薬剤投与装置制御における改良及びそれに関連する改良
【課題】 本発明は、吸入により患者の肺へ薬剤を投与する装置などの薬剤投与装置の制御に関する。
【解決手段】 薬剤投与装置は、患者に薬剤を投与する投与部と、患者に施す各治療に応じた治療情報を受信する入力部と、受信した治療情報に基づいて患者に投与する薬剤の量を制御する噴霧器制御部とを備える。入力部は、データキャリアから治療情報を無線周波数で受信する無線周波数入力部であることが好ましい。また、入力部は、完了した治療情報をデータキャリアに送信して記録させるように構成されている。
【解決手段】 薬剤投与装置は、患者に薬剤を投与する投与部と、患者に施す各治療に応じた治療情報を受信する入力部と、受信した治療情報に基づいて患者に投与する薬剤の量を制御する噴霧器制御部とを備える。入力部は、データキャリアから治療情報を無線周波数で受信する無線周波数入力部であることが好ましい。また、入力部は、完了した治療情報をデータキャリアに送信して記録させるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入により患者の肺へ薬剤を投与する装置などの薬剤投与装置の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の肺へ薬剤を投与する装置として、数多くのものが使用されている。吸入用の噴霧薬を投与するには、空気圧式のものやジェットタイプの噴霧器が特に効果的であるが、他のタイプの噴霧器も使用されている。その一つとして、超音波式の噴霧器があり、圧電性クリスタルの振動により、噴霧される薬剤が網目を通り抜け、その液滴が空気により運ばれる。そして、患者がその空気を吸い込み、薬剤が投与される。網目のゲージが、空気の流れにより運ばれる液滴の大きさを限定する。また、薬量測定のスペーサも使用することができる。スペーサを使用する際には、スペーサの保存用チェンバに煙霧状の薬剤を入れたり、保存用チェンバ内の空気中にパウダー状の薬剤を入れたりして、薬剤を投入する。そして、患者は保存用チェンバを使用して呼吸し、薬剤を含む空気を吸入する。このようなスペーサは、子供やお年寄りの治療や、ある特定の薬剤を使用する際に特に効果的である。通常、薬剤を投与するには、かなりの呼吸数が必要である。もちろん、一呼吸当りの薬剤の濃度は、呼吸を重ねる毎に減少するが、これは、患者によって吸入される空気を入れ替えるために保存用チェンバに周囲の空気が入り、薬剤が薄められることにより起こったり、また、チェンバ内の薬剤が付着することによりおこる。
【0003】
この明細書から解るように、本発明は全ての異なるタイプの薬剤投与装置に利用することができる。
【0004】
医者が患者の治療としてある薬剤を処方するとき、患者は薬剤を受け取るだけでなく、噴霧器や薬量測定のスペーサなどの薬剤投与装置も必要となる。噴霧器を使用する場合は、治療のために処方された薬剤量を噴霧器に入れる。そして、ほとんどの場合は、処方された薬剤量が投与されるまで、患者は繰り返し噴霧器を使って吸入する。残念ながら、必要な投与量が患者の肺に届いているという保証はない。ほとんどの薬剤が、肺に届く前に患者の気道でつまってしまい、薬剤の一部は呼気により肺から吐き出されてしまう。通常は、噴霧器により投与される薬剤の約10パーセントが肺まで届く。ところが、薬剤投与の効果は患者による装置の使用方法によるため、患者の肺に届く薬剤の割合はかなり変わってくる。患者が深く規則正しく吸入する場合は、十分な薬剤が肺まで届く。しかし、肺疾患の症状のある患者の呼吸は浅く、咳などの疾患症状により治療が中断されることもあるため、患者に投与される薬剤の量は実質的に減少し、患者は、医者が意図するだけの薬剤量の投与を受けることができない。
【0005】
ごく最近、この特許の出願人は、患者の肺に届く薬剤投与量を算出する噴霧器を発売した。患者が必要とするある特定の薬剤の投与量について予めプログラムされた噴霧器をその患者は受け取る。患者には、特定の薬剤が処方され、噴霧器を使用する前に、一般的には液状の薬剤を噴霧器に注入する。そして、噴霧器から吸入を始め、薬剤が患者に投与される。噴霧器の構造として、患者の吸気段階の最初の50パーセントの間のみに薬剤投与がなされ、装置を介した患者の吸入の流量が計測されるようになっている。そして、この計測より、患者が受けた薬剤投与量を算出する。予めプログラムされた薬剤がいったん投与されると、噴霧器内に噴霧されていない薬剤が残っていてもいなくても、噴霧器による薬剤の噴霧は自動的に止まり、次の薬剤投与までに、噴霧器をリセットしなくてはならない。この装置は、メディック−エイド社による以前の特許出願公開(GB−A−2316323)において開示されているが、その内容は本出願に含まれており参照されたい。
【0006】
本出願人の製品により、薬剤投与が極めて正確になった反面、患者の担当医が患者への薬剤投与量を変更したり、処方する薬剤を完全に変えたりする場合、噴霧器を返却して再度プログラミングし、適切な薬剤及び投与量の詳細がプログラムされた噴霧器に取り替えたりすることが必要になる。周知の薬剤投与システムにおいては、各治療に処方された薬剤が別々の薬剤バイアルに入っており、一回の治療に必要な薬剤がそれぞれのバイアルに入っている。したがって、一般的には、通常一ヶ月分の複数のバイアルを、一回の治療につき一つのバイアルを使うように患者に渡される。このような方法においては、各薬剤バイアルにバーコードを付け、各治療の前に噴霧器のバーコードリーダにバーコードを読ませ、薬剤を特定したり、投与すべき薬剤を識別したりする。しかしながら、各バイアルにバーコードを付けなければならず、製造価格が上昇することになる。また、ラベルの接着剤や使用された染料がプラスチック瓶の中の薬剤を汚染しないことや、その製品の貯蔵可能年数を短縮しないことを保証するため、法的な認可テスト行うことになり、二年から三年に渡る長期の安定性テストが必要となる。
【0007】
また別の先行技術の方法では、噴霧器を使用して、痛みを和らげるために鎮痛剤を投与する。その場合、該当患者に対しその薬剤投与装置の使用を制限することが重要なのは明らかである。患者には、薬剤及び噴霧器から独立しているI−ボタンが与えられ、治療のために噴霧器を作動させるには、噴霧器の接触面にI−ボタンを接触させなくてはならない。単に、一回の治療を行うための噴霧器のロックを解除する鍵としてそのボタンは使われるにすぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、吸入により患者の肺へ薬剤を投与する装置などの薬剤投与装置の制御に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の特徴として、薬剤パッケージは、薬剤投与装置において患者に投与する薬剤を入れた複数の薬剤バイアルと、薬剤投与装置で用いる薬剤治療情報を含む電子データキャリアとを有する。
【0010】
ここで言うバイアルとは、投与する薬剤を保持するのに適した容器を指す。このバイアルの構成は種々に異なる形で製造されるが、通常は、薬剤の安定性を保てる安全な環境を提供し、指定された品質保持期間を通して汚染を防ぐようなものでなくてはならない。また、通常はエンドユーザ側の使い勝手を考慮して開封しやすいものでなければならない。バイアルの種類は、薬剤に応じて、こうした条件を満たす機能を持つものを製造コストに照らして選択する。ここで、薬剤投与装置をいったん返却しなくても装置を再プログラムできる機能があるのは好都合である。薬剤が処方されるたびに、処方箋に基づき必要に応じて医師が投薬量を変更することにより、装置のプログラムを書き換えることが可能である。また、同一の装置を種々の異なる薬剤に用いることができ、そうした場合は、投与する薬剤に応じてプログラムを変更することができる。
【0011】
薬剤治療情報には、次の治療情報のうち少なくとも一つが含まれることが好ましい。
a.投薬量
b.投与する薬剤
c.薬剤の使用期限
d.データキャリアを備えたパッケージにおける治療回数。
【0012】
薬剤投与装置は、肺に吸入される気流に含ませた薬剤を投与するものであることが好ましい。薬剤投与装置は、薬剤が吸入に適する特定の粒径分布、一般的には1〜5ミクロンの範囲の粒径を有するように薬剤を噴霧化する噴霧剤発生器であってもよい。噴霧化した薬剤の肺への付着を最大にするため、噴霧発生器による薬剤の噴霧化動作が、患者の吸気における特定の時間内に行われることが好ましい。
【0013】
データキャリアは、ボタンの形状をとることが好ましい。治療の詳細情報を噴霧器内に送信するために、このデータキャリアを薬剤投与装置の受信面または受信領域に移してもよい。好ましくは、パッケージにデータキャリアを一つのみ供給し、バイアルの薬剤を投与する際には、その都度、このデータキャリアを薬剤投与装置の受信領域内に移して治療情報を送信させる。通常、データキャリアから装置への治療情報の送信は、パッケージに供給されたバイアルの個数に対応した回数のみ行えるようになっている。つまり、この装置において治療を実施できる回数は、バイアルの個数によって限定される。
【0014】
データキャリアは、薬剤投与装置の本体内部で送信される無線周波数から誘導的に電源を供給される無線周波装置であることが好ましい。無線周波装置を用いる利点として、周囲の環境から汚染を受ける恐れのある薬剤投与装置の本体とデータキャリアとの間に、電気的接続を必要としないことが挙げられる。データキャリアは、噴霧器からの駆動無線周波数信号に重畳させる無線周波数信号を折り返し生成し、噴霧器はその信号を受信、復号する。
【0015】
また、治療に関する情報はデータキャリアに返信され、記録されるのが好ましい。一連の治療がいったん完了すると、データキャリアが医師に返送されるか、あるいはデータキャリアからの情報が電話によって電子的に送信されるので、治療がどのように行われたか、更には患者が薬剤投与装置を正しく使用しているかを、医師側で確認することができる。
【0016】
バイアルを備えたパッケージの内部、またはその外面にデータキャリアを設けたことにより、法的な規制による煩わしさが最小限に抑えられる。また、患者がこの装置で許可されていない薬剤を使おうとしても、噴霧器が作動しないようにしているが、これは重要なことである。というのも、デオキシリボヌクレアーゼやA1ATなどのタンパク質系薬剤の中には、他の薬剤に汚染されると変質してしまうものがあるからである。したがって、一つの噴霧器を一つの薬剤に対してのみ用いることが必要である。また、薬剤の調合が、薬剤投与装置の製造に用いられたプラスチックに適合していない場合、噴霧器はその薬剤を認識すると作動しない。
【0017】
このデータキャリアを使用した結果、たとえばMDIスペーサシステムを用いる場合や、小児患者に対する場合など、呼吸の仕方が上手くなかったり、何らかの疾患によって呼吸が悪影響を受けたりすることで、患者の呼吸パターンが非効率的になることを予め見越して、各バイアルには予想使用量よりも多い薬剤を入れておくことができる。また、多めの薬剤を入れたバイアルを製造して、様々な治療に用いてもよく、そうした場合には、データキャリアに載せた治療情報によって投薬量を制御すればよい。このように、薬剤は、単一のバイアルの大きさで製造、販売できるが、投薬量は、治療情報として伝えられる投薬量情報に応じて様々に変えることができる。これにより量産効果が得られると共に、法的な規制による提出物件も少なくて済む。
【0018】
このデータキャリアで伝える治療情報は、医師によって決定または変更することが可能である。医師は、投薬量やその他の治療情報を変更することができる。そのためには、患者に対応した処方箋を調剤するための確実なインターフェースを医師が用いる必要がある。たとえば、投薬量は、個々の治療及び治療頻度の両方に応じて、患者ごとに調節することができる。これは特に、痛みの抑制や肺高血圧症用の薬剤など、血液中の投薬量を各患者に合わせて制御、調節しなくてはならないような全身的な適用の際に重要である。また、痛みの抑制においては、治療頻度を制御して過剰服用を防ぐ必要がある。
【0019】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与装置は、患者に薬剤を投与する投与部と、患者に施す各治療に応じた治療情報を受信する入力部と、受信した治療情報に基づいて患者に投与する薬剤の量を制御する噴霧器制御部とを備える。入力部は、データキャリアから治療情報を無線周波数で受信する無線周波数入力部であることが好ましい。また、入力部は、完了した治療情報をデータキャリアに送信して記録させるように構成されている。
【0020】
噴霧器は、薬剤の使用期限などの何らかの治療情報から、薬剤が投与に適さないと分かったときは、噴霧を防止する許可部を備えることが好ましい。
【0021】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与装置と共に用いる電子データキャリアは、指定された薬剤の投与において、その薬剤投与装置の使用に関する治療情報を保持するメモリと、その薬剤投与装置に治療情報を送信する出力部を有する。
【0022】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与システムは、指定された薬剤を投与する薬剤投与装置と、指定された薬剤に関連した治療情報を有する電子データキャリアとを備える。このキャリアは、指定された薬剤を用いる各治療に先立って、薬剤投与装置に治療情報を送信する出力部を備え、その治療情報に基づいて、薬剤投与装置は指定された薬剤を投与する。
【0023】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与装置の操作方法は、薬剤投与装置と共に用いる複数のバイアルを供給する工程と、治療情報を有するデータキャリアを供給する工程と、データキャリアから薬剤投与装置に治療情報を送信する工程と、薬剤投与装置内に薬剤を投入する工程と、データキャリアからの治療情報に応じて薬剤を投与する工程とから成る。
【0024】
本出願の実施の形態を、図面に基づき説明する。図面はあくまでも例示のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】薬剤投与用の噴霧器であり、ボタン型のデータキャリアを有する受信領域を含む。
【図2】図1の噴霧器の動作を示す流れ図の一部である。
【図2A】図1の噴霧器の動作を示す流れ図の一部である。
【図2B】図1の噴霧器の動作を示す流れ図の一部である。
【図3】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図3A】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図3B】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図3C】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図4A】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4B】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4C】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4D】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4E】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4F】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図5】処方を実施するために薬剤投与装置をどのように制御するかを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本体1及びマウスピース2を有する噴霧器10を示す。患者はマウスピース2を使って呼吸し、吸入中に噴霧された薬剤を投与される。さらに、噴霧器10は、ディスプレイ3及び入力部4を備える。ディスプレイ3は、器機の使用及び実施される治療に関する情報を表示し、受信領域としての入力部4には、治療に関する情報を装置10に転送するためにボタン状のデータキャリア5が配置される。
【0027】
噴霧器10を用いて、患者により吸入される空流で薬剤を投与する。薬剤はパッケージ(図示せず)として患者に与えられるが、そのパッケージには、個別の容器やバイアルが複数個含まれており、それぞれ別個の治療に使われる。通常、一ヶ月間の治療に十分なバイアルが患者に渡される。パッケージの中または外側にデータキャリア5が供給されており、そのデータキャリア5には、同梱されたバイアルの薬剤投与に関する情報が含まれている。
【0028】
この場合、ボタン5はメモリを持つ小さなマイクロチップを備え、そのマイクロチップは、アンテナに接続されている。噴霧器10は、無線周波数(RF)信号を発生するアンテナにさらに接続する無線周波数送信機を備える。ボタン5が受信領域4に配置されている場合、ボタン内のアンテナが無線周波数信号を受信し、発電してマイクロチップを作動する。そして、マイクロチップは、治療情報を含むボタン5のアンテナを介して、追加のRF信号を発生させる。これは、噴霧器10の内部で検出され、噴霧器10は、ボタン5から治療に関する情報を受け取ることができる。さらに、噴霧器10は、追加のRF信号を受信することができ、この信号により実際の治療に関する情報がボタンのメモリにダウンロードされる。それにより、ボタン5は、後で読み込まれ分析される実際の治療に関する情報を保存することができる。
【0029】
使用に適したRFシステムには、フィリップ社のHiTagがあり、データ保持用のメモリを有するボタン及びリーダを備え、リーダは、ボタン5からの情報を読みとったり、ボタン5にデータを書き込んだりする。
【0030】
薬剤投与装置10の本体1は、入力部4に隣接して、本体1の表面から離れた状態で仕切り壁状のボタンホルダ6を備えており、データキャリア5をはめ込む隙間を形成している。この場合、データキャリア5は、治療の間中ホルダ6の中にはめ込んだままにすることができるし、また薬剤のパッケージが使われている間中ずっとはめ込んだままにすることさえ可能である。ボタン5の紛失の可能性を最小限にするため、ボタンホルダ6はボタン5が落ちるのを防ぐインターロックを備える。
【0031】
マウスピース2の下方には、薬剤チェンバ8があり、それは、薬剤投与装置10が作動する前に薬剤を入れる容器または貯蔵器(図示を省略する)を有する。薬剤の噴霧は、本体1の上部で行われ、患者は、マウスピースを通して呼吸をし、吸入により薬剤を含む空気が肺まで運ばれる。薬剤投与装置10に薬剤を注入するには、マウスピース2を外して薬剤チェンバ8の容器に薬剤を注ぐ。その後、マウスピース2をチェンバ8の上部に戻す。薬剤投与装置10がハロライトのような噴霧器の場合、薬剤を容器に注入する前に中間部品を取り外し、また戻さなくてはならない。治療の終了後、薬剤チェンバを外し、残存する薬剤を空にして洗浄する。患者が2種類の異なる薬剤による治療を必要とする場合は、別個の薬剤チェンバ8に別の薬剤を入れて使うことができる。こうすることによって、使用する薬剤に悪影響をもたらす汚染を防ぐことができる。
【0032】
また別の実施例では、データキャリア5を保持する隙間を薬剤チェンバに形成する。ボタンホルダは入力部4を覆う形でボタンを保持する。この構成の利点としては、患者が一つの装置を使い、複数の異なる薬剤チェンバを使って別々の薬剤投与を受ける場合、チェンバに合わせてボタンを自動的に取り替える。薬剤が混在してはならない場合のみならず、異なった噴霧特性を要する場合にも、別個のチェンバが必要になる。
【0033】
本体1には空気供給ライン7が含まれるが、これは、噴霧器10が空気圧式のものであり、噴霧を実行するのに空気圧が必要になるからである。
【0034】
上方にある薬剤投与部を含む本体に加え、マウスビース2の下方及び無線周波数システムの半分の位置に、他の様々な部品が内蔵されている。図1には示されていないが、様々な電気回路などがあり、それらは、実施される治療を検出して分析し、また下記で必要とされる他の機能も実行する。
【0035】
図2及び3は、薬剤投与装置10の動作及びデータキャリア5と関連したその動作を示す流れ図である。図2の上部は、薬剤投与装置10の論理動作を示しており、この場合、空気圧式ジェット噴霧器は101から動作が始まる。使用に適した空気圧式噴霧器としては、メディック−エイド社のハロライトが挙げられる。まず、装置に空気供給ライン7を介して圧縮空気が送られているかどうかを、質問102として聞く。これは、空気圧式噴霧器であるので、圧縮空気により噴霧が行われる。たとえば、ポンプなどから圧縮空気が供給されるまで、噴霧器は作動しない。装置内の空気圧検出器が圧縮空気の供給を検出すると、装置は、バッテリーをチェックし、装置に十分な電力が送られているか確認する。バッテリーレベルは、バッテリーチャージ検出器により検出され、ディスプレイ3において患者に示される(図1参照)。次の工程104は、噴霧器内の空気流センサの較正である。この薬剤投与装置の動作には、患者の呼吸により装置を介して発生する空気の流れを知ることが必要になる。これは、第1に、薬剤投与を可能にするため、患者がいつ吸入を始めるべきかを示すのに必要であり、第二には、投与量が装置を介しての空気流の速さに依存するため、投与量を算出するのに必要となる。
【0036】
較正は自動的に行われるが、それが失敗した場合には患者に知らされ、その後すぐに装置の電源が切れる。次の工程105では、治療情報が薬剤投与装置に入力される。患者には30秒が与えられ、その間にデータリーダ部4にデータキャリア5をはめ込んで治療情報を入力する。それにより、治療情報がダウンロードされる。ほとんどの場合、データキャリア5は、治療と治療の間には隙間にはめ込まれたままにされ、新しい薬剤のパッケージを使用するときのみにはめ替える必要がある。いったん治療情報がダウンロードされると、薬剤投与装置は、供給された薬剤量すべてが投与されていないかをチェックする。十分な薬剤量が残っている場合は、薬剤投与が開始される。パッケージ内に残っている薬剤投与量の値が、当初に支給された総投与量のある一定の割合を下回ると、患者は、新しいパッケージを電話などで注文するように指示される。この場合は、75パーセントの薬剤量が投与された時点となる。これを知らせるため、点滅する電話の記号がディスプレイ3に5秒間現れる。たとえば、20個のバイアルがパッケージに含まれていた場合、残りが5個になり、それらを使用者が使おうとすると電話の記号がその都度点滅する。または、噴霧器が電話線に繋がっている場合は、新しい処方の要求が遠隔地にあるコンピュータに送られ、これにより、新しい処方の発行が手配されることになる。あるいは、新しい薬剤のパッケージが、その要求の度に薬局から直接郵便で届けられる。
【0037】
データキャリア5は様々な治療情報を持っており、それらの情報はパッケージに含まれるバイアルの数を含む。その数は、治療過程で受けられる治療の回数と一致する。事実上、データキャリアはメモリ装置であり、特に、一連の治療の合計回数を保存する。各治療が行われると、実施する治療の分析の一環として、治療回数が数えられる。そして、電話システムに接続しているモデムが薬剤投与装置に含まれている場合は、再注文が自動で行われ、新たな治療の処方を要求することができる。薬剤投与装置内の電子プロセッサは、実施された治療回数を含む、治療に関する多くの要素をモニタして分析する。さらに薬剤が必要な場合は、処理システムに信号を送る。そして、そのシステムはモデムを介して再処方を指示する。あるいは、電子ネットワークなどの、電子的な別の形式の通信を利用することもできる。
【0038】
図3は、図2の流れ図から継続しており、106で再び圧縮空気があるかどうかチェックする。そして、圧縮空気がある場合、患者が吸入を始めるまで噴霧器は待機の状態になる。患者が十分に力強く吸入する場合は、圧力センサなどの適切なセンサを使って最初の3回の呼吸が計測され、吸気時間の平均が求められる。そして、次の呼吸において、先行する3回の吸気時間の平均で算出されたその呼吸の最初の50パーセントにわたる時間中に薬剤が投与される。治療の間、薬剤投与装置による投与量は、継続して算出される。データキャリア5により送られた治療情報に含まれる、その患者が受けるべき薬剤投与量に、合計投与量が達すると、聞き取り可能な音が発生し、装置の電源が切れる。さらに、実施された治療に関する情報は、治療後または次の治療が始まる前であれば、データキャリアへのダウンロードが可能である。このようにダウンロードした情報には、いつ治療が行われたか、一回の治療が完了するのにどのくらいの時間を要したか、治療は完了したかどうか、また治療中の患者の吸気時間、患者の吸気の流量などが含まれる。そして、一回の薬剤投与が完了すると、薬剤投与装置は、そのデータキャリア5に対応した薬剤パッケージで実施する治療の残り回数を減らす。
【0039】
データキャリア5は、複数のデータフィールドを持っており、それらは、データキャリアが薬剤パッケージに供給される前にキャリアにプログラムされる。それらのフィールドは、その薬剤パッケージで投与される治療の回数や、セキュリティコードまたはアクセスコードを有しており、データキャリア5のセキュリティコードは薬剤投与装置を識別し、同梱された薬剤パッケージに相当する一セット分の治療を実施するためのみに薬剤装置が使用されるようにする。フィールドは、医者がプログラムすることのできるデータキャリア内に含まれていてもよく、患者別のパラメータを含むようにできる。実際、患者別に処方するため、データキャリアのフィールドに含まれる治療情報は、医者により修正することも可能である。これにより、個々の治療や、治療の頻度の双方において、その患者に合わせて必要な薬剤量を調整することができる。これは、痛み止めや肺高血圧など、血中の薬剤量が制限され各患者に合わせて調整されることが必要な全身的な適用において重要なことである。薬剤の過剰摂取を防ぐため、痛み止めの処方において治療頻度を制限する必要がある。さらに、データキャリアは、薬剤の識別、各治療における薬剤投与量、及び薬剤の使用期限も含む。また、データキャリアが治療の実施を記録するのに使用される場合、その情報の記録用として、予備フィールドが使用可能となる。薬剤投与装置は、データキャリアに情報をダウンロードすることができ、その情報は、薬剤投与装置及び患者を識別するための装置のシリアルナンバー、実施された治療の回数、また、治療に関する他の情報を含む。そして、医者は、治療の実施に関する情報を受け取り、それらの治療が十分かどうかを分析する。問題があると思われる場合には、治療に介入することができる。たとえば、患者が治療を適切に受けていないかどうか、ある特定の種類の治療が患者に合っていないかどうか、医者は判断することができる。患者は、薬剤投与システムの使用に関してさらにトレーニングを受けることもできるし、また、その患者にとって別の治療が適切であるとされることもある。治療に関する情報を受け取る医者にとっての一つの利点は、治療に関する患者の見解ではなく、治療に関する真の情報を医者が受け取ることである。というのも、患者の見解は、事実と著しく異なる可能性があるからである。医者は、データキャリア5にダウンロードする治療に関する情報に、幾つかの方法でアクセスすることができる。たとえば、データキャリアの情報を読みとる適切な装置を医者が持っている場合は、医者はデータキャリアを患者から受け取ることができる。また、データキャリアを、データキャリアの製造元やデータキャリアからその情報をダウンロードすることのできる他の仲介業者に郵送し、医者にその情報を転送してもらう。あるいは、患者は電話でその情報を直接医者や他の仲介業者に転送することができる。
【0040】
情報の転送には電話インターフェースを使用することができ、治療の実施や患者が処方通りに治療を受けているかなどについての情報は、電話線を介して、製造元や、患者の担当医や、他の仲介業者へと送られる。通常、その情報は、薬剤投与装置の機種やそのシリアルナンバー、薬剤の識別、使用する薬剤の治療の回数、及び他の役立つ情報を特定する。電話インターフェースは、薬剤投与装置から直接、もしくはデータキャリアのいずれからでも、実施された治療に関する情報を受け取るように構成することができる。薬剤投与装置から情報が直接送られる場合、一般的には、通常のデータケーブル接続により電話インターフェースに接続される。しかし、データキャリア5から治療情報を電話インターフェースが受け取る場合は、データキャリアから情報をダウンロードするためのリーダが必要になる。このようなリーダは、上記の噴霧器の無線周波数送信機に技術的に類似したものである。そして、治療情報は、電話線を介して、直接医者または仲介媒体のどちらかへと転送される。その媒体は、仲介業者により管理されるデータベースであってもよい。そのデータベースには、電話により直接アクセスしてもよいし、インターネットを介してもよい。いずれにしても、患者の担当医は、実施された治療に関する情報にアクセスすることができるため、適切な処置を施すことができる。たとえば、治療を患者が処方通り受けていないことが明らかな場合、または患者が装置を適切に操作できないことが明らかな場合は、医者は患者に連絡して治療に介入することができる。また、薬剤パッケージのバイアルの残りがある一定の量になったとき、薬剤をさらに注文するように患者に対して表示する薬剤投与装置について上記で説明した。電話インターフェースの使用により、患者が受けた治療に関する情報に、再処方の必要性を示すものを加えることができる。そしてこの情報は、電話線を介して仲介業者または医者に送られ、新しい処方が準備され患者へと送られる。あるいは、新しいバイアルの薬剤パッケージを直接患者に送ることもできる。
【0041】
このように、データキャリア5の使用により、多くの異なる利点が得られる。まず、薬剤投与装置において許可されていない薬剤の使用を防ぐことができる。これは、二点において有益であるといえる。まず、ヒトデオキシリボヌクレアーゼやA1ATなどの蛋白質を基礎とする薬剤は、他の薬物に汚染されると使用できなくなる。したがって、そのような薬剤の一つを投与するのに使用される装置は、その一つの薬剤専用でなくてはならず、他の薬剤には使用できない。また、異なる薬剤を投与するための装置にプログラムされた投与量は、すべての薬物に適当ではないかもしれない。したがって、誤った投与量が患者に与えられる可能性は低くなる。また、薬剤の中には、たとえば、薬剤投与装置がプラスチックでできているため、装置に適さない場合もある。
【0042】
さらに、バイアルの中の規定の薬剤量は、通常すべて投与されるようになっているが、それにより投与すべき薬剤量を制御するのではなく、データキャリアの投薬治療情報によって、投与量が制限される。これは非常に重要なことである。患者の呼吸パターンにより薬剤が無駄になることを考慮し、通常必要とされる薬剤量よりも多くの薬剤の入ったバイアルを使用することができる。しかし、バイアルの中の薬剤すべてが噴霧されてしまう前に、適切な量の薬剤が投与されたことが認識された時点で、薬剤投与は停止される。またこれは、データキャリアの治療情報を利用して患者に異なる薬剤投与量を処方できるが、一つの濃度及び薬量のバイアルを生産、販売するだけでよく、それを様々な投与量応じて使用できることを意味する。したがって、量産効果を上げると共に、法による拘束を抑えることができる。以前は、処方された投与量に応じて、一つの薬剤に関して異なる濃度の異なる薬量を供給する必要があったが、データキャリア5を使用すれば、一つの薬剤について、生産されるべき濃度及び薬量の種類は少なくなる。
【0043】
また、データキャリア5は、患者が養生法を守っているかどうかについての情報を記録することができ、直接処方することさえできる。医者は、薬剤投与装置10から、データキャリア5に記録された情報に頼ることができ、患者が処方を守っているかどうか、また患者の吸気効率について、患者自身の報告に医者は頼る必要がない。
【0044】
データキャリア5は、複数のバイアルと共に支給されるので、異なる種類のパッケージを異なる治療に使用することができる。薬剤によっては、プラスチックの投与量単位のバイアルで供給されなければならず、また別の薬剤は、使用するに当って還元するように二つに分かれた状態のパッケージで供給されなければならない。データキャリアは、パッケージの箱の外側に付けられ、通常一ヶ月分の薬剤パッケージ全部に関する投与量情報を有するので、いずれのバイアルについても対応できる。データキャリアは、バイアルに取り付けられているわけではないので、薬剤投与システムへの薬剤導入のための包装に関する要件、法的な要件、及び開発に関する制限を最小限にすることができる。これにより、起こりうる薬剤パッケージの汚染の問題を防ぐことができる。ラベルや印字がプラスチックのバイアルに使われている場合や、保存期間中に染料や接着剤が薬剤へ流れ込んでいないかどうかを確認するための、2年にも及ぶ長期の安定性テストが必要な場合に、これは重要なことである。
【0045】
図4aから4fは様々な種類のバイアルを示しており、これらはこの発明を実行するにあたり使用に適したものである。図4aは、薬剤投与まで二種類の成分を別々に保持しておく、二重に仕切られたバイアルである。そして、二種類の物質は、使用される直前に調合される。たとえば、バイアルの一室には、液状の薬剤を、片方にはパウダー状の薬剤を入れ、これらを混ぜ合わせパウダー状の薬剤を液状のものに溶かす。あるいは、バイアルの両方の部分に液状の薬剤が入っている場合、投与する薬物になるように調合される。このようなパッケージは、この分野でよく知られており、通常は、ピストンを回転させて二つに仕切られた部屋の間のシールを破るようになっている。
【0046】
図4bは、エラストマー栓のガラスバイアルである。これは、液状またはパウダー状の薬剤用である。
【0047】
図4cは、液状の薬剤用のガラスバイアルである。バイアルの上部を折って液状の薬剤を使用する。
【0048】
図4dは、吸入用のパウダー状の薬剤を保持するゼラチンカプセルである。パウダー状の薬剤を使用するには、ゼラチンカプセルを破る必要がある。
【0049】
図4eは、パウダー状の薬剤を保持するホイルの水疱形のパックである。
【0050】
図4fは、液状の薬剤を保持するポリエチレンブローフィルシールバイアルである。
【0051】
もちろん、これらのバイアルは、すべて一般的な実例であり、これらの例に限定されることはない。
【0052】
薬剤は、分離しているバイアルではなく、噴霧チェンバや薬剤チェンバなどの、噴霧発生システムの一部として組み込んでもよい。こうすることにより、治療を行うために投与薬をチェンバに移す必要がなく、患者にとって扱い易い。また、治療後にチェンバを処分するため、洗浄の必要がなく、汚染の可能性もなくなる。この場合、薬剤チェンバなどが、薬剤を保持したり移したりするのに適したバイアルとして実際に使われる。
【0053】
上記の実施形態は本発明の一例であり、この発明はその例に限定されるわけではない。たとえば、他の薬剤投与装置も使用することができ、圧電タイプや超音波タイプなど他の種類の噴霧器や、薬量測定スペーサなどのパウダー状の薬剤を投与するシステムも使用することができる。また、データキャリアは、データを転送するために、Iボタンなど、電気的接触が起こることを必要とするものであってもよい。
【0054】
図5は、薬剤投与装置により収集されたデータを分析のためにどのようにデータセンターに送るかを示す流れ図である。データセンターは、地域の病院や診療所に配置されていてもよいが、ほとんどの場合、その患者を担当する臨床医に処理結果は集められる。最初に医者は治療を処方し、治療に関するプロトコルについて患者から同意を得る。これにより、患者に治療用の製品が渡され、データセンターにより処理が設定される。患者がデータセンターや通信リンクを介して情報を送るたびに分析が行われ、すべてが計画通りに進んでいる場合は、患者にさらに薬剤が支給される。しかし、データに何かしら問題があるような場合は、医者は患者と連絡を取り、治療について話し合う。
【0055】
図5において、患者は薬剤投与装置50を使用するが、ここでは例として、メディック−エイド社のハロライトが示されている。時折、モデム51により治療情報がデータセンター52に送られる。それは直接行われるか、もしくはモデム内のデータキャリア53により行われる。あるいは、データキャリア53をデータセンター52に郵送する。工程54においてデータが解析され、結果が良い場合は、処方箋を発行するか、追加の薬剤を直接調剤して、患者に薬剤をさらに支給する。結果が満足のいくものでない場合は医者に連絡が入り、治療における問題をつきとめるために医者は患者に連絡する。
【符号の説明】
【0056】
1 本体
2 マウスピース
3 ディスプレイ
4 入力部(データリーダ部)
5 データキャリア(ボタン)
6 ボタンホルダ
7 空気供給ライン
8 薬剤チェンバ
10 薬剤投与装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入により患者の肺へ薬剤を投与する装置などの薬剤投与装置の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の肺へ薬剤を投与する装置として、数多くのものが使用されている。吸入用の噴霧薬を投与するには、空気圧式のものやジェットタイプの噴霧器が特に効果的であるが、他のタイプの噴霧器も使用されている。その一つとして、超音波式の噴霧器があり、圧電性クリスタルの振動により、噴霧される薬剤が網目を通り抜け、その液滴が空気により運ばれる。そして、患者がその空気を吸い込み、薬剤が投与される。網目のゲージが、空気の流れにより運ばれる液滴の大きさを限定する。また、薬量測定のスペーサも使用することができる。スペーサを使用する際には、スペーサの保存用チェンバに煙霧状の薬剤を入れたり、保存用チェンバ内の空気中にパウダー状の薬剤を入れたりして、薬剤を投入する。そして、患者は保存用チェンバを使用して呼吸し、薬剤を含む空気を吸入する。このようなスペーサは、子供やお年寄りの治療や、ある特定の薬剤を使用する際に特に効果的である。通常、薬剤を投与するには、かなりの呼吸数が必要である。もちろん、一呼吸当りの薬剤の濃度は、呼吸を重ねる毎に減少するが、これは、患者によって吸入される空気を入れ替えるために保存用チェンバに周囲の空気が入り、薬剤が薄められることにより起こったり、また、チェンバ内の薬剤が付着することによりおこる。
【0003】
この明細書から解るように、本発明は全ての異なるタイプの薬剤投与装置に利用することができる。
【0004】
医者が患者の治療としてある薬剤を処方するとき、患者は薬剤を受け取るだけでなく、噴霧器や薬量測定のスペーサなどの薬剤投与装置も必要となる。噴霧器を使用する場合は、治療のために処方された薬剤量を噴霧器に入れる。そして、ほとんどの場合は、処方された薬剤量が投与されるまで、患者は繰り返し噴霧器を使って吸入する。残念ながら、必要な投与量が患者の肺に届いているという保証はない。ほとんどの薬剤が、肺に届く前に患者の気道でつまってしまい、薬剤の一部は呼気により肺から吐き出されてしまう。通常は、噴霧器により投与される薬剤の約10パーセントが肺まで届く。ところが、薬剤投与の効果は患者による装置の使用方法によるため、患者の肺に届く薬剤の割合はかなり変わってくる。患者が深く規則正しく吸入する場合は、十分な薬剤が肺まで届く。しかし、肺疾患の症状のある患者の呼吸は浅く、咳などの疾患症状により治療が中断されることもあるため、患者に投与される薬剤の量は実質的に減少し、患者は、医者が意図するだけの薬剤量の投与を受けることができない。
【0005】
ごく最近、この特許の出願人は、患者の肺に届く薬剤投与量を算出する噴霧器を発売した。患者が必要とするある特定の薬剤の投与量について予めプログラムされた噴霧器をその患者は受け取る。患者には、特定の薬剤が処方され、噴霧器を使用する前に、一般的には液状の薬剤を噴霧器に注入する。そして、噴霧器から吸入を始め、薬剤が患者に投与される。噴霧器の構造として、患者の吸気段階の最初の50パーセントの間のみに薬剤投与がなされ、装置を介した患者の吸入の流量が計測されるようになっている。そして、この計測より、患者が受けた薬剤投与量を算出する。予めプログラムされた薬剤がいったん投与されると、噴霧器内に噴霧されていない薬剤が残っていてもいなくても、噴霧器による薬剤の噴霧は自動的に止まり、次の薬剤投与までに、噴霧器をリセットしなくてはならない。この装置は、メディック−エイド社による以前の特許出願公開(GB−A−2316323)において開示されているが、その内容は本出願に含まれており参照されたい。
【0006】
本出願人の製品により、薬剤投与が極めて正確になった反面、患者の担当医が患者への薬剤投与量を変更したり、処方する薬剤を完全に変えたりする場合、噴霧器を返却して再度プログラミングし、適切な薬剤及び投与量の詳細がプログラムされた噴霧器に取り替えたりすることが必要になる。周知の薬剤投与システムにおいては、各治療に処方された薬剤が別々の薬剤バイアルに入っており、一回の治療に必要な薬剤がそれぞれのバイアルに入っている。したがって、一般的には、通常一ヶ月分の複数のバイアルを、一回の治療につき一つのバイアルを使うように患者に渡される。このような方法においては、各薬剤バイアルにバーコードを付け、各治療の前に噴霧器のバーコードリーダにバーコードを読ませ、薬剤を特定したり、投与すべき薬剤を識別したりする。しかしながら、各バイアルにバーコードを付けなければならず、製造価格が上昇することになる。また、ラベルの接着剤や使用された染料がプラスチック瓶の中の薬剤を汚染しないことや、その製品の貯蔵可能年数を短縮しないことを保証するため、法的な認可テスト行うことになり、二年から三年に渡る長期の安定性テストが必要となる。
【0007】
また別の先行技術の方法では、噴霧器を使用して、痛みを和らげるために鎮痛剤を投与する。その場合、該当患者に対しその薬剤投与装置の使用を制限することが重要なのは明らかである。患者には、薬剤及び噴霧器から独立しているI−ボタンが与えられ、治療のために噴霧器を作動させるには、噴霧器の接触面にI−ボタンを接触させなくてはならない。単に、一回の治療を行うための噴霧器のロックを解除する鍵としてそのボタンは使われるにすぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、吸入により患者の肺へ薬剤を投与する装置などの薬剤投与装置の制御に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の特徴として、薬剤パッケージは、薬剤投与装置において患者に投与する薬剤を入れた複数の薬剤バイアルと、薬剤投与装置で用いる薬剤治療情報を含む電子データキャリアとを有する。
【0010】
ここで言うバイアルとは、投与する薬剤を保持するのに適した容器を指す。このバイアルの構成は種々に異なる形で製造されるが、通常は、薬剤の安定性を保てる安全な環境を提供し、指定された品質保持期間を通して汚染を防ぐようなものでなくてはならない。また、通常はエンドユーザ側の使い勝手を考慮して開封しやすいものでなければならない。バイアルの種類は、薬剤に応じて、こうした条件を満たす機能を持つものを製造コストに照らして選択する。ここで、薬剤投与装置をいったん返却しなくても装置を再プログラムできる機能があるのは好都合である。薬剤が処方されるたびに、処方箋に基づき必要に応じて医師が投薬量を変更することにより、装置のプログラムを書き換えることが可能である。また、同一の装置を種々の異なる薬剤に用いることができ、そうした場合は、投与する薬剤に応じてプログラムを変更することができる。
【0011】
薬剤治療情報には、次の治療情報のうち少なくとも一つが含まれることが好ましい。
a.投薬量
b.投与する薬剤
c.薬剤の使用期限
d.データキャリアを備えたパッケージにおける治療回数。
【0012】
薬剤投与装置は、肺に吸入される気流に含ませた薬剤を投与するものであることが好ましい。薬剤投与装置は、薬剤が吸入に適する特定の粒径分布、一般的には1〜5ミクロンの範囲の粒径を有するように薬剤を噴霧化する噴霧剤発生器であってもよい。噴霧化した薬剤の肺への付着を最大にするため、噴霧発生器による薬剤の噴霧化動作が、患者の吸気における特定の時間内に行われることが好ましい。
【0013】
データキャリアは、ボタンの形状をとることが好ましい。治療の詳細情報を噴霧器内に送信するために、このデータキャリアを薬剤投与装置の受信面または受信領域に移してもよい。好ましくは、パッケージにデータキャリアを一つのみ供給し、バイアルの薬剤を投与する際には、その都度、このデータキャリアを薬剤投与装置の受信領域内に移して治療情報を送信させる。通常、データキャリアから装置への治療情報の送信は、パッケージに供給されたバイアルの個数に対応した回数のみ行えるようになっている。つまり、この装置において治療を実施できる回数は、バイアルの個数によって限定される。
【0014】
データキャリアは、薬剤投与装置の本体内部で送信される無線周波数から誘導的に電源を供給される無線周波装置であることが好ましい。無線周波装置を用いる利点として、周囲の環境から汚染を受ける恐れのある薬剤投与装置の本体とデータキャリアとの間に、電気的接続を必要としないことが挙げられる。データキャリアは、噴霧器からの駆動無線周波数信号に重畳させる無線周波数信号を折り返し生成し、噴霧器はその信号を受信、復号する。
【0015】
また、治療に関する情報はデータキャリアに返信され、記録されるのが好ましい。一連の治療がいったん完了すると、データキャリアが医師に返送されるか、あるいはデータキャリアからの情報が電話によって電子的に送信されるので、治療がどのように行われたか、更には患者が薬剤投与装置を正しく使用しているかを、医師側で確認することができる。
【0016】
バイアルを備えたパッケージの内部、またはその外面にデータキャリアを設けたことにより、法的な規制による煩わしさが最小限に抑えられる。また、患者がこの装置で許可されていない薬剤を使おうとしても、噴霧器が作動しないようにしているが、これは重要なことである。というのも、デオキシリボヌクレアーゼやA1ATなどのタンパク質系薬剤の中には、他の薬剤に汚染されると変質してしまうものがあるからである。したがって、一つの噴霧器を一つの薬剤に対してのみ用いることが必要である。また、薬剤の調合が、薬剤投与装置の製造に用いられたプラスチックに適合していない場合、噴霧器はその薬剤を認識すると作動しない。
【0017】
このデータキャリアを使用した結果、たとえばMDIスペーサシステムを用いる場合や、小児患者に対する場合など、呼吸の仕方が上手くなかったり、何らかの疾患によって呼吸が悪影響を受けたりすることで、患者の呼吸パターンが非効率的になることを予め見越して、各バイアルには予想使用量よりも多い薬剤を入れておくことができる。また、多めの薬剤を入れたバイアルを製造して、様々な治療に用いてもよく、そうした場合には、データキャリアに載せた治療情報によって投薬量を制御すればよい。このように、薬剤は、単一のバイアルの大きさで製造、販売できるが、投薬量は、治療情報として伝えられる投薬量情報に応じて様々に変えることができる。これにより量産効果が得られると共に、法的な規制による提出物件も少なくて済む。
【0018】
このデータキャリアで伝える治療情報は、医師によって決定または変更することが可能である。医師は、投薬量やその他の治療情報を変更することができる。そのためには、患者に対応した処方箋を調剤するための確実なインターフェースを医師が用いる必要がある。たとえば、投薬量は、個々の治療及び治療頻度の両方に応じて、患者ごとに調節することができる。これは特に、痛みの抑制や肺高血圧症用の薬剤など、血液中の投薬量を各患者に合わせて制御、調節しなくてはならないような全身的な適用の際に重要である。また、痛みの抑制においては、治療頻度を制御して過剰服用を防ぐ必要がある。
【0019】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与装置は、患者に薬剤を投与する投与部と、患者に施す各治療に応じた治療情報を受信する入力部と、受信した治療情報に基づいて患者に投与する薬剤の量を制御する噴霧器制御部とを備える。入力部は、データキャリアから治療情報を無線周波数で受信する無線周波数入力部であることが好ましい。また、入力部は、完了した治療情報をデータキャリアに送信して記録させるように構成されている。
【0020】
噴霧器は、薬剤の使用期限などの何らかの治療情報から、薬剤が投与に適さないと分かったときは、噴霧を防止する許可部を備えることが好ましい。
【0021】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与装置と共に用いる電子データキャリアは、指定された薬剤の投与において、その薬剤投与装置の使用に関する治療情報を保持するメモリと、その薬剤投与装置に治療情報を送信する出力部を有する。
【0022】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与システムは、指定された薬剤を投与する薬剤投与装置と、指定された薬剤に関連した治療情報を有する電子データキャリアとを備える。このキャリアは、指定された薬剤を用いる各治療に先立って、薬剤投与装置に治療情報を送信する出力部を備え、その治療情報に基づいて、薬剤投与装置は指定された薬剤を投与する。
【0023】
また、本発明の更なる特徴として、薬剤投与装置の操作方法は、薬剤投与装置と共に用いる複数のバイアルを供給する工程と、治療情報を有するデータキャリアを供給する工程と、データキャリアから薬剤投与装置に治療情報を送信する工程と、薬剤投与装置内に薬剤を投入する工程と、データキャリアからの治療情報に応じて薬剤を投与する工程とから成る。
【0024】
本出願の実施の形態を、図面に基づき説明する。図面はあくまでも例示のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】薬剤投与用の噴霧器であり、ボタン型のデータキャリアを有する受信領域を含む。
【図2】図1の噴霧器の動作を示す流れ図の一部である。
【図2A】図1の噴霧器の動作を示す流れ図の一部である。
【図2B】図1の噴霧器の動作を示す流れ図の一部である。
【図3】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図3A】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図3B】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図3C】図2に示す流れ図の残りの部分である。
【図4A】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4B】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4C】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4D】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4E】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図4F】適切な薬剤バイアルの種類である。
【図5】処方を実施するために薬剤投与装置をどのように制御するかを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本体1及びマウスピース2を有する噴霧器10を示す。患者はマウスピース2を使って呼吸し、吸入中に噴霧された薬剤を投与される。さらに、噴霧器10は、ディスプレイ3及び入力部4を備える。ディスプレイ3は、器機の使用及び実施される治療に関する情報を表示し、受信領域としての入力部4には、治療に関する情報を装置10に転送するためにボタン状のデータキャリア5が配置される。
【0027】
噴霧器10を用いて、患者により吸入される空流で薬剤を投与する。薬剤はパッケージ(図示せず)として患者に与えられるが、そのパッケージには、個別の容器やバイアルが複数個含まれており、それぞれ別個の治療に使われる。通常、一ヶ月間の治療に十分なバイアルが患者に渡される。パッケージの中または外側にデータキャリア5が供給されており、そのデータキャリア5には、同梱されたバイアルの薬剤投与に関する情報が含まれている。
【0028】
この場合、ボタン5はメモリを持つ小さなマイクロチップを備え、そのマイクロチップは、アンテナに接続されている。噴霧器10は、無線周波数(RF)信号を発生するアンテナにさらに接続する無線周波数送信機を備える。ボタン5が受信領域4に配置されている場合、ボタン内のアンテナが無線周波数信号を受信し、発電してマイクロチップを作動する。そして、マイクロチップは、治療情報を含むボタン5のアンテナを介して、追加のRF信号を発生させる。これは、噴霧器10の内部で検出され、噴霧器10は、ボタン5から治療に関する情報を受け取ることができる。さらに、噴霧器10は、追加のRF信号を受信することができ、この信号により実際の治療に関する情報がボタンのメモリにダウンロードされる。それにより、ボタン5は、後で読み込まれ分析される実際の治療に関する情報を保存することができる。
【0029】
使用に適したRFシステムには、フィリップ社のHiTagがあり、データ保持用のメモリを有するボタン及びリーダを備え、リーダは、ボタン5からの情報を読みとったり、ボタン5にデータを書き込んだりする。
【0030】
薬剤投与装置10の本体1は、入力部4に隣接して、本体1の表面から離れた状態で仕切り壁状のボタンホルダ6を備えており、データキャリア5をはめ込む隙間を形成している。この場合、データキャリア5は、治療の間中ホルダ6の中にはめ込んだままにすることができるし、また薬剤のパッケージが使われている間中ずっとはめ込んだままにすることさえ可能である。ボタン5の紛失の可能性を最小限にするため、ボタンホルダ6はボタン5が落ちるのを防ぐインターロックを備える。
【0031】
マウスピース2の下方には、薬剤チェンバ8があり、それは、薬剤投与装置10が作動する前に薬剤を入れる容器または貯蔵器(図示を省略する)を有する。薬剤の噴霧は、本体1の上部で行われ、患者は、マウスピースを通して呼吸をし、吸入により薬剤を含む空気が肺まで運ばれる。薬剤投与装置10に薬剤を注入するには、マウスピース2を外して薬剤チェンバ8の容器に薬剤を注ぐ。その後、マウスピース2をチェンバ8の上部に戻す。薬剤投与装置10がハロライトのような噴霧器の場合、薬剤を容器に注入する前に中間部品を取り外し、また戻さなくてはならない。治療の終了後、薬剤チェンバを外し、残存する薬剤を空にして洗浄する。患者が2種類の異なる薬剤による治療を必要とする場合は、別個の薬剤チェンバ8に別の薬剤を入れて使うことができる。こうすることによって、使用する薬剤に悪影響をもたらす汚染を防ぐことができる。
【0032】
また別の実施例では、データキャリア5を保持する隙間を薬剤チェンバに形成する。ボタンホルダは入力部4を覆う形でボタンを保持する。この構成の利点としては、患者が一つの装置を使い、複数の異なる薬剤チェンバを使って別々の薬剤投与を受ける場合、チェンバに合わせてボタンを自動的に取り替える。薬剤が混在してはならない場合のみならず、異なった噴霧特性を要する場合にも、別個のチェンバが必要になる。
【0033】
本体1には空気供給ライン7が含まれるが、これは、噴霧器10が空気圧式のものであり、噴霧を実行するのに空気圧が必要になるからである。
【0034】
上方にある薬剤投与部を含む本体に加え、マウスビース2の下方及び無線周波数システムの半分の位置に、他の様々な部品が内蔵されている。図1には示されていないが、様々な電気回路などがあり、それらは、実施される治療を検出して分析し、また下記で必要とされる他の機能も実行する。
【0035】
図2及び3は、薬剤投与装置10の動作及びデータキャリア5と関連したその動作を示す流れ図である。図2の上部は、薬剤投与装置10の論理動作を示しており、この場合、空気圧式ジェット噴霧器は101から動作が始まる。使用に適した空気圧式噴霧器としては、メディック−エイド社のハロライトが挙げられる。まず、装置に空気供給ライン7を介して圧縮空気が送られているかどうかを、質問102として聞く。これは、空気圧式噴霧器であるので、圧縮空気により噴霧が行われる。たとえば、ポンプなどから圧縮空気が供給されるまで、噴霧器は作動しない。装置内の空気圧検出器が圧縮空気の供給を検出すると、装置は、バッテリーをチェックし、装置に十分な電力が送られているか確認する。バッテリーレベルは、バッテリーチャージ検出器により検出され、ディスプレイ3において患者に示される(図1参照)。次の工程104は、噴霧器内の空気流センサの較正である。この薬剤投与装置の動作には、患者の呼吸により装置を介して発生する空気の流れを知ることが必要になる。これは、第1に、薬剤投与を可能にするため、患者がいつ吸入を始めるべきかを示すのに必要であり、第二には、投与量が装置を介しての空気流の速さに依存するため、投与量を算出するのに必要となる。
【0036】
較正は自動的に行われるが、それが失敗した場合には患者に知らされ、その後すぐに装置の電源が切れる。次の工程105では、治療情報が薬剤投与装置に入力される。患者には30秒が与えられ、その間にデータリーダ部4にデータキャリア5をはめ込んで治療情報を入力する。それにより、治療情報がダウンロードされる。ほとんどの場合、データキャリア5は、治療と治療の間には隙間にはめ込まれたままにされ、新しい薬剤のパッケージを使用するときのみにはめ替える必要がある。いったん治療情報がダウンロードされると、薬剤投与装置は、供給された薬剤量すべてが投与されていないかをチェックする。十分な薬剤量が残っている場合は、薬剤投与が開始される。パッケージ内に残っている薬剤投与量の値が、当初に支給された総投与量のある一定の割合を下回ると、患者は、新しいパッケージを電話などで注文するように指示される。この場合は、75パーセントの薬剤量が投与された時点となる。これを知らせるため、点滅する電話の記号がディスプレイ3に5秒間現れる。たとえば、20個のバイアルがパッケージに含まれていた場合、残りが5個になり、それらを使用者が使おうとすると電話の記号がその都度点滅する。または、噴霧器が電話線に繋がっている場合は、新しい処方の要求が遠隔地にあるコンピュータに送られ、これにより、新しい処方の発行が手配されることになる。あるいは、新しい薬剤のパッケージが、その要求の度に薬局から直接郵便で届けられる。
【0037】
データキャリア5は様々な治療情報を持っており、それらの情報はパッケージに含まれるバイアルの数を含む。その数は、治療過程で受けられる治療の回数と一致する。事実上、データキャリアはメモリ装置であり、特に、一連の治療の合計回数を保存する。各治療が行われると、実施する治療の分析の一環として、治療回数が数えられる。そして、電話システムに接続しているモデムが薬剤投与装置に含まれている場合は、再注文が自動で行われ、新たな治療の処方を要求することができる。薬剤投与装置内の電子プロセッサは、実施された治療回数を含む、治療に関する多くの要素をモニタして分析する。さらに薬剤が必要な場合は、処理システムに信号を送る。そして、そのシステムはモデムを介して再処方を指示する。あるいは、電子ネットワークなどの、電子的な別の形式の通信を利用することもできる。
【0038】
図3は、図2の流れ図から継続しており、106で再び圧縮空気があるかどうかチェックする。そして、圧縮空気がある場合、患者が吸入を始めるまで噴霧器は待機の状態になる。患者が十分に力強く吸入する場合は、圧力センサなどの適切なセンサを使って最初の3回の呼吸が計測され、吸気時間の平均が求められる。そして、次の呼吸において、先行する3回の吸気時間の平均で算出されたその呼吸の最初の50パーセントにわたる時間中に薬剤が投与される。治療の間、薬剤投与装置による投与量は、継続して算出される。データキャリア5により送られた治療情報に含まれる、その患者が受けるべき薬剤投与量に、合計投与量が達すると、聞き取り可能な音が発生し、装置の電源が切れる。さらに、実施された治療に関する情報は、治療後または次の治療が始まる前であれば、データキャリアへのダウンロードが可能である。このようにダウンロードした情報には、いつ治療が行われたか、一回の治療が完了するのにどのくらいの時間を要したか、治療は完了したかどうか、また治療中の患者の吸気時間、患者の吸気の流量などが含まれる。そして、一回の薬剤投与が完了すると、薬剤投与装置は、そのデータキャリア5に対応した薬剤パッケージで実施する治療の残り回数を減らす。
【0039】
データキャリア5は、複数のデータフィールドを持っており、それらは、データキャリアが薬剤パッケージに供給される前にキャリアにプログラムされる。それらのフィールドは、その薬剤パッケージで投与される治療の回数や、セキュリティコードまたはアクセスコードを有しており、データキャリア5のセキュリティコードは薬剤投与装置を識別し、同梱された薬剤パッケージに相当する一セット分の治療を実施するためのみに薬剤装置が使用されるようにする。フィールドは、医者がプログラムすることのできるデータキャリア内に含まれていてもよく、患者別のパラメータを含むようにできる。実際、患者別に処方するため、データキャリアのフィールドに含まれる治療情報は、医者により修正することも可能である。これにより、個々の治療や、治療の頻度の双方において、その患者に合わせて必要な薬剤量を調整することができる。これは、痛み止めや肺高血圧など、血中の薬剤量が制限され各患者に合わせて調整されることが必要な全身的な適用において重要なことである。薬剤の過剰摂取を防ぐため、痛み止めの処方において治療頻度を制限する必要がある。さらに、データキャリアは、薬剤の識別、各治療における薬剤投与量、及び薬剤の使用期限も含む。また、データキャリアが治療の実施を記録するのに使用される場合、その情報の記録用として、予備フィールドが使用可能となる。薬剤投与装置は、データキャリアに情報をダウンロードすることができ、その情報は、薬剤投与装置及び患者を識別するための装置のシリアルナンバー、実施された治療の回数、また、治療に関する他の情報を含む。そして、医者は、治療の実施に関する情報を受け取り、それらの治療が十分かどうかを分析する。問題があると思われる場合には、治療に介入することができる。たとえば、患者が治療を適切に受けていないかどうか、ある特定の種類の治療が患者に合っていないかどうか、医者は判断することができる。患者は、薬剤投与システムの使用に関してさらにトレーニングを受けることもできるし、また、その患者にとって別の治療が適切であるとされることもある。治療に関する情報を受け取る医者にとっての一つの利点は、治療に関する患者の見解ではなく、治療に関する真の情報を医者が受け取ることである。というのも、患者の見解は、事実と著しく異なる可能性があるからである。医者は、データキャリア5にダウンロードする治療に関する情報に、幾つかの方法でアクセスすることができる。たとえば、データキャリアの情報を読みとる適切な装置を医者が持っている場合は、医者はデータキャリアを患者から受け取ることができる。また、データキャリアを、データキャリアの製造元やデータキャリアからその情報をダウンロードすることのできる他の仲介業者に郵送し、医者にその情報を転送してもらう。あるいは、患者は電話でその情報を直接医者や他の仲介業者に転送することができる。
【0040】
情報の転送には電話インターフェースを使用することができ、治療の実施や患者が処方通りに治療を受けているかなどについての情報は、電話線を介して、製造元や、患者の担当医や、他の仲介業者へと送られる。通常、その情報は、薬剤投与装置の機種やそのシリアルナンバー、薬剤の識別、使用する薬剤の治療の回数、及び他の役立つ情報を特定する。電話インターフェースは、薬剤投与装置から直接、もしくはデータキャリアのいずれからでも、実施された治療に関する情報を受け取るように構成することができる。薬剤投与装置から情報が直接送られる場合、一般的には、通常のデータケーブル接続により電話インターフェースに接続される。しかし、データキャリア5から治療情報を電話インターフェースが受け取る場合は、データキャリアから情報をダウンロードするためのリーダが必要になる。このようなリーダは、上記の噴霧器の無線周波数送信機に技術的に類似したものである。そして、治療情報は、電話線を介して、直接医者または仲介媒体のどちらかへと転送される。その媒体は、仲介業者により管理されるデータベースであってもよい。そのデータベースには、電話により直接アクセスしてもよいし、インターネットを介してもよい。いずれにしても、患者の担当医は、実施された治療に関する情報にアクセスすることができるため、適切な処置を施すことができる。たとえば、治療を患者が処方通り受けていないことが明らかな場合、または患者が装置を適切に操作できないことが明らかな場合は、医者は患者に連絡して治療に介入することができる。また、薬剤パッケージのバイアルの残りがある一定の量になったとき、薬剤をさらに注文するように患者に対して表示する薬剤投与装置について上記で説明した。電話インターフェースの使用により、患者が受けた治療に関する情報に、再処方の必要性を示すものを加えることができる。そしてこの情報は、電話線を介して仲介業者または医者に送られ、新しい処方が準備され患者へと送られる。あるいは、新しいバイアルの薬剤パッケージを直接患者に送ることもできる。
【0041】
このように、データキャリア5の使用により、多くの異なる利点が得られる。まず、薬剤投与装置において許可されていない薬剤の使用を防ぐことができる。これは、二点において有益であるといえる。まず、ヒトデオキシリボヌクレアーゼやA1ATなどの蛋白質を基礎とする薬剤は、他の薬物に汚染されると使用できなくなる。したがって、そのような薬剤の一つを投与するのに使用される装置は、その一つの薬剤専用でなくてはならず、他の薬剤には使用できない。また、異なる薬剤を投与するための装置にプログラムされた投与量は、すべての薬物に適当ではないかもしれない。したがって、誤った投与量が患者に与えられる可能性は低くなる。また、薬剤の中には、たとえば、薬剤投与装置がプラスチックでできているため、装置に適さない場合もある。
【0042】
さらに、バイアルの中の規定の薬剤量は、通常すべて投与されるようになっているが、それにより投与すべき薬剤量を制御するのではなく、データキャリアの投薬治療情報によって、投与量が制限される。これは非常に重要なことである。患者の呼吸パターンにより薬剤が無駄になることを考慮し、通常必要とされる薬剤量よりも多くの薬剤の入ったバイアルを使用することができる。しかし、バイアルの中の薬剤すべてが噴霧されてしまう前に、適切な量の薬剤が投与されたことが認識された時点で、薬剤投与は停止される。またこれは、データキャリアの治療情報を利用して患者に異なる薬剤投与量を処方できるが、一つの濃度及び薬量のバイアルを生産、販売するだけでよく、それを様々な投与量応じて使用できることを意味する。したがって、量産効果を上げると共に、法による拘束を抑えることができる。以前は、処方された投与量に応じて、一つの薬剤に関して異なる濃度の異なる薬量を供給する必要があったが、データキャリア5を使用すれば、一つの薬剤について、生産されるべき濃度及び薬量の種類は少なくなる。
【0043】
また、データキャリア5は、患者が養生法を守っているかどうかについての情報を記録することができ、直接処方することさえできる。医者は、薬剤投与装置10から、データキャリア5に記録された情報に頼ることができ、患者が処方を守っているかどうか、また患者の吸気効率について、患者自身の報告に医者は頼る必要がない。
【0044】
データキャリア5は、複数のバイアルと共に支給されるので、異なる種類のパッケージを異なる治療に使用することができる。薬剤によっては、プラスチックの投与量単位のバイアルで供給されなければならず、また別の薬剤は、使用するに当って還元するように二つに分かれた状態のパッケージで供給されなければならない。データキャリアは、パッケージの箱の外側に付けられ、通常一ヶ月分の薬剤パッケージ全部に関する投与量情報を有するので、いずれのバイアルについても対応できる。データキャリアは、バイアルに取り付けられているわけではないので、薬剤投与システムへの薬剤導入のための包装に関する要件、法的な要件、及び開発に関する制限を最小限にすることができる。これにより、起こりうる薬剤パッケージの汚染の問題を防ぐことができる。ラベルや印字がプラスチックのバイアルに使われている場合や、保存期間中に染料や接着剤が薬剤へ流れ込んでいないかどうかを確認するための、2年にも及ぶ長期の安定性テストが必要な場合に、これは重要なことである。
【0045】
図4aから4fは様々な種類のバイアルを示しており、これらはこの発明を実行するにあたり使用に適したものである。図4aは、薬剤投与まで二種類の成分を別々に保持しておく、二重に仕切られたバイアルである。そして、二種類の物質は、使用される直前に調合される。たとえば、バイアルの一室には、液状の薬剤を、片方にはパウダー状の薬剤を入れ、これらを混ぜ合わせパウダー状の薬剤を液状のものに溶かす。あるいは、バイアルの両方の部分に液状の薬剤が入っている場合、投与する薬物になるように調合される。このようなパッケージは、この分野でよく知られており、通常は、ピストンを回転させて二つに仕切られた部屋の間のシールを破るようになっている。
【0046】
図4bは、エラストマー栓のガラスバイアルである。これは、液状またはパウダー状の薬剤用である。
【0047】
図4cは、液状の薬剤用のガラスバイアルである。バイアルの上部を折って液状の薬剤を使用する。
【0048】
図4dは、吸入用のパウダー状の薬剤を保持するゼラチンカプセルである。パウダー状の薬剤を使用するには、ゼラチンカプセルを破る必要がある。
【0049】
図4eは、パウダー状の薬剤を保持するホイルの水疱形のパックである。
【0050】
図4fは、液状の薬剤を保持するポリエチレンブローフィルシールバイアルである。
【0051】
もちろん、これらのバイアルは、すべて一般的な実例であり、これらの例に限定されることはない。
【0052】
薬剤は、分離しているバイアルではなく、噴霧チェンバや薬剤チェンバなどの、噴霧発生システムの一部として組み込んでもよい。こうすることにより、治療を行うために投与薬をチェンバに移す必要がなく、患者にとって扱い易い。また、治療後にチェンバを処分するため、洗浄の必要がなく、汚染の可能性もなくなる。この場合、薬剤チェンバなどが、薬剤を保持したり移したりするのに適したバイアルとして実際に使われる。
【0053】
上記の実施形態は本発明の一例であり、この発明はその例に限定されるわけではない。たとえば、他の薬剤投与装置も使用することができ、圧電タイプや超音波タイプなど他の種類の噴霧器や、薬量測定スペーサなどのパウダー状の薬剤を投与するシステムも使用することができる。また、データキャリアは、データを転送するために、Iボタンなど、電気的接触が起こることを必要とするものであってもよい。
【0054】
図5は、薬剤投与装置により収集されたデータを分析のためにどのようにデータセンターに送るかを示す流れ図である。データセンターは、地域の病院や診療所に配置されていてもよいが、ほとんどの場合、その患者を担当する臨床医に処理結果は集められる。最初に医者は治療を処方し、治療に関するプロトコルについて患者から同意を得る。これにより、患者に治療用の製品が渡され、データセンターにより処理が設定される。患者がデータセンターや通信リンクを介して情報を送るたびに分析が行われ、すべてが計画通りに進んでいる場合は、患者にさらに薬剤が支給される。しかし、データに何かしら問題があるような場合は、医者は患者と連絡を取り、治療について話し合う。
【0055】
図5において、患者は薬剤投与装置50を使用するが、ここでは例として、メディック−エイド社のハロライトが示されている。時折、モデム51により治療情報がデータセンター52に送られる。それは直接行われるか、もしくはモデム内のデータキャリア53により行われる。あるいは、データキャリア53をデータセンター52に郵送する。工程54においてデータが解析され、結果が良い場合は、処方箋を発行するか、追加の薬剤を直接調剤して、患者に薬剤をさらに支給する。結果が満足のいくものでない場合は医者に連絡が入り、治療における問題をつきとめるために医者は患者に連絡する。
【符号の説明】
【0056】
1 本体
2 マウスピース
3 ディスプレイ
4 入力部(データリーダ部)
5 データキャリア(ボタン)
6 ボタンホルダ
7 空気供給ライン
8 薬剤チェンバ
10 薬剤投与装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に薬剤を投与するための投与部と、
該投与部から離して配置され、取り外し可能な電子データキャリアから治療情報を受信する電子入力部であって、無線周波数信号によって前記電子データキャリアから前記治療情報を受信するよう構成される無線周波数受信機であり、完了した治療情報を前記電子データキャリアに送信して記録させるようさらに構成される電子入力部と、
受信した前記治療情報に基づいて患者に投与する薬剤の量を制御する投与制御部と、
を有する薬剤投与装置。
【請求項2】
前記電子データキャリアは、次の治療情報、すなわち
a.投与する薬剤の量
b.前記投与する薬剤の識別情報
c.前記投与する薬剤の使用期限
d.当該薬剤投与装置で可能な治療回数
のうち少なくとも一つの情報を有する、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項3】
前記電子データキャリアが当該薬剤投与装置の受信面または受信領域へ移されるとき、前記電子データキャリアは当該薬剤投与装置に治療情報を送信するよう構成される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項4】
前記電子データキャリアは、当該薬剤投与装置で可能な治療回数または当該薬剤投与装置が備える薬剤の数に対応した回数にわたり、当該薬剤投与装置に薬剤治療情報を供給するよう構成される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項5】
前記電子データキャリアは、各薬剤用の前記薬剤治療情報を有する1つの電子データキャリアである、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項6】
前記電子データキャリアは、当該薬剤投与装置から送信されるか、または当該薬剤投与装置に関連づけられた無線周波数信号によって、誘導的に電源を供給される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項7】
前記電子データキャリアは、前記治療情報を載せた無線周波数信号を発生させるよう構成される、請求項6に記載の薬剤投与装置。
【請求項8】
前記電子データキャリアは、当該薬剤投与装置から受ける治療についての情報を記録するメモリを備える、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項9】
治療情報のいずれかにより前記薬剤が投与に不適当であると示された場合に投与を防止する許可部を備える、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項10】
空気噴霧器、圧電噴霧器、及び超音波噴霧器のうち一つから選択される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項11】
薬剤投与装置、及び
該薬剤投与装置と共に用いるための、該薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアを含む組立体であって、
前記電子データキャリアが、
指定された薬剤の投与における前記薬剤投与装置の使用に関する薬剤特異的な治療情報を保持する、前記電子データキャリア内に位置するメモリ、及び、
無線周波数信号を介して前記薬剤特異的な治療情報を前記メモリから前記薬剤投与装置まで送信するよう構成される出力部を含み、
前記メモリが、前記薬剤投与装置から受信した治療に関する情報を記録するよう構成される、組立体。
【請求項12】
指定された薬剤を投与する薬剤投与装置であり、投与される薬剤を受けるための薬剤チェンバ、及び、前記薬剤に関連した治療情報を受信するための電子入力部を有する薬剤投与装置と、
該薬剤投与装置で用いるための前記薬剤治療情報を貯蔵するメモリを含む、該薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアであり、前記指定された薬剤を用いる各治療に先だって前記治療情報を前記電子入力部に送信する出力部も含む電子データキャリアとを有する薬剤投与システムであって、
前記入力部は、無線周波数信号によって前記電子データキャリアから前記治療情報を受信するよう構成される無線周波数入力部であり、これにより前記薬剤投与装置は、前記治療情報に従って前記指定された薬剤を投与し、
前記電子入力部は、完了した治療情報を前記電子データキャリアに送信して記録させるようさらに構成される、薬剤投与システム。
【請求項13】
薬剤投与装置で用いるための薬剤治療情報を保持するメモリを含む、前記薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアを供給する工程であって、前記電子データキャリアが、前記薬剤治療情報を前記薬剤投与装置に送信するための無線周波数装置をさらに含む、工程と、
前記電子データキャリアから前記薬剤投与装置に前記治療情報を送信する工程と、
薬剤を前記薬剤投与装置内に投入する工程と、
前記電子データキャリアからの前記治療情報に応じて前記薬剤を投与するための前記薬剤投与装置の投与部を操作する工程と、
完了した治療情報を前記電子データキャリアに送信して記録させる工程と、
を含む前記薬剤投与装置の操作方法。
【請求項14】
患者に薬剤を投与する投与部と、
数回の治療にわたって投与する薬剤の量を分析し、処方された薬剤の残量が一定の割合に達した時点を認識する薬剤使用分析器と、
前記処方した薬剤の残量が前記一定の割合より下回ったことを前記薬剤分析器が認識した時点で、再処方箋を電子的に指示するよう動作する再処方指示部と、
を有する薬剤投与装置であって、
前記薬剤使用分析器は、当該薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアを含み、該電子データキャリアは、当該薬剤投与装置で用いるための薬剤治療情報を保持するメモリ、さらに、前記薬剤治療情報を当該薬剤投与装置に送信するための無線周波数装置を含み、前記薬剤治療情報は、現在行っている一連の薬剤治療で実施可能な薬剤治療の合計回数を含み、
前記メモリは、当該薬剤投与装置から受信される治療に関する情報を記録するよう構成される、薬剤投与装置。
【請求項15】
前記再処方指示部は、電話システムへ自動的に接続して再処方箋を電子的に指示するモデムを備える、請求項14に記載される薬剤投与装置。
【請求項16】
前記再処方指示部は、前記再処方箋を指示するための経路である電子ネットワークへの接続を備える、請求項14に記載される薬剤投与装置。
【請求項17】
前記薬剤使用分析器は、実施した薬剤治療の回数を数えるカウンタを備える、請求項14乃至16のいずれか一項に記載される薬剤投与装置。
【請求項18】
前記薬剤使用分析器は、前記メモリに保持した前記薬剤治療が可能な回数と、前記カウンタに記録した実施済みの薬剤治療の回数とを比較するコンパレータを備え、前記処方された薬剤の残量が一定の割合に達した時点で、追加の薬剤を発注する、請求項14に記載される薬剤投与装置。
【請求項19】
前記再処方指示部は、前記薬剤使用分析器から伝えられる薬剤追加の注文を受信した時点で、再処方箋を指示する、請求項18に記載される薬剤投与装置。
【請求項1】
患者に薬剤を投与するための投与部と、
該投与部から離して配置され、取り外し可能な電子データキャリアから治療情報を受信する電子入力部であって、無線周波数信号によって前記電子データキャリアから前記治療情報を受信するよう構成される無線周波数受信機であり、完了した治療情報を前記電子データキャリアに送信して記録させるようさらに構成される電子入力部と、
受信した前記治療情報に基づいて患者に投与する薬剤の量を制御する投与制御部と、
を有する薬剤投与装置。
【請求項2】
前記電子データキャリアは、次の治療情報、すなわち
a.投与する薬剤の量
b.前記投与する薬剤の識別情報
c.前記投与する薬剤の使用期限
d.当該薬剤投与装置で可能な治療回数
のうち少なくとも一つの情報を有する、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項3】
前記電子データキャリアが当該薬剤投与装置の受信面または受信領域へ移されるとき、前記電子データキャリアは当該薬剤投与装置に治療情報を送信するよう構成される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項4】
前記電子データキャリアは、当該薬剤投与装置で可能な治療回数または当該薬剤投与装置が備える薬剤の数に対応した回数にわたり、当該薬剤投与装置に薬剤治療情報を供給するよう構成される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項5】
前記電子データキャリアは、各薬剤用の前記薬剤治療情報を有する1つの電子データキャリアである、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項6】
前記電子データキャリアは、当該薬剤投与装置から送信されるか、または当該薬剤投与装置に関連づけられた無線周波数信号によって、誘導的に電源を供給される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項7】
前記電子データキャリアは、前記治療情報を載せた無線周波数信号を発生させるよう構成される、請求項6に記載の薬剤投与装置。
【請求項8】
前記電子データキャリアは、当該薬剤投与装置から受ける治療についての情報を記録するメモリを備える、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項9】
治療情報のいずれかにより前記薬剤が投与に不適当であると示された場合に投与を防止する許可部を備える、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項10】
空気噴霧器、圧電噴霧器、及び超音波噴霧器のうち一つから選択される、請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項11】
薬剤投与装置、及び
該薬剤投与装置と共に用いるための、該薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアを含む組立体であって、
前記電子データキャリアが、
指定された薬剤の投与における前記薬剤投与装置の使用に関する薬剤特異的な治療情報を保持する、前記電子データキャリア内に位置するメモリ、及び、
無線周波数信号を介して前記薬剤特異的な治療情報を前記メモリから前記薬剤投与装置まで送信するよう構成される出力部を含み、
前記メモリが、前記薬剤投与装置から受信した治療に関する情報を記録するよう構成される、組立体。
【請求項12】
指定された薬剤を投与する薬剤投与装置であり、投与される薬剤を受けるための薬剤チェンバ、及び、前記薬剤に関連した治療情報を受信するための電子入力部を有する薬剤投与装置と、
該薬剤投与装置で用いるための前記薬剤治療情報を貯蔵するメモリを含む、該薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアであり、前記指定された薬剤を用いる各治療に先だって前記治療情報を前記電子入力部に送信する出力部も含む電子データキャリアとを有する薬剤投与システムであって、
前記入力部は、無線周波数信号によって前記電子データキャリアから前記治療情報を受信するよう構成される無線周波数入力部であり、これにより前記薬剤投与装置は、前記治療情報に従って前記指定された薬剤を投与し、
前記電子入力部は、完了した治療情報を前記電子データキャリアに送信して記録させるようさらに構成される、薬剤投与システム。
【請求項13】
薬剤投与装置で用いるための薬剤治療情報を保持するメモリを含む、前記薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアを供給する工程であって、前記電子データキャリアが、前記薬剤治療情報を前記薬剤投与装置に送信するための無線周波数装置をさらに含む、工程と、
前記電子データキャリアから前記薬剤投与装置に前記治療情報を送信する工程と、
薬剤を前記薬剤投与装置内に投入する工程と、
前記電子データキャリアからの前記治療情報に応じて前記薬剤を投与するための前記薬剤投与装置の投与部を操作する工程と、
完了した治療情報を前記電子データキャリアに送信して記録させる工程と、
を含む前記薬剤投与装置の操作方法。
【請求項14】
患者に薬剤を投与する投与部と、
数回の治療にわたって投与する薬剤の量を分析し、処方された薬剤の残量が一定の割合に達した時点を認識する薬剤使用分析器と、
前記処方した薬剤の残量が前記一定の割合より下回ったことを前記薬剤分析器が認識した時点で、再処方箋を電子的に指示するよう動作する再処方指示部と、
を有する薬剤投与装置であって、
前記薬剤使用分析器は、当該薬剤投与装置から取り外し可能な電子データキャリアを含み、該電子データキャリアは、当該薬剤投与装置で用いるための薬剤治療情報を保持するメモリ、さらに、前記薬剤治療情報を当該薬剤投与装置に送信するための無線周波数装置を含み、前記薬剤治療情報は、現在行っている一連の薬剤治療で実施可能な薬剤治療の合計回数を含み、
前記メモリは、当該薬剤投与装置から受信される治療に関する情報を記録するよう構成される、薬剤投与装置。
【請求項15】
前記再処方指示部は、電話システムへ自動的に接続して再処方箋を電子的に指示するモデムを備える、請求項14に記載される薬剤投与装置。
【請求項16】
前記再処方指示部は、前記再処方箋を指示するための経路である電子ネットワークへの接続を備える、請求項14に記載される薬剤投与装置。
【請求項17】
前記薬剤使用分析器は、実施した薬剤治療の回数を数えるカウンタを備える、請求項14乃至16のいずれか一項に記載される薬剤投与装置。
【請求項18】
前記薬剤使用分析器は、前記メモリに保持した前記薬剤治療が可能な回数と、前記カウンタに記録した実施済みの薬剤治療の回数とを比較するコンパレータを備え、前記処方された薬剤の残量が一定の割合に達した時点で、追加の薬剤を発注する、請求項14に記載される薬剤投与装置。
【請求項19】
前記再処方指示部は、前記薬剤使用分析器から伝えられる薬剤追加の注文を受信した時点で、再処方箋を指示する、請求項18に記載される薬剤投与装置。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【公開番号】特開2010−179121(P2010−179121A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71784(P2010−71784)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【分割の表示】特願2001−557361(P2001−557361)の分割
【原出願日】平成13年2月12日(2001.2.12)
【出願人】(505186485)レスピロニクス(ユーケー)リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【分割の表示】特願2001−557361(P2001−557361)の分割
【原出願日】平成13年2月12日(2001.2.12)
【出願人】(505186485)レスピロニクス(ユーケー)リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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