させた後、薬剤液Dの流通量を増加させる。
【0110】
この薬剤噴霧方法によれば、先に流通量が増加された空気Abにより、後に流通量が増加された薬剤液Dが微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0111】
また、本実施の形態の薬剤噴霧方法では、煙道102に流通する排ガスGの流量減少に伴い、薬剤液Dの流通量を減少させた後、空気Abの流通量を減少させる。
【0112】
この薬剤噴霧方法によれば、先に流通量が減少された薬剤液Dが、流通量が減少される前の空気Abにより微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0113】
また、本実施の形態の薬剤噴霧方法では、二流体ノズル3に空気Abを供給する予備空気供給手段11を有し、二流体ノズル3に供給する空気Abの流量が所定の閾値を下回った場合、予備空気供給手段11に切り換える。
【0114】
この薬剤噴霧方法によれば、予備空気供給手段11の空気Acにより、排ガス熱による二流体ノズル3内部の薬剤液Dの蒸発を防止することから、析出した固形成分による二流体ノズル3内部の詰まりを防止することが可能になる。また、予備空気供給手段11の空気Acにより薬剤液Dが微粒化されることから、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させないので、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0115】
また、本実施の形態の薬剤噴霧方法では、二流体ノズル3に供給する空気Abの流量が所定の閾値を下回った場合、薬剤液Dを水Wに切り換え、その後、水Wの供給を止めた後、空気Abの供給を止める。
【0116】
この薬剤噴霧方法によれば、二流体ノズル3を水Wで洗浄し、かつ洗浄後には空気Abで水分を飛ばすので、二流体ノズル3の噴射口に薬剤液Dを残留させず、二流体ノズル3の噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、二流体ノズル3の詰まりを防止することが可能になる。
【0117】
また、本実施の形態の薬剤噴霧方法では、予備二流体ノズル3’を有し、二流体ノズル3と予備二流体ノズル3’とを切り換える場合、薬剤液Dを水Wに切り換え、その後、二流体ノズル3と予備二流体ノズル3’とを切り換え、その後、水Wを薬剤液Dに切り換える。
【0118】
この薬剤噴霧方法によれば、切り換えられたノズル3’に対し、先に噴射された空気Abにより予備二流体ノズル3’内部が冷却されることから、噴霧する薬剤液Dの蒸発による固形成分の析出を防止でき、予備二流体ノズル3’内部の詰まりを防止することが可能になる。また、先に噴射されている空気Abにより、後に噴射される薬剤液Dが微粒化されることから、噴射口に薬剤液Dを残留させないので、噴射口への排ガスG中の煤塵の付着を防いで、詰まりを防止することが可能になる。しかも、薬剤液Dが供給される前に水Wが供給されるので、使用前に切り換えられたノズル3,3’を洗浄できる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
以上のように、本発明に係る薬剤噴霧装置および薬剤噴霧方法は、噴霧する薬剤液の固形成分の析出による二流体ノズルの詰まりを防止することに適している。
【符号の説明】
【0120】
1 液配管
2 空気配管
3 二流体ノズル
3a 内管
3b 外管
3’予備二流体ノズル
4 外部空間形成部
5 薬剤液供給手段
5a 薬剤液タンク
5b 薬剤液配管
5c 薬剤液ポンプ
5d 圧力計
6 水供給手段
6a 水源
6b 水配管
7 液切換手段
8 液開閉手段
9 液量調整手段
10 空気供給手段
10a 送風機
10b 送気配管
11 予備空気供給手段
11a 予備送風機
11b 送気配管
12 空気切換手段
13 空気開閉手段
14 空気量調整手段
15 空気流量計
16 ノズル液切換手段
17 ノズル空気切換手段
18 排ガス流量計
19 制御手段
50 発電プラント
100 排ガス処理システム
101 ボイラ
102 煙道
104 薬剤噴霧装置
109 送風機
110 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤液を送る液配管と空気を送る空気配管とに接続されると共に、煙道内に配置され、前記液配管から供給された薬剤液を前記空気配管から供給された空気の気流によって微粒化することで微細霧を形成し前記煙道に噴霧する二流体ノズルを有した薬剤噴霧装置において、
前記液配管に接続されて当該液配管に薬剤液を供給する薬剤液供給手段と、
前記液配管に接続されて当該液配管に水を供給する水供給手段と、
前記薬剤液供給手段から前記液配管への薬剤液の流通と前記水供給手段から前記液配管への水の流通とを選択的に切り換える液切換手段と、
前記薬剤液供給手段における薬剤液の供給圧力を検出する圧力計と、
前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段を駆動して薬剤液を噴霧させた状態で、前記圧力計で検出された圧力を入力し、入力した圧力が所定の閾値を超えた場合、前記液切換手段を前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止する制御手段と、
を備えることを特徴とする薬剤噴霧装置。
【請求項2】
前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する空気供給手段と、
前記空気配管での空気の流通を開閉する空気開閉手段と、
前記液配管での薬剤液または水の流通を開閉する液開閉手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記薬剤液の供給を開始する場合、前記空気供給手段を駆動すると共に前記空気開閉手段を開状態とし、その後、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側に切り換え、かつ前記薬剤液供給手段を駆動すると共に前記液開閉手段を開状態とすることを特徴とする請求項1に記載の薬剤噴霧装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記薬剤液の供給を停止する場合、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側から前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止し、その後、前記液開閉手段を閉状態とし、その後、前記空気開閉手段を閉状態とすると共に前記空気供給手段の駆動を停止することを特徴とする請求項2に記載の薬剤噴霧装置。
【請求項4】
前記空気配管での空気の流通量を調整する空気量調整手段と、
前記液配管での薬剤液の流通量を調整する液量調整手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記煙道に流通する排ガスの流量増加に伴い、空気量調整手段により空気の流通量を増加させた後、液量調整手段により薬剤液の流通量を増加させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の薬剤噴霧装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記排ガスの流量減少に伴い、液量調整手段により薬剤液の流通量を減少させた後、空気量調整手段により空気の流通量を減少させることを特徴とする請求項4に記載の薬剤噴霧装置。
【請求項6】
前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する空気供給手段と、
前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する予備空気供給手段と、
前記空気供給手段から前記空気配管への空気の流通と前記予備空気供給手段から前記空気配管への空気の流通とを選択的に切り換える空気切換手段と、
前記空気配管における空気の流量を検出する空気流量計と、
を備え、
前記制御手段は、前記空気切換手段を空気供給手段側に切り換えている状態で、前記空気流量計で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合、前記空気切換手段を前記予備空気供給手段側に切り換えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の薬剤噴霧装置。
【請求項7】
前記空気配管に接続されて当該空気配管に空気を供給する空気供給手段と、
前記空気配管での空気の流通を開閉する空気開閉手段と、
前記液配管での薬剤液または水の流通を開閉する液開閉手段と、
前記空気配管における空気の流量を検出する空気流量計と、
を備え、
前記制御手段は、前記液開閉手段および前記空気開閉手段を開状態とし、前記空気流量計で検出された流量を入力し、入力した流量が所定の閾値を下回った場合、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側から前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止し、その後、前記液開閉手段を閉状態とした後、前記空気開閉手段を閉状態とすると共に前記空気供給手段の駆動を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の薬剤噴霧装置。
【請求項8】
前記液配管と前記空気配管とに接続されると共に、煙道内に配置され、前記液配管から供給された薬剤液を前記空気配管から供給された空気の気流によって微粒化することで微細霧を形成し前記煙道に噴霧する予備二流体ノズルと、
前記二流体ノズルの前記液配管への接続と前記予備二流体ノズルの前記液配管への接続とを選択的に切り換えるノズル液切換手段と、
前記二流体ノズルの前記空気配管への接続と前記予備二流体ノズルの前記空気配管への接続とを選択的に切り換えるノズル空気切換手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の薬剤噴霧装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記二流体ノズルと前記予備二流体ノズルとを切り換える場合、前記液切換手段を前記水供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段の駆動を停止し、その後、前記ノズル空気切換手段を切り換えた後に前記ノズル液切換手段を切り換え、その後、前記液切換手段を前記薬剤液供給手段側に切り換えると共に前記薬剤液供給手段を駆動することを特徴とする請求項8に記載の薬剤噴霧装置。
【請求項10】
前記煙道には、その内部空間に連通する一方で前記内部空間から隔離される外部空間をなす外部空間形成部を備え、少なくとも前記二流体ノズルが前記外部空間形成部に配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の薬剤噴霧装置。
【請求項11】
二流体ノズルにより薬剤液を空気の気流によって微粒化することで微細霧を形成し煙道に噴霧する薬剤噴霧方法において、
薬剤液を噴霧させた状態で、前記二流体ノズルに供給する薬剤液の供給圧力が所定の閾値を超えた場合、前記薬剤液を水に切り換えて噴射させることを特徴とする薬剤噴霧方法。
【請求項12】
前記二流体ノズルに薬剤液の供給を開始する場合、空気を供給した後に、薬剤液を供給することを特徴とする請求項11に記載の薬剤噴霧方法。
【請求項13】
前記二流体ノズルへの薬剤液の供給を停止する場合、薬剤液を水に切り換え、その後、水の供給を止めた後、空気の供給を止めることを特徴とする請求項12に記載の薬剤噴霧方法。
【請求項14】
前記煙道に流通する排ガスの流量増加に伴い、空気の流通量を増加させた後、薬剤液の流通量を増加させることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一つに記載の薬剤噴霧方法。
【請求項15】
前記煙道に流通する排ガスの流量減少に伴い、薬剤液の流通量を減少させた後、空気の流通量を減少させることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一つに記載の薬剤噴霧方法。
【請求項16】
前記二流体ノズルに空気を供給する予備空気供給手段を有し、前記二流体ノズルに供給する空気の流量が所定の閾値を下回った場合、前記予備空気供給手段に切り換えることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一つに記載の薬剤噴霧方法。
【請求項17】
前記二流体ノズルに供給する空気の流量が所定の閾値を下回った場合、薬剤液を水に切り換え、その後、水の供給を止めた後、空気の供給を止めることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一つに記載の薬剤噴霧方法。
【請求項18】
予備二流体ノズルを有し、前記二流体ノズルと前記予備二流体ノズルとを切り換える場合、薬剤液を水に切り換え、その後、前記二流体ノズルと前記予備二流体ノズルとを切り換え、その後、水を薬剤液に切り換えることを特徴とする請求項11〜17のいずれか一つに記載の薬剤噴霧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−173072(P2011−173072A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39416(P2010−39416)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】