説明

蛇腹状ゴムブーツ及び操舵装置の製造方法

【課題】操舵装置を従来よりも効率よく製造することが可能な蛇腹状ゴムブーツ及び操舵装置の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の蛇腹状ゴムブーツ30によれば、ハンドルシャフト74と入力側連結軸78とを連結する連結工程において、片手で蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮しながら連結工程の作業を行ったり、連結作業を行う者と蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮状態に保持する者との二人がかりで連結工程の作業を行う必要がないから、操舵装置10を従来よりも効率よく製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹状ゴムブーツ及び蛇腹状ゴムブーツを備えた操舵装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の操舵装置は、ハンドルから延びたハンドルシャフトの下端部と、転舵装置から延びたステアリングシャフトの上端部とを連結しており、その連結部分の周りを蛇腹状ゴムブーツで覆っていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−141682号公報(段落[0008]〜[0009]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した構造の操舵装置において、ハンドルシャフトとステアリングシャフトとを連結する場合には、蛇腹状ゴムブーツを圧縮して、連結部分を側方に露出させておく必要がある。ところが、従来の操舵装置の製造方法では、片手で蛇腹状ゴムブーツを圧縮しながら連結作業を行うか、連結作業を行う者とは別に蛇腹状ゴムブーツを圧縮状態に押さえている者が必要であったため、製造効率が悪かった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、操舵装置を従来よりも効率よく製造することが可能な蛇腹状ゴムブーツ及び操舵装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る操舵装置の製造方法は、ハンドルに自在継手を介してステアリングシャフトを連結すると共に、そのステアリングシャフトの途中に、回転の伝達比を変更可能とするアクチュエータを設け、そのアクチュエータを覆うカバーの上端部に、蛇腹状ゴムブーツを装着して自在継手の回りを覆った操舵装置の製造方法であって、蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持する圧縮保持手段を設けておき、圧縮保持手段により蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持して、その蛇腹状ゴムブーツの下端部をアクチュエータを覆うカバーの上端部に装着するブーツ下端部取付工程と、ハンドルとステアリングシャフトとを連結する連結工程と、圧縮保持手段による保持を解除して、蛇腹状ゴムブーツの上端部を車両本体に装着するブーツ上端部取付工程とを行うところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明に係る蛇腹状ゴムブーツは、ステアリングシャフトの途中に備えたアクチュエータを覆うカバーの上端部に装着され、ステアリングシャフトとハンドルとの間を連結する自在継手の回りを覆った蛇腹状ゴムブーツであって、蛇腹状ゴムブーツがアクチュエータを覆うカバーの上端部に装着された状態で、自在継手の少なくとも一部が側方に露出するように、蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持する圧縮保持手段を設けたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の蛇腹状ゴムブーツにおいて、圧縮保持手段は、蛇腹状ゴムブーツの軸方向の一端部に一体形成された複数の可撓係合片と、各可撓係合片の先端部に形成された係合孔と、蛇腹状ゴムブーツの軸方向の他端部に一体形成され、蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態で、各可撓係合片の係合孔に係合する係合突部とからなるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
[請求項1の発明]
操舵装置を製造する際には、圧縮保持手段により蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持しておき、その下端部をアクチュエータを覆うカバーの上端部に装着する。すると、ステアリングシャフトの上端部に連結された自在継手が、蛇腹状ゴムブーツを通ってその上端開口から露出する。この状態でハンドルを自在継手を介してステアリングシャフトに連結し、最後に圧縮保持手段による保持を解除して、蛇腹状ゴムブーツの上端部を車両本体に装着すると、自在継手の回りが蛇腹状ゴムブーツによって覆われる。このように、本発明によれば、片手で蛇腹状ゴムブーツを圧縮しながら連結作業を行ったり、二人がかりで連結作業を行う必要がないから、操舵装置を従来よりも効率よく製造することができる。
【0009】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、圧縮保持手段により、蛇腹状ゴムブーツがアクチュエータを覆うカバーの上端部に装着された状態で自在継手の少なくとも一部が側方に露出するように蛇腹状ゴムブーツを圧縮しておくことができるので、従来のように、片手で蛇腹状ゴムブーツを圧縮しながら連結作業を行ったり、二人がかりで連結作業を行う必要がない。これにより操舵装置を従来よりも効率よく製造することができる。
【0010】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持するには、蛇腹状ゴムブーツを押し縮めておいてから、蛇腹状ゴムブーツの軸方向の一端部に一体形成された可撓係合片の係合孔に、蛇腹状ゴムブーツの軸方向の他端部に一体形成された係合突起を係合させればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る操舵装置10を備えた車両14が示されている。この車両14に備えた1対の操舵輪(例えば、前輪)11,11の間には、転舵装置69が設けられている。転舵装置69は、筒状のラックケース12C内に挿通したラック12にピニオン15を噛合して備えている。そして、ラックケース12Cが車両14のボディ(本発明の「車両本体」に相当する)に固定され、ラック12の両端部がタイロッド13,13を介して各操舵輪11,11に連結されている。
【0012】
ピニオン15は、ラックケース12Cの中間部に形成された軸受部(図示せず)内に回転可能に軸支され、そのピニオン15の上端部には、連結シャフト70が連結されて上方に延びている。連結シャフト70は、中間部にユニバーサルジョイント部71を備え、ユニバーサルジョイント部71より下側のベース軸73Aがピニオン15の同軸上に延び、上側の連結スリーブ73Bがそのベース軸73Aに対して傾動可能となっている。なお、連結スリーブ73Bは、円筒状をなし、その内面にはスプラインが形成されている。また、連結スリーブ73Bの先端部には、連結スリーブ73Bを縮径させるためのボルト72Aが備えられている。そして、この連結スリーブ73Bに、アクチュエータ18から延びた出力側連結軸16がスプライン結合している。
【0013】
アクチュエータ18は、図2に詳細に示されており、差動式の減速機22と、その減速機22と同軸上に配置されて減速機22を駆動するサーボモータ23とから構成されている。
【0014】
減速機22は、一端有底の円筒状のボディ52と、そのボディ52の内側に収容された一端有底の円筒状の出力回転部51と、さらに、その出力回転部51の内側に収容された入力回転部54とを備えてなる。ボディ52の内周面と、出力回転部51の外周面とには、互いに歯数が異なる差動歯51A,52Aが形成されている。入力回転部54は、偏心円板の外側にベアリングを嵌合してなり、その偏心円板にはサーボモータ23におけるローター60の一端が固定されている。そして、入力回転部54は、出力回転部51の内周面の一部を押圧しており、ローター60が回転することでその押圧部分が変化する。
【0015】
出力回転部51のうち入力回転部54の周りを覆う周壁は、可撓性を有して局所的にボディ52の内周面に押し付け可能となっている。これにより、入力回転部54の回転に伴って出力回転部51とボディ52との差動歯51A,52Aの噛合部分が変化し、入力回転部54が一回転する毎に、差動歯51A,52Aの歯数の差分だけ出力回転部51が回転する。
【0016】
減速機22の出力回転部51には出力側連結軸16が固定されている。出力側連結軸16の下端部にはスプライン16Aが形成され、前記したように転舵装置69から延びた連結シャフト70にスプライン結合している。これにより、出力回転部51の回転に伴って左右の操舵輪11,11の切れ角が連動して変更される。
【0017】
減速機22のボディ52には、サーボモータ23のステータ61が一体化されている。さらに、ステータ61にはケーシング77が固定されており、そのケーシング77のうち減速機22と反対側には、入力側連結軸78が固定されている。図1に示すように入力側連結軸78は、中間部にユニバーサルジョイント部79(本発明の「自在継手」に相当する)を備え、ユニバーサルジョイント部79より下側のベース部76と上側のスプライン軸部76Bとからなる。ユニバーサルジョイント部79を備えたことにより、ベース部76とスプライン軸部76Bとの間で屈曲した状態を保持しつつ、それらベース部76とスプライン軸部76Bとが一体回転することができる。そして、この入力側連結軸78にハンドルシャフト74が結合されている。
【0018】
ハンドルシャフト74は、図3に示すように車両14のボディに固定されたステアリングコラム(図示せず)のコラムチューブ75を貫通している。コラムチューブ75は両端開放の筒状をなす。また、図5に示すように、コラムチューブ75の下端外周面には、環状突部74Eが突出形成され、その環状突部74Eよりも上側には側方に向かって張り出した鍔部74Fが形成されている。
【0019】
ハンドルシャフト74は、ハンドル17(図1参照)から下方(アクチュエータ18)に向かって延びておりコラムチューブ75の下端開口から突出している。ハンドルシャフト74の下端部には連結スリーブ74Cが備えられている。連結スリーブ74Cには円筒空間が備えられ、その内面にはスプラインが形成されている。そして、この連結スリーブ74Cの内側に、入力側連結軸78のスプライン軸部76Bが挿入されてスプライン結合される。これにより、サーボモータ23のステータ61及び減速機22のボディ52とがハンドル17と共に回転する。ここで、連結スリーブ74Cには側方に開口したボルト挿入孔74Dが形成されている。スプライン軸部76Bがスプライン結合した状態で、このボルト挿入孔74Dからボルト72Bを挿入して締め付けることで、ボルト72Bの先端部がスプライン軸部76Bの周面に突き当たって連結スリーブ74Cからのスプライン軸部76Bの抜け止めが図られている。なお、上述した入力側連結軸78、出力側連結軸16及び連結シャフト70により、本発明の「ステアリングシャフト」が構成され、「ステアリングシャフト」の途中にアクチュエータ18が設けられている。
【0020】
図3に示すように、アクチュエータ18の外側には、アクチュエータ18を収容しかつ車両14のボディに備えたダッシュボード100に固定するためのアクチュエータカバー19が嵌合装着されている。アクチュエータカバー19は、ダッシュボード100に形成された貫通孔100Aの開口縁にあてがわれる平板部80から筒部81を起立した構造になっている。そして、この筒部81の内部にアクチュエータ18が嵌合されている。筒部81(アクチュエータカバー19)のうち上端部の外面には、その全周に亘って環状溝81Bを形成することで相対的に凸部となった環状リップ81Aが形成されている。一方、筒部81(アクチュエータカバー19)の下端開口部は、蛇腹カバー83によって塞がれており、この蛇腹カバー83の中心部を出力側連結軸16が貫通している。なお、蛇腹カバー83は、下端開口部の内周面と出力側連結軸16の外周面とに密着するように装着されており、防水効果及び防塵効果を奏する。
【0021】
さて、図3に示すように、アクチュエータ18とハンドルシャフト74とを連結した入力側連結軸78の周りは、蛇腹状ゴムブーツ30によって覆われている。蛇腹状ゴムブーツ30は図4に詳細に示されており、同図(A)に示すように、僅かに傾いた蛇腹筒構造をなしている。蛇腹状ゴムブーツ30の軸方向の両端部には、上端嵌合筒31及び下端嵌合筒32が備えられ、それらの間に蛇腹部33が備えられている。
【0022】
蛇腹部33は、軸方向の途中に複数の屈曲部を備えている。また、上端嵌合筒31は、扁平な円筒構造をなしている。上端嵌合筒31の内周面は、上方に向かうに従って拡径したテーパー形状となっており、その途中部分に環状溝31Aが形成されている。上端嵌合筒31は、車両14のボディに固定されたコラムチューブ75の下端外周面に嵌合している。具体的には、上端嵌合筒31と蛇腹部33との境界部分に形成された段差部31Bがコラムチューブ75の環状突部74Eと係合しかつ、環状溝31Aにコラムチューブ75の鍔部74Fが凹凸係合している。なお、上端嵌合筒31の内周面をテーパー形状としたことで、上端嵌合筒31にコラムチューブ75の下端部を挿入し易くなっている。
【0023】
一方、下端嵌合筒32は、アクチュエータカバー19の上端形状に対応して扁平な異形筒構造をなしている(図4(B)を参照)。下端嵌合筒32の内面には環状溝32Aが形成されている。そして、環状溝32Aとアクチュエータカバー19の上端外周面に形成された環状リップ81Aとが凹凸嵌合し、さらにこの状態で、下端嵌合筒32の外側から締め付けリング(図示せず)が装着されて、下端嵌合筒32がアクチュエータカバー19の上端部に嵌合固定されている。
【0024】
ところで、蛇腹状ゴムブーツ30のうち、上端嵌合筒31と蛇腹部33との境界部分には1対の係合ストラップ34,34(本発明の「可撓係合片」に相当する)が設けられている。これら係合ストラップ34,34は、例えば、ゴム製であって蛇腹状ゴムブーツ30に一体形成されている。係合ストラップ34,34は細長い帯板状をなしており、上端嵌合筒31の径方向で互いに相反する方向に延びている(図4の(B)を参照)。係合ストラップ34の先端部には、円形の係合孔34Cが貫通形成され、この係合孔34Cに次述する係合ピン35,36(本発明の「係合突部」に相当する)が係合可能となっている。なお、本実施形態では、2つの係合ストラップ34,34の長さを異ならせてある。即ち、蛇腹状ゴムブーツ30自体の傾きにより、下端嵌合筒32に近い部分(図4(A)における右側)から延設された係合ストラップ34が、下端嵌合筒32から離れた部分(図4(A)における左側)から延設された係合ストラップ34よりも短くなっている。以下、これら2つの係合ストラップ34,34を区別する場合には、長い方を「第1の係合ストラップ34A」といい、短い方を「第2の係合ストラップ34B」という。
【0025】
蛇腹状ゴムブーツ30のうち、下端嵌合筒32の外面には、前記第1の係合ストラップ34Aと係合する第1の係合ピン35と、前記第2の係合ストラップ34Bと係合する第2の係合ピン36とが設けられている。これら第1及び第2の係合ピン35,36は、例えばゴム製であって、蛇腹状ゴムブーツ30に一体形成されている。第1及び第2の係合ピン35,36は、下端嵌合筒32の外周面の互いに離れた位置に配置されかつ、第1及び第2の係合ストラップ34A,34Bに対して周方向にずらして配置されている(図4(B)を参照)。
【0026】
第1の係合ピン35は、下端嵌合筒32の周面に形成された側方突部37の段差面から起立し、蛇腹状ゴムブーツ30の周方向を向いている。第1の係合ピン35は、基端側から順に、第1中径部35A、円錐状大径部35B、第2中径部35C及び小径部35Dを備えてなる。第1中径部35Aと第2中径部35Cは同一径となっている。円錐状大径部35Bは、第1中径部35Aから段付き状に拡径すると共に第2中径部35Cに向かってテーパー状に縮径している。また、小径部35Dは第2中径部35Cから段付き状に縮径している。そして、第1の係合ピン35のうち、第1中径部35Aと第2中径部35Cが、第1の係合ストラップ34Aの係合孔34Cとほぼ同一径となっている。この係合孔34Cが円錐状大径部35Bを通り越して第1中径部35Aに係合すると、係合孔34Cの周縁部が円錐状大径部35Bの下面に係止され、第1の係合ストラップ34Aと第1の係合ピン35とが係合状態に保持される。
【0027】
第2の係合ピン36は、下端嵌合筒32の周面から側方に向かって起立している。第2の係合ピン36は、第1の係合ピン35と同一形状である。即ち、基端側から順に、第1中径部36A、円錐状大径部36B、第2中径部36C及び小径部36Dを備えてなる。そして、第2の係合ストラップ34Bの係合孔34Cが円錐状大径部36Bを通り越して第1中径部36Aに係合すると、係合孔34Cの周縁部が円錐状大径部36Bの下面に係止され、第2の係合ストラップ34Bと第2の係合ピン36とが係合状態に保持される。以上が、本発明に係る操舵装置10の構成の説明である。
【0028】
このように構成された操舵装置10を搭載した車両では、図1に示したECU65(ECUは、Electronic Control Unitの略である。)が運転状況に応じてアクチュエータ18を駆動制御し、入力側連結軸78と出力側連結軸16との間で伝達される回転の伝達比を変更する。具体的には、ECU65に備えたROM63(図1参照)には、車速と操舵伝達比とを対応させたマップ(図示せず)が記憶されている。そして、ECU65は、車速センサ62(図1参照)の検出結果とこのマップに基づいて操舵伝達比を決定する。そして、操舵角センサ66にて検出したハンドル17の操舵角と操舵伝達比とから出力側連結軸16の目標の回転角を演算し、出力側連結軸16の実際の回転角を目標の回転角に一致させるためにサーボモータ23に駆動電流を流し、ローター60(図2を参照)を回転させる。
【0029】
なお、マップには、車速が大きくなるに従って操舵伝達比が小さくなるように設定されている。これにより、低速域では、僅かなハンドル操作で操舵輪11,11を切ることができるようになり、旋回性が向上する。それとは逆に高速域では、所謂、急ハンドルが規制され、安定した走行が可能になる。
【0030】
さて、上記のように構成された操舵装置10は以下のようにして製造される。
蛇腹状ゴムブーツ30を取り付ける前に、アクチュエータ18をアクチュエータカバー19内に嵌合装着して車両14のボディに固定しておく。
【0031】
次いで、蛇腹状ゴムブーツ30を軸方向で圧縮してから、第1及び第2の係合ストラップ34A,34Bの係合孔34C,34Cに第1及び第2の係合ピン35,36を挿入して係合させる。これにより、蛇腹状ゴムブーツ30は圧縮状態に保持される。
【0032】
次に、圧縮状態の蛇腹状ゴムブーツ30を、アクチュエータカバー19の上端部に嵌合固定する。即ち、図5に示すように、アクチュエータ18の上端部に備えた入力側連結軸78を蛇腹状ゴムブーツ30に通して、蛇腹状ゴムブーツ30の下端嵌合筒32をアクチュエータカバー19の上端部に嵌合し、図示しない締め付けリングによって外側から締め付ける。このとき、蛇腹状ゴムブーツ30の上端嵌合筒31を通ってスプライン軸部76Bが側方に露出する。なお、蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮状態に保持してアクチュエータカバー19に嵌合固定する工程が、本発明の「ブーツ下端部取付工程」に相当する。
【0033】
次に、ハンドルシャフト74とアクチュエータ18の上端部に備えた入力側連結軸78とを連結する。即ち、ハンドルシャフト74をコラムチューブ75と共に入力側連結軸78に近づけて、連結スリーブ74Cとスプライン軸部76Bとをスプライン結合する。さらに、連結スリーブ74Cの側方からボルト挿入孔74Dにボルト72Bを挿入して締め付ける。これでハンドルシャフト74と入力側連結軸78とが一体回転可能でかつ離脱不能に連結される。この工程が本発明の「連結工程」に相当する。そしてハンドルシャフト74と入力側連結軸78とを連結したら、コラムチューブ75を車両14のボディに固定する。
【0034】
次に、蛇腹状ゴムブーツ30をコラムチューブ75の下端部に嵌合固定する。具体的には、係合ストラップ34,34の先端部を持って係合ピン35,36の先端側へ引っ張り係合孔34C,34Cから係合ピン35,36を抜いて、係合ストラップ34,34と係合ピン35,36との係合を解除する。すると、蛇腹状ゴムブーツ30の圧縮状態が解除され、その弾性力により元の形状(図4(A)を参照)に復元する。そして、蛇腹状ゴムブーツ30の上端嵌合筒31内にコラムチューブ75の下端部を挿入して嵌合固定する。つまり、蛇腹状ゴムブーツ30の上端部をコラムチューブ75を介して車両14のボディに固定する。これにより、入力側連結軸78、より詳細にはユニバーサルジョイント部79の周りが蛇腹状ゴムブーツ30によって覆われる(図3の状態)。この工程が本発明の「ブーツ上端部取付工程」に相当する。なお、蛇腹状ゴムブーツ30をコラムチューブ75に嵌合固定したら、係合ストラップ34,34をその基端部で切断して蛇腹状ゴムブーツ30から取り除いてもよい。
【0035】
最後に、アクチュエータ18から導出された電線64を、ECU65(図1を参照)に接続する。以上により操舵装置10が完成する。
【0036】
このように、本実施形態によれば、ハンドルシャフト74と入力側連結軸78とを連結する連結工程において、片手で蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮しながら連結工程の作業を行ったり、連結作業を行う者と蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮状態に保持する者との二人がかりで連結工程の作業を行う必要がないから、操舵装置10を従来よりも効率よく製造することができる。
【0037】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0038】
(1)上記一実施形態では、蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮状態に保持しておいて、その蛇腹状ゴムブーツ30の下端嵌合筒32を、アクチュエータカバー19の上端部に装着していたが、蛇腹状ゴムブーツ30の下端嵌合筒32をアクチュエータカバー19の上端部に装着しておいてから、蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮状態に保持させるようにしてもよい。
【0039】
(2)また、本発明の技術的範囲には含まれないが、蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮状態に保持しておいて、その蛇腹状ゴムブーツ30の上端嵌合筒31をコラムチューブ75の下端部に装着してもよいし、蛇腹状ゴムブーツ30の上端嵌合筒31をコラムチューブ75の下端部に装着しておいてから、蛇腹状ゴムブーツ30を圧縮状態に保持させるようにしてもよい。
【0040】
(3)図6に示すように、第1及び第2の係合ピン35,36を下端嵌合筒32の周面から相反する方向に突出させた構造としてもよい。
【0041】
(4)上記実施形態では、係合ストラップ34,34及び係合ピン35,36を蛇腹状ゴムブーツ30に一体形成していたが、これらを別体にしてもよい。また、係合ストラップ34,34はゴム製に限るものではなく、可撓性を有する材料であれば樹脂や金属で構成してもよい。また係合ピン35,36もゴム製に限るものではなく、樹脂や金属で構成してもよい。
【0042】
(5)上記実施形態では、係合ストラップ34,34と係合ピン35,36との係合を解除することで、蛇腹状ゴムブーツ30の圧縮状態を解除していたが、例えば、係合ピン35,36と係合した係合ストラップ34,34を途中で切断することで、圧縮状態を解除するようにしてもよい。
【0043】
(6)係合ストラップ34,34を下端嵌合筒32側に配置し、係合ピン35,36を上端嵌合筒31側に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る操舵装置の概念図
【図2】アクチュエータの部分断面図
【図3】入力側連結軸の周りを覆った状態の蛇腹状ゴムブーツの側断面図
【図4】(A)蛇腹状ゴムブーツの半断面図、(B)蛇腹状ゴムブーツの底面図
【図5】圧縮状態に保持された蛇腹状ゴムブーツの側断面図
【図6】他の実施形態(3)に係る蛇腹状ゴムブーツの半断面図
【符号の説明】
【0045】
17 ハンドル
18 アクチュエータ
19 アクチュエータカバー
30 蛇腹状ゴムブーツ
34 係合ストラップ(可撓係合片)
34C 係合孔
35,36 係合ピン(係合突部)
75 コラムチューブ
79 ユニバーサルジョイント部(自在継手)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルに自在継手を介してステアリングシャフトを連結すると共に、そのステアリングシャフトの途中に、回転の伝達比を変更可能とするアクチュエータを設け、そのアクチュエータを覆うカバーの上端部に、蛇腹状ゴムブーツを装着して前記自在継手の回りを覆った操舵装置の製造方法であって、
前記蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持する圧縮保持手段を設けておき、
前記圧縮保持手段により前記蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持して、その蛇腹状ゴムブーツの下端部を前記アクチュエータを覆うカバーの上端部に装着するブーツ下端部取付工程と、
前記ハンドルと前記ステアリングシャフトとを連結する連結工程と、
前記圧縮保持手段による保持を解除して、前記蛇腹状ゴムブーツの上端部を車両本体に装着するブーツ上端部取付工程とを行うことを特徴とする操舵装置の製造方法。
【請求項2】
ステアリングシャフトの途中に備えたアクチュエータを覆うカバーの上端部に装着され、前記ステアリングシャフトとハンドルとの間を連結する自在継手の回りを覆った蛇腹状ゴムブーツであって、
前記蛇腹状ゴムブーツが前記アクチュエータを覆うカバーの上端部に装着された状態で、前記自在継手の少なくとも一部が側方に露出するように、前記蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態に保持する圧縮保持手段を設けたことを特徴とする蛇腹状ゴムブーツ。
【請求項3】
前記圧縮保持手段は、前記蛇腹状ゴムブーツの軸方向の一端部に一体形成された複数の可撓係合片と、
前記各可撓係合片の先端部に形成された係合孔と、
前記蛇腹状ゴムブーツの軸方向の他端部に一体形成され、前記蛇腹状ゴムブーツを圧縮した状態で、前記各可撓係合片の前記係合孔に係合する係合突部とからなることを特徴とする請求項2に記載の蛇腹状ゴムブーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−137346(P2007−137346A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336596(P2005−336596)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】