説明

薬物貯留体インプラント設計及び植え込みの方法

【解決手段】 本発明は、治療薬を被術者に最適に送達するための新規な薬物貯留体インプラント設計に関する。本発明は、1つ又は複数の治療薬を狙い打ち式に送達し、最終的には急性又は慢性の痛みを引き起こすことになる炎症反応を阻止することによって、神経筋又は骨格の損傷又は炎症に伴う痛みを緩和するための方法を提供している。制御され方向決めされた送達が、治療薬を備えている薬物貯留体インプラントによって提供されており、このインプラントは、その植え込みをやり易く、そして、それらが所望の組織場所から移動するのを最小限にすることにより、しかも、正常な関節及び軟組織の運動を妨害すること無しに、治療薬を所望の場所に送達できるように特別に設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療薬を被術者に最適に送達するための薬物貯留体インプラント設計に広範に関係する。本発明の具体的な適用では、構成体には、疾病又は傷害後に急性又は慢性の痛み及びそれ以上の組織損傷を招く恐れのある炎症反応を阻止又は無くすために、抗炎症薬及び/又は成長因子を最適に送達するための新規な薬物貯留体インプラント設計が含まれている。
【背景技術】
【0002】
現在の痛み及び/又は炎症を治療するための取り組みには、治療薬の全身的な送達が関与している。抗炎症薬は、感染又は傷害の後に続く炎症性カスケード早期に現れる腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)を標的とする。それは、単核細胞とマクロファージとTリンパ球により作り出される。TNF−αは、その主な作用を、単核細胞、滑膜マクロファージ、線維芽細胞、軟骨細胞、及び内皮細胞に対して発揮し、前炎症性サイトカイン及びケモカインの合成を促す。それは、顆粒球を活性化させ、MHCクラスII表出を増加させる。それは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の分泌を促進し、軟骨マトリックス崩壊を招く原因となる。TNF−αは、炎症性カスケードを開始させ、また、炎症を起こしている又は傷ついた組織に密に近接する場所で増加することが分かっていることから、このTNF−αを阻害することが、痛み治療の目標である。Pro−TNF−αは、原形質膜に表出し、細胞外領域で分裂する。
【0003】
生物活性には三量体化が必要である。TNF−αは、2つの受容体(TNFR)を介して活性化し、その内のタイプ受容体(p60、p55、CD120a)は、殆どの細胞種類に構造的に表出し、タイプII受容体(p80、p75、CD120b)は誘発性である。よく知られているTNF−α阻害薬は、主に、TNF−αがその受容体に結合するのを阻止する。現在、TNF阻害薬は大きく2つのクラスに分けられ、即ち、1)TNF−αがその2つの細胞付随信号伝達受容体(p55及びp75)に結合することを防止する、TNF−αに対するモンクローナル抗体と、2)免疫グロブリン(Ig)Fc断片と結合することによって2量体化されたp55又はp75TNFRの単量体の可溶形態である。それらIgは、強い親和力でTNF−αに結合し、TNF−αがその細胞付随受容体に結合するのを防ぐ。
【0004】
TNF阻害薬は、従って、リウマチ様関接炎の様な、痛みを引き起こす可能性のある整形外科系及び神経筋系の疾病又は傷害の治療に使用するために開発された。
現在、治療薬は、変性、傷害、感染、悪性腫瘍、又は発育性奇形に関係する骨及び軟骨関連の欠陥を治療するために、全身的に送達されている。現在使用されているTNF阻害薬は、静脈内注射及び皮下注射により全身的に投与されるのが一般的であるが、抗TNF療法には、それら療法で通例になっている投与量の多い全身投与に伴う副作用がある。それら全身的薬物送達システムの重大な欠点は、抗炎症薬は、半減期が短い緩衝液に入れて送達されるため、患者に繰り返し投与する必要があり、結果的に送達システムでは投与量が相対的に多くなり悪影響が出る、ということである。不幸にも、それでは、組織を通して目標部位に進めることができる薬剤の量は限られてしまう。この方法は、患者の必要に応えるには不適切である。抗TNF療法は、通常、長期にわたって必要であるため、反復的な注射が必要になる可能性が高い。また、抗TNF薬剤には、時には注射部位に痛みと反応が発現することもある。最近は、患者の疾病を治療するための容認できるインプラントと方法を開発する試みが数多く行われている。
【0005】
米国特許第6,203、813号には、患者に皮下投与されるアヘン系拮抗薬インプラント小丸薬が開示されている。同開示によれば、皮下インプラント小丸薬は、患者体内にアヘン系拮抗薬を放出し、多くの添加薬物の作用を効果的に阻害して、患者体内の薬物解毒に対処する。皮下インプラントは、患者の組織内で実質的に不動化するのではなく、皮膚の下を自由に動き回る。この取り組み方法の別の欠点は、治療薬の送達が、一般的な全身的循環器系を介して行われるということであり、即ち、治療薬は患部に局所的に送達されるわけではない。
【0006】
米国特許第6,735,475号には、少なくとも2つの電極を有する小型の植え込み可能な刺激装置が開示されており、同装置は、頭痛及び/又は顔面痛の少なくとも部分的な原因となっている神経構造に隣接して電極を留置できるほどに小型化されている。このインプラントは、特定の組織の電気的刺激を介して作動するが、装置の一部として治療薬成分は含んでおらず、ましてや、治療薬を所望の組織に送達することには関与しない。米国特許第6,735,475号には、頭痛及び/又は顔面痛を治療するための各種インプラントが記載されているが、その内のどれ一つとして、治療薬を患者の所望の組織に導入するのに適したものはない。
【0007】
米国特許出願公開第20040064193号には、組織を再生するために、選択された場所に配備するためのコラーゲン及び/又は他の生体吸収性材料を備えているインプラントが開示されている。この開示によれば、インプラントは、合成組織代用材と、このインプラントを配備するための方法とシステムを備えている。米国特許出願公開第20040064193号には、組織を再生するための各種インプラントが記載されているが、その内のどれ一つとして、治療薬を患者の所望の組織に導入するのに適したものはない。
【0008】
米国特許出願公開第20050074481号には、骨、軟骨、及び軟組織の空隙の治癒を促すための多価電解質複合体を備えている植え込み可能な装置が開示されている。この開示によれば、インプラントは、生体内で、種々の組織の又は均質的な病変部において組織細胞の生体内培養を行う。米国特許出願公開第20050074481号には、骨、軟骨、及び軟組織の空隙の治癒を促すための各種インプラントが記載されているが、その内のどれ一つとして、治療薬を患者の所望の組織に導入するのに適したものはない
米国特許出願公開第20050177118号には、骨、軟骨、及び軟組織の空隙の治癒を促すための多価電解質複合体を備えている植え込み可能な装置が開示されている。この開示によれば、インプラントは、生体内で、種々の組織の又は均質的な病変部において組織細胞の生体内培養を行うか、又は1つ又は複数の治療薬の患者への非全身的送達を行う。このインプラントは、装置の一部として電気的構成要素を提供しているが、装置の一部として治療薬成分は含んでおらず、ましてや、治療薬を所望の組織に送達することには関与しない。
【0009】
米国特許出願公開第20050152949号には、関節内薬物送達の方法が開示されており、この方法は、滑膜関節の軟骨下の骨内に取り付け用の帯域を選択する段階と、その取り付け用帯域に薬物放出装置を取り付ける段階から成り、この薬物放出装置は、取り付け帯域に取り付けることができる基部と、徐放性薬物担体と、薬物を備えており、この装置は、装置が薬物を滑膜関節の滑液中に放出し、且つ滑液の掻き混ぜによって薬物放出装置からの薬物の溶出が促されるように配置される、という方法である。それらインプラントの1つの欠点は、インプラントが滑膜関節の骨自体に固定して取り付けられることである。それらインプラントの別の欠点は、対象とされる患者の多くはすでに痛みと炎症に悩まされており、装置を骨に植え込む際には更に苦痛を被り、骨増殖体が形成される可能性もあるということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当技術分野において最近達成された進歩にもかかわらず、炎症及び痛みを治療し防止するためのTNF阻害薬の様な治療薬を、外傷部位又は炎症部位の様な目標部位に、又はその直ぐ近くに、より長期に亘って送達させることができる、狙い撃ち式送達のための改良された装置、方法、及びシステムがすぐにも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、又は脊柱管を取り囲んでいる軟組織への植え込みと保持がし易くなる物理的構造と、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、又は脊柱管を取り囲んでいる軟組織、筋肉、腱、靭帯、又は軟骨に、薬剤を狙い撃ち式に送達する目的で濃度勾配を作り出す治療薬と、を備えている薬物貯留体インプラントを提供することにより、上記の必要性を満たす。
【0012】
本発明の1つの態様は、抗炎症剤又は同化を促進する化合物を椎間円板又は関節動作関節に送達するために、貯留体を使用することを提示しているが、それはこれまでに開示されていないものである。本発明の別の態様は、薬物貯留体を円板又は関節嚢の中に、組織の崩壊を最小限にし、且つ正常な関節運動への干渉を最小限にしながら、挿入する特定の設計及び方法を提供している。本発明の方法、システム、及び試薬は、貯留体が、炎症を起こしている組織から離れて他所へ移動するのを防止すると共に、薬物のより均一な分配を可能にする。
【0013】
本発明の1つの態様は、痛み及び/又は炎症を軽減するための方法を提供しており、この方法は、治療を必要とする被術者の目標部位に、1つ又は複数の治療薬を含んでいる有効量の医薬組成物を投与する段階から成り、この方法では、1つ又はそれ以上の治療薬は、薬物貯留体インプラントによって投与される。1つの実施形態では、薬物貯留体インプラントは、治療薬を保持する本体と、目標部位から本体が移動するのを防止するためにこの本体から延びている錨着システムを備えている。
【0014】
本発明の1つの態様は、中実の貯留体を提供しており、この貯留体では、治療薬はインプラント内で凍結乾燥形態になっていて、有効治療量の薬剤が所望の場所の中へと長期にわたり、例えば最長6カ月に及んで、ゆっくりと放出される。
【0015】
本発明を実施する場合、薬物貯留体インプラントは、被術者の目標部位又はその付近に植え込まれる。限定するわけではないが、その様な部位の例を挙げると、炎症を起こしている神経、滑膜関節、又は脊椎部位、具体的には脊椎円板空間の様な脊椎円板部位、脊柱管、又は周辺の軟組織がある。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、薬物貯留体インプラント設計は、最適臨床効果を目指して、所望の解剖学的場所へのインプラント植え込み及び保持をやり易くする物理的特性を提供している。本発明の1つの実施形態では、薬物貯留体設計は、治療薬が装填されたロッド形状のインプラントである。本発明の1つの態様は、植え込み後の患者の組織内でのインプラントの移動を最小限にする小さい逆棘を備えたロッド形状のインプラントを提供している。
【0017】
本発明は、外科医が、薬物貯留体インプラントを、治療を必要とする被術者の目標部位に、最適効率で送達することを可能にする方法、システム、及び試薬を提供している。本発明の1つの実施形態では、インプラントは、「後退退出」又は重大な組織の中への前進移動が制限されるように設計されている。本発明の別の実施形態では、インプラントは、炎症を起こしている神経根の椎孔空間に隣接する軟組織内に、その様な炎症によって引き起こされる坐骨神経痛及び/又は背痛を緩和するために配置される。本発明の代わりの実施形態は、円板空間の中に挿入されるロッド貯留体インプラントを提供しており、この実施形態では、インプラントは逆棘によって定位置に配置される。本発明のこの実施形態では、ロッド貯留体は、隣接する組織面を利用することによってロッドを定位置に配置する作り付けのキャップ又は「ストッパ」を更に備えており、これによって、ロッドの活動端が、炎症を起こしている組織の或る領域の中へ飛び出して、例えば抗炎症薬である治療薬を溶出することができるようにしている。本発明の別の実施形態では、薬物貯留体インプラントは膝関節内に配置され、この実施形態では、ロッドのキャップは膝嚢によって定位置に配置され、抗炎症薬の様な治療薬を、膝関節滑液中に溶出する。本発明の別の実施形態は、薬物貯留体インプラントを患者の肩関節、股関節、他の関節又は脊椎に配置することを行っている。
【0018】
1つの実施形態では、1つ又は複数の治療薬の狙い撃ち式送達システムは、好都合にもカテーテルである。別の実施形態では、狙い撃ち式送達システムは、シリンジである。
本発明の1つの方法では、狙い撃ち送達システムは、カテーテルを目標部位又はその付近に挿入することによって局所的に投与される薬物貯留体インプラントシステムを備えており、このカテーテルは、近位端と遠位端を有し、遠位端には現場で治療薬を送り込むための開口部があり、近位端は医薬送出ポンプに流体接続されている。例えば、カテーテルの近位端は、治療薬を、目標部位の10cm以内、更に望ましくは目標部位の5cm以内、なお一層望ましくは目標部位の3cm以内に送達することができる。本発明の様々な実施形態では、治療薬は、目標部位に、目標部位に隣接して、又は目標部位から約0cm乃至目標部位から約10cmのところに、送達されるが、それら範囲内の距離であれば目標部位からどれだけでもよい。
【0019】
本発明のインプラントを採用する場合、例えば、治療薬がTNF−α受容体阻害薬である場合、この治療薬はTNF−αによって仲介される炎症を阻止することになる。適した治療薬としては、限定するわけではないが、可溶性腫瘍壊死因子α受容体、ペグ化可溶性腫瘍壊死因子α受容体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、COX−2阻害薬、TAPIの様なメタロプロテアーゼ阻害薬、グルタミン酸塩拮抗薬、グリア細胞由来向神経因子(GDNF)、B2受容体拮抗薬、P物質受容体(NK1)拮抗薬、下流調節エレメント拮抗性モジュレーター(DREAM)、iNOS、テトロドトキシン(TTX)抵抗性Na+チャネル受容体サブタイプPN3及びSNS2の阻害薬、IL−1、IL−8、及びIL−10の様なインターロイキンの阻害薬、TNF結合タンパク質、優性ネガティブTNF変異体、Nanobodies(登録商標)、キナーゼ阻害薬、及びそれらの組合せが挙げられる。他の適した治療薬としては、限定するわけではないが、アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、ペグスネルセプト(PEG sTNF−R1)、オネルセプト、Kineret(登録商標)、sTNF−R1、CDP−870、CDP−571、CNI−1493、RDP58、ISIS104838、1→3−β−D−グルカン、Lenercept、PEG−sTNFRII Fcムテイン、D2E7、アフェリモマブ、AMG108、6−メトキシ−2−酢酸ナフチル又はベータメタゾン、カプサイシン、シバミド、TNFRc、ISIS2303及びGI129471、インテグリン拮抗薬、アルファ−4ベータ−7インテグリン拮抗薬、細胞付着阻害薬、インターフェロンガンマ拮抗薬、CTLA4−Ig作用薬/拮抗薬(BMS−188667)、CD40リガンド拮抗薬、ヒト化抗IL−6mAb(MRA、トシリズマブ、中外製薬)、HMGB−1mAb(Critical Therapeutic Inc.,社)抗−IL2R抗体(ダクリズマブ、basilicimab)、ABX(抗IL−8抗体)、組換えヒトIL−10、HuMax IL−15(抗IL−15抗体)、及びそれらの組合せが挙げられる。更に他の治療薬としては、限定するわけではないが、clonidenを含むグルココルチコイドの様なNFカッパB阻害薬;サリチラート、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、ケトプロフェン、フェナメート(メフェナ酸)、メクロフェナム酸、エノール酸、ピロキシカム、メロキシカム、ナブメトン、セレコキシブ、エトドラク、ニメスリド、アパゾン、金、スリンダク、及びテポキサリンの様な非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID);ジチオカルバマートやスルファサラジン[2−ヒドロキシ−5−[−4−[C2−ピリジニルアミノ]スルホニル]アゾ]安息香酸]など他の化合物の様な抗酸化剤;及びフルオシノロン、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、及びフルチカゾンの様なステロイド剤が挙げられる。或る特定の実施形態では、治療薬は骨誘導因子である。適した骨誘導因子としては、限定するわけではないが、骨形態形成タンパク質、成長分化因子又はその生物活性断片又は変異体、LIM鉱化タンパク質又はその生物活性断片又は変異体、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0020】
また、薬物貯留体インプラント内の1つ又は複数の治療薬を、徐放性医薬組成物の中に組み込むことも開示されている。1つの実施形態では、2つ又はそれ以上の治療薬が徐放性医薬組成物の中に組み込まれている。例えば、1つの実施形態では、1つ又はそれ以上の治療薬は、別々に、別個の生体適合性ポリマーの中に組み込まれている。本発明は、更に、骨溶解及び/又は骨吸収を治療するための薬物貯留体インプラントを含んでおり、治療は、1つ又はそれ以上の治療薬を含んでいる医薬組成物の有効量を提供する薬物貯留体インプラントを、治療を必要とする被術者の骨溶解部位に投与することから成り、且つ、医薬組成物の投与は局所的且つ持続的である。1つの実施形態では、1つ又はそれ以上の治療薬は、少なくとも1つの骨誘導因子を含んでいる。適した骨誘導因子の例としては、骨形態形成タンパク質、成長分化因子又はその生物活性断片又は変異体、LIM鉱化タンパク質又はその生物活性断片又は変異体、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0021】
更に別の実施形態では、骨腫瘍に伴う痛みを緩和するための方法が提供されており、この方法は、治療を必要とする被術者の腫瘍部位に、有効量の1つ又は複数の治療薬を含んでいる薬物貯留体インプラントを投与することから成り、且つ、組成物の投与は局所的且つ持続的である。この方法では、1つ又はそれ以上の治療薬は、少なくとも1つの骨誘導因子を含んでいる。適した例としては、限定するわけではないが、骨形態形成タンパク質、成長分化因子又はその生物活性断片又は変異体、LIM鉱化タンパク質又はその生物活性断片又は変異体、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0022】
哺乳類である被術者の鎮痛薬を提供するためのシステムも提供されており、このシステムは、少なくとも1つの治療薬を、それを必要とする被術者の目標部位へ、制御され方向決めされたやり方で送達するための貯留体を備えており、この貯留体は、目標部位の炎症を軽減する少なくとも1つの治療薬を含んでいる有効量の組成物を含んでいる。別の実施形態では、治療薬は、更に、放出様式が改変された医薬組成物を含んでいる。システムは、更に、2つ又はそれ以上の治療薬を含んでいてもよい。更に別の実施形態では、貯留体ではなくカテーテルが提供されている。この実施形態では、カテーテルは、近位端と遠位端を有し、遠位端には現場で治療薬を送り込むための開口部があり、近位端は医薬送出ポンプに流体接続されている。別の実施形態では、カテーテルの遠位端は、治療薬を、目標部位の10cm以内に又は更に接近した位置に送達する。別の実施形態では、カテーテルの遠位端は、治療薬を、目標部位の5cm以内に又は更に接近した位置に送達する。このシステムでは、少なくとも1つの治療薬は、TNF−αによって仲介される炎症を阻止するものであってもよい。治療薬の適した例としては、TNF−α受容体阻害薬、例えば、ペグ化された可溶性TNF−α受容体が挙げられる。他の適した治療薬はここに掲載している。このシステムは、更に、治療有効量の少なくとも1つの骨誘導因子を含んでいる。適した骨誘導因子としては、限定するわけではないが、骨形態形成タンパク質、成長分化因子又はその生物活性断片又は変異体、LIM鉱化タンパク質又はその生物活性断片又は変異体、又はそれらの組合せが挙げられる。1つの実施形態では、本発明のシステムは、放出様式が改変された医薬担体を備えている貯留体を採用している。
【0023】
本発明は、更に、目標部位の炎症を軽減する1つ又は複数の治療薬を含んでいる組成物を、痛みを軽減する医薬品の製造に使用することを含んでおり、そこでは、治療を必要とする被術者の目標部位への有効量の組成物の投与は、局所的且つ制御されたやり方で行われる。1つの実施形態では、本発明は、痛みを緩和し骨溶解に伴う骨の損失を制限するための貯留体であり、治療を必要とする被術者の骨溶解部位への組成物の投与は、局所的且つ制御されたやり方で行われる。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、目標部位の炎症を軽くする1つ又は複数の治療薬を含んでいる組成物を、骨腫瘍に伴う痛みを緩和するための医薬品の製造に使用することを含んでおり、そこでは、治療を必要とする被術者の骨腫瘍部位への組成物の投与は、局所的且つ制御されたやり方で行われる。
【0025】
上に掲載した使用法の何れにおいても、組成物は、徐放性医薬組成物である。
組織壊死及び/又は損傷を遅らせる方法も開示されており、この方法は、治療を必要とする被術者の目標部位に、1つ又は複数の治療薬を含んでいる有効量の医薬組成物を投与することから成り、この方法では、1つ又は複数の治療薬は、医薬組成物の局所的及び徐放的放出を提供する貯留体によって投与される。1つの実施形態では、この貯留体は、被術者の、限定するわけではないが、炎症を起こしている神経又は脊椎部位、例えば脊椎円板又は脊椎円板空間、の様な目標部位又はその付近に植え込まれる。
【0026】
本発明の1つの実施形態は、薬物貯留体インプラント上にX線マーカーを設け、外科医が、患者の組織の中へインプラントを正確に位置決めできるようにしている。その様なX線マーカーの例としては、限定するわけではないが、バリウム、リン酸カルシウム、及び金属ビーズが挙げられる。その様なX線マーカーによって、外科医は、時間経過に伴う組織内のインプラントの移動と分解を追跡することもできるようになる。本発明のこの実施形態では、外科医は、当業者にとって既知である多くの診断的画像化法の何れを使用しても、インプラントを組織内に正確に位置決めすることができる。その様な診断的画像化法としては、例えば、X線撮影又は蛍光透視法が挙げられる。
【0027】
本発明の別の態様は、患者の組織への治療薬の濃度勾配を提供するための薬物貯留体インプラント構成を備えている、方法、システム、及び試薬を提供している。本発明のこの態様では、好適な薬物貯留体インプラントはロッド形状であって、このロッドから約1cm乃至5cm以内に、治療薬の最適治療有効量が提供される。
【0028】
本発明の別の態様は、患者の所望の領域への狙い撃ち式送達のために、TNF阻害薬の様な治療薬が装填された微小球を備えている薬物貯留体インプラント構成を提供している。本発明のこの実施形態では、狙い撃ち式薬物貯留体送達は、例えば、円板空間又は脊柱管又は周辺軟組織、何れかの中に注入することを含め、あらゆる手段で行うことができる。本発明のこの実施形態では、治療薬は、炎症を起こしている組織、例えば、坐骨神経の痛みを引き起こしている神経根、成長して円板の輪の裂け目の中に入り込み背中の痛みを引き起こしている神経線維、又は骨関節炎を患っている膝関節、により接近して送達される。なお、当業者には理解頂けるように、薬物送達装置は、穿孔部位の中への挿入や、シリンジ及び/又はカテーテルによる注入、又はガンを使った強制注入の様な広範囲の様々な方法で送達することができる。
【0029】
本発明の上記及び他の目的及び利点は、ここに記載している説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の原理の理解を促すために、これより図に示している各実施形態を参照してゆくが、説明に際して特定の言語を使用する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定する意図はないものと理解頂きたく、本発明のその様な変更や更なる修正、及びここに示す本発明の原理のその様な他の応用は、本発明が関連する分野の当業者であれば普通に想起されるものと考えている。
【0031】
本発明は、薬物貯留体インプラントを被術者の中に植え込み易くするための、方法、システム、及び試薬を提供しており、治療薬が装填されたインプラント貯留体を植え込むことを含んでいる。本発明の薬物貯留体インプラントは、滑膜関節、脊椎円板空間、脊柱管、又は周辺の軟組織の内部又はその付近に留置及び配置することができるように設計されている。
【0032】
本発明は、更に、直接的且つ制御された送達、即ち、1つ又は複数の炎症部位又は痛みの源に少なくとも1つの治療薬を狙い打ち式に送達すること、を提供することによって、疼痛、特に発生源である神経筋又は骨格の痛み、を軽減し、取り除き、又は処置するための、方法、システム、及び試薬を提供している。治療薬自体は、即効性から持続性までの連続状態を基本としている。一般に、治療薬は、迅速放出から持続放出までの連続状態の範囲で働くことができる医薬組成物の或る成分である。更には、本発明の狙い撃ち式送達システムを介しての上記医薬組成物の送達には、例えば、間隔を空けた迅速及び繰り返し送達又は連続送達が含まれる。送達は、「局所的」「直接的」及び「制御された」ものとなる。
【0033】
本発明の薬物貯留体インプラントは、例えば、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、又は組織の様な、被術者の所望の場所への植え込み及び維持をやり易くする物理的構造と、当該場所に治療薬を狙い撃ち式に送達するために濃度勾配を提供する治療薬と、を備えている。異なる各実施形態では、本発明のインプラントは、インプラントから約1cm乃至約5cm離れた位置に治療薬の最適薬物濃度勾配を提供する。本発明のインプラントは、治療薬を被術者に送達するための挿入カニューレを更に備えている。本発明の1つの態様は、プローブに取り付けられた貯留体を提供しており、この態様では、プローブは、治療薬を被術者に送達する場合、引き抜き機構によって解放される。本発明のインプラントは、被術者の組織内でのインプラントの移動を最小限にするための1つ又は複数の逆棘を更に備えていてもよい。本発明のインプラントは、貯留体を組織膜に又は組織面の間に維持するためのキャップを更に備えていてもよい。
【0034】
本発明の態様は、治療薬が装填された微小球を備えている注入可能薬物貯留体インプラントを提供しており、このインプラントでは、微小球は、滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織の中に注入される。
【0035】
本発明の別の態様は、粘性形態のゲルと治療薬が装填された微小球とを備えている薬物貯留体インプラントを提供しており、この態様では、ゲルと微小球との組合せが、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織の中に位置決めされる。本発明の1つの実施形態では、ゲルは、組織に接触すると凝固する噴霧可能又は注入可能な付着性ゲルである。
【0036】
本発明の1つの態様は、微小球が装填された粘性ゲルが、更に、微小球を、目標部位である炎症を起こしている組織の場所に送達するとと共に、微小球が静脈系脈管構造によって当該領域から持ち去られたり、或いは別に、広く分散しすぎて所望の治療効果を得ることができなくなる、という事態を防ぐというものである。本発明のこの態様では、数時間又は数日後にゲルは吸収され、これにより微小球に治療薬の放出を開始させることができる。微小球は、ゲルから自由になるまで、薬剤の放出を開始しない。よって、微小球は、ゲルには溶けない又は不活性であるが、一旦目標組織に接触すると溶けるか活性化する何かから作られるべきである。ゲルは、被術者組織内で溶解するか分散する何かでなくてはならない。ゲルが数時間乃至数日内に溶解し始めると、微小球は体液に曝され、その成分を放出し始める。ゲルの例としては、ゼラチン、PEG、又はPOEがある。よって、ゲルは、微小球とは異なる材料であってもよいし、同じ材料、即ちPOEであってもよい。ゲルと微小球は、微小球の暴露時間と微小球からの治療薬の放出が最適になるように処方される。
【0037】
本発明は、薬物貯留体の設計を数多く提供している。本発明の1つの態様は、貯留体逆棘を採用した場合で、それら逆棘を、植え込みをやり易くすると共に、貯留体が所望の組織場所から後退し又は追い出されることを防止する1つの方向に向けて配置したものである。本発明の別の態様では、逆棘は、一旦植え込まれたら、何れの方向への動きも防止するように相反する方向に向けて配置してもよい。
【0038】
本発明の別の態様では、逆棘を、固定された突起物であってもよいし、一旦植え込まれた後も偏向させることができる可撓性突起物であってもよいとしている。
本発明の別の態様は、関節嚢貯留体は、キャップと組み合わされた逆棘を有しており、貯留体が、一旦、関節嚢の壁の中に挿入されたら、逆棘が展開し、貯留体はキャップと展開した逆棘によって定位置に保持されるようになっている。本発明のこの態様では、逆棘は貯留体が後退しないにようにし、キャップは貯留体が関節空間にすっぽり入り込んでしまわないようにしている。本発明の別の態様では、貯留体は、治療薬が貯留体の関節空間の滑液の中に突き出ている部分にしか埋め込まれないように設計することができる。本発明のこの態様では、関節が関節運動をした際に、それによって滑液全体に治療薬が配送され易くなる。1つの実施形態では、3乃至6ヶ月後に、貯留体は完全に分解し、もはや関節嚢を横断してはいない。
【0039】
本発明の別の態様では、治療の被術者である炎症を起こしている組織に対比させた貯留体の位置を判定するのを支援するために、貯留体の互いに反対の端に放射線不透過性マーカーが配置されている。本発明のこの態様では、放射線不透過性マーカーは、球形の形状であってもよいし、又は貯留体を取り巻くリングであってもよい。
【0040】
本発明は、関節嚢内にロッド形状の貯留体を使用することを考えており、この場合、貯留体には、貯留体を関節嚢の内側に押し当てて保持するための1つ又は複数の縫合糸が入っている。
【0041】
本発明は、関節嚢組織を貫いて貯留体を挿入し易くすると共に組織の崩壊を最小限にするために、弾丸形状をした先端を有する先細のロッドに整形されている貯留体も提供している。本発明のこの態様では、貯留体には、貯留体を製造する際に生物分解性ロッドの中に埋め込まれた縫合糸が入っている。本発明の1つの実施形態では、縫合糸は、貯留体を関節嚢の内部に隣接して配置し易くするために、ロッド内に戦略的に配置されている。
【0042】
別の実施形態では、鈍プローブを使って関節嚢に非常に小さい孔を開け、次いで、この孔を通して先細ロッドをゆっくりと押し込み、組織をゆっくりと引き離すことで、組織の裂けを最小限にしている。ロッドが完全に挿入されてしまうと、関節嚢の孔はひとりでに閉じる。ロッドに埋め込まれている縫合糸は、嚢内を横断して留置されるので、縫合糸をピンと張って関節嚢の外側に押し当てて結ぶことができ、これにより貯留体を強制的に嚢の内側に押し当てることができる。貯留体を関節嚢の内側に押し当てて維持することで、貯留体が正常な関節運動に干渉するのを防止することができる。
【0043】
様々な実施形態では、縫合糸は、ロッドの端を通して、真ん中で、又はその中間のどこかで、外に出される。縫合糸は、関節嚢を貫いているたった1つの孔を通して、又は2つ以上の孔を通して、外に出される。好適な設計では、縫合糸は、ロッドの両端付近の2つの地点でロッドから外に出され、関節嚢の2つの地点を通される。この設計は、回転すること無く且つ関節運動に干渉する可能性無しに、貯留体は関節嚢の内側に押し付けられて保持されるという利点を提供している。
【0044】
本発明の別の態様は、椎間円板及び関節嚢に使用することを想定して、縫合糸に沿って1列に並べて付けられたビーズ形状の貯留体を含んでいる、幾つかの設計を提供している。本発明のこの態様では、ビーズは、薬物が装填された生物分解性ポリマーであり、縫合糸は、分解性材料又は非分解性材料の何れであってもよい。本発明の1つの実施形態は、縫合糸の先導端に、糸を円板又は関節嚢内に維持するための随意的な針又は逆棘を設けている。本発明の別の態様は、ビーズを通した糸が中に入れられたカニューレを、所望に応じて円板又は関節又は軟組織の何れでもよいが、その内部に挿入し、次いで逆棘を軟組織(例えば、輪)の中に展開させ、ゆっくりとカニューレを後退させると、ビーズ列がカニューレから引き出される、というやり方で糸を植え込むものである。本発明の1つの実施形態は、ビーズの列の先導縁を固定することにより、ビーズは、円板内部で、神経根に沿って、又は関節を横断して、薬剤が要求されている場所に維持され、結果的に薬物のより均一的な配送が得られるというものである。
【0045】
1つの実施形態では、薬物溶出ビーズ貯留体の列は、炎症を起こしている組織の経路に沿って配置されているので、結果的に、薬物のより効果的な分配及びより優れた臨床効果が得られる。例えば、椎間円板の円板ヘルニアの可能性がある部位又は関節嚢に鈍プローブで非常に小さい孔を開けて、この孔を通してカニューレを挿入し、ビーズ列を植え込むようにしてもよい。
【0046】
本発明の別の態様は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、又は脊柱管を取り囲んでいる軟組織に、治療薬を送達するための方法を提供しており、この方法は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織の内部に、中空の貯留部を備えている薬物貯留体インプラントを挿入することから成り、この中空の貯留部は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織に薬剤を狙い撃ち式に送達するために、濃度勾配を提供する治療薬を備えている。本発明の1つの実施形態は、インプラントの約1cm乃至約5cmに広がる最適薬物濃度勾配を提供している。本発明の別の実施形態は、挿入カニューレを使って滑膜関節又は組織へ治療薬を送達するというものである。
【0047】
本発明の別の実施形態は、被術者の組織内でのインプラントの移動を最小限にするための逆棘を更に備え、組織膜に又は組織面の間に貯留体を維持するためのキャップを更に備えている、薬物貯留体インプラントを提供している。
【0048】
本発明の別の態様は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、又は脊柱管を取り囲んでいる軟組織に、治療薬を送達するための方法を提供しており、この方法は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織の内部に、微小球を備えている薬物貯留体インプラントを挿入することから成り、この微小球は、被術者に薬剤を狙い撃ち式に送達するために、濃度勾配を提供する治療薬を備えており、この方法では、微小球は、滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織の中に注入される。
【0049】
本発明の別の態様は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、又は脊柱管を取り囲んでいる軟組織に、治療薬を送達するための方法を提供しており、この方法は、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織の内部に、粘性形態のゲルと治療薬が挿入された微小球を備えている薬物貯留体インプラントを挿入することから成る。ゲルと微小球との組合せが、被術者の滑膜関節、円板空間、脊柱管、及び脊柱管を取り囲んでいる軟組織の中に位置決めされる。本発明の1つの実施形態では、ゲルは、組織に接触すると同時に固まる噴霧可能又は注入可能な付着性ゲルである。
【0050】
本発明の理解を支援することを目的に、以下に非限定的な定義を記載する。
「備える」「備えている」「含む」「含んでいる」「有する」及び「有している」という用語は、包含的に広い意味で使われており、即ち、追加の要素が含まれる場合もあるという意味である。ここで使用されている「〜の様な」「例えば」「即ち」という用語は、非制限的であり、説明のためだけに使われている。「〜を含め」と「限定するわけではないが〜を含め」は、置き換え可能に使用されている。
【0051】
ここで使用する「同化化合物」という用語は、技術的に認知されている用語であり、生体組織において、より単純な物質からより複雑な物質を合成することに関与するあらゆる化合物を指す。
【0052】
「薬物送達装置」という用語は、技術的に認知されている用語であり、薬物を目標の器官又は解剖学上の領域に適用するのに適したあらゆる医療装置を指す。この用語は、装置自体は組成物を含むように策定されていなくとも、目標の器官又は解剖学上の領域に向けて組成物を輸送し又は組成物の点滴注入を行うそれら装置を含む。一例として、組成物を、解剖学上の領域の中へ、又は解剖学上の領域に関連する血管又は他の構造の中へ挿入する針又はカテーテルは、薬物送達装置であると解釈される。別の例として、自身の個体中に組成物が含まれているか表面に組成物がコーティングされているステント又はシャント又はカテーテルは、薬物送達装置であると解釈される。薬物送達装置は、装置の溶解又は装置からの薬物浸出によって薬物を放出する半固体組成物も含む。なお、「植え込む」は、何らかのやり方で関節に取り付けることを包含していることは明白であり、例えば、骨又は軟骨の空洞に植え込むやり方、又は、装置を、骨、腱、又は軟骨に縫合するか別のやり方で付着させるやり方がある。
【0053】
ここに使用する「微小球」という用語は、大きさが約10μm乃至約100μmの概ね球状の粒子を意味する。微小球は、脂質、ポリマー、少なくとも1つの界面活性剤、又はそれらの何らかの組合せが封入された中空空間を備えており、且つ、この中空空間は治療薬を備えている。異なる各実施形態では、微小球は、微粒子気泡とリポソームを含んでいる。
【0054】
ここで使用する「骨誘導」という用語は、多能性間葉幹細胞(MSC)の増殖と分化を促進する能力を指す。軟骨内骨形成において、幹細胞は、軟骨芽細胞及び軟骨細胞に分化し、軟骨性ECMを形成し、これが石灰化して板層骨に作り変えられる。膜内骨形成では、幹細胞は、直接、骨芽細胞に分化し、これが直接機序を介して骨に成る。骨誘導は、骨形成成長因子により促進されるが、ECMタンパク質の中にも、前駆細胞を骨形成表現型に向けて誘導するものがある。
【0055】
ここで使用する「患者」「被術者」又は「宿主」という用語は、治療が施されることになる生体系を指す。生体系には、例えば、個別の細胞、一群の細胞(例えば、細胞培養)、器官、又は組織が含まれる。また、「患者」という用語は、動物類を指し、ヒトを含むが、これに限定されるわけではない。
【0056】
ここで使用する「狙い撃ち式送達システム」という用語は、治療薬を送達するための直接及び局所的投与システムであり、これには、限定するわけではないが、貯留体が含まれ、或いは、インプラント、カテーテル、又はシリンジを、目標部位又はその付近に挿入することによって、局所的に投与されるシステムである。本発明の幾つかの実施形態では、随意的に、カテーテル又はシリンジは、作動的に医薬送出ポンプに接続されている。なお、ポンプは必要に応じ内部又は外部に置かれるものと理解頂きたい。「貯留体」としては、限定するわけではないは、カプセル、微小球、粒子、粘性形態のゲル、被膜、マトリクス、ウェーハ、錠剤、又は他の医薬送達組成物が挙げられる。貯留体は、生物分解性又は非分解性の何れかのバイオポリマーである。
【0057】
「治療有効量」とは、投与した場合、薬剤によって、生物活性の変化、例えば、炎症の阻害、が得られるような量である。一回又は複数回投与として個体へ投与される用量は、薬剤の薬物動態学特性、投与経路、患者の状態と特徴(性別、年齢、体重、健康状態、寸法など)、症状の範囲、併用治療、治療頻度、及び求められる効果を含め様々な要因によって異なる。設定された用量範囲の調整と操作、並びにTNF又はIL−1の阻害の様な個体内の生物活性の変化を判定する試験管内及び生体内の各方法は、当業者が十分に対処できる範囲内である。本発明によれば、治療薬は、代表的には体重比約0.1乃至5000μg/kg又は体重比約1乃至100μg/kgの範囲の量が使用される。体重比約10乃至500μg/kgの量が望ましく、体重比約50乃至250μg/kgの量が更に望ましい。
【0058】
病気を「治療する」又は病気の「治療」という用語は、病気の兆候又は症状を緩和しようとして、或る手順を実行することを指し、この手順は1つ又は複数の薬物を患者(ヒト又はその他)に投与することを含んでいてもよい。緩和は、病気の兆候又は症状が現れる前、並びに現れた後、に発現することもある。而して、「治療する」又は「治療」には、病気を「予防する」又は病気の「予防」が含まれる。加えて、「治療する」又は「治療」には、兆候又は症状の完全な緩和は必要とされず、治癒は必要とされず、具体的には、患者に対し非本質的な効果しかない手順が含まれる。「局所化された」送達は、ここでは、非全体的送達と定義され、この定義では、1つ又は複数の治療薬は、組織内、例えば、神経系の神経根又は脳の或る領域又はそれに密に近接する位置(約10cm以内、又は望ましくは、例えば、約5cm以内)に留置される。「狙い撃ち式送達システム」は、継続的か又は断続的な度合いかの何れかで、痛みに対する必要に応じた或る量の医薬組成物の1つ又は複数の治療薬の送達を提供し、治療薬を標部位に堆積させるものである。
【0059】
ここで使用する「治療薬」という用語は、薬理学的に活性を有する物質であり、例えば、TNF−α及びIL−1の様な前炎症性サイトカインに対して直接及び局所的に作用するモジュレーターなどがあり、限定するわけではないが、可溶性壊死因子α受容体、あらゆるペグ化可溶性壊死因子α受容体、モノクローナル又はポリクローナル抗体又は抗体断片、及びそれらの組み合わせが挙げられる。適した治療薬の例として、受容体拮抗薬、受容体と競って目標分子に結合する分子、抗感作ポリヌクレオチド及び目標タンパク質をエンコードするDNAの転写の阻害薬が挙げられる。適した例としては、限定するわけではないが、アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、ペグスネルセプト(PEGsTNF−R1)、sTNF−R1、CDP−870、CDP−571、CNI−1493、RDP58、ISIS104838、1→3−β−D−グルカン、Lenercept、PEG−sTNFII Fcムテイン、D2E7、アフェリモマブ、及びそれらの組み合わせが挙げられる。それらは、前炎症性分子の放出に対する阻害薬又は拮抗薬としての各々の作用により痛みを軽減する。例えば、それら物質は、プロスタグランジン及びロイコトリエンの下流放出を生じることもしばしばである早期炎症性カスケード期に活動するサイトカイン又は他の分子の表出又は結合を阻止又は拮抗することによって作用する。それら物質は、更に、例えば、神経系又は神経筋系の興奮性分子の侵害受容体への結合を妨害し又は拮抗することにより作用し、というのも、多くの場合、それら受容体は、酸化窒素が媒介する機序によって神経及び周辺組織の炎症又は傷害に対し炎症反応を誘発するからである。それら治療薬としては、例えば、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)の作用に対する阻害薬が挙げられる。研究により、慢性関節炎疾患では、炎症が抑えられたとしても、例えば、軟骨の崩壊が続くことが実証されている。抗TNF剤の様な治療薬は、痛みの源になる炎症を軽減するのみならず、炎症反応に付随する関節崩壊の進行を遅らせることから、例えば関節痛に特に効果を発揮する。従って、本発明によれば、治療薬の局所的狙い撃ち式送達は、組織の壊死及び損傷を低減することができる。
【0060】
炎症は、外傷に対する急性反応のときもあれば、炎症性薬剤の存在に対する慢性反応のときもある。組織が傷つくと、TNF−αが細胞に付着し、それら細胞に炎症を引き起こす他のサイトカインを放出させる。炎症性カスケードの目的は、傷ついた組織の治癒を促進することであるが、組織が一旦治癒しても、炎症過程が必ずしも終わるとは限らない。検査を怠ると、これは周辺組織の崩壊及びそれに伴う慢性的な痛みの原因となる恐れがある。而して、痛みは、それ自体が病態化する恐れがある。即ち、この経路が活性化すると、結果として炎症と痛みが起こる。多くの場合、傷害と炎症と痛みの終わりそうにない悪循環に突入する。この循環が存する症状の例としては、限定するわけではないが、リウマチ様関接炎、骨関節炎、手根管症候群、下背痛、下肢痛、上肢痛、組織痛、及び、頸椎、胸椎、及び/又は腰椎、又は椎間円板、回旋腱板、連接関節、TMJ、腱、靭帯、及び筋肉、の傷害又は修復に伴う痛みが挙げられる。
【0061】
なお、TNFは、その産生を調節する上流の事象に影響を受けると共に、自身も下流の事象に影響を及ぼすと理解頂きたい。症状の治療に対する代わりの取り組み方法は、この既知の事実を活用しており、治療薬は、TNFに加え、上流の分子、下流の分子、及び/又はそれらの組合せに特に狙いを絞って設計されている。その様な取り組み方としては、限定するわけではないが、TNFを直接調節する、キナーゼを調節する、細胞の信号発信を阻害する、二次メッセンジャー系を操作する、キナーゼ活性化信号を調節する、炎症細胞に関与するクラスター指名体を調節する、炎症細胞に関与する他の受容体を調節する、TNF又は経路内の他の標的の転写又は翻訳を妨害する、TNF-α翻訳後効果を調節する、遺伝子抑制を採用する、インターロイキン、例えば、IL−1、IL−6、及びIL−8を調節することが挙げられる。ここで使用する「調整する」は、開始から活動停止までを範囲とし、その範囲には、著しく又は僅かに強化する、又は、著しく又は僅かに阻害する、が含まれる。「阻害する」という用語は、タンパク質の産生又はオリゴヌクレオチド配列の翻訳の様な目標の機能を下げる又は無くす下方調節を含む。例えば、所与の患者の状態は、TNFの様な単一分子を阻害することだけが要求される場合もあれば、或いは、経路の上流及び/又は下流のカスケードの2つ以上の分子を調整することが要求される場合もある。或る特定の実施形態では、TNF−α阻害薬は、脊椎周囲投与で送達した場合、椎間板起因の慢性的な背や脚の痛みを軽減する。
【0062】
他の実施形態では、治療薬は、COX2阻害薬である。シクロオキシゲナーゼ阻害薬は、プロスタグランジンE2(PGE2)の合成を調節すると考えられている酵素の或るクラスである。PGE2は、神経根障害を誘発することで椎間板起因の背痛を増幅する。COX酵素の阻害は、下背痛を軽減させる働きをする。単一の理論に結び付ける意図はないが、COX酵素は、PGE2のレギュレーターであるために、COX2阻害薬は、PGE2産生を低下させることにより下背痛を軽減すると考えられる。Melarange他 (1992a), “Anti-inflammatory and gastroinstestinal effects of nabumetone or its active metabolite, 6MNA (6-methoxy-2-naphtylacetic acid);comparison with indomethacin,” Agents Action., Spec No:C82-3、及びMelarange他 (1992b), “Anti-inflammatory and gastroinstestinal effects of nabumetone or its active metabolite, 6-methoxy-2-naphtylacetic acid(6MNA);Comparative studies with indomethacin,” Dig. Dis. Sci., 37(12):1847-1852に記載されている様に、1つの適したCOX2阻害薬(6−メトキシ−2−ナフチル酢酸)は、細胞培養で、PGE2産生及び局所的炎症を抑制することが示されている。別のPGE阻害薬としては、ベータメタゾンが挙げられる。別の適した治療薬に、メタロプロテアーゼ阻害薬がある。例えば、TAPIは、TNF−αの分裂を妨害するメタロプロテアーゼ阻害薬であり、ひいてはTNF−αの産生を低下させる。
【0063】
更に他の適した治療薬としては、グルタミン酸塩拮抗薬、グリア細胞由来向神経因子(GDNF)、B2受容体拮抗薬、カプサイシン及びシバミドの様なP物質受容体(NK1)拮抗薬、下流調節エレメント拮抗性モジュレーター(DREAM)、iNOS、テトロドトキシン(TTX)抵抗性Na+チャネル受容体サブタイプPN3及びSNS2の阻害薬、IL−1、IL−6、及びIL−8様なインターロイキンの阻害薬、IL−の様な抗炎症性サイトカインが挙げられる。
【0064】
代わりの取り組み方の1つの例では、治療薬はTNF結合タンパク質である。1つの適したこの様な治療薬は、現在、オネルセプトと呼ばれている。オネルセプト、オネルセプト様薬剤、及び誘導体を含む処方は、全て受容可能と考えられる。更に他の適した治療薬としては、優性ネガティブTNF変異体が挙げられる。適した優性ネガティブTNF変異体としては、DN−TNFに限定せず、Steel他(2003), “Inactivation of TNF signaling by rationally designed dominant-negative TNF variants”, Science, 301(5641):1895-1898に記載されているものが挙げられる。更に他の実施形態は、オリゴヌクレオチドエンコーディング阻害薬、エンハンサー、増強因子、中和因子、又は他の修飾因子を送達するために、組換えアデノ付随ウイルス(rAAV)ベクター技術のプラットフォームの使用を含んでいる。例えば、1つの実施形態では、腫瘍壊死因子(TNF−アルファ)の強力な阻害薬であるDNA配列を送達するのに(rAAV)ベクター技術のプラットフォームを使用している。1つの適した阻害薬はTNFR:Fcである。他の治療薬としては、限定するわけではないが、自然発生性又は合成の二本鎖、一本鎖、又はそれらの断片を含む、抗体類が挙げられる。例えば、適した治療薬としては、自然発生的シングルドメイン抗体の最小機能断片と定義されており、Nanobodies(登録商標)(ベルギーGhentのAblynx社)と呼ばれている一本鎖抗体に基づく分子類が挙げられる。
【0065】
代わりのやり方では、キナーゼを阻害し及び/又は細胞信号発信を阻害する治療薬が利用されている。この分類に入る治療法は、二次メッセンジャー系を操作することができる。キナーゼ活性信号は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ及びマイトジェン活性タンパク質キナーゼ(MAPK)、p38MAPK、Src、及びタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)が関与するものを含め、下流の効果器を倍増させる。1つの例として、TNFα効果の信号発信がMAPKの下流活性であることが挙げられる。キナーゼ阻害薬の例としては、グリーベック、ハーセプチン、イレッサ、イマチニブ(STI571)、ハービマイシンA、チルホスチン47、エルブデンプンン、ジェニステイン、スタウロスポリン、PD98059、SB203580、CNI−1493、VX50/702(Vertex/キッセイ薬品)、SB203580、BIRB796(Boehringer Ingelheim)、GlaxoP38MAPキナーゼ阻害薬、RWJ6757(J&J)、UO126、Gd、SCIO−469(Scios)、RO3201195(Roche)、Semipimod(Cytokine PharmaSciences)、又は上記薬物の誘導体が挙げられる。本発明の更に別の実施形態は、急性の痛みにおける炎症性カスケードのTNF−α又は他のタンパク質の転写又は翻訳を妨害する治療薬の使用を提供している。
【0066】
本発明では、TNF−α翻訳後効果を阻害する治療薬は有用である。例えば、TNF−α信号発信カスケードが始まると、数々の因子の産生が活発化し、それら因子は、傍分泌又は自己分泌式に活動し、TNF−α並びに他の前炎症性作用因子(例えば、IL−1、IL−6、IL−8、HMG−B1)の更なる産生を誘発する。TNF−αび下流の信号に作用する細胞外TNF−α修飾治療薬は、全身的炎症性疾患の治療に有用である。それら治療薬の中には、他の効果器分子を妨害するように設計されたものもあれば、インテグリン及び細胞付着分子など、それらの産生を更に誘導するのに必要な細胞の相互作用を妨害するものもある。
【0067】
適した治療薬としては、インテグリン拮抗薬、アルファ−4ベータ−7インテグリン拮抗薬、細胞付着阻害薬、インターフェロンガンマ拮抗薬、CTLA4−Ig作用薬/拮抗薬(BMS−188667)、CD40リガンド拮抗薬、ヒト化抗IL−6mAb(MRA、トシリズマブ、中外製薬)、HMGB−1mAb(Critical Therapeutic Inc.,)抗−IL2R抗体(ダクリズマブ、basilicimab)、ABX(抗IL−8抗体)、組換えヒトIL−10、HuMax IL−15(抗IL−15抗体)、が挙げられる。
【0068】
他の適した治療薬としては、IL−1阻害薬が挙げられる。インターロイキン−1は、動作がTNF−αに似た前炎症性サイトカインである。例えば、このたんぱく質の或る種の阻害薬は、TNF−αを阻害するために開発されたものに似ている。1つのその様な例として、ヒトインターロイキン−1受容体拮抗薬(IL−1Ra)の組換え非グリコシル化形態であるKineret(登録商標)(アナキンラ)がある。別の適した治療薬に、IL−1の動作を妨害するモノクローナル抗体であるAMG108がある。
【0069】
上で説明したように、痛みは、それ自体が病態化する恐れがある。この事実が当てはまる1つの特定の領域は、下背と両脚である。例えば、椎間板ヘルニアは、背痛と坐骨神経症の主な原因である。坐骨神経症状、若しくは、神経根障害は、両脚の裏側を下って広がっていく痛みであって、坐骨神経の根が刺激されることによって引き起こされると一般に考えられている。背痛は、脊髄の狭窄によっても引き起こされ、隣接する神経に対する加圧に伴う脊柱管内の骨組織又は軟組織の過成長を特徴とする。椎骨間の面関節、腫瘍、感染、骨折、及び周辺組織の炎症も、背痛を引き起こすことがある。
【0070】
椎骨を傷つける力は、屈伸、裂創、虚血、又は圧迫を介して脊髄を痛める恐れがある。癌は、脊椎に転移すると、骨の破壊と脊髄の圧迫を生じる。長い間継続的に脚に圧力が加えられると、座滅外傷が生じる。以前の脊椎外科処置が脊椎金物類の存在を伴うものである場合は、脊椎が硬直しており、更なる傷害を被り易い。上記全ての状況には、傷害に対する炎症反応が見られる。この反応は、激しく、そして慢性化することもしばしばある、痛みの源になる恐れがある。本発明が、反応の活性化体の少なくとも1つの阻害薬を提供することによって解決を図ろうとしているのはこの反応である。阻害薬又は阻害薬の組合せは、炎症の源に、又はこれに密に近接する位置に提供され、規則的な間隔で継続的に送達するのに手軽に利用できる徐放用量で、又は炎症反応を制御するのに必要とされる用量で供与される。この用量は、例えば、制御された投与システムによって供与される。グルタミン酸塩及びアスパラギン酸塩の様な興奮性アミノ酸は、神経から起こる痛みを発現させる役目を果たすことを示している。例えば、グルタミン酸塩受容体がブロックされたハツカネズミは、痛みに対する反応が低減することを示している。グルタミン酸塩は、受容体の2大分類クラス、即ち、変力性グルタミン酸塩受容体(リガンド依存性チャネル)と代謝調節型受容体(Gタンパク質結合型受容体)に結合する。脊髄の変力性受容体としては、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサドールプロピオネート(AMPA)受容体、及びカイナイト受容体が挙げられる。本発明の方法では、1つ又は複数の治療薬としては、例えば、グルタミン酸塩の、NMDA受容体、AMPA受容体、及び/又はカイナイ受容体への結合に対する拮抗薬又は阻害薬が挙げられる。
【0071】
例えば、インターロイキン−1受容体拮抗薬、タリドミド(TNF−α放出阻害薬)、タリドミド拮抗薬(マクロファージによるTNF−α産生を低下させる)、骨形態形成タンパク質(BMP)タイプ2及びBMP−4(カスパーゼ8の阻害薬、TNF−α活性化薬)、キナプリル(アンギオテンシンIIの阻害薬であって、TNF−αを上方調節する)、IL−11の様なインターフェロン(TNF−α受容体表出を調節する)、及びアウリントリカルボン酸(TNF−αを阻害する)は、炎症を小さくするための治療薬として有用である。望ましい場合には、上記薬物のペグ化形態を使用することが考えられる。
【0072】
他の治療薬の例としては、clonidenを含めたグルココルチコイドの様なNFカッパB阻害薬;dilhiocarbamateの様な酸化防止剤、及びサルファサラジン[2−ヒドロキシ−5−[4−[c2−ピリジニルアミド]スルホニル]アゾ]安息香酸]の様な他の化合物が挙げられる。
【0073】
適した治療薬の他の例としては、テポキサリン、サリチラート、ジフルニサル、インドメタシン、サリンダック、イブプロフェン、ナプロキセン、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、ケトプロフェン、フェナメート類(メフェナ酸、メクロフェナム酸、エノール酸)、エノール酸類(ピロキシカム、メロキシカム)、ナブメトン、セレコキシブ、エトドラク、ニメスリド、アパゾン、及び金、の様なNSAID類が挙げられ、また、他の例として、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、及びフルチカゾンの様なステロイド剤が挙げられる。
【0074】
本発明は、更に、1つ又は複数のバイオポリマーと少なくとも1つの治療薬を含んだ医薬組成物を備えているインプラントを提供している。バイオポリマーの例としては、限定するわけではないが、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)共役物、ポリオルソエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、コラーゲン、デンプン、キトサン、ゼラチン、アルギン酸塩、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック)、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、ポリホスホエステル、ポリ無水物、ポリエステル−無水物、ポリアミノ酸、ポリウレタン−エーテル、ポリホスファジン、ポリカプトラクトン、ポリトリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリアミド−エステル、ポリケタル、ポリアセタル、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸エステル、ポリエチレン−ビニルアセテート、シリコン、ポリウレタン、ポリプロピレンフマレート、ポリデスアミノチロシンカーボネート、ポリデスアミノチロシンアリレート、ポリデスアミノチロシンエステルカーボネート、ポリデスアミノチロシンエステルアリレート、ポリエチレンオキシド、ポリオルソカーボネート、ポリカーボネート、又はそれらのコポリマー又は物理的混合物、又はそれらの組み合わせが挙げられる。バイオポリマーは、更に、非即時(即ち徐放)放出を提供してもよい。適した徐放バイオポリマーの例としては、限定するわけではないが、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)共役物、ポリオルソエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、コラーゲン、デンプン、キトサン、ゼラチン、アルギン酸塩、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック)、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
本発明では、更に、ゲルが治療薬を保持するに足る粘度を有している、即ち粘性形態であることを条件に、ゲルを薬物貯留体インプラントと共に使用することを考えている。
例えば、BMPの様な治療薬は、凍結乾燥形態で提供してもよいし、コラーゲンゲル又は何か他の適したゲル担体内に再構成してもよい。治療薬を目標物に送達することができるあらゆる適したゲル担体が考えられる。或る特定の実施形態では、用量は、貯留体インプラントによって提供され、当該用量を目標部位に又はそれに密接に近接する位置に供与すべく植え込まれる。
【0076】
有効量の治療薬を含んでいる医薬組成物を、腫瘍及び/又は炎症の部位へ直接送達することができるということは、或る点では問題となる。ここで使用する医薬組成物とは、貯留体インプラントの一部として少なくとも1つの治療薬、及び、随意的に、希釈剤、賦形剤、及び安定性、製造、有効性などの改善にとって望ましい薬理学的に受容可能な薬剤を含んでいるものである。
【0077】
狙い撃ち式送達システムは、意図した量の薬物を、意図した期間に亘り、正確に、精度良く、信頼性高く送達できることが望ましい。多くの治療薬は、かなり高価であり、特に長期に亘って安定性と有効性を維持するように処方されているものはそうである。而して、狙い撃ち式送達システムにより送達される治療薬を、薬物の安定性と有効性の損失を最小限にしながら、効率的に処方、処理、包装、及び送達できることが望ましい。本発明の狙い撃ち式送達システムに適した医薬組成物は、制御された局所的且つ直接的なやり方で望ましい医療効果を発揮させることを目指して慎重に処方されるのが望ましい。本発明の特性の中でも、特に、制御された投与システムと医薬組成物の独特な組合せによって、投薬オプションに柔軟性を持たせることができるようになったことが挙げられる。治療薬自体は、即効性から持続性までの連続状態を基本としてもよい。更には、医薬組成物自体は、迅速放出から持続放出までの連続状態の範囲で働くことができる。また、更には、上記医薬組成物の送達のオプションは、連続状態を基本としており、限定するわけではないが、迅速送達及び間隔を空けた反復送達から継続送達までが含まれる。送達は、患者体内への適切な配送と吸収にとって望ましい期間に亘り、望ましい部位に起こすことができる。好都合にも、狙い撃ち式送達システムが植え込まれると、送達は、従来の手段では到達するには深くて、複雑で、痛みを伴うか、危険であった部位、及び/又は他のやり方ではアクセス不可能であった部位に向かわせることができるようになる。本明細書全般を通して、「或る」即ち英文明細書の冠詞「a」及び「an」は、単数と同様に複数を含むものとする。本発明の1つの実施形態では、本発明は、本発明の狙い撃ち式送達システムにより提供されるものの様な、制御されたやり方の局所的な送達を提供している。その様な或る実施形態では、患者体内で治療薬レベルが継続的に上がったり下がったりするという循環は回避されるため、身体が治療薬のレベルにもっと容易に順応することができるようになる。副作用は、従って、最小限になる。
【0078】
本発明の狙い撃ち式送達システムには、例えば、脊椎又は炎症を起こしている1つ又は複数の関節の付近に、カテーテルを通して治療薬を投与する輸液ポンプ、炎症部位又は障害又は外科処置の部位に挿入することができる植え込み可能な小型ポンプ、植え込み可能な制御放出装置(例えば、米国特許第6,001,386号に記載の装置など)、及び徐放式送達システム(米国特許第6,007,843号に記載のシステムなど)を、追加して含めてもよい。
【0079】
医薬組成物は、1つ又は複数の望ましい治療薬を、時間経過に伴い組織内で分解されるポリマー基質の様な貯留体内に散在させたものか、又は、別のやり方で、1つ又は複数の治療薬の放出を遅らせる保護被膜内に内蔵させたものを、植え込むことによって、同様に制御されたやり方で徐放式に投与することができる。
【0080】
適したポンプの1つの例として、SynchroMed(登録商標)(ミネソタ州メンフィスのMedtronic社)がある。このポンプには、3つの密閉された室がある。1つの室には、電子機器モジュールとバッテリが入っている。2番目の室には、蠕動ポンプと薬物貯留部が入っている。3番目の室には、医薬組成物を蠕動ポンプに強制的に送り込むのに必要な圧力を提供する不活性ガスが入っている。ポンプを充満させるために、医薬組成物は、貯留部充填口を介して、拡張可能な貯留部に注入される。不活性ガスは貯留部に対して圧力を発生させ、この圧力によって医薬組成物は強制的にフィルタを通りポンプ室の中に送り込まれる。医薬組成物は、次いで、装置から送り出され、ポンプ室からカテーテルの中に入り、このカテーテルによって目標部位に堆積するように方向決めされることになる。医薬組成物の送達速度は、マイクロプロセッサで制御される。これにより、医薬組成物の同じ量又は異なる量を特定の回数で又は設定された送達間隔で送達するのに、ポンプが使用できるようになる。
【0081】
本発明の方法に適合させるのに適していると考えられる薬物送達装置としては、限定するわけではないが、例えば、目標を特定した薬物送達のための医療用カテーテルが記載されている米国特許第6,551,290号(Elsberry他)、生物活性を有する薬剤を制御されたやり方で放出させるための植え込み可能な医療装置が記載されている米国特許第6,571,125号(Thompson)、治療薬を有機体の選択された部位に送達するための実質内輸液カテーテルシステムが記載されている米国特許第6,594,880号(Elsberry)、及び、等量の薬物を間隔を空けた各部位に注入するための植え込み可能なカテーテルが記載されている米国特許第5,752,930号(Rise他)、に記載のものが挙げられる。本発明の方法に利用するために適合させることができる別の設計は、例えば、米国特許出願第2002/0082583号(フィードバック調節式送達方法を備えた事前にプログラム可能な植え込み可能装置)、同第2004/0106814号(化学物質を制御されたやり方で放出するためのマイクロ貯留部浸透圧式放出システム)、同第2004/0064088号(薬液を送達するための小型軽量装置)、同第2004/0082908号(植え込み可能な超小型輸液装置)、同第2004/0098113号(植え込み可能セラミック弁ポンプアッセンブリ)、及び同第2004/0065615号(折り畳み可能流体質を備えた植え込み可能輸液ポンプ)の様な米国特許出願に提示されている。Alzet(登録商標)浸透圧式ポンプ(カリフォルニア州クパチーノのDurect Corporation社)も、本発明の方法に使用するのに適した様々な大きさ、ポンプ速度、及び期間で利用可能である。
【0082】
本発明のポリマーは、本発明の方法で使用するための長期放出性又は徐放性組成物の調製に採用できる。1つの実施形態では、追加的に賦形剤を採用している。本発明の組成物に有用な賦形剤の量は、活性薬剤がそれを必要としている被術者に送達されるときに均一に散布されるように、活性薬剤を組成物全体に均一に分配するように働く量である。賦形剤は、治療薬が所望の有益な症状緩和又は治癒的な成果を提供できる濃度であると同時に、過剰な高濃度で起こる恐れのある悪い副作用を最小限にできる濃度に、治療薬を希釈する働きをする。賦形剤には防腐効果もある。而して、生理活動が活発な治療薬では、より多量の賦形剤が採用されることになる。他方、生理活動が少ない治療薬では、より少量の賦形剤が採用されることになる。一般に、組成物中の賦形剤の量は、全組成物の約50重量%乃至約99.9重量%の間になる。生理活動が特に活発な治療薬では、この量は、全組成物の約98乃至99.9重量%になる。
【0083】
本発明の方法とシステムによる、ヒト又は動物である被術者の痛みを軽減又は無くすための治療薬の送達は、特定の被術者に投与される1つ又は複数の治療薬の各量を、全身的輸液又は注入を受ける個体に供与されるTNF−α阻害薬又は拮抗薬の様な治療薬の各量よりも、少なくとも一桁分減らしても、痛みを緩和するには有効であろう。1つ又は複数の治療薬を、炎症又は神経損傷の部位に又はそれに密に近接した位置に供与することによって、特にそれら治療薬が制御された放出様式で供与される場合には、投与せねばならない治療薬の量は、経口又は注入によるなどの従来の投与形態に比べると減っている。これにより、治療薬は、神経根又は脳の領域の様な、治療薬の作用が最大の効果を発揮できる組織に向けられていることから、治療薬の薬理的有効性が高まる。全身的送達又は静脈内注入による送達でも、望ましい成果を生み出すのに十分なレベルの治療薬を提供できるが、これは、結果的に、抗TNF−α組成物が繰り返し投与される場合の感染の危険の様な望まない副作用の危険が高まり、ひいては、患者の費用、不便、及び不快が高じる結果にもつながる。
【0084】
本発明の方法に使用される有効用量は、当業者であれば判断できるはずであり、特に、特定の治療薬について、有効な全身的用量が分かっている場合にはそうである。用量は、治療薬を本発明の方法とシステムで供与した場合は、通常、少なくとも大抵の全身的用量の少なくとも90%は減らせるであろう。他の実施形態では、用量は、所与の条件及び患者個体群での大抵の全身的用量の少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも85%は減らせるであろう。用量は、1つ又は複数の治療薬の1日当たり最少量が送達されるように算出されるが、毎日投与する必要はない。2つ以上の医薬組成物を投与する場合は、組成物同士の相互作用を考慮し、用量を算出する。クモ膜下投与量は、例えば、標準的な経口投与量の大凡10%である。代わりのやり方では、クモ膜下投与量は、標準的な経口投与量の約10%乃至約25%の範囲にある。
【0085】
本発明の狙い撃ち送達システムは、外科処置部位の様な、炎症を引き起こしているか引き起こすであろう傷害の部位に、又は傷害又は炎症部位の、例えば、約0.5乃至10cm以内、又は好適には5cm以内に、送達できるように位置決めされる。この部位には、椎骨の1つの部位、又は頚椎、胸椎、又は腰椎の椎骨同士の間の様な、脊椎の複数の部位が含まれる場合もあれば、肩関節、股関節、又は他の関節の様な、炎症又は傷害を起こしている関節にじかに接している領域内に在る1つ又は複数の部位が含まれる場合もある。薬物貯留体インプラントの植え込みは、骨折の修復、腫瘍の摘出などの外科処置と同時に行ってもよいし、以前の外傷、傷害、外科処置、又は他の炎症開始の結果として、痛み、特に慢性的な痛みを経験している個体に行ってもよい。
【0086】
1つの実施形態では、狙い撃ち式送達システムは、インターボディポンプとカテーテルを備えており、カテーテルには近位端と遠位端があり、遠位端には、医薬組成物を現場に送達するための開口部が設けられており、カテーテルの近位端は、インターボディポンプに流体接続されている。
【0087】
投薬時期は、医師又は他の適切な医療専門家、又は患者が、症状、例えば、痛みの深刻度及び持続時間に基づいて判断する。治療薬の投与継続時間、投薬と投薬の間隔、用量の大きさ、用量投与の継続又は任意性は、全て、各患者の医師によって適切に決められる。投薬時期の決定では、医療専門家には、患者の目標部位に、1つ又は複数の治療薬を含んでいる有効量の医薬組成物を投与し、且つ1つ又は複数の治療薬は狙い撃ち式送達システムによって送達する、という様なオプションがある。
【0088】
投薬は、(1)局所的且つ徐放性であり、(2)少なくとも1日乃至約6か月の期間に亘って起こり、(3)継続的又は周期的なものとなる。更には、医療提供者には、狙い撃ち式放出速度を有する医薬組成物を選ぶという選択がある。例えば、徐放速度は、約24時間乃至約62日間である。医療提供者は、治療コースの経過に伴って患者にフィードバックが見られれば、組み合わせを変えてもよい。従って、医療提供者は、これまでは利用できなかった多くのオプションが使えるようになり、痛み、具体的には慢性的な痛み、の治療では特にそうである。
【0089】
本発明の方法、システム、及び試薬は、ヒトの医療用及び家畜用にも使用でき、人間の小児及び成人に加え他の哺乳類での使用にも適している。植え込み可能な制御型送達装置又はここに記載している治療薬を含んでいる組成物は、炎症及びこれに伴う痛みをできるだけ少なくし、やがてはその痛み自体が病態化することもしばしばある慢性の痛みを生じさせる刺激を低減するために、整形外科処置中に留置することができる。
【0090】
家畜に使用する場合、本発明の狙い撃ち式送達システム及び方法は、整形外科処置又は傷害に伴う痛み、又は、感染又は炎症に伴う整形外科的又は神経性の損傷を軽減するのに有用である。本方法は、馬の様な大きな動物、又は猫や犬の様な小型の家庭用ペットに、特に好都合である。
【0091】
ヒトの医療用としては、本発明の制御された投与システムと方法は、例えば、回旋腱板損傷又は修復、連接関節痛又は修復、顎関節障害、腱の炎症、リウマチ及び骨関節炎、手根管症候群、靭帯痛又は修復、又は目標である筋肉痛の軽減に関連する痛みを緩和するために使用される。本発明の使用が適当であると考えられる臨床的徴候の例としては、どこが発症源であるにせよ、急性及び慢性の背及び脚の痛みが挙げられる。1つの実施形態では、治療薬は、刺激を受けている神経根の近傍に、現在の薬物投与量より少ない用量で送達される。治療薬は、臨床的徴候次第で、数日間乃至数か月間に亘り送達されることになるであろう。或る種の薬物、例えば、TNF阻害薬は、免疫系の感染抵抗能力を下げるように作用し、その結果、感染や他の悪い事象を招く恐れがあることから、この方向付けられ制御されたやり方の送達は有益である。(この治療薬中の)薬物の量を最小限にすること、及び送達の部位を狙い撃ちにすることは、現在使用できるものに対する意義深い改善である。更には、治療オプションの多様性、例えば、用量と送達を任意に変更できることは他に類を見ない。医療提供者は、患者のフィードバック又は臨床的兆候に、より的確に応じることができるようになる。他の炎症性疾患も、本発明を利用して治療することができる。治療薬は、単独で、組み合わせて、連続で、又は同時に、送達してもよい。1つ又は複数の円板レベルを同時に治療してもよく、その場合は、頚部、胸部、腰部、又は複数の領域が狙い打ちされる。治療薬は、円板間に、円板に隣接して、又は筋肉内に、用いてもよい。治療薬は、先に説明したように、例えば、TNF−α、シクロオキシゲナーゼ2、プロスタグランジンE2、グルタミン酸塩やブラジキニンの様なキニン類やP物質の様な炎症の媒介物、の作用を阻害するように向けられる。
【0092】
本発明は、骨粗鬆症、骨関節炎、及びリウマチ様関接炎の予防と治療に有用である。例えば、リウマチ様関接炎は、とりわけ、炎症の発症源を有することが知られており、TNF−αの働きに対する阻害薬の様な治療薬は、上記症状に伴う痛みの緩和に役立つはずであり、特に、本発明のインプラント及び方法で送達された場合はそうである。大腿骨頸部骨溶解は、全関節置換に続いて起こる主な合併症である。関節動作する人工関節器官表面とポリメチルメタクリレート(PMMA)セメントが摩耗粒子を生み出し、これが慢性的炎症反応と破骨細胞の骨吸収(摩耗屑誘発性骨溶解)を引き起こし、その結果、インプラントの機械的不具合が生じる。TNF及びIL−1は、摩耗屑誘発性又は摩耗粒子誘発性骨溶解を媒介することが示されている。植え込み部位での、本発明の制御された投与システム及び方法によるTNF阻害薬の制御され方向付けられた送達は、インプラントに伴う骨溶解を予防するための方法を提供している。骨溶解は、一般に、摩耗誘発性であっても、又は他の要因によって生じるものであっても、関節置換外科処置の部位の様な個別の部位に起こることが多いことから、本発明の制御された投与システム及び方法を使用しで治療するのに適した標的である。更には、TNF−αは、破骨細胞に似た細胞を誘発することが分かっており、破骨細胞は骨を吸収する細胞であることから、TNF−α阻害薬の徐放的で方向付けられた(局所化された)投与は、特に、例えば、BMP、GDF、LMPの様な骨誘導因子、又はそれらの組合せ、と併用した場合には、痛みの軽減と骨吸収の阻止の両方を得ることができる。
【0093】
同様に、悪性又は良性の骨腫瘍は、しばしば骨吸収を伴う。腫瘍が切除されたか又は部分的に切除された場合、或いは腫瘍が残された場合は、相当な痛みがある。本発明の方法とシステムは、その様な痛みを緩和するための、そして癌患者をもっと快適にすると共に、当該部位の骨吸収を阻害し又は骨成長を刺激するための手段を提供している。
【0094】
1つの実施形態では、本発明の方法は、インターボディ又は類似の医薬ポンプと、このポンプに流体接続されていて、少なくとも1つの医薬組成物をポンプから目標部位へ運ぶための流路を提供している随意的カテーテルと、例えば、TNF阻害薬の様な少なくとも1つの治療薬の治療量と、を備えている狙い撃ち式送達システムによって提供される。1つの実施形態では、その様なシステムは、更に、少なくとも1つの治療薬のための少なくとも1つの放出様式が改変された医薬担体を備えている。
【0095】
或る代わりの実施形態では、貯留体は、少なくとも1つの治療薬のための少なくとも1つの放出様式が改変された医薬担体と、例えば、TNF阻害薬の様な少なくとも1つの治療薬の治療有効量とを備えている。狙い撃ち式送達システムは、滅菌包装で提供されている少なくとも1つの貯留体と、治療薬が体内に導入されるときには無菌状態で提供されるように包装体に入れられた少なくとも1つの治療薬の少なくとも1つのアリコートとを備えている、キットとして提供してもよい。その様なキットは、更に、少なくとも1つの治療薬の少なくとも1つのアリコートを、1つ又は複数の放出様式が改変された医薬担体と組み合わせたものが入っている、少なくとも1つの包装体を備えていてもよい。キットは、治療薬が入れられた、放出様式が改変された担体も提供しており、この放出様式が改変された担体は、放出様式が改変された担体を完全に又は部分的に格納するための基質又は格納装置内に密封され又は部分的に密封されており、この基質又は格納装置は滅菌包装で提供され、少なくとも1つの治療薬を使用した療法が必要である被術者の体内の目標部位に植え込むのに適切である。
【0096】
治療有効量の抗炎症剤が、前記治療を必要とする患者に投与される。抗炎症剤は、TNF、IL−1、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、GM−CSF、M−CSF、MCP−1、MIP−1、RANTES、ENA−78、OSM、FGF、PDGF、及びVEGFから成る群より選択される。本発明に使用することが考えられる各種抗炎症剤は、米国特許出願公開第20030176332号に記載されており、同出願を参考文献としてここに援用する。
【0097】
ここで使用する「腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)」とは、Pennica他, Nature, 312:721(1984)又はAggarwal他,JBC,260:2345(1985)に記載されているアミノ酸配列を備えているヒトTNF−α分子を指す。用語「ヒトTNF−α」(ここではhTNFα又は単にhTNFと略記)は、ここで使用する場合、17kD分泌型、及び非共有結合17kD分子の三量体から構成されている生物活性型である26kD膜結合型として存在するヒトサイトカインも指すものとする。hTNFαの構造は、例えば、Pennica, D., 他(1984)Nature 312:724-729、Davis, J. M.,他(1987)Biochemistry 26:1322-1326、及び、Jones, E. Y.,他(1989)Nature 338:225-228に更に詳しく記載されている。ヒトhTNFαという用語は、標準的な組換え表出方法で調製されるか或いは商業的に購入される(R&D Systems, Catalog No. 210-TA, Minneapolis, MN)組換えヒトrhTNFαを含むものとする。hTNFαは、TNFと呼ぶ場合もある。「TNF−α阻害薬」という用語は、TNF−αの生物学的機能に対し、通常はTNF−αに結合してその活動を中和することによって、干渉する薬剤を包含する。TNF−α阻害薬の例としては、エタネルセプト(Endbel(登録商標)Amgen)インフリキシマブ(Remicade(登録商標) Johnson and Johnson)、ヒト抗TNFモノクローナル抗体アダリムマブ(D2E7/HUMIRA(登録商標)Abott Laboratories)、CDP−571(Celltech)、CDP−870(Celltech)、並びに、TNF−α活性が不利益をもたらす障害に苦しめられているか苦しめられる恐れのある被術者に投与されると、この障害が治る様な、TNF−αを阻害する他の化合物、が挙げられ。この用語は、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号、同第6,509,015号、及び米国特許出願第09/801,185号及び同第10/302,356号に記載されている抗TN−Fαヒト抗体及び抗体部分のそれぞれも包含し、前記各米国特許並びに米国特許出願を参考文献としてここに援用する。
【0098】
幾つかの実施形態では、本発明に治療薬として使用されている骨誘導組成物又は因子は、更に、薬理学的に受容可能な担体内の実質的に純粋な骨誘導又は成長因子又はタンパク質の、骨成長を刺激し又は誘導するための治療有効量を備えている。好適な骨誘導因子は、組換えヒト骨形態形成タンパク質(rhBMP)であり、それは、これが比較的制限のない供給状態で入手でき、感染症を移さないからである。最も好適には、骨形態形成タンパク質は、rhBMP−2、rhBMP−7、又はそれらのヘテロ二量体である。しかしながら、BMP−1からBMP−13までとして指定されている形態形成タンパク質を含め、あらゆる骨形態形成タンパク質が考慮される。BMPは、米国マサチューセッツ州ケンブリッジのGenetics Institute, Inc.,社から市販されており、更に、当業者であれば、Wozneyらに対する米国特許第5,187,076号、Wozneyらに対する同第5,366,875号、Wangらに対する同第4,877,864号、Wangらに対する同第5,108,922号、Wangらに対する同第5,116,738号、Wangらに対する同第5,013,649号、Wozneyらに対する同第5,106,748号、並びに、Wozneyらに対するPCT特許第WO93/00432号、Celesteらに対する同第WO94/26893号、及びCelesteらに対する同第WO94/26892号に記載されている様に調製することができる。本発明の範囲内に含まれる骨誘導因子には、BMP−1、BMP−2、rhBMP−2、BMP−3、BMP−4、rhBMP−4,BMP−5、BMP−6、rhBMP−6、BMP−7[OP−1]、rhBMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、成長及び分化因子、GDF-5、軟骨由来形態形成タンパク質、LIM鉱化タンパク質、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子□(TGF−□)、インスリン関連成長因子I(IGF−I)、インスリン関連成長因子II(IGF-II)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ベータ−2−ミクログロブリン(BDGDII)、及びrhGDF−5がある。全ての骨誘導因子は、上記のように得たものか、骨から単離されたものかを問わず、考慮される。骨形態形成タンパク質を骨から単離する方法は、Uristに対する米国特許第4,294,753号、並びにUrist他,81 PNAS 371, 1984に記載されている。組換えBMP−2は、約0.4mg/ml乃至約2.5mg/mlの濃度、好適には約1.5mg/mlで使用するのがよい。しかしながら、BMP−1からBMP−18までとして指定されている骨形態形成タンパク質を含め、あらゆる形態形成タンパク質が考えられる。
【0099】
骨成長誘導因子は、本発明の薬物貯留体インプラントの治療薬として、何れの適したやり方で供給されてもよい。骨誘導因子、望ましくはBMPは、凍結乾燥形態で、又は何か他の適した液体又はゲル担体に入れて、供与提供してもよい。タンパク質をインプラントに送達することができるあらゆる適した媒体又は担体が考えられる。媒体には、当技術では既知であるように、緩衝液が追加されるのが望ましい。
【0100】
「滑膜関節」という用語は、2つ又はそれ以上の骨の可動連接部を指す。連接部は滑液腔によって画定されており、この滑液腔は、中に或る量の滑液が入っており、滑膜が裏打ちされ、線維性皮膜で取り囲まれている。相対する骨表面は、それぞれ、軟骨の層で覆われている。軟骨と滑液が、関節運動を行う骨表面同士の摩擦を小さくして、滑らかな運動を可能にしている。滑膜関節は、更に、許容される運動を制御するそれらの形状によっても区別されている。例えば、蝶番関節は、ドアの蝶番の様に動作し、唯1つの面内で屈曲と伸展ができるようになっている。一例として、肘の、上腕骨と尺骨の間がそうである。股関節のようなボール・ソケット関節は、数個の面の運動が同時にできるようになっている。膝の様な顆状(楕円)関節は、位置によっては、2つ以上の面内の動きができる場合もあれば、できない場合もある。例えば、膝を伸ばすと回転は不可能であるが、膝を曲げると或る程度の回転は可能である。肘の様な軸関節(橈骨と尺骨の間)は、一方の骨がもう一方の回りに回転することができるようになっている。親指(掌骨と手根骨の間)の様な鞍関節は、それらの鞍形状からその様に命名されており、様々な方向の運動を可能にしている。最後に、手首の手根骨の様な擦り合わせ型関節は、距離はそれほどでもないが、広範に様々な運動を可能にしている。滑膜関節としては、限定するわけではないが、肩(関節上腕と肩峰鎖)、肘(尺骨−上腕、橈骨−上腕骨小頭、及び近位側橈骨尺骨)、前腕(橈骨尺骨、橈骨手根骨、尺骨手根骨)、腰(遠位側橈骨尺骨、橈骨−手根骨、尺骨−手根骨、中央手根骨)、手(手根中手、中手指節、指節間)、背(椎間)、股、膝、踵(脛距、脛腓)、及び足(距踵、距舟、足根間、足根中足、中足趾節、趾節間)が挙げられる。幾つかの実施形態では、例えば、インプラントは、ヒドロゲルの様な親水性材料で形成してもよいし、又は、シリコン、ポリウレタン、ポリイソブチレンやポリイソプレンの様なポリオレフィン、シリコンとポリウレタンのコポリマー、ネオプレン、ニトリル、硫化ゴム、及びそれらの組合せを含め、当技術では既知の生体適合性を有するエラストマー系材料で形成してもよい。好適な実施形態では、硫化ゴムは、1−ヘキサンと5−メチル−1,4−ヘキサジエンから、例えば、Summer他に対する米国特許第5,245,098号に記載されているように、作られたコポリマーを使用した硫化処理によって生成される。好適な親水性材料はヒドロゲルである。適したヒドロゲルとしては、天然ヒドロゲル、並びに、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びポリ(アクリロニトリル−アクリル酸)の様なアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)の様なアクリレート、及び、アクリレートとN−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタン、アクリルアミド、ポリウレタン、及びポリアクリロニトリルのコポリマー、で形成されたものが挙げられ、或いは、ヒドロゲルを形成する他の類似材料で形成してもよい。ヒドロゲル材料は、インプラントを更に強化するために、更に架橋結合させてもよい。ポリウレタンの異なる種類の例としては、熱可塑性プラスチック又は熱硬化性ポリウレタン、脂肪族又は芳香族ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、及びシリコンポリエーテルウレタン、が挙げられる。他の適した親水性ポリマーとしては、グルコマンナンゲル、ヒアルロン酸、架橋結合したカルボキシル基含有多糖類の様な多糖類、及びそれらの組合せの様な自然発生材料が挙げられる。
【0101】
本発明のインプラントは、少なくとも部分的には、生体適合性材料で作られていてもよい。更に、実施形態の中には、インプラントが、骨への植え込み、軟骨への植え込み、及び/又は関節の他の生体材料への植え込みに適した材料の様な、植え込み可能な材料で作られているものもある。具体的には、インプラントは、少なくとも部分的には、植え込み時にその統合性を維持できる材料で形成されていてもよい。これは、植え込み時に担体内の薬物が割れ目や裂け目を通って漏れ出すのを防止するのに役立つ。実施形態の中には、インプラント貯留部が、チタン、ニッケル、ニッケルチタン、ステンレス鋼、陽極酸化アルミ、又はタンタルの様な金属、或いは、ポリエチレン、ナイロン、又はポリウレタンの様なプラスチックで構成されているものもある。本発明には、インプラントの骨への一体化、即ち骨の内成長、を可能にする材料又はそのために改質された材料も含まれる。他の適した材料も、当業者には自明であろう。また、各材料の組合せを使用してもよい。
【0102】
本発明のインプラントには、それらの外表面に規定された面特性を設けてもよい。例えば、スロットに代えて、突起を、端壁に形成してもよい。その様な突起は、真っ直ぐで平坦な側面形状、楕円形の隆起、両凹面状の隆起、方形の隆起、又は、隆起を破損したり何か他に傷を付けることなく、挿入トルクの伝達を可能にするのに十分なエンドキャップ又は工具係合端強度と推進の足掛かりを提供する、何か他の突き出た形状に整形してもよい。更に他の面特性を、インプラント上に規定してもよい。上に述べたように、インプラントの外表面には、逆棘、又は薬物貯留体インプラントと組織との境界面を安定させ微細動作を低減する他の面造形、が形成されている。
【0103】
本発明の薬物貯留体インプラントは、滑膜関節、脊椎円板空間、脊柱管、又は周囲の軟組織の内部又は付近に留置及び配置するように設計することができる。実施形態の中には、錨着装置を使用してインプラントを留置及び固定することで、被術者の所望の位置内の薬物貯留体インプラントの考えられる留置及び配置領域が、骨、組織の軟骨表面又は組織に傷を付けないようにしているものもある。
【0104】
実施形態の中には、患者への装置の留置が、境界を成す関節軟骨の存在しない滑膜関節の関節内領域であるものもある。それは、例えば、荷重を支えることの無い膝嚢の内部の中に配置され、滑膜関節の関節動作面から取り出されてもよい。装置は、滑膜関節内に取り付けられてもよく、そうすれば、継続的に滑液流に曝すことができ、その結果、所与の関節の一定範囲の運動中に、付着成長している関節面を傷つけること無く、抗炎症性又は骨形成性の治療薬を放出させることができる。本発明の別の実施形態によれば、治療薬、例えば、抗炎症剤又は骨誘導因子は、ガス充填脂質含有微小球の中に包み込むことができる。ガス充填脂質含有微小球は、更に、それらの外表面に生体適合性ポリマーを備えていてもよい。本発明は、治療薬を、その安定性と活性を長期間維持するため、微小球内に凍結乾燥状態で入れられるようにしている。同様に、本発明は、治療薬を、その安定性と活性を長期間維持するため、貯留体の中に凍結乾燥状態で入れられるようにもしている。
【0105】
適したガスの例としては、限定するわけではないが、空気、ニトロゲン、二酸化炭素、酸素、アルゴン、フッ素、キセノン、ネオン、ヘリウム、又はそれらのありとあらゆる組合せがある。更に、ガス充填微小球の調製には、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、及び六フッ化硫黄ガスの様な各種フッ素化ガス状化合物を使用してもよい。
【0106】
生体適合性脂質材料については、その様な材料は、事実上「両親媒性」(極性脂質)という名前でしばしば呼ばれることがあるものであるのが望ましく、この両親媒性とは、一方では脂肪親和性、即ち疎水性の特性を有し、他方では同時に親水性を併せ持つ、物質のあらゆる組成を意味している。脂質は代わりに単層の形態であってもよく、その場合、単層脂質を使用して、単一の単層(単薄層)配列が形成される。代わりのやり方では、単層脂質を使用して、連続した同心単層の積層、即ちオリゴ薄層又は多重薄層が形成され、その様な配列も本発明の範囲内に入ると考えられる。
【0107】
適した脂質の例としては、限定するわけではないが、脂肪酸、リソリピド、飽和及び不飽和脂質を有するホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリピドグリコリピド、グルコリピド、スルファチド、グリコスフィンゴリピド、ホスファチジン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、脂質ベアリングポリマー、脂質ベアリングスルホン化モノ−、ジ−、オリゴ−、又は多糖類、コレステロール、コレステロールスルフェート又はコレステロールヘミスクシネート、トコフェロールヘミスクシネート、エーテルを有する脂肪酸及びエーテル結合脂肪酸、重合脂質、ジアセチルホスフェート、ジセチルホスフェート、ステアリルアミン、カルジオリピン、単素数6〜8の長さの短連鎖脂肪酸を有するホスフォリピド、非対称アシル鎖を有する合成ホスホリピド(例えば、炭素数6の1つのアシル鎖と炭素数12の別のアシル鎖を有するもの)、セラミド、非イオン系リポソーム、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン化ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート、グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート、エトキシル化大豆ステロール、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリマー及びポリオキシエチレン脂肪酸ステアレート;コレステロールスルフェート、コレステロールブチレート、コレステロールイソ−ブチレート、コレステロールパルミテート、コレステロールステアレート、ラノステロルアセテート、エルゴステロールパルミテート、及びフィトステロールn−ブチレートを含むステロール脂肪酸エステル;糖酸のステロールエステル、糖酸及びアルコールのエステル、糖及び脂肪酸のエステル、サポニン、グリセロールジラウレート、グリセロールトリラウレート、グリセロールジパルミテート、グリセロール及びグリセロールエステル、長鎖アルコール、ジガラクトシルジグリセリド、6−(5−コレステン−3.ベータ.−イロキシ)、ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−.ベータ.−D−ガラクトピラノシド、6−(5−コレステン−3.ベータ.−イロキシ)ヘキシル−6−デオキシル−1−チオ−.アルファ.−D−マンノピラノシド、12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカン酸、N−>12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチル−アミノ)−オクタデカノイルl−2−アミノパルミチン酸、コレステリル)4’−トリメチルアンモニア)ブタノエート、N−スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、1,3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロール、及び/又はそれらの組合せが挙げられる。
【0108】
本発明のこの実施形態に適したポリマーは、天然、半合成、又は合成であってもよい。本発明での使用に適した天然ポリマーの一例としては、自然発生的多糖類、例えば、アラビナン、フルクタン、フカン、ガラクタン、ガラクツロナン、グルカン、マンナン、キシラン(例えば、イヌリンなど)、レバン、フコイダン、カラギーナン、ガラトカロロース、ペクチン酸、ペクチン、アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストリン、プスツラン、キチン、アガロース、ケラタン、コンドロイタン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガムなど、並びに種々の他の天然ホモポリマー又はヘテロポリマー、例えば、1つ又は複数の以下のアルドース、ケトース、酸、又はアミンを含むものなど;エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコニン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、及びノイラミン酸、並びにそれらの自然発生的誘導体が挙げられる。
【0109】
半合成ポリマーの一例としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及び目と岸セルロールが挙げられる。本発明での使用に適した合成ポリマーの一例としては、ポリエチレン(例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、及びポリエチレンテレフタレートなど)、ポリプロピレン(例えば、ポリピプロピレングリコールなど)、ポリウレタン(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル、及びポリビニルピロリドンなど)、ナイロンを含めポリイミド、ポリスチレン、ポリ乳酸、フッ素化炭化水素、フッ素化炭素(例えば、ポリテトラフルオドエチレンなど)、及びポリメチルメタクリレート、並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0110】
本実施形態のガス充填脂質含有微小球は、例えば、脂質を含んでいる水溶液を、ガスが存在する状態で、脂質のゲル状態から液体結晶状態相への転移温度より低い温度で振盪することにより調製することができる。振盪は、結果的に微小球、特に、安定した微小球が形成されるに十分な力で行わなくてはならない。振盪は、上下逆向き、横向き、又は上下運動の様な旋回によるものであってもよい。様々な型の動きを組み合わせてもよい。更に、振盪は、脂質水溶液を保持している容器を振盪することによるか、又は容器自体を振盪させること無く、容器内の水溶液を振盪することにより、起こしてもよい。運動は約2度から約20度の間で、望ましくは約6.5度で、円弧状に往復させるのが望ましい。往復の円弧と速度は共に、形成されるガス及びガス状前駆体充填微小球の量と大きさの決定に極めて重要であると考えられる。往復運動、即ち、フルサイクルの振動、の回数が分当たり約1000乃至20,000回の範囲内であるのが、本発明の好適な実施形態である。
【0111】
当業者には自明のように、本実施形態のガス充填脂質含有微小球を作るのに他の技法を利用してもよい。その様な微小球は、凍結融解、並びに、音波破砕、キレート透析、均質化、溶媒注入、マイクロ乳化、自然形成、溶媒気化、フレンチ圧力セル技法、制御式洗浄剤透析の様な技法、及び他の既知の技法を使用して作り出すことができる。
【0112】
上で説明した方法により作られたガス及びガス状前駆体は、次に光学顕微鏡法で大きさを確認する。なお、微小球の最大寸法は、約50乃至60μmであり、検出される最小寸法は約8μmであると確認しなければならない。平均寸法は、約15乃至約20μmの範囲になければならない。ガス及びガス状前駆体充填微小球は、次いで、Swin-Lokフィルタホルダ(米国マサチューセッツ州ケンブリッジのCostar Crop.,社のNuclepore Filtration製品)と20ccシリンジ(米国ニュージャージー州ラザフォードのBecton Dickinson & Co.,社)を使用して、 8、10、又は12μmの「NUCLEPORE」膜でろ過する。この膜は、10又は20μm「NUCLEPORE」膜(米国マサチューセッツ州ケンブリッジのCostar Crop.,社のNuclepore Filtration製品)である。10.0μmフィルタを、Swin-Lokフィルタホルダに装着し、キャップをしっかりと締め付ける。脂質を主成分とする微小球を振盪すると、それは20ccシリンジから18ゲージの針を経由して移動する。大凡12mlのガス充填泡末液フォーム溶液がシリンジに入ると、このシリンジをSwin-Lokフィルタホルダ上にねじで締める。シリンジとフィルタホルダアッセンブリを逆さにすると、ガス及びガス状前駆体充填微小球のより大きなものは上に上昇する。次いで、シリンジを静かに押し上げると、ガス及びガス状前駆体充填微小球がこのやり方で濾過される。
【0113】
ガス及びガス状前駆体充填微小球の、10.0μmフィルタを介して押し出した後の残存率(ガス及びガス状前駆体充填微小球の押し出し後の量)は、約83〜92%である。手作業による押し出し前は、泡末の量は約12mlであり、水溶液の量は約4mlである。手作業による押し出し後は、泡末の量は約10〜11mlであり、水溶液の量は約4mlである。
【0114】
光学顕微鏡を再度使用して、押し出されたガス及びガス状前駆体充填微小球の大きさ分布を確認する。微小球の最大寸法は、約25乃至約30μmの範囲にあり、最小検出寸法は約5μmであると確認される。平均寸法は、約8乃至約15μmの範囲にある。本発明の方法による特定の実施形態を、以下の実施例で説明するが、これに限定されるものではない。なお、それら実施形態は、本発明の原理と適用を例示的に説明しているにすぎないものと理解されたい。従って、例示として示した実施形態に対しては数々の修正を加えることができ、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神と範囲から逸脱すること無く、他の装置が考案されるものと理解頂きたい。
【0115】
1つの特定の適用として、本発明は、図1に描いている薬物貯留体インプラントを考えている。図1は、植え込み後のインプラントの患者の組織内での移動を最小限にするために装置を錨着する役目を果たしている1つ又は複数の小さい逆棘12を備えている、ロッド形状の薬物貯留体インプラントの断面図である。以下、「ロッド形状」という用語は、長手方向軸を有するあらゆる形状、即ち一方の方向が他方の方向より長くなっている形状であって、長手方向軸を横切る断面はどんな形状であってもよいが、望ましくは楕円形又は円形である、形状を表すものとする。ロッド形状のインプラントの長さは、約1mm乃至約10cmまでの範囲とし、その直径は約0.5mm乃至約5cmまでの範囲とすることができる。好適な長さは約2cm乃至約10cmであって、望ましい直径は約1mm乃至約2mmの範囲にある。代わりの好適な長さは、約2cm乃至約10cmの範囲にあり、或る代わりの好適な直径は約2mmから約1cmの範囲にある。インプラント10は、生物分解性材料で作られているロッド形状(又は弾丸形状)の本体14を備えている。代わりの各実施形態では、本体は、非生物分解性材料で作られている。非生物分解性の本体は、治療薬が、単独で充填されているか又は分解性ポリマーに組み込んで充填されている多孔質中空室であってもよい。本体は、内容物が放出された後に回収できるようにするために、非分解性とするのが望ましい。或いは、非生物分解性の本体は、内容物を、各孔、1つ又は複数の口、又はカニューレから押し出す小型ポンプであってもよい。本体14に適した生物分解性材料の例としては、限定するわけではないが、ポリオルソエステル(POE)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、多糖類(Saber technology)、ポリカプララクトン、ポリフマレート、チロシンポリカーボネートなどが挙げられる。本体14が中実であれば、治療薬16は、本体14を形成している材料全体に分散される。治療薬16の分散は、本体14全体に亘って均一になるようにする。代わりのやり方では、治療薬16の濃度は、本体14の長手方向中心線からの距離の関数として、又は長手方向中心線18に沿った距離の関数として変化する。本体14の生物分解性材料が組織内で分解すると、治療薬16が放出される。本体14には、1つ又は複数の治療薬16を運び、そして治療薬16の放出を制御するのに適した徐放材料を使用する。例えば、治療薬を封入するのに微小球が使用でき、この治療薬含有微小球を、本体4全体に分散してもよい。1つ又は複数の逆棘12は、錨着システムとして働き、本体14が長手方向軸18に沿って前方並進運動は許容されるが、後方並進運動は妨害されるように設計されている。具体的には、逆棘12は、本体14から延び、長手方向軸18に沿って後方向を指している。逆棘12は、本体14と同じ材料で作られていてもよいし、異なる材料で作られていてもよい。例えば、逆棘12は、本体14の主材料よりもゆっくりと分解する二次材料で作られ、本体14の長手方向中心線18を通って走らせた第2材料の芯に取り付けてもよい。本発明は、二次材料が内容物を放出している間、貯留体を定位置に保持するための生物分解性が傾斜的に変化するような他の設計を提供している。逆棘は、治療薬が入っている貯留体に被せる「スナップ式」構成要素であってもよい。この実施形態では、薬物が装填された貯留体の製造は、逆棘を貯留体に射出成形する必要がないので、ずっと容易になる。逆棘12は、軸方向に整列させてもよいし、又は薬物貯留体インプラント10の周囲に周方向に互いに間隔を空けて配置してもよい。或る特定の実施形態では、インプラント10は、関節内に粘着させることができるように設計されている。インプラント10は、幅が約1mm乃至6mmであり、長さが約5mm乃至20mmである。装置10に適した長さと幅の選択は、目標である植え込み部位により異なるが、当業者の能力なら十分に対処できる範囲内である。
【0116】
図2は、別のインプラント20の断面図である。先の実施例と同じように、インプラント20は、インプラント20の前進運動は許容するが後退運動は妨害し、而してインプラント20を目標である送達領域内に錨着する、錨着システムの役目を果たしている、1つ又は複数の逆棘22を備えている。インプラント20は、ポリエチレン、デルリン、ポリウレタンの様な非生物分解性材料で作られているロッド形状の殻24を備えている。代わりに、殻24は、植え込み部位内で比較的ゆっくり分解する生物分解材料で作られていてもよい。適した生物分解性材料としては、POE、PLGA、PLA、PGA、並びにあらゆる他の標準的な分解性ポリマーが挙げられる。殻24は、空洞25を形成しており、1つ又は複数の治療薬26は、この空洞25内に配置されている。治療薬26は、例えば、凍結乾燥形態であるか、担体内に分散されているか、微小球内に入れられているか、何か他の適したやり方で空洞25内に詰められていてもよい。殻24は、治療薬26に対し透過性を有しているが、殻には、治療薬26が殻24を透過して周辺組織の中に拡散するように、治療薬が詰められている。例えば、殻24が治療薬含有微小球を保持している事例では、殻24は複数の孔を備えていて、微小球はこれらの孔を通り抜け、次いで、治療薬を目標である組織内又はその付近に放出する。代わりのやり方では、微小球は、治療薬を殻24内で放出し、その後、治療薬が殻24を通り抜けて孔から目標とされる組織に向けて拡散するか、又は装置から液圧によって押し出される。治療薬26の拡散速度は、殻24の厚さ、殻24内の孔の個数と直径、又は治療薬又は治療薬が埋め込まれている媒体(ゼラチン、POE、PLGAなど)の濃度で調節することができる。逆棘22は、殻24と同じ材料で形成されていてもよく、また、殻24の外表面の周りに何れの適したやり方で配置されていてもよい。殻24が生物分解性材料で作られている場合、使用される材料の種類と厚さは、殻24の完全性が実質的に危うくなる前に、治療薬26の全部又はほぼ全部を確実に周辺組織に拡散させるのに十分でなければならない。
【0117】
図3は、別のインプラント30の側面図である。インプラント30は、インプラント10のように中実であってもよいし、インプラント20のように殻の様であってもよい。インプラント30は、ロッド形状の外表面34を有しており、そこから、外表面34の内側に入れられている治療薬が、上で説明したように拡散する。外表面34からは、1つ又は複数の第1の逆棘32と1つ又は複数の第2の逆棘36が延びている。第1の逆棘32は長手方向軸38に沿って後方向を指し、インプラント30の後退運動(即ち、長手方向中心線矢印38で示す方向とは逆方向の移動)を防止しており、第2の逆棘36は長手軸方向38に沿って前方向を指し、インプラント30の前進運動(即ち、長手方向中心線矢印38に沿った移動)を防止している。逆棘32、36は、こうして、インプラント30を目標である送達部位に保つ錨着システムの役目を果たしており、即ち、この錨着システムは、インプラント30の前方及び後方、両方向への並進運動を防止している。
【0118】
上の実施例の逆棘12、22、32、36は、可撓性を有していてもよく、つまり、それらは長手方向軸18、28、38の中心線に向けて圧縮可能であってもよい。これは、インプラント10、20、30の狙い撃ち式送達を支援する。例えば、図4に示すように、インプラント40は、カテーテル、シリンジ、又は何か他の適した装置である狙い撃ち式送達システム41によって、目標部位で放出される。図示の様に、狙い撃ち式送達システム41は、中にインプラント40を配置したカニューレ43を含んでいてもよい。インプラント40は、カニューレ43から抜け出ると延びる、可撓性を有する逆棘42を有している。
【0119】
図5は、別の実施形態のインプラント50の側面図である。インプラント50は、ロッド形状の外表面54を有しており、そこから、中に入れられている治療薬が溶出する。外表面54からは、インプラント50の前方及び後方、両方向への並進運動を防止するようになっていて、こうして、インプラント50を目標である送達部位に保つ錨着システムの役目を果たす、1つ又は複数の延張部52が延びている。延張部52は、可撓性を有しており、よって、一旦、狙い撃ち式送達装置から放出されると、延びることができる。延張部52は、長手方向軸58から90度離れる方角を指し、インプラント50の回転を防止している。
【0120】
本発明のインプラントは、インプラントの画像化を支援し、ひいてはインプラントの狙い打ち式送達を支援する、X線マーカーを含んでいてもよい。X線マーカーは、先に論じた何れの適した材料で作ってもよく、例えば、リング状をしていてもよいし、又はインプラン全体に小球として分散させてもよい。リング状のX線マーカーを使用しているインプラント60を、図6に示している。図示のように、1つ又は複数のX線撮影活性を有するリング62が、インプラント60の本体64上に配置されている。各リング62は、本体64内の事前に決められている位置に設置されており、而して、撮影を行うと、医師はインプラント60の位置と向きを判定することができる。図7は、本発明のインプラントに用いられるX線マーカーの別の可能な実施形態を提示している。インプラント70は、治療薬を保持し溶出する本体部分74を備えている。本体部分74全体に亘って、又は本体部分上74に、X線撮影上活性を有する物質の小ビーズ72が、規則的に分散している。ビーズ72を画像化すれば、目標組織内の本体部分74の位置と向きを明確に示すことができる。代わりのやり方では、ビーズ72は、本体74内又は本体74上に、事前に決められたパターンに従って配置されており、ビーズ72によって表されるこのパターンを画像化すれば、同様に、本体部分74の位置と向きを間違いなく確認することができる。
【0121】
図8は、別のインプラント80の側面図である。インプラント80は、ロッド形状の本体部分84を有しており、これは先細になっていてもよいが、そこからインプラント80を目標である組織場所内に固定する第1の錨着システム82と第2の錨着システム86が延びている。第1の錨着システム82は、1つ又は複数の逆棘82として構成されており、長手方向中心線矢印88で示される前進(挿入)方向に対して後方向を指している。逆棘82は、こうして、インプラント80が植え込み部位から後退退出するのを防止している。逆棘82は、可撓性を有していてもよい。第2の錨着システム86は、組織面に当接するようになっているエンドキャップ86である。エンドキャップ86の前方面89は、組織面に接触し、こうして、インプラント80の、中心線矢印88で示される前方並進運動を防止している。逆棘82とエンドキャップ86は、共に、本体部分84と同じ材料で作ってもよい。本体部分84は、先に述べたように、中空であってもよいし中実であってもよく、また、生物分解性であってもなくてもよい。本体部分84は、望ましい治療薬が中に入っており、これを溶出させる。治療薬は、本体84全体のみならず逆棘82とエンドキャップ86全体に亘って分散させていてもよいが、治療薬は本体部分84の前方領域内だけに配置するのが望ましい場合もある。例えば、治療薬は、矢印81で示すように、本体部分84の前3分の2部分内にのみ配置するのが望ましい場合もある。代わりのやり方では、矢印83で示すように本体部分の前半分だけ、又は矢印85で示すように前3分の1部分だけに、治療薬が入っているのが望ましい場合もある。実際には、本体部分84の先端領域87だけに治療薬が配置されているのが望ましい場合もある。従って、選択された領域81、83、85、87によって、治療薬は、インプラント80の特定の領域81、83、85、87からしか溶出しないことになる。治療薬が入っている本体部分84の前端部81、83、85、87は、インプラント80の活動端という名前が付けられている。エンドキャップ86は、本体部分84と一緒に形成してもよく、即ち、本体部分84と一体構造であってもよいし、又は、別個の要素として提供してもよい。別個の要素として提供する場合は、エンドキャップ86と本体部分84は、本体部分84が、目標である組織部位に配備された後、医師がエンドキャップ86を取り付けられるようにする対応する嵌合要素を有してなければならない。例えば、機械的スナップ式又は螺合式固定の様なあらゆる適した嵌合システムが使用できる。
【0122】
図9に示すように、本発明のインプラント90は、椎間板起因の痛みを緩和するために、円板91に配置することができる。治療される円板91は、2つの椎骨93の間に挟まれている。インプラント90は、円板91の繊維輪又は髄核の様な円板91の内部領域に挿入される。この実施形態は、中空のカニューレを通して、例えば、図4に示すようにして実現される。カニューレを引き抜くと、逆棘が展開する。インプラント90は、インプラント90を目標である組織部位にしっかり拘束して、インプラント90の円板91内での前方及び後退運動を防止するために、インプラント90から延びる錨着システム92を有している。インプラント90は、更に、治療薬96を円板91の中に溶出する活動領域94を有している。溶出する治療薬96の濃度勾配は、インプラント90の活動領域94から1cm乃至最遠5cmまで広がることになる。
【0123】
図10には、図8のインプラント80が、滑膜関節の滑液腔102内に配備された状態で示されている。描かれている関節100は、理想的な滑膜関節であるが、膝の大腿骨−脛骨関節を概ね模している。インプラント80の代表的な留置を示している。この実施例では、インプラント80の留置は、関節内であり、骨からは離れている。図示のように、エンドキャップ86の前方面89は、滑膜104に当接しており、こうして、インプラント80が関節100の中に前進運動しないようにしている。同様に、逆棘82は、インプラント80が関節100から後退退出するのを予防している。インプラント80の活動端106は、治療薬108を腔102の滑液の中に溶出させる。
【0124】
図11は、別のインプラント110の側面図である。インプラント110は、先細ロッド形状の本体部分114と、この本体114から延びている縫合糸112を備えている。本体114は、先に説明したように、中空でも中実でもよく、生物分解性の材料でも非生物分解性の材料でもよい。本体114は、治療薬が中に入っており、この治療薬が溶出する。本体114は、全体が活動する(即ち、治療薬を溶出する)ようになっていてもよいし、或いは、先に他の実施形態で説明したように、所定の位置に活動領域を有するものでもよい。縫合糸112は、生物分解性材料で作られていてもよいし、非生物分解性材料で作られていてもよい。生物分解性材料で作られている場合、縫合糸112の材料には、本体114よりもかなりゆっくり分解するものを選択するのが望ましい。図示のように、縫合糸112は、本体114の中央領域116から進入し、実質的に本体114を周回して、中央領域116から外に出ている。本体部分114から延びている縫合糸112は、インプラント110の錨着システムの役目を果たす。この縫合糸112を隣接する組織に当てて結わえることにより、インプラント110を、目標である組織部位にしっかりと維持できるようになり、よって、目標である組織部位内での又は当該部位からのインプラント110の並進運動が防止される。
【0125】
図12は、同じく縫合糸122を使用している別のインプラント120を示している。インプラント110と同じように、縫合糸122は、本体部分124の真下を横断している。但し、インプラント120では、縫合糸122は、本体124に、第1の端領域126から進入し、本体124の第2の端領域128から外に出ている。両端領域126、128は、例えば、本体部分124の長手方向軸129に対し外側3分の1を含んでいる。
【0126】
別の実施形態のインプラント130を図13に示している。インプラント130では、縫合糸132は、本体134の第1の終点136の位置又はその付近で進入し、本体134内を実質的に長手方向中心線139に沿って横断し、本体124の第2の終点の位置で外に出ている。終点136、138は、本体134の長手方向中心線139によって画定されている。
【0127】
なお、幾つかの薬物貯留体設計110、120、130を、関節嚢内で使用することを考えており、その場合、縫合糸112、122、132は、貯留体110、120、130を関節嚢の内側に押し当てて保持するのに使用される。図14は、例えば、図11のインプラント110を滑膜関節140に配備した状態を示している。本体114の弾丸形状の先端は、インプラント110の関節嚢組織142への挿通を容易にし、組織の崩壊を最小限にする。関節嚢142に鈍プローブで非常に小さい孔を開け、次いで、先細のロッド114をこの孔にゆっくりと押し通し、組織の裂けを最小限にするために組織をゆっくりと引き離す。ロッド114が完全に挿入されてしまうと、関節嚢142の孔はひとりでに閉じる。ロッド114に埋め込まれている縫合糸112は、嚢142内を挿通されて留置されているので、ピンと張って関節嚢142の外側に押し当てて結ぶことができ、これにより貯留体110を強制的に関節嚢142の内側に押し当てることができる。貯留体110を関節嚢142の内側に押し当てて維持することで、貯留体110が正常な関節140運動に干渉するのを防止することができる。
【0128】
図15は、滑膜関節150に配備された図12のインプラント120示している。縫合糸122は、関節嚢152の2つの地点から外に出ている。縫合糸122の両端は、互いに結えてもよいし、別々に結えてもよい。この設計は、回動及び関節150の運動に干渉する可能性無しに、貯留体120は関節嚢152の内側に押し当てられて保持されるという利点を提供している。
【0129】
椎間円板及び関節嚢に使用するインプラント設計として、縫合糸に沿って一体に結びつけたビーズ状の貯留体を備えたものを幾つか考えている。その様な実施形態のインプラント160を図16に示している。これまでに論じた実施形態と同じように、逆棘164は、中空の、ポリマーの様な生物分解性材料に治療薬を装填した形態であってもよいが、代わりのやり方では、ビーズ164が空洞を形成し、そこに治療薬を詰め込んで、空洞の壁を通って拡散するようにしてもよい。ビーズ164は、目標である組織部位内に配置されると、治療薬を溶出させる。ビーズ164は、直径が約100μm乃至5mmである。ビーズ164は、大きさが、約1mmから約2mmの範囲にあるのが更に望ましい。縫合糸162は、分解性材料でも非分解性材料でもよい。インプラント160の端からは、糸160を円板又は関節嚢の様な目標である組織部位内に保持するための錨着装置の役目を果たす随意的な針又は逆棘166が延びている。このインプラント160では、治療薬溶出ビーズ164は、炎症を起こしている組織の経路に沿って最適に位置決めされるので、結果的に、薬物のより効果的な配送及びより優れた臨床効果が得られる。図17に示すように、糸160は、望ましければビーズ164を通した糸160が入っているカニューレ170を、例えば、円板又は関節又は軟組織の内部に挿入し、次いで逆棘166を軟組織(例えば、輪)の中に展開させ、ゆっくりとカニューレ170を後退させると、インプラント160がカニューレ170から引き出される、というやり方で植え込まれる。例えば、インプラント160の先導縁を固定することにより、錨着装置166は、治療薬が所望されている場所にビーズ164を保持する。図18と図19は、インプラント160を目標である組織部位に配備しているところを示している。椎間円板180又は関節嚢192に、鈍プローブで非常に小さい孔を開け、この孔を通してカニューレを挿入し、ビーズ164の列169を植え込む。例えば、図18に示すように、インプラント160は、円板180内に配備され、錨着装置166が円板180の繊維輪内に埋め込まれる。ビーズ164は、円板180内部に広げられ、次いで神経根182の外側に沿って広げられる。図19に示すように、インプラント160は、関節190を横断して配備されてもよく、その場合、結果的に、関節190の滑液腔194内に治療薬をより均一的に配送することができる。インプラント160の両端で、縫合糸162を関節嚢192に結わえ付けて、インプラント160を関節190内に錨着するようにしてもよい。
【0130】
本発明は、治療薬を目標である組織部位に投与するための別の方法を提供している。図20に示すように、目標である組織部位は、脊柱管200、又は脊柱管200を取り巻いている組織、例えば、円板202又は神経根204などである。椎骨208によって構成されている脊柱管200を貫いて、脊髄206が走っている。先に論じたように、所望の治療薬を封入した微小球209が既知のやり方で形成される。次いで、微小球209を入れた担体を脊柱管200に注入するやり方などで、それら微小球209が、脊柱管200の中に配備される。微小球209は、その後、治療薬を脊柱管200の中に溶出させる。微小球209は、神経根204又は円板202の様な周辺組織に分散される。代わりのやり方は、治療薬を円板202だけに提供する場合、医薬品含有微小球209は、円板202に直接注入してもよい。図21に示すように、治療薬が充填された微小球219は、関節210を治療する場合には、滑膜腔212の中に注入してもよい。微小球219を関節腔212の中に配備するのに、シリンジ又は類似装置を使用してもよい。
【0131】
微小球は、流体に非常に似ており、周辺組織の種類にもよるが、比較的急速に分散し、従って治療薬を散布することができる。状況によっては、これが望ましい場合もあれば、治療薬を、明確に規定された目標部位に厳しく拘束した状態に保つことがより望ましい場合もある。本発明では、治療薬の散布にこのように制約を課すために付着性ゲルの使用を考えている。それらゲルは、例えば、円板空間内、脊柱管内、周辺組織内、又は滑液腔の様な関節空間内に配備することができる。この実施形態では、ゲルは、関節空間内の定位置に留まるために、付着性及び/又は固化性を有するゲルである。
【0132】
1つの実施形態では、貯留体は、治療薬をゲル内に均一的に分布させた付着性ゲルを備えている。このゲルは、これまでに示した何れの適した種類のものでもよいが、ゲルには、一旦配備されると目標である送達部位から移動しないだけの粘性がなければならず、即ち、ゲルは、事実上、目標である組織部位に「くっつく」ものでなければならない。ゲルは、例えば、目標である組織と接触すると同時に、又は狙い撃ち式送達システムから配備された後、硬化してもよい。狙い撃ち式送達システムは、例えば、シリンジ、カテーテル、又は何か他の適した装置であってもよい。狙い撃ち式送達システムは、ゲルを目標である組織部位に注入するか、又は当該部位に噴霧してもよい。ゲルは、生物分解性であってもよい。非固化性ゲルの場合、事前に混ぜ合わせて売られており、注入するだけでよいが、付着性及び/又は固化性ゲルの場合は、2成分送達システムとする必要があり、注入時に2つの成分を混ぜ合わせて化学反応を活性化させ、それらをくっつけるか固化させることになる。
【0133】
図22は、治療薬を染み込ませたゲル211を、目標組織部位である神経根210の周りに配備した状態を示している。ゲル212は、付着性又は配備後固化性の何れであっても、一旦配備されると、治療薬を神経根210に密接に接着させて保持して、治療有効用量の治療薬を神経根210に提供し、このとき、用量勾配はゲル212の領域の外側では急に低下する。治療薬は、従って、神経根210に的を絞っているわけである。
【0134】
代わりのやり方では、治療薬をゲルの中に直接混ぜ込むのではなく、本発明は、更に、治療薬を装填した微小球をゲル内に分散させることを考えている。1つの実施形態では、微小球は、治療薬の徐放を提供している。更に別の実施形態では、生物分解性のゲルは、微小球が治療薬を放出するのを妨げており、而して、微小球は、ゲルから自由になるまでは、治療薬を放出しない。この実施形態を図23に示しており、そこでは、ゲル222は、目標組織部位である神経根220の周りに配備されている状態が示されている。ゲル222内には、所望の治療薬が封入された複数の微小球が分散配置されている。点線227は、ゲル222の元の配備領域を表しており、実線225は、ゲル222の分解によって生じたゲル222の現在の配備領域222を表している。
【0135】
微小球226は、こうして、ゲル222から放出される。それら微小球228は、一旦ゲル222から放出されると確実に分解され、そして、治療薬が放出される。
微小球を目標である組織部位に送達するのに、ポンプ又などの様な局所式送達装置を使用できるものと理解頂きたい。同じく、微小球の有無にかかわらず、本発明のゲルを目標部位に送達するのにポンプを使用してもよい。局所式送達システムの例は、同時係属米国特許出願第11/091,348号に提示されており、同出願を参考文献としてここに援用する。抗炎症薬又は同化化合物を椎間円板又は関節動作関節に送達するのに貯留体インプラントを使用することは、以前には開示されていなかった。本発明に開示し、本発明で考えている特定の設計は、組織崩壊と正常な関節運動への干渉を最小限にしながら、貯留体インプラントを円板又は関節嚢の中に挿入する1つのやり方を提供している。本発明は、更に、貯留体が、炎症を起こしている組織から移動するのを防止し、薬物を、より均一に配布することができるようにしている。
【0136】
明細書に引用している全ての刊行物は、特許文献並びに非特許文献共に、本発明が属する技術分野の当業者の技量水準を示している。全てのそれら刊行物を、あたかも、各々の刊行物が、特定的、個別的に、参考文献として援用されて表示されているかの如く、参考文献としてここに全面的に援用する。
【0137】
以上、本発明を、特定の実施形態を参照しながら説明したが、それら実施形態は、本発明の原理と適用を例示的に示しているに過ぎないものと理解頂きたい。従って、例示されている実施形態に対しては、数多くの変更を加えることができ、また、特許請求の範囲によって定義されている本発明の精神と範囲から逸脱すること無く、他の装置を考案することができるものと理解頂きたい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】薬物貯留体インプラントの1つの実施形態の断面図である。
【図2】薬物貯留体インプラントの代わりの実施形態の断面図である。
【図3】薬物貯留体インプラントの別の実施形態の側面図である。
【図4】狙い撃ち式送達装置と薬物貯留体インプラントを示している。
【図5】別の薬物貯留体インプラントの側面図である。
【図6】第1の実施形態のX線マーカーを有する薬物貯留体インプラントを示している。
【図7】第2の実施形態のX線マーカーを有する薬物貯留体インプラントを示している。
【図8】薬物貯留体インプラントの代わりの実施形態の側面図である。
【図9】円板内に配備された図9の薬物貯留体インプラントを示している。
【図10】関節内に配備された図8の薬物貯留体インプラントを示している。
【図11】別の薬物貯留体インプラントの側面図である。
【図12】代わりの薬物貯留体インプラントの側面図である。
【図13】更に別の代替例の薬物貯留体インプラントの側面図である。
【図14】関節内に配備された図11の薬物貯留体インプラントを示している。
【図15】関節内に配備された図12の薬物貯留体インプラントを示している。
【図16】別の薬物貯留体インプラントの側面図である。
【図17】図16の薬物貯留体インプラントと、付帯する狙い撃ち式送達システムを示している。
【図18】円板及び周辺の軟組織内に配備された図16の薬物貯留体インプラントを示している。
【図19】関節内に配備された図16の薬物貯留体インプラントを示している。
【図20】微小球を使った、脊柱管及び周辺の軟組織への治療薬の送達を示している。
【図21】微小球を使った、滑液腔への治療薬の送達を示している。
【図22】ゲルを使った、脊柱管の周辺の軟組織への治療薬の送達を示している。
【図23】微小球を分散させたゲルを使った、脊柱管の周辺の軟組織への治療薬の送達を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物貯留体インプラントにおいて、
本体と、
前記本体内に配置されている治療薬と、
前記本体から延びており、前記本体の、目標である組織からの移動を制限するようになっている、錨着システムと、を備えており、
前記本体は、前記治療薬を溶出することができる、薬物貯留体インプラント。
【請求項2】
前記本体はロッド形状をしており、前記錨着システムは、前記ロッド形状の本体から延びていて、前記本体の、前記ロッド形状の本体の長手方向軸に沿った並進運動を制限するようになっている、請求項1に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項3】
前記錨着システムは、逆棘である、請求項2に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項4】
前記逆棘は、可撓性を有している、請求項3に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項5】
前記錨着システムは、組織面に当接するようになっている表面を提供している、請求項2に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項6】
前記錨着システムは、前記ロッド形状の本体の端に配置されたエンドキャップである、請求項5に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項7】
前記錨着システムは、縫合糸である、請求項2に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項8】
前記薬物貯留体インプラントのX線撮影を支援するようになっているX線マーカーを更に備えている、請求項1に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項9】
前記本体は、前記本体内に活動領域を備えており、前記治療薬は、前記活動領域内にのみ配置されている、請求項1に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項10】
前記本体は、中実の生物分解性材料で形成されており、前記治療薬は、前記生物分解性材料の少なくとも一部分に分散している、請求項1に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項11】
前記生物分解性材料内に配置されている複数の微小球を更に備えており、前記微小球には、前記治療薬の少なくとも一部が封入されている、請求項10に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項12】
前記本体は、空洞を画定している殻を備えており、前記治療薬は、前記空洞内に配置され、前記殻は、少なくとも部分的には前記治療薬に対し透過性を有している、請求項1に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項13】
前記薬物貯留体インプラントは、前記薬物貯留体インプラントの約1cm乃至約5cmに、前記治療薬の最適な濃度を提供する、請求項1に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項14】
前記治療薬は、抗炎症薬である、請求項1に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項15】
縫合糸で一体に接続された複数のビーズであって、治療薬を備えているビーズを備えている、薬物貯留体インプラント。
【請求項16】
前記ビーズは、それぞれ、中実の生物分解性材料で形成されており、前記治療薬は、前記生物分解性材料全体に分散している、請求項15に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項17】
各ビーズは、空洞を画定している殻を備えており、前記治療薬は、前記空洞内に配置され、前記殻は、少なくとも部分的には前記治療薬に対し透過性を有している、請求項15に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項18】
錨着システムは、前記縫合糸に接続されている、請求項15に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項19】
先導の前記ビーズは、錨着システムを備えている、請求項15に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項20】
前記錨着システムは、フック又は逆棘である、請求項18に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項21】
前記ビーズは、前記縫合糸に沿って直線的に配置され、前記錨着システムは、前記縫合位置の先導端に取り付けられている、請求項18に記載の薬物貯留体インプラント。
【請求項22】
前記治療薬は、抗炎症薬である、請求項15に記載の薬物貯留体インプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2009−533185(P2009−533185A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505619(P2009−505619)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/066496
【国際公開番号】WO2007/121288
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】