説明

虫類捕獲装置

【課題】捕獲効率を向上させた虫類捕獲装置を提供する。
【解決手段】吸引ファンを回転させて生じさせた気流によって虫類を吸引するとともに、気流の流路の中途部に設けた捕獲用ネットで虫類を捕獲する虫類捕獲装置において、吸引ファン及び捕獲用ネットを収容した吸引捕獲部には、虫類を吸引する吸引口を設けるとともに、この吸引口内に虫類を誘引する光を照射する第1のライトを設け、吸引捕獲部を所定の高さに配置するとともに、吸引口の下方側にシート状のネットを垂れ下がり状に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫類捕獲装置に関するものであり、特に主たる捕獲対象を食品に集りやすいコバエなどの小型の虫類として、これらの虫類の捕獲効率を向上させた虫類捕獲装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
害虫の各種製品や食品などへの混入は消費者に不快感をあたえるだけでなく、病原性の寄生虫や微生物を伝播させて人間に健康上の被害をもたらすおそれがあるために、日常的に害虫の駆除が行われている。従来、その駆除方法として、所要の殺虫成分を有した殺虫剤の使用、電撃式殺虫機や粘着式捕虫機を使用する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、殺虫剤は環境や人体に悪影響を与えるおそれを無視できないので長期的な使用が憚られ、また、電撃式殺虫機では害虫の死骸やその破片が飛び散ることによる製品などへの混入の可能性が増加するおそれがあり、粘着式捕虫機では埃や油などによる粘着力及び捕獲面積の低下による捕獲能力の制限並びに粘着紙の交換作業が必要なことにともなう不便さなどの問題がある。本発明者らは、このような観点から、吸引ファンを回転させて生じさせた気流によって虫類を吸引するとともに、前記気流の流路の中途部に設けた捕獲用のネットで前記虫類を捕獲する虫類捕獲装置を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この虫類捕獲装置では、蚊やコバエなどの衛生害虫や不快害虫を効果的に駆除可能であって、しかも衛生害虫や不快害虫を捕獲する際に粘着シートなどのような衛生害虫や不快害虫を粘着させる捕獲手段を用いないことにより、時間経過にともなう捕獲効率の低下が生じにくくなっている。
【特許文献1】特開2006−051016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが提案した従来の虫類捕獲装置では、蚊などのように二酸化炭素に対する感受性の高い虫類や走光性のあるユスリカなどに対しては極めて効果的であることが確認されたが、コバエ類のなかで走光性はあるが飛翔能力の高くないチョウバエやショウジョウバエなどに対してもさらに効果が高くなるような工夫が求められていた。
【0006】
本発明者らは、このような走光性はあるが飛翔能力の高くない虫類の捕獲効率を高めるべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の虫類捕獲装置では、吸引ファンを回転させて生じさせた気流によって虫類を吸引するとともに、気流の流路の中途部に設けた捕獲用のネットで虫類を捕獲する虫類捕獲装置において、吸引ファン及び捕獲用のネットを収容した吸引捕獲部には、虫類を吸引する吸引口を設けるとともに、この吸引口内に虫類を誘引する光を照射する第1のライトを設け、吸引捕獲部を所定の高さに配置するとともに、吸引口の下方側にシート状のネットを垂れ下がり状に配置した。
【0008】
さらに、本発明の虫類捕獲装置では、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)シート状のネットを暗色のネットとしたこと。
(2)シート状のネットに、このネットの目を塞ぐシート体であって、暗色としたシート体を装着したこと。
(3)シート体に誘引剤を塗布若しくは含浸させたこと、またはシート体に誘引剤を塗布若しくは含浸させた誘引体を据付けたこと。
(4)シート状のネット越しに光を照射する第2のライトを設けたこと。
(5)第2のライトを吸引捕獲部を支持する支持柱に装着するとともに、この支持柱の表面を光沢材で構成したこと。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、引ファンを回転させて生じさせた気流によって虫類を吸引するとともに、気流の流路の中途部に設けた捕獲用のネットで虫類を捕獲する虫類捕獲装置において、吸引ファン及び捕獲用のネットを収容した吸引捕獲部には、虫類を吸引する吸引口を設けるとともに、この吸引口内に虫類を誘引する光を照射する第1のライトを設け、吸引捕獲部を所定の高さに配置することで、吸引口近傍を飛翔する虫類を誘引して吸引捕獲するとともに、吸引口の下方側にシート状のネットを垂れ下がり状に配置したことによって、飛行移動中の捕獲対象の虫類が第1のライトに照らされたネットに止まらせて、しかも、ネットに止まった後に第1のライトに誘引されて吸引口に向けて歩行を開始することにより、虫類が自ら吸引口に近づいて吸引されることとなり、捕獲効率を向上させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の虫類捕獲装置において、シート状のネットを暗色のネットとしたことによって、飛行移動中の捕獲対象の虫類を吸引口の下方側のネットに止まらせやすくすることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の虫類捕獲装置において、シート状のネットに、このネットの目を塞ぐシート体であって、暗色としたシート体を装着したことによって、飛行移動中の捕獲対象の虫類をシート体に向かって飛行させることができ、吸引口の下方側のネットに止まらせやすくすることができる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の虫類捕獲装置において、シート体に誘引剤を塗布若しくは含浸させたこと、またはシート体に誘引剤を塗布若しくは含浸させた誘引体を据付けたことによって、飛行移動中の捕獲対象の虫類を、吸引口近傍の空間及び吸引口の下方側のネットにより強く誘引することができる。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の虫類捕獲装置において、シート状のネット越しに光を照射する第2のライトを設けたことによって、飛行移動中の捕獲対象の虫類を、吸引口近傍の空間及び吸引口の下方側のネットにより強く誘引することができる。
【0014】
請求項6記載の発明によれば、請求項4記載の虫類捕獲装置において、第2のライトを吸引捕獲部を支持する支持柱に装着するとともに、この支持柱の表面を光沢材で構成したことによって、第2のライトによる誘引効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の虫類捕獲装置は、走光性はあるが飛翔能力の高くない虫類の捕獲効率を高めるために、吸引口の近傍に飛来した虫類が一旦止まれるネットを設けているものである。
【0016】
すなわち、本発明の虫類捕獲装置では、吸引ファンを回転させて生じさせた気流によって虫類を吸引するとともに、気流の流路の中途部に設けた捕獲用のネットで虫類を捕獲する吸引捕獲部を備え、この吸引捕獲部には、虫類を吸引する吸引口を設けるとともに、この吸引口内に虫類を誘引する光を照射する第1のライトを設け、さらに吸引捕獲部を所定の高さに配置するとともに、吸引口の下方側にシート状のネットを垂れ下がり状に配置しているものである。
【0017】
したがって、捕獲対象の虫類は、第1のライトに照らされたネットに止まり、しかも、ネットに止まった後に第1のライトに誘引されて吸引口に向けて歩行を開始する。
【0018】
吸引口に向けて歩行する虫類は、吸引ファンの回転によって生じる気流が影響する領域に自ら達することにより、吸引捕獲部に吸引されて捕獲されることとなる。
【0019】
このように、吸引口の下方側にシート状のネットを垂れ下がり状に配置することにより、走光性により装置まで誘引したものの、その飛翔能力が低いために飛び続けることなく床を走行する虫類を、シート状のネットを介して吸引口に導くことができ、捕獲効率を向上させることができる。
【0020】
なお、本虫類捕獲装置は、主として、コバエなどの食品に集りやすい不快害虫類を捕獲対象としており、特にショウジョウバエ、チョウバエ、ユスリカなどの捕獲に高い効果を示すものである。
【0021】
以下に、図面に基づいて本発明の実施形態を詳説する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る虫類捕獲装置Aの斜視図、図2は、本実施形態に係る虫類捕獲装置Aの断面説明図である。
【0023】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る虫類捕獲装置Aは、不快害虫を吸引して捕獲する吸引捕獲部1と、この吸引捕獲部1を支持する支持柱2と、この支持柱2を立設させた状態で支持する平台状の基台3とを備えている。
【0024】
吸引捕獲部1は、吸引ファン4及び虫類捕獲用の補虫ネット5を収容しており、その底部には、虫類を吸引する吸引口6を設けている。そして、この吸引口6の下方側にシート状のネット7を垂れ下がり状に配置している。
【0025】
また、この吸引口6内には、虫類を誘引する光を照射する第1のライト8を備えている。
【0026】
そして、支持柱2には、第1のライト8と同様に虫類を誘引する光を照射する第2のライト9を備えると共に、支持柱2の表面に光を反射する光沢材としての反射フィルム11を貼設している。
【0027】
本虫類捕獲装置Aは、すなわち、第1のライト8及び第2のライト9の放出する光によって虫類を吸引口6近傍に誘引し、飛来してきた虫類を吸引口6の下方側に設けたネット7に止まらせるように誘導する。そしてこのネット7上に止まった虫類を第1のライト8の放出する光によって吸引口6へ誘導する。虫類が吸引口6の所定距離まで近づくと、吸引ファン4で生成した吸引流によって吸引口6から吸引し、吸引捕獲部1に捕獲する構成である。
【0028】
以下、各部をより具体的に説明すると、基台3は、図1に示すように平面視矩形状で所要の厚みを有する平板で構成している。この基台3の左側後部には左側車輪13aを枢着すると共に、基台3の右側後部には右側車輪13bを枢着している。また、基台3の前端左側部にはL字状とした左側設置片14aを設けるとともに、基台3前端右側部にはL字状とした右側設置片14bを設けている。
【0029】
このように左右側車輪13a、13bを設けることにより本虫類捕獲装置Aを搬送容易としており、基台3の前端縁部を持ち上げることにより左右側車輪13a、13bのみで接地するようにして所要の位置に本虫類捕獲装置Aを搬送した後に、左右側接地片14a、14bを地面等の接地領域の表面に当接させて虫類捕獲装置Aを定置可能としている。
【0030】
左右側接地片14a、14bはL字状に屈曲させた板材であって、一端を基台3の前端部に垂下状態に装着するとともに、他端部分を前方に向けて突出させて、この前方に向けた突出部分をそれぞれ接地面に当接する当接部としている。この当接部には、所要の貫通孔を設け、この貫通孔と接地面とを所要の杭などで打ち付けるなどして強固に固定するようにしても良い。
【0031】
この基台3の後端近傍に、円筒形状の支持柱2を上方に向けて立設させており、その表面には、アルミホイル等の反射フィルム11を貼着している。そして、この反射フィルム11を貼着してなる支持柱2の前面部には、虫類を誘引する光を照射する第2のライト9を設置している。反射フィルム11は、アルミホイルに限定するものではなく、適宜の反射材を用いることができ、例えば、アルミ板等の金属板を貼着しても良いし、金属光沢のある塗料を塗布してもよい。また、支持柱2自体をアルミ板などの金属光沢を有する材料で形成してもよい。
【0032】
虫類を誘引する光としては紫外光が有効である。また、不快害虫のうちハエを含む双翅類、特にチョウバエやユスリカは、黄色や緑色の色彩を好んで集まる習性があることが分かっているため、紫外光とともに黄色或いは緑色の光を配色すると、双翅類の誘引効果をさらに向上させることができて望ましい。なお、この第2のライト9の電力は1〜40W程度、好ましくは10〜20W程度である。また、この第2のライト9として、紫外光を含む光を照射可能なLED(light emitting diode)を用いることもできる。
【0033】
なお、本実施形態では、第2のライト9を剥き出し上に配設しているが、適宜のカバーで被覆しても良い。この場合カバー体は紫外光領域の光を吸収しない材質のものを用いることが望ましく、PET等を用いることが望ましい。
【0034】
また、この反射フィルム11と同様の反射フィルム12を、前述した基台3表面にも貼着しており、このような反射フィルム11、12を設けることで、第1、第2のライト8、9の光や、本虫類捕獲装置Aを設置する部屋に備えてある電灯の光を反射させて、効率よく誘引光を放射し、虫類を誘引する効果を可及的に向上させることができる。
【0035】
支持柱2の上端部には、内部に吸引ファン4及び補虫ネット5を収容した吸引捕獲部1を配設している。吸引捕獲部1は、支持柱2との連結部分から前方に向かい膨出させた形状の箱体としており、膨出部分の底部には、図2に示すように、下方に向けて開口した吸引口6を設けている。
【0036】
吸引捕獲部1の内部には、吸引ファン4を設けて吸引口6から空気を吸引可能としている。吸引捕獲部1の後端部には、図2に示すように、吸引捕獲部1内に吸引した空気を排気するための排気口15を設けている。
【0037】
吸引ファン4の前方位置には、補虫ネット5を収容した捕獲部16を設け、吸引ファン4によって空気と共に吸引捕獲部1に吸引した不快害虫を捕獲するようにしている。捕獲部16では、箱状とした補虫ネット5を出し入れ自在に収容している。特に、吸引捕獲部1において捕獲部16の上部に開閉自在な開閉蓋を設け、この開閉部から補虫ネット5の出し入れを行っている。
【0038】
捕獲部16の前方位置には、図2に示すように、一端を吸引口6と連通した筒状の吸引配管17を設け、この吸引配管17によって吸引口6から吸引した空気を、捕獲部16へとスムーズに導いている。
【0039】
吸引配管17は、吸引口6近傍部分を拡開状として、この拡開部には扁平な球形状とした中央閉塞体18を設けている。この中央閉塞体18は、その上面部に装着軸19を設けており、この装着軸19を、吸引配管17内に架設した略棒状の中央閉塞体支持片20に係止して、中央閉塞体18を吸引配管17内に装着するとともに吸引口6内部に位置させている。
【0040】
このように、吸引口6内部に中央閉塞体18を設置したことで、吸引口6によって吸引される空気は、中央閉塞体18の周面に沿った流路を経て吸引捕獲部1内へ吸気される。すなわち、吸引口6を輪状として吸気流路を狭めることで、吸引配管17と中央閉塞体18との間に流れる空気の流速を向上させることができ、吸引口6から吸引して捕獲した不快害虫が外部に逃げてしまうことを防止することができる。
【0041】
さらに、中央閉塞体18の底部中央部分には、図2に示すように、不快害虫を誘引する光として紫外光を含む光を照射する第1のライト8を配置している。
【0042】
この第1のライト8は、吸引口6の下方に設けられた後述するネット7に向けて紫外光を含む光を照射して、このネット7に止まった不快害虫を吸引口6のほうへ誘導することで、この不快害虫を吸引口6から吸引捕獲部1内へ効果的に吸引して、不快害虫の捕獲効率を向上させるものである。
【0043】
この第1のライト8においても、第2のライト9と同様に、紫外光とともに緑色或いは黄色を配色すると、不快害虫の誘引効果を向上させることができて好ましい。なお、この第1のライト8の電力は、1〜20W程度、好ましくは4〜10Wほどである。
【0044】
第1のライトの配設位置は、中央閉塞体18の底面中央部に限定するものではなく、吸引捕獲部1の吸引口6近傍であって、吸引口6の下方に備えた後述するネット7から光が確認できる位置であればどこにでも配設可能である。
【0045】
吸引口6の下方位置には、シート状のネット7を傾斜状に懸架している。ネット7は、上端部分を吸引捕獲部1の下端面で支持柱2に近接する位置に係着し、下端部分を基台3前端部に係着して傾斜状とし、吸引口6及び第1のライト8と対面させている。ネット7は黒やグレー等の暗色系の色のネットであることが望ましい。
【0046】
ネット7の略中央部には、ネット7の網目を塞ぐシート体22を装着している。このシート体22は、光透過性の低い黒色の紙体や布体等によって形成し、虫類を誘引する誘引剤を塗布若しくは含浸させている。誘引剤としては、フェネチルアルコールなどの既知の誘引成分等を用いることができる。シート体22は、黒色等の暗色であればどのような材質であってもよく、しかも、適宜の着色によって暗色としても良い。また、シート体22には誘引剤を塗布若しくは含浸させるだけでなく、誘引剤を脱脂綿などの適宜の吸収体または保持体に塗布若しくは含浸させて不快害虫を誘引可能とした誘引体をシート体22に据付けてもよい。
【0047】
不快害虫類、特にショウジョウバエは、光のコントラストを好み、光のほうへ向かうものの影の部分に止まる習性があることが判明しており、シート体22越しに第2のライト9によって誘引された不快害虫をシート体22及びネット7に止めやすくすることができる。
【0048】
しかもこのシート体22に誘引剤を塗布若しくは含浸させることとしているため、不快害虫をさらに効果的に誘引することができる。
【0049】
すなわち、本発明の虫類捕獲装置Aは、先ず、飛行或いは歩行している不快害虫類を、第2のライト9によって装置A付近に誘引する。そして、第2のライト9の光がネット7の網目やシート体22に遮られる事によって形成される光のコントラストを利用して、不快害虫をネット7上に効果的に止まらせ、その後、このネット7上に止まった不快害虫を第1のライト8で吸引口6のほうへ誘引して歩行させた後、吸引ファン4の吸引力で吸引捕獲部1内に吸引して、確実に捕獲するものである。
【0050】
捕獲部16に捕獲された不快害虫は、吸引ファン4による吸引作用によって補虫ネット5の外部に逃げることが妨げられるため、確実に捕獲することができる。
【0051】
特に、虫類捕獲装置Aでは、所要のタイミングで吸引ファン4の回転数を向上させて、より大きな流速の空気流を生成することにより、捕獲部16に捕獲している不快害虫を圧死させることができ、吸引ファン4の作動停止に伴って捕獲部16から不快害虫が外部に逃げ出すことを防止できる。
【0052】
以下において、虫類捕獲装置Aの効果を示す実験結果を記す。
[実験]
205×270×250(cm)の暗室に、400頭前後のショウジョウバエを放った条件下で、装置条件を異ならせた虫類捕獲装置を用いてショウジョウバエの捕獲実験を行った。実験時間はそれぞれ17時から翌朝9時の16時間とした。なお、それぞれの装置条件は以下の(1)〜(4)に示すものであり、以下に記載していないその他の構成は虫類捕獲装置Aの構成と同様としている。
(1)本実施形態に係る虫類捕獲装置Aを用いた。
(2)支持柱2に設置するライトとして、紫外光を照射する誘虫灯である第2のライト9に代えて、蛍光灯を設置した。なお、誘虫灯と蛍光灯は共に10Wの光管を使用した。
(3)ネット7を設置しなかった。
(4)ネット7に装着するシート体として、黒色のシート体22に代えて、白色のシート体を装着した。
【0053】
下表は、上記(1)〜(4)の実験に係る実験結果を示している。
【0054】
【表1】

表1(1)、(2)に示すように、支持柱2に装着するライトとして、誘虫灯である第2のライト9を使用したときと、蛍光灯を使用したときのショウジョウバエの捕獲率はほぼ等しかった。しかし、チョウバエ等、蛍光灯に誘引されない飛翔害虫がいることを考慮すれば、誘虫灯である第2のライト9を使用することが望ましい。
【0055】
また、表1(1)、(3)に示すように、ネット7を設置した場合と設置しない場合とでは、捕獲率が大きく異なった。ネット7を設置した場合は、設置しなかった場合と比較して14%も捕獲率が高く、ネット7の有効性が証明できる結果を得ることができた。なお、実験中ネット7に止まったショウジョウバエは、第1のライト8に誘引されてネット7の上部へ這い上がる様子が多数確認できたため、このネット7を設置することで吸引効率を大きく向上できることが確認できた。
【0056】
また、表(1)、(4)に示すように、ネット7に装着するシート体22を、黒色のシート体22と白色のシート体とした場合で比較したところ、捕獲率に大きな差が生じることが確認できた。黒色のシート体22を装着した場合は、白色のシート体を装着した場合と比較して14%も捕獲率を向上させることができている。ショウジョウバエが光のコントラストを好んで黒色のシート体22に集まることが確認でき、シート体22の有効性を証明できる結果が得られた。
【0057】
このように、本発明に係る虫類捕獲装置は、コバエなどの食品に集りやすい不快害虫を主たる捕獲対象としており、吸引口の近傍に飛来した不快害虫が一旦止まれるネットを設けることで、特にショウジョウバエのような走光性はあるが飛翔能力の高くない虫類の捕獲効率を効果的に向上させている。
【0058】
なお、本発明は、上記した実施形態になんら限定されるものではなく、所要の部位を適宜に変容した形態も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係る虫類捕獲装置の斜視図である。
【図2】本実施形態に係る虫類捕獲装置の断面説明図である。
【符号の説明】
【0060】
A 虫類捕獲装置
1 吸引捕獲部
2 支持柱
3 基台
4 吸気ファン
5 補虫ネット
6 吸引口
7 ネット
8 第1のライト
9 第2のライト
16 捕獲部
17 吸引配管
18 中央閉塞体
22 シート体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ファンを回転させて生じさせた気流によって虫類を吸引するとともに、前記気流の流路の中途部に設けた捕獲用のネットで前記虫類を捕獲する虫類捕獲装置において、
前記吸引ファン及び前記捕獲用のネットを収容した吸引捕獲部には、前記虫類を吸引する吸引口を設けるとともに、この吸引口内に前記虫類を誘引する光を照射する第1のライトを設け、
前記吸引捕獲部を所定の高さに配置するとともに、前記吸引口の下方側にシート状のネットを垂れ下がり状に配置したことを特徴とする虫類捕獲装置。
【請求項2】
前記シート状のネットは暗色のネットとしたことを特徴とする請求項1記載の虫類捕獲装置。
【請求項3】
前記シート状のネットには、このネットの目を塞ぐシート体であって、暗色としたシート体を装着したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の虫類捕獲装置。
【請求項4】
前記シート体に誘引剤を塗布若しくは含浸させたこと、または前記シート体に誘引剤を塗布若しくは含浸させた誘引体を据付けたことを特徴とする請求項3記載の虫類捕獲装置。
【請求項5】
前記シート状のネット越しに光を照射する第2のライトを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の虫類捕獲装置。
【請求項6】
前記第2のライトは前記吸引捕獲部を支持する支持柱に装着するとともに、この支持柱の表面を光沢材で構成したことを特徴とする請求項4記載の虫類捕獲装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−118865(P2008−118865A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303298(P2006−303298)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(501162513)株式会社サンエイム (4)
【出願人】(591089431)株式会社サニックス (29)
【Fターム(参考)】