説明

薬物を選択する方法

1パネルの遺伝子について患者の遺伝子型を決定するステップと、その遺伝子型に基づいて薬物を選択するステップとを含む、患者に対して薬物を選択する方法を記載する。薬物代謝酵素をコードする遺伝子、および神経伝達に関与する生成物をコードする遺伝子の対立遺伝子を検出するための核酸分子を含む製品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に対して薬物(例えば、向精神薬)を選択する方法に関し、より特には、薬物代謝酵素をコードする遺伝子、および、例えば、神経伝達に関与する生成物をコードする遺伝子の遺伝子型に基づいて患者の薬物を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある民族においては、青年人口の10%もが多数の抗うつ薬の代謝不全に関連する2D6ハプロタイプを有している。Wong等 (2001年) Ann. Acad. Med. Singapore 29:401〜406を参照されたい。これらの個体の臨床ゲノム検査は、彼らの治療および予後に密接な関係がある。極端な場合には、低代謝群の子供であって、把握されていない子供は、悲劇的な結果を招いた。これらの否定的な症例報告の中には、低2D6代謝群であることが認識されていなかった9歳の少年の死亡情報が含まれている。この子供のフルオキセチンによる治療は、複数の症状を示したにもかかわらず継続された。というのは、これらの症状がフルオキセチンの極めて高い血清レベルに関係していることに気づかなかったためである。Sallee等 (2000年) J. Child Adol. Psychiatry 10(1):27〜34。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低用量の薬物投与中の予想外の副作用を明らかにする慎重な臨床監視は、遺伝子型決定の代替となる臨床戦略であるが、薬物代謝酵素をコードする複数の遺伝子(例えば、チトクロムP450遺伝子)および他の標的遺伝子(例えば、向精神薬の神経伝達に関与する遺伝子)のゲノム検査によって、罹患患者における潜在的に危険な副作用を回避することができる安全な方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、精神医学的診断および薬物に対する薬理学的応答に関連する多型を有する1セットの遺伝子を特定することに基づく。その結果、本発明の方法によって、患者の遺伝子型を決定することができ、その遺伝子型に基づいて、その患者に適切な薬物を選択することができる。本発明の方法によって、複数の遺伝子型の評価結果を統合することができ、薬物を選択し投与するのに重要な改善された臨床情報が提供される。したがって、本発明の方法は、患者において最適な応答をもたらす薬物を同定する合理的方法を提供する。
【0005】
一態様においては、本発明は、患者に対して向精神薬(例えば、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安鎮静薬または気分安定薬)を選択する方法を特徴とする。この方法は、少なくとも3種類のチトクロムP450遺伝子およびセロトニントランスポーター遺伝子を含む1パネルの遺伝子について患者の遺伝子型を提供するステップと、その遺伝子型に基づいて向精神薬を選択するステップとを含む。この少なくとも3種類のチトクロムP450遺伝子は、CYP2D6、1A2および2C19をコードすることができ、患者の遺伝子型を提供するステップは、患者がCYP1A2*1Aまたは1A2*3対立遺伝子、CYP2C19*1A、2C19*1Bまたは2C19*2A対立遺伝子、およびCYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12または2D6*17対立遺伝子を持つかどうかを判定することを含むことができる。
【0006】
このパネルは、4種類のチトクロムP450遺伝子(例えば、CYP2D6、2C19、3A4および1A2をコードする遺伝子)を含むことができる。患者の遺伝子型を提供するステップは、前記患者が、CYP2D6*2、2D6*3、2D6*4、2D6*10または2D6*17対立遺伝子、CYP2C19*2A、2C19*2B、2C19*3、2C19*4、2C19*5A、2C19*5B、2C19*6、2C19*7または2C19*8対立遺伝子、CYP3A4*1B、3A4*2、3A4*5、3A4*6、3A4*12、3A4*13、3A4*15A、3A4*17、3A4*18A対立遺伝子およびCYP1A2*1F対立遺伝子を含むかどうかを判定することを含むことができる。
【0007】
このパネルは、少なくとも5種類のチトクロムP450遺伝子(例えば、CYP1A1、1A2、2D6、2C19および3A4)を含むことができる。患者の遺伝子型を提供するステップは、患者がCYP1A1*1A、1A1*2、1A1*3または1A1*4対立遺伝子、CYP1A2*1Aまたは1A2*3対立遺伝子、CYP2C19*1A、2C19*1Bまたは2C19*2A対立遺伝子、CYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12、2D6*17または2D6*35対立遺伝子、およびCYP3A4*1Aまたは3A4*1B対立遺伝子を有するかどうかを判定することを含むことができる。
【0008】
このパネルは、さらに、複数のドーパミン受容体遺伝子(例えば、ドーパミン受容体D1、D2、D3、D4、D5およびD6をコードするドーパミン受容体遺伝子)、複数のセロトニン受容体遺伝子(例えば、セロトニン受容体1A、1B、1D、2Aまたは2Cをコードするセロトニン受容体遺伝子)、トリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子および/またはカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むことができる。セロトニン受容体遺伝子2Aは特に有用である。
【0009】
一部の実施形態においては、このパネルは、少なくとも10種類のチトクロムP450遺伝子(例えば、CYP1A1、1A2、1B1、2A6、2B6、2C8、2C9、2C18、2C19、2D6、2E1、3A4および3A5をコードする遺伝子)を含む。患者の遺伝子型を決定するステップは、患者がCYP1A1*1A、1A1*2、1A1*3または1A1*4対立遺伝子;1A2*1Aまたは1A2*3対立遺伝子;CYP1B1*1、1B1*2、1B1*3、1B1*4、1B1*11、1B1*14、1B1*18、1B1*19、1B1*20または1B1*25対立遺伝子;CYP2A6*1A、2A6*1B、2A6*2または2A6*5対立遺伝子;CYP2B6*1、2B6*2、2B6*3、2B6*4、2B6*5、2B6*6または2B6*7対立遺伝子;CYP2C8*1A、2C8*1B、2C8*1C、2C8*2、2C8*3または2C8*4対立遺伝子;CYP2C9*1、2C9*2、2C9*3または2C9*5対立遺伝子;CYP2C18*m1または2C18*m2対立遺伝子;CYP2C19*1A、2C19*1Bまたは2C19*2A対立遺伝子;CYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12、2D6*17または2D6*35対立遺伝子;CYP2E1*1A、2E1*1C、2E1*1D、2E1*2、2E1*4、2E1*5または2E1*7対立遺伝子;CYP3A4*1Aまたは3A4*1B対立遺伝子;およびCYP3A5*1A、3A5*3、3A5*5または3A5*6対立遺伝子を有するかどうかを判定することを含むことができる。
【0010】
一部の実施形態においては、この遺伝子パネルは、CYP2D6、2C19、3A4および1A2遺伝子、セロトニン受容体遺伝子およびセロトニン受容体2A遺伝子を含む。向精神薬を選択するステップは、チトクロムP450遺伝子の遺伝子型を、各チトクロムP450遺伝子によってコードされる各チトクロムP450酵素の向精神薬代謝能力と相関させること、ならびにセロトニントランスポーター遺伝子およびセロトニン受容体遺伝子の遺伝子型を患者の向精神薬応答能と相関させることを含むことができる。
【0011】
別の態様においては、本発明は、基材を含む製品を特徴とする。この基材は、複数の別個の領域を含み、各領域は、異なる核酸分子集団を含み、これらの異なる核酸分子集団は、CYP1A1*1A、1A1*2、1A1*3および1A1*4対立遺伝子;CYP1A2*1Aおよび1A2*3対立遺伝子;CYP2C19*1A、2C19*1Bおよび2C19*2A対立遺伝子;CYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12、2D6*17および2D6*35対立遺伝子;CYP3A4*1Aおよび3A4*1B対立遺伝子;DAT1 40 bp VNTRおよび10回反復対立遺伝子;ならびに5HTTプロモーター反復対立遺伝子およびエキソン2可変反復対立遺伝子(exon 2 variable repeat allele)を検出するための核酸分子を独立に含む。この核酸分子集団は、さらに、CYP1B1*1、1B1*2、1B1*3、1B1*4、1B1*11、1B1*14、1B1*18、1B1*19、1B1*20および1B1*25対立遺伝子、CYP2A6*1A、2A6*1B、2A6*2および2A6*5対立遺伝子、CYP2B6*1、2B6*2、2B6*3、2B6*4、2B6*5、2B6*6および2B6*7対立遺伝子、CYP2C8*1A、2C8*1B、2C8*1C、2C8*2、2C8*3および2C8*4対立遺伝子、CYP2C9*1、2C9*2、2C9*3および2C9*5対立遺伝子、CYP2C18*m1および2C18*m2対立遺伝子、CYP2C19*1A、2C19*1Bおよび2C19*2A対立遺伝子、CYP2E1*1A、2E1*1C、2E1*1D、2E1*2、2E1*4、2E1*5および2E1*7対立遺伝子、ならびにCYP3A5*1A、3A5*3、3A5*5および3A5*6対立遺伝子を検出するための核酸分子を含むことができる。この集団は、さらに、TPH A218C、A779C、G5806T、A6526Gおよび(CT)m(CA)n(CT)p対立遺伝子を検出するための核酸分子を含むことができる。
【0012】
本発明は、患者に対して薬物を選択するのに使用されるデータベースを構築する方法も特徴とする。この方法は、コンピュータシステムにおいて、1パネルの遺伝子に対する複数の遺伝子型を受け取るステップ;遺伝子型に基づいて指定された複数の薬物プロフィールを受け取るステップ;および各薬物プロフィールが遺伝子型の1個と関連するように複数の遺伝子型と薬物プロフィールを保存するステップを含む。少なくとも1つの薬物プロフィールによって、薬物を特定し、薬物プロフィールに含まれる複数のカテゴリーの1つにその薬物を分類することができる。このようなカテゴリーは、安全に使用できる薬物、注意して使用すべき薬物、使用したときに厳重に監視すべき薬物、回避すべき薬物、およびそれらの組み合せからなる群から選択することができる。この薬物プロフィールによって、患者の遺伝子型に対して可能な薬物の範囲(universe)を特定することができる。
【0013】
別の態様においては、本発明は、実行されたときにプロセッサにオペレーションを実施させる実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品を特徴とする。このオペレーションは、1パネルの遺伝子に対する複数の遺伝子型を受け取り;遺伝子型に基づいて指定される複数の薬物プロフィールを受け取り;各薬物プロフィールが、遺伝子型の1種類に関連するように遺伝子型と薬物プロフィールを保存することを含むことができる。
【0014】
本発明は、患者に対する薬物を選択する方法も特徴とする。この方法は、コンピュータシステムにおいて、1パネルの遺伝子に対する患者の遺伝子型を受け取るステップと、遺伝子型に関連する複数の薬物プロフィールを含むデータベースにおいて、患者の遺伝子型に関連する薬物プロフィールを特定するステップと、患者の遺伝子型を受け取るステップに応答して、特定された薬物プロフィールを出力するステップとを含む。使用者は、コンピュータシステムに患者の遺伝子型を入力することができ、または患者の遺伝子型を決定するのに使用される装置から患者の遺伝子型を直接受け取ることができる。
【0015】
薬物プロフィールは、例えば、特異的なコファクターに基づく、いくつかの薬物の順位を含むことができる。この方法は、特定された薬物プロフィールを出力する前に、(例えば、患者が有する遺伝子型の多型を受け取ることに基づいて、または患者に関係する臨床反応を受け取ることに基づいて)順位を調節するステップを含むことができる。この臨床反応は、患者の家族によるものでもよい。
【0016】
さらに別の態様においては、本発明は、1パネルの遺伝子に対する患者の遺伝子型を受け取り;遺伝子型に関連する複数の薬物プロフィールを含むデータベースにおいて、患者の遺伝子型に関連する薬物プロフィールを特定し;患者の遺伝子型を受け取るステップに応答して、特定された薬物プロフィールを出力することを含むオペレーションを、実行されたときにプロセッサに実施させる実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品を特徴とする。
【0017】
特に断らない限り、本明細書において使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および材料と類似または等価な方法および材料を使用して本発明を実施することができるが、適切な方法および材料を以下に記述する。本明細書に述べるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献を参照によりそれら全体を援用する。抵触の場合には、定義を含めて本明細書が基準になる。また、材料、方法および実施例は、説明のためだけにあり、限定的なものではない。
【0018】
本発明の他の特徴、目的および利点は、明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明白であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
一般に、本発明は、薬物選択に有用である遺伝子の遺伝子型に基づいて、患者に対する薬物(例えば、向精神薬)を選択する方法を特徴とする。遺伝子型を決定すべき遺伝子は、一般に、薬物代謝に影響を及ぼす生成物、またはより良好な治療反応に関連する生成物をコードしている。問題となる薬物代謝酵素遺伝子(例えば、チトクロムP450遺伝子)の遺伝子型に基づいて、最初に薬物を除外するアルゴリズムを使用することができる。このようなアルゴリズムの第2の段階では、適切な薬物候補(例えば、抗うつ薬)のリストから始まり、標的遺伝子の遺伝子型に基づいて最適な治療をさらに分類することができる。例えば、抗うつ薬の場合には、抗うつ薬候補のさらなる分類は、セロトニントランスポーター(5HTTR)およびセロトニン受容体2A(HTR2A)の遺伝子型に基づくことができる。
【0020】
向精神薬としては、抗精神病薬または神経弛緩薬、抗不安鎮静薬、抗うつ薬または精神高揚薬(mood elevating agent)、およびリチウム塩もしくはバルプロ酸などの気分安定薬などが挙げられる。抗精神病薬の非限定的な例としては、三環系フェノチアジン(例えば、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、チオリダジンおよびメソリダジン、フルフェナジンおよびトリフルオペラジン)、チオキサンテン(例えば、クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、ピフルチキソール(piflutixol)およびチオチキセン)およびジベンゼピン(例えば、ロクサピン、クロザピン、クロチアピン、メチアピン(metiapine)、ゾタピン(zotapine)、ICI-204,636、フルペルラピン(fluperlapine)およびオランザピン);ハロペリドールなどのブチロフェノン、フルスピリレン、ペンフルリドール、およびピモジドなどのジフェニルブチルピペリジン、デカン酸ハロペリドールおよびインドロン(indolone)が挙げられる。抗不安鎮静薬の非限定的な例としては、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、オキサゼパム、クロラゼペート、ロラゼパム、プラゼパム、アルプラゾラム、およびハラゼパムなどのベンゾジアゼピンが挙げられる。抗うつ薬または精神高揚薬としては、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、例えば、第三級アミン三環系(例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピンおよびイミプラミン)および第二級アミン三環系(例えば、アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、プロトリプチリンおよびノルトリプチリン);フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、およびベンラファキシンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI);ブプロピオン、ネファゾドン、およびトラゾドンなどの非定型抗うつ薬;ミルタザピンなどのノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬;ならびにフェネルジン、トラニルシプロミン、およびセレギリンなどのモノアミン酸化酵素阻害薬などが挙げられる。
【0021】
遺伝子パネル
本方法は、患者から生物学的サンプルを得るステップ、および1パネルの遺伝子について患者の遺伝子型を得るステップを含む。一般に、遺伝子型を決定する遺伝子のパネルは、少なくとも3種類のチトクロムP450遺伝子を含む。チトクロムP450遺伝子は、表1に記載するP450遺伝子から選択することができる。例えば、少なくとも3種類のチトクロムP450遺伝子は、CYP2D6、1A2および2C19をコードすることができる。抗うつ薬を選択する実施形態においては、4種類のチトクロムP450遺伝子(例えば、CYP2D6、2C19、3A4および1A2をコードする遺伝子)の遺伝子型を得ることができる。別の実施形態においては、少なくとも5種類のチトクロムP450遺伝子(例えば、CYP1A1、1A2、2D6、2C19および3A4をコードする遺伝子)の遺伝子型を得ることができる。さらに別の実施形態においては、少なくとも10種類のチトクロムP450遺伝子(例えば、CYP1A1、1A2、1B1、2A6、2B6、2C8、2C9、2C18、2C19、2D6、2E1、3A4および3A5をコードする遺伝子)の遺伝子型を得ることができる。これらのチトクロムP450遺伝子の各々に対する対立遺伝子を表1に示す。
【0022】
CYP2D6の基質は、一般に、酸化される炭素原子から離れた陽イオン性結合部位を有する弱塩基である。特に、CYP2D6の基質としては、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ハロペリドール、デシプラミンなどが挙げられる。触媒活性を欠く酵素、または触媒活性が低下した酵素の合成をもたらす改変CYP2D6遺伝子配列を有する個体もある。これらの個体は、SSRIおよび三環系抗うつ薬(TCA)の代謝が不十分である。機能的CYP2D6遺伝子の重複も見られ、SSRIおよび他の薬物が超高速で代謝される。多型、欠失または重複が不活化されていない個体は、広範な薬物代謝群の表現型を有し、CYP2D6*1と呼ばれる。CYP2D6*2対立遺伝子は、アミノ酸置換の結果、酵素活性が低下している。CYP2D6*3および*4対立遺伝子は、低代謝群表現型をもたらす全欠損の70%近くを占める。CYP2D6*3(2549A>del)の原因となる多型は、mRNAにおけるフレームシフトをもたらす。CYP2D6*4対立遺伝子(1846G>A)と関係がある多型は、mRNAスプライシングを乱す。これらの変化によって、触媒活性を欠くCYP2D6の末端切断型が産生される。他の低代謝群は、CYP2D6*5、*10および*17である。CYP2D6*5は、完全な遺伝子欠失によるものである。CYP2D6*10および*17における多型によって、CYP2D6酵素において酵素活性が低下したアミノ酸置換体が産生される。これらの多型のすべてが常染色体劣性である。その結果、これらの多型に対してホモ接合的な個体または複合ヘテロ接合的な個体のみが低代謝群である。1個の正常遺伝子と1個の多型遺伝子を有するヘテロ接合的な個体は、高(正常)代謝群と低代謝群の中間の代謝を有するだろう。
【0023】
CYP1A2は、クロザピンおよびイミプラミンを含めて、多数の芳香族および複素環式アミンを代謝する。CYP1A2 *1F対立遺伝子は、より高誘導性または高活性生成物を生成することができる。Sachse等 (1999年) Br. J. Clin. Pharmacol. 47: 445〜449を参照されたい。CYP2C19も、イミプラミン、シタロプラムおよびジアゼパムを含めて多数の基質を代謝する。CYP2C19 *2A、*2B、*3、*4、*5A、*5B、*6、*7および*8対立遺伝子は、活性がほとんどまたはまったくない生成物をコードする。Ibeanu等 (1999年) J. Pharmacol. Exp. Ther. 290: 635〜640を参照されたい。
【0024】
CYP1A1は、反応性代謝物の肝臓外産生によって毒性反応またはアレルギー反応と関連付けることができる。CYP3A4は、アルプラゾラムを含めて様々な基質を代謝する。CYP1B1は、反応性代謝物の肝臓外産生によって毒性反応またはアレルギー反応と関連付けることができ、ステロイドホルモン(例えば、17β-エストラジオール)も代謝する。CYP2A6およびCYP2B6の基質としては、それぞれバルプロ酸およびブプロピオンなどが挙げられる。CYP2C9の基質としては、タイレノール、アンタビュース(ジスルフィラム)などが挙げられる。CYP2E1の基質としては、フェニトイン、カルバマゼピンなどが挙げられる。チトクロムP450酵素の1種類または複数における活性の低下は、他のチトクロムP450酵素の1種類または複数に影響を及ぼし得る。
【表1】



【0025】
一般に、薬物を選択するために、薬物代謝酵素をコードする遺伝子の遺伝子型に加えて、他の標的遺伝子の遺伝子型も得られる。標的遺伝子は、特定のクラスの薬物に応答する患者の能力に関係する生成物をコードすることができる。例えば、抗うつ薬を選択するために、標的遺伝子をセロトニントランスポーター遺伝子およびセロトニン受容体2A遺伝子とすることができる。抗精神病薬を選択するために、標的遺伝子をドーパミントランスポーター遺伝子とすることができる。
【0026】
表2に、薬物代謝酵素をコードする遺伝子に加えて、遺伝子型を決定することができる標的遺伝子の対立遺伝子を示す。例えば、遺伝子型を決定する遺伝子パネルは、1種類または複数のドーパミン受容体遺伝子(例えば、ドーパミン受容体D1、D2、D3、D4、D5および/またはD6をコードする遺伝子)、ドーパミントランスポーター遺伝子、1種類または複数のセロトニン受容体遺伝子(例えば、セロトニン受容体1A、1B、1D、2Aまたは2Cをコードする遺伝子)、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子またはトリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子を含むことができる。一実施形態においては、COMT遺伝子およびトリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子は、チトクロムP450遺伝子を有するパネル上に含まれる。別の実施形態においては、1種類または複数のドーパミン受容体遺伝子、1種類または複数のセロトニン受容体遺伝子、COMT遺伝子およびトリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子がチトクロムP450遺伝子とともに評価される。
【表2】


【0027】
例えば、患者において、抗うつ薬を選択するために、4種類のチトクロムP450遺伝子(例えば、2D6、2C19、3A4および1A2をコードする遺伝子)、セロトニントランスポーター(5HTTR)遺伝子およびセロトニン受容体2A(HTR2A)遺伝子の遺伝子型を評価することができる。特に、患者がCYP2D6 *2、*3、*4、*10、*17または*5 del対立遺伝子、CYP2C19 *2(A,B)、*3、*4、*5(A,B)、*6、*7、*8対立遺伝子、CYP3A4 *1B、*2、*5、*6、*12、*13、*15A、*17または*18A対立遺伝子、CYP1A2 *1F対立遺伝子、短いまたは長い形態のセロトニントランスポーター遺伝子およびHTR2A T102C多型を有するかどうかを判定することができる。これらの遺伝子の各々は、少なくとも1種類の抗うつ薬の代謝に影響を及ぼし、またはより良い治療反応と関連がある。本明細書に記載するとおり、これらの6種類の遺伝子の遺伝子型に関係する6つの規則からなるセットに基づいてアルゴリズムが作成された。このアルゴリズムに基づいて、患者の遺伝子型に基づく薬物プロフィールが所与の患者に提供され、それによって、臨床医は、患者が特定の抗うつ薬に応答するか、または耐性があるかどうかを判定する試行錯誤をせずに、許容される抗うつ薬を選択することができる。
【0028】
遺伝子型の決定
ゲノムDNAは、一般に、遺伝子型を決定するために使用されるが、mRNAを使用することもできる。ゲノムDNAは、一般に、末梢血液サンプルなどの生物学的サンプルから抽出されるが、組織(例えば、口の内側の粘膜を削り取ったもの、あるいは腎臓または肝臓組織由来のもの)を含めた他の生物学的サンプルから抽出することができる。例えば、フェノール抽出を含めて、常法によって、血液または組織サンプルからゲノムDNAを抽出することができる。あるいは、QIAamp(登録商標)Tissue Kit(Qiagen、Chatsworth、CA)、Wizard(登録商標)Genomic DNA精製キット(Promega)、A.S.A.P.(商標)Genomic DNA単離キット(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)などのキットを用いてゲノムDNAを抽出することができる。
【0029】
一般に、増幅ステップを実施した後に遺伝子型の決定に進む。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使用して、患者から増幅産物を得ることができる。PCRは、標的核酸を酵素的に増幅する手順または技術である。目的領域の両端またはそれを越えた領域から得られる配列情報は、一般に、増幅されるテンプレートの反対側の鎖と配列が同じであるオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために使用される。PCRを使用して、全ゲノムDNAまたは全細胞RNA由来の配列を含めて、DNAおよびRNAの特定の配列を増幅することができる。プライマーは、一般に、14〜40ヌクレオチド長であるが、10ヌクレオチド長〜数百ヌクレオチド長とすることができる。一般的なPCR法は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual、Dieffenbach, C.およびDveksler, G.編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995年に記載されている。RNAをテンプレート源として使用するときには、逆転写酵素を使用して相補DNA(cDNA)鎖を合成することができる。リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、自律的配列複製(self-sustained sequence replication)、または核酸配列に基づく増幅を使用して単離核酸を得ることもできる。例えば、Lewis (1992年) Genetic Engineering News 12(9):1、Guatelli等 (1990年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874〜1878、およびWeiss (1991年) Science 254:1292〜1293を参照されたい。
【0030】
プライマーは、一般に、10〜50ヌクレオチド長の一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドであり、哺乳動物のゲノムDNAと混合してPCR条件に供したときに、伸長して遺伝子内の目的領域に対応する核酸生成物を生成することができる。一般に、PCR産物は、少なくとも30ヌクレオチド長(例えば、30、35、50、100、250、500、1000、1500または2000以上のヌクレオチド長)である。表7に記載するものなどのプライマーは、ドーパミントランスポーター、ドーパミン受容体、トリプトファンヒドロキシラーゼ、セロトニントランスポーター、セロトニン受容体およびCOMTをコードする遺伝子に対してPCR産物を生成するのに特に有用である。1対のオリゴヌクレオチドプライマーを同じPCR反応に使用したときに、哺乳動物のDNAの特定の領域を増幅することができる(すなわち、複数の正確なコピーが生成されるように複製される)。ここで、一方のプライマーは、核酸のコーディング鎖由来のヌクレオチド配列を含み、もう一方のプライマーは、核酸の非コーディング鎖由来のヌクレオチド配列を含む。核酸の「コーディング鎖」は、非転写鎖であり、(RNA転写物がチミジン残基の代わりにウラシルを含む以外は)指定のRNA転写物と同じヌクレオチド配列である。一方、核酸の「非コーディング鎖」は、転写のテンプレートとして働く鎖である。
【0031】
単一のPCR反応混合物は、1対のオリゴヌクレオチドプライマーを含むことができる。あるいは、単一の反応混合物は、複数のオリゴヌクレオチドプライマー対を含むことができ、この場合には、複数のPCR産物を生成することができる(例えば、5、10、15または20個のプライマー対)。各プライマー対は、例えば、1個のエキソンまたは1個のエキソンの一部を増幅することができる。イントロン配列を増幅することもできる。
【0032】
目的遺伝子のエキソンまたはイントロンを増幅することができ、次いで、配列を直接決定することができる。色素プライマー配列決定(Dye primer sequencing)を使用して、ヘテロ接合的サンプルを検出する確度を上げることができる。あるいは、以下に示す技術の1つまたは複数を用いて遺伝子型を決定することができる。
【0033】
例えば、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションを使用して、哺乳動物の完全なハプロタイプを含めた配列変異体を検出することができる。Stoneking等、1991年、Am. J. Hum. Genet. 48:370〜382、およびPrince等、2001年、Genome Res.、11(1):152〜162を参照されたい。実際には、1種類または複数の哺乳動物に由来するDNAまたはRNAサンプルを、プライマー対を用いて増幅することができ、得られた増幅産物を基材上に(例えば、別個の領域に)固定することができる。ハイブリダイゼーション条件は、核酸プローブが、目的配列、例えば、変異体核酸配列に特異的に結合することができるように選択される。いくつかの配列変異体は、1つのヌクレオチドしか違わないので、このようなハイブリダイゼーションは一般に高いストリンジェンシー下で実施される。ストリンジェンシーの高い条件は、低イオン強度溶液および高温洗浄の使用を含むことができる。例えば、核酸分子は、2X SSC(0.3M NaCl/0.03Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中、42℃でハイブリダイズすることができ、0.1X SSC(0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS中65℃で洗浄することができる。ハイブリダイゼーション条件を調節して、長さおよび配列組成を含めて核酸分子の独特な特徴をもたらすことができる。プローブは、(例えば、蛍光で)標識して検出を容易にすることができる。一部の実施形態においては、増幅反応に使用されるプライマーの一方(例えば、逆方向プライマーの5'末端)をビオチン化し、得られたビオチン化増幅産物を、アビジンまたはストレプトアビジン被覆基材上に(例えば、別個の領域に)固定する。
【0034】
対立遺伝子特異的制限消化を以下のように実施することができる。制限部位を導入するヌクレオチド配列変異体の場合には、特定の制限酵素による制限消化によって、対立遺伝子を区別することができる。共通制限部位を変えない配列変異体の場合には、変異体対立遺伝子が存在するとき、または野生型対立遺伝子が存在するときに、制限部位を導入する突然変異誘発性プライマーを設計することができる。目的核酸の一部を突然変異誘発性プライマーおよび野生型プライマーを用いて増幅し、続いて適切な制限エンドヌクレアーゼで消化することができる。
【0035】
1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失などのある種の変異体によって、変異体を含むDNA断片のサイズが変わる。ヌクレオチドの挿入または欠失は、変異体を含む領域を増幅し、増幅産物のサイズをサイズ標準と比較して決定することによって評価することができる。例えば、目的遺伝子の領域は、プライマーセットを用いて変異体の両側から増幅することができる。プライマーの一方は、サイズ分け(sizing)を容易にするために、一般に、例えば、蛍光性成分で標識される。増幅産物は、プライマーとは異なる蛍光性成分で標識された1セットのサイズ標準とともにアクリルアミドゲルを通して電気泳動させることができる。
【0036】
変異体対立遺伝子が存在するときのみ、または野生型対立遺伝子が存在するときのみ生成物を増幅するPCR条件およびプライマーを開発することができる(MSPCRまたは対立遺伝子特異的PCR)。例えば、野生型プライマー、または変異体対立遺伝子に特異的なプライマーを用いて、患者DNAおよび対照を個別に増幅することができる。次いで、DNAを可視化する標準方法を用いて、各反応物セットに増幅産物が存在するかどうかを調べる。例えば、反応物を、アガロースゲルを通して電気泳動することができ、そのDNAを臭化エチジウムまたは他のDNA挿入色素で染色して可視化することができる。ヘテロ接合的患者に由来するDNAサンプルにおいては、反応生成物は、各反応において検出されるはずである。野生型対立遺伝子のみを含む患者サンプルは、野生型プライマーを用いた反応においてのみ増幅産物を有するはずである。同様に、変異体対立遺伝子のみを含む患者サンプルは、変異体プライマーを用いた反応においてのみ増幅産物を有するはずである。対立遺伝子特異的PCRは、2個の汎用エネルギー転移標識プライマー(例えば、フルオロセイン(fluoroscein)などの緑色色素で標識された1個のプライマー、およびスルホローダミンなどの赤色色素で標識された1個のプライマー)用のプライミング部位を導入する対立遺伝子特異的プライマーを用いて実施することもできる。増幅産物の緑色および赤色蛍光をプレートリーダーによって分析することができる。Myakishev等、2001年、Genome 11(1):163〜169を参照されたい。
【0037】
ミスマッチ切断法を用いて、PCR増幅による異なる配列を検出し、続いて野生型配列とハイブリダイズし、ミスマッチの箇所で切断することもできる。カルボジイミドまたはヒドロキシルアミンおよび四酸化オスミウムなどの化学試薬を用いて、ミスマッチヌクレオチドを修飾して、切断を容易にすることができる。
【0038】
チトクロムP450変異体の多くを検出するキットも市販されている。例えば、TAG-IT(商標)キットがTm Biosciences Corporation (Toronto、Ontario)から入手可能である。
【0039】
薬物の選択
パネル上の各遺伝子について遺伝子型を決定した後に薬物を選択することができる。一般に、選択は、チトクロムP450遺伝子の遺伝子型を、各チトクロムP450遺伝子によってコードされる各チトクロムP450酵素の薬物代謝能力と相関させるステップを含む。パネル上の別の標的遺伝子、例えば、セロトニントランスポーターおよび/またはドーパミントランスポーター遺伝子の遺伝子型を患者の薬物応答能力と相関させることができる。
【0040】
アルゴリズムを使用して、個々の患者に最も適切な薬物を選択することができる。アルゴリズムの設計には、始めに表現型を特定する必要があり、これによって薬物候補の範囲をあらかじめ特定する。アルゴリズムの次の段階においては、標的遺伝子解析の結果を逐次入力することができる。続いて、適切な薬物候補のリストをアルゴリズム式における特異的なコファクターに基づいて順位付けして、最初に特定された選択候補セット中の特定された薬物の各々に対して正、負または中立の確率スコアを割り当てることができる。このプロセスでは、患者が有する遺伝子型多型に基づいて、順位付けを調節する。アルゴリズム式における次の入力箇所において、CYP遺伝子解析結果を導入することができる。このアルゴリズム分析は、薬物を3つのカテゴリー、すなわち、1)使用が許容される薬物、すなわち、この薬物は、特定の遺伝子型を有する個体内で正常に代謝される確率が高い、2)注意して使用することができる薬物(例えば、薬物は、非定型的な代謝に基づいてある程度の投薬調節が必要なことがある)、および3)例えば、投薬における潜在的な難点のために、回避すべき薬物、または注意および監視しながら使用すべき薬物、に分類するように設計されている。選択プロセスのこの時点において、患者の一等親血縁者および二等親血縁者の薬物応答に関係するデータを、特定された第1のカテゴリーの薬物の選択に関係するアルゴリズム式に入力することができる。次いで、順位付けされた適切な薬物の調節を、家族による臨床反応に基づいて計算することができる。
【0041】
適切な薬物の選択は、標的データと薬物代謝に関係するデータの両方を含めることによってさらに増強することができる。これによって、特定の患者の臨床反応に対するCYP生成物の影響を明らかにすることができる。例えば、標的データおよび薬物代謝に関係するデータを入れると、利用可能な薬物量、患者の薬物利用能、ならびに薬物の受容体標的の質についての情報が提供され、薬物選択の合理的手法が提供される。
【0042】
このプロセスの例は、所与の患者に適切な抗うつ薬の選択であろう。うつ病の表現型が確定された後に、最初の抗うつ薬範囲が特定される。例えば、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオン、エスシタロプラム、セルトラリン、ミルタザピン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミン、パロキセチンおよびノルトリプチリンを最初の抗うつ薬の範囲にすることができる。この最初の薬物範囲は、追加の抗うつ薬が利用可能になったときに、または追加の薬理ゲノムデータが利用可能になったときに変更することができることが理解される。続いて、標的遺伝子型決定データを入力する。アルゴリズムの第1の成分中に、遺伝子型が2D6の代謝不良および1A2の正常代謝を反映していることが判明した場合には、薬物の順位付けによって、推奨用量で有効かつ適切に管理される可能性が高い薬物として、フルボキサミンおよびブプロプリオン(buproprion)が特定されることになる。アルゴリズムの次の段階において、個体が長い形態のセロトニントランスポーター遺伝子に対してホモ接合的である場合には、フルボキサミンの使用が許容されることが確認されよう。次いで、アルゴリズムからの出力は、履歴データと統合することができる。例えば、家族がフルボキサミンに十分応答した場合には、この薬物の使用が許容されることが確認され、または一等親血縁者および二等親血縁者がこの薬物に対して応答に問題があった場合には、別の薬物を選択することができる。
【0043】
コンピュータシステム
本明細書に記載する技術は、コンピュータプログラム中の具体的な命令を実行するプロセッサを備えるコンピュータシステムにおいて実施することができる。このコンピュータシステムは、患者の遺伝子型を受け取るステップに基づいて薬物プロフィールを出力するようにすることができる。特に、コンピュータプログラムは、個々の患者に最も適切な薬物(例えば、向精神薬)をシステムに選択させる命令を含むことができる。
【0044】
以下は、システムに含めることができる機能の例である。コンピュータプログラムは、コンピュータシステムが受信データに基づいて表現型を特定し、薬物候補範囲をあらかじめ特定することができるように設定することができる。このシステムは、アルゴリズム式中の特異的コファクターに基づいて、特定された薬物を順位付けすることができる。このシステムは、患者の有する遺伝子型多型に基づいて、順位付けを調節することができる。このシステムは、患者の家族などによる臨床反応に基づいて順位付けを調節することができる。
【0045】
図1は、上記オペレーションにおいて使用することができる、一実施形態によるコンピュータシステム100のブロック図である。システム100は、プロセッサ110、メモリ120、記憶装置130および入力/出力装置140を含む。部品110、120、130および140の各々は、システムバス150によって相互に接続されている。このシステムは、患者の遺伝子型を決定する解析装置160を含むことができる。
【0046】
プロセッサ110は、システム100内で実行命令を処理することができる。一実施形態においては、プロセッサ110は、単一スレッドプロセッサである。別の実施形態においては、プロセッサ110は、マルチスレッドプロセッサである。プロセッサ110は、入力/出力装置140を通して情報を受信または送信する命令を含めて、メモリ120または記憶装置130に保存された命令を処理することができる。
【0047】
メモリ120は、情報をシステム100内に保存する。一実施形態においては、メモリ120は、コンピュータ読取り可能な媒体である。一実施形態においては、メモリ120は、揮発性メモリユニットである。別の実施形態においては、メモリ120は、不揮発性メモリユニットである。
【0048】
記憶装置130は、システム100に対して大容量記憶を可能にすることができる。一実施形態においては、記憶装置130は、コンピュータ読取り可能な媒体である。多種多様な実施形態においては、記憶装置130をフロッピーディスク装置、ハードディスク装置、光ディスク装置またはテープ装置とすることができる。
【0049】
入力/出力装置140は、システム100に入力/出力オペレーションを提供する。一実施形態においては、入力/出力装置140は、キーボードおよび/またはポインティング装置を含む。一実施形態においては、入力/出力装置140は、グラフィカルユーザーインターフェースを表示するディスプレイユニットを含む。
【0050】
システム100は、データベースを構築するために使用することができる。図2は、患者に対して薬物を選択するのに使用されるデータベースを構築する方法200のフローチャートである。方法200は、システム100において実施されることが好ましい。例えば、コンピュータプログラム製品は、プロセッサ110に方法200のステップを実施させる命令を含むことができる。方法200は、以下のステップを含む。
【0051】
ステップ210において、1パネルの遺伝子について複数の遺伝子型170を受け取る。システム100中のコンピュータプログラムは、適切なグラフィカルユーザーインターフェースを入力/出力装置140に提供する命令を含むことができ、グラフィカルユーザーインターフェースは、キーボードなどの入力/出力装置140を用いて遺伝子型170を入力するように使用者に促すことができる。
【0052】
ステップ220において、複数の薬物プロフィール180を受け取る。薬物プロフィール180は遺伝子型170に基づいて指定される。使用者は、キーボードなどの入力/出力装置140を用いて薬物プロフィール180を入力することができる。例えば、薬物プロフィール180は、少なくとも1種類の薬物に関する情報190を含むことができる。
【0053】
ステップ230において、各薬物プロフィール180が遺伝子型170の1つに関連するように、受け取った遺伝子型170と薬物プロフィール180を保存する。システム100は、薬物プロフィール180と遺伝子型170を記憶装置130に保存することができる。例えば、保存が完了したときに、システム100は、特異的な遺伝子型170に関連する薬物プロフィール180の特異的な1つを特定することができる。薬物プロフィール180を特定した後で、システム100は、以下の例に示すように、特定された薬物プロフィール180に含まれる情報190にアクセスすることができる。
【0054】
システム100を使用して、薬物を選択することができる。図3に、患者に対して薬物を選択する方法300のフローチャートを示す。方法300は、システム100において実施されることが好ましい。例えば、コンピュータプログラム製品は、プロセッサ110に方法300のステップを実施させる命令を含むことができる。方法300は、以下のステップを含む。
【0055】
ステップ310において、1パネルの遺伝子について患者の遺伝子型を受け取る。遺伝子型は、使用者が入力/出力装置140を介して入力することができる。例えば、使用者は、(システム100に接続されていてもいなくてもよい)解析装置160を用いて、1パネルの遺伝子について患者の遺伝子型を得ることができる。使用者は、システム100が受け取る患者の遺伝子型を、キーボードなどの入力/出力装置140でタイプすることができる。
【0056】
遺伝子型は、解析装置160から直接受け取ることができる。例えば、解析装置160は、ネットワークによって通信することができるように、プロセッサおよび適切なソフトウエアを含むことができる。システム100は、ネットワークアダプタなどの入力/出力装置140を介して解析装置160に接続することができ、患者の遺伝子型を直接受け取ることができる。
【0057】
ステップ320において、患者の遺伝子型に関連する薬物プロフィール180の1つを特定する。例えば、システム100は、記憶装置130においてデータベース検索を実施することができる。特に、システム100は、個々の薬物プロフィール180に対して、一致が見つかるまで遺伝子型170にアクセスすることができる。任意選択のステップ325を以下に示す。
【0058】
ステップ330において、患者の遺伝子型を受け取るステップに応答して、特定された薬物プロフィール180を出力する。システムは、特定された薬物プロフィール180を入力/出力装置140を介して出力することができる。例えば、特定された薬物プロフィールを、表示装置上の適切なグラフィカルユーザーインターフェースに印刷または表示することができる。別の例として、システム100は、入力/出力装置140が接続されたローカルエリアネットワークまたはインターネットなどのネットワークによって、特定された薬物プロフィールを転送することができる。
【0059】
薬物プロフィール180は、システム100がそれらを出力する方法に柔軟性があるように作成することができる。例えば、1種類または複数の薬物プロフィール180中の情報190は、いくつかの薬物の順位を含むことができる。プログラムは、受け取った患者の遺伝子型に規則を適用し、それに応じて順位を調節する命令を含むことができる。このようなインプリメンテーションにおいては、方法300は、特定された薬物プロフィールを出力する前に、順位を調節する任意選択のステップ325を含むことができる。例えば、システム100は、(患者の遺伝子型を受け取ったのと場合によっては同じ方法で)患者が有する遺伝子型多型を受け取り、ステップ325において、それに応じて順位を調節することができる。別の例として、ステップ325は、臨床反応に基づいて順位を調節するステップを含むことができる。臨床反応は、患者の遺伝子型と同様にシステム100で受け取ることができる。例えば、順位は、患者の家族の一員による臨床反応に基づいて調節することができる。
【0060】
薬物プロフィール180は必要に応じて更新することができる。例えば、新しい薬物を市場に導入することによって、1種類または複数の既存の薬物プロフィールの改訂を促すことができる。新しい薬物は、新しい薬物プロフィールを作成する基礎ともなり得る。薬物プロフィールの調節または作成は、実質的に上述したように実施することができる。
【0061】
薬物プロフィール180は、薬物プロフィール180が作成されたのと同じシステムでも、異なるシステムでも、薬物選択のために使用することができる。すなわち、システム100は、まず、薬物プロフィール180のデータベースを構築するのに使用することができ、その後、特定の患者の遺伝子型に対して薬物プロフィールを選択するのに使用することができる。別の例として、1種類または複数の薬物プロフィール180は、本発明による遠隔処理用の世界的なコンピュータネットワークなどのコンピュータ読取り可能な媒体内で転送することができる。
【0062】
製品
一実施形態においては、製品は、オリゴヌクレオチドプライマーを含む組成物である。一般に、このような組成物は、各10〜50ヌクレオチド長の第1のオリゴヌクレオチドプライマーおよび第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含むだろう。これらは、哺乳動物由来のゲノムDNAと混合し、PCR条件に供して、標的遺伝子内の目的領域に対応する核酸生成物を産生することができる。組成物は、緩衝剤、およびPCRに必要な他の試薬(例えば、DNAポリメラーゼまたはヌクレオチド)を含むこともできる。また、組成物は、複数の核酸生成物を生成できるように1種類または複数の追加のオリゴヌクレオチドプライマー対(例えば、5、10、15または20個のプライマー対)を含むことができる。
【0063】
別の実施形態においては、製品は、基材上に固定された核酸分子集団を含む。適切な基材は、核酸固定用の基部を提供し、一部の実施形態においては、核酸を別個の領域に固定することができる。基材が複数の別個の領域を含む実施形態においては、異なる単離核酸集団を各別個の領域に固定することができる。異なる核酸分子集団は、表1および2に示す対立遺伝子セットの1種類または複数を検出するための核酸分子を独立に含むことができる。
【0064】
適切な基材は、任意の形状または形態とすることができ、例えば、ガラス、ケイ素、金属、プラスチック、セルロースまたは複合材から構築することができる。例えば、適切な基質としては、マルチウェルプレートもしくは膜、ガラススライド、チップ、またはポリスチレンもしくは磁性ビーズを挙げることができる。核酸分子またはポリペプチドは、in situ合成することができ、基材上に直接固定することができ、または共有結合、イオン結合もしくは物理的結合を含めたリンカーによって固定することができる。核酸およびポリペプチドを固定するリンカーは、可逆的または切断可能なリンカーを含めて、当分野で公知である。例えば、米国特許第5,451,683号および国際公開第98/20019号を参照されたい。固定化核酸分子は、一般に、約20ヌクレオチド長であるが、約10ヌクレオチドから約1000以上のヌクレオチド長とすることができる。
【0065】
本発明を以下の実施例においてさらに説明する。以下の実施例は、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0066】
実施例1
患者のCYP450遺伝子型
この実験は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬に対して非定型的な応答を示す若者の評価結果に光を当てたものである。欠損を生じる以下のCYP2D6対立遺伝子、すなわち、*2(1661G>Cおよび2850C>T)、*3(2549A>del)、*4(1661G>Cおよび1846G>A)、*10(100C>T、1661G>Cおよび1846G)、*17(1023C>Tおよび2850C>T)を検出した。CYP2D6(*5 del)の欠失は、PCR増幅後の電気泳動によって検出された。CYP2D6遺伝子の縦列重複は、重複に特異的な配列を増幅し、電気泳動後に検出することによって検出された。
【0067】
ゲノムDNAは、Applied Biosystems Thermal Cycler中で、以下に列挙するプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって増幅された。小文字の「f」および「r」は、合成の方向を意味する(「f」は順方向/センス合成反応を示し、「r」は逆方向/アンチセンス合成反応を示す)。増幅DNAは、(以下に示す)正常および多型変異体に特異的なオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズし、Nanogen Molecular Biology Workstationによって検出された。オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光標識(例えば、CY3またはCY5)したものである。
【0068】
PreNestオリゴヌクレオチド(一次増幅)
増幅プライマー:
CYP2D6 Prenest B F 5'-CCA GAA GGC TTT GCA GGC TTC A-3' (塩基1281〜1302、配列番号1)
CYP2D6 Prenest B R 5'-ACT GAG CCC TGG GAG GTA GGT A-3' (塩基6357〜6378、配列番号2)
【0069】
Nestオリゴヌクレオチド(二次増幅)
CYP2D6 (C100T)
増幅プライマー:
・CYP2D6 (100)B f 5'GGC CTA CCC TGG GTA AGG GCC TGG AGC AGG A -3' (塩基1579〜1594、配列番号3)
・CYP2D6 (100)B r 5'-/5Bio/ CCT GGT CGA AGC AGT AT-3' (塩基2394〜2411、配列番号4)
プローブおよび安定剤:
CYP2D6 C100T野生型 5'-/5Cy3/GCA CGC TAC C-3'(塩基1700〜1710、配列番号5)
CYP2D6 C100T多型 5'-/5Cy5/GCA CGC TAC T -3'(塩基1700〜1710、配列番号6)
CYP2D6 C100T安定剤 5'CAC CAG GCC CCC TGC CAC TG -3'(塩基1711〜1731、配列番号7)
【0070】
CYP2D6 (C1023T)
増幅プライマー:
・CYP2D6 (1023)B f 5'-CCT GCT CAC TCC TGG TAG CC -3'(塩基2394〜2413、配列番号8)
・CYP2D6(1023)B r 5'-/5Bio/ CTG TTT CAT GTC CAC GAC C-3' (塩基2760〜2779、配列番号9)
プローブおよび安定剤:
CYP2D6(1023)野生型 5'-/5Cy3/TGC CCA TCA C-3' (塩基2632〜2642、配列番号10)
CYP2D6(1023)多型 5'-/5Cy3/TGC CCA TCA T -3' (塩基2632〜2642、配列番号11)
CYP2D6(1023)安定剤 5'CCA GAT CCT GGG TTT CGG GCC GCG -3' (塩基2643〜2667、配列番号12)
【0071】
CYP2D6 (G1661CおよびG1846A)
注: このアンプリコンには多型が2つある。
【0072】
増幅プライマー:
・CYP2D6(1661,1846)B f 5'- CAG AGG CGC TTC TCC G -3' (塩基3266〜3282、配列番号13)
・CYP2D6(1661,1846)B r 5'- /5Bio/CTC GGT CTC TCG CTC CGC AC -3' (塩基3630〜3650、配列番号14)
プローブおよび安定剤:
CYP2D6(1661)野生型 5'-/5Cy3/CTT CTC CGT G -3' (塩基3266〜3276、配列番号15)
CYP2D6(1661)多型 5'-/5Cy3/CTT CTC CGT C -3' (塩基3266〜3276、配列番号16)
CYP2D6(1661)安定剤 5'-TCC ACC TTG CGC AAC TTG GGC CTG GG -3' (塩基3277〜3303、配列番号17)
CYP2D6(1846)野生型 5'-/5Cy3/CCA CCC CCA G -3' (塩基3460〜3470、配列番号18)
CYP2D6(1846)多型 5'-/5Cy3/CCA CCC CCA A -3' (塩基3460〜3470、配列番号19)
CYP2D6(1846)安定剤 5'-GAC GCC CCT TTC GCC CCA ACG -3' (塩基3471〜3492、配列番号20)
【0073】
CYP2D6 (A2549delおよびC2850T)
増幅プライマー:
CYP2D6(A2549delおよびC2850T)B f 5'- TGA GAC TTG TCC AGG TGA AC -3' (塩基4001〜4022、配列番号21)
・CYP2D6(A2549delおよびC2850T)B r 5'-/5Bio/ CCC AGA TGG GCT CAC GCT GC-3' (塩基4558〜4578、配列番号22)
プローブおよび安定剤:
CYP2D6(2549)野生型 5'-/5Cy3/ACT GAG CAC A -3' (塩基4161〜4171、配列番号23)
CYP2D6(2549)多型 5'-/5Cy3/ ACT GAG CAC G-3' (塩基4161〜4171、配列番号24)
CYP2D6(2549)安定剤 5'-GGA TGA CCT GGG ACC CAG CCC AGC C3' (塩基4172〜4199、配列番号25)
CYP2D6(2850)野生型 5'-/5Cy3/GAG AAC CTG C -3' (塩基4462〜4472、配列番号26)
CYP2D6(2850)多型 5'-/5Cy3/ GAG AAC CTG T-3' (塩基4462〜4472、配列番号27)
CYP2D6(2850)安定剤 5'-GCA TAG TGG TGG CTG ACC TGT TCT CTG -3' (塩基4473〜4500、配列番号28)
【0074】
PCR増幅
A. PreNest(初期増幅):
CYP2D6 PreNest B CYP2D6(C1661G)、CYP2D6(G1846A)、CYP2D6(A2549Del)、CYP2D6(C100T)、CYP2D6(C2850T)およびCYP2D6(C1023T)多型の初期PreNest PCRを、1個のサンプル当たり以下の試薬、すなわち、0.6μL 25μM PreNest B F、0.6μL 25μM PreNestB R、2.5μL 10mM dNTP、39.55μL dH2O、5.0μL Expand Buffer 3(Roche)、0.75μL Expand Enzyme Mix (Roche)、および1.0μlゲノムDNAを用いて総容積50μLで実施した。PCRは、94℃2分間の保持、次いで、94℃30秒間の変性、67℃30秒間のアニーリングおよび68℃7分間の伸長を30サイクル、続いて、72℃10分間の最終伸長によって実施された。予想PCR産物は、約4.8〜5Kbであった。
【0075】
後続のPCRはすべてPreNest B生成物を増幅用テンプレートとして用いて実施された。
【0076】
CYP2D6 (100)B
(C100T)ネステッドPCR(nested PCR)は、初期PreNest Bアンプリコン1μlをテンプレートとして使用して実施された。このPCRの産物を使用してCYP2D6(C100T)突然変異を検出し、以下の試薬、すなわち、1.0μl 25μM CYP2D6(100)B f、1.0μl 25μM CYP2D6(100)B r、12.5μl Qiagen Hot Start Master Mix、および9.5μl dH2Oを用いる(25μL総容積)。PCRは、95℃15分間の保持、次いで、95℃30秒間の変性、57℃30秒間のアニーリングおよび72℃1分間の伸長を30サイクル、続いて、72℃7分間の最終伸長によって実施された。
【0077】
CYP2D6(1023)B
(C1023T)ネステッドPCRは、PreNest B産物1μlをテンプレートとして使用して実施された。このPCRの産物を使用してCYP2D6(C1023T)突然変異を検出し、以下の試薬、すなわち、1.0μl 25μM CYP2D6(1023)B f、1.0μl 25μM CYP2D6(1023)B r、12.5μl Amplitaq Gold Master Mix、および9.5μl dH2Oを用いる(25μL総容積)。PCRは、95℃10分間の保持、次いで、95℃30秒間の変性、59℃30秒間のアニーリングおよび72℃1分間の伸長を30サイクル、続いて、72℃7分間の最終伸長によって実施された。
【0078】
CYP2D6(C1661GおよびG1846A)B
(C1661GおよびG1846A)ネステッドPCRは、PreNest B産物1μlをテンプレートとして用いて実施された。このPCRの産物を使用してCYP2D6(C1661G)およびCYP2D6(G1846A)突然変異を検出し、以下の試薬、すなわち、1.0μl 25μM CYP2D6(1661、1846)B f、1.0μl 25μM CYP2D6(1661、1846)B r、12.5μl 2X Amplitaq Gold Master Mix、および9.5μl dH2Oを用いる(25μL総容積)。PCRは、95℃10分間の保持、次いで、95℃30秒間の変性、63℃30秒間のアニーリングおよび72℃1分間の伸長を30サイクル、続いて、72℃7分間の最終伸長によって実施された。
【0079】
CYP2D6(A2549DelおよびCYP2D6C2850T)B
(A2549DelおよびC2850T)ネステッドPCRは、PreNest B産物1μlをテンプレートとして使用して実施された。このPCRの産物を使用してCYP2D6(A2549Del)およびCYP2D6(C2850T)突然変異を検出し、以下の試薬、すなわち、1.0μl 25μM CYP2D6(2549、2850)B f、1.0μl 25μM CYP2D6(2549、2850)B r、12.5μl 2X Amplitaq Gold Master Mix、および9.5μl dH2Oを用いる(25μL総容積)。PCRは、95℃10分間の保持、次いで、95℃30秒間の変性、57℃30秒間のアニーリングおよび72℃1分間の伸長を30サイクル、続いて、72℃10分間の最終伸長によって実施された。
【0080】
多型は、Nanogen Molecular Biology Workstationを用いて、Nanogens Userマニュアルに従って検出された。サンプルは、Millipore脱塩プレート上で脱塩された。1.5ml遠心管中に以下の試薬、すなわち、野生型プローブ2.0μl、多型プローブ2.0μl、安定剤2.0μlおよび高塩分緩衝剤44μlを添加した。各アッセイは、標識され、それに特異的であるプローブおよび安定剤を含んだ。試薬をボルテックス撹拌し、短時間回転させ、Nanochipアレイ上に5分間かけて分配し、暗色の容器に入れた。チップを、24℃から50℃への傾斜方法(trending method)によって、2℃毎に読み取った。蛍光プローブが24℃でハイブリダイズし、すべてのプローブが50℃で脱ハイブリダイズする(de-hybridize)ことが確認された。相対蛍光単位(RFU)が50℃においていずれのチップでも80を超える場合には、1.0M NaOH 200μlで10分間チップを剥離し、dH2Oで3回洗浄し、高塩分緩衝剤で1回洗浄した。各多型に対してヘテロ接合体対照(既知のヘテロ接合体、RFUを「正規化」または評価するものと、もう一方のあらかじめ遺伝子型を決定したヘテロ接合体において観測される補正傾斜パターン(correcting trending pattern)を確認するもの)および陰性対照(DNAなし)を含めた。バックグラウンドを差し引くために、L-ヒスチジンを使用した。
【0081】
表3〜5に、異なる年齢グループの参加者総数、および上記手順を用いて検出されるCYP2D6推定代謝表現型(metabolic phenotype)をまとめる。表6は、抗うつ薬に耐性があるうつ病のサブタイプに罹患した患者において認められた特定の2D6ハプロタイプを提供する。
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
【表6】



【0085】
これらの若者のすべてが非定型2D6ハプロタイプを有することが判明した(表3〜5参照)。成人サンプルにおけるチトクロムP450遺伝子対立遺伝子の本発明者らの初期の分析結果は、2D6遺伝子の多型における高度の可変性も示していた(表3〜5参照)。2D6代謝不良に関連する多型を有する若者は、2D6酵素によって代謝される選択的セロトニン再取り込み阻害薬を用いて治療したときに、薬物に対する応答が鈍い、または副作用の頻度が高いことによって特徴づけられる病歴を有することが注目された。
【0086】
実施例2
ドーパミントランスポーター、ドーパミン受容体、トリプトファンヒドロキシラーゼ、セロトニン受容体およびCOMT遺伝子の遺伝子型の決定
表7の以下のプローブおよびプライマーは、ドーパミントランスポーター(DAT1、SLC6A3)、ドーパミン受容体(DRD1、DRD2、DRD3、DRD4およびDRD5)、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)、セロトニントランスポーター(5-HTT)、セロトニン受容体(HTR1A、HTR1B、HTR1D、HTR2AおよびHTR2C)およびCOMT遺伝子の遺伝子型を検出するために作製することができる。
【表7】



【0087】
実施例3
97人の患者において、CYP2D6、CYP2C19および5HTTR遺伝子の遺伝子型を上記方法によって決定した。実施例1に示したように、CYP2D6 *2、*3、*4、*10、*17および*5 del対立遺伝子、CYP2C19 *2(A,B)、*3、*4、*5(A,B)、*6、*7および*8対立遺伝子、ならびに短い/長い形態の5HTTR遺伝子を評価した。
【0088】
遺伝子型が決定された各患者は、少なくとも1種類の抗うつ薬に対する応答が不良であり、または少なくとも1種類の抗うつ薬に対して認容できない副作用を示した。遺伝子型情報に基づいて、18の薬物プロフィールを作成した(表8)。表8において、PMは低代謝群であり、IMは中間代謝群であり、EMは高代謝群であり、sは短い形態の遺伝子であり、lは長い形態の遺伝子である。各薬物プロフィールは、使用が許容される抗うつ薬、注意して使用すべき抗うつ薬、ならびに回避すべき、または注意および厳重に監視しながら使用すべき抗うつ薬を規定する。
【表8】

【0089】
薬物プロフィール1は、2D6および2C19低代謝群、ならびに5HTTR遺伝子のs/s型と関連がある。薬物プロフィール1の患者においては、ブプロピオンは使用が許容され、ミルタザピンおよびフルボキサミンは注意して使用することができ、一方、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミン、ノルトリプチリンおよびセルトラリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0090】
薬物プロフィール2は、2D6および2C19低代謝群、ならびに5HTTR遺伝子のs/l型と関連がある。薬物プロフィール2の患者においては、フルボキサミンおよびブプロピオンは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用することができ、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0091】
薬物プロフィール3は、2D6および2C19低代謝群、ならびに5HTTR遺伝子のl/l型と関連がある。薬物プロフィール3の患者においては、フルボキサミンおよびブプロピオンは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用することができ、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0092】
薬物プロフィール4は、2D6低代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のs/s型と関連がある。薬物プロフィール4の患者においては、ブプロピオンは使用が許容され、ミルタザピン、シタロプラム、フルボキサミンおよびエスシタロプラムは注意して使用することができ、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミン、ノルトリプチリンおよびセルトラリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0093】
薬物プロフィール5は、2D6低代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のs/s型と関連がある。薬物プロフィール5の患者においては、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオンおよびエスシタロプラムは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用することができ、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0094】
薬物プロフィール6は、2D6低代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のl/l型と関連がある。薬物プロフィール6の患者においては、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオンおよびエスシタロプラムは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用することができ、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0095】
薬物プロフィール7は、2D6中間代謝群、2C19低代謝群、および5HTTR遺伝子のs/s型と関連がある。薬物プロフィール7の患者においては、ブプロピオンは使用が許容され、ミルタザピン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、フルボキサミンおよびセルトラリンは注意して使用することができ、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、イミプラミンおよびパロキセチンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0096】
薬物プロフィール8は、2D6中間代謝群、2C19低代謝群、および5HTTR遺伝子のs/l型と関連がある。薬物プロフィール8の患者においては、フルボキサミン、ブプロピオンおよびセルトラリンは使用が許容され、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリンおよびノルトリプチリンは注意して使用することができ、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチンおよびイミプラミンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0097】
薬物プロフィール9は、2D6中間代謝群、2C19低代謝群、および5HTTR遺伝子のl/l型と関連がある。薬物プロフィール9の患者においては、フルボキサミン、ブプロピオンおよびセルトラリンは使用が許容され、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリンおよびノルトリプチリンは注意して使用することができ、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチンおよびイミプラミンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0098】
薬物プロフィール10は、2D6高代謝群、2C19低代謝群、および5HTTR遺伝子のs/s型と関連がある。薬物プロフィール10の患者においては、ブプロピオンおよびベンラファキシンは使用が許容され、ミルタザピン、ノルトリプチリン、イミプラミン、アミトリプチリン、セルトラリン、パロキセチンおよびフルオキセチンは注意して使用することができ、フルボキサミン、シタロプラム、およびエスシタロプラムは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0099】
薬物プロフィール11は、2D6高代謝群、2C19低代謝群、および5HTTR遺伝子のs/l型と関連がある。薬物プロフィール11の患者においては、セルトラリン、ベンラファキシン、パロキセチン、ブプロピオンおよびフルオキセチンは使用が許容され、ミルタザピン、フルボキサミン、ノルトリプチリン、シタロプラム、エスシタロプラム、イミプラミンおよびアミトリプチリンは注意して使用することができる。
【0100】
薬物プロフィール12は、2D6高代謝群、2C19低代謝群、および5HTTR遺伝子のl/l型と関連がある。薬物プロフィール12の患者においては、セルトラリン、ベンラファキシン、パロキセチン、ブプロピオンおよびフルオキセチンは使用が許容され、ミルタザピン、フルボキサミン、ノルトリプチリン、シタロプラム、エスシタロプラム、イミプラミンおよびアミトリプチリンは注意して使用することができる。
【0101】
薬物プロフィール13は、2D6中間代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のs/s型と関連がある。薬物プロフィール13の患者においては、ブプロピオンおよびミルタザピンは使用が許容され、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミン、ノルトリプチリン、シタロプラム、フルボキサミン、エスシタロプラムおよびセルトラリンは注意して使用することができ、パロキセチンおよびフルオキセチンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきである。
【0102】
薬物プロフィール14は、2D6中間代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のs/l型と関連がある。薬物プロフィール14の患者においては、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオン、エスシタロプラム、セルトラリンおよびミルタザピンは使用が許容され、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは注意して使用することができる。
【0103】
薬物プロフィール15は、2D6中間代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のl/l型と関連がある。薬物プロフィール15の患者においては、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオン、エスシタロプラム、セルトラリンおよびミルタザピンは使用が許容され、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは注意して使用することができる。
【0104】
薬物プロフィール16は、2D6高代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のs/s型と関連がある。薬物プロフィール16の患者においては、ブプロピオン、ミルタザピン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは使用が許容され、パロキセチン、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、エスシタロプラムおよびシタロプラムは注意して使用することができる。
【0105】
薬物プロフィール17は、2D6高代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のs/l型と関連がある。薬物プロフィール18は、2D6高代謝群、2C19高代謝群、および5HTTR遺伝子のl/l型と関連がある。薬物プロフィール17または18の患者においては、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオン、エスシタロプラム、セルトラリン、ミルタザピン、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは使用が許容される。
【0106】
実施例4
10人の患者において、CYP2D6、CYP2C19、CYP3A4、CYP1A2およびHTR2A遺伝子の遺伝子型を上記方法によって決定した。5HTTR遺伝子の遺伝子型は、遺伝子の多型領域を、その領域に隣接するプライマーを用いて増幅することによって決定された。反応生成物は、電気泳動(Agilent Technologies)によってサイズ分けされた。CYP3A4 *1B、*2、*5、*6、*12、*13、*15A、*17および*18A対立遺伝子、CYP1A2 *1F対立遺伝子およびHTR2A 102多型が検出された。
【0107】
CYP2D6遺伝子型に基づいて、患者を、低代謝群、中間代謝群、高代謝群または超高速代謝群に分類した。CYP2C19、CYP3A4およびCYP1A2遺伝子型の各々の場合には、患者を高代謝群または非高(すなわち、低)代謝群のどちらかに分類した。5HTTR遺伝子型の場合には、患者を、短/短(s/s)型遺伝子を有する患者、短/長(s/l)型遺伝子を有する患者、または長/長(l/l)型遺伝子を有する患者に分類した。HR2A遺伝子型の場合には、患者をC/C対立遺伝子を有する患者またはT/TもしくはT/C対立遺伝子を有する患者のどちらかに分類した。
【0108】
以下の6つの規則を使用して、これらの遺伝子型を192種類の治療推奨に区分けした。第1の規則は、CYP2D6遺伝子型に関係する。低代謝群および超高速代謝群の場合には、CYP2D6基質は、「十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに分類された。中間代謝群の場合には、CYP2D6のみの基質は、「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに分類された。中間代謝群の場合には、CYP2D6によって部分的に代謝される基質は、「注意して使用する」カテゴリーに分類された。高代謝群の場合には、CYP2D6の基質は、「使用が許容される」カテゴリーに分類された。
【0109】
第1の規則を適用した後に、2C19遺伝子型に関係する第2の規則を適用した。そのCYP2C19遺伝子型に基づく低代謝群の場合には、CYP2C19のみの基質は、「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに分類された。そのCYP2C19遺伝子型に基づく高代謝群または中間代謝群の場合には、CYP2C19の基質は、「使用が許容される」カテゴリーに分類された。CYP2D6とCYP2C19の両方によって主に代謝される基質は、CYP2C19が低代謝群であり、CYP2D6が中間代謝群または低代謝群である場合には「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに分類され、あるいはCYP2C19が低代謝群であり、CYP2D6が高代謝群である場合には「注意して使用する」カテゴリーに分類された。
【0110】
3A4遺伝子型に関係する第3の規則は、第1および第2の規則を適用した後に適用された。そのCYP3A4遺伝子型に基づく低代謝群の場合には、CYP3A4のみの基質は、「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに分類された。そのCYP3A4遺伝子型に基づく高代謝群または中間代謝群の場合には、CYP3A4の基質は、「使用が許容される」カテゴリーに分類された。以下の3種類の酵素、すなわち、CYP2D6、CYP2C19またはCYP3A4のいずれか2種類によって主に代謝される基質は、この3種類のうちいずれか2種類が中間代謝群または低代謝群である場合には、「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに分類され、あるいは2種類の最も重要な酵素のうち1種類が低代謝群である場合には、「注意して使用する」カテゴリーに分類された。
【0111】
1A2遺伝子型に関係する第4の規則は、最初の3つの規則を適用した後に適用された。CYP1A2遺伝子型に基づく低代謝群の場合には、(主要なCYP1A2基質としてのフルボキサミンを含めて)CYP1A2の基質は、「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに分類された。CYP1A2遺伝子型に基づく低代謝群の場合には、その主要な経路の1つとしてCYP1A2経路を有する基質は、「注意して使用する」カテゴリーに分類された。
【0112】
最初の4つの規則を適用した後に、5HTTR遺伝子型に関係する第5の規則を適用した。セロトニントランスポーター遺伝子のホモ接合的な短い遺伝子型(s/s)の場合には、「使用が許容される」に分類されたSSRIは、「注意して使用する」カテゴリーに移された。セロトニントランスポーター遺伝子のホモ接合的な短い遺伝子型(s/s)の場合には、「注意して使用する」に分類されたSSRIは、「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」カテゴリーに移された。SSRIクラス以外の抗うつ薬は、5HTTR遺伝子型に基づいてカテゴリーを変えることはない。
【0113】
HR2A遺伝子型に関係する規則6は、最初の5つの規則を適用した後に適用された。5-ヒドロキシトリプタミンセロトニン受容体2A遺伝子の「突然変異体型」については、パロキセチンが「使用が許容される」カテゴリーにある場合には、「注意して使用する」カテゴリーに移された。パロキセチンが「注意して使用する」カテゴリーにある場合には、「回避するか、または十分注意して厳重に監視しながら使用する」に移された。
【0114】
患者の遺伝子型および関連する薬物プロフィールに基づいて、患者に適切な薬物が選択された。表9に、10人の患者のデータをまとめる。7人の患者のうち4人の症例研究を以下に示す。
【0115】
第1の症例は、遺伝子型が決定され、CYP2D6(*3/*9)に対して低代謝群であり、CYP2C19(*2/*2)に対しても低代謝群であることが判明した16歳の白人女性である。彼女は6歳でADHDと診断され、治療に失敗した。続いて、彼女はうつ病および気分調節不全(mood dysregulation)を発症し、エフェクサー(EFFEXOR)などCYP2D6によって代謝される多数の薬物を与えられた。さらに、彼女は、短い形態のセロトニントランスポーター遺伝子についてホモ接合的であった。彼女のこれらの重要な遺伝子の特異的遺伝子型に基づいて、アルゴリズムは、彼女のうつ病を制御することができる潜在的な戦略が比較的少ないことを示している。彼女のHR2A TT/TC、5HTTRのs/s型、1A2および3A4の高代謝群、ならびに2C19および2D6の低代謝群の遺伝子型に基づいて作成された薬物プロフィールによれば、ブプロピオンは使用が許容され、ミルタザピンおよびフルオキサミン(fluoxamine)は注意して使用すべきであり、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミン、ノルトリプチリンおよびセルトラリンは回避すべきであり、または注意して監視しながら使用すべきであることが示された。
【0116】
遺伝子型を決定する前に、彼女は、幻覚を生じる点でシタロプラムに対して特に異常な副作用を示した(発生率1%未満)。この非定型かつ危険な副作用は、この薬物を服用する前に彼女の遺伝子型が決定されていたならば回避することができた。シタロプラムの代謝に主に関与する代謝的酵素はCYP2C19であり、第2の代謝経路はCYP2D6である。これらの経路はどちらもこの患者においては機能しなかった。したがって、少量のシタロプラムでさえ、この患者は、急性の聴覚性および視覚性の幻覚を生じ、続いて非定型の抗精神病薬による治療を受けた。さらに、この患者に対する有効な治療計画を立てることができなかったため、彼女は州立病院に2ヶ月間回される前に、3回の緊急入院と部分入院が必要であった。彼女は12種類以上の向精神薬を試みられたが失敗に終わった。臨床医がそれらの標準用量で処方された薬物の多くを彼女に使用することができないことに気づいたならば、彼女の治療が大いに改善され、おそらくは彼女の入院の何回かを回避することができたことは疑いない。また、彼女のセロトニントランスポーター遺伝子型(C/C)は、処方された薬物の多くに対する応答が不良であることを示唆していたであろう。遺伝子型が決定された後、彼女は、代替経路によって代謝される2種類の気分安定薬の組み合せを与えられた(LAMICTAL(ラモトリジン)およびTRILEPTAL(オキシカルバゼピン))。彼女は、CYP2D6によって代謝されるのに加えて、彼女が内部代謝経路を有するCYP3A4によって代謝されるABILIFY(アリピプラゾール)による治療にも認容性を示している。彼女は、現在、かなり良好になっている。
【0117】
第2の症例は、持続性のうつ病、広範な不安、および長年の向精神薬不耐歴を有する42歳の白人の女性である。この患者は、彼女の症状を器質的に説明することができなかった包括的な神経学的評価を受けた。この患者は、これまで少なくとも9種類の向精神薬による治療を受けてきた。CYP2D6不耐性の著しい例としては、パロキセチンを服用している間の急性幻覚の発生、およびアミトリプチリンに対する極めて低い耐性が挙げられる。この患者は、CYP2D6代謝に劣り、CYP2C19代謝が中程度であった。これは、シタロプラムによる治療に耐えるのには難点があることを示唆する稀な遺伝子型である。実際、彼女は、シタロプラムを服用したときには、過敏および嗜眠を示した。この問題を複雑にすることには、彼女は、短い形態のセロトニントランスポーターに対してホモ接合的でもあり、これは、セロトニン受容阻害剤に対する応答不良と関連がある。彼女は、彼女の精神医学的問題のために複数の外来通院を経験した。彼女の病歴において彼女の遺伝子型により早く気づいていれば、彼女の臨床医が、彼女が許容できなかったいくつかの薬物を回避できたことは明らかである。彼女のHR2A TT/TC、5HTTRのs/s型、1A2および3A4の高代謝群、ならびに2C19および2D6の低代謝群の遺伝子型に基づいて作成された薬物プロフィールによれば、ブプロピオンは使用が許容され、ミルタザピンおよびフルオキサミンは注意して使用すべきであり、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミン、ノルトリプチリンおよびセルトラリンは回避すべきであり、または注意して監視しながら使用すべきであることが示された。
【0118】
第3の病歴は、大うつ病性障害と診断された67歳の女性であり、彼女は、これまで7種類の異なる薬物による治療を受けた。これらは有効ではなく、彼女は精神病院に2回入院する必要があった。彼女は、CYP2D6(*4/*9)とCYP2C19(*2/*2)の両方に対して低代謝群であることが判明した。さらに、彼女は、長い形態のセロトニントランスポーター遺伝子についてホモ接合的であった。彼女のHR2A C/C、5HTTRのl/l型、1A2および3A4の高代謝群、ならびに2C19および2D6の低代謝群の遺伝子型に基づいて、関連する薬物プロフィールによれば、フルオキサミンおよびブプロピオンは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用すべきであり、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは回避すべきであり、または注意して監視しながら使用すべきであることが示された。彼女の遺伝子型が分かっていたならば、彼女はEFFEXOR(ベンラファキシン)とLEXAPRO(シュウ酸エスシタロプラム)の両方に対して副作用を示すことを予測することができたであろう。これは、LEXAPROの代謝に関与する3つの代謝経路のうち2つが完全に不活性であることを考えれば、予測することができたであろう。彼女の遺伝子型が決定された後、彼女は電気痙攣療法(ECT)による治療に成功し、同時に、CYP2D6およびCYP2C19に対する代謝の代替経路を有するREMERON(ミルタザピン)、トラゾドンおよびKLONOPIN(クロナゼパム)による治療に成功した。
【0119】
第4の症例は、気分変調および慢性不安を有すると診断された50歳の白人女性である。彼女は、彼女が許容できなかった2種類のCYP2D6薬物を含めて、複数の向精神薬を与えられた。彼女の遺伝子型によれば、彼女は、CYP2D6低代謝群(*4/*4)であり、CYP2C19中間代謝群(*1/*2)であることが示された。彼女は、長いおよび短い形態のセロトニントランスポーター遺伝子についてヘテロ接合的であった。彼女のHR2A C/C、5HTTRのl/s型、1A2および3A4の高代謝群、ならびに2C19および2D6の低代謝群の遺伝子型に基づいて、関連する薬物プロフィールによれば、フルオキサミンおよびブプロピオンは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用すべきであり、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは回避すべきであり、または注意して監視しながら使用すべきであることが示された。
【0120】
この患者は、相当な費用で複数回入院した。彼女は、急に不快になることの知見の前に、わずか1回量のPROZAC(フルオキセチン)およびZOLOFT(セルトラリン)を服用できることを含めて、ある範囲の非精神医学的薬物に耐えることが困難であることも分かった。特に興味深いことには、彼女は、準臨床的な用量のパロキセチンに対して最終的に応答した。これは、アルゴリズムを用いて、通常の用量では耐えることができない有効な薬物を投与する方法を見出した例である。
【表9】


【0121】
5番目の患者のHR2A C/C、5HTTRのl/l型、1A2および3A4の高代謝群、ならびに2C19および2D6の低代謝群の遺伝子型に基づいて、関連する薬物プロフィールによれば、フルオキサミンおよびブプロピオンは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用すべきであり、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは回避すべきであり、または注意して監視しながら使用すべきであることが示された。
【0122】
6番目の患者の遺伝子型(HTR2A CC; 5HTTR l/s; 1A2、3A4、および2D6高代謝;および2C19低代謝)に関する薬物プロフィールによれば、セルトラリン、ベンラファキシン、ブプロピオンおよびフルオキセチンは使用が許容され、ミルタザピン、フルボキサミン、ノルトリプチリン、シタロプラム、エスシタロプラム、イミプラミン、アミトリプチリンおよびパロキセチンは注意して使用することができることが示される。
【0123】
7番目の患者の遺伝子型(HTR2A TT/TC; 5HTTR l/s; 1A2、3A4および2C19高代謝;および2D6超高速代謝)に関連する薬物プロフィールによれば、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオンおよびエスシタロプラムは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用することができ、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきであることが示される。
【0124】
8番目の患者の遺伝子型(HTR2A TT/TC; 5HTTR l/l; 1A2、3A4および2C19高代謝;および2D6中間代謝)に関連する薬物プロフィールによれば、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオン、エスシタロプラム、セルトラリンおよびミルタザピンは使用が許容され、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきであることが示される。
【0125】
9番目の患者の遺伝子型(HTR2A TT/TC; 5HTTR l/s;ならびに1A2、3A4、2C19および2D6高代謝)に関連する薬物プロフィールによれば、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオン、エスシタロプラム、セルトラリン、ミルタザピン、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは使用が許容されることが示される。
【0126】
10番目の患者の遺伝子型(HTR2A TT/TC; 5HTTR l/s; 1A2、3A4および2C19高代謝;および2D6低代謝)に関連する薬物プロフィールによれば、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオンおよびエスシタロプラムは使用が許容され、セルトラリンおよびミルタザピンは注意して使用すべきであり、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファキシン、アミトリプチリン、イミプラミンおよびノルトリプチリンは、回避すべきであり、または注意し厳重に監視しながら使用すべきであることが示される。
【0127】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明に関連して説明したが、上述の記述は、説明のためのものであって、添付した特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点および改変も以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、一実施形態によるコンピュータシステム100のブロック図である。
【図2】図2は、患者に対して薬物を選択するのに使用されるデータベースを構築する方法200のフローチャートである。
【図3】図3は、患者に対して薬物を選択する方法300のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して向精神薬を選択する方法であって、
(a) 少なくとも3種類のチトクロムP450遺伝子およびセロトニントランスポーター遺伝子を含む1パネルの遺伝子について前記患者の遺伝子型を提供するステップと、
(b) 前記遺伝子型に基づいて前記向精神薬を選択するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも3種類のチトクロムP450遺伝子がCYP2D6、1A2および2C19をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の遺伝子型を提供するステップが、前記患者がCYP1A2*1Aまたは1A2*3対立遺伝子、CYP2C19*1A、2C19*1Bまたは2C19*2A対立遺伝子、およびCYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12または2D6*17対立遺伝子を含むかどうかを判定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パネルが4種類のチトクロムP450遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記4種類のチトクロムP450遺伝子がCYP2D6、2C19、3A4および1A2である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の遺伝子型を提供するステップが、前記患者がCYP2D6*2、2D6*3、2D6*4、2D6*10または2D6*17対立遺伝子、CYP2C19*2A、2C19*2B、2C19*3、2C19*4、2C19*5A、2C19*5B、2C19*6、2C19*7または2C19*8対立遺伝子、CYP3A4*1B、3A4*2、3A4*5、3A4*6、3A4*12、3A4*13、3A4*15A、3A4*17、3A4*18A対立遺伝子、およびCYP1A2*1F対立遺伝子を含むかどうかを判定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パネルが5種類のチトクロムP450遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記5種類のチトクロムP450遺伝子がCYP1A1、1A2、2D6、2C19および3A4である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者の遺伝子型を提供するステップが、前記患者がCYP1A1*1A、1A1*2、1A1*3または1A1*4対立遺伝子、CYP1A2*1Aまたは1A2*3対立遺伝子、CYP2C19*1A、2C19*1Bまたは2C19*2A対立遺伝子、CYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12、2D6*17または2D6*35対立遺伝子、およびCYP3A4*1Aまたは3A4*1B対立遺伝子を含むかどうかを判定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
遺伝子の前記パネルがさらにドーパミントランスポーター遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記パネルが、さらに、複数のドーパミン受容体遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ドーパミン受容体遺伝子がドーパミン受容体D1、D2、D3、D4、D5およびD6をコードする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パネルが、さらに、セロトニン受容体遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記セロトニン受容体遺伝子がセロトニン受容体1A、1B、1D、2Aまたは2Cをコードする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記セロトニン受容体遺伝子がセロトニン受容体2Aをコードする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記パネルが、さらに、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記パネルが少なくとも10種類のチトクロムP450遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも10種類のチトクロムP450遺伝子が、CYP1A1、1A2、1B1、2A6、2B6、2C8、2C9、2C18、2C19、2D6、2E1、3A4および3A5である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者の遺伝子型を提供するステップが、前記患者がCYP1A1*1A、1A1*2、1A1*3または1A1*4対立遺伝子;1A2*1Aまたは1A2*3対立遺伝子;CYP1B1*1、1B1*2、1B1*3、1B1*4、1B1*11、1B1*14、1B1*18、1B1*19、1B1*20または1B1*25対立遺伝子;CYP2A6*1A、2A6*1B、2A6*2または2A6*5対立遺伝子;CYP2B6*1、2B6*2、2B6*3、2B6*4、2B6*5、2B6*6または2B6*7対立遺伝子;CYP2C8*1A、2C8*1B、2C8*1C、2C8*2、2C8*3または2C8*4対立遺伝子;CYP2C9*1、2C9*2、2C9*3または2C9*5対立遺伝子;CYP2C18*m1または2C18*m2対立遺伝子;CYP2C19*1A、2C19*1Bまたは2C19*2A対立遺伝子;CYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12、2D6*17または2D6*35対立遺伝子;CYP2E1*1A、2E1*1C、2E1*1D、2E1*2、2E1*4、2E1*5または2E1*7対立遺伝子;CYP3A4*1Aまたは3A4*1B対立遺伝子;およびCYP3A5*1A、3A5*3、3A5*5または3A5*6対立遺伝子を含むかどうかを判定することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記パネルが、さらに、トリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記向精神薬が抗うつ薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記向精神薬が抗精神病薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記向精神薬が抗不安鎮静薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記向精神薬が気分安定薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
遺伝子の前記パネルが、CYP2D6、2C19、3A4および1A2遺伝子、セロトニントランスポーター遺伝子およびセロトニン受容体2A遺伝子である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記向精神薬を選択するステップが、
(a) 前記チトクロムP450遺伝子の遺伝子型を、各前記チトクロムP450遺伝子によってコードされる各チトクロムP450酵素が前記向精神薬を代謝する能力と相関させることと、
(b) 前記セロトニントランスポーター遺伝子および前記セロトニン受容体2A遺伝子の遺伝子型を、前記向精神薬に対する前記患者の応答能と相関させることと、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
基材を含む製品であって、前記基材が複数の別個の領域を含み、各前記領域が異なる核酸分子集団を含み、前記異なる核酸分子集団が、CYP1A2*1Aおよび1A2*3対立遺伝子;CYP2C19*1A、2C19*1Bおよび2C19*2A対立遺伝子;CYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12、2D6*17および2D6*35対立遺伝子;CYP3A4*1Aおよび3A4*1B対立遺伝子;セロトニン受容体2A C/T、T/T、C/C対立遺伝子;ならびに5HTTプロモーター反復対立遺伝子およびエキソン2可変反復対立遺伝子を検出するための核酸分子を独立に含む製品。
【請求項28】
前記核酸分子集団が、さらに、CYP1A1*1A、1A1*2、1A1*3および1A1*4対立遺伝子を検出するための核酸分子を含む、請求項27に記載の製品。
【請求項29】
前記核酸分子集団が、さらに、DAT1 40 bp VNTRおよび10回反復対立遺伝子を検出するための核酸分子を含む、請求項27に記載の製品。
【請求項30】
前記核酸分子集団が、さらに、CYP1B1*1、1B1*2、1B1*3、1B1*4、1B1*11、1B1*14、1B1*18、1B1*19、1B1*20および1B1*25対立遺伝子、CYP2A6*1A、2A6*1B、2A6*2および2A6*5対立遺伝子、CYP2B6*1、2B6*2、2B6*3、2B6*4、2B6*5、2B6*6および2B6*7対立遺伝子、CYP2C8*1A、2C8*1B、2C8*1C、2C8*2、2C8*3および2C8*4対立遺伝子、CYP2C9*1、2C9*2、2C9*3および2C9*5対立遺伝子、CYP2C18*m1および2C18*m2対立遺伝子、CYP2C19*1A、2C19*1Bおよび2C19*2A対立遺伝子、CYP2E1*1A、2E1*1C、2E1*1D、2E1*2、2E1*4、2E1*5および2E1*7対立遺伝子、ならびにCYP3A5*1A、3A5*3、3A5*5および3A5*6対立遺伝子を検出するための核酸分子を含む、請求項27に記載の製品。
【請求項31】
前記集団が、さらに、TPH A218C、A779C、G5806T、A6526Gおよび(CT)m(CA)n(CT)p対立遺伝子を検出するための核酸分子を含む、請求項27に記載の製品。
【請求項32】
患者に対する薬物を選択するのに使用されるデータベースを構築する方法であって、
(a) コンピュータシステムにおいて、1パネルの遺伝子に対する複数の遺伝子型を受け取るステップと、
(b) 前記遺伝子型に基づいて指定される複数の薬物プロフィールを受け取るステップと、
(c) 各薬物プロフィールが前記遺伝子型の1種類に関連するように、前記複数の遺伝子型と前記薬物プロフィールを保存するステップと、
を含む方法。
【請求項33】
少なくとも1つの薬物プロフィールによって薬物が特定される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記薬物が、前記薬物プロフィールに含まれる複数のカテゴリーの1つに入る、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
各カテゴリーが、安全に使用できる薬物、注意して使用すべき薬物、使用したときに厳重に監視すべき薬物、回避すべき薬物、およびそれらの組み合せからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記薬物プロフィールによって、前記患者の遺伝子型に対する薬物候補の範囲が特定される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
実行されたときにプロセッサにオペレーションを実施させる実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記オペレーションが、
(a) 1パネルの遺伝子に対する複数の遺伝子型を受け取り、
(b) 前記遺伝子型に基づいて指定される複数の薬物プロフィールを受け取り、
(c) 各薬物プロフィールが、前記遺伝子型の1種類に関連するように前記遺伝子型と前記薬物プロフィールを保存する、
ことを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項38】
患者に対する薬物を選択する方法であって、
(a) コンピュータシステムにおいて1パネルの遺伝子に対する患者の遺伝子型を受け取るステップと、
(b) 遺伝子型に関連する複数の薬物プロフィールを含むデータベースにおいて、前記患者の遺伝子型に関連する薬物プロフィールを特定するステップと、
(c) 前記患者の遺伝子型を受け取るステップに応答して、前記特定された薬物プロフィールを出力するステップと、
を含む方法。
【請求項39】
使用者が、前記患者の遺伝子型を前記コンピュータシステムに入力する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記患者の遺伝子型が、患者の遺伝子型を決定するのに使用される装置から直接受け取られる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記特定された薬物プロフィールが、いくつかの薬物の順位を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記順位が特異的コファクターに基づく、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記特定された薬物プロフィールを出力する前に、前記順位を調節するステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記順位が、前記患者が有する遺伝子型多型を受け取ることに基づいて調節される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記順位が、前記患者に関係する臨床反応を受け取ることに基づいて調節される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記臨床反応が患者の家族によるものである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
実行されたときにプロセッサにオペレーションを実施させる実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記オペレーションが、
(a) 1パネルの遺伝子に対する患者の遺伝子型を受け取り、
(b) 遺伝子型に関連する複数の薬物プロフィールを含むデータベースにおいて、前記患者の遺伝子型に関連する薬物プロフィールを特定し、
(c) 前記患者の遺伝子型を受け取るステップに応答して、前記特定された薬物プロフィールを出力する、
ことを含む、コンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−525154(P2007−525154A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503753(P2006−503753)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/005113
【国際公開番号】WO2004/074456
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(598091963)マヨ ファウンデーション フォー メディカル エデュケーション アンド リサーチ (17)
【Fターム(参考)】