説明

薬物の乱用可能性を低下させ且つ作用持続時間を延長する化合物および方法

アヘン鎮痛薬などの生物学的に利用可能な薬物を、製剤化の前に、十分に吸収されないエステルプロドラッグまたは他のプロドラッグ誘導体へ変換することにより、その乱用可能性を減少させ且つその作用持続時間を延長させる。活性な薬剤であって、該活性な薬剤を含有する錠剤またはカプセルビーズを噛み砕き、破砕し、またはそれ以外に破壊することによって放出されうる活性な薬剤の多数の既存の徐放性製剤とは異なり、本発明のプロドラッグを含有する錠剤またはカプセルビーズのこのような機械的プロセスは、活性な薬物を放出することもないし、プロドラッグの薬物への制御された変換に影響することもない。更に、本発明のプロドラッグまたは他の薬物を含有する錠剤およびカプセルビーズは、静脈内および経鼻投与の様式について、必要とされない製剤の不適当な静脈内および経鼻投与を妨げるのに十分な量のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤と一緒に製剤化することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
錠剤またはカプセル剤で経口投与される薬物の作用持続時間は、しばしば、活性な薬剤が、被覆されているおよび/または被包されているおよび/またはそれ以外に、活性物質の溶解を遅らせる物質によって包括されている制御放出送達法を利用することによって延長される。この送達法は、より長い作用持続時間を考慮して、即時放出性製剤よりも多量の活性剤を必要とする。このような制御放出性錠剤またはカプセルビーズの意図的なまたは意図的でない機械的プロセスは、このような製剤の制御放出作用に影響することがありうるので、投与後に、活性な薬物の毒性レベルを生じることがありうる。したがって、例えば、Avinza(登録商標)という名称で販売されている制御放出性モルヒネおよび OxyContin(登録商標)という名称で販売されている制御放出性オキシコドンは、OxyContin(登録商標)および Avinza(登録商標)の能書にあるブラックボックス警告によって示されるように、制御放出性錠剤またはカプセルビーズが、その製剤の制御放出作用に影響するように噛み砕かれ、破砕され、粉砕され、またはそれ以外に破壊された場合に、強い多幸感、更には、致命的かもしれない呼吸機能低下を生じるのに十分なオピオイドを含有している。
【0002】
破砕された錠剤またはカプセルビーズの経口静脈内または経鼻投与後に、強いモルヒネ様高揚に容易に達しうることから、これら製剤の乱用可能性は大きい。その結果、OxyContin(登録商標)の乱用は、年に数百人の死者が、徐放性オキシコドンの乱用に起因しているという診断医の報告によって証明されるように、および主な乱用薬物として徐放性オキシコドンを示しているメタドン処置センターの新たな登録者の大部分によって証明されるように、重大な問題になっている。
【0003】
多数の米国公報(例えば、6,475,494号;6,451,806号;6,375,957号;6,277,384号;6,228,863号;4,785,000号;4,769,372号;4,661,492号;4,457,933号;および3,966,940号)は、それら乱用可能性を低下させる目的のために、オピオイドアゴニスト製剤へのナロキソンまたはナルトレキソンなどのオピオイドアンタゴニストの添加を記載している。典型的には、このアプローチは、破砕された錠剤の内容物が非経口投与される場合であって、破壊されていない錠剤が、医学的に必要とされるように経口投与される場合を除いて、オピオイドアゴニストを中和することができる一定の形態および/または量のアンタゴニストの使用に頼っている。TALWIN(登録商標)Nxという名称で販売されているオピオイドペンタゾシンの経口製剤は、乱用された静脈内投与を妨げるためにナロキソンを含有している。しかしながら、TALWIN Nxの乱用された静脈内投与は、麻薬依存性個体に有害な離脱症候群を引き起こすことがありうる。Talwin Nx は、アンタゴニスト不含の従来販売されている経口ペンタゾシン製剤よりも、乱用された非経口投与の可能性は低いが、なお、乱用された経口投与を起こしやすい。米国文書5,149,538号および5,236,714号は、経皮投与用に医学的に必要とされるオピオイド製剤の乱用を妨げるためのアンタゴニストの使用を論じている。米国文書4,457,933号および6,475,494号は、経口投与用に医学的に必要とされるアゴニスト製剤中の適当量のオピオイドアンタゴニストの存在が、その製剤の乱用された経口投与を減少させることもありうるということを開示している。この減少は、身体依存性個体におけるアンタゴニストの嫌忌作用に起因していた(米国文書6,475,494号)。WO02094254号は、乱用された吸飲、注射または摂取について、乱用者が処方薬錠剤を破砕するのを防ぐために、経口製剤への適当量のカプサイシンの添加を記載している。
【0004】
オピオイド鎮痛薬の他の副作用には、胃腸管内に存在するμ受容体に結合するオピオイドによって引き起こされる胃腸機能障害が含まれる。胃の副作用には、塩酸の分泌減少、低下した胃の運動性、それによって延長する胃が空になっている時間が含まれ、それが、食道逆流を引き起こすことがありうる。十二指腸を介する胃内容物の通過は、12時間程度まで遅れることがありうるので、経口投与された薬物の吸収は遅延する。小腸内では、オピオイド鎮痛薬は、胆管、膵臓および腸の分泌物を減少させ、小腸内の食物の消化を遅らせる。休止緊張は増加し、周期的攣縮が認められる。非推進タイプの律動的な部分収縮の振幅は増大するが、推進性収縮は顕著に減少する。水分は、腸内容物の遅延通過のために、一層完全に吸収され、しかも腸分泌物は減少して、腸内容物の粘度を増加させる。結腸内の推進性蠕動波は、オピオイドの投与後に減少しまたは無くなり、そして緊張は、攣縮の地点へと増加する。結果として生じた腸内容物の通過遅延は、糞便をかなり脱水させ、順次、結腸を介するそれらの前進を遅らせる。通常は、結腸の非推進タイプの律動的収縮の振幅が増大する。肛門括約筋の緊張は、大きく増加し、直腸拡張に応答した反射弛緩が減少する。薬物の中枢作用による排便反射の正常な感覚刺激への不注意と組み合わされたこれら作用は、オピオイド誘導性便秘症の原因となる。
【0005】
医薬錠剤またはカプセル剤へのオピオイドアンタゴニストおよび他の嫌忌薬の添加は、乱用を十分に防止することがありうるが、それらもまた有害でありうる。したがって、乱用抵抗性であり且つ先行技術で与えられているオピオイド鎮痛薬よりも胃腸管内のμ受容体に作用する性質が低い新しいクラスのオピオイド鎮痛薬の開発が要求される。
【0006】
発明の要旨
本発明は、乱用可能性が低く、延長された作用持続時間を有し、GI副作用が少ない、μオピオイド受容体に結合する鎮痛薬の天然に存在しないプロドラッグを製造する方法を提供することにより、この要求を満たす。更に請求の範囲に記載されるのは、鎮痛薬よりも、μオピオイド受容体への結合親和性が低い、鎮痛薬のプロドラッグである。本発明の方法は、製剤化の前に、μオピオイド受容体に結合する生物学的に利用可能な鎮痛薬を、薬物の標的組織へのアクセス能を制限するプロドラッグへと変換することを含む。活性な薬剤であって、その活性な薬剤を含有している錠剤またはカプセルビーズを噛み砕き、破砕し、またはそれ以外に破壊することによって放出されうる活性な薬剤の多数の既存の徐放性錠剤およびカプセル製剤とは異なり、本発明のプロドラッグの錠剤またはカプセル製剤のこのような機械的プロセスは、薬剤を放出することもないし、不活性なプロドラッグの活性な薬物への変換に影響することもない。
【0007】
本発明のプロドラッグ組成物は、そのプロドラッグが、医学的に必要とされる投与経路による投与後に、血液によって十分に吸収されず、またはプロドラッグが血液によって吸収される場合、またはプロドラッグが血流中に直接的に注射される場合、そのプロドラッグは、薬物よりも、標的組織によって十分に吸収されないまたは標的組織への僅かな治療的作用しかないので、その薬物のバイオアベイラビリティーを制限している。
【0008】
本発明には、薬物のアルキル基または環状アルキル基、またはフェノール性またはエノール性ヒドロキシル基が、アシル基に共有結合している、しかもそのアシル基が、薬物の所望の作用持続時間を生じるように、プロドラッグの薬物への変換速度およびバイオアベイラビリティーを制限するように選択される、生物学的に利用可能なオピオイド鎮痛薬のエステルプロドラッグ組成物が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0009】
本発明に更に含まれるのは、鼻腔内または静脈内投与用に医学的に必要とされない本発明のプロドラッグ製剤または他の医薬製剤の鼻腔内または静脈内投与を妨げるためのヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤の使用を含む方法である。
【0010】
発明の詳細な説明
定義:
受容体結合親和性は、受容体への分子が有する結合強度である。親和性は、薬物−受容体複合体の平衡解離定数(Kで示される)によって測定され;薬物によって占有される受容体の部分は、薬物の濃度およびKによって決定される。Goodman & Gilman’s “The Pharmacological Basis of Therapeutics” 10ed. (2001) pages 39-40 (McGraw-Hill, New York, New York) を参照されたい。
【0011】
μオピオイド受容体は、オピオイド鎮痛薬が、それらの鎮痛作用を生じるように結合する主な受容体である。オピオイド鎮痛薬は、モルヒネに関係した薬物である。オピオイド鎮痛薬の例には、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、コデイン、ヒドロコドンおよびオキシコドンが含まれる。μオピオイド受容体に結合する別のクラスの鎮痛薬は、メペリジン、ジフェノキシラート、ロペラミド、フェンタニール、サフェンタニル、アルフェンタニルおよびレミフェンタニル(remifentanil)などのピペリジンおよびフェニルピペリジンのクラスの鎮痛薬である。
【0012】
本発明に含まれるのは、低い乱用可能性および延長された作用持続時間双方を有する薬剤を製造する方法である。その方法は、製剤化の前に、生物学的に利用可能な鎮痛薬を、標的組織によって一層十分に吸収されないおよび/または標的組織を一層十分に活性化しないプロドラッグへ変換することを含む。本発明には、生物学的に利用可能なオピオイド鎮痛薬のエステルプロドラッグ組成物が含まれるが、これに制限されるわけではなく、ここにおいて、その薬物のアルキル基または環状アルキル基、またはフェノール性またはエノール性ヒドロキシル基は、次の構造を有するアシル基に共有結合する:
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、mおよびnの値は、独立して、0、1、2または3の値より選択され、
ZおよびXは、独立して、
【0015】
【化2】

【0016】
より選択され、そして
Wは、

【0017】
【化3】

【0018】
より選択され、ここにおいて、
、RおよびRは、独立して、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキル、またはアミノまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
1−4アルコキシ;
メチレンジオキシ;
ヒドロキシ;
カルボキシ;
スルホネート;
3−7シクロアルキル;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素または炭素原子と一緒に、C3−7シクロアルキル環;
【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
を形成し、ここにおいて、
およびRは、独立して、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキルで置換されたもの;
3−7シクロアルキル;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
【0023】
【化7】

【0024】
より選択され、
は、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキル、またはアミノまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
セルロースまたはセルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースであって、そのセルロースまたはセルロース誘導体中の1個またはそれを超えるヒドロキシル基は、プロドラッグ中でエステル結合またはウレタン結合を形成する;
ポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)誘導体、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)カルボキシメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノラウレートであって、そのポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)誘導体中の1個またはそれを超えるヒドロキシル基は、プロドラッグ中でエステル結合またはウレタン結合を形成する;
より選択され、
は、
ポリカルボン酸、例えば、カルボキシメチルセルロースまたはその誘導体、ポリアクリル酸またはその誘導体、ポリメタクリル酸またはその誘導体であって、その高分子中の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル、またはポリ(エチレングリコール)カルボキシメチル、メチルエーテルまたは類似のカルボン酸含有ポリ(エチレングリコール)誘導体であって、ポリ(エチレングリコール)誘導体の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
より選択され、
、RおよびRは、独立して、
水素;
【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
より選択され、
pおよびqの値は、独立して、0、1、2または3の値より選択され、
、R、RおよびRは、独立して、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキル、またはアミノまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素と一緒に、C3−7アルキル環を形成し、
およびRは、それらが結合している炭素と一緒に、C3−7アルキル環を形成し、
は、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキルで置換されたもの;
3−7シクロアルキル;
アリールであって、未置換のまたは、カルボキシルまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
ポリカルボン酸、例えば、カルボキシメチルセルロースまたはその誘導体、ポリアクリル酸またはその誘導体、ポリメタクリル酸またはその誘導体であって、その高分子中の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル、またはポリ(エチレングリコール)カルボキシメチル、メチルエーテルまたは類似のカルボン酸含有ポリ(エチレングリコール)誘導体であって、ポリ(エチレングリコール)誘導体の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
より選択され、
Yは、独立して、次、
【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
より選択され、ここにおいて、
uおよびvの値は、独立して、0、1、2または3の値より選択され、そして
rの値は、10〜1,000の値であり、
は、独立して、


【0031】
【化12】

【0032】
;R
より選択される)。
本発明の化合物は、キラル中心を有してよく、エピマー混合物、ジアステレオマーおよび鏡像異性体として存在してよい。このような立体異性体は全て、本発明に包含される。いずれかの変数が式I中に反復して存在する場合、その変数の定義は、その変数の他の全ての存在における定義とは無関係である。更に、変数および置換基の組合せは、それらが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。
【0033】
本出願中にありうる若干の略語は、次の通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
プロドラッグエステルのアシル部分は、プロドラッグに、(i)低バイオアベイラビリティー、および(ii)投与間隔にわたって薬物の血漿濃度に所望の振動を生じる薬物へのプロドラッグの変換速度を与えるように選択される。
【0036】
血液中にプロドラッグが入ることおよび/または中枢神経系中にプロドラッグがはいることを制限する、またはそれ以外に、プロドラッグのバイオアベイラビリティーを制限するために、pH7において電荷を有する基、および/またはアミド基のような多数の水素結合ドナーおよびアクセプターを含有する基を、1個またはそれを超えて含有する高分子アシル基(約1000を超えるM)および/または低分子量アシル基(約1000未満のM)を選択する。
【0037】
プロドラッグが、投与後に血流中に十分に吸収されない場合、プロドラッグの薬物への変換速度は、薬物の作用の持続期間および強さを実質的に制御する。プロドラッグが、血液中に直接的に注射される、または血液中に吸収されるが、標的組織に入らないまたは標的組織を活性化しない場合、そのプロドラッグ投与の作用も、プロドラッグの薬物への変換速度によって実質的に制御されるであろう。
【0038】
本発明者は、広範囲の投与頻度に適合しうるpH7における非酵素的加水分解速度を有するアルカロイドオピオイド鎮痛薬のエステルプロドラッグを製造する方法を発見した。本発明に包含される若干のプロドラッグについて、酵素が、プロドラッグの薬物への変換速度の原因となりうるということは理解される。このような酵素的に触媒される変換が、プロドラッグの薬物への全変換速度の原因となることは、消化酵素および血漿の存在下における薬物の変換の in vitro 評価から、大体推定することができる。患者への薬物およびプロドラッグの投与後の比較薬物動態学的研究は、患者におけるプロドラッグの薬物への時間依存性変換の正確な推定値を生じるはずである。望まれる場合、当業者が、プロドラッグの構造の賢明な修飾により、薬物へのプロドラッグの非酵素的変換および酵素的に触媒される変換の速度を調整することは、可能なはずである。更に、当業者は、投与間隔にわたって血漿薬物濃度に所望の振動を生じるように、異なった速度で同じ薬物を放出するプロドラッグ誘導体の組合せを製剤化できるはずである。
【0039】
ジヒドロモルフィノンに関係したアルカロイドオピオイドのエノールエステルを形成する実行可能性は、Nagase et al. および Hosztafi et al. によって証明された。しかしながら、これら研究者は、オピオイドエノールエステルの加水分解も、プロドラッグとしてのそれらの適性も研究していなかった。
【0040】
種々のオピオイドアゴニストおよびアンタゴニストのフェノール性ヒドロキシル基のエステルは、経皮、舌下および口腔内送達の効率を増加させるためのおよび苦味のあるオピオイドアゴニストおよびアンタゴニストを隠すためのプロドラッグとして研究されてきた(例えば、Hansen et al. Stinchcomb et al. and Hussain et al. を参照されたい)。
【0041】
そのエステルのアルコール部分が、良好な脱離基であるエノールエステルおよびフェニルエステルについて、エステル加水分解の速度は、親カルボン酸のカルボキシル基の酸性度を増加させることによって、および/または下に例示されるように、求核触媒反応を経る加水分解を容易にすることができるカルボキシレート基のような適当な隣接する求核触媒を含有するアシル基を利用することによって、増加する。pH7における固有の加水分解速度が、望まれるよりも速い場合、立体および電荷の作用を用いて、下に例示されるように、pH7における加水分解速度を減少させることができる。
【0042】
下に、例として、制限されることなく挙げられたのは、構造Iを有するアシル基を有する、本発明に包含されるあるオキシコドンプロドラッグ組成物である。
【0043】
【化13】

【0044】
これら化合物の双性イオン特性および/または分子量は、それらに、薬物の場合に相対して低いバイオアベイラビリティーを与える。
エノールエステルプロドラッグ1〜7は、カルボン酸誘導体であるが、ここにおいて、(pH7で)フリーのカルボキシレート基は、エノールエステルの加水分解を容易にし、そしてそのエノールエステルに、6〜8のpH範囲でほとんど変化しない加水分解速度を与える。この作用は、腸管腔内のpHの変化による化合物1〜7の加水分解速度の個体内(経時)変動または個体間変動を最小限にする。そのカルボキシレート基の性質が、エステル加水分解に作用するその加水分解速度の重要な決定因子であるということに注目することは重要である(表Iを参照されたい)。
【0045】
【表2】

【0046】
より高いpKアルコール脱離基を含むアルキルエステル(10〜12のエステルなど)の加水分解は、隣接するカルボキシル基の存在によって容易にならないということに注目することが重要である(表IIを参照されたい)。本発明者は、しかしながら、オキシコドン中の14−ヒドロキシル基のエステルが、pH7において速やかに加水分解されるということを認めた。例えば、本発明者は、オキシコドンの14−アセテートエステルの加水分解の半減期が、pH7、37℃において約20分であり、6−エノールアセテートの加水分解の半減期は、これら条件下において約4日であるということを発見した。オキシコドン14−アセテートの高加水分解速度は、オキシコドン中の隣接する第三級アミノ基による分子内求核攻撃を十分に反映して、pH7において速やかに加水分解されるアシルアンモニウムイオン中間体を形成することができる。
【0047】
【表3】

【0048】
本発明に包含されるのは、加水分解処理されたプロドラッグ錠剤またはカプセルビーズの静脈内および経鼻投与を妨げる方法であって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどの適当な量の増粘剤を含むプロドラッグを製剤化することによる方法である。薬物を放出するこのようなエステルプロドラッグ製剤の加水分解処理は、経鼻投与するのが難しいと考えられる高粘度グルー様物質を生じる。更に、この物質は、静脈内投与に適する皮下注射針を容易に通過するように、10mLを超えるまで希釈する必要がある。更に、本発明に包含されるのは、これら投与経路について、必要とされない薬物およびプロドラッグ製剤の静脈内および経鼻投与を妨げるのに十分な量のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤を加える方法である。増粘剤を含有する製剤中の薬物またはプロドラッグの静脈内投与のための溶解は、静脈内投与に適する皮下注射針を容易に通過するように10mLを超えるまで希釈する必要がある、きわめて粘性のグルー様物質を生じる。増粘剤は、更に、経鼻投与された粉末錠剤またはカプセルビーズからの薬物またはプロドラッグの吸収を減少させる。この減少は、増粘剤の浸透作用を反映することができる。
【0049】
本発明のエステルプロドラッグは、下に概説される一般的な方法にしたがって製造することができる。
エノールエステルプロドラッグの一般的な製造方法。
【0050】
アルデヒドまたはケトン含有薬物の遊離塩基の形を0.0.025〜0.5mol/Lで、無水THFまたはDCMなどの非プロトン性極性溶媒中にアルゴン下で溶解させまたは懸濁させ、アセトン/ドライアイス浴中で冷却した。薬物より1.05モル過剰のカリウムtBu−OHを加え、その反応混合物を40分間撹拌した。薬物のエノール基によってエステル化されるカルボン酸のニトロフェニルエステルを薬物より1.0〜1.2モル過剰で、THFまたはDCM中の0.025〜2.0M溶液としてシリンジによって加える。1〜2時間後、またはその反応が、エノールエステルの形成およびニトロフェノールの遊離によって判定したところ完了した時点で、TFAの添加によって反応を中和する。反応が−78℃で凝固する場合、それを室温に暖めた後、TFAを加える。若干の対称性ジカルボン酸のヘミエステルの形成を伴う場合、ニトロフェニルエステルの代わりに、環状ジカルボン酸無水物を用いることができる。
【0051】
次のカルボジイミドに媒介されるカップリング反応を用いても、エノールエステルプロドラッグを製造することができる。
無水アセトニトリル、THFまたはDCMなどの非プロトン性極性溶媒中に0.025〜1.0Mの濃度でのアルデヒドまたケトン含有薬物の遊離塩基の形を、3〜6倍モル過剰のTEAまたはDIEAなどの第三級アミン強塩基で、室温において20〜30分間処理して、エノラート形成を促進する。次に、DMAP、DCCおよびカルボン酸を、DMAP:カルボン酸のモル比が0.5〜1.0の範囲内であり、DCC:カルボン酸のモル比が0.5〜1.5の範囲内であり、そしてカルボン酸:薬物のモル比が2〜6の範囲内であるように加える。
【0052】
この方法を用いて、低収率が得られる場合、カルボン酸の添加前に、HOBtを(カルボン酸とほぼ等しいモル量で)加えて、収率を増加させることができる。エステル形成を妨害するかもしれないプロドラッグ中の基は、エステル形成後に、そのエステルの有意の分解を伴うことなく除去することができる基(Boc、tBuおよびCbzなど)でブロックすることができる。
【0053】
アルコールエステルおよびフェニルエステルのプロドラッグの一般的な製造方法。
強塩基の添加(エノール化を促進する)が省略されている上記エノールエステル製造方法は、アルコールおよびフェニルエステルプロドラッグを製造するのに用いることもできる。更に、アルコールエステルプロドラッグは、実施例2に記載のように、環状カルボン酸無水物を、アルキルまたはシクロアルキルヒドロキシル基を含有する薬物と、ピリジン中で縮合することによって製造することができる。(i)環状無水物を容易に形成するジカルボン酸(マレイン酸、フタル酸およびコハク酸など)は、不安定なフェニルおよびエノールエステルを形成すること;(ii)水酸化物イオンに触媒されるエステル加水分解が、静電気によってまたは立体的に妨げられない限り、第三級17−アミノ基を含有する14−ヒドロキシモルフィナンファミリーの薬物の14−ヒドロキシル基のエステルは不安定であること;(iii)エノールエステルの形成を、これら基を含有する薬物の、酸に反応活性なケタールおよびアセタール誘導体を形成することによって省略することができるということに注目することは重要である。当業者は、これら知見を示差的クロマトグラフィー性状と一緒に活用して、2個以上のヒドロキシル基を含有する薬物を所望のモノエステルプロドラッグへと変換することができる。
【0054】
実施例1
ペンタンジカルボン酸(pentanedioic acid)モノ−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(1−4,化合物2とも称される)の製造
工程A:オキシコドン遊離塩基(1−1)の製造
オキシコドン(1g)を、水(5mL)中に溶解させ、そして30mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と混合して、遊離塩基を生じた。得られた懸濁液を、70mLずつのEtOAcで3回抽出した。合わせたEtOAc抽出物を、30mLの飽和重炭酸ナトリウム、30mLのブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。得られた溶液から、EtOAcを減圧下で除去して、785mgのオキシコドン遊離塩基を生じた。
【0055】
工程B:ペンタンジカルボン酸モノ−tert−ブチルエステル(1−2)の製造
カリウム tert−ブトキシド(2.7g,24mmol)を、17mLの無水THF中に室温で溶解させた。5分後、無水グルタル酸(2.4g,21mmol)を加え、得られた懸濁液を室温で2時間撹拌した。次に、反応混合物を、20mLの1M KHSOでクエンチし、50mLのEtOAcで抽出し、1M KHSOでpH2〜3に調整し、そして50mLのEtOAcで2回抽出した。合わせた抽出物を、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色油状物を生じ、それを、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc:ヘキサン−1:1)によって精製して、1.65g(35%収率)の純粋な(TLC)1−2を生じた。
【0056】
工程C:ペンタンジカルボン酸 tert−ブチルエステル3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イルエステル(1−3)の製造
1.5mLの無水アセトニトリル中のオキシコドン遊離塩基(100mg,0.317mmol)の懸濁液を、DIEA(0.2mL 1.15mmol)と一緒に20分間撹拌した。次に、DMAP(63mg,0.516mmol)およびDCC(112mg,0.545mmol)を、その撹拌懸濁液に加えた。5分後、1−2(150mg,0.8mmol)を加え、その混合物を室温で16時間撹拌し、得られた橙色懸濁液を減圧下で濃縮して油状物とした。その濃縮された混合物を、6mLのアセトンと一緒に10分間撹拌し、沈殿したDCUを濾過によって除去した。濾液を濃縮して、褐色油状物を生じた。その油状物のHPLC分析は、主な反応生成物が1−3であったことを示した。その濃縮された油状物に、逆相C−18シリカゲルクロマトグラフィーを、0.07%水性TFA中の25〜40%アセトニトリルの勾配を溶離剤として用いて行った。1−3を含有する画分からの溶離剤の蒸発は、82mg(53%収率)の無色油状物を生じ、これは、>99%を超えて純粋な1−3(HPLC)であった。
【0057】
工程D:ペンタンジカルボン酸モノ−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(1−4)の製造
1−3を、0.5mLのTFAで処理し、室温で15分後、TFAを減圧下で除去して、HPLCおよびHおよび13C NMRスペクトルによって示されるように、>98%純粋な1−4を生じた。(エノールエステル1−4について予想されるように、生成物のH NMRスペクトルは、5.53ppmにおいてCでのビニルのプロトンの共鳴を示し、生成物の13C NMRスペクトルは、207ppmの領域にケトンのカルボニル炭素原子の共鳴を示さなかった。)
実施例2
フタル酸モノ−(3−メトキシ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−オン−14−イル)エステル(2−1,化合物10とも称される)の製造
10mLのピリジン中の、オキシコドン遊離塩基1−1(63mg,0.2mmol)、無水フタル酸(1.185g,8.0mmol)およびDMAP(24mg,0.2mmol)を含んで成る溶液を、油浴中において50〜55℃で24時間撹拌し、減圧下で濃縮した。その残留物に、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを、ジクロロメタン中の5%〜20%メタノール勾配で行った。2−1を含有する画分を集め、減圧下で濃縮した。HPLCは、その画分が60%純粋であったことを示した。その濃縮された画分に、別のシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを、ジクロロメタン中の0〜20%メタノールの勾配を溶離剤として用いて行って、32mg(35%収率)の96%純粋な(HPLC)2−1を含有する画分を生じ、それを、HPLCによって更に精製した。Hおよび13C NMRスペクトルは、2−1の構造を、オキシコドンの14−ヒドロキシル基のフタル酸水素エステルとして示した。(Cビニルプロトンについての5.5〜6ppmの領域におけるH共鳴の不存在、およびCカルボニル基についての207.5ppmにおける13C共鳴の存在は、2−1中のエノールエステル結合の存在を除外した。)
実施例3
2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−ペンタンジカルボン酸1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(3−2,化合物1とも称される)の製造
工程A:2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−ペンタンジカルボン酸5−tert−ブチルエステル1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(3−1)の製造
9mLの無水アセトニトリル中の、オキシコドン遊離塩基1−1(517mg,1.64mmol)、DIEA(1.5mL,8.6mmol)を含んで成る溶液を、室温で20分間撹拌し、そして6mLの無水アセトニトリル中の、DMAP(400mg,3.3mmol)、DCC(1.01g,4.1mmol)およびHOBt(440mg,3.3mmol)を含有する溶液と混合した。次に、その合わせた溶液に、Cbz−L−Glu(OtBu)−OH(1.1g,3.3mmol)を加えた。その混合物を室温で45時間撹拌し、沈殿したDCUを濾過によって除去し、そして溶液を減圧下で濃縮して、暗褐色油状物を生じた。HPLC分析は、39%のオキシコドンが3−1へと変換されたことを示した。粗製3−1を含有する褐色油状物を、20mLのアセトン中に溶解させ、氷浴中で2時間冷却し、濾過して、沈殿したDCUを除去した。濾液を濃縮乾固させ、そしてフラッシュクロマトグラフィーを、DCM中の0〜10%メタノールの勾配を用いて行った。3−1を含有する画分を一緒にし、濃縮乾固させた。その残留物を、20mLのアセトンで処理し、濾過して、沈殿したDCUを除去した。濾液を、減圧下で濃縮乾固させて、部分精製された3−1を生じた。
【0058】
工程B:2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−ペンタンジカルボン酸1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(3−2)の製造
工程Bより部分精製された3−1を、2mLのDCM中の4mLのTFAで、室温において10分間処理し、直ちに乾燥させ、そして10mLのアセトニトリル中に2回に分けて入れ、蒸発乾固させた。得られた残留物に、C−18シリカゲルクロマトグラフィーを、0.07%水性TFA中の20〜40%アセトニトリルの勾配を溶離剤として用いて行った。純粋な3−1を含有する画分を一緒にして、105mg(11%収率)の>99%純粋な(HPLC)3−2を生じた。
【0059】
実施例4
フマル酸モノ−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(4−3)の製造
工程A:フマル酸エチルエステル tert−ブチルエステル(4−1)の製造
10mLのDCM中のフマル酸モノエチルエステル(721mg,5mmol)および tert−ブタノール(0.938mL,10mmol)の溶液に、DMAP(122mg,1mmol)を、次にDCC(2.06g,10mmol)を加えた。得られた混合物を、室温で16時間撹拌し、減圧下で乾固させ、50mLのアセトンと一緒に一晩撹拌し、濾過して、DCUを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮し、残留物をEtOAc中に入れた。そのEtOAcを、30mLの0.1M KHSOで2回、30mLの飽和NaHCOで1回、そして30mLのブラインで1回洗浄した。得られたEtOAc溶液を、木炭(charcoal)で処理し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、そしてシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを、ヘキサン中の0〜15%EtOAcの勾配を溶離剤として用いて行って、本質的に純粋な(HPLCで一つのピーク)4−1(350mg,35%収率)を生じた。
【0060】
工程B:フマル酸モノ−tert−ブチルエステル(4−2)の製造
4−1(340mg,1.7mmol)を、4mLのTHFと、1M NaOHおよび1M LiClを含有する4mLの溶液とを含んで成る溶液と一緒に、室温で1時間撹拌した。得られた混合物を、1M KHSOで酸性にしてpH3〜4とし、30mLのEtOAcで2回抽出した。その抽出物を、30mLのブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた物質に、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを、DCM中の5〜10%メタノールの勾配を用いて行って、240mg(82%収率)の4−2を生じた。
【0061】
工程C:フマル酸モノ−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(4−3)の製造
0.5mLのアセトニトリル中のオキシコドン遊離塩基1−1(13mg,0.04mmol)を、TEA(0.034mL 0.24mmol)と一緒に室温で30分間撹拌した。次に、DMAP(15mg,0.12mmol)およびDCC(25mg,0.12mmol)を、その溶液に加えた後、1mLのアセトニトリル中の4−2(41mg,0.24mmol)を含んで成る溶液を加えた。得られた混合物を16時間撹拌し、減圧下で濃縮した。得られた残留物を、4mLのアセトンと一緒に30分間撹拌し、沈殿したDCUを濾過によって除去し、そしてアセトンを減圧下で除去した。その残留物を、0.8mLのTFAで(室温で5分)処理して、tert−ブチル基を除去した。次に、TFAを減圧下で除去し、得られた残留物を、C−18カラム上において0.07%水性TFA中の20%アセトニトリルで溶離するHPLCによって精製して、本質的に純粋な4−3を含有する画分を生じた。
【0062】
実施例5
ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボニルイミド二酢酸モノ−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(5−4,化合物5とも称される)の製造
工程A:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、ニトロフェニルカーボネート(5−1)
10g(5mmol)のポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテルを、200mLのトルエンと一緒に沸騰させ、100mLの溶媒を留去して、水を除去した。その溶液を室温に冷却し、10mL(61mmol)のDIEAおよび10g(50mmol)のニトロフェニルクロロホルメートを加え、その混合物を55℃で一晩撹拌した。次に、反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物をDCM中に入れ、そしてDCMからのエチルエーテルでの沈殿によって精製して、10gの5−1(92%)を生じた。
【0063】
工程B:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボニルイミド二酢酸(5−2)の製造
5−1を、0.666g(5mmol)のイミノ二酢酸、1.9mL(11.5mmol)のDIEAおよび20mLのDCMの撹拌混合物に加えた。12時間後、反応混合物の酸性アリコートの逆相HPLCは、本質的に完全なp−ニトロフェノールの放出および5−1の消費を示した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。その濃縮物にエチルエーテル(200mL)を加えて、生成物を沈殿させた。1N HCl(50mL)を加えて、固体を溶解させた。水性相をDCMで抽出後、そのDCMを減圧下で濃縮した。そのDCM濃縮物へのエチルエーテルの添加は、5−2(0.446g,45%)を生じた。
【0064】
工程C:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボニルイミノ二酢酸無水物(5−3)の製造
DCC(28mg,0.25mmol)を、3mLのDCM中の5−2(430mg,0.2mmol)に加えた。その溶液を4時間撹拌後、DCUを濾過によって除去して、5−3のDCM溶液を生じ、それを、更に精製することなく、工程Dに用いた。
【0065】
工程D:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボニルイミノ二酢酸モノ−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(5−4)の製造
K−OtBu(28mg,0.25mmol)を、2mLのDCM中の1−1(65mg,0.21mmol)の撹拌懸濁液に、アルゴン下においてアセトン/ドライアイス浴中、−78℃で加えた。40分後、工程Cより得られた(室温であった)5−3のDCM溶液を、1−1の撹拌溶液に、アルゴン下のアセトン/ドライアイス浴中において、シリンジによって加えた。1時間後、反応混合物を室温にし、TFAで中和した。得られたDCM溶液を、0.1%水性TFAで洗浄し、減圧下で濃縮した。精製された生成物5−4を、DCM濃縮物のエチルエーテルでの沈殿によって得た。
【0066】
実施例6
ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグルタミン酸1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(6−4,化合物4とも称される)の製造
工程A:ポリ(エチレングリコール)、Mr2000、メチルエーテル、N−カルボニルグルタミン酸5−tert−ブチルエステル(6−1)の製造
5−1(1g,0.46mmol)を、7.5mLの0.333M NaOH中の1.02g(5mmol)の2−アミノペンタンジカルボン酸5−tert−ブチルエステルの撹拌懸濁液に室温で加えた。その溶液は、5−1の溶解とともに黄変した。45分後、逆相HPLCは、本質的に完全な5−1の消費およびp−ニトロフェノールの遊離を示した。反応混合物を、1N HClで酸性にしてpH1とし、DCMで抽出した。そのDCMを、0.1N HClで洗浄し、減圧下で濃縮した。DCM濃縮物へのエチルエーテルの添加は、450mg(0.202mmol,44%)の所望の生成物(6−1)の沈殿を引き起こした。
【0067】
工程B:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグルタミン酸5−tert−ブチルエステル、1−p−ニトロフェニルエステル(6−2)の製造
6−1(0.45g,0.20mmol)およびp−ニトロフェノール(36mg,0.26mmol)を、1mLのDCM中に溶解させた。その溶液を、氷水浴中で冷却し;その後、DCC(53mg.0.26mmol)を加えた。氷水浴中で10分撹拌後、その溶液を氷水浴から取り出し、室温で一晩撹拌した。得られた反応混合物を濾過して、DCUを取り出した。そのDCU沈殿を、5mLのDCMで洗浄し、それらDCM溶液を一緒にし、減圧下で濃縮した。生成物(6−2)を、DCM濃縮物からエチルエーテルでの沈殿によって精製して、168mg(36%)の6−2を生じた。
【0068】
工程C:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグルタミン酸5−tert−ブチルエステル、1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(6−3)の製造
K−OtBu(10mg,0.0.086mmol)を、1mLのDCM中の1−1(23mg,0.073mmol)の撹拌懸濁液に、アルゴン下においてアセトン/ドライアイス浴中、−78℃で加えた。40分後、1mLのDCM中の(室温であった)168mg(0.071mmol)の6−2を、1−1の撹拌溶液に、アルゴン下のアセトン/ドライアイス浴中において、シリンジによって加えた。1時間後、反応混合物をTFAで中和した。得られたDCM溶液を、0.1%水性TFAで洗浄し、減圧下で濃縮した。生成物6−3を、5−4のDCM濃縮物のエチルエーテルでの沈殿によって精製した。
【0069】
工程D:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグルタミン酸1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(6−4)の製造
5−4を、純TFA中に室温で溶解させ、15分後、そのTFAを減圧下で除去して、6−4を生じ、それを、DCM中への溶解およびエチルエーテルでの沈殿によって精製した。
【0070】
実施例7
ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグリシン1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(7−3)の製造
工程A:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグリシン(7−1)の製造
5−1(1g,0.46mmol)を、5mLの0.5N NaOH中のグリシン(0.375g,5mmol)の溶液に加えた。その溶液は、1の溶解とともに黄変した。45分後、反応混合物の酸性アリコートの逆相HPLCは、本質的に完全な5−1の消費およびp−ニトロフェノールの放出を示した。反応混合物を、1N HClで酸性にしてpH1とし、5mLのDCMで3回抽出した。合わせたDCM抽出物を、水で洗浄し、減圧下で濃縮した。エチルエーテルの添加は、436mg(0.207mmol,45%)の7−1の沈殿を引き起こした。
【0071】
工程B:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグリシン1−p−ニトロフェニルエステル(7−2)の製造
7−1(436mg,0.21mmol)およびp−ニトロフェノール(37mg 0.27mmol)を、1mLのDCM中に溶解させた。その溶液を、氷水浴中で冷却し、DCC(55mg,0.27mmol)を加えた。氷水浴中で10分撹拌後、その溶液を室温で一晩撹拌した。溶液を濾過して、DCUを取り出し、そのDCU沈殿を、5mLのDCMで洗浄した。それらDCM溶液を一緒にし、減圧下で濃縮し、そして生成物をエチルエーテルで沈殿させて、130mg(28%)の7−2を生じた。
【0072】
工程C:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、N−カルボニルグリシン1−(3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル(7−3)の製造
K−OtBu(28mg,0.25mmol)を、2mLのDCM中の1−1(65mg,0.21mmol)の撹拌懸濁液に、アルゴン下においてアセトンドライアイス浴中、−78℃で加えた。40分後、0.5mLのDCM中の(室温であった)130mgの7−2を、1−1の撹拌溶液に、アルゴン下のアセトン/ドライアイス浴中において、シリンジによって加えた。1時間後、反応混合物をTFAで中和した。得られたDCM溶液を、0.1%水性TFAで洗浄し、減圧下で濃縮した。生成物7−3を、7−3のDCM濃縮物のエチルエーテルでの沈殿によって精製した。
【0073】
実施例8
ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボキシ((3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル)メチルエーテル(8−3,化合物8とも称される)の製造
工程A:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボキシメチルエーテル(8−1)の製造。
【0074】
750mLのトルエン中の50gのポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル(25mmol)を沸騰させ、200mLの溶媒を留去して、水を除去した。溶液を室温に冷却し、50mLのt−ブタノール中の4.5gのKOtBuを加えた。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、16mLのブロモ酢酸エチルを加えた。得られた溶液を加熱して0.75時間還流させ、室温で18時間撹拌し、Celite と一緒に撹拌し、濾過した。反応溶媒を減圧下で除去し、残留物を200mLのDCM中に入れ、3.3Lのエチルエーテルで沈殿させて、40gの8−1のエチルエステル誘導体を生じた。この物質を、400mLの1N水酸化ナトリウムと一緒に室温で4時間撹拌し、氷水浴中で冷却し、2N HClで酸性にしてpH1とし、200mLのDCMで2回抽出した。そのDCM抽出物を、減圧下で濃縮して約50mLとし、400mLのエチルエーテルに加えた。得られた沈殿を、エチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させて、37g(72%)の8−1を生じた。
【0075】
工程B:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボキシ(p−ニトロフェニルエステル(nitophenyl ester))メチルエーテル(8−2)の製造
p−ニトロフェノール(0.42g,3mmol)を、20mLのDCM中の8−1(5g,2.5mmol)の溶液中に溶解させ、氷浴中で冷却した。次に、DCC(0.62g,3)を撹拌しながら加えた。10分後、溶液を氷水浴から取り出し、室温で一晩撹拌した。反応混合物を濾過して、DCUを除去し、濾液を400mLのエチルエーテルに加えた。得られた沈殿を集め、エチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させて、3.4g(約62%)の8−1を生じた。
【0076】
工程C:ポリ(エチレングリコール)、Mr2,000、メチルエーテル、カルボキシ((3−メトキシ−14−ヒドロキシ−6,7−ジデヒドロ−4,5α−エポキシ−17−メチルモルフィナン−6−イル)エステル)メチルエーテル8−3の製造。
【0077】
K−OtBu(59mg,0.52mmol)を、6mLのDCM中の1−1(141mg,0.45mmol)の撹拌懸濁液に、アルゴン下においてアセトン/ドライアイス浴中、−78℃で加えた。40分後、5mLのDCM中の(室温であった)1g(0.5mmol)の8−1を、1−1の撹拌溶液に、アルゴン下のアセトン/ドライアイス浴中中において、シリンジによって加えた。ドライアイス浴を除去し、撹拌反応混合物を、1時間にわたって室温にさせた。次に、反応混合物を純TFAで中和し、0.1%水性TFAで洗浄し、減圧下で濃縮した。生成物8−3を、8−3のDCM濃縮物のエチルエーテルでの沈殿によって精製した。
【0078】
実施例9
鎮痛薬プロドラッグ対鎮痛薬の結合親和性
受容体相互作用:
オキシコドンのプロドラッグとμオピオイド受容体との相互作用を評価したが、ここにおいて、受容体親和性は、リコンビナントμ(ラット)オピオイド受容体を発現するC6ラット神経膠腫細胞からの膜に結合する放射性標識されたリガンドの阻害から決定した。オピオイドアゴニスト活性は、[35S]−GTPの結合を刺激する試験製品の能力から評価した。表にあるデータは、オキシコドンのプロドラッグである化合物1が、オキシコドンの場合よりも、μ受容体への実質的に低い親和性を有するということを示している。μ受容体への化合物1の親和性は、検定中にプロドラッグのオキシコドンへの部分変換が起こったかもしれないので、測定されたKによって示されるよりも十分に低いかもしれないということに注目することが重要である。
【0079】
【表4】

【0080】
結論:これは、オキシコドンのプロドラッグである化合物1が、鎮痛薬オキシコドンよりも、μオピオイド受容体への低い結合親和性を有するということを示している。
実施例10
プロドラッグの薬物への変換速度への膵臓酵素およびペプシンの作用
次の表に挙げる、薬物へのプロドラッグの加水分解の半減期は、膵臓酵素が、化合物4および化合物5からのオキシコドンの遊離に顕著に作用することはないが、化合物8からのオキシコドンの放出は、膵臓酵素によって顕著に増大するということを示している。
【0081】
【表5】

【0082】
結論:これらデータは、膵臓酵素の作用に耐性であるかまたは感受性であるプロドラッグを識別することが可能であるということを示している。消化管内で異なった半減期を有する1種類または2種類またはそれを超えるプロドラッグを用いることにより、当業者は、投与間隔にわたって血中オキシコドン濃度に所望の振動を得ることが可能なはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎮痛薬のプロドラッグであって、μオピオイド受容体に、鎮痛薬よりも低い結合親和性を有するプロドラッグ。
【請求項2】
μオピオイド受容体に結合する鎮痛薬の乱用可能性を低下させるおよび/または作用持続時間を延長する方法であって、該鎮痛薬を、製剤化する前に、プロドラッグへと変換することを含み、ここにおいて、該プロドラッグが、μオピオイド受容体に、該薬物よりも低い結合親和性を有する方法。
【請求項3】
オピオイド鎮痛薬を、製剤化する前に、エステルプロドラッグへ変換することにより、該鎮痛薬の乱用可能性を低下させるおよび/またはその作用持続時間を延長する方法であって、該プロドラッグが、哺乳動物への経口投与、または皮下投与、または筋肉内投与、または経皮投与後の薬物の場合よりも、血液中に十分に吸収されないおよび/または標的組織に十分にアクセスできず、哺乳動物における薬物の作用持続時間が、プロドラッグの薬物への変換速度によって実質的に決定される方法。
【請求項4】
オピオイド鎮痛薬を、製剤化する前に、エステルプロドラッグへ変換することにより、該鎮痛薬の乱用可能性を低下させるおよび/またはその作用持続時間を延長する方法であって、該プロドラッグが、哺乳動物への経口投与後の薬物の場合よりも、血液中に十分に吸収されないおよび/または標的組織に十分にアクセスできず、哺乳動物における薬物の作用持続時間が、プロドラッグの薬物への変換速度によって実質的に決定される方法。
【請求項5】
オピオイド鎮痛薬を、製剤化する前に、エステルプロドラッグへ変換することにより、該鎮痛薬の乱用可能性を低下させるおよび/またはその作用持続時間を延長する方法であって、該プロドラッグが、哺乳動物への非経口投与後の薬物の場合よりも、標的組織に十分にアクセスできず、哺乳動物における薬物の作用持続時間が、プロドラッグの薬物への変換速度によって実質的に決定される方法。
【請求項6】
オピオイド鎮痛薬を、製剤化する前に、エステルプロドラッグへ変換することにより、該鎮痛薬の乱用可能性を低下させるおよび/またはその作用持続時間を延長する方法であって、該プロドラッグの経口用量、または皮下用量、または静脈内用量、または筋肉内用量、または局所用量の30%未満が、中枢神経系に入り、哺乳動物における薬物の作用持続時間が、薬物へのプロドラッグの変換速度によって実質的に決定される方法。
【請求項7】
消化管から十分に吸収されず、プロドラッグの経口用量の30%未満が血液中に現れるにすぎない、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項8】
消化管内で反応して、非酵素的におよび/または酵素的に触媒される反応を経て、消化管からの吸収後にCNSに入る鎮痛薬を形成する、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項9】
消化管内で反応して、主に非酵素的に触媒される反応を経て、消化管からの吸収後にCNSに入る鎮痛薬を形成する、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項10】
投与後のプロドラッグの薬物への変換が、主に消化管内において、持続した痛覚脱失を生じるように、3〜48時間の半減期で起こる、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項11】
投与後のプロドラッグの薬物への変換が、主に消化管内において、持続した痛覚脱失を生じるように、3〜72時間の半減期で起こる、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項12】
投与後のプロドラッグの薬物への変換が、持続した痛覚脱失を生じるように、3〜720時間の半減期で起こる、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項13】
請求項1に記載のプロドラッグの錠剤またはカプセル製剤であって、プロドラッグ錠剤またはカプセル剤の加水分解過程によって生じる薬物の静脈内投与または経鼻投与を妨げるのに十分な量のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロースまたはそれらの混合物などの増粘剤を含有する錠剤またはカプセル製剤。
【請求項14】
薬物またはプロドラッグの乱用された静脈内投与を妨げる方法であって、該薬物またはプロドラッグの単位用量が、静脈内投与に適する10mlの水性ビヒクルで抽出される場合に、約1,000センチポアズを超える粘度を生じるように、十分な量のメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースまたはそれらの混合物などの増粘剤を、薬物またはプロドラッグの製剤に加える方法。
【請求項15】
親薬物が、アルキルまたはシクロアルキルアルコールおよび/またはフェノールおよび/またはエノールから誘導される1個またはそれを超えるヒドロキシル基を、ケトン基またはアルデヒド基と平衡状態で含有する、請求項3に記載のプロドラッグ。
【請求項16】
薬物への1個またはそれを超えるカルボン酸エステル結合を含有する請求項3に記載のプロドラッグであって、ここにおいて、該エステル結合のアシル部分が、次の構造
【化1】

(式中、mおよびnの値は、独立して、0、1、2または3の値より選択され、
ZおよびXは、独立して、
【化2】

より選択され、そして
Wは、

【化3】

より選択され、ここにおいて、
、RおよびRは、独立して、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキル、またはアミノまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
1−4アルコキシ;
メチレンジオキシ;
ヒドロキシ;
カルボキシ;
スルホネート;
3−7シクロアルキル;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素または炭素原子と一緒に、C3−7シクロアルキル環;
【化4】

【化5】

【化6】

を形成し;ここにおいて、
およびRは、独立して、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキルで置換されたもの;
3−7シクロアルキル;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
【化7】

より選択され、
は、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキル、またはアミノまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
セルロースまたはセルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースであって、該セルロースまたはセルロース誘導体中の1個またはそれを超えるヒドロキシル基は、プロドラッグ中でエステル結合またはウレタン結合を形成する;
ポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)誘導体、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)カルボキシメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノラウレートであって、該ポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)誘導体中の1個またはそれを超えるヒドロキシル基は、プロドラッグ中でエステル結合またはウレタン結合を形成する;より選択され、
は、
ポリカルボン酸、例えば、カルボキシメチルセルロースまたはその誘導体、ポリアクリル酸またはその誘導体、ポリメタクリル酸またはその誘導体であって、その高分子中の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル、またはポリ(エチレングリコール)カルボキシメチル、メチルエーテルまたは類似のカルボン酸含有ポリ(エチレングリコール)誘導体であって、ポリ(エチレングリコール)誘導体の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
より選択され、
、RおよびRは、独立して、
水素;
【化8】

【化9】

より選択され、
pおよびqの値は、独立して、0、1、2または3の値より選択され、
、R、RおよびRは、独立して、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキル、またはアミノまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
アリールであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素と一緒に、C3−7アルキル環を形成し、
およびRは、それらが結合している炭素と一緒に、C3−7アルキル環を形成し、
は、
水素;
1−4アルキルであって、未置換のまたは、CHまたはC3−7シクロアルキルで置換されたもの;
3−7シクロアルキル;
アリールであって、未置換のまたは、カルボキシルまたはグアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたもの;
ベンジルであって、未置換のまたは、グアニジノまたはアミジノまたはカルボキシまたはアセトアミドまたはカルバミルまたはスルホネート、ホスフェートまたはホスホネートで置換されたベンゼン環を有するもの;
ポリカルボン酸、例えば、カルボキシメチルセルロースまたはその誘導体、ポリアクリル酸またはその誘導体、ポリメタクリル酸またはその誘導体であって、その高分子中の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル、またはポリ(エチレングリコール)カルボキシメチル、メチルエーテルまたは類似のカルボン酸含有ポリ(エチレングリコール)誘導体であって、ポリ(エチレングリコール)誘導体の1個またはそれを超えるカルボキシル基は、プロドラッグ中でアミド結合を形成する;
より選択され、
Yは、独立して、次、
【化10】

【化11】

より選択され、ここにおいて、
uおよびvの値は、独立して、0、1、2または3の値より選択され、そして
rの値は、10〜1,000の値であり、
は、独立して、


【化12】

;R
より選択される)
を有し、この請求項に記載の化合物は、キラル中心を有してよく、エピマー混合物、ジアステレオマーおよび鏡像異性体として存在してよく;このような立体異性体は全て、この請求項中に包含され;いずれかの変数が式中に反復して存在する場合、その変数の定義は、その変数の他の全ての存在における定義とは無関係であり;更に、変数および置換基の組合せは、それらが安定な化合物を生じる場合にのみ許容されるプロドラッグ。
【請求項17】
親薬物が、オキシコドン、またはヒドロコドンまたはオキシモルホンまたはブトルファノールまたはモルヒネまたはナルブフィンまたはナロルフィンまたはペンタゾシンまたはその薬学的に許容しうる塩である、請求項16に記載のプロドラッグ。
【請求項18】
次の構造
【化13】

より選択される、請求項16に記載のプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項19】
構造
【化14】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項20】
構造
【化15】

を有するオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項21】
構造
【化16】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項22】
構造
【化17】

を有するオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項23】
構造
【化18】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項24】
構造
【化19】

を有するオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項25】
構造
【化20】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項26】
構造
【化21】

を有するオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項27】
次の構造
【化22】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項28】
次の構造
【化23】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項29】
次の構造
【化24】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項30】
次の構造
【化25】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項31】
次の構造
【化26】

を有する、請求項16に記載のオキシコドンプロドラッグまたはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項32】
次の構造
【化27】

を有する、請求項16に記載の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項33】
次の構造
【化28】

を有する、請求項16に記載の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項34】
次の構造
【化29】

を有する、請求項15に記載の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項35】
1個またはそれを超えるカルボン酸エステル結合を含有する請求項3に記載の化合物であって、薬物への該エステル結合のアシル部分が、ポリアクリル酸またはそのコポリマー、またはポリメタクリル酸またはそのコポリマー、またはポリ(エチレングリコール)カルボキシメチルエーテルまたはそのコポリマー、またはカルボキシメチルセルロースなどの高分子カルボン酸から誘導される化合物。
【請求項36】
オピオイドアゴニスト薬、混合アゴニスト/アンタゴニスト薬またはアンタゴニスト薬のエノールエステルプロドラッグまたはフェニルエステルプロドラッグであって、哺乳動物における該薬物の作用持続時間が、哺乳動物に投与後のプロドラッグの薬物への非酵素的変換速度によって実質的に決定されるプロドラッグ。
【請求項37】
2種類またはそれを超える本発明の化合物を含んで成る製剤であって、該製剤を構成している化合物のいずれか一つの化合物よりも低い乱用可能性、および/または望ましい作用持続時間、および/または耐性および/または腸機能障害などの少ない副作用を有する製剤。

【公表番号】特表2006−520392(P2006−520392A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507215(P2006−507215)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/007910
【国際公開番号】WO2004/082620
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505345082)コントロールド・ケミカルズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】