説明

薬剤懸濁液化具と薬剤懸濁液化方法

【課題】固形の薬剤の全てを水に簡単且つ清潔に懸濁液化させるとともに、液化させた懸濁薬液の取り違えの可能性を無くする。
【解決手段】
シリンジ10内に固形の薬剤46を入れ、薬剤46をシリンジ10内で破砕手段40,42により破砕し、シリンジ10の先端部を水に浸し、プランジャ18を引いてシリンジ10内に水を入れ、シリンジ10を電子レンジにかけ、シリンジ10内の薬剤46を懸濁液化させる。破砕手段40,42はシリンジ10の内部において固形の薬剤46に当接して薬剤46を砕く1又は2以上の尖部を備えている。破砕手段40,42はシリンジ10の外筒14のルアーテーパー部24の貫通穴28を通してシリンジ10の内部に挿入可能な針体40でもよいし、シリンジ10の肩部22又はガスケット16にシリンジ10の内部に向けて設けられた針体42でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸錠、コーティング錠、カプセル剤又は丸剤等の固形の薬剤を水に溶解ないし懸濁液化させて懸濁薬液とすることにより、これらの薬剤を飲み易くする薬剤懸濁液化具と薬剤懸濁液化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人は咀嚼した食物を舌を使って咽頭へ送り、嚥下する。その時,軟口蓋が口腔と鼻腔を遮断し、また、喉頭蓋が気管の蓋をするとともに、食道が開いて食物が食道へと送り込まれる。
【0003】
ところが、疾病や老化などでこれらの複雑な運動に関わる神経や筋肉に障害が生じた場合、飲食物の咀嚼や飲み込みが困難(嚥下障害)になることがある。そして、嚥下障害の人は食物だけでなく固形の薬剤を飲み込むことも困難になる。
【0004】
そこで、嚥下障害の患者には、処方した薬剤が固形の薬剤の場合、薬剤を乳鉢ですり潰して粉にし、この粉に水を混ぜ、必要な場合はシロップ等を混ぜて薬の苦みを緩和させ、水薬とし、これを経口または経管(チューブ)で投与している。
【0005】
また、患者が子供の場合、子供は大人と比べてのどが狭いし、固形の薬剤を飲み慣れていないので、薬剤を飲むのを嫌がる。そこで、処方した薬が固形の薬剤の場合、薬剤を乳鉢ですり潰して粉にし、これに水を混ぜ、必要な場合はシロップ等を混ぜて薬の苦みを緩和させ、水薬とし、これを飲ませる場合がある。
【0006】
また、お年寄りが患者で、大量の固形の薬剤が処方され、これらの薬を飲むのが大変な場合がある。このような場合も薬剤を乳鉢ですり潰し、これに水を混ぜ、必要な場合はシロップ等を混ぜて薬の苦みを緩和させ、水薬とし、これを飲ませる場合がある。
【0007】
ただ、上述したいずれの場合も、処方した薬剤を乳鉢ですり潰して粉にするので、乳鉢の表面に薬の一部が付着してしまい、処方された薬を患者に全量摂取させることができないという問題があった。
【0008】
そこで、近年は、コップに入れたお温(55℃)の中に固形の薬剤をそのまま入れ、10分間程度放置して薬剤をこのお湯の中で膨潤・崩壊させ、その後、このお湯を掻き混ぜることにより薬の懸濁液を得る方法(簡易懸濁法)で水薬を作り、これを注入器(シリンジ)に吸い取り、シリンジから経口または経管で患者に投与している。
【0009】
しかし、この簡易懸濁法は、お湯(55℃)を用意しなければならないし、固形の薬剤を自然に崩壊させたり、投与できる温度(飲める温度)にまでお湯をさますため、10分間程度の時間待たなければならず、手間がかかり、患者本人又は介護者が他の事をしていたりすると、薬を飲み忘れてしまうという問題があった。
【0010】
また、簡易懸濁法は、固形の薬剤をお湯の中で自然に崩壊させるため、崩壊が不完全で、薬剤の一部に細かい溶け残りがみられる場合があり、特に、冬季のように外気温が低い場合、溶け残りが多くなる。溶け残りはシリンジで完全に吸引することが困難なので、処方された薬剤を全量投与することができないという問題もあった。
【0011】
また、懸濁薬液を経管投与する場合、シリンジで吸引した溶け残りの薬剤がチューブの途中に引っかかってチューブを詰まらせ、薬剤の投与ができなくなってしまうという問題もあった。
【0012】
また、異なる患者の薬剤を簡易懸濁法で同時に懸濁液化している場合は、各コップから懸濁液を各シリンジで吸い取って患者に投与するが、このシリンジで吸い取る段階でコップ(懸濁薬液)を取り違えてしまう危険性もあるという問題もあった。
【0013】
また、この簡易懸濁法を看護師が行う場合、薬剤をお湯の中で自然に崩壊させたり、飲める温度にまで下げるために10分間程度の時間待たなければならないので、薬剤投与の為の工程が増え、看護師にとって手間がかかるという問題もあった。
【0014】
また、簡易懸濁法は、固形の薬剤をコップに入れ、薬剤が懸濁液化し、この液が投薬可能な温度まで低下するのに、10分間放置という時間を必要とするため、その際にゴミ等の不衛生なものが混入する危険性があるという問題もあった。
【0015】
また、処方された固形の薬剤がかなり強固な場合は、専用の粉砕器やハンマー等を使って薬剤を粉砕し、この粉砕でできた薬剤粉を懸濁用容器にお湯と共に入れ、懸濁液化させる場合もある。
【0016】
専用の粉砕器やハンマー等を使って薬剤を粉砕する場合、異物混入防止のため薬剤を分包紙に挟んだ状態で粉砕するが、薬剤を分包紙で挟んで粉砕すると薬剤粉が分包紙に付着し、薬剤粉を懸濁用容器に移しても一部が分包紙の表面に残り、この残った薬剤粉の量だけ患者が薬剤を飲めず、医師によって処方された量の薬剤が患者によって摂取されないという問題がある。
【0017】
また、異物混入防止のため固形の薬剤を分包紙に挟んだ状態で粉砕すると、粉砕の際に分包紙が破れ、粉砕されてできた薬剤粉が粉砕器の周囲に飛び散るおそれがある。そして、薬剤粉が周囲に飛び散ると、この飛び散った薬剤粉の量だけ患者が薬剤を飲めず、医師によって処方された量の薬剤が患者によって摂取されないという問題がある。
【0018】
また、固形の薬剤が抗ガン剤などのような細胞毒性を有する薬剤からなる場合、薬剤粉が周囲に飛び散ると、粉砕作業をしていた看護師、薬剤師、医師、介護者等がこの飛び散った薬剤粉によって被爆し、健康被害を受けるおそれがあるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−264504号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】倉田なおみ著 「内服薬 経管投与ハンドブック」株式会社じほう 2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明が解決しようとする問題点は、固形の薬剤を破砕具で粉砕して懸濁液化させる場合、その作業に手間がかかり、しかも薬剤を破砕する際にロスを生じ、処方された薬剤の全量が懸濁液化され難い点である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、固形の薬剤を懸濁液化させるために、容器として使用するシリンジに薬剤破砕用の破砕手段を設け、懸濁液化させる前に、シリンジ内に入れた固形の薬剤を該破砕手段で予め破砕させる点を最も主要な特徴とする。
【0023】
すなわち、本発明に係る薬剤懸濁液化具は、シリンジと、該シリンジ内に入れられた固形の薬剤を破砕する破砕手段とを備えている。該シリンジは、外筒と、該外筒内を摺動するガスケットと、該ガスケットに連結されて該ガスケットを移動操作するプランジャとからなる。該外筒は底部にルアーテーパー部を有し、該ルアーテーパー部は該外筒内に通ずる貫通穴を同軸に有している。
【0024】
前記破砕手段は、前記シリンジの内部において固形の薬剤に当接して該薬剤を砕く1又は2以上の尖部を備えている。1又は2以上の尖部としては尖った部分を有していれば足り、針状のもの限定されるものではなく、例えば尖った部分が峰状に連なっていてもよい。
【0025】
前記破砕手段の具体例としては、例えば前記シリンジの外筒のルアーテーパー部の貫通穴を通して該シリンジの内部に挿入可能な針体を挙げることができる。ここで、針体は前記シリンジの外筒のルアーテーパー部に嵌合するキャップ体に設けられているのが好ましい。
【0026】
また、前記破砕手段の別の具体例としては、前記シリンジの外筒の肩部に、前記尖部を前記ガスケットに向けた状態で設けられた1又は2以上の針体からなるものでもよいし、前記ガスケットの先端部に、前記尖部を前記外筒の底部に向けて設けられた1又は2以上の針体からなるものでもよい。また、前記シリンジの内部に入れられた摺動駒の先端側に設けられた1又は2以上の針体からなるものでもよい。
【0027】
また、本発明に係る薬剤懸濁液化方法は、シリンジ内に固形の薬剤を入れ、該薬剤を破砕手段で破砕し、プランジャを介してガスケットを引っ張ってシリンジ内を負圧にし、ルアーテーパー部から該シリンジ内に水を吸引し、キャップをした後、該シリンジを電子レンジにかけて該水を該薬剤とともに加熱することを特徴とする。
【0028】
ここで、該シリンジを電子レンジにかけた後、該シリンジの先端を水に浸漬し、該シリンジのピストンを引いて該シリンジ内に水を吸引・追加し、懸濁薬液の温度を飲み頃の温度にしてもよい。また、該シリンジを電子レンジにかけた後、該シリンジを振とうして薬剤を良く分散懸濁化させてもよい。
【0029】
シリンジを電子レンジにかける時間は、電子レンジのワット数とシリンジ内の水量に依存するが、通常の家庭用電子レンジを使用した場合、10秒〜3分間の間にあり、8秒〜12秒が好ましい。また、薬剤とともにシリンジ内に入れる水は5mL〜10mLが好ましい。
【0030】
前記固形の薬剤としては錠剤(裸錠、コーティング錠)、カプセル剤又は丸剤を挙げることができる。また、該シリンジ内には単一種の薬剤を複数個同時に入れても良いし、複数種の薬剤を同時に入れてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の薬剤懸濁液化具は、懸濁薬液を移す工程を必要としないので、簡易懸濁法の場合のように懸濁薬液を別の容器(コップ)からシリンジに移さなくて済み、医療従事者に対する作業負担が少なく、しかも懸濁薬液の移し間違いのおそれもないという利点がある。
【0032】
また、本発明の薬剤懸濁液化具は、固形の薬剤を破砕する破砕手段を備えていて、薬剤を懸濁液化させる前に破砕できるようになっているので、強固な固形の薬剤を容易に懸濁・液化させることができるという利点がある。
【0033】
また、本発明の薬剤懸濁液化具は、固形の薬剤を破砕する破砕手段を備えていて、薬剤を懸濁液化させる前に破砕できるようになっているので、固形の薬剤が強固であっても、懸濁・液化の際の薬剤の溶け残りが少なくなり、従って、容器を激しく振とうしなくても、薬剤を容易に懸濁・液化させることができるという利点がある。
【0034】
また、本発明の薬剤懸濁液化具は、固形の薬剤を破砕する破砕手段を備えていて、薬剤を懸濁液化させる前に破砕できるようになっているので、普通の薬剤の場合、容器を振とうしなくても、薬剤を容易に懸濁・液化させることができるという利点がある。
【0035】
また、本発明の薬剤懸濁液化具は、固形の薬剤を破砕する破砕手段を備えていて、薬剤をシリンジの内部で破砕し、外部で破砕しないので、薬剤の破砕に伴う薬のロスを無くすことができ、薬剤の全てが懸濁液化に使用され、医師によって処方された薬剤の全てが患者によって摂取されるという利点がある。
【0036】
また、また、本発明の薬剤懸濁液化具は、固形の薬剤を破砕する破砕手段を備えていて、薬剤をシリンジの内部で破砕し、外部で破砕しないので、薬剤が抗ガン剤などのような細胞毒性を有する薬剤からなる場合であっても、薬剤粉が周囲に飛び散り、この飛び散った薬剤粉によって粉砕作業をしていた看護師、介護者等の医療従事者が被爆し、健康被害を受けるような心配が無いという利点がある。
【0037】
また、本発明の薬剤懸濁液化具は、密閉された容器の内部で固形の薬剤を懸濁・液化させ、しかも懸濁液を別の容器に移す工程を必要としないので、懸濁液内への異物(ほこり、カビ、細菌等)の混入のおそれが無いという利点がある。
【0038】
また、また、本発明の薬剤懸濁液化具は、シリンジを電子レンジにかけて加熱した後、該シリンジのピストンを引いて該シリンジ内に外部の冷たい水を吸引することができるので、懸濁薬液の温度を体温以下の飲み易い温度に調節することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る薬剤懸濁液化具の第一実施例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る薬剤懸濁液化具の第二実施例を示す説明図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】本発明に係る薬剤懸濁液化具の第三実施例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る薬剤懸濁液化具の第四実施例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る薬剤懸濁液化具の第五実施例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る薬剤懸濁液化具を使用して固形の薬剤を懸濁液化する際の各工程を示す工程図である。
【図8】本発明に係る薬剤懸濁液化具に固形の薬剤を入れた状態を示す説明図である。
【図9】針体に固形の薬剤を押し付ける直前の状態を示す説明図である。
【図10】固形の薬剤を針体で破砕した直後の状態を示す説明図である。
【図11】シリンジ内に水を吸い込んでいる状態を示す説明図である。
【図12】電子レンジにかける直前のシリンジの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、固形の薬剤を水に容易且つ確実に分散・懸濁液化させるという目的を、薬剤の取り違えや、薬剤(主薬)の損失ないし変質を生じさせることなく、容易に実現した。
【実施例1】
【0041】
図1は本発明に係る薬剤懸濁液化具の説明図であり、同図において、10はシリンジ、12はシリンジ10の先端部に嵌合しているキャップ体である。シリンジ10は略円筒状の外筒14と、外筒14内に摺動可能に挿入された略円柱状のガスケット16と、ガスケット16の後部に連結され、ガスケット16を前後に移動操作するプランジャ18とからなる。
【0042】
外筒14は透明なプラスチックの成型体からなり、本体を形成している筒部20と、筒部20の一方の端部側(同図の左側)が少し縮経した状態で形成された肩部22と、肩部22が更に細く縮経して一方の端部側に突出した状態で形成されたルアーテーパー部24と、筒部20の他方の端部側(同図の右側)に外側に拡がった状態で形成されたフランジ部26とからなる。ルアーテーパー部24の中心部には貫通穴28が形成されている。
【0043】
ガスケット16はゴムの成型体からなり、周囲にはリング状の突条部30を有し、後方側(同図の右側)にはプランジャ18が同軸に嵌合するための凹部32を有している。プランジャ18はプラスチックの成型体からなり、先端側(同図の左側)にはガスケット16の凹部32に嵌合する嵌合部34を有し、後端側(同図の右側)にはプランジャ18を前後に手で移動操作するためのフランジ部36を有している。
【0044】
キャップ体12は、シリンジ10の外筒14のルアーテーパー部24に嵌合する凹部38を有し、凹部38内には破砕手段である針体40が同軸に植設されている。そして、凹部38をルアーテーパー部24に嵌合させたとき、針体40はルアーテーパー部24の貫通穴28に突き刺さり、先端部がシリンジ10内に突出した状態になる。
【0045】
本発明に係る薬剤懸濁液化具の基本構成は以上の通りであるが、図2及び図3に示すように、シリンジ10の肩部22に破砕手段である複数本の針体42をガスケット16に向けた状態でリング状に設けてもよいし、図4に示すように、ガスケット16に破砕手段である複数本の針体42をシリンジ10のルアーテーパー部24に向けてリング状に設けてもよい。
【0046】
また、図5に示すように、破砕手段である複数本の針体42をシリンジ10の肩部22とガスケット16の両方にリング状に設けてもよい。また、図6に示すように、ルアーテーパー部24に向けて破砕手段である複数本の針体42を有する破砕駒44を固形の薬剤とともにシリンジ10の中に摺動可能に挿入するようにしてもよい。
【0047】
次に、上記薬剤懸濁液化具の使い方について、図7の工程図に沿って、図8〜図12を参照しながら説明する。ここで、図8〜図12は図7に示す各工程におけるシリンジ10及び固形の薬剤46の状態を示す説明図である。
【0048】
まず、図8に示すように、シリンジ10の外筒14からプランジャ18をガスケット16とともに引き抜き、シリンジ10のルアーテーパー部24にキャップ体12を嵌合させ、ルアーテーパー部24を下方に向けた状態で、外筒14の後方から外筒14の内部に固形の薬剤46を入れる。
【0049】
次に、外筒14の後方から外筒14の内部に向けてガスケット16及びプランジャ18を挿入し、図9に示すように、ガスケット16の先端部が固形の薬剤46に接した時点で、キャップ体12を一方の手で押さえながらプランジャ18を他方の手で強く押圧する。固形の薬剤46はガスケット16によって下方に強く押圧され、裏側から針体40,42が突き刺さり、図10に示すように、細かく破砕される。
【0050】
次に、シリンジ10のルアーテーパー部24からキャップ体12を外し、図11に示すように、予めコップの中に入れられた水にシリンジ10のルアーテーパー部24を浸漬し、プランジャ18を引っ張る。プランジャ18を引っ張ると、ガスケット16が引っ張られ、コップの中の水がルアーテーパー部24を通してシリンジ10内に入る。
【0051】
次に、図12に示すように、シリンジ10のルアーテーパー部24に別のキャップ体12を嵌合させ、シリンジ10を電子レンジにかける。シリンジ10内の水は破砕された薬剤とともに加熱され、薬剤は水の中に崩壊・分散し、薬剤の懸濁液が形成される。
【0052】
次に、キャップ体12を外し、ルアーテーパー部24をコップの中の水に再度浸漬し、水をシリンジ10内に吸引・追加する。シリンジ10内の懸濁薬液は追加された水によって飲み頃の温度になる。この状態になったところで、懸濁薬液を患者に、口から直接、又はチューブを介して、摂取させる。
【0053】
なお、シリンジ10にサーモテープ(温度によって色が変化するテープ)を貼っておき、サーモテープの色で懸濁液の温度がわかるようにしておけば、懸濁液の温度が飲み頃の温度になったか否かを速やかに確認することができる。また、この発明において、シリンジとは注射筒に限定されるものではなく、プランジャを前後させることにより液を吸い上げたり吐出できる注射器様の器具の全てをいう。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、固形の薬剤以外に、硬い菓子など、嚥下障害の患者が摂取し難い食物を摂取させる用途等にも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
10 シリンジ
12 キャップ体
14 外筒
16 ガスケット
18 プランジャ
20 筒部
22 肩部
24 ルアーテーパー部
26 フランジ部
28 貫通穴
30 突条部
32 凹部
34 嵌合部
36 フランジ部
38 凹部
40 針体
42 針体
44 破砕駒
46 固形の薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジと、該シリンジ内に入れられた固形の薬剤を破砕する破砕手段とを備え、該シリンジは、外筒と、該外筒内を摺動するガスケットと、該ガスケットを移動操作するプランジャとからなり、該外筒は底部にルアーテーパー部を有し、該ルアーテーパー部は該外筒内に通ずる貫通穴を同軸に有していることを特徴とする薬剤懸濁液化具。
【請求項2】
前記破砕手段が、前記シリンジの内部において固形の薬剤に当接して該薬剤を砕く1又は2以上の尖部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤懸濁液化具。
【請求項3】
前記破砕手段が、前記シリンジの外筒のルアーテーパー部の貫通穴を通して該シリンジの内部に挿入可能な針体からなることを特徴とする請求項2に記載の薬剤懸濁液化具。
【請求項4】
前記針体が、前記シリンジの外筒のルアーテーパー部に嵌合するキャップ体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の薬剤懸濁液化具。
【請求項5】
前記破砕手段が、前記シリンジの外筒の肩部に、前記尖部を前記ガスケットに向けた状態で設けられた1又は2以上の針体からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤懸濁液化具。
【請求項6】
前記破砕手段が、前記ガスケットの先端部に、前記尖部を前記外筒の底部に向けて設けられた1又は2以上の針体からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤懸濁液化具。
【請求項7】
前記破砕手段が前記シリンジの内部に入れられた摺動駒の先端側に設けられた1又は2以上の針体からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤懸濁液化具。
【請求項8】
シリンジ内に固形の薬剤を入れ、該薬剤を破砕手段で破砕し、プランジャを引っ張ってルアーテーパー部から該シリンジ内に水を吸引し、該シリンジを電子レンジにかけて該水を該薬剤とともに加熱することを特徴とする薬剤懸濁液化方法。
【請求項9】
前記シリンジを電子レンジにかけた後、該シリンジの先端を水に浸漬し、該シリンジのプランジャを引いて該シリンジ内に水を吸引・追加することを特徴とする請求項8に記載の薬剤懸濁液化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−284389(P2010−284389A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141770(P2009−141770)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(509169479)
【出願人】(509035598)
【Fターム(参考)】