説明

虚弱体質改善または滋養強壮剤

【課題】虚弱体質改善および滋養強壮に有効に使用できる医薬組成物を提供する。
【解決手段】虚弱体質改善または滋養強壮剤の有効成分として、ヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物、好ましくは川柳(Salix Gilgiana Seemen)またはその同属植物(salicaceae)の加工物を用いる。または当該加工物に加えて、ビタミンおよびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1種の成分を配合することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚弱体質改善または滋養強壮剤に関する。より詳細には、本発明は腎機能亢進作用および血中の中性脂肪を低減する作用を有し、倦怠感回復効果に優れた虚弱体質改善剤または滋養強壮剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会の進行、社会構造の複雑化ならびに社会の実力偏重傾向に伴って、ストレスを抱え、倦怠感(怠さ)、胃腸障害、精力減退、冷え、不定愁訴、不眠などを訴える人が増加している。こうした症状の多くは病因が特定できず、西洋医学では治療の対象となり難いケースが多い。このため、虚弱体質改善や滋養強壮を目的とした漢方による治療が注目されている。
【0003】
漢方医学では、人にとって必要なエネルギーや栄養素の不足状態を「虚証」という。これは個体の生気が虚弱あるいは陰液の不足を来した状態によって現れる病的症状を総称するものである。かかる虚証は、「気虚」(人体の各系統的器官の生理的な機能が不十分な状態)、「血虚」(貧血または心臓、肝臓の失調によって引き起こされる顔色の悪さ、視力減退、動悸、不眠、皮膚の乾燥などの症状が出る状態)、「陰虚」(乾咳、口渇、食欲不振、胸やけ等の症状が現れる肺胃陰虚、視力減退、耳鳴、眩暈、頭がふらつく、などの症状が現れる肝腎陰虚)、「陽虚」(主として、腎陽虚のことであり、全身機能の衰退の症状)に区別することができ、それに応じて補養薬も補気薬、補血薬、補陰薬および補陽薬に分類されるが、これらは一般に滋養強壮剤または虚弱体質改善剤と総称されている。
【0004】
滋養強壮作用および虚弱体質改善作用のある生薬としては、鹿茸、海狗腎、海馬および牛黄などの動物性の生薬:冬虫夏草、淫羊かく、ムイラプアマ、人参、黄精、山薬、杜仲およびクコシなどの植物性の生薬が知られている。また、滋養強壮作用および虚弱体質改善作用のある漢方薬としては、補中益気湯(胃腸系、呼吸器系を補い気力を増す)、十全大補湯(身体を温め、血行をよくして、体力と気力をつける)、鹿茸大補湯(体力と精力を補う)、人参養栄湯(貧血や動悸、食欲不振に効く)、小建中湯(胃腸を立て直し、精力をつける)、八味丸(腎臓と生殖機能を高める)、天王補心丹(精神、神経を補い精力をつける)などが知られている(例えば、非特許文献1〜2等参照)。これらは経験的に効能効果が確認されている伝統的な処方であるが、その他、滋養強壮作用および虚弱体質改善作用を謳った組成物も種々提案されている(例えば、特許文献1〜6など参照)。
【0005】
しかし、川柳を始めとするヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物を用いた、特に腎機能亢進作用および血中中性脂肪低減作用といった多面的な作用に基づいて、虚弱体質を改善し、また滋養強壮して、倦怠感回復効果に優れた組成物は知られていない。
【非特許文献1】「家庭薬研究」17、p.48-52、1998
【非特許文献2】「薬理と治療」第27巻、11、1999
【特許文献1】特公平4−36136号公報
【特許文献2】特許第2518692号公報
【特許文献3】特許第2938355号公報
【特許文献4】特許第3298214号公報
【特許文献5】特許第3612729号公報
【特許文献6】特開2000−275086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な虚弱体質改善または滋養強壮剤を提供することを目的とする。特に本発明は、腎機能亢進作用および中性脂肪低減作用といった多面的な作用に基づいて虚弱体質を改善し、また滋養を強壮するための医薬組成物、特に倦怠感回復効果に優れた医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討していたところ、ヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する川柳(カワヤナギ)の樹皮や枝を粉砕して得られた粉末を配合した組成物に、腎機能を亢進する作用および血中の中性脂肪を低減する作用があることを見出し、これを服用することによって倦怠感が著しく改善することを確認した。当該川柳の樹皮は、従来より消炎や鎮痛去風作用があることからリウマチや黄疸の治療に使用されており、また枝は消炎、利尿、鎮痛、去風作用があることから肝炎や黄疸の治療に使用されており、経験的に安全性が確認されている成分である。
【0008】
すなわち、本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を包含するものである。
【0009】
項1.ヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物の加工物を有効成分とする虚弱体質改善または滋養強壮剤。
【0010】
項2.ヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物が、川柳(Salix Gilgiana Seemen)またはその同属植物(salicaceae)である項1に記載する虚弱体質改善または滋養強壮剤。
【0011】
項3.上記植物の加工物が、当該植物の樹皮または/および枝の粉砕加工物である、項1または2に記載する虚弱体質改善または滋養強壮剤。
【0012】
項4.さらにビタミンおよびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含有する項1乃至3のいずれかに記載する虚弱体質改善または滋養強壮剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、腎機能亢進作用および血中中性脂肪を低減する作用を有し、倦怠感(怠さ)回復効果に優れた虚弱体質改善または滋養強壮剤を提供することができる。本発明の医薬組成物は、腎機能を亢進することによって血液を浄化し、また水分の排出・再吸収による体内の水・電解質の量の調節、ビタミンDの活性化による骨への作用(骨の軟化や骨密度の改善)、精神症状の改善などといった作用を発揮し、さらに血液中の中性脂肪量を低減して血液の流動性を改善する作用(血の巡り改善作用)を有することから、虚弱体質の改善に有効に用いることができる(実施例1参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤は、有効成分としてヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物の加工物を含むことを特徴とする。
【0015】
ここでヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物としては、好ましくは川柳(カワヤナギ)(Salix Gilgiana Seemen)またはその同属植物(salicaceae)を挙げることができる。
【0016】
川柳の同属植物としては、特に制限されないが、ヤマヤナギ、ハシカエリヤナギ、ダイセンヤナギ、ツクシヤマヤナギ、ネコヤナギ、エノコロヤナギ、トウトウヤナギ、クロヤヤナギ、ユビソヤナギ、チチブヤナギ、イヌコリヤナギ、コリヤナギ、エゾノカワヤナギ、ナガバカワヤナギ、レンゲイソウヤナギ、タカネイワヤナギ、タカネヤナギ、エゾノタカネヤナギ、マルバヤナギ、ホソバマルバヤナギ、オオマルバヤナギ、イヌマルバヤナギ、ヒダカミネヤナギ、ミヤマヤチヤナギ、ノヤナギ、ヒメヤナギ、コウライバッコヤナギ、エゾノバッコヤナギ、エゾノヤマネコヤナギ、マンジュウバッコヤナギ、ヤマネコヤナギ、バッコヤナギ、サルヤナギ、タライカヤナギ、ミヤマヤナギ、ミネヤナギ、キヌゲミヤマヤナギ、ケミヤマヤナギ、エゾヤナギ、コエゾヤナギ、キヌヤナギ、エゾノキヌヤナギ、ギンヤナギ、ウラジロヤナギ、オノエヤナギ、ヤビヤナギ、ナガバヤナギ、カラフトヤナギ、オオキツネヤナギ、オオネコヤナギ、キンメヤナギ、キツネヤナギ、サイコクキツネヤナギ、ミヤマキツネヤナギ、シライヤナギ、コマイワヤナギ、シバヤナギ、エゾマメヤナギ、ウンリュウヤナギ、ジャヤナギ、オオシロヤナギ、シダレヤナギ、イトヤナギ、セイコヤナギ、セイヨウシダレヤナギ、コゴメヤナギ、コメヤナギ、ヨシノヤナギ、シロヤナギ、タチヤナギ、アカメヤナギ、ロッコウヤナギ、ミヤコヤナギ、ヌシロヤナギ、ヨイチヤナギ、ネコシバヤナギ、チクゼンヤナギ、フリソデヤナギ、ミョウジンヤナギ、イヌカワヤナギ、コセキヤナギ、フジヤナギ、イケノヤナギ、ツガルヤナギ、ヒラオヤナギ、ヤマトヤナギ、オオミヤマヤチヤナギ、シバキツネヤナギ、ナスノイワヤナギ、コンゴウバッコヤナギ、センダイヤナギ、ユウキシダレ及びこれらの雑種を挙げることができる。
【0017】
川柳はタンニンおよびサリチル酸を含んでおり、収斂、解熱、利尿および殺菌作用があることが知られている。また前述するように、川柳は従来より生薬として広く使用されており、例えば、枝は消炎、利尿、鎮痛、去風の効果があるとして肝炎や黄疸の治療に;葉は清熱、利尿、解毒の効果があるとして乳腺炎、尿白濁、高血圧の治療に;花は止血作用があるとして吐血、血便、血尿などの治療に;樹皮や根皮(コルク皮を除いたもの)は消炎、鎮痛去風の効果があるとしてリウマチや黄疸に使用されている。
【0018】
本発明においてその適用部位は特に制限されず、従来より生薬として使用されている部位、例えば上記の枝、葉、花、樹枝および根を広く用いることができるが、好ましくは枝および樹皮である。
【0019】
これらの部位は、通常、乾燥後、その形態や目的とする剤型に応じて種々の加工処理〔粉砕処理、造粒処理、抽出処理、濃縮処理、乾燥処理(スプレードライ処理、凍結乾燥処理を含む)など〕に供され、加工物として調製される(以下、本発明が対象とする植物の加工物を、単に「植物加工物」または「加工物」ともいう)。
【0020】
本発明が対象とする加工物としては、例えば、粉砕加工物(粗粉末、細粉末のいずれを含む)、エタノールや熱水などで抽出した抽出エキス、その乾燥物(乾燥抽出エキス)、さらにこれを粉末にした粉末乾燥抽出エキスなどを挙げることができる。好ましくは粉砕加工物である。
【0021】
これらの加工物は、本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤の一日投与単位中に200〜5000mg、好ましくは1000〜3000mg(乾燥物相当量)となるような割合で含まれていることが望ましい。虚弱体質改善または滋養強壮剤100重量%中に含まれる加工物の割合は、上記の範囲となるものであればよく、0.2〜97重量%、好ましくは50〜90重量%の範囲から適宜調整することができる。
【0022】
これらの加工物を含む本発明の医薬組成物は、腎機能亢進作用および血中に含まれる中性脂肪量を低減することによって血液を浄化し、また血の流れや循環を改善する作用を有し、倦怠感(疲労や怠さを含む)の改善に有効であり、虚弱体質改善剤または滋養強壮剤として好適に用いることができる。
【0023】
かかる虚弱体質改善または滋養強壮剤は、本発明の効果を妨げない限り、上記加工物に加えてさらに他の薬効成分を配合することができる。
【0024】
薬効成分としては、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗酸化剤、解毒剤、生薬、生薬抽出エキス、強精剤、動物粉末、動物抽出エキス、植物粉末、植物抽出エキス、キノコ類、キノコ抽出物、ミネラル分(鉄、亜鉛、マグネシム、ヨードなど)、脂肪酸(EPA、DHAなど)を挙げることができる。好ましくはビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、および解毒剤であり、より好ましくはビタミン、アミノ酸である。これらの成分は、1種単独で上記加工物と組み合わせて使用してもよいし、また2種以上を上記加工物と併用することもできる。
【0025】
ここでビタミンとしては、ビタミンA群に属するビタミン〔例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン及びそれらの薬理学的に許容される塩類(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールなど)など〕、ビタミンB群に属するビタミン〔例えば、チアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノコバラミン、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、コリン、イノシトール、パンガミン酸及びそれらの薬理学的に許容されるこれらの塩類(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサールカルシウム、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムなど)など〕、ビタミンC群に属するビタミン〔アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸及びその誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩類(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウムなど)など〕、ビタミンD群に属するビタミン〔例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール及びそれらの薬理学的に許容される塩類など)など〕、ビタミンE群に属するビタミン〔例えば、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩類(酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウムなど)など〕、その他のビタミン[例えば、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン(ビタミンP)、エリオシトリン、ヘスペリジン及びそれらの薬理学的に許容される塩類(塩化カルニチンなど)など〕を挙げることができる。
【0026】
好ましくは、ビタミンB群に属するビタミン、ビタミンC群に属するビタミン、ビタミンE群に属するビタミン、およびルチン(ビタミンP)であり、より好ましくはビタミンB群に属するパントテン酸塩、およびルチンである。
【0027】
本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤が、例えばビタミンB群に属するビタミンを含有するものである場合、当該ビタミンは虚弱体質改善または滋養強壮剤の一日投与単位中に0.001〜300mg、好ましくは1〜100mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。また本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤が、ルチンを含有するものである場合、当該ルチンは本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤の一日投与単位中に1〜300mg、好ましくは10〜100mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。こうした場合、本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤100重量%中に含まれるビタミンの割合は、上記の範囲となるものであればよく、例えばビタミンB群に属するビタミンの場合0.00001〜25重量%、好ましくは0.0004〜3.5重量%、ルチンの場合0.01〜40重量%、好ましくは0.3〜3.5重量%の範囲から適宜調整することができる。
【0028】
またアミノ酸としては、ロイシン、イソイロイシン、バリン、メチオニン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、チロシン、システイン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリシルグリシン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、シスチンまたはこれらの薬理学的に許容される塩類(例えばアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、塩酸システインなど)、などを挙げることができる。好ましくは、バリン、ロイシンおよびイソロイシン等の分岐鎖アミノ酸、グルタチオン、システイン、グルタミン酸、グリシン、セリン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、メチオニン、スレオニン、リジン、シスチン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、プロリン、アミノエチルスルホン酸であり、より好ましくは、アミノエチルスルホン酸である。
【0029】
本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤がアミノ酸を含有するものである場合、当該アミノ酸は本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤の一日投与単位中に30〜1000mg、好ましくは50〜500mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。虚弱体質改善または滋養強壮剤100重量%中に含まれるアミノ酸の割合は、上記の範囲となるものであればよく、0.3〜77重量%、好ましくは2〜15重量%の範囲から適宜調整することができる。
【0030】
抗酸化剤としては、乾燥酵母、グルタチオン、リポ酸、ケルセチン、カテキン、コエンザイムQ10、エンゾジノール、プロアントシアニジン類、アントシアニジン、アントシアニン、カロチン類、リコピン、フラボノイド、リザベラトロール、イソフラボン類、亜鉛、イチョウ葉、月桃葉、ハイビスカス、メラトニンを挙げることができる。なかでも、抗酸化剤として知られるグルタチオンを比較的多く含み、かつそれ以外のミネラルも多様に含んでいることから、乾燥酵母が好ましい。
【0031】
本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤が抗酸化剤を含有するものである場合、当該抗酸化剤は本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤の一日投与単位中に30〜1000mg、好ましくは100〜500mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。虚弱体質改善または滋養強壮剤100重量%中に含まれる抗酸化剤の割合は、上記の範囲となるものであればよく、0.3〜75重量%、好ましくは3〜15重量%の範囲から適宜調整することができる。
【0032】
解毒剤としては、チオプロニン、グルクロン酸アミド、グルクロン酸ナトリウム、プロトポルフィリン二ナトリウム、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、マロチラート、プロパゲルマニウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸モノアンモニウム、肝臓水解物、塩酸トリエンチン、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、ジメルカプロール、グルクロノラクトンを挙げることができる。好ましくはグルクロノラクトンである。
【0033】
本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤が解毒剤を含有するものである場合、当該解毒剤は本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤の一日投与あたりに30〜1000mg、好ましくは100〜500mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。虚弱体質改善または滋養強壮剤100重量%中に含まれる解毒剤の割合は、上記の範囲となるものであればよく、0.3〜75重量%、好ましくは7〜15重量%の範囲から適宜調整することができる。
【0034】
さらに本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤は、本発明の効果を妨げない限り、上記加工物に加えてさらに主に強精や強壮作用を有する他の生薬成分や有効成分を配合することもできる。
【0035】
かかる生薬としては、制限されないが、例えばサンヤク、タイソウ、カンゾウ、コウイ、ハンピ、ゴカヒ、コロハ、カイバ、センボウ、コトウニク、ホコツシ、クコシ、リュウガンニク、ベニバナ、ソウジン、シャジン、ヒャクゴウ、ゴマ、コクズ、ローヤルゼリー、オウギ、シャクヤク、ロクジョウ、ゴウカイ、ニクジュヨウ、サヨウ、トチュウ、ジュクジオウ、カシュウ、バクモンドウ、トシシ、トウキ、セッコク、ゴオウ、ニンジン、デンシチニンジン、サンシチニンジン、イカリソウ、レイシ、キョウニン、ウコン、シイタケ、インチンコウ、トウチュウカソウ等を挙げることができる。
【0036】
有効成分としては、制限されないが、例えばウルソデオキシコール酸、ニンニク抽出物、ヨヒンビン、塩酸ヨヒンビン、マカ、ガラナエキス、クエン酸シルデナフィル、男性ホルモン(メチルテストステロンなど)、睾丸乾燥末、すっぽん粉末、サソリ粉末、スペイン昆虫末、ビオタミン、リバオール、牛骨髄骨粉、真珠、亀、羊胎盤、不飽和脂肪酸(EPA、DHAなど)、レシチン、大豆由来物質、ロクジョウ、ロイヤルゼリー等を上げることができる。これらを配合することで、主に強精、強壮作用を高めることが期待できる。
【0037】
本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤は、そのまま経口使用してもよいし、また必要に応じて、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤およびドライシロップ剤などの各種の固形剤、または内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液剤など、通常の医薬品で採用されている種々の剤型にすることができる。製剤化は、医薬の分野で採用されている通常の製剤化手法を適用することができる。例えば、錠剤は、各成分を処方に従って添加配合し、粉砕、造粒、乾燥、整粒および混合を行い、得られた調製混合物を打錠することによって調製することができる。
【0038】
さらに、必要に応じて、製剤化のための添加物、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤などを配合することができ、また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にすることもできる。ペースト状の膠剤とすることもできる。
【0039】
本発明の虚弱体質改善または滋養強壮剤の1日の目安摂取量は、対象者の年齢、性別、体重、症状に応じて、適宜設定調整することができるが、例えば、成人を対象とする場合、川柳などの植物加工物の乾燥重量に換算して200〜5000mgの範囲、好ましくは1000〜3000mgの範囲を挙げることができる。かかる範囲で1日に1〜数回に分けて摂取することもできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
ヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物の加工物として川柳末(川柳の枝及び樹皮部位の粉砕物:(株)金井藤吉商店製)を用いて、下記表1の処方に従って医薬組成物(製剤例1)を調製した。
【0042】
【表1】

【0043】
これをWistar系ラット(被験群:雄10匹および雌10匹の計20匹、4週齢)に1日あたり総量2000mg/kgとなるような割合で経口投与し、これを28日間継続した。28日間の投与終了後、血液を採取して、血中の中性脂肪量(U/L)および尿素窒素量(mmol/L)を測定した。なお、血中の中性脂肪量(U/L)は、全自動生化分析機(ALYCON-300型:終点法)、および尿素窒素量(mmol/L)は全自動生化分析機(ALYCON-300型:動力法)を用いて、そのマニュアルに従って測定した。
【0044】
また比較対照試験として、医薬組成物を投与しない無投与群(雄10匹および雌10匹の計20匹、Wistar系ラット4週齢)についても同様にして血液を採取して、血中の中性脂肪量(U/L)および尿素窒素量(mmol/L)を測定した。なお、被験群および無投与群はいずれも室温20〜25℃、湿度40〜70%、明暗12時間サイクル(明:8:00〜20:00)、ポリカーボネート製ケージに5匹/ケージの同一条件で飼育した。
【0045】
結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
この結果から、本発明の医薬組成物を投与することによって、血中の中性脂肪量が低下すること、また尿素窒素量が低下することがわかる。血中の中性脂肪量の低下は、血液粘度が減少することによって細胞組織への栄養や酸素の供給が促進され、また心臓への負荷が低減することによって循環器系が健全化されることを意味する。また尿素窒素量の低下は、腎機能の亢進を意味し、体内水分の排出・再吸収による体内の水・電解質の量の調節、ビタミンD活性化による骨作用(骨の軟化や骨密度の改善)、精神症状の改善効果を期待することができる。斯くして、体の異常状態を回避することができ、虚弱な状態を脱することができる。
【0048】
実施例2
実施例1で調製した医薬組成物を人に長期服用させ、倦怠感の回復作用を評価した。具体的には、倦怠感(怠さ)を有する20歳代〜50歳代の男性7名(パネラー)に、上記医薬組成物を1回約1230mgの用量で1日3回服用してもらい、これを28日間継続してもらった。倦怠感の基準は各自で「大変だるい」を1に、また「全くだるくない」を5に設定してもらい、5段階で自己評価をしてもらった。この評価を服用前と28日間の服用後に行ってもらい、下記の基準に従って、医薬組成物の倦怠感回復効果を評価した。
【0049】
<倦怠感回復効果の評価基準>
著効:服用後の倦怠感−服用前の倦怠感:3点以上
有効:服用後の倦怠感−服用前の倦怠感:1〜2点
不変:服用後の倦怠感−服用前の倦怠感:0点
無効:服用後の倦怠感−服用前の倦怠感:マイナス。
【0050】
その結果、上記医薬組成物の服用により倦怠感の改善効果があった(著効および有効)とするパネラーの総数は全体の7割以上を占め、本発明の医薬組成物に倦怠感回復効果があることが認められた。
【0051】
実施例3
川柳末(川柳の枝及び樹皮部位の粉砕物:(株)金井藤吉商店製)2800mgにバレイショデンプン200mgを混合して医薬組成物を調製した(3000mg)。これを実施例2と同様に、倦怠感(怠さ)を有する20歳代〜50歳代の男性7名(パネラー)に、1回約1000mgの用量で1日3回服用してもらい、これを28日間継続してもらった。実施例2と同様に評価したところ、倦怠感の改善効果があった(著効および有効)とするパネラーの総数は全体の約6割を占め、川柳末に倦怠感回復効果があることが認められた。
【0052】
実施例4
表3〜5に記載する処方からなる医薬組成物(製剤例1〜21)を、慣用法に従って錠剤として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、粉砕、造粒、乾燥、整粒および混合を行い、それを定法に従って打錠して錠剤の形態に調製した。
【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
実施例5
表6〜7に記載する処方からなる医薬組成物(製剤例22〜41)を、慣用法に従って顆粒剤として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、定法に従って混合、造粒、乾燥および整粒して顆粒剤の形態に調製した。
【0057】
【表6】

【0058】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物の加工物を有効成分とする虚弱体質改善または滋養強壮剤。
【請求項2】
ヤナギ目ヤナギ科ヤナギ属に属する植物が、川柳(Salix Gilgiana Seemen)またはその同属植物(salicaceae)である請求項1に記載する虚弱体質改善または滋養強壮剤。
【請求項3】
上記植物の加工物が、当該植物の樹皮または/および枝の粉砕加工物である、請求項1または2に記載する虚弱体質改善または滋養強壮剤。
【請求項4】
さらにビタミンおよびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載する虚弱体質改善または滋養強壮剤。







【公開番号】特開2008−81475(P2008−81475A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266373(P2006−266373)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】