説明

薬液注入装置

【課題】 注射による痛みを感ずることがなく、注射の恐怖を感じさせず、なおかつ操作が簡便な薬液注入装置を提供すること。
【解決手段】 薬液を内蔵した薬液室と針保持体の針が連通して針先から薬液が放出できるようにし、薬液室を包囲する円形外枠と弾性素材円板が嵌合することによりクッション状態となり、円形外枠上面を身体の一部と共に強くスラップ(平手打ち)することにより薬液が放出でき、スラップの刺激で注入装置の針の痛みを感じないように設計された薬液注入装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入装置に関し、さらに詳しくは装置を身体の薬液注入部位である皮膚面に密接させ、該装置と共に皮膚面を強く平手打ちすることにより、薬液が体内に注入され、身体の一部が平手打ちで感じる強い刺激によって注射針による痛みを感じない薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
注射は不快な刺激痛を伴うため、注射投与される者にとっては憂鬱な事象である。特に、連日投与、頻回投与、長期間投与を余儀なくされる注射療法の場合には、注射針による痛み、注射の恐怖、憂鬱、煩わしさ、治療に要する時間などが大きな問題となる。注射針が細く、簡単なカートリッジを用いる方法が行われている現在であっても、その肉体的、精神的苦痛は大きいものといえる。
【0003】
それゆえ、注射針の痛み及び注射の恐怖感を感ずることなく、薬液注入の不快感を感じさせず、さらに危険なく自己注射することができれば、患者負担が著しく減少し、例えばインスリン注射治療を行う糖尿病などの医療に大きく貢献するとともに、医療費削減など社会的貢献が大きいものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、上記の現状に鑑み、注射による痛みを感じさせず、また注射の恐怖を感じさせず、なおかつ操作が簡便な薬液注入装置を提供することを課題とする。
【0005】
かかる課題を解決するべく、本発明者は鋭意検討を行った結果、身体における薬液の注入部位(投与部位)である皮膚面に薬液注入装置を密接させ、該薬物注入装置を含む皮膚面をスラップ(slap;身体の一部を平手で強くぴしゃりと打つこと)することにより、簡便に薬液を皮下または筋肉内に注入することができ、同時に注射針の穿刺による激しい痛みを伴わない薬液注入装置を見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、注射針の穿刺による痛み(以下「針痛」という。)を感じさせず、しかも簡便な操作で目的とする薬液を注入(投与)することできる薬液注入装置を提供する。
【0007】
より具体的には、本発明はその態様として、以下の基本的構成からなる。
(1)円筒の薬液室の下部を、当該薬液室に連通する針を保持する針支持体を設けた底部により密閉してなる薬液注入部と、
前記薬液室の上面に接合しかつ薬液注入部を囲う、下方部が解放された円形外枠と、
前記円形外枠に一部分を嵌合させた皮膚接触面となる弾性素材円板と、
からなり、
前記薬液注入部の針支持体及び該針支持体で保持する針の先端部分を弾性素材円板内に埋設させたことを特徴とする薬液注入装置;
(2)前記薬液注入装置の皮膚接触面となる弾性素材円板を皮膚面に密着させ、円形外枠の上部を身体の一部と共に強く平手打ち(以下「スラップ」という)したとき、弾性素材円板内に埋設された針支持体で保持する針先端部が、弾性素材円板の外部へ1〜4mm露出するものである上記(1)に記載の薬液注入装置;
(3)円形外枠の上部をスラップした後、手の力を抜いたとき、弾性素材円板の外部へ露出した針先端部が瞬時に弾性素材円板内に戻るものである上記(1)に記載の薬液注入装置;
(4)円形外枠の上部に指を通せる輪を取り付けたことを特徴とする上記(1)に記載の薬液注入装置;
(5)薬液室の容量が10〜120μLである上記(1)に記載の薬液注入装置;
(6)薬液室の容量が50〜11μLである上記(1)に記載の薬液注入装置;
(7)弾性素材円板の底面積が1〜10cmである上記(1)に記載の薬液注入装置;
(8)弾性素材円板の底面積が2〜5cmである上記(1)に記載の薬液注入装置;
(9)針支持体が保持する針が外径0.1〜0.5mm、長さ2〜6mmの注射用針である上記(1)に記載の薬液注入装置;
(10)弾性素材円板がスポンジ、ゴムまたはラテックスからなる弾性素材である上記(1)に記載の薬液注入装置;
である。
【0008】
さらに本発明は、
(11)薬液室に内蔵する薬液が、頻回の注射投与が必要であり、かつ微量で効果を示す薬物又はワクチンの注射溶液、又は懸濁液である上記(1)に記載の薬液注入装置;
(12)薬物がインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、エリスロポエチン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、t−PA、インターロイキン類、G−CSF、GM−CSF、SOD、FGF、EGF、HGF、NGF、BDNF、レプチン、NT−3、PTH、ACTH、GnRH、TRH、バソプレッシン、カルシトニン、ミドカイン、抗原、抗体および酵素から選ばれるものである上記(11)に記載の薬液注入装置;
(13)薬物が、上記(12)に記載された薬物のナノ粒子化物またはマイクロ粒子化物である上記(11)に記載の薬液注入装置;
(14)皮下又は筋肉内へ注入するために使用される上記(1)に記載の薬液注入装置;
である。
【0009】
また本発明は、別の態様として、
(15)上記(1)〜(14)のいずれかに記載された薬液注入装置を皮膚面に密接させ、該装置の円形外枠の上面および薬液注入装置を密接した皮膚の近辺を同時に強くスラップすることにより薬液室に内蔵した薬液を注入することを特徴とする薬液注入方法;
である。
【0010】
上記したように、本発明は、薬物注入部位である皮膚面にスラップ(強く平手打ち)することにより瞬時に皮下、筋肉内に薬液が注入されると共に、スラップによる刺激のため針痛を感じない薬液注入装置および当該装置を用いる薬液注入方法を提供する点で、極めて特異的なものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提供する薬液注入装置および薬液注入方法は、薬液注入装置の皮膚接触面を大腿部と下腿部、上腕、前腕、腹部などの注入部位とを一緒にスラップ、すなわち強く平手打ちすることにより薬液を瞬時に注入し、かつ瞬時に針を抜き去ってしまうものであり、針の穿刺による痛さ、さらには薬液注入の不快を感じない利点を有している。
これは、大腿部、下腿部などの身体の一部への強いスラップの刺激によって、針痛が隠蔽および緩和されるためであると考えられる。また、外部から注入装置の針が見えないので注射の恐怖感をほとんど感じさせない利点を有している。
また、薬物注入装置をスラップするだけで薬物注入治療が可能であることから、簡便なものであり、1分以内に薬液の投与を完了することができる利点を有している。
【0012】
本発明の薬液注入装置は、装置自体の底面積が1〜10cm程度であり、また、その高さが1.3〜3.0cm程度の大きさであるため、手軽に薬液注入装置を携帯することができ、人前であっても、特に前腕においては自己投与が容易にできるという特徴を有する。また本装置は小型であり軽量であるため、例えば薬物がインスリンの場合には一日分をポケット、バッグなどに入れて持ち運ぶことができる利点を有している。
【0013】
さらにまた、薬液室には1回のスラップ操作で目的とする治療効果を発揮する一定量の薬液が投与できるよう収納するものであり、それ以上の薬液が注入されることはない。したがって、安全性が高く、また、ディスポーザブルタイプとしての使い捨てが可能となり、衛生的であって、他人への感染などの心配がない利点を有している。
【0014】
また、本発明の薬液注入装置にあっては、薬液の充填は1回投与当たりの所定量の充填であることから、薬液含量の異なるいくつかの種類の装置を用意することが可能となる。例えば、薬物がインスリンの場合は、3、5、8、10、15単位のものを作り製品を色分けすれば投与量を間違えることがない利点を有している。
【0015】
本発明の薬液注入装置に使用される薬物としては、頻回の注射が必要であり、かつ微量で効果を発揮する薬物が特に有効である。
【0016】
以上のとおり、本発明の薬液注入装置は、従来の注射剤の概念を変えるものであり、糖尿病治療などに大きく貢献する薬液の投与装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明が提供する薬液注入装置は、上記したように、その基本は、
円筒の薬液室の下部を、当該薬液室に連通する針を保持する針支持体を設けた底部により密閉してなる薬液注入部と、
前記薬液室の上面に接合しかつ薬液注入部を囲う、下方部が解放された円形外枠と、
前記円形外枠に一部分を嵌合させた皮膚接触面となる弾性素材円板と、
からなり、
前記薬液注入部の針支持体及び該針支持体で保持する針の先端部分を弾性素材円板内に埋設させたことを特徴とする薬液注入装置である。
【0018】
以下に本発明が提供する薬液注入装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の薬液注入装置について、その一実施例に基づく薬液注入装置を模式的に示した断面拡大図である。
【0019】
図中、1は本発明の薬液注入装置であり、該薬液注入装置1は、円筒10に設けた薬液室11の下部を、薬液室11に連通する針12を保持する針支持体13を設けた底部14により密閉した薬液注入部20と、薬液室11の上面に接合すると共に薬液注入部20を囲う下方部が解放された円形外枠30と、皮膚に接触する皮膚接触面45を有する弾性素材円板40とからなるものであり、弾性素材円板40は、その一部が円形外枠30内に嵌合すると共に、前記薬液注入部20の針支持体13及び該針支持体で保持する針12の先端部分15を弾性素材円板内に埋設させた構成を採用するものである。
【0020】
すなわち、本発明の薬液注入装置1は、薬液室11と薬液室に連通する針12を保持する針支持体13とからなる薬液注入部20を円形外枠30で囲う構成を採用しており、その上で、円形外枠30に弾性素材円板40を一部嵌合させると共に、前記薬液注入部20の針支持体13及び該針支持体で保持する針12の先端部分15を弾性素材円板内に埋設させた構成を採用する。
【0021】
この場合にあって、弾性素材円板40の底面は大腿部及び下腿部、上腕、前腕、腹部などの身体の薬液注入部位における皮膚面に本発明の装置自体を密接させるために、平らな皮膚接触面45が設けられている。
【0022】
したがって、本発明の薬液注入装置1を用いて薬液を投与する場合には、薬液注入装置1を弾性素材円板40の底面である皮膚接触面45を身体の注入部位に密接させ、その状態で、円形外枠30の上面31を含み、投与部位をスラップすること、あるいは、掌に本発明の薬液注入装置を保持・固定し、その状態で身体の注入部位をスラップすることにより、弾性素材円板40がその弾力性によってクッション状態となり針12が外部へ露出するので、皮膚接触面45に接する身体の注入部位に針12が突き刺さることとなり、瞬時に薬液が身体に注入されることとなる。
【0023】
このスラップ操作は瞬時に行われることから、注入部位の近辺には、不快感のない、スラップによる強い刺激のみが与えられ、その結果、針痛をほとんど感ずることなく、薬液室中の薬液の全量が注入部位に投与されることとなる。
【0024】
このスクラップ操作された本発明の薬液注入装置についての模式的な断面拡大図を、図2として示した。なお、図中の符号は図1と同様である。
【0025】
スクラップ操作により薬液の投与が終了した本発明の薬液注入装置を皮膚面から離した状態では、弾性素材円板40の反発弾性力によって円形外枠30が元の状態に戻り、その結果、皮膚面に穿刺されていた針は身体の注入部位から抜けると同時に、弾性素材円板40内に埋没する。したがって、その状態で使用後の装置を廃棄処分することができることとなる。
【0026】
すなわち、使用後における本発明の薬液注入装置の廃棄にあたっては、危険な針の先端部が外部に露出していないことから、極めて安全な廃棄処理を行うことが可能となり、また他人へ血液感染の危険性がない。
【0027】
図3に、本発明の薬液注入装置の全体外観概略図を示した。なお、図中円形外枠30の上部に輪32が取り付けられており、日常的な持ち運びに便利である。また、この輪32に指を通すことにより掌に本発明の薬液注入装置を保持・固定することができ、その状態でのスラップ操作を容易に行えることとなる。さらに、輪32を適宜色分けして、薬液内の投与量の指標とすることができる。例えば、薬物がインスリンの場合は、3、5、8、10、15単位の各製品を、この輪32を適宜色分けすることにより区別すれば、投与量を間違えることがない。
【0028】
本発明の薬液注入装置1にあっては、弾性素材円板40内に埋設された針12は、円形外枠30の上面31をスラップしたときに、弾性素材円板40から露出して皮下または筋肉内に突き刺さるために必要な長さ針の先端部15が露出する必要があり、具体的には、1〜4mm弾性素材円板から露出するように設計するのが好ましい。
【0029】
また、本発明の薬液注入装置をスラップしたときに薬液室11に内蔵された薬液の全量が針12を通って放出され、身体の注入部位に投与される必要があり、そのためには、薬液室11の容量が10〜200μL、好ましくは50〜100μLであるのがよい。なお、その容量は、使用する薬液の1回の注入量によって適宜選択することができる。
【0030】
本発明の薬液注入装置にあっては、針支持体13は薬液室11の底面と一体となっており、かつ、針の開口部から薬液室に内蔵された薬液が通過するように連通されており、針支持体に保持される針は、薬液室11に内蔵された薬液が、スラップしたとき瞬時に放出、投与される必要があるため、外径0.1〜0.5mm、長さ2〜6mmのサイズの注射用針が使用されるのが好ましい。
【0031】
また、本発明の薬液注入装置1は、薬液注入部20と円形外枠30を一体にするために、薬液室11の上面が円形外枠30に一体的に接合されており、かつ薬液注入部20全体が円形外枠30内にスッポリ収納されている。また、円形外枠の外部上面に指を通せる輪32を設けることにより、スラップし易くできるとともに、スラップしたとき注入部位から針を抜け易くすることが可能となる。
【0032】
本発明が提供する薬液注入装置は、円形外枠30と嵌合する弾性素材円板40の弾力性を利用してスラップの瞬時に、かつ針痛を感じずに薬液を注入することが最大の特徴である。スラップが瞬時であるため、およびスラップが与える装置近辺への強い刺激によって、針痛が隠蔽、緩和されるという大きな目的がある。
【0033】
そのような弾性素材円板40としての弾性素材は、円形外枠30をスラップしたとき、露出している針12が瞬時に弾性素材円板内に戻るような素材であればいずれでも良く、スポンジ、ゴム、ラテックスなどが挙げられるが、なかでもスポンジが好ましく使用できる。
【0034】
また、弾性素材円板40の底面積は、円形外枠30の解放底面積と一致しており、1〜10cm、好ましくは2〜5cmとするのがよい。なお、弾性素材円板40の底面は大腿部及び下腿部、上腕、前腕、腹部などの注入部位に接触するので平らな皮膚接触面45が設けられている。
【0035】
円形外枠30の素材としては、弾性素材円板40としっくりと嵌合され、かつ弾性素材円板40の弾力性を損なわないものであればいずれでもよい。また、本発明の薬液注入装置を使用した後の誤用を防ぐために、外部から装置内が見えるように外枠が透明であることが好ましい。円形外枠30の上面から弾性素材円板40の皮膚接触面45までの長さは1.3〜3.0cm程度が好ましい。
【0036】
本発明の薬液注入装置に使用できる薬物としては、本装置の操作方法が簡便であり、投与量が少量であるため、頻回の注射投与が必要であり、なおかつ微量で効果を発揮する薬物が適している。これらの薬物を溶液または懸濁液として使用する。
【0037】
好ましい薬物としては、インスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、エリスロポエチン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、t−PA、インターロイキン類、G−CSF、GM−CSF、SOD、FGF、EGF、HGF、NGF、BDNF、レプチン、NT−3、PTH、ACTH、GnRH、TRH、バソプレッシン、カルシトニン、ミドカイン、抗原、抗体および酵素ならびにワクチンなどである。
【0038】
また、これらの薬物のナノ粒子化物またはマイクロ粒子化物も使用することができる。ナノ粒子化物としてはWO2005−023282号公報にタンパク質、ペプチドのナノ粒子が記載されており、マイクロ粒子化物としてはWO2004−112751号公報にインターフェロンのマイクロ粒子が、特開2005−8545号にヒト成長ホルモンのマイクロ粒子が記載されている。
【0039】
本発明の薬液注入装置は、皮下注入および筋肉内注入に利用できるが、スラップしたときに針の外部への露出部分の長さが1〜4mmであることから皮下注入において特に優れている。
【0040】
本発明の薬液注入装置は、薬液を皮下、筋肉内へ注入するために使用する以外に、血液成分を測定するための血液を採取するために使用することもできる。例えば、本装置の注射針の代わりに木綿針を取り付けた本装置を皮膚にスラップすることにより皮膚から微量の出血をさせ、出血した血液を血液中の成分、例えばインスリンの測定に利用することも可能である。
【0041】
本発明が提供する薬液注入装置はその目的を逸脱しない限り種々の変形が可能であり、その変形も本発明の技術的範囲内に包含されることに注意すべきである。
さらに、本発明は上記で説明した薬液注入装置を用いた薬液の注入方法を提供するものでもあり、その手段は、上記した説明から容易に理解し得るものである。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の薬液注入装置を実際に使用した具体的実施例、およびその効果を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例1:スラップによる皮下注入の実際
外径0.25mm、長さ2.5mmの注射針を用い、50μLの生理食塩水を薬液室に充填することにより図1と同様の薬液注入装置を作製し、同装置全体を滅菌した。次いで、同意をとったポランティア3名に対して、装置外枠の上面に取り付けた輪に中指を通し、装置を掌につけてボランティアの大腿部を強く叩き(スラップ)、その反動で自然に手とともに装置が大腿部から離れた。その結果、ボランティア3人とも大腿部の針による痛みはほとんど感じず、50μLの生理食塩水の全量が大腿部皮下に注入できた。
【0044】
実施例2:インスリンの皮下注入効果
16時間絶食した2kgの家兎(2頭)の腰部の横をバリカンで剃毛して、その部位に実施例1と同様にスラップした。ただし、50μLの薬液は2単位のレギュラーインスリンを生理食塩水で希釈したものとした。耳静脈より0、10、30、60、120分後に採血し、インスリン値をELISA法で測定した。2日後同じ家兎を用い、同量のインスリンを普通に反対側同部位に皮下注入し、同じ間隔で血中インスリン濃度を測定した。その結果を図4に示したが、ほぼ同様のインスリン濃度曲線を示した。
【0045】
以上より、本発明の薬液注入装置によって、通常行われている皮下注射と同様のインスリン量が注入され、体内に分布することが判った。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上記載したように、本発明の薬液注入装置は、針痛を感じず、瞬時に注入ができ、携帯可能であり、投与量の変動がなく安全に注入が出来る、などの長所を有する。
したがって、従来の注射剤という概念を変える薬液の注入装置、方法であり、糖尿病治療などに大きく貢献する投与装置、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の薬液注入装置について、その一実施例に基づく装置を模式的に示した断面拡大図である。
【図2】本発明の薬液注入装置を用いて薬液を投与する場合を模式的に示した断面拡大図である。
【図3】本発明の薬液注入装置について、その一実施例に基づく装置の全体図である。
【図4】実施例2の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1 薬液注入装置
11 薬液室
12 針
13 針支持体
20 薬液注入部
30 円形外枠
40 弾性素材円板
45 皮膚接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒の薬液室の下部を、当該薬液室に連通する針を保持する針支持体を設けた底部により密閉してなる薬液注入部と、
前記薬液室の上面に接合しかつ薬液注入部を囲う、下方部が解放された円形外枠と、
前記円形外枠に一部分を嵌合させた皮膚接触面となる弾性素材円板と、
からなり、
前記薬液注入部の針支持体及び該針支持体で保持する針の先端部分を弾性素材円板内に埋設させたことを特徴とする薬液注入装置。
【請求項2】
前記薬液注入装置の皮膚接触面となる弾性素材円板を皮膚面に密着させ、円形外枠の上部を身体の一部と共に強く平手打ち(以下「スラップ」という)したとき、弾性素材円板内に埋設された針支持体で保持する針先端部が、弾性素材円板の外部へ1〜4mm露出するものである請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項3】
円形外枠の上部をスラップした後、手の力を抜いたとき、弾性素材円板の外部へ露出した針先端部が瞬時に弾性素材円板内に戻るものである請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項4】
円形外枠の上部に指を通せる輪を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項5】
薬液室の容量が10〜200μLである請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項6】
薬液室の容量が50〜100μLである請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項7】
弾性素材円板の底面積が1〜10cmである請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項8】
弾性素材円板の底面積が2〜5cmである請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項9】
針支持体が保持する針が外径0.1〜0.5mm、長さ2〜6mmの注射用針である請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項10】
弾性素材円板がスポンジ、ゴムまたはラテックスからなる弾性素材である請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項11】
薬液室に内蔵する薬液が、頻回の注射投与が必要であり、かつ微量で効果を示す薬物又はワクチンの注射溶液、又は懸濁液である請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項12】
薬物がインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、エリスロポエチン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、t−PA、インターロイキン類、G−CSF、GM−CSF、SOD、FGF、EGF、HGF、NGF、BDNF、レプチン、NT−3、PTH、ACTH、GnRH、TRH、バソプレッシン、カルシトニン、ミドカイン、抗原、抗体および酵素から選ばれる請求項11に記載の薬液注入装置。
【請求項13】
薬物が、請求項12に記載された薬物のナノ粒子化物またはマイクロ粒子化物である請求項11に記載の薬液注入装置。
【請求項14】
皮下または筋肉内へ注入するために使用される請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載された薬液注入装置を皮膚面に密接させ、該装置の円形外枠の上面および薬液注入装置を密接した皮膚の近辺を同時に強くスラップすることにより薬液室に内蔵した薬液を注入することを特徴とする薬液注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−14594(P2007−14594A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200035(P2005−200035)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(303010452)株式会社LTTバイオファーマ (27)
【Fターム(参考)】