説明

薬品投与データ設定アナライザ

薬品のデータ・セットを評価するためのシステム及び方法が提供される。このシステム及び方法は、現在のデータ・セットの中の項目が、複数の施設についての項目の集計を含むデータ・セットと異なる場合を識別することと、現在のデータ・セットの中の異なる点が変更されるべきかどうかを判定するようにユーザに促すこととを含む。このシステム及び方法はまた、同じ薬品について異なる投与量が使用されている場合も識別する。例外を示す報告が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に薬剤の投与に関し、より詳細には、保健施設によって選択された薬品投与データを別のソースから集められた薬品投与データと比較するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者への医療用液体の静脈注入(「IV」)は、多くの様々な病気の治療に使用されている。医師に応じて、液体は外科的に挿入される静脈カテーテルによってか、又は患者の腕や脚などの末梢部位で患者に供給される。大抵、患者の状態によって、所定の薬剤投与量が、指定の期間、所定の割合で投与されることが重要である。
【0003】
患者に薬剤を投与するために、薬物注入ポンプが使用されることがよくある。投与は、少量を不連続的に投与することで行われてもよく、又はほぼ継続的な割合で投与することで行われてもよい。薬物注入ポンプ治療法は、正確な測定された投与量をきちんと定められたレベルで供給するために電子的に制御されてもよく、それによって有益な患者への薬剤の段階的注入を提供する。このように、薬物注入ポンプは、継続的な時間の基準で操作することによって化学薬剤のバランスが正確に維持される自然なプロセスを再現することができる。
【0004】
薬物注入ポンプ又はその他の手段によって投与されることが可能な多くの薬品は、それを下回れば効果がなくなるかもしれないという最小投与量と、それを上回れば患者に危害が及ぶ可能性があるという最大投与量とを有する。多くの場合、最小投与量及び最大投与量のレベルは「プロフィール」、すなわち薬品が使用される場所によって決まる。例えば、新生児のプロフィールはICUのプロフィールよりもずっと少ない薬品の最大投与量をしばしば有する。最大投与量及び最小投与量は、多くのその他の薬品投与パラメータと同様に保健施設によって生成される。これらは、薬品の投与に関連しているデータ・セット、すなわち薬品のデータ・セットである。このデータ・セットは、保健施設にとって、その薬品のために使用するデータ・セットを別の保健施設のデータ・セットと比較して、同等であるかどうか、又は著しい違いがあるかどうかを判定するために役立つ。
【0005】
現代の薬物注入ポンプ及び薬剤供給システムはプロセッサ及びメモリを含み、着信するか、又は入力される動作パラメータの値を、それらが上述のデータ・セットに記憶されたパラメータの範囲内に入るかどうかを判定するために分析することができる。したがって、各ポンプは着信する注入データを分析し、着信パラメータのうちの1つ又は複数が、病院又は施設のそのパラメータについての許容範囲に入らない場合を介護者に知らせることができる。
【0006】
病院の薬品投与データ・セットを設定する際に、調剤の専門家は、病院内での特定の薬品の使用が、認識されているその薬品の使用法の中に入るのかどうかを判定するために、臨床的妥当性についてその病院の薬品データ・セットを分析する。例えば調剤の専門家は、薬品の最良の投与量の範囲として認識されている投与量の範囲内で薬品が使用されているのかどうかを判定することを試み、特定の種類の患者のために不適切な投与量の範囲が使用されている場合を識別しようとする。
【0007】
この分析は通常、保健施設のデータ・セットを、編集された別の保健施設のデータ・セットの大量のプリントアウトと比較することによって実行される。この分析は通常、だいたい4時間から5時間を要し、非常に長たらしく、間違いを起こしやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって当業者は、より速く、より正確な基準でデータ・セットの比較の目的を達成するシステム及び方法に対する必要性を認識している。本発明は、この必要性及びその他の必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般に、本発明のシステム及び方法は、患者への薬剤の供給の監視及び制御で使用されることが意図されている保健施設の薬品データ・セットを、複数の別の保健施設によって使用されている薬品データ・セットから編集された同種の情報のデータ・セットと比較することと、編集されたデータ・セットの集計データから、何らかの重要な方法で異なっているその施設の薬品データ・セットの項目を識別することとを含む。そうした比較は、プロフィール名、薬品名、薬品の供給に関連した単位、供給限度の投与量又は割合などの薬品の供給に関連した限度、及び保健施設によって識別されるその他のパラメータを比較することを含むことが可能である。
【0010】
1つの態様において、本発明のシステム及び方法は、複数の薬品を有し、各薬品に関連した分析されるべき第1薬品データ・セットと、投薬情報を含む、患者への薬品の投与に関連したデータを含む複数のデータ要素とを入力するための入力デバイスと、複数の薬品を有し、各薬品に関連した確立された薬品データ・セットと、投薬情報を含む、患者への薬品の投与に関連したデータを含む複数のデータ要素とを有するメモリと、第1薬品データ・セットを確立された薬品データ・セットと比較するようにプログラムされており、その比較が、第1薬品データ・セットの薬品と確立された薬品データ・セットの薬品との間の合致を識別することと、任意の識別された合致の投薬情報を比較することとを含む、確立された薬品データ・セットを受信するためにメモリに接続され、第1薬品データ・セットを受信するために入力デバイスに接続されたプロセッサと、比較の結果を報告するためにプロセッサに接続された報告デバイスとを備えた、臨床的妥当性について薬品データ・セットを分析するためのシステムを含む。
【0011】
別の態様では、このプロセッサはまた、確立された薬品データ・セットには含まれていない、第1薬品データ・セットに含まれた薬品を識別するようにプログラムされており、この報告デバイスはまた、そのような合致しない薬品を例外として報告する。さらに別の態様では、このプロセッサは、確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品のためには使用されていない、第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品のために使用される異なる投薬単位を識別するようにプログラムされており、この報告デバイスはまた、そのような投薬単位の違いを報告する。
【0012】
さらにまた別の態様では、本発明のシステムは、確立された薬品データ・セットに含まれた同じ薬品のために使用されている異なる投薬単位の報告に応じて、第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の投薬単位を変更することをユーザに促す。さらにまた別の態様では、このプロセッサはまた、プロセッサによる比較の前に、第1薬品データ・セットの中の薬品の投薬単位を確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品の投薬単位に自動的に変えるようにプログラムされており、さらなる態様では、このプロセッサはまた、確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品のために使用されていない、第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の各々のために使用される異なる投薬限度を識別するようにプログラムされており、この報告デバイスはまた、そのような投薬限度の違いを報告する。代替の態様では、このシステムは、確立された薬品データ・セットの中に含まれた同じ薬品のために使用されている異なる投薬限度の報告に応じて、第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の投薬限度を変更することをユーザに促す。
【0013】
さらなる態様では、このプロセッサはまた、プロセッサによる比較の前に、第1薬品データ・セットの中の薬品の投薬限度を確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品の投薬限度に自動的に変えるようにプログラムされている。さらに、さらなる態様では、このメモリは複数の確立された薬品データ・セットを有し、このプロセッサは複数の確立された薬品データ・セットを受信するためにメモリに接続されており、第1薬品データ・セットを複数の確立された薬品データ・セットと比較するようにプログラムされている。さらに、さらなる態様では、このプロセッサはまた2つ未満の確立された薬品データ・セットが同じ薬品のために同じ投薬単位を使用する場合、第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品のための異なる投薬単位を識別するようにプログラムされており、この報告デバイスはまた、そのような投薬単位の違いを「例外」として報告する。
【0014】
さらに別の態様では、このプロセッサはまた、複数の確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品の各々のためには使用されない、第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の各々のために使用される異なる投薬限度の数を識別するようにプログラムされており、この報告デバイスはまた、そうした数を報告する。代替の態様では、このプロセッサは、複数の確立された薬品データ・セットの中で見出される任意の薬品についての最小及び最大の投薬限度の許容可能な変域を判定するようにプログラムされている。さらに別の代替の態様では、このプロセッサは、許容可能な変域に入らない第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の最小投薬限度を識別するようにプログラムされており、この報告デバイスはまた、そのような識別を報告する。さらに別の態様では、このプロセッサは、許容可能な変域に入らない第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の最大投薬限度を識別するようにプログラムされており、この報告デバイスはまた、そのような識別を報告する。
【0015】
このシステム及び方法のさらに別の態様では、確立された薬品データ・セットは医療施設によって生成されるデータ・セットを表し、また代替として、複数の確立された薬品データ・セットの各々は異なる医療施設によって生成されるデータ・セットを表す。
【0016】
さらに別の態様では、本発明のシステム及び方法の原理によるシステムは、薬品データ・セットを作成するために使用される編集プログラムの一部である。
【0017】
さらに別の態様では、本発明のシステムはポータブル・コンピューティング・デバイスに収容されてもよい。さらにまた別の態様では、第1薬品データ・セットは第1デバイスに収容され、確立された薬品データ・セット及びプロセッサは第2デバイスに収容される。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、複数の薬品を有し、各薬品に関連した分析されるべき第1薬品データ・セットと、注入投薬情報を含む、薬物注入ポンプによる患者への薬品の投与に関連したデータを含む複数のデータ要素とを受信する工程と、複数の薬品を有し、各薬品に関連した確立された薬品データ・セットと、注入投薬情報を含む、薬物注入ポンプによる患者への薬品の投与に関連した複数のデータ要素とを有する参照データ・ベースを維持する工程と、第1薬品データ・セットを確立された薬品データ・セットと比較する工程であって、第1薬品データ・セットの薬品と確立された薬品データ・セットの薬品との間の合致を識別することと、任意の識別された合致の注入投薬情報を比較することとを含む工程と、比較の結果を報告する工程とを含む、臨床的妥当性について薬品データ・セットを分析するためのコンピュータ化された方法を含む。代替の態様では、参照データ・ベースを維持する工程は、複数の確立された薬品データ・セットを有する参照データ・ベースを維持することを含む。
【0019】
本発明のその他の特徴及び利点は、実施例として本発明の特徴を示す添付の図面と合わせて、以下の詳細な説明より明らかとなろう。
【実施例】
【0020】
本発明は、関連した限度を含む特定の薬品のライブラリの薬品データ・セットを、別の保健施設によって作成されたライブラリから編集されたデータ・セットの過去のデータと比較することを自動化するためのシステム及び方法に関する。
【0021】
ここで、同じ参照符号が複数の図面の中で同じ要素又は対応する要素を指している図面を詳細に参照すると、図1には、本発明の原理を具体化したシステム10のグラフィック図が示されている。システム10は、プログラム設計者によって求められる特定のタスクを実行するために、適切なコンピュータ・プログラミング・コマンドを使用してプログラムされたコンピュータ/サーバ15を含む。この実施例の中で、コンピュータ/サーバ15は、以下で詳細に言及される比較、識別及び報告タスクを実行するように設計されたソフトウェアを使用してプログラムされることになる。
【0022】
コンピュータ/サーバ15は、コンピュータ/サーバ15と同じ物理的な容器又は場所内に含まれてもよく、又はコンピュータ/サーバ15から離れて配置されてもよい様々な周辺アクセサリと動作可能に通信する。コンピュータ/サーバ15と様々な周辺アクセサリとの間の通信は適切な通信バス、及び/又は、直接有線接続、イーサネット(登録商標)、LAN又はインターネット接続などの当業者に知られている有線又は無線の通信手段20を使用して実行される。さらに、システム全体は別のシステムと通信してもよいので、データ・セットの比較は保健施設から離れた場所で実行されてもよい。
【0023】
典型的に周辺アクセサリは、以下のものに限定されるわけではないが、例えば入力手段25、組織のデータ・ベースにアクセスするための手段30、メモリ35、別の保健施設から編集された集計データのデータ・ベース40、ディスプレイ45及びプリンタ50を含んでよい。その他のアクセサリ、サーバ、プロセッサ又はコンピュータ及び臨床用デバイスもまたコンピュータ/サーバ15と通信してもよく、本発明の方法の態様を実行するために使用されてよいということが、当業者には理解されよう。コンピュータ/サーバ15のプロセッサは、一般のタスク及び特定のタスクを実行するようにプロセッサをプログラムするために使用されるアプリケーション又はオペレーティング・プログラムを含むメモリ35を使用してもよい。さらにメモリ35は、施設のデータ・セット30を集計データ・セット40と比較する場合にリソースとして、コンピュータ/サーバ15のプロセッサによって使用されてもよい。そのようなプロセスは、当業者にはよく知られている。
【0024】
薬品データ・セットは、患者への薬剤の供給の監視で使用するために、保健施設でまとめられる。これらの薬品データ・セットはしばしば、適切に構成された薬物注入ポンプにロードされ、ポンプを操作するために注入データ・パラメータをポンプに入力する際に、比較のための基準として使用される。そうした入力は、介護者によって手動で達成されてもよいし、又はポンプと保健施設の情報ネットワークとの間の通信を通じて達成されてもよい。
【0025】
薬物データ・セットは、保健施設で使用されるすべての薬品についての項目を含まなければならない。さらに、薬物は保健施設のすべてのエリアで同じ投与量で使用されるわけではないということ、又は同じ方法若しくは同じ割合で供給されるわけではないということを理解することが重要である。例えば、成人の治療のために設定されている緊急治療室で使用される薬品は、同じ薬品が新生児治療の設定で使用される場合とは全く異なる投与量で使用されることがよくある。
【0026】
そのような薬品データ・セットの中の多数の項目が与えられると、多くの保健施設は患者への薬剤供給を改善しようと継続的に試みる中で、自分たちの施設の薬品の使用法を別の施設での使用法と比較したいと思う。この考えは、合意された薬品の使用法と一致する薬品データ・セットを開発するというものである。
【0027】
この比較を達成するために、薬品データ・セットは米国の多数の保健施設から収集されており、そのデータのすべては薬品ごとのデータ・ベースにまとめられている。薬品は、薬品の一般名によってか、又は製造業者の商品名によって組織される。一部の場合では、薬品は複数の異なる名前(例えばアセトアミノフェン、McNeil製薬の商標であるTylenolなど)を有する。このデータ・ベースはまた、治療エリア又はプロフィールなどの様々なその他の基準を使用してアレンジされてもよい。
【0028】
典型的に保健施設は、非常に大量のものである場合があるその施設自体のデータ・セットを生成する。一旦施設の薬物注入ポンプにデータ・セットがアップロードされると、データ・セットの内容を変えることが主な計画なので、保健施設は、データ・セットが承認されて、薬物注入ポンプにアップロードされる前のデータ・セットの「合理的検査」を求める。
【0029】
本発明の1つの実施例によって、このシステム及び方法は、保健施設のデータ・セットを、複数の保健施設から収集された集計データから編集されたデータ・セットと行ごとに比較することを実行する。一般に保健施設は、投薬単位、投薬限度、注入限度及びその他の薬品投与パラメータを、多数のその他の保健施設から集められたデータと比較する。手動で行われる場合、そのような比較は典型的には4時間かそれ以上を要するが、本発明のシステム及び方法を用いれば、比較を実行し、報告を印刷するためにほんの数分を要するだけである。典型的に報告は、例えば、現在の保健施設の薬品データ・セットが、データが編集されたその他の保健施設と同じであるのか、又は異なっているのかどうかを示す。
【0030】
本発明の1つの重要な点は、保健施設の薬品について使用されるパラメータの範囲が別の施設による薬品の使用から見て、合理的に見えるかどうかを識別し、十分なデータがある場合には、合理性の指標を示すことを試みるということである。例えば、本発明の1つの実施例で、このシステム及び方法は薬品の使用法を比較し、次いで薬品の使用法が、別の施設による(特定のプロフィールのための)その薬品の使用法の95%の信頼区間内に入るかどうかを示す。換言すれば、合理的な比較を行うために十分なデータがある場合、現在の使用法が別の施設による使用法の分布の2つの標準偏差に入るかどうかについての判定が行われる。
【0031】
別の実施例で、本発明のシステム及び方法はまた、現在の保健施設が別の保健施設と異なる測定単位を使用しているかどうかを識別する。違いが見出される場合、このシステム及び方法はその違いを識別し、介護者にその単位を受け入れるように、又は変更するように促す。
【0032】
本発明の様々な実施例を実行する中で、コンピュータ/サーバ15は、現在の保健施設の情報を、複数の保健施設から取り出された薬品データ・セットから編集された集計データ・セット又はデータ・ベース40の中に記憶された情報と比較するために、適切なプログラミング・コードによって指示される。このプロセスは、複数の方法で実行されてもよい。例えば、時間がかかり、通常は好ましくはないが、比較されるべき薬品情報は入力手段25を使用して手動で入力されてもよい。しかしながら通常は、コンピュータ/サーバ15には保健施設の薬品データ・セット30へのアクセスが与えられ、命令を実行するときにデータ・セット30からデータを引き出すことになる。この方法で、プロセスは自動化されてもよく、手動のプロセスが典型的に必要とする何時間かではなく、数分内で達成されてもよい。
【0033】
図2は、保健施設の薬品データ・セットを複数の保健施設から編集された集計薬品データを含むデータ・セットと比較することを達成する、本発明の方法の1つの実施例を示すブロック図である。この実施例で、この方法は参照番号100によって識別される「開始」で始まる。始めにこの方法はボックス105で、保健施設によって使用されるプロフィール名が集計データ・ベースに記憶されたプロフィール名と合致するかどうかを判定する。プロフィール名が認識されない場合、コンピュータ/サーバ15上で実行中のプログラムは、図3に示されているようなウィンドウが開かれるようにし、施設によって使用されるプロフィール名を集計データ・ベース内に含まれたプロフィール名にマッピングするようにユーザに促してもよい。このマッピングは、図2のボックス110で実行される。
【0034】
一旦プロフィールがマッピングされると、その後プログラムは必要に応じて、ボックス115で保健施設のデータ・セットからデータを取り出す。次いでプログラムはボックス120で、保健施設のデータ・セットの中で使用される薬品名が認識されるかどうか、すなわちその薬品名が集計データ・セットの中に存在するかどうかを判定する。薬品名が認識されない場合、125で、その薬品名は例外報告に加えられる。当業者であれば、この名前はすぐに表示され、印刷されてもよく、又は後で表示若しく印刷するためにメモリ又はバッファ内に一時的に記憶されてもよいということを理解するであろう。
【0035】
ボックス120で薬品名がプログラムによって認識される場合、次いでプログラムはボックス130で、薬品について保健施設で使用されている単位を分析し、それらの単位が集計データ・セットの中に含まれた薬品についての項目に関連した単位と合致するかどうかを判定する。単位が合致しない場合、プログラムはボックス135の方へ進み、そこでプログラムは図4に示されているような薬品名、施設によって使用される単位を識別するスクリーンをユーザに表示し、また薬品データが集計データ・セットの中に含まれている施設によって使用される、それらの単位の頻度及び代替の単位も表示してよい。例えば、図4に示されているように、施設はそのPeds>40KGのプロフィールで、アルテプラーゼ(M)についてはmg/hを使用している。プログラムは、そのような単位は1つのその他施設によって使用されているだけであり、一方で9つの施設が単位としてmg/kg/hを使用しているということを示すデータを表示する。次いでシステムは、ボックス140で判定されるときに、合理的な選択を行うために十分なデータがある場合、ボックス150で単位を変更するようにユーザを促す。合理的な判定を行うために十分なデータがない場合、薬品名及び使用される単位は例外報告に加えられる。
【0036】
薬品名又は単位の合理性の判定は、特定の重要性を有するものとして保健施設によって選択されてもよい基準に従って行われる。例えば、システムが、現在の保健施設が使用している単位を使用しているのは2つ未満のその他の保健施設であるということを見出す場合、それらの単位は「例外」と呼ばれるものとして分類されてもよい。同様に、このシステムは、特定の数の別の保健施設が特定の数の投与量(又はその他の)限度を使用し、一方で現在の保健施設はその後に識別される投与量限度を使用し、その投与量限度は少数の保健施設だけで使用されるということを示してもよい。現在の保健施設の薬品データ・セットの別の保健施設の薬品データ・セットとの比較はパーセンテージで表されてもよく、そのままの数字の比較であってもよく、又は何らかのその他の比較の値であってもよい。例えば、比較結果は、「その他の保健施設の75%で使用されている(薬品の)最大投与量は限度XXXXXですが、あなたが使用しているのはその他の保健施設の3%でしか使用されていないYYYYYです。変更を希望しますか?」という種類のものであってもよい。
【0037】
プログラムは、最大及び最小投与量、供給の割合、濃度又はその他の供給パラメータなどの薬品供給のパラメータ値が集計データ・ベース又はセットに含まれた同種のパラメータと比較されるボックス155(図2B)で再び始まる。この比較は、ボックス160によって示されているように、使用される値が入るべき何らかの合理的な範囲を適用するために構成されることが可能である。例えばこの実施例では、保健施設は許容可能な値の範囲として、集計データ・ベース内に含まれた平均値から2つの標準偏差の範囲を選択している。この施設の値が2つの標準偏差を超える場合、ボックス165でその値は例外報告に加えられる。
【0038】
この時点で、このプロセスの複数の代替実施例が可能である。例えば、値が保健施設によって確立された許容可能範囲の中に入らないものとして識別される場合、プログラムは薬品名及び値を表示して、ユーザに値の変更を望むかどうかを訊ねてもよい。そうした変更は、新しい値で施設のデータ・セットを更新することになる。そうした変更の記録はまた維持されてもよく、必要に応じてデータ・セットに対する変更を認定するために、後で報告として印刷されることも可能である。代替として、一旦、保健施設のデータ・セットで見つけられたすべての識別された例外の総合的報告が生成されると、データ・セットに対するすべての変更は後で行われてもよい。
【0039】
示されている実施例で、ボックス155及び160の比較及び判定の工程が完了された後、ボックス170でプログラムは、処理されるべき任意のさらなるデータがあるかどうかを判定する。処理されるべきさらなるデータがある場合、プログラムはボックス185の方へ進み、そこでプログラムは「開始」に戻されるか、又は施設の薬品データ・セット中のデータの処理を継続するために、プログラム中の何らかのその他の適切な開始位置に戻される。処理するデータがそれ以上なければ、プログラムはボックス175の方へ進んでもよく、そこで、報告は、さらなる調査又は修正のためのプロセスの間に識別された例外を提示する。報告が生成されると、ボックス180でプログラムは終了する。
【0040】
上述の本発明の態様によるシステム及び方法は、施設の薬品データ・セットを分析するタスクを自動化する。このシステム及び方法は、自動化された方法で、所与のプロフィールの中で別の保健施設によって使用された薬品名を探し、次いで薬品ライブラリ設定を、データ・ベースの中に含まれたすべての別の保健施設のデータ・ベースと比較する。当業者によって理解されるように、様々なプロセスが、薬品名、プロフィール名、並びに本発明のシステム及び方法が所望の比較を達成することができることを確実にするためのパラメータに適用されてもよい。例えば、施設によって使用される薬品名が集計データ・セットの中で見つからない場合、プロセスは合致を見出すために不必要な特性を取り除き、取り除かれた薬品名を再び比較する。
【0041】
上述の状況に加えて、限定されるわけではないが、例えば以下のような多岐に渡る場合について例外報告が作成されてもよいということが考えられる。
1.薬品の合致がない場合。この薬品についての履歴が存在しない。このシステム及び方法はその後、薬品の項目を一覧にする。名前の前にあるアルファベットではない文字のすべては、多数派のデータとの比較のために取り除かれることになる。例えば1つの実施例では、その後anesthesia(麻酔)の「A」、又はfavorite(お気に入り)の「F」が薬品名の左側に表示されてもよい。
2.投薬単位が1回又は小数回使用された場合。この場合、本発明の方法を具体化するプログラムは、投薬単位とともに薬品名の項目を太字で一覧にしてもよい。次いでこの後には、比較のために別の施設によって使用された投薬単位が続き、その後にそれらの使用の頻度が続く。
3.最小の薬品限度が2つの標準偏差の外にある場合。この場合、システムは最小値を太字で表示し、比較のために、例えば2つの標準偏差などの許容範囲を表示してもよい。
4.最大の薬品限度が2つの標準偏差の外にある場合。この場合、システムは最大値を太字で表示し、比較のために、例えば2つの標準偏差などの許容範囲を表示してもよい。
【0042】
本発明は複雑なコンピュータ分析プログラムを開き、それを適用することなくデータ・セットにアクセスする便利な方法を提供し、自動化された方法での複雑なデータ・セットの分析を可能にする。本発明のシステム及び方法は、例えば大量の投薬、厳格な限度比較及び構成の設定とともに、投薬単位のクロス・プロフィール比較などの多岐に渡るパラメータの分析を含んでもよい。本発明のシステム及び方法の様々な実施例によって生成される例外報告は、例えばExcel、Word(双方ともMicrosoft社によって流通されている)、及びその他の適切なアプリケーションへ例外報告を出力することを含む。このように、本発明のシステム及び方法は、間違いが起こらないようにするために保健施設の薬品データ・セットを分析するための正確でスピーディな方法を提供する。本発明のシステム及び方法はまた、複雑な薬品データ・セットを複数の別の保健施設から収集されたデータと比較する方法を提供する。この方法は、保健施設が大多数の他のユーザと同じ方法で薬品を使用しているということを確実にし、施設の患者のより一貫した、効果的な治療という利益を提供するものと思われる。
【0043】
本発明の複数の特定の形態が示され、説明されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われうるということは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の1つの実施例を示すグラフィック図である。
【図2A】本発明の1つ実施例による方法を示すブロック図である。
【図2B】本発明の1つの実施例による方法を示すブロック図である。
【図3】施設によって使用されるプロフィール名を集計データ・セットの中に含まれたプロフィールにマッピングするため提供される、ユーザに対して示されるディスプレイ・スクリーンのグラフィック図である。
【図4】使用されることができる可能な代替値及び別の施設によるそれらの使用頻度とともに、例外として示される値の表示を示すディスプレイ・スクリーンのグラフィック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床的妥当性について薬品のデータ・セットを分析するためのシステムであって、
分析されるべき第1薬品データ・セットを入力するための入力デバイスにして、該第1薬品データ・セットが、複数の薬品と、各薬品に関連した、患者への前記薬品の投与に関連したデータからなる複数のデータ要素とを有し、該データ要素が投薬情報を含む、入力デバイスと、
確立された薬品データ・セットを有するメモリにして、該確立された薬品データ・セットが、複数の薬品と各薬品に関連したと、患者への前記薬品の投与に関連したデータからなる複数のデータ要素とを有し、該データ要素が投薬情報を含む、メモリと、
前記確立された薬品データ・セットを受信するために前記メモリに接続され、前記第1薬品データ・セットを受信するために前記入力デバイスに接続されたプロセッサにして、該プロセッサが、前記第1薬品データ・セットを前記確立された薬品データ・セットと比較するようにプログラムされており、前記比較が、前記第1薬品データ・セットの薬品と前記確立された薬品データ・セットの薬品との間の合致を識別することと、識別された合致の投薬情報を比較することとを含む、メモリと、
前記比較の結果を報告するために前記プロセッサに接続された報告デバイスとを有する、分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分析システムにおいて、
前記プロセッサが、前記確立された薬品データ・セットの中には含まれていない、前記第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品を識別するようにもプログラムされており、
前記報告デバイスが、例外として、そのような合致しない薬品も報告する、分析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の分析システムにおいて、
前記プロセッサが、前記第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品のために使用される異なる投薬単位であって、前記確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品のためには使用されていない、異なる投薬単位を識別するようにもプログラムされており、
前記報告デバイスが、そのような投薬単位の違いも報告する、分析システム。
【請求項4】
請求項1に記載の分析システムにおいて、
該分析システムが、前記確立された薬品データ・セットの中に含まれた薬品のために使用される異なる投薬単位の報告時、前記第1薬品データの中に含まれた同じ薬品の前記投薬単位を変更するようにユーザに促す、分析システム。
【請求項5】
請求項3に記載の分析システムにおいて、前記プロセッサが、該プロセッサによる前記比較の前に、前記第1薬品データ・セットの中の薬品の前記投薬単位を、前記確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品の前記投薬単位に自動的に変えるようにもプログラムされている、分析システム。
【請求項6】
請求項1に記載の分析システムにおいて、前記プロセッサが、前記第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の各々のために使用される異なる投薬限度にして、前記確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品のために使用されていない、異なる投薬限度を識別するようにもプログラムされており、
前記報告デバイスがそのような投薬限度の違いも報告する、分析システム。
【請求項7】
請求項1に記載の分析システムにおいて、該システムが、前記確立された薬品データ・セットの中に含まれた薬品のために使用される異なる投薬限度の報告時、前記第1薬品データ・セットの中に含まれた同じ薬品の前記投薬限度を変更するようにユーザに促す、分析システム。
【請求項8】
請求項1に記載の分析システムにおいて、前記プロセッサが、該プロセッサによる比較の前に、前記第1薬品データ・セットの中の薬品の前記投薬限度を、前記確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品の前記投薬限度に自動的に変えるようにもプログラムされている、分析システム。
【請求項9】
請求項1に記載の分析システムにおいて、
前記メモリが複数の確立された薬品データ・セットを有し、
前記プロセッサが前記複数の確立された薬品データ・セットを受信するために前記メモリに接続されており、
前記プロセッサが、前記第1薬品データ・セットを前記複数の確立された薬品データ・セットと比較するようにプログラムされている、分析システム。
【請求項10】
請求項9に記載の分析システムにおいて、
前記プロセッサが、2つ未満の確立された薬品データ・セットが薬品のために同じ投薬単位を利用する場合、前記第1薬品データ・セットの中に含まれた同じ薬品のための異なる投薬単位を識別するようにもプログラムされており、
前記報告デバイスが、「例外」として、そのような投薬単位の違いも報告する、分析システム。
【請求項11】
請求項9に記載の分析システムにおいて、
前記プロセッサが、前記第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の各々のために使用される異なる投薬限度にして、前記複数の確立された薬品データ・セットの中の同じ薬品の各々のためには使用されない投薬限度の数を識別するようにもプログラムされており、
前記報告デバイスが、そのような数も報告する、分析システム。
【請求項12】
請求項9に記載の分析システムにおいて、前記プロセッサが、前記複数の確立された薬品データ・セットの中で見出される薬品のための最小及び最大の投薬限度の許容可能な変域を判定するようにプログラムされている、分析システム。
【請求項13】
請求項12に記載の分析システムにおいて、前記プロセッサが、前記許容可能な変域に入らない前記第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の最小投薬限度を識別するようにプログラムされおり、
前記報告デバイスが、そのような識別も報告する、分析システム。
【請求項14】
請求項12に記載の分析システムにおいて、前記プロセッサが、前記許容可能な変域に入らない前記第1薬品データ・セットの中に含まれた薬品の最大投薬限度を識別するようにプログラムされており、
前記報告デバイスが、そのような識別も報告する、分析システム。
【請求項15】
請求項1に記載の分析システムにおいて、前記確立された薬品データ・セットが医療施設によって生成されるデータ・セットを表す、分析システム。
【請求項16】
請求項9に記載の分析システムにおいて、前記複数の確立された薬品データ・セットの各々が異なる医療施設によって生成されるデータ・セットを表す、分析システム。
【請求項17】
請求項1に記載の分析システムにおいて、前記システムが薬品データ・セットを作成するために使用される編集プログラムの一部である、分析システム。
【請求項18】
請求項1に記載の分析システムにおいて、前記システムがポータブル・コンピューティング・デバイスに収容されている、分析システム。
【請求項19】
請求項1に記載の分析システムにおいて、前記第1薬品データ・セットが第1デバイスに収容され、前記確立された薬品データ・セット及び前記プロセッサが第2デバイスに収容されている、分析システム。
【請求項20】
臨床的妥当性について薬品のデータ・セットを分析するためのコンピュータ化された方法であって、
分析されるべき第1薬品データ・セットを受信する工程にして、該第1薬品データ・セットが、複数の薬品と、各薬品に関連した、注入ポンプによる患者への前記薬品の投与に関連したデータからなる複数のデータ要素とを有し、該データ要素が注入投薬情報を含む、分析されるべき第1薬品データ・セットを受信する工程と、
確立された薬品データ・セットを有する参照データ・ベースを維持する工程にして、該確立された薬品データ・セットが、複数の薬品と、各薬品に関連した、薬物注入ポンプによる患者への前記薬品の投与に関連した複数のデータ要素とからなり、該データ要素が注入投薬情報を含む、確立された薬品データ・セットを有する参照データ・ベースを維持する工程と、
前記第1薬品データ・セットを前記確立された薬品データ・セットと比較する工程にして、前記第1薬品データ・セットの薬品と前記確立された薬品データ・セットの薬品との間の合致を識別することと、識別された合致の前記注入投薬情報を比較することとを含む、前記第1薬品データ・セットを前記確立された薬品データ・セットと比較する工程と、
前記比較の結果を報告する工程とを含む、分析方法。
【請求項21】
請求項20に記載の分析方法において、前記参照データ・ベースを維持する工程が複数の確立された薬品データ・セットを有する参照データ・ベースを維持することを含む、分析方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−541280(P2008−541280A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511459(P2008−511459)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/018689
【国際公開番号】WO2006/122322
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(505403186)カーディナル ヘルス 303 インコーポレイテッド (69)
【氏名又は名称原語表記】Cardinal Health 303,INC.
【Fターム(参考)】