説明

蛋白質ライブラリ

【課題】 スリーフィンガー様スキャフォールドを利用して所望の標的に結合しうる新規な蛋白質を同定するための蛋白質ライブラリを提供すること。
【解決手段】 スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、当該ループ中の特定の領域のアミノ酸残基がランダム化されていることを特徴とする蛋白質ライブラリが開示される。また、この蛋白質ライブラリを標的と接触させ、標的と結合した蛋白質を選択し、そのアミノ酸配列を決定することにより、標的と結合しうる新規蛋白質を同定する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質ライブラリおよびこれを用いて新規な蛋白質を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α型神経毒(α-neurotoxin)は、elapidae科をはじめとするヘビ毒に多く見いだされる蛋白質群であり、そのうちのいくつかは共通するスリーフィンガー様スキャフォールドを含む。このタイプの神経毒は、通常は60−70アミノ酸(MW:7−8kDa)を含む小さい蛋白質であり、4−5個のジスルフィド結合、3−5個のアンチパラレルβシート、およびスリーフィンガー構造を形成する3つの突起ループを含む(非特許文献1)。スリーフィンガー様スキャフォールドの分子は、温度に対して高い安定性を有し、60−70℃に耐えられる(非特許文献2)。ジスルフィド・フレームワークの形は、βシートを形成するアミノ酸残基の種類が異なっていても、これらの分子の間で高度に保存されている。天然のレセプターへの結合事象に関与するアミノ酸もまた非常に高い頻度で保存されている(非特許文献3、4)。神経毒はそれぞれのレセプターに対して非常に高い特異性を有しており、この特性はループの先端の残基により付与される。天然のレセプターとの相互作用にはループI、ループIIおよびテール領域が関与することが知られており、例えば、ヘビ神経毒の1つであるα-cobratoxin (Naja kaouthia 由来)では、I5−D8、K23、W25、D27、A28、F29、R33、R36、K47およびF65などの残基に点突然変異を導入することにより標的との結合特性が変化することが報告されており、これらの残基が相互作用に関与していることが示唆されている。一方、結晶学および変異実験を用いた最近の研究によれば、ループIIIは標的との結合には関与していないようである(非特許文献3、5)。
【0003】
蛋白質スキャフォールドを利用して蛋白質のコンビナトリアルライブラリを作製し、抗体に代わる新規な蛋白質を発見する試みが行われている(非特許文献6)。この方法においては、蛋白質のフレームワーク領域の構造を維持しながら、相互作用に関与する領域(例えばループ領域)のアミノ酸配列がランダムであるように設計された蛋白質ライブラリを作製し、所望の標的と接触させて、その標的に結合しうる蛋白質を選択し、その構造を決定することにより、所望の標的に結合しうる新規な蛋白質を同定することができる。
【0004】
スリーフィンガー様スキャフォールドは、比較的サイズが小さく、安定性が高いため、このような蛋白質ライブラリを作製するのに適していると考えられる。これまでに複数の研究グループが、ループIまたはループII、あるいはこれらの両方に部位特異的な突然変異を導入することにより結合特性に関わるアミノ酸残基を解析する試みは行われてきた。しかしながら、スリーフィンガーの親和性向上や認識特異性を変える試みはなされてきていない。
【0005】
【非特許文献1】Endo T、Tamiya N. (1987)、Pharmacol Ther.、34、403-451
【非特許文献2】Sivaraman T、Kumar TK、Hung KW、Yu C. Comparison of the structural stability of two homologous toxinsisolated from the Taiwan cobra (Naja naja atra) venom. Biochemistry. 2000 Aug 1;39(30):8705-10.
【非特許文献3】Antil、S.、Servent、D. and Menez、A. (1999). J. Biol. Chem.、274、34851-34858
【非特許文献4】Teixeira-Clerc F、Menez A、Kessler P. (2002) J. Biol. Chem.、277、25741-25747
【非特許文献5】Bourne Y、Talley TT、Hansen SB、Taylor P、Marchot P. (2005)、EMBO J.、24、1512-1522
【非特許文献6】Nygren、P-A and Skerra、A. (2004)、J. Immunol. Methods.、290、3-28
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スリーフィンガー様スキャフォールドを利用して所望の標的に結合しうる新規な蛋白質を同定するための蛋白質ライブラリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、スリーフィンガー様スキャフォールドの親和性や認識特異性を進化工学的手段であるIn vitro virus法(Nemoto N, et al., FEBS lett, 414,405-408, 1997)、またはcDNA display法(Biyani M, et al. Nucleic Acids Research, 34, e140, 2006)と組み合わせることで変化させる試みを行った。その結果、本来アセチルコリンレセプターに結合するスリーフィンガーのループ先端部分をランダムにしたライブラリからIL-6Rに特異的に結合するスリーフィンガーの取得に成功した。
【0008】
しかしながら、スリーフィンガーは4つのS-S結合を持つことから、大腸菌等で発現した後、リフォールディングした際に機能を持つ形で回収することが難しいという欠点を有する。また、ペプチド化学合成を行うには60残基以上の合成は難度が高く、4つのS-S架橋を有するために高度な技術とコストがかかるという問題がある。
【0009】
本発明者らは、さらに鋭意研究を行った結果、スリーフィンガーのうちの1本の指の部分のみでスリーフィンガーそのものと同等の効果を示すことを初めて見出した。
【0010】
本発明の一つの態様としては、生体反応を制御するレセプターとリガンドの結合によるシグナルの伝達を阻害または新たなリガンド創製により、低分子化と薬剤としての高機能化をはかる目的で、上記の方法で取得した親和性を有する3−Fペプチドをシーケンスした後、スリーフィンガーのN末端側の1番目のループをコードする部分のみについて再度ペプチド合成を行う。
【0011】
本発明は、スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有するポリペプチドを利用して所望の標的に結合しうる新規な蛋白質を同定するための蛋白質ライブラリ、および該ライブラリを用いた新規蛋白質の同定方法に関する。
【0012】
本発明者らは、スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のアミノ酸配列の一部を改変して、天然のパートナーとは異なる標的と結合する蛋白質を作製するためには、βシートを形成すると予測される部分の一部のアミノ酸配列も含むループI(N末端側1番目のループ)領域中のアミノ酸配列を改変することが効率的であることを見いだした。
【0013】
本発明は、スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、のアミノ酸残基がランダム化されていることを特徴とする蛋白質ライブラリを提供する。
【0014】
スリーフィンガー様スキャフォールドとは、α型神経毒に見いだされる、4個(場合により5個)のジスルフィド結合、3〜5個のアンチパラレルβシート、およびスリーフィンガー構造を形成する3つの突起ループを含む構造をいう。図20に、スリーフィンガー様スキャフォールドを有する代表的な蛋白質のアミノ酸配列のアライメントを示す。図の左端の数字はアミノ酸の長さである。このアライメントに示されるそれぞれの蛋白質の名称と起源生物を以下の表に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
本明細書においては、スリーフィンガー様スキャフォールドのアミノ酸配列において、ジスルフィド結合を形成する保存システインを、N末端側から順番にそれぞれC1〜C8と称する。また、C1とC2の間、C3とC4の間、およびC5とC6の間の領域を、それぞれループI、ループII、およびループIIIと称する。例えば、図20の第1列に示される蛋白質CTx3のアミノ酸配列においては、C1−CysはN末端側から3番目のシステインを、C2−CysはN末端側から17番目のシステインを示し、この間の領域、すなわちN末端側から4番目−16番目のアミノ酸の領域はループIと称される。
【0017】
本発明においては、ループIの特定の領域をランダム化することにより、スリーフィンガー様スキャフォールドのフレームワークを保ったまま、標的との結合特性の異なる種々の蛋白質からなるライブラリが得られることが見いだされた。すなわち、C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、をランダム化することができる。
【0018】
ここで、C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域とは、例えば、図20の第1列に示される蛋白質CTx3のアミノ酸配列において、5番目のトレオニンから10番目のプロリンまでの領域をいう。
【0019】
好ましくは、本発明の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質は、それぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在している。特に好ましくは、本発明の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質は、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している。
【0020】
本明細書において、「対応づけられた形で存在する」とは、蛋白質とそれをコードするポリヌクレオチドとが、これらを1対1で対応づけることが可能な様式で存在することを意味する。このような対応付け技術はディスプレイ技術とも称され、多くの技術が当該技術分野において知られている。例えば、ライブラリの各メンバー蛋白質は、ピューロマイシン等の化学物質を介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合していてもよい(インビトロウイルス法)。このような無細胞翻訳系を利用した対応付け技術には、リボソームディスプレイ、STABLE(非共有結合DNAディスプレイ)、マイクロビーズドロップレット法、共有結合DNAディスプレイなどがある。あるいは、ファージディスプレイ、イーストディスプレイ、バクテリアディスプレイ等のディスプレイ技術におけるように、個々のファージや細胞中に、ライブラリの各メンバー蛋白質とそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドの対が含まれていてもよい。
【0021】
特に好ましくは、本発明の蛋白質ライブラリは、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む。
【0022】
別の観点においては、本発明は、上述の本発明の蛋白質ライブラリをコードするポリヌクレオチドライブラリを提供する。
【0023】
別の観点においては、本発明は、以下の各工程を含む、標的と結合しうる蛋白質を同定する方法を提供する:
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し、
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ、
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し、そして
(d)前記選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する。
【0024】
好ましい態様においては、上述の工程(a)の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質は、それぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており、蛋白質のアミノ酸配列を決定する工程(d)は、その蛋白質に結合しているポリヌクレオチドの塩基配列を決定することにより行われる。
【0025】
また別の観点においては、本発明は、以下の各工程を含む、標的と結合しうる蛋白質を同定する方法を提供する:
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し、ここで前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており、
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ、
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し、
(d)前記選択された蛋白質をコードするポリヌクレオチドを増幅し、転写し、および翻訳することにより、第2の蛋白質ライブラリを製造し、ここで前記第2の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており、
(e)前記第2の蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ、
(f)前記標的と結合した蛋白質を選択し、
(g)必要により工程(d)−(f)を繰り返し、そして
(h)選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する。
【0026】
さらに別の観点においては、本発明は、以下の各工程を含む、標的と結合しうる蛋白質を同定する方法を提供する:
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し、ここで前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており、
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ、
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し、
(d)前記選択された蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を決定し、
(e)決定された塩基配列に基づいて、一部の配列が前記決定された塩基配列と同じであり残りの配列が前記決定された塩基配列と異なる塩基配列を有する複数のポリヌクレオチドの群を調製し、転写し、および翻訳することにより、第2の蛋白質ライブラリを製造し、ここで前記第2の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており、
(f)前記第2の蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ、
(g)前記標的と結合した蛋白質を選択し、
(h)必要により工程(d)−(g)を繰り返し、そして
(i)選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する。
【0027】
別の観点においては、本発明は、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する蛋白質を提供する。
【0028】
具体的には、本発明は以下を提供する。
〔1〕スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されていることを特徴とする蛋白質ライブラリ、
〔2〕前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、それぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在している、〔1〕記載の蛋白質ライブラリ、
〔3〕前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、〔2〕記載の蛋白質ライブラリ、
〔4〕前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む、〔1〕−〔3〕のいずれかに記載の蛋白質ライブラリ、
〔5〕〔1〕−〔4〕のいずれかに記載の蛋白質ライブラリをコードするポリヌクレオチドライブラリ、
〔6〕標的と結合しうる蛋白質を同定する方法であって、
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し;
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し;そして
(d)前記選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する、
の各工程を含む方法、
〔7〕工程(a)の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、それぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており、蛋白質のアミノ酸配列を決定する工程(d)が、その蛋白質に結合しているポリヌクレオチドの塩基配列を決定することにより行われる、〔6〕記載の方法、
〔8〕前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、〔7〕記載の方法、
〔9〕前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリである、〔6〕−〔8〕のいずれかに記載の方法、
〔10〕標的と結合しうる蛋白質を同定する方法であって、
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し、ここで前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(d)前記選択された蛋白質をコードするポリヌクレオチドを増幅し、転写し、および翻訳することにより、第2の蛋白質ライブラリを製造し、ここで前記第2の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(e)前記第2の蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(f)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(g)必要により工程(d)−(f)を繰り返し;そして
(h)選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する、
の各工程を含む方法、
〔11〕前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、〔10〕記載の方法、
〔12〕前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリである、〔10〕または〔11〕に記載の方法、
〔13〕標的と結合しうる蛋白質を同定する方法であって、
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し、ここで前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(d)前記選択された蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を決定し;
(e)決定された塩基配列に基づいて、一部の配列が前記決定された塩基配列と同じであり残りの配列が前記決定された塩基配列と異なる塩基配列を有する複数のポリヌクレオチドの群を調製し、転写し、および翻訳することにより、第2の蛋白質ライブラリを製造し、ここで前記第2の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(f)前記第2の蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(g)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(h)必要により工程(d)−(g)を繰り返し;そして
(i)選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する、
の各工程を含む方法、
〔14〕前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、〔13〕記載の方法、
〔15〕前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリである、〔13〕または〔14〕に記載の方法、
〔16〕以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する蛋白質。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の蛋白質ライブラリにおいては、スリーフィンガー様スキャフォールドのループIの領域の一部のアミノ酸配列がランダム化されており、このライブラリから、天然の標的、例えば、nAChRやAChBPとは異なる任意の標的と結合する蛋白質を選択することができる。本明細書において、蛋白質ライブラリとは、アミノ酸配列の異なる複数の蛋白質の集合を意味する。また、本明細書においては、蛋白質ライブラリのそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドの集合をポリヌクレオチドライブラリと称する。ランダム化とは、蛋白質の任意の所与の位置に2種類以上のアミノ酸残基が存在するような蛋白質の集合を用意することをいう。ランダム化された蛋白質においては、所与の位置に全ての可能なアミノ酸残基が同様の確率でまたは異なる確率で存在してもよく、所与の位置に選択された特定の2種類以上のアミノ酸残基が存在してもよい。例えば、配列中の特定の位置において20種類のアミノ酸残基が各5%の確率で存在することができるが、各アミノ酸残基の存在の確率は5%に限定されず、様々でありうる。また、後述する子孫ライブラリの場合に見られるように、前回のラウンドで得られた配列情報に基づいてアミノ酸配列の特定の位置のみをランダム化し、残りの位置の配列が固定されているようにライブラリを作製してもよい。標的とは、本発明の方法により選択される蛋白質が結合しうる任意の物質であり、例えば、蛋白質、糖類、糖蛋白質、核酸、低分子化合物などが含まれる。例としては、レセプター、細胞表面抗原、抗体、ホルモン、DNA、RNA、ウイルス表面抗原等が挙げられる。蛋白質と標的との結合は、共有結合、疎水性結合、静電的結合、水素結合、ファンデルワールス結合のいずれでもよい。
【0030】
本発明の蛋白質ライブラリの1つの好ましい態様は、Micrurus corallinusから単離された新規なヘビ神経毒であるCTx3(Kubo、T.、et al.、(2002)、Program No. 137.16.、32nd Annual Meeting of Society for Neuroscience、Washington、DC、3rd November、2002)に基づく蛋白質ライブラリである。CTx3は、61アミノ酸を含むスリーフィンガー型の毒素であり、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)やアセチルコリン結合蛋白質(AChBP)(神経毒の天然の標的)に結合してこれらを阻害することが見いだされている。図19Aに、CTx3と、既知のヘビ神経毒であるα−ブンガロトキシン(α−Bgtx)およびコブラトキシン(Cbtx)の一次アミノ酸配列のマルチプルアラインメントを示す。相同な配列はブロックで示されている。BIACORE J装置(Biacore)により測定して、CTx3とAChBPとの解離定数(Kd)は29.5±7.9nMである。
【0031】
本発明者らは、Lasergene Version6.0(DNASTAR、Inc.、Wisconsin、USA)のProteanソフトウエア部品を用いてCTx3の二構造を予測し、既知のα−ブンガロトキシン(α−Bgtx)の構造と比較して、ループおよびβシートの形成に関与する残基を推定した(図19B)。図19Cは、予測二次構造の情報から得られる、βシートおよびループの概略図を示す。数字はループを形成するターンの開始および停止位置を示し、1番目のアミノ酸を1として表す。
【0032】
本発明の蛋白質ライブラリは、図1に示すように、CTx3のT5−P10(6アミノ酸)(以下ループIと称する)がランダム化されていることを特徴とする。それ以外の位置のアミノ酸配列は固定されており、この部分がスリーフィンガー様スキャフォールドのフレームワークを決定する。すなわち、本発明のCTx3に基づく蛋白質ライブラリのアミノ酸配列は、例えば、以下のように表すことができる:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)。
【0033】
なお、本発明の蛋白質ライブラリのアミノ酸配列は、特に制限されないが、配列番号:1に記載のポリペプチドにおいてN末端およびC末端のそれぞれから最初のシステイン残基(例えば、配列番号1のN末端から3番目およびC末端から2番目のシステイン)を有するものが好ましく、例えば、これら以外のシステイン残基は(例えば、配列番号1のC末端から8番目のシステイン)は他のアミノ酸に改変されていてもよい。
【0034】
さらに当業者は、図20に示されるアライメントを参照することにより、スリーフィンガー様スキャフォールドを有する他の蛋白質についても、CTx3に基づく蛋白質ライブラリ同様にして蛋白質ライブラリを製造し、使用することができる。
【0035】
本発明の蛋白質ライブラリは、通常のペプチド合成の技術を用いて、手動または自動により製造することができる。あるいは、蛋白質ライブラリの各メンバー蛋白質をコードするポリヌクレオチドのライブラリを製造し、無細胞系で、または細菌や動物細胞中で蛋白質を発現させることにより製造してもよい。すなわち、本発明は、上述の本発明の蛋白質ライブラリをコードするポリヌクレオチドライブラリを提供する。このようなポリヌクレオチドライブラリの製造方法および発現(転写および翻訳)方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0036】
本発明の蛋白質ライブラリは、標的と結合しうる蛋白質を同定する目的のために、インビトロまたはインビボで種々の方法において、例えば、無細胞翻訳系やファージディスプレイ技術を用いる方法において用いることができる。
【0037】
別の観点においては、本発明は、本発明の蛋白質ライブラリを用いて標的と結合しうる蛋白質を同定する方法を提供する。この方法においては、まず本発明の蛋白質ライブラリを標的と接触させる。蛋白質ライブラリと標的との接触は、適当な緩衝液中に蛋白質ライブラリと標的とを加えて所定の時間インキュベートすることにより行うことができる。接触の条件は、標的との親和性の高い蛋白質が標的と結合したまま残り、親和性の低い蛋白質が結合しないように設定することができる。また、標的の特性、本発明にしたがって選択されるべき蛋白質の用途、予測される非特異的結合の程度などを考慮することができる。さらに、下記に詳細に説明するように、複数のラウンドの選択を行う場合にはラウンドごとに接触の条件を変更してもよい。次に、蛋白質ライブラリのうち、標的と結合していない蛋白質を除去し、標的と結合した蛋白質を選択する。この選択工程を容易にするためには、蛋白質ライブラリおよび標的のいずれかを固相に固定化しておくことが便利である。固相としては、ガラスまたはプラスチックのプレート、ビーズ、多孔性粒子、膜、磁気粒子などの、当該技術分野において知られる任意のものを用いることができる。このようにして選択された蛋白質を回収して、そのアミノ酸配列を決定することにより、標的と結合する蛋白質を同定することができる。
【0038】
あるいは、蛋白質ライブラリをマイクロアレイのフォーマットで、各コンパートメントにどのような配列の蛋白質が存在するかがわかるように製造して、標的と接触させてもよい。マイクロアレイに標識した標的を加えてインキュベートした後、未結合蛋白質を洗い流し、マイクロアレイ上に残存する標識を検出する。標的が結合しているコンパートメントの位置から、標的と結合しうる蛋白質の配列を知ることができる。
【0039】
本発明の1つの好ましい態様においては、本発明の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、それぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在するように、蛋白質ライブラリを製造する。このような蛋白質−ポリヌクレオチドライブラリを用いると、ポリヌクレオチドの塩基配列を決定することにより、標的と結合した蛋白質のアミノ酸配列の決定を容易に行うことができる。
【0040】
さらに、ポリヌクレオチドと対応づけられた形の蛋白質ライブラリを用いると、標的に結合した蛋白質の群を選択した後、この蛋白質をコードするポリヌクレオチドの群を回収して、これを増幅し、転写し、および翻訳することにより、第2の蛋白質ライブラリを製造することができる。この第2の蛋白質ライブラリは、個々の蛋白質は元の蛋白質ライブラリと同じランダム化領域およびフレームワーク領域を有するが、ライブラリ全体として標的との親和性が増加しており、ランダム化領域の配列の多様性が減少しているはずである。本明細書においてはこの多様性の減少を「濃縮」と称する。次に、この第2の蛋白質ライブラリを用いて、最初の工程と同様に標的と結合する蛋白質を選択し、この蛋白質をコードするポリヌクレオチドから第3の蛋白質ライブラリを製造する。このようにして、多数ラウンドの選択およびライブラリの生成を行うことにより、標的との親和性がより高い蛋白質の集合を得ることができる。
【0041】
さらに別の態様においては、上述のように第2の蛋白質ライブラリを製造する際に、分子進化の手法を適用することができる。すなわち、標的に結合するとして選択された蛋白質の配列を決定した後、その配列の一部をさらにランダム化したいわゆる子孫ライブラリを作製する。配列の一部のランダム化とは、例えば、選択された蛋白質のランダム化領域のアミノ酸配列に1個あるいは複数の変異を導入し、残りのアミノ酸配列は固定化したアミノ酸配列を設計する、などの方法により行うことができる。このようにして、一部のアミノ酸配列が前ラウンドで選択された蛋白質のアミノ酸配列と同じであり残りのアミノ酸が異なる複数の蛋白質の群からなる第2の蛋白質ライブラリを製造することができる。次に、この第2の蛋白質ライブラリを用いて標的と結合する蛋白質を選択し、以下同様にして、複数のラウンドの選択およびライブラリのさらなるランダム化を行うことができる。このようにして、標的に結合しうる蛋白質にさらに変異を導入して人工的な分子進化を促進することが可能となる。
【0042】
ポリヌクレオチドと結合した蛋白質から構成される蛋白質ライブラリの好適な1つの例は、ピューロマイシンを利用したインビトロウイルス(IVV)である。本明細書においてインビトロウイルス(IVV)とは、蛋白質とこれをコードするポリヌクレオチドがピューロマイシンを介して結合している複合体をいい、mRNA−ピューロマイシン−蛋白質、DNA/mRNA−ピューロマイシン−蛋白質、およびDNA−ピューロマイシン−蛋白質が含まれる。ピューロマイシンは、アミノアシル−tRNAの3’末端と類似する構造を有する蛋白質合成阻害剤であり、所定の条件下ではリボソーム上の伸張中の蛋白質の3’末端に特異的に結合する性質を有する。適当なリンカーを介してmRNAとピューロマイシンとを結合させておき、無細胞翻訳系でmRNAから蛋白質を合成すると、合成された蛋白質とこれをコードするmRNAとがピューロマイシンを介して結合している複合体が生ずる(Nemoto et al、FEBS Lett.、414、405-408、1997)。次に、この複合体のライブラリから所望の機能をもつ蛋白質を選択する。mRNAと蛋白質の複合体を用いて選択した後に逆転写によりDNAを合成してもよく、あるいはmRNAから逆転写によりDNAを合成して、DNA/mRNAハイブリッドと蛋白質の複合体の形とした後に、蛋白質を選択してもよい。所望の機能をもつ蛋白質を選択した後、DNAの配列を分析することにより、蛋白質を同定することができる。ピューロマイシンとしては、伸張中の蛋白質の3’末端に特異的に結合する機能を有する限り、任意のピューロマイシン誘導体を用いることができる。ピューロマイシンの安定性を高めるための修飾、複合体の検出のための標識、精製を容易にするためのアフィニティー部位、他の分子への結合を容易にするためのリンカー部位などを含むよう設計された種々の誘導体が市販されているか、または容易に製造することができる。
【0043】
以下に、実施例で作成し使用したCTx3に基づくライブラリを例として、本発明のライブラリーの作製方法を説明する。以下の方法を要約すれば、スリーフィンガー−インビトロウイルス(3F−IVV)ライブラリを作製し、該方法を用いて標的結合蛋白質(3−Fペプチド)を同定する。次いで、同定した3−Fペプチドをシーケンスした後、スリーフィンガーのN末端側の1番目のループをコードする部分のみを再度ペプチド合成し、該ペプチドに対して、例えば公知のアミノ酸変異導入技術等を利用して、該ループ領域の一部のアミノ酸がランダム化したポリペプチドを取得することができる。
【0044】
以下のCTx3は単なる例示のためにのみ用いられ、本発明の範囲はこの特定の蛋白質に基づくライブラリに限定されるものではない。
【0045】
CTx3のスリーフィンガー様スキャフォールドに基づいて、アセチルコリンレセプターへの結合に関与すると推定されているアミノ酸を含む3つのループ領域がランダム化されている構造を有する。図1に示されるように、ループを形成していると予測される領域およびその周辺のアミノ酸残基をランダム化した。ベータシートを形成しているアミノ酸は変更していない。
【0046】
CTx3遺伝子を含む3F−IVVライブラリ用の全長コンストラクトは、ループ部分のアミノ酸配列をランダム化したCTx3遺伝子の5’側にSP6プロモーター、キャップ部位、Xenopusグロブリン非翻訳配列(UTR)および翻訳開始部位を含むSP6−UTRフラグメントを付加し、3’側にスペーサー(GGGS)2、C−末端His6−タグ、スペーサー(GGGS)およびY−タグ配列を付加するよう設計した(図2)。SP6−UTRはCT3x遺伝子のインビトロ転写および翻訳に、His6−タグ配列はライブラリの精製に、Y−タグ配列はmRNAとピューロマイシンリンカーへのライゲーションに用いるための配列である。スペーサーは、合成したタンパク質のフォールディングをスムーズにするために導入した。得られた全長コンストラクトを直接配列決定してループ領域のランダム化の程度を評価したところ、図4に示されるように、ループ領域がランダム化されていることが確認された。
【0047】
IVVは、リボソーム上の伸張中のペプチドと、これをコードするmRNAとがピューロマイシンを介して結合している複合体である。下記の実施例においてIVVを形成するために用いたピューロマイシン・ビオチン・リンカーの構造を図5に示す。
【0048】
ピューロマイシン・ビオチン・リンカーは、Puro−F−Sとビオチン・ループとの2つの修飾オリゴヌクレオチドを二官能性試薬(EMCS)を用いて架橋させることにより合成する。Puro−F−Sは、スペーサーの一方の端にピューロマイシンが結合しており、他方の端にチオール基を有しており、フルオレセインで標識されている。
【0049】
ビオチン・ループは、ステムループ構造をとることができる塩基配列を有し、ループ部分にビオチンが結合している。ステム部分は制限酵素PvuIIの認識部位を形成する。ビオチンはIVVの精製のために用いることができ、制限酵素部位におけるDNAの切断によりIVVを回収することができる。ビオチン・ループのステムから3’側の配列は、上述のCTx3全長コンストラクト中のY−タグ配列と対応しており、CTx3コンストラクトから生成したmRNAの3’側の配列とアニーリングすることができる。mRNAとのライゲーションはビオチン・ループの5’末端で生ずる。ビオチン・ループの3’末端近傍のdTは1級アミノ基を有するよう誘導化されており、このアミノ基を介して二官能性試薬によりPuro−F−Sと結合させる。さらに、ビオチン・ループの3’末端は、ライゲーションしたmRNAからの逆転写を行う際のプライマーとして機能する。
【0050】
Puro−F−Sのチオール基を還元し、ビオチン・ループとEMCSとのコンジュゲートを加え、Puro−F−Sの末端チオール基とビオチン・ループ上のアミノ基とを結合させて、ピューロマイシン・ビオチン・リンカーを得る。
【0051】
ランダム化CTx3遺伝子の全長コンストラクトからSP6RNAポリメラーゼによりmRNAを生成する。次に、mRNAのYタグ配列をピューロマイシン・ビオチン・リンカーにアニーリングさせ、ライゲーション部位でT4 RNAリガーゼによりライゲーションさせて、mRNAとピューロマイシン・ビオチン・リンカーとを結合させる。
【0052】
次に、mRNA−ピューロマイシン・ビオチン・リンカーを無細胞翻訳系で翻訳させて蛋白質を生成し、mRNA−ピューロマイシン・ビオチン・リンカー−蛋白質の複合体を形成させる。この複合体をビオチンを介してストレプトアビジンと結合させた後、逆転写酵素反応によりDNA/RNAハイブリッドを形成し、得られたDNA/mRNA−ピューロマイシン・ビオチン・リンカー−蛋白質を制限酵素PvuIIで消化することにより、ストレプトアビジンから切り離す。得られたDNA/mRNA−ピューロマイシン−蛋白質を、C−末端His6−タグを利用してNi−NTA磁気ビーズにより精製する。以上のようにして、3F−IVVライブラリを形成することができる。
【0053】
製造したCTx3に基づくスリーフィンガー様スキャフォールドの蛋白質ライブラリの有用性を確認するために、インターロイキン6レセプターに特異的かつ高い親和性を有する結合/阻害蛋白質の同定を行った。インターロイキン−6(IL−6)は、細胞増殖、分化、および細胞機能を制御する多機能性サイトカインであり、種々の疾患、例えば慢性関節リウマチやキャッスルマン病の病因に関連する。IL−6の活性は、IL−6レセプター(IL−6R)を介して発揮される。IL−6はIL−6Rと相互作用して低アフィニティー複合体を形成し、これは次にgp130とともにシグナリングに必須の高アフィニティー複合体を形成する。IL−6Rの阻害剤は、IL−6とIL−6Rとの結合を妨害し、その結果、(IL−6)−(IL−6R)−gp130複合体の形成を阻害し、このことによりシグナリングカスケードを阻害すると考えられている(Nishimoto、N.、Kishimoto、T. and Yoshizaki、K. (2000)、Ann Rheum Dis、59 (suppl 1)、i21-i27)。
【0054】
3F−IVVライブラリをIL−6R誘導化セファロースビーズとともにインキュベートし、数回洗浄した後に、IL−6Rに結合した蛋白質を含むIVVを溶出する。溶出した生成物をPCR増幅し、さらにSP6−UTRの配列を付加する。上述のようにして転写させ、得られたmRNAをピューロマイシンリンカーにライゲーションさせ、翻訳させ、逆転写させて、DNA/mRNA−ピューロマイシンリンカー−蛋白質複合体を得る。この複合体は、第2の3F−IVVライブラリとして、次のラウンドで使用することができる。このようにして、複数ラウンドの選択および蛋白質ライブラリ生成を行うことができる。第2ラウンド以降の選択のラウンドにおいては、標的の濃度やインキュベーション時間を減少させ、洗浄の回数を増加させることにより、選択圧を順次高くして、より結合親和性の高い蛋白質を濃縮することができる。
【0055】
10ラウンドの選択およびライブラリの生成により、IL−6Rと結合しうる複数の蛋白質を得ることができた。これらの蛋白質のうち、以下のアミノ酸配列:
LVCYQLLACRPGTLETCPDDFTCVATRHTLGHNLTQYCSHACAIPACETPASCCQTDKCNG(配列番号28);
LVCYQLLACRPGTLETCPDDFTCVATRHTLGHNLTQYCSHACAIPTPRARTGCCQTDKCNG(配列番号29);または
LVCYAPLPYTPGTLETCPDDFTCVATRHTLGHNLTQYCSHACAIPACETPASCCQTDKCNG(配列番号30)
を有する蛋白質がIL−6Rに対して高い親和性を示した。
【0056】
さらに、後述の実施例で示すように、これらの3−Fの4つのS-S結合を形成するシステイン残基のうち、N末端側から2番目のシステイン残基をグリシンに変えて、さらに1つのループをもつペプチドへ分断しこれをペプチド合成した。該ペプチドは、スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する蛋白質である。本発明は、該蛋白質のN末側C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域のアミノ酸残基がランダム化されていることを特徴とする蛋白質ライブラリであり、具体例としては、LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)の配列からなる複数の蛋白質群を含むライブラリである。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
〔実施例1〕
スリーフィンガー様スキャフォールドの蛋白質ライブラリの作製
インビトロウイルス(IVV)法による進化分子工学を用いて、標的と結合しうるスリーフィンガー型のポリペプチドを取得するために、3つのループ領域をランダム化した蛋白質ライブラリ(3F−IVVライブラリ)を作製した。スリーフィンガー様スキャフォールドのシステインのフレームワークは、いくつかの短い神経毒の間で保存されていることが知られている。アセチルコリンレセプターへの結合に関与すると推定されているアミノ酸を含む部分およびその周辺のアミノ酸残基をランダム化した。ループIのT5−P10(6アミノ酸)、ループIIのK25−V34(10アミノ酸)およびループIIIのA46−H52(7アミノ酸)をランダム化した(図19)。ベータシートを形成しているアミノ酸は変更しなかった。
【0059】
3F−IVVライブラリ用の全長コンストラクトの調製:
3F−IVVライブラリ用の全長コンストラクトは、ループ部分のアミノ酸配列をランダム化したCTx3遺伝子の5’側にSP6プロモーター、キャップ部位、Xenopusグロブリン非翻訳配列(UTR)および翻訳開始部位を含むSP6−UTRフラグメントを付加し、3’側にスペーサー(GGGS)2、C−末端His6−タグ、スペーサー(GGGS)およびY−タグ配列を付加するよう設計した(図2)。SP6−UTRはCT3x遺伝子のインビトロ転写および翻訳のために、His6−タグ配列はライブラリの精製のために、Y−タグ配列はmRNAとピューロマイシンリンカーへのライゲーションのために、それぞれ付加されている。
【0060】
CTx3のヌクレオチド配列を4つのフラグメントに分割し、各フラグメントに対応するオリゴヌクレオチドを慣用のホスホルアミダイト化学により合成した。最初の3つのフラグメントはそれぞれ、3F遺伝子のループ配列に対応するランダム化ヌクレオチドおよび非ランダム化ベータシート配列に対応するヌクレオチドを含む。第1のフラグメントの5’末端にはSP6−UTRの一部が含まれている。第4のフラグメントは、Y−タグ、スペーサー(GGGS)2、C−末端His−タグ、スペーサー(GGGS)を含む。これらの4つのフラグメントは、それぞれ3’側にオーバーラップ配列を含む。この実験に用いたオリゴヌクレオチドの一覧を以下に示す。NはA、G、CまたはTを表し、SはCまたはGを表す。
【0061】
F1: 5'-CGCTCAACTTTGGCAGATCTACCATGGGAGGTTCACTTGTATGTTACACA(NNS)6CCTCCTG GAACCTTAGAGACTTG-3' (配列番号31)
F2: 5’-ACGCATGAGAACAATACTGGGTAAC(SNN)10TTTTTTAACACATGTGAAATCATCTGGACAA GTCTCTAAGGTTCCAGG-3' (配列番号32)
F3: 5’-TCCGTTGCATTTGTCTGTTTGGCAACA(SNN)7AAACTCATAGGACGCCGGTATCGCACACGC ATGAGAACAATACTGGGT-3’ (配列番号33)
F4: 5’-tttccccgccgccccccgtcctTGAGCCACCTCCAGAACCACCGCCATGGTGGTGATGATGGTGAGACCCTCCGCCTGAGCCTCCACCTCCGTTGCATTTGTCTGTTTGG- 3’ (配列番号34)
SP6−UTR: 5’-ATTTAGGTGACACTATAGAATACAAGCTTGCTTGTTCTTTTTGCAGAAGCTCAGAATAAACG CTCAACTTTGGCAGATCTACCATGG-3’ (配列番号35)
【0062】
下線を付した配列はPCR用のオーバーラップ配列を示す。F4において、小文字で示される配列はY−タグ配列を示し、これは転写されたmRNAをピューロマイシン−リンカーにライゲーションさせるための配列である。
【0063】
ライブラリ生成のためにPCRを3工程で行った(図3を参照):
工程1 最初の3つのフラグメント(ランダム化配列を含む)のPCRによりF1−F2−F3を生成する。
工程2 F1−F2−F3とF4とのPCRによりF1−F2−F3−F4を生成する。
工程3 SP6−UTRとF1−F2−F3−F4とのPCRにより全長コンストラクトを生成する。
【0064】
PCRは、25ユニットのKODポリメラーゼ(Toyobo、Japan)および100pmoleの各フラグメントを用いて製造元から供給されたバッファ中で行った。94℃を15秒間、64℃を10秒間および74℃を30秒間を25サイクル行い、生成物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分析し、全長コンストラクト(SP6−UTR)−F1−F2−F3−F4(約370塩基対)を含む対応するバンドを切り出した。標準的な方法によりDNAを抽出し、分光高度計で260nmで測定した。100ピコモルの各フラグメントから出発して、出発物質からの最終収率24%が得られた。
【0065】
配列決定による初期ライブラリの質の評価:
次に、上述で得られた全長コンストラクトを直接配列決定してループ領域のランダム化の程度を評価した。図4に示されるように、ランダム化ヌクレオチド(ループに対応)は、非ランダム化ピークと比較して短いピークを有していた。ランダム化部分における短いピークは、種々のヌクレオチドが種々のDNAコピーの同じ位置に存在するための不適切なシグナルによるものであり、一方非ランダム化部分においてはDNAのすべてのコピーに単一のヌクレオチドが存在して、鋭い明確なピークを与える。このことは、コンストラクト中にランダム化部分が首尾良く挿入されたことを示す。
【0066】
さらに、ライブラリをクローニングして、20個の単一コロニーを無作為に取り出し、配列決定した。20個のクローンのすべてにおいて、ランダム化ヌクレオチドは異なっており、ライブラリが適切な多様性からなることが確認された。ヌクレオチドの組成についても、SについてはCまたはGのいずれか、Nについては4つのヌクレオチドのいずれかを含むことが確認された。したがって、上述の方法により作製したライブラリは、多様性および質の点で満足しうるものであった。
【0067】
ピューロマイシン・ビオチン・リンカーの合成:
IVVは、リボソーム上の発生しつつあるペプチドと、これをコードするmRNAとがピューロマイシンを介して結合している複合体である。IVVを形成するためのピューロマイシン・ビオチン・リンカーの構造を図5に示す。ビオチン・ループの3’末端は、ライゲーションしたmRNAからの逆転写の際のプライマーとして機能する。ビオチンは、IVVの精製のために用い、制限酵素部位におけるDNAの切断により、IVVを回収することができる。
【0068】
ピューロマイシン・ビオチン・リンカーは、ヘテロ二官能性試薬(EMCS)を用いて以下の2つの修飾オリゴヌクレオチドを架橋させることにより合成した。
Puro-F-S:5’-(S)-TC(F)-(Spc18)-(Spc18)-(Spc18)-(Spc18)-CC-(Puro)-3’
ビオチン・ループ:
5’-CCCGGTGCAGCTGTTTCATC(T-B)CGGAAACAGCTGCACCCCCCGCCGCCCCCCG(T)CCT-3’(配列番号36)
【0069】
(S)は5’−チオール−モディフィアーC6、(F)はフルオレセイン−dT、(Puro)はピューロマイシンCPG、(Spc18)はスペーサーホスホルアミダイト18、(T)はアミノ−モディフィアーC6dT、(T−B)はビオチン−dTを表す。すべての修飾ホスホルアミダイト試薬はGlen Research(Sterling、VA、USA)から購入した。
【0070】
Puro−F−Sのチオール基の還元反応は室温で6時間行った。反応液は総量100μl中に10nmolのPuro−F−S、1mM TCEP、50mMリン酸バッファ(pH7)を含む。架橋反応の前に、NAP5カラム(Amersham)により50mMリン酸バッファ(pH7)を用いて生成物を精製した。
【0071】
10nmolのビオチン・ループおよび20μlのジメチルホルムアミド(DMF)中の2μmolのEMCSを0.2Mリン酸バッファ(pH7)に加えて総量100μlとした。反応混合物を室温で30分間撹拌し、NAP5カラムにより1mMリン酸バッファ(pH7)を用いて精製して、過剰のEMCSを除去した。ビオチン・ループとEMCSとのコンジュゲートを含む画分を回収し、沈殿により濃縮した後、スピードバキュームで乾燥した。生成物を10μlの0.2Mリン酸バッファ(pH7)に溶解し、上述のように還元したPuro−F−Sを加え、反応混合物を4℃で一晩撹拌することにより、Puro−F−Sとビオチン・ループとを結合させて、ピューロマイシン・ビオチン・リンカーを得た。この溶液にTCEPを最終濃度4mMで加え、室温で15分間インキュベートした。ピューロマイシン・ビオチン・リンカーおよびビオチン・ループをエタノール沈殿により濃縮して、過剰のPuro−F−Sを除去した。さらに、これを0.1M TEAAで平衡化したC18調製用カラム(5mm内径;250mm長さ;AR−300、Waters、MA、USA)に負荷し、80%アセトニトリル(15から35%)の直線勾配で0.5ml/分間で合計33分間の溶出を行うことにより、過剰のビオチン・ループを除去した。各画分を変性尿素PAGEで分析した。このようにして精製したピューロマイシン・ビオチン・リンカーはスピードバキュームで乾燥し、ジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水で10μMの最終濃度に希釈した。
【0072】
ライブラリDNAの転写:
ランダム化CTx3遺伝子の全長コンストラクトDNAを94℃に加熱し、ゆっくり冷却することによりアニーリングさせて、適切に塩基対形成した二本鎖DNAを形成した。テンプレートDNAを、Ribo MAX大量合成システム(Promega、Madison、USA)を用いて、SP6RNAポリメラーゼにより転写させて、mRNAを生成した。DNaseIを加えることにより反応を停止させ、フェノール/クロロホルム法により精製した。RNA濃度は分光光度計により260nmで測定した。
【0073】
ピューロマイシン−リンカーのmRNAへのライゲーション:
mRNAのYタグ配列をリンカーにアニーリングさせ、ライゲーション部位でT4 RNAリガーゼによりライゲーションさせて、mRNAとピューロマイシン・ビオチン・リンカーとを結合させた。mRNAは、1xリガーゼバッファ(Takara、Japan)中で94℃に加熱し、ゆっくり冷却することにより、Y−タグ配列を介してピューロマイシン・ビオチン・リンカー(1:1比)とアニーリングさせた。T4キナーゼおよびT4RNAリガーゼ(Takara、Japan)を加え、25℃で1時間反応させることにより、mRNAとピューロマイシン・ビオチン・リンカーとをライゲーションさせた(図5B)。生成したmRNA−ピューロマイシン・ビオチン・リンカーは、RNeasyキット(Qiagen)を用いて精製した。ライゲーション効率および生成物の純度はポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した。
【0074】
インビトロウイルス形成:
mRNA−ピューロマイシン・ビオチン・リンカーを、Rectic Lysate IVT Kit(Ambion、Texas、USA)を用いて30℃で10分間翻訳させた。翻訳後、65mM MgClおよび750mM KClの存在下で37℃で2時間インキュベートすることにより、mRNA−ピューロマイシン・ビオチン・リンカー−蛋白質の複合体を形成させた。この複合体をビオチン−ストレプトアビジン相互作用を利用して精製し、続いてM−MLV逆転写酵素(Takara、Japan)反応により、DNA/RNAハイブリッドを形成した。次に、DNA/mRNA−ピューロマイシン・ビオチン・リンカー−蛋白質を制限酵素PvuIIで消化することにより、ビオチン−ストレプトアビジン複合体から切断した。得られたDNA/mRNA−ピューロマイシン−蛋白質を、C−末端His6−タグを利用してNi−NTA磁気ビーズ(Qiagen)により精製し、Beacon2000(Panvera、Wisconsin、USA)により定量した。以上のようにして、3F−IVVライブラリを形成した。推計サイズ1×1011の分子が得られ、これを以後の実験においてIL−6R結合蛋白質の選択の出発物質として用いた。
【0075】
ライブラリの質の評価:
初代3F−IVVライブラリのアフィニティーを固定化IL−6RおよびCTx3の天然のリガンドであるAChBPに対する結合アッセイにより調べて、ライブラリの質を評価した。等量の3F−IVVライブラリを250nMの固定化IL−6RまたはAChBPとともにPBS中で室温で30分間インキュベートした。PBS−Tで数回洗浄した後、結合した物質を溶出し、PCR増幅し、ゲル電気泳動により分析した。PCRプライマーの配列は以下のとおりである:
PCR-フォワード: 5’-GAAGCTCAGAATAAACGCTCAACTTTGGCAGATCT-3’ (配列番号37)
PCR-リバース: 5’-TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTGCTTCCGCCGTGATGAT-3’ (配列番号38)
【0076】
3F−IVVライブラリの出発量の1/50および1/250の希釈物を用いたPCR産物も同様にゲル電気泳動して、シグナル強度の比較により、IL−6に結合した3F−IVVライブラリのパーセントを求めた。
【0077】
結果を図6に示す。ライブラリのIL−6RおよびAChBPに対する結合は、それぞれ約0.3%および0.2%であることがわかった。このことは、初代3F−IVVライブラリの両方のレセプターへの結合は無視しうる程度であることを示す。
【0078】
〔実施例2〕
3F−IVVライブラリからのIL−6R結合蛋白質の選択:
上述のようにして構築した3F−IVVライブラリを用いて、新規なIL−6Rの結合分子および/または阻害分子の発見を試みた。選択圧を順次高くする条件下で、3F−IVVライブラリの生成と選択との一連のラウンドを繰り返すことにより、IL−6Rに結合する蛋白質を選択した。
【0079】
IL−6R(−)誘導化および(IL−6R)誘導化セファロースの調製:
IL−6RをアミンカップリングによりNHS活性化セファロース4 Fast Flow(Amersham Biosciences、Uppsala、Sweden)に固定化した。同様にして、IL−6RなしのIL−6R(−)誘導化セファロース4 Fast Flowビーズを同時に調製した。カップリング効率は、初期および未結合レセプターの吸光度を280nmで測定することにより評価した。
【0080】
IL−6R結合蛋白質の選択:
3F−IVVライブラリからIL−6Rに結合する分子を選択した。選択の各ラウンドは、IL−6R(−)誘導化およびIL−6R誘導化セファロースビーズを用いて、100mMNaClおよび0.1%Tween−20を含むPBS中でバッチ選択モードで行った。
【0081】
IL−6R結合蛋白質を選択する前に、ライブラリをIL−6R(−)誘導化セファロースと2時間プレインキュベートすることにより、非特異的セファロース結合蛋白質を除去した。次に、このライブラリをIL−6Rセファロースと1時間インキュベートした。インキュベート後、IL−6Rセファロースを同じバッファで数回洗浄し、50mMDTT(ジチオスレイトール)を含む同じバッファで溶出した。溶出した生成物をPCRフォワードおよびリバースプライマーを用いてPCR増幅した。
【0082】
増幅産物を精製し、これをテンプレートとして用いて、さらにSP6−UTRを用いてPCR増幅した。得られた増幅産物をゲル精製し、上述のようにして転写させ、得られたmRNAをピューロマイシンリンカーにライゲーションさせ、翻訳させ、逆転写した。得られたIVVを精製し、Beacon2000により定量して、次のラウンドで用いた。以降の選択のラウンドにおいては、IL−6Rの濃度を300nMから30nMに、インキュベーション時間を1時間から15分間にそれぞれ徐々に減少させ、洗浄の回数を3から15に徐々に増加させることにより、選択圧を順次高くした。このようにして10ラウンドの選択を行った後、溶出したプールをPCRで増幅し、TAクローニングベクター(Invitrogen、Carlsbad)にクローニングした。
【0083】
3F−IVVライブラリからのIL−6R結合蛋白質の選択の進行をモニターするために、ラウンド5および10のDNAプールを直接配列決定した。結果を図7に示す。ランダム化部分のピークの長さは選択の進行とともに増加していた。このことは、IL−6R結合蛋白質の選択にしたがってライブラリの多様性が低下したことを示す。
【0084】
IL−6R結合蛋白質の評価:
ラウンド10のIVVプール(R10プール)のIL−6Rに対する結合能力および特異性を評価するために、種々の条件下で結合分析を行った。結果を図8に示す。図中、1/50は出発量の50倍希釈を示し、1/250は250倍希釈を示し、1/1は希釈なしを示す。R10プールは、非誘導化セファロース(ダミービーズ)について無視しうるアフィニティー(〜0.2%)を示したが、IL−6Rセファロースには有意に結合した(〜2%)。このことは、このプールがR10プールとIL−6Rとの間のアフィニティーにより濃縮されたことを示す(図8−1、2)。
【0085】
IL−6Rとのアフィニティーが蛋白質部分とDNA/mRNAハイブリッド部分とのいずれで生じているかを確認するために、R10プールをプロテイナーゼKで消化して蛋白質部分を除去した。この条件下では、プールは無視しうる程度(〜0.2%)にしかIL−6Rセファロースに結合しなかった(図8−3)。このことは、R10プールが蛋白質−DNA/mRNAハイブリッドではなく蛋白質−蛋白質相互作用を介してIL−6Rに結合したことを示す。
【0086】
さらに、8倍過剰の可溶性IL−6Rを加えて、250nMのIL−6Rセファロースとの間の競合実験を行った。溶出物は無視しうる量(〜0.2%)のIVVを含んでおり、IL−6RセファロースがR10プールに対して可溶性IL−6Rと競合したことが確認された(図8−4)。以上のことから、R10プールはIL−6Rに結合し、この結合はIVVの蛋白質部分を介して生じていることが示された。
【0087】
IL−6R結合蛋白質の配列の確認:
R10プールをクローン化し、無作為に選択した20個のクローンの一次配列を決定してアライメントにより分析した。3つのループ配列は異なるが、残りの配列はほぼ同一であった。Rはラウンドを示し、10は10番目のラウンドを示し、続く数字はクローン番号を示す。配列の分析により、プールはループ配列の類似性に基づいて5つのグループに分けることができた(図9)。ほぼ同一の配列を含むクローンの組をグループIとしてグループ化し、これは配列決定されたクローンの70%を占めた。グループIIおよびIIIがこれに続き、それぞれ約10%を含み、グループIVおよびVはそれぞれ約5%を含んでいた。非ランダム化配列は数個の変異を除いてほとんど変化していなかった。わずかの変異の存在は、おそらくはライブラリが650サイクルのPCRに供されたためにポリメラーゼのプルーフリーディングに失敗があったためであろう。
【0088】
蛋白質の調製:
得られたIL−6R結合蛋白質についてさらに詳細に調べるために、クローンR15-L1から蛋白質を調製した。蛋白質は、pBAD/TOPOThio融合発現キット(Invitrogen、Carlsbad)を用いてチオレドキシン融合蛋白質として調製した。また、対照実験において用いるためにチオレドキシンも調製した。プールのクローン化DNAをPCR増幅し(C−末端His6−タグをコード)、pBAD/TOPOThio融合発現ベクター中にクローニングし、大腸菌をトランスフォームした。配列決定によりフレームの確認を行った。
【0089】
ポジティブクローンを50μg/mlのアンピリシンを含むLB培地で16時間前培養した。少量の前培養物を新たなLB−アンピリシン培地に移し、OD600が0.5に達するまで増殖させた。培養物を0.02%アラビノースで37℃で4時間誘導した。3000rpmで20分間で細胞を回収し、1μg/mlDNase、1μg/mlRNaseおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)の存在下でBugbuster蛋白質抽出試薬(Novagen)で溶解した。短時間インキュベーションした後、溶解物を遠心分離し、上清(可溶性画分)およびペレット(不溶性画分)に分離し、SDS−PAGEで分析した。可溶性画分は発現したペプチドのHis6−タグについてNi−NTA(Qiagen)アフィニティーで非変性条件下でほぼ均一にまで精製した。不溶性画分は精製してインクルージョンボディーとし、50mMCAPS、pH11.0、0.3%N−ラウロイルサルコシン(Novagen)および0.1%β−メルカプトエタノール(Sigma)を含むバッファに溶解し、Ni−NTAアフィニティーカラムで変性条件下でほぼ均一にまで精製した。精製後、変性した蛋白質を酸化還元条件下で再フォールディングさせた。蛋白質は、抗His抗体(Penta..HisHRP、Qiagen)によりHis6−タグについてのウエスタンブロッティングにより確認した。蛋白質濃度は、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準物質としてBio−rad蛋白質アッセイキット(Bio−rad、Hercules、USA)により、およびBSA等の既知の蛋白質の濃度を標準としてSDS−PAGE上の蛋白質バンドのデンシトメトリにより測定した。
【0090】
直接結合アッセイ:
精製した蛋白質を7、70および700nMの濃度で、1xPBS中で1μMビオチン化IL−6Rとともに室温で1時間インキュベートした。ストレプトアビジン磁気ビーズを混合物に加え、さらに15分間インキュベートした。ビーズをPBS−T(Tween0.1%)で数回洗浄し、溶出し、抗His抗体(Penta..HisHRP、Qiagen)およびECL検出システム(Amersham Biosciences、Uppsala、Sweden)を用いて、ウエスタンブロッティングによりペプチドのHis6−タグについて分析した。バックグラウンドをモニターするために、蛋白質のSAビーズに対するアフィニティーも測定した。
【0091】
ペプチドR15-L1のIL−6Rに対する結合は、10倍増加濃度の蛋白質および一定量の1μMのIL−6Rで試験した。ペプチドは濃度依存的様式でIL−6Rに結合することが明らかになった(図10)。最も高い濃度のペプチド(700nM)で無視しうる程度のバックグラウンドが観察された。
【0092】
間接的結合アッセイ:
融合ペプチドの結合アフィニティー(Kd)は、Friguetら(Friguet、 B.、 Chaffotte、 A. F.、 Djavadi-Ohaniance、 L. and Goldberg M. E. (1985)、 J. Immunol. Methods.、 77、 305-319)に記載の方法にしたがい、いくつかの改変を加えて測定した。PBS中の一定量のペプチド(50nM)を種々の量のIL−6R(1nM−1μM)とともに、平衡に達するまでインキュベートした。また、チオレドキシンもアッセイしてバックグラウンドをモニターした。混合物を一定量の固定化IL−6R(200nM)に加え、さらに30分間インキュベートした。PBS−Tで数回洗浄した後、固定化IL−6Rに結合したペプチド(すなわち、可溶性IL−6Rに結合しない)を溶出し、抗His抗体(Penta..HisHRP、Qiagen)およびBio−rad Chemicdoc(Bio−rad、Hercules、USA)のECL検出システムを用いて、ウエスタンブロッティングによりペプチドのHis6−タグについて分析した。シグナルはデンシトメトリによりBio−rad Quantity Oneソフトウエアを用いて定量した。結果を図12に示す。検出シグナルは、可溶性レセプター濃度の増加にともなって減少し、このことは、ペプチドの可溶性レセプターへの結合は濃度依存的であることを示す。Graph Pad Prism 4(GraphPad software Inc.、SanDiego、USA)を用いてシグナル強度(Y−軸)を可溶性IL−6R濃度(X−軸)に対してプロットし、非線形回帰曲線への当てはめにより解離定数を計算した。その結果、R15-L1について解離定数115nMを得た。この範囲の解離定数での相互作用は非常に強く、イムノグロブリンに匹敵する。このことは、本発明にしたがう3F−IVVライブラリから未知の高分子標的に対して強く結合する分子を取得することが可能であることを実証する。
【0093】
阻害アッセイ:
競合阻害実験によりペプチドR15-L1によるIL−6とIL−6Rとの相互作用の阻害をアッセイした。一定量のビオチン化IL−6(45nM)および種々の量のペプチド(1nM−2μM)を一定量の固定化IL−6R(350nM)とともにインキュベーションして、IL−6Rについて競合させた。IL−6の濃度は、予め間接結合法により決定したIL−6Rの解離定数(20nM)の約2倍高い45nMと設定した。数回の洗浄の後、生成物を溶出してビオチン化IL−6(阻害分析用)およびHis6−タグペプチド(結合分析用)について、ウエスタンブロッティングおよびECL検出システムにより分析した。グラフは上述のようにしてプロットした。
【0094】
結果を図11に示す。R15-L1は濃度(用量)依存的に相互作用を阻害した。同様の条件下では、チオレドキシンは結合せず、(IL−6)−(IL−6R)相互作用を阻害しなかった。さらに、阻害は競合するペプチドのIL−6Rへの結合により生じたことが確認された(図11A2)。シグナル強度対ペプチドの濃度のプロットから、IC50を計算したところ、10nMの値が得られた(図11B)。
【0095】
特異性アッセイ:
100nMのペプチドR15-L1を1μMの種々の可溶性蛋白質(IL−6R、AChBPおよびIgG)とともに室温で1時間インキュベーションした。混合物をさらに300nMのIL−6Rセファロースとともに1時間インキュベーションして、未結合蛋白質を捕捉した。よく洗浄した後に溶出し、ウエスタンブロッティングによりペプチドのHis6−タグについて分析した。結果を図12に示す。IL−6Rのレーンは弱いバンドを含むが、AChBPおよびIgGは強いバンドを含み、このことは、R15-L1がIL−6Rに特異的に結合するがAChBPおよびIgGには結合しないことを示す。
【0096】
〔実施例3〕
スリーフィンガー(3−F)からシングルフィンガー(1−F)への改変
3−Fの4つのS-S結合を形成するシステイン残基のうち、N末端側から2番目のシステイン残基をグリシンに変えてさらに(図13)のように1つのループをもつペプチドに分断しこれをペプチド合成した。ペプチド合成はIL-6Rに結合する2種類の3−Fを選んだ。今回はアゴニスト効果をもつ「10−14」という3−Fからデザインした10-14-L1(配列:LVCYAPLP YTPGTLETGPDDFTCV/配列番号39)とアンタゴニスト効果をもつ3−F「15-L1」からデザインした10-15−L1(配列:LVCYQLLAGRPGTLETGPDDFTCV/配列番号40)をジーンワールド社(日本)に依頼して化学合成を行った。
【0097】
細胞アッセイ
まず最初に細胞アッセイは、アメリカATCC(The American Type Culture Collection)よりDS−1細胞を購入し以下のようにIL−6依存増殖アッセイを行った。
【0098】
細胞培養条件は、
・培地:RPMI1640、10%FBS、10mMHEPES、ペニシリン、カナマイシン
・継代用培地としては上記にIL−6を10U/mlとなるよう添加した。
・培養は37℃、5%COにて行った。
2.0×10 cells/well にて24well プレートにDS−1細胞をまき、24時間培養した後、(37℃、5%CO)以下のようにIL−6を添加し刺激を行った。
IL−6(U/ml)0、0.312、0.625、1.25、2.5、5、10
それぞれの濃度に対して3つのwellを用いて培養し、刺激後36時間後および42時間後に細胞数を計数した。
細胞数(3wellの平均)を縦軸に、IL−6の濃度を横軸に取り、グラフを作成した。(図14)
この実験から、DS−1細胞のIL−6容量依存的な増殖が確認された。
【0099】
次に、IL−6の代わりに「10−14」、「10−14−L1」を以下のような最終濃度になるように添加して同様の実験を行ったものがそれぞれ図15、16である。
濃度(単位はM/l)はいずれも、
10−11、10−10、10−9、10−8、10−7、10−6
である。
この結果、「10−14」、「10−14−L1」はいずれもアゴニスト効果を有し、しかも、その効果が変わらないことがわかった。
【0100】
次に「15−L1」に関するアンタゴニスト効果は以下のように行った。ポシティブコントロールとしてAnti−IL−6Rモノクローナル抗体(Anti−IL−6 receptor、Human、Goat−poly; R&D systems:型番AF−227−NA)を用いた。
【0101】
2.2×10 cells/well にて24wellプレートにDS−1細胞をまき、24時間インキュベート(37℃、5%CO)後、IL−6(10U/ml)とAnti−IL−6Rモノクローナル抗体、15−L1を以下の容量で同時に添加し刺激を行った。
【0102】
Anti−IL−6Rモノクローナル抗体(U/ml)0、0.03、0.06、0.13、0.25、0.5、1、2
10−15−L1(M) 0、10−11、10−10、10−9、10−8、10−7、10−6
【0103】
それぞれの濃度に対して3つのwellを用いて培養し、刺激後36時間後および42時間後に細胞数をカウントした。カウントした細胞数(3wellの平均)を縦軸に、Anti−IL−6Rモノクローナル抗体、10−15−L1の濃度を横軸に取り、グラフを作成した(平均±標準誤差)。[今回は42時間培養の結果を示す。](図17、18)
【0104】
この実験から、10−15−L1がIL−6(10U/ml)存在下でAnti−IL−6Rモノクローナル抗体と同様にDS−1細胞の増殖を抑えることが確認できた。つまり、アンタゴニスト効果があることを確認した。
【0105】
上記の結果から、スリーフィンガーのうちの1本の指の部分のみでスリーフィンガーそのものと同等の効果を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、CTx3のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】図2は、3F−IVVライブラリ作製用の全長コンストラクトの構造を示す図である。
【図3】図3は、3F−IVVライブラリ作製用の全長コンストラクトの製造工程を示す図である。
【図4】図4は、初代ライブラリの塩基配列解析の結果を示す図である。
【図5】図5は、3F−IVVライブラリ作製用のピューロマイシン・ビオチン・リンカーの構造を示す図である。
【図6】図6は、結合分析による初期ライブラリの質の評価を示す写真である。
【図7】図7は、3F−IVVライブラリからのIL−6R結合蛋白質の濃縮の進行を示す図である。
【図8】図8は、ラウンド10の3F−IVVプールのIL−6Rへの結合を示す写真である。
【図9】図9は、CTx3遺伝子とラウンド10の3F−IVVプールとのアミノ酸配列の比較を示す図である。
【図10】図10は、クローンR10−15のIL−6Rへの結合を示す写真である。
【図11】図11は、クローンR10−15による(IL−6)−(IL6−R)相互作用の阻害アッセイの結果を示す写真および図である。
【図12】図12は、クローンR10−15のIL−6Rに対する特異性を示す写真および図である。
【図13】図13は、スリーフィンガー(3-F)からシングルフィンガー(1-F)への改変の具体的な態様を示す図である。
【図14】図14は、本発明のポリペプチドを用いた細胞アッセイの結果を示す図である。
【図15】図15は、本発明のポリペプチドを用いた細胞アッセイの結果を示す図である。
【図16】図16は、本発明のポリペプチドを用いた細胞アッセイの結果を示す図である。
【図17】図17は、本発明のポリペプチドを用いた細胞アッセイの結果を示す図である。
【図18】図18は、本発明のポリペプチドを用いた細胞アッセイの結果を示す図である。
【図19】図19は、スリーフィンガー様スキャフォールド蛋白質CTx3とα−ブンガロトキシン(α−Bgtx)およびコブラトキシン(Cbtx)との一次構造および二次構造の比較を示す図である。
【図20】図20は、スリーフィンガー様スキャフォールドを有する種々の蛋白質のアミノ酸配列のアライメントを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されていることを特徴とする蛋白質ライブラリ。
【請求項2】
前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、それぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在している、請求項1記載の蛋白質ライブラリ。
【請求項3】
前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、請求項2記載の蛋白質ライブラリ。
【請求項4】
前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む、請求項1−3のいずれかに記載の蛋白質ライブラリ。
【請求項5】
請求項1−4のいずれかに記載の蛋白質ライブラリをコードするポリヌクレオチドライブラリ。
【請求項6】
標的と結合しうる蛋白質を同定する方法であって、
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し;
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し;そして
(d)前記選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する、
の各工程を含む方法。
【請求項7】
工程(a)の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、それぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており、蛋白質のアミノ酸配列を決定する工程(d)が、その蛋白質に結合しているポリヌクレオチドの塩基配列を決定することにより行われる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリである、請求項6−8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
標的と結合しうる蛋白質を同定する方法であって、
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し、ここで前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(d)前記選択された蛋白質をコードするポリヌクレオチドを増幅し、転写し、および翻訳することにより、第2の蛋白質ライブラリを製造し、ここで前記第2の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(e)前記第2の蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(f)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(g)必要により工程(d)−(f)を繰り返し;そして
(h)選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する、
の各工程を含む方法。
【請求項11】
前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
標的と結合しうる蛋白質を同定する方法であって、
(a)スリーフィンガー様スキャフォールドを有する蛋白質のN末端側1番目のループ領域を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリであって、
C1−CysのC末端側2番目のアミノ酸からC2−CysのN末端側7番目のアミノ酸までの領域、
のアミノ酸残基がランダム化されている蛋白質ライブラリを用意し、ここで前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(b)前記蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(c)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(d)前記選択された蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を決定し;
(e)決定された塩基配列に基づいて、一部の配列が前記決定された塩基配列と同じであり残りの配列が前記決定された塩基配列と異なる塩基配列を有する複数のポリヌクレオチドの群を調製し、転写し、および翻訳することにより、第2の蛋白質ライブラリを製造し、ここで前記第2の蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質はそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと対応づけられた形で存在しており;
(f)前記第2の蛋白質ライブラリを前記標的と接触させ;
(g)前記標的と結合した蛋白質を選択し;
(h)必要により工程(d)−(g)を繰り返し;そして
(i)選択された蛋白質のアミノ酸配列を決定する、
の各工程を含む方法。
【請求項14】
前記蛋白質ライブラリを構成する各蛋白質が、ピューロマイシンを介してそれぞれの蛋白質をコードするポリヌクレオチドと結合している、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記蛋白質ライブラリが、以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する複数の蛋白質の群を含む蛋白質ライブラリである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
以下のアミノ酸配列:
LVCY(X)6PGTLETCPDDFTCV(配列番号1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)
を有する蛋白質。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−193923(P2008−193923A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30888(P2007−30888)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(506367434)ジェナシス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】