説明

薬草抽出物の化学的および薬理学的標準化

【課題】
本発明は、薬草抽出物の化学的および薬学的標準化を確実とする方向を指向する。
【解決手段】
複数の生成物を生産するための複数の異なる操作の実施により単離された生成物の試験により同一の生物原から得られる化合物の、生物学的または薬理学的に活性な混合物の標準化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は抽出操作の再現性を確実にする方法に向けられている。本発明はまた、生物学的源、特に植物源からの化学組成物の薬理学的に活性な混合物を、高い再現性で抽出する方法に向けられている。さらに本発明は、高い薬理学的活性を有する、生物学的資源から得られる薬理学的に活性な混合物を得る方法に向けられている。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
薬草の料理における一般的な使用に加えて、人間の文化の開始のすぐ後から、薬草は薬草の治療および薬草の薬に用いられてきた。薬草はまた、日常の活動を増強するための食物の添加物として、ある文化において用いられてきた。そのような治療に、および食品添加物として用いられる典型的な薬草は、浸出液あるいは茶として摂取され、または湿布剤として外部から与えられる。そのような投与において、用いられる薬草は典型的にはたくさんの化学組成物の混合物である。一般的には、広く受け入れられている薬草の治療の適切な使用は、患者において有害な副作用の上昇を与えない。薬草治療の有効性は、何世紀もそのような治療を採用してきたそれらの文化においてたしかに確立されているが、西洋科学の記録においてはまだ「承認されて」いない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Takagi K. ら,Japan J. Pharmacol. 22:339(1972)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
西洋薬学は一般的に、単独で、またはさらに好ましくは、薬学的に承認された担体内で投与される、単一の組成物または比較的少ない組成物の混合物のいずれか一方として採用されている。薬品としての、これらの単一組成物の研究および開発が、強力な科学的および医学的文書の作成の大部分である。不運なことに、これらの薬品の多くは比較的短い使用の歴史をもち、多くが深刻な副作用を起こすことが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある程度一般的に、西洋薬学の表現が治療の科学としてみなされるが、一方では伝統的な漢方薬が治療の技術とみなされる場合もある。現代において漢方薬は、西洋においていくらかの容認を得ているが、まだ、いくつかの特定の挑戦に会う。第一に、多くの高度に訓練された医療従事者の主張には、漢方薬は我々の高度に技術的で科学指向の社会において、科学的に支持する十分なデータを欠いているという見方がある。第二に、漢方薬のどの組成物が薬理学的に有効であるかについての心配がある。さらに、漢方薬の薬学的有効成分に存在する濃度または投与量に対する疑問が生じる。つまり、伝統的な医療の従事者は、薬草治療についての質的および量的の両方の基準の欠如を心配している。そのような標準化の欠如は、そのような非伝統的な、または薬草の薬物を処方して投与量を適合させる能力を隠すとみられている。そのような標準化の欠如はまた、制御機関の一部に、さらなる研究やそのような非伝統的な治療の容認に対する躊躇を招いてきた。
【0006】
西洋伝統医学の基準のいくつかを満たしていないが、そのような薬草組成物は副作用がわずかあるいは皆無であり、様々な病気の治療に実に効果的であることが知られている。ある程度、多くの場合における薬学的な活性は、特定の生物学的活性成分の存在だけでなく、薬草混合物に存在する2またはそれ以上の化学組成物の組み合わせの結果得られる、相乗的な効果に起因し得る。
【0007】
漢方薬および生物学的に増強する薬草組成物の両方として定義される薬草治療薬は、植物から得られるために、そのような薬草治療薬の化学組成は、少なくとも遺伝子の組成や、植物が生産される生長条件、収穫条件および植物の活性成分の単離と同様の、たくさんの因子に応じて多様となる。したがって、特定の植物の生物学的な多様性は、典型的には、植物に見出される特定の化学組成物の量の顕著な多様性を生じさせることが予測される。そのように、同一の生物学的分類の植物であっても、土壌、湿気および他の生長条件の違いが、植物により生産される特定の化学組成物の量に顕著に影響する可能性がある。
【0008】
最後に、植物が処理される方法が、植物から単離される特定の化学組成物の相対的な比率および全量に重大な影響を及ぼす可能性がある。そこで、収穫、貯蔵、粒子の大きさの低減、液体組成物の圧搾、および抽出のような工程がすべて、化学組成物の比率および量、したがって、単離された生成物の薬理学的活性
を決定する。
【発明の効果】
【0009】
薬草組成物の組成および薬学的活性に影響を与える多くの因子を考慮すると、その化学組成物およびそのような化学的な混合物の薬学的活性の両方の観点から、薬物組成物の標準化に基づいた方法を採用することが望ましい。さらに、生育された植物の生長条件を大規模で標準化するのは不可能かもしれないが、標準化された薬草組成物を得るために、処理条件を標準化することが望ましい。さらに、生物学的混合物、特に植物または薬草混合物の組成を精確に決定し、比較することが可能であれば、高い薬理学的活性を得るために処理条件が制御されるようになるであろう。科学の集団で得られるそのような方法によれば、薬草組成物の特定の投与量を自信をもって処方する医者だけでなく、薬草組成物の「製造業者」も、そのような混合物のより高い薬理学的活性、改善された品質制御、および、多様な源からの薬草混合物を区別する能力を達成するであろう。
【0010】
(発明の開示)
本発明は、高い薬理学的活性をもつ標準化された生物学的組成物を得る方法、および標準化された処理操作を得る方法の両方を提供する。本発明はまた、抽出のような特定の方法により得ることが可能な、高いまたは最も高い薬理学的活性を有する生物学的組成物、特に薬草組成物の単離を可能にする。ここで、「生物学的組成物」とは、生物源から得られる成分の混合物を指す。そのような源は、動物であっても植物であってもよい。本発明は、植物または野菜の源に対して最も広い適用をもつことが期待される。ここで「組成物(composition)」として用いられる語は、成分の混合物を指す。ここで「成分(components)」として用いられる語は化合物、そのような化合物の塩、複合体および自然界で見出される他の分子およびイオン種を指す。ここで「薬草の(herbal)」およびその変形として用いられる語は、食用の野菜または植物の物質または材質を指す。
【0011】
本発明の、生物学的源、好適には植物から得られる化合物の、生物学的または薬理学的に活性な混合物の標準化に用いられる方法は、まず、同一の生物学的源、好適には植物源からの複数の試料を用いる、複数の生成物を生産するための複数の異なる操作の実施を有する。単離された生成物は、その後、薬理学的試験に供され、その試験において最も高い薬理学的活性を示す生成物が選択される。選択された生成物を生産するのに用いられる特定の操作が、その後、試験生成物を生産するために繰り返される。その後、生成物の(複数の種類の)化学的成分に関する質的な、および多くの場合、量的な情報を提供するために、選択された生成物と試験生成物の両方に物理的および/または化学的試験が行われる。まず複数の生成物に対して行われた薬理学的試験は、その後、試験生成物に繰り返される。質的および量的な情報または時々そのように称される「化学的指紋」、および選択された生成物と試験生成物の薬理学的活性が互いに比較される。試験生成物の化学的成分または(複数の種類の)化学的成分が、選択された生成物の同一の化学的成分の量と、約プラスまたはマイナス10%以内で異なる量で存在し、試験生成物の薬理学的活性が選択された生成物の対応する薬理学的活性と、プラスまたはマイナス約10%パーセント以内で違うような場合には、選択された生成物を生産するのに用いられた操作が、薬理学的活性混合物を生産する標準操作として選択される。さらに、最も高い薬理学的な活性が探索されたことを確実とするために、薬理学的試験(または「薬理学的指紋」)により決定された最高の薬理学的活性を有し、物理的および/または化学的試験(または「化学的指紋」)により同定された混合物を、好適な薬理学的活性混合物として選択してもよい。
【0012】
一般に、検討される操作は同様であるか、一般的には同じである。薬草治療薬または組成物に用いられる混合物のように、例えば、化学的成分の混合物の源が植物源である場合には、典型的な操作は収穫の方法、貯蔵の方法、液体成分を圧搾する方法、および好適には化学的成分、最も好適には、薬理学的な活性に最も関与する化学的成分を抽出する方法を含んでもよい。特定の操作に方法が選択され、複数の方法の生成物を生産するため、可能なときは一度に複数の変数が変更される。抽出の方法において、好適な選択された生成物および試験生成物はそれぞれ、(複数の植物抽出物から得られた)選択された植物抽出物および試験植物抽出物であろう。
【0013】
操作の生成物、好適には植物抽出物に行われる薬理学的試験は、インビトロ(in vitro)および/またはインビボ(in vivo)の薬理学的試験の形式であってよい。本発明において、少なくとも2つのインビトロおよび少なくとも2つのインビボの薬理学的試験が用いられることが好ましい。これらの試験は一般に、生体の変化した生物学的な状態と関係する。これは、生体の増強された状態、または、患者の医学的な状態の効果的な処置のどちらの形もとり得る。増強された状態の例は、覚醒された状態、鎮静効果等を起こす刺激剤であり得る。
【0014】
生成物、薬草材料が検討されている場合には好適には植物抽出物は、最良または最高の薬理学的活性を示すものが選択される。これは、生物学的状態の最も顕著な増強、または患者の最も望ましい医学的な状態を起こすものに対応する。
抽出操作が試験されている時の試験抽出物のような試験生成物を得るには、選択された植物抽出物のような選択された生成物を得るために用いられる同一の条件が再現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図15】1日当たり水(0.5ml)またはCVT−E001(200mg/kgを0.5ml中)のいずれか一方を給餌された(8−13日)ラットの学習曲線。ラットはプールの中央で隠されたプラットフォームの位置を学習することを、5日を超える間、要求された。ラットはそれぞれの日に4回の試行を受けた。値は、35または36回の試行に基づく、平均±平均の標準誤差である。処置の明らかな効果は示されなかった。
【図16】ラットが、隠されたプラットフォームの最初の新しい場所を学習する、反応時間(14日)。ラットは我々のグループに分類された。グループ1(C/Scop)は食餌の栄養として水のみを受け、試験の15分前にスコポラミン(2mg/kg)を注射された。グループ2(HT/Scop)は食餌の栄養としてCVT−E001(200mg/kg/日)を受け、試験の15分前にスコポラミン(2mg/kg)を注射された。グループ3(C/Sal)は食餌の栄養として水を受け、試験の15分前に食塩水(0.2ml)を注射された。グループ4(HT/Sal)は食餌の栄養としてCVT−E001を受け、試験の15分前に食塩水(0.2ml)を注射された。*はC/Scopとp<0.05で明らかに異なる。
【図17】ラットが、隠されたプラットフォームの最初の新しい場所を学習する反応時間(14日)の3回の試行の組み合わされたデータ。処理は図16におけるのと同じである。値は、33または36回の試行に基づく、平均±平均の標準誤差である。明らかな違いは示されなかった。
【図18】ラットが、隠されたプラットフォームの最初の新しい場所を思い出す反応時間(15日)。処理は図16におけるのと同じである。値は、11または12回の試行に基づく、平均±平均の標準誤差である。 *はC/Scopとp<0.05で明らかに異なる。**はC/Scopとp<0.01で明らかに異なる。
【図19】ラットが、隠されたプラットフォームの最初の新しい場所を思い出す反応時間の、3回の試行の組み合わされたデータ(15日)。処理は図16におけるのと同じである。値は、33または36回の試行に基づく、平均±平均の標準誤差である。 *はC/Scopとp<0.05で明らかに異なる。**はC/Scopとp<0.01で明らかに異なる。 ***はC/Scopとp<0.01で、HT/Scopとp<0.05で明らかに異なる。
【図20】ラットが、隠されたプラットフォームの2番目の新しい場所を学習する反応時間(16日)。処理は図16におけるのと同じである。値は、11または12回の試行に基づく、平均±平均の標準誤差である。 *はC/ScopおよびHT/Scopとp<0.01で明らかに異なる。
【図21】ラットが、隠されたプラットフォームの2番目の新しい場所を学習する反応時間の3回の試行の組み合わされたデータ(16日)。処理は図16におけるのと同じである。値は、33または36回の試行に基づく、平均±平均の標準誤差である。明らかな違いは示されなかった。
【図22】ラットが、隠されたプラットフォームの2番目の新しい場所を思い出す反応時間(17日)。処理は図16におけるのと同じである。値は11または12回の試行に基づく、平均±標準誤差または平均である。 *はC/Scopとp<0.05で明らかに異なる。
【図23】ラットが、隠されたプラットフォームの2番目の新しい場所を思い出す反応時間の3回の試行の組み合わされたデータ(17日)。処理は図16におけるのと同じである。値は33または36回の試行に基づく、平均±平均の標準誤差である。 *はC/Scopとp<0.01で明らかに異なる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の実施の形態)
本発明の方法は、薬草処理技術、特に植物源からの薬理学的活性混合物の抽出の差別化、再現性の改善および達成、または標準化、および高い薬理学的活性の植物抽出物を得ることにおいて、最も広い適用を有すると期待される。発明の再現性および標準化の手順は、単離された、典型的には抽出操作で得られた生成物の薬理学的および化学的指紋分析の組み合わせの使用を含む。
【0017】
化学的指紋分析
化学的指紋分析は、存在する(複数の種類の)化合物に特徴的である質的な、および多くの場合には量的な情報を得るために、1つの化合物または化合物の混合物、例えば薬草の薬学的混合物が試験される過程である。これらの特徴的な成分の認識可能で特徴的な量での存在は、(複数の種類の)成分の薬学的性質と関係する可能性のある化学的な特徴を提供する。化学的指紋分析の準備または集積は、試料、植物ソースから得られる材料に指紋分析が適用されるときにはしばしば抽出物を、クロマトグラフィーまたは電気泳動法、および続いて行われる、分離方法において溶出される化学的成分の分析を含む分離操作に供する。溶出された化学的成分の実際の化学的指紋の形成において、たくさんの検出方法が採用されてよい。薬草の薬学的組成物から得られる化学的成分を分離する最も適切な方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)であり、溶出された薬物の特性分析は、紫外吸収測定および続いて行われるエレクトロスプレー質量分析による。この分析方法は、薬草の薬学的調製において見出されるような、化学的成分の複雑な混合物の最も明確な特性分析を提供する。このような指紋から得られるデータは、薬草の薬学的調製物の化学的成分の化学的な特徴に関する情報だけでなく、提供された試料の信頼性、純度、および組成の一致に関する情報も提供する。
【0018】
薬草の薬学的生成物のような複雑な化学的混合物の化学的指紋は、薬草の薬学的生成物の可溶な抽出物の調製をしばしば含む、化学的混合物の成分の可溶化を含む。溶液または抽出物はその後、混合物を成分のグループ、または好適には個々の成分に分類する分離操作に供される。そのような分離操作は、化学的分析方法と組み合わされたときに、生成物に通常見出され、生成物に特徴的である重要な化学的構成物の、しばしば正確な同定を可能にする。
【0019】
採用される分離操作は好適には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、電気泳動(ゲルまたはキャピラリー)、薄層クロマトグラフィー(TLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)のようなクロマトグラフィー操作である。引き続き薬学的な評価を行うことができる試料を得るために、HPLCが好適な方法である。HPLCの場合に好適な検出系は、吸収および蛍光分光法、屈折率、電気化学的方法、蒸発光散乱、エレクトロスプレー質量分析、またはこれらの組み合わせを含む。GCの場合は、電子捕獲、ナトリウム−リンまたは質量分析計がしばしば用いられる。TLCおよび電気泳動の分離方法が採用されるとき、様々な熱量の、および/または質量分析の検出方法が採用される。薬草の薬学的生成物の場合には、紫外吸収検出およびエレクトロスプレー質量分析と組み合わせたHPLCの使用が、吸収の指紋を提供し、吸収成分の多くに分子質量を帰属させる。カラムからの溶出プロフィールと吸収特性と分子質量特性との組み合わせは、質的および量的の両方で薬草の生成物の個々の化学的構成物の同定を提供する。
【0020】
化学的指紋は一般に、吸収およびエレクトロスプレー質量分析検出と組み合わされたHPLCを用いて行われる。以下の説明は、CVT−E001の指紋分析に関係する。
【0021】
簡潔には、対象となる薬草の生成物は適切な溶媒、しばしば水、アルコール、アセトニトリル、エチルアセテート、またはこれらの溶媒の組み合わせ(アルコール溶液はしばしば、さらに処理されずに分析される)に抽出される。抽出物はその後、粒子を除去するために濾過され、干渉する溶媒を除去するために乾燥される。抽出物は分析まで冷凍されて保存されてもよい。分析が行われるとき、抽出物は適切な溶媒に溶解される。典型的には0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を含有する20%アセトニトリルを用いることができるが、これは分析される抽出物の溶解度に応じて変更することができる。既知の量の抽出物はその後、HPLC装置に添加される(典型的には100mlの溶媒中で1mg以下が分析される)。HPLC装置は、1分間に0.01mlから5mlの範囲またはそれ以上の流速を有し、無勾配の系も用いることができるが、溶媒の勾配を提供する能力を有する、たくさんの入手可能な型のいずれでもよい。典型的には薬草の生成物の化学的構成物の分離は、水、アセトニトリルおよびTFAの勾配溶出を用いることにより達成される。溶媒Aは水、または少量のアセトニトリル(2%−5%)および0.05%TFAを含有する水からなる。溶媒Bは0.05%TFAを含む高濃度のアセトニトリル(70%−95%)からなる。流速は通常1分間に1ml(1分間に0.5ml−1.5mlまたはそれ以外の流速が用いられてもよい)である。少量の溶媒Aから多量の溶媒Bへ移行する勾配が用いられる。この勾配は、選択された化学的成分を単離するために変更可能である。勾配の一例は以下を含むことができる:溶媒A(5%アセトニトリル,0.05%TFA)、溶媒B(70%アセトニトリル,0.05%TFA);流速1ml/分;時間=0において移動相は100%溶媒Aである。時間=30分において移動相は100%溶媒Bである。0と30分の間で勾配の変化は直線的である。30と35分の間で移動相は100%溶媒Bである。35と40分の間で溶媒は100%溶媒Aに戻され、分離系は次の試料の分析の前に再び平衡化される。
【0022】
HPLCが化学的指紋分析に好適な試験である一方、技術分野の者に明らかであるように、タンパク質の定量、炭化水素の定量、有機抽出または化学分析の他の方法にTLCを用いることも可能である。
【0023】
分離は、分析用高速液体クロマトグラフィーカラム(通常、4.6mmの内径×長さ25cm)において達成されるが、他の大きさが用いられてもよい(例えば1mm×25cm)。カラムは、薬物の分離に用いられる、たくさんの充填材料(逆相材料、シリカ、親水性相互作用材料等)のうちのいずれを含んでもよい。典型的には、C8 逆相材料を含む逆相カラムが用いられる。
【0024】
対象となる薬物の検出は、前述した適用可能な検出器の使用を含む。典型的には紫外吸収とエレクトロスプレー質量分析の組み合わせが用いられる。HPLCカラムからの溶出直後に、対象となる化合物を含む溶媒が紫外吸収検出器を通過して吸収が記録され、これにより、典型的な吸収プロフィールが提供される(対象となる薬物の吸収特性に応じて、たくさんの波長が測定される)。紫外吸収検出器の通過の直後に、対象となる薬物を含む溶媒は、エレクトロスプレー質量分析計に続く。分析用カラムの場合には、エレクトロスプレー装置が少ない流量の溶媒(最高で50−100ml/分)にしか適用されないため、一定量の流れる溶媒が分離される。より小さいカラムの場合には、移動相のすべてがエレクトロスプレー装置に入ることが可能かもしれない。分析用カラムの場合には、分離は典型的には10%以下の流れをエレクトロスプレー装置に入れ、一方、残りの90%以上の流れは特定の薬物を含有する分画として、後の薬理学的評価のために集められてもよい。エレクトロスプレー質量分析計に入る薬物は、それらがプロトンをとる場合(例えばある種のアミン類、ステロイド類またはフラボン類)には、陽性モード分析のためにプラスに荷電したイオンを提供する。そのような薬物は、それらの正確な化学的質量に関する情報を提供することができるであろうし、また、それらのフラグメント化のパターンによって化学的な同定をさらに提供するかもしれない。荷電せず、むしろ塩基性環境においてプロトンを失う薬物(糖類、ある種のフェノール類およびカルボン酸)は、少し異なる方法で調べられなければならない。荷電しない薬物の場合は、個々の分画はカラムからの溶出後に集められ、適切な検出器(例えば紫外吸収または屈折率計)を通過する。その後、各分画は乾燥されてから、適当な溶媒(例えば、10%水酸化アンモニウムが混合された水中に50%アセトニトリル)に再構成され、陰性モードで動作しているエレクトロスプレー装置に直接、投入される。再び、正確な化学的質量、さらに、それらのフラグメント化のパターンによって化学的同定に関する情報が提供される。
【0025】
したがって、溶出パターンの組み合わせ、紫外吸収特性および化学的質量およびフラグメント化のパターンは、薬草の生成物に見出される個々の特徴のある薬物の同定に関する広範囲な情報を提供する。この情報は、特徴的な化学的性質により、試料が信頼性があるかどうかを研究者に伝え、また、既知の量の選択された薬物を含有する標準と比較されたときに、選択された薬物の存在量の、量的な予測を提供することができる。外部からの薬物が分析において現れれば、可能性のある不純物に関する情報が提供され得る。提供された情報は研究者に、材料が望ましい物質を含有するかどうか、およびどの程度の量で(すなわち品質制御)、および可能ならば不純物が存在するかどうかを知らせるだろう。これにより、原料の情報が知らされた購入が可能になるであろうし、生産され消費者に販売される物質の品質の一致の証拠を提供する。
【0026】
薬草抽出物に対する化学的指紋分析の応用例
CVT−E001はAmerican ginseng(Panax quinquefolium L.)の特定の抽出物である。それは、たくさんの特徴的なサポニン類および脂肪酸が豊富であることが知られている。表1は、Panax quinquefoliumおよび他のPanax種に特徴的なたくさんのサポニン類を挙げている。CVT−E001は、コリンの取り込みを亢進させ、動物モデルにおいて学習および記憶を増強する能力を含む性質を有するといわれている。CVT−E001の2つのロットが調べられ、紫外吸収検出およびエレクトロスプレー質量分析と組み合わされた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることにより化学的指紋が形成された。
【0027】
Panax quinquefoliumおよび他のPanax種に特徴的なサポニン類
【0028】
【表1】



CVT−E001生成物のロット3と4のそれぞれ10mgが、別々のバイアルに、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を含有する水に含有された5%アセトニトリルの1.0mlに溶解された。
【0029】
原料の1mgに相当するこれらの貯蔵物の100mlが、HPLC装置にそれぞれ添加された。クロマトグラフィーシステムは、自動導入器および紫外吸収検出器を有するHewlett Packard 1050グラジエントHPLCシステムとした。カラムはZorbax 300SB−C8逆相カラム(4.6mm×25cm)とした。
【0030】
分離は水、アセトニトリルおよびTFAからなる勾配溶出を用いることにより達成された。移動相Aはカウンターイオンとして0.05%トリフルオロ酢酸を含む水に5%のアセトニトリルであった。移動相Bは、カウンターイオンとして0.05%トリフルオロ酢酸を含む水に70%のアセトニトリルであった。流速は1.0ml/分とした。時間=0分において移動相は100%Aとした。30分において移動相は100%Bであり、0と30分の間では勾配の変化は直線的であった。30と35分の間では、移動相は100%Bであった。35と40分の間では、移動相は100%Bから100%Aに戻った。100%Aにおける最小限10分の洗浄時間が、もう1つの導入の前に行われた。紫外吸収は203nmにおいて監視された。
【0031】
エレクトロスプレー質量分析はFisons Instruments VG Quatro装置を用いて行われた。紫外吸収検出器からの溶出後、HPLC装置からの流れは分岐され、2%(20ml/分)がエレクトロスプレー装置に送られた。HPLC装置から溶出された薬物は、分子量200から1200の間の質量を陽性モードで監視された。たくさんの薬物が、この生成物に特徴的な質量スペクトルを提供した。
【0032】
図24および25は、ロット3および4それぞれに対する紫外吸収特性(uv ANOLOG)および全イオン数(TIC)を提供する。
【0033】
両方のロットが13.7−13.9分の明らかなピーク、17.6から19.4分の間の5個の別々のピーク、31.7分の明確なピーク、および33.6分のもう1つの明確なピークが存在する明らかな特徴を有する、ほとんど同一の紫外吸収クロマトグラムを提供する。たくさんのより弱いピークもまた識別可能である。7つの最も主要なピークが1から7まで設定された。
【0034】
移動相が1つの検出装置から他に流れることにより、紫外吸収信号の記録と質量スペクトルの信号との間に約1分の遅れがある。結果的に、全イオン数の14.90分における発生は、紫外吸収の13.71分における発生に対応する。以下の図(図3−13)は、たくさんのイオンカウントイベントについて得られ、CVT−E001に見出される薬物に特徴的である質量スペクトルを表す。それぞれのイオンイベントは、スペクトルの左上の角部の数字により同定される。例えば図2に現れているように、D791 175(14.900)Cm(170:179)はクロマトグラム走査番号D791を表し、スペクトラムが操作番号175について14.900分において中央となっており、170から179までの走査の組み合わせから得られていることを表す。
【0035】
以下は、7つの明らかなピークのそれぞれに関係した質量、およびこれらのピークの可能な同定を挙げたものである。M+Hは、分子量プラス1つのプロトンを表す。
ピーク1 M+H 801,フラグメント423,440,587,767.ジンセノシド Rg1と同定されるMW=800.ジンセノシド Re M+H
948 MW=947も存在する.これらの化合物は同時に分離され、組み合わされたスペクトルを提供する.
ピーク2 M+H 1110,フラグメント767,486,667,947.ジンセノシド Rb1と同定されるMW=1109
ピーク3 M+H 1180,フラグメント899,456,637.ジンセノシド Rcと同定されるMW=1079
ピーク4 信号として解像されない質量が、他の成分によって覆い隠されている
ピーク5 信号として解像されない質量が、他の成分によって覆い隠されている
ピーク6 M+H 1151,フラグメント767,424,529,323.キンケノシド R1と同定される.これは、Panax quinquefoliumに見出されるRb1のアセチル化された形であり、他のPanax種では報告されていない.その構造を以下に示す.
【0036】
Panax quinquefoliumの抽出物に特徴的であるキンケノシド R1の化学構造.

ピーク7 M+H 266.同定不明.

33.6分における小さいピークはリノール酸に同定されている。

純粋なジンセノシド Rb1およびRg1のスペクトルはまた、CVT−E001試料(図14および15)から得られたものとの比較のためにそれぞれ提供される。
【0037】
CVT−E001のロット3および4はそれぞれ、記載された方法で分離されたときに、特徴的な紫外吸収クロマトグラムを生産する。エレクトロスプレー質量分析は、HPLC法により分離されたたくさんの薬物の明確な同定、およびCVT−E001の特徴を提供する。2つの試料がPanax quinquefoliumから正確に得られ、化学的に比較される。
【0038】
薬理学的指紋分析
薬理学的指紋分析は、材料に基本的に薬理学的活性があるかどうかを決定するための、化合物または複数の種類の化合物の試料の試験を含む。試料の薬理学的性質または薬理学的活性は、採用される特定の生物学的または薬理学的モデルに依存する。そのようなモデルは、個人の生物学的な状態の生物学的な増強、または、患者の医学的な状態の効果的な処置を、適切に試験しなければならない。そのような患者は好適には人間であるが、例えば犬、猫、馬などの他の動物であってもよい。したがって、そのような薬理学的試験または指紋分析は、インビボおよび/またはインビトロの生物学的モデルを含む。典型的には、試験される試料は、適切な薬学的担体および/または溶媒中において、純粋な(複数の種類の)化合物として存在する。本発明の好適な実施態様において、試料は薬草抽出物または薬草抽出物のクロマトグラフィーの分画である。
【0039】
本発明において用いられる好適な薬理学的指紋分析は、本来の抽出物と、化学的指紋分析において記載されたクロマトグラフィー操作により得られ、単離された対象となる(複数の種類の)化合物を含む、選択されたクロマトグラフィーの分画との両方の採取と、これらの分画に見出される(複数の種類の)化合物を標準化された薬理学的評価へ供することを含む。たくさんの異なる薬理学的評価が行われ得るが、一般的には、評価は(複数の種類の)評価される化学的成分または薬草の物質の意図された効果を支持する処理を示唆するものに制限される。本発明において、試料または抽出物の生物学的活性を決定するために、少なくともインビボで2つ、インビトロで2つの生物学的モデルが評価されることが最も好適である。インビトロでの実験のそれぞれにおいて、抽出物の少なくとも3つの投与量と、1つの溶媒のコントロール(対照)群が含まれることも、また好適である。少なくとも2つのモデルにおいて、試料溶液または抽出物がコントロール群と明らかに異なる薬理学的活性を示すことも、また好適である。
【0040】
採用される生物学的または薬理学的モデルは、抽出物の成分に大きく依存する。例えば、オリゴ糖を含有するヤクヨウニンジン抽出物の分画は、免疫系を亢進するそれらの能力を評価され得た。2つのインビトロでのモデルは、マウスまたはラット脾臓を用いた全リンパ球の産生および抗体の産生を含んでもよい。2つのインビボでのモデルは、血清全抗体および免疫グロブリンGレベルを含んでもよい。抗うつ剤の活性をもつように作られた生成物が、インビトロでのモノアミン酸化酵素AおよびB阻害能力、およびマウスの強制泳動テストおよび運動活性テストのような受け入れられている行動テストにおける抗うつ剤の活性を評価され得た。抗高血圧モデルは、対象となっている抽出物を給餌または静脈投与されたラットのインビボでの血圧測定や、インビボでの血管および心臓収縮性試験等により評価されてもよく、また、神経の保護はインビトロおよびインビボで酸化的な負荷に関与する酵素および基質、および神経保護試験により評価されてもよく、および、抗うつ剤はモノアミン酸化酵素阻害活性、ノルアドレナリンおよびセロトニンの脳内レベルの上昇、5−水酸化インドール酢酸の脳内レベルの低下、泳動、および黒および白箱試験を強制されたマウスにおける抗うつ様および抗不安薬様の効果の程度により評価されてもよい。
【0041】
いくつかのモデルにおいて抽出物の活性は、抽出物から得られた1つまたはそれ以上の純粋な化合物と比較される。その結果は、抽出物中の混合された化合物の相乗効果を示すために分析される。これは、増加した潜在能力および副作用の可能な減少に関して、1つの単一の化合物を超える抽出物の使用を要求することの優位性を提供する。
薬草抽出物CVT−E001に対する薬理学的指紋分析の適用例
【0042】
化学的に標準化され、前述した化学的指紋の特徴を有する薬草抽出物CVT−E001が、記憶力を改善する薬理学的性質について評価された。生物学的モデルが以下の知見に基づいて選択された:(a)中枢神経系におけるコリン作動系の欠陥がアルツハイマー病(AD)において明白である。(b)老ラットおよび痴呆症患者等における、モノアミン酸化酵素B(MAO−B)活性の増加が報告されている。以下の生物学的モデルにおける実験が実施され、その結果はCVT−E001の薬学的指紋を形成する。それぞれの実験において見られた陽性の結果は、CVT−E001がアルツハイマー病のような認識および記憶の障害状態の治療に有用であることを示す。
【0043】
(1)単離されたラット脳シナプトソームのコリン吸収に対するCVT−E001の効果
原理
ジンセノシド Rb1 はコリン吸収を増加することが示されている(Benishin,1992)。神経伝達物質アセチルコリンの産生の低下は、記憶の消失およびアルツハイマー病に関係する。Rb1 はニューロンへのコリン吸収を増加させることが示されており、これはおそらくアセチルコリン産生を増大させ、次に、記憶障害を軽減する。CVT−E001が記憶の損失を緩和する性質を有することを適切に断定するためには、CVT−E001が神経組織調製物においてコリン吸収を増加させることが示されなければならない。
全脳および海馬から得られたシナプトソーム調製物におけるコリン吸収が、Rb1 、CVT−E001およびHC3の存在下で調べられている。Rb1 はシナプトソームへのコリン吸収を増加させることがすでに示されている陽性のコントロール(対照)であり、一方、HC3はコリン吸収を阻害することが知られている陰性のコントロールである。
【0044】
図1は、ラット脳シナプトソームによるコリン吸収に対する、様々な投与量のRb1 およびHC3の効果を示す。この最初の研究は、我々のシナプトソーム調製物が使用可能であることを示し、Rb1 はコリン吸収を亢進し、HC3はコリン吸収を阻害する。これらの効果の規模は以前の研究と一致する。
【0045】
Rb1とCVT−E001の両方を用いた実験は、両方の物質が、ラット海馬から得られたシナプトソームへのコリン吸収を増加させることを示す(表2)。約1×10-6Mの濃度のサポニン(分子量は900に確立された)のCVT−E001が、コリン吸収の亢進に常に有効であった。より高い投与量(1×10-5M)は必ずしも有効ではなかった。この観察は、たくさんの薬学的化合物が至適投与量範囲を有し、より多いまたはより少ない物質はより少ない生物学的活性を招くことから、予想外ではない。
【0046】
Rb1およびCVT−E001の、ラット海馬から調製されたシナプトソームへのコリン吸収に対する効果
【0047】
【表2】



値は放射活性コリン吸収の増加の平均パーセントである
*はコントロールp<0.05から明らかである(ANOVA,Student/Newman/Kuels)
【0048】
表3は、ラット脳シナプトソームにおけるコリン吸収に対するCVT−E001および全ジンセノシド(TS)およびRb1 を示す。CVT−E001は8.1%Rb1 、32.4%TSのみ含有するため、CVT−E001の効果は明らかにRb1 またはTSのいずれよりも高い。
【0049】
【表3】

【0050】
ラット脳シナプトソームにおけるコリン吸収に対するRb1、全ジンセノシド(サポニン、TS)の100%およびCVT−E001の比較(%コントロール)。

Rb1:アメリカニンジンから単離されたジンセノシドの1つ。>98%純度。
Rb1−52、Rb1−53およびRb1−54はRb1の3つのバッチを示す。
TS:アメリカニンジンから単離された、25%Rb1、19.4%Rc1および21.6%Rg1+Reを含有する全ジンセノシド抽出物。
CVT−E001:アメリカニンジンから単離された、8.1%Rb1、32.4%全ジンセノシドを含有する抽出物
【0051】
値は平均±SEを表す。n=4、 *P<0.05、**P<0.01 スチューデントT検定、コントロールと比較された
効能:CVT−E001>TS>Rb1
【0052】
結果は、CVT−E001とRb1 の両方がコリン吸収を明らかに亢進することを示す。しかしながら、CVT−E001はRb1 を8.1%しか含有しないものの、同様な重量濃度において同等またはそれ以上の効能を示す。これは、CVT−E001におけるRb1以外の物質の相乗効果を示唆する。
【0053】
(2)3つのバッチのCVT−E001の、インビトロでのラット脳におけるMAO−AおよびMAO−B活性に対する効果。
【0054】
いくつかのニンジン抽出物のインビトロでのモノアミン酸化酵素A(MAO−A)およびモノアミン酸化酵素B(MAO−B)活性に対する効果
【0055】
【表4】



値は5(MAO−A)および4(MAO−B)の定量に基づく平均±標準誤差。すべての場合に、明らかな投与量依存性の効果が定量された。
GLP=全精油、HPLC−UV吸収の24から35分の間の物質を含むCVT−E001の一部。
【0056】
(3)モリスの水迷路およびスコポラミンにより誘発される記憶喪失モデルを用いた、CVT−E001の学習に対する効果。
原理
Rb1 およびRg1 を含むジンセノシドは、学習および記憶を増強することが示されている。CVT−E001はジンセノシドの混合物であるため、純粋なサポニンと同じ性質をもたないかもしれない。CVT−E001が学習および記憶を増強できることを断言するためには、この生成物が科学的に受容された学習パラダイムにおいて、課題の習得および/または記憶の測定可能な増加を提供し得ることが示されなければならない。モリスの水迷路は空間的学習および記憶を試験できる、科学的に示された方法である。ラットは、真っ暗な水泳用プールにおいて、隠されたプラットフォームの位置を学習することを要求される。もし、CVT−E001で処置されたラットが、CVT−E001で処置されていないラットよりも速く、隠されたプラットフォームの位置を学習すれば、CVT−E001が学習を増強することが示される。CVT−E001の記憶に対する効果は、スコポラミン誘発記憶喪失(スコポラミンはコリン作動性の神経伝達系を阻害し、学習および記憶を阻害する)においても調べることができる。もしCVT−E001が学習および/または記憶を増強すれば、CVT−E001はスコポラミンで処置された動物における課題の習得および/または記憶の消失に対する保護を促進するはずである。
【0057】
実験の設計
CVT−E001を試験化合物とする空間的学習および記憶の研究は、モリス水迷路およびスコポラミン誘発記憶喪失を用いて設計された。実験の特定の目的は、CVT−E001がスコポラミン誘発記憶喪失の存在下で新しい課題の習得および/または記憶に作用するかどうかを試験することであった。ラット(S/D系オス、200−250g、約8週齢)がまず2つのグループに分けられ、水(0.5ml)またはCVT−E001(0.5mlの水で胃管により200mg/kg/日)のいずれか一方を実験の期間、与えられる。CVT−E001の投与開始の8日後、ラットは真っ暗な水のプールの中の隠されたプラットフォームの位置を学習する課題を与えられる。ラットはプールに1日4回5日間置かれ、プラットフォームを見つけるのに要求される時間が記録される(最大時間5分)。この時間は、ラットが課題を学習するにつれて短くなる。14日に、ラットの2つのグループが4つのグループにさらに細分化される。最初の2つのグループのそれぞれからの6匹のラットは食塩水の注射を受け、一方、最初のグループのそれぞれからの残りの6匹のラットは、新しい場所に移動されたプラットフォームを見つけることを要求されるのに先立って、スコポラミン(2mg/kg)を受ける(3回の試験、食塩水またはスコポラミンの注射の一方を受けて30分以内に、最大時間3分。15日に、プラットフォームを14日に設定された位置に留まらせて配置させて、14日の操作が繰り返された。16日に、プラットフォームがプールの反対側の場所に移動されたことを除き、14日からの操作が再び行われた。17日に、プラットフォームが16日に設定された位置に留まることを除き、14日に行われた操作が繰り返された。それぞれの場合に、プラットフォームに位置する時間が記録される。
【0058】
この実験は24匹のラットを各回に用いて2回繰り返された。2つの実験からのデータが組み合わされた。1匹のCVT−E001処置されたラットは、CVT−E001の肺への事故的な投与により死亡した。1匹のコントロールラットは、学習曲線の最後の5回の試行で、プラットフォームを見つけられなかった。このデータは結果に顕著に影響しないが、除外された。1匹のCVT−E001を与えられ、スコポラミン注射されたラットは最終日にプラットフォームを見つけられず、異常値として除外された。
【0059】
統計的な分析は、対数に変換されたデータの分散解析によった。明確さの帰納的試験は、Newman−Keuls試験を用いて行われた。
個別の試験と、別々の日の組み合わされた材料の両方からのデータが表されている。
【0060】
結果および考察
ラットは課題を、最初の試験での約200秒から20回の試験での約8秒に急激に下降するプラットフォームへの時間で、容易に学習した(図15)。すべての動物が課題を学習したときの14回目の試行で、曲線は横ばいとなる。5、9および13回目の試行(2、3および4日の最初の操作)で、保持された情報の夜の間のいくらかの損失を示す、わずかな逆戻りの効果がある。
【0061】
ラットがスコポラミンおよびCVT−E001の存在下または非存在下で、新しいプラットフォームの位置を学習することを要求されたとき(図16)、最初、すべての処置のものがプラットフォームに位置するのに同じ長さの時間がかかった(図16、最初の2回の試行)。これは、違いが見られなかった新しい経験である。3回目の試行で、CVT−E001および食塩水を受けた動物のみが、スコポラミンを受けたがCVT−E001を受けなかった動物よりも優れていた動物であった。この日のデータが組み合わされるとき、処置の効果の証拠はない(図17)。これは、これらの状況においては(スコポラミンによる記憶の並の障害を伴う、最初の短い期間の習得)CVT−E001は情報の習得に効果がないことを示唆する。
【0062】
ラットが翌日に同じ課題を行うことを要求された(すなわち、それらが前日からの課題を覚えたかどうかを見るための試験をされた)とき、ラットはすべての試験でスコポラミンを受けCVT−E001を受けていない(図18)。試行2で、すべての処置のグループが、スコポラミンを受けCVT−E001を受けない動物よりも優れていた。この日のすべての試験が組み合わされたとき(図19)、CVT−E001を除きスコポラミンを受けた動物は、他のグループよりも明らかに大きい遅れがあり、スコポラミンの存在がCVT−E001の存在により相殺された記憶の障害を引き起こしたことを示す。この試験は前日からの記憶の想起に関与する要素をもつために、CVT−E001が短期間の情報の習得よりもむしろ長期間の記憶の集積における欠損を阻害するかもしれないことを示す。
【0063】
ラットが新しいプラットフォームの位置を学習することを再び要求されたとき、処理グループの間で最初の違いはなかった(図20、試行1)。しかしながら、試行3によれば、スコポラミン処理された動物はスコポラミン誘発学習障害を示した。データ、この日のすべての試行のデータが組み合わされたとき、処理グループの間で明らかな違いはなかった(図21)ことから、CVT−E001および適度なスコポラミンが誘発した記憶喪失は短期間ではほとんど効果がないことが再び示される。
【0064】
ラットがその後、実験の最終日にプラットフォームの最後の位置を覚えることを要求されたとき、スコポラミン誘発欠損はただちに明白となった(図22)。最初の試験で、スコポラミンを受けてCVT−E001を受けていない動物は明らかに劣っていて、長期間の記憶の損失を示した。この記憶喪失はCVT−E001とスコポラミンの両方を受けた動物においては全く存在せず、これらの動物はスコポラミンを受けなかった動物と同様に課題を実行した。この日のすべての試行のデータが組み合わされたとき(図23)、CVT−E001による予備処置なしにスコポラミンを受ける動物は、学習障害を示す。CVT−E001およびスコポラミンを受けた動物は、コントロールと違いがなかったことから、CVT−E001はスコポラミンにより誘発された学習障害を完全に無効にしたことが示される。CVT−E001を受けスコポラミンを受けなかった動物は、スコポラミンまたはCVT−E001のいずれも受けない動物と比較されたとき、何も利点を見せない。
【0065】
CVT−E001は、食餌の補足剤としてラットに提供されたとき、スコポラミンが誘発する記憶障害を阻害するジンセノシドの混合物である。CVT−E001は、記憶障害をもたない動物における学習および記憶を改善しないように見えることから、その効果は記憶障害の動物においてのみ見られる。最大の効果は動物が課題の学習の24時間後にそれらを思い出すことを要求されるときに示されることから、CVT−E001の効果は情報の習得および短期間の記憶には関与せず、むしろ長期間の記憶の集積に関与するように見える。スコポラミンはコリン作動系を妨害することが知られているため、この仕事は、コリン作動系が損傷することが知られていて、空間的記憶の障害が起こるアルツハイマー病のような状況に対してCVT−E001が有利となり得ることを示唆する。
【0066】
(4)ヒト個体におけるCVT−E001(リメンバー−FX)の記憶試験
方法:
記憶因子測定表が用いられた。5つの試験があった。

A:指示された記憶:24個の単語を告げた後、被験者は、例えば野菜といった種類ごとに分けられた単語を繰り返すことを要求された。
B:対になった関連の記憶:12組の単語を被験者に告げ、対になった単語のそれぞれ最初の単語を繰り返した後、被験者は対になった単語の他方を言うことを要求された。いくつかの組は例えば上−下や太陽−月などのように関係があった。いくつかは馬−ランプ等のように全く関係がなかった。
C:絵の自由な想起:15枚の絵を見せた後、被験者は、彼または彼女が何の絵を見たか思い出すことを要求された。
D:意味のない図形の認識:20個の意味のない曲線の図形が最初に被験者に見せられ、次に、それらの半分はすでに見せられたものである別の20個が見せられた。被験者はその後、どの図形が彼または彼女が前に見たものかを指摘することを要求された。
E:肖像画の関係の想起:それぞれ姓、職業および趣味が付けられた6枚の肖像画が被験者に見せられた:例えば姓がチャン、先生、趣味はテレビを見ること。しばらくしてから、肖像画が別の順で再び見せられた。被験者は、それぞれの肖像画を思い出すことを要求された。
【0067】
各テストは点数がつけられ、各被験者の合計が記憶因子に計算された。各被験者は、リメンバー−FXまたはコントロール(対照)食を摂る前および後に、2回試験された。各被験者は、リメンバー−FXまたはコントロール食を摂る前に1回、摂った後に1回、身体検査に供された。身体検査は、リメンバー−FXを摂ることに副作用がないことを確実とするためのものであった。
【0068】
若いグループ:5人が女性、5人が男性で20から24歳の10人の大学生が、リメンバー−FXを1日2カプセル(200mg/カプセル)13日間摂取した。若いコントロール(対照)グループは12人(9人が男性で3人が女性)から構成された。46から64歳の老年のグループは、リメンバー−FXを1日2カプセル14日間摂取した。老年のコントロールグループは40から65歳の5人(3人が男性で2人が女性)から構成された。
【0069】
統計:
集団T検定が、コントロール群と実験群との間の比較に用いられた。
結果:
各試験は点数が記録され、各被験者の点数の合計がMQ(記憶因子)に計算された。各被験者はコントロール食またはリメンバー−FXの前に1回、後に1回の2回試験された。
【0070】
若年および老年のリメンバー−FX摂取前後のMQS
【0071】
【表5】

MQは点数から式により計算され、7段階に分類される。MQ>130は1級−より優れている;129−120は2級−優れている;119−110は良;109−90は中間;89−80はやや悪い;79−70はよくない;69−60は悪い。
【0072】
若い人々のMQの違い
【0073】
【表6】

平均SD;コントロールとの比較において *P<0.05、**P<0.01。
試験A−Eにおける値は、リメンバー−FXの摂取前後の点数の違いを表す。
【0074】
老年グループのMQの違い
【0075】
【表7】

平均SD;コントロールとの比較において *P<0.05、**P<0.01。
試験A−Eにおける値は、リメンバー−FXの摂取前後の点数の違いを表す。
【0076】
結論:
(1)表51は、9人の若い被験者は2番目の1人を除きMQが増加したことを示す。5番目の1人は2段階増加した。老年のグループにおいて、5人(3、4、7、8および9)は段階の増加を示した。それらの1人(8番目)は2段階増加した。1段階低下した人が1人(10番目)いたが、他の4人(1、2、5および6)は同じ段階に留まった(少しばらつきがあったが)。
【0077】
(2)表6および表7は、2つのグループのMQSは、対応するコントロールとの間で明らかな違いがあったことを示した。若い年齢のグループでは試験Dに違いがあり、老年のグループでは試験Bと試験Dに違いがあった。試験Bは、大脳の左半分によって支配される言語能力についての試験であり、一方、試験Dは、大脳の右半分によって支配される非言語的な描画試験である。この結果は、リメンバー−FXが大脳の左半分に支配的に作用するかもしれず、一方、老人のグループにおいては全体の脳に作用することを示した。
試験AとBは大脳の言語的な(左の)半球を試験し、一方、試験Dは右の非言語的な半球を試験した。試験CおよびEは両方の半球を試験した。
【0078】
PC12および神経芽細胞腫NlE−115細胞系のインビトロでの培養における、HT−1001によるニューライトの成長の亢進。序論:
我々はHT−1001の作用の新しい機構をすでに発見しており、それはPC12(褐色細胞腫)細胞系における神経芽細胞腫の成長の亢進である。この結果は、HT−1001が症状を緩和するように作用するだけでなく、神経の変性の病気の進行を変えることを示す。HT−1001の有利な効果(阻害/治療)は、老人性痴呆症、パーキンソン病、多発脳梗塞性痴呆などのような変性の病気に適用してもよい。
【0079】
ジンセノシドは中枢神経系に対するたくさんの作用をもつことが報告されている。これらはCNSの亢進または抑制、鎮痙性、抗精神病性、鎮痛性、抗疲労および抗ストレス性、および様々な記憶の課題における改善された成果を含む、(Takagi K. ら,Japan J. Pharmacol. 22:339(1972),Satio H.およびNabata H.
,Japan J. Pharmacol. 22:245(1972),Saito H.ら,Japan J. Pharmacol. 23:43(1973) ,Takagiら,Japan J. Pharmacol. 24:41(1974) ,Saito ら,Japan J. Pharmacol. 24:119(1974),Saito H.,Japan J. Pharmacol. 27:509(1977),Hong S.A. ,Korean J. Pharmacol. 10:1(1974) )。純粋なジンセノシドRb1およびRg1は、実験動物において記憶を改善できることが知られており(Saito
H.,Advances in Chinese Medical Materials Research Chang H.M. ら編集,World Sci. Publ. Singapore,1985, p.509 ,Saito H. Recent Advances in Ginsent Studies, Shibata S.編集,Hirokawa Publ. Col, Tokyo 1990, p.99,Benishin C.G. ら,Pharmacology 42:223(1991) )、脳におけるコリン作動性神経伝達に対するその作用機構は、よく説明されている。Rb/Rg1について記述されている行動の効果に加えて、ジンセノシドRb1およびRd(他の1つのジンセノシド)は神経成長因子(NGF)により、脊髄神経節および交感神経節のニューライトの成長を増強することが見いだされているが(Saito H.,Advances in Chinese Medical Materials Research Chang H.M. ら編集,World Sci. Publ. Singapore,1985, p.509 )、それ自身では効果がなかった。現在まで、この増強の細胞の機構について、とてもわずかな情報が現れている。現在まで、ニューライト成長に対するRb1または他のジンセノシドの作用についての研究は何も出版されていない。最近の報告は、ニンジンの“親油性の”抽出物もまた、神経親和性の活性を有することを示している(Mohri T.ら,Planta Med. 58:321(1992))が、この抽出物の活性成分は解明されるべき状態のままである。
【0080】
NGFは1950年代に最初に発見され、典型的な神経栄養である。NGFは神経経路の発生および維持と関係する、たくさんの作用をもつ。さらに、生物学的作用が概説されている(Levi-Montalcini R. Science 237:1154(1987) ,Levi A. およびAlema S.,Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 31:205(1991))。末梢のNGFはアドレナリン作動性の交感神経、および、発達における第1段階の感覚ニューロンの生存に必須である。それは、成長および体性感覚繊維のニューロンの回路に発達の間(Hefti F.ら,Neurobiol. Aging 10:75(1989))、および成人において外傷の後(Raivich G.およびKreutzberg G.W. ,Int. J. Devel. Neurosci. 11:311, 1993))、影響を及ぼす。脳内でNGFは、基底の前脳のコリン作動性ニューロンの生存を促進し(Martinら,J. Cell Biol. 106:829(1988) 。Mobley W.C. ら,Mol. Brain Res. 1:53(1986))、これらの同じニューロンの外傷後の損失を阻害する(Hagg T. ら,Brain Res. 505:29(1989)),Tuszynski M.H.ら,Ann Neurol. 30:625(1991))。NGFはまた、ニューロンの前駆体細胞の分化を亢進することが報告されている(Hartikka J. およびHefti F.J.,Neurosci. Res. 21:352(1988) )。PC12細胞は他の性質と同様に、NGF処理に対して、ニューライトの成長および電気的興奮性により応答する(Green L.A.ら,Adv. Cell. Neurobiol. 3:373(1982) )。現在、様々な変性の病気の治療のための神経栄養の因子の設計と開発が、活発に行われている(Hefti F.J.,Neurobiol. 25:1418(1994),Tonnaer JADMおよびDekker AJAM ,Anti-Dementia Agents Academic Press 1994, p.139 )。
【0081】
アルツハイマー病(AD)は、基底前脳から皮質および海馬への投射路を含むコリン作動性神経路の変性と関係する。PC12細胞系(Greene L.A. およびTischler A.S. ,Adv. Cell. Neurol., 3:373(1982) )は、これらの神経路の機能の研究のためのモデルの1つである。この細胞系は表現型ではクロム親和性細胞系であるが、アドレナリン作動性の表現を誘起され得る(Greene L.A. およびTischler A.S. ,Proc. Nat. Acad. Sci., USA, 73:2424(1976) ,Aloe LおよびLevi-Montalicini R, Proc. Nat. Acad. Sci., USA, 76:1246(1979) )し、コリン作動性のマーカーも同様である(Greene L.A. およびRelin G.,Brain Res. 138:521(1977),Ritchie A.K.,J. Physiol. (Lond.) 286:541(1979) ,Schubert D. ら,Proc. Nat. Acad. Sci., USA, 74:2579(1977) ,Jumblatt J.E. およびTischler A.S. ,Nature 297:152(1982))。このモデルは以下の利点を有し(Shibata S.ら,Economic and Medicinal Plant Res. 1:217(1985) )、その利点は、不朽化された細胞系であること、(Saito H. Advances in Chinese Medicinal Materials Research, Chang H.M. ら編集,World Sci. Publ., Singapore, 1985, p.509)NGFに対する感受性があるが、生存はNGFに依存しないこと、および(Saito H. Recent Advances in Ginseng Studies, Shibata S. 編集,Hirokawa Publ. Co., Tokyo 1990, p.99)基底前脳の中枢のコリン作動性ニューロンと共通なたくさんの性質をもつことである。PC12細胞は、中枢のコリン作動性ニューロンが応答する栄養因子のすべてに対して感受性がないが、一方、中枢のコリン作動性ニューロンは、PC12細胞が応答するすべての栄養因子に応答することが指摘されている。この理由として、PC12細胞系は間違った陽性の結果を与えなさそうな理想的なモデル系として見なされ得るが、間違った陰性の結果を与えるかもしれない、すなわち、中枢のコリン作動性ニューロンに対して作用する栄養因子を欠いているかもしれない。
【0082】
PC12細胞は、たくさんの方法でNGFに応答することが報告されており、その方法は以下を含むが限定はされない:膜の興奮性、合成、集合の発達および細胞骨格構造の安定化、細胞接着の増加、肥大、および同化作用の増加、DNA合成の減少、および細胞の増殖(Werrback-Perez K. ら,Prog. Brain Res. 86:183(1990) ;抗酸化剤(例えばカタラーゼ)およびエネルギー代謝酵素の選択的誘導(Perez-Polo J.R. およびWerback-Perez K. Recent Achievements in Restorative Neurology 30:321(1985),Perez-Polo J.R. およびWerback-Perez K. Neural Development and Regeneration, Sringer-Verlag, Heidelberg, p.339(1987) ,Perez-Polo J.R. およびWerbach-Perez K ,Nervous System regeneration, Alan Liss, New York, p.201(1988) ;コリン作動性神経伝達物質の代謝の亢進(例えばCHAT活性、(Greene L.A. およびRein G. ,Brain Res. 138:521(1977),Ritchie A.K.,J. Physiol. (Lond.) 286:541(1979) ,Schubert D. ら,Proc. Nat. Acad. Sci. USA 74:2579(1977) ,Jumblatt J.E. およびTischier A.S. ,Nature 297:152(1982);遺伝子発現の変化(Szebereni J.およびErhardt P.,Biochim. Biophys. Acta 1222:187(1994) ;ニューライトの成長の増加(Greene L.A. およびTischler A.S. ,Proc. Nat. Acad. Sci. USA 73:2424(1976) ,表面の膜レセプターの発現の増加(Greene LA およびTischler AS ,Adv. Cell Neurol 3:373(1982);APP−695(アルツハイマー病の病因学に関して重要である、の発現の増加(Schubert D. ら,Neuron 3:689(1989));オメガ−CgTx感受性Ca2+チャネルの発現の増加(Usowicz M.M.ら,J. Physiol.
(Lond.) 426:95(1990));ゼータ−PKCの発現の増加、およびニューライトの成長の増強を起こすPKCの他の異性形のダウンレギュレーション(Coleman E.S.およびWooten M.W. ,J. Mol. Neurosci. 5:39(1994)。PC12細胞は様々な記述された応答でNGFに応答することから、それらは他の物質のNGF様の性質を研究するための候補と考えられる。これらの細胞は基底前脳の中枢のコリン作動性ニューロンの良好なモデルであるという指摘に対する支持がある。
神経芽細胞腫NlE−115は分化していないマウスの神経芽細胞腫であり、神経栄養活性の研究に有用とされてきた。
【0083】
材料および方法:
PC12細胞は播種され、100cm2 の組織培養皿に37℃で、1%抗生物質、10%加熱されて不活性化されたウマ血清および5%ウシ胎児血清を含むRRMI1640中で、95%空気および5%CO2 の水が飽和された雰囲気で維持された。NlE−115細胞はフラスコに、10%FBSおよび抗生物質PNS(ペニシリン、ネオマイシン、ストレプトマイシン)を含む90%DMEM(ダルベッコの改良イーグル培地,Gibco,グランドアイランド,NY,USA)中で維持された。培養皿は95%部屋の空気と5%CO2 からなる、温度制御され(37℃)、湿気のある雰囲気で維持された。細胞は実験のため、パスツールピペットを介した培地の強制的な吸引によって機械的に剥離され、全部で2.0mlの完全培地を含む、35mmのコラーゲンコートされた組織培養皿の中に1×104 細胞/mlの濃度で播かれた。培地は1週間に3回変えられた。
【0084】
神経成長因子(NGF)および試料に対する細胞の応答は、PC12細胞における処理を含有する細胞の数を数えることにより、定量された。細胞の写真が処理の7および14日後に撮られた。フィルムが現像され焼き付けられる前に、各皿において、2つの視野が選択された。
【0085】
細胞およびニューライトは以下のように数えられた。
円状または球状の形の細胞およびニューライトの成長のないものは、0として数えられた(S0);
伸びた、または短いニューライトの成長を示した細胞はS1として数えられた;
細胞体に2つ以上の小さいニューライトがある細胞はS2として数えられた;
細胞体の直径の少なくとも2倍の長さを有する、1つまたは2つのニューライトがある細胞はS3として数えられた;
2つ以上の長いニューライトがある細胞はS4として数えられた。

ニューライト指数は以下のように計算された:
ニューライト指数(In)=全ニューライトスコア(ΣS)/全細胞数ΣN)
ΣS=S1*N+S2*N+S3*N+S4*N;Nは各細胞視野の細胞数。
【0086】
実験の結果:
1.NGFはPC12におけるニューライトの成長を、処理の7日後に量依存的に増加させた(図26)。
2.HT−1001はPC12におけるニューライトの成長を、処理の7日後に量依存的に増加させた(図27)。
3.HT−1001はNlE−115におけるニューライトの成長を、処理の7日後に量依存的に増加させた(図28)。図29および図30は、コントロールおよび処理された細胞の原物の写真をそれぞれ示す。わずかなまたは全くないニューライトの成長がコントロール群において観察され、一方、処理された細胞においては明らかなニューライトが見られた。
【0087】
結論:
HT−1001は、PC12とNlE−115細胞系の両方において、ニューライトの成長を亢進するNGF様の効果を起こした。これは、神経変性の病気の治療および予防における有益な効果に寄与するかもしれない。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物からの化学的成分の薬理学的活性混合物を抽出するための標準操作として用いられる、再現性のある抽出操作を得る方法であって、以下の工程:
(a) 複数の抽出物を生産するための複数の異なる抽出工程において、植物からの化学成分の複数の薬理学的活性混合物を抽出する工程;
(b) 各試験が患者の医学的な状態の有効な治療と関係することが知られているような、少なくとも2つのインビトロおよび少なくとも2つのインビボの薬理学的試験を各抽出物に行うことによって、工程(a)の各抽出物の薬理学的活性の生物学的指紋(物質特有パターン)を得る工程;
(c) 複数の抽出物のうち、工程(b)において最高の薬理学的活性を示す1つを選択する工程;
(d) 少なくとも1つの試験抽出物を生産するために、工程(c)の選択された抽出物を生産するために用いられた抽出操作を少なくとも1回繰り返す工程;
(e) (1)各抽出物の薬理学的活性混合物中の化学的成分を、互いに比較して同一性と量を区別することにより、選択された抽出物と少なくとも1つの試験抽出物の化学的指紋を得る工程、および
(2)少なくとも1つの試験抽出物を用いて、前述した得る工程(b)を繰り返す工程;および
(f) 選択された抽出物と、少なくとも1つの試験抽出物の化学的指紋および生物学的指紋を比較して、
少なくとも1つの試験抽出物の化学的成分が、選択された抽出物の同一の化学的成分の量と最大で10%多いまたは少ない量で存在し、
少なくとも1つの試験抽出物の各薬理学的試験の結果が、選択された抽出物の対応する薬理学的試験の結果よりも、最大で10%多いまたは少ない場合には、
選択された抽出物を生産するために用いられる抽出操作は、植物からの化学的成分の薬理学的活性混合物を抽出するための標準操作として選択される工程
を含む方法。
【請求項2】
植物源から得られた化学的成分の薬理学的活性混合物から、再現性のある高い薬理学的活性を得る方法であって、以下の工程:
(a) 複数の植物抽出物を生産するために、同一の植物源からの複数の試料に、複数の異なる抽出操作を行う工程;
(b) 生体の変化した生物学的状態と関係すると知られている少なくとも1つの薬理学的試験を、各植物抽出物に行う工程;
(c) 工程(b)において最高の薬理学的活性を示す植物抽出物を選択する工程;
(d) 工程(c)の選択された抽出物を生産するために用いられた抽出操作を、試験抽出物を生産するために繰り返す工程;
(e) 選択された抽出物と試験抽出物の両方の化学的成分に関する、少なくとも質的な情報を提供する化学的指紋を得る工程;
(f) 工程(b)の試験を試験抽出物に繰り返す工程;
(g) 選択された抽出物と試験抽出物との化学的指紋および薬理学的活性を比較して、
試験抽出物の(複数の種類の)化学的成分が、選択された抽出物の対応する薬理学的試験の活性と、約+または−10%以内で異なる量で存在するとき、選択された抽出物を生産するために用いられた抽出操作は、植物源からの化学的成分の薬理学的活性混合物を抽出するための標準操作として選択される工程
を含む方法。
【請求項3】
少なくとも1つの薬理学的試験は、インビトロとインビボの少なくとも1つの薬理学的試験である
請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの薬理学的試験は、少なくとも2つのインビトロと少なくとも2つのインビボの薬理学的試験である
請求項2記載の方法。
【請求項5】
生体の変化した生物学的状態は、患者の医学的な状態の効果的な治療である
請求項2記載の方法。
【請求項6】
少なくとも質的な情報は、質的および量的な情報を含む
請求項2記載の方法。
【請求項7】
植物源から得られ、再現性があって高い薬理学的活性を有する化学的成分の薬理学的活性混合物を得る方法であって、以下の工程:
(a) 複数の植物抽出物を生産するために、同一の植物源からの複数の試料に対して、複数の異なる抽出操作を行う工程;
(b) 各植物抽出物に対して、患者の医学的な状態の効果的な治療と関係することが知られている、少なくとも2つのインビトロの、および少なくとも2つのインビボの薬理学的試験を行う工程;
(c) 工程(b)において最高の薬理学的活性を示す植物抽出物を選択する工程;
(d) 工程(c)の選択された抽出物を生産するために用いられた抽出操作を、試験抽出物を生産するために繰り返す工程;
(e) 選択された抽出物と試験抽出物の両方の化学的成分に関する、質的および量的な情報の少なくとも1つを提供する化学的指紋を得る工程;
(f) 工程(b)の試験を試験抽出物に繰り返す工程;
(g) 選択された抽出物と試験抽出物との化学的指紋および生物学的活性を比較して、
試験抽出物の(複数の種類の)化学的成分が、選択された抽出物の対応する薬理学的試験の活性の約+または−10%以内で異なる量で存在するときは、選択された抽出物を生産するために用いられた抽出操作は、再現性のある高い薬理学的活性を有する、化学的成分の薬理学的活性混合物を抽出するための標準操作として選択される工程
を含む方法。

【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−292844(P2009−292844A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218142(P2009−218142)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【分割の表示】特願2000−507241(P2000−507241)の分割
【原出願日】平成10年8月28日(1998.8.28)
【出願人】(509031408)エフエックス ライフ サイエンシズ アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】