説明

蛍光ランプおよび照明装置

【課題】地球環境に優しく製造歩留りの良い蛍光ランプを提供する。
【解決手段】 実質的に鉛、ストロンチウムおよびバリウムを含有しない軟質ガラスからなるバルブ10と、前記バルブ10の端部に封止され、実質的に鉛を含有しない軟質ガラスからなるフレア32と当該フレア32にマウントされた電極31とを有するステム30(20)とを備えた蛍光ランプ1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの端部にステムが封着された蛍光ランプおよび当該蛍光ランプを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ランプの分野では、地球環境保護の観点から、環境負荷物質である鉛を含有しないガラスを用いて蛍光ランプを製造する試みがなされている。例えば、特許文献1に開示されている蛍光ランプでは、バルブと、ステムの構成部材であるフレアとが、それぞれ鉛を含有しないガラスで形成されている。
【特許文献1】特許3299615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の蛍光ランプに用いられる鉛を含有しないガラスは、鉛を含有するガラスと比べて加工性が悪く、言い換えれば作業温度範囲(ガラスの軟化点から作業点までの温度範囲)が狭く、蛍光ランプの製造用として適しにくい。このような、作業温度範囲の狭いガラスを用いて蛍光ランプを製造すると、製造歩留りが悪くなる。
具体的には、作業温度範囲の狭いガラスを用いると、バルブの端部にステムを封着するバルブ封止工程の作業性が悪くなる。バルブ封止工程では、バルブの端部とステムのフレアとを加熱し融着させる際に、加熱量が少ないと十分にバルブとフレアとを融着させることができず封止不十分となり、また加熱量が多いとバルブやフレアが変形し過ぎてガラスに歪が生じるが、作業温度範囲が狭くなるほど前記熱量を厳しく管理しなければならず、作業性が悪くなる。
【0004】
また、バルブを曲げたりブリッジ接続したりするバルブ成形工程においても、バルブへの加熱量を厳しく管理しなければならず作業性が悪くなる。
本発明の目的は、地球環境に優しく製造歩留りの良い蛍光ランプを提供することにある。さらには、その蛍光ランプを備えた地球環境に優しく生産性の高い照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る蛍光ランプは、実質的に鉛、ストロンチウムおよびバリウムを含有しない軟質ガラスからなるバルブと、前記バルブの端部に封着され、実質的に鉛を含有しない軟質ガラスからなるフレアと当該フレアにマウントされた電極とを有するステムとを備えることを特徴とする。
本発明に係る照明装置は、上記いずれかの蛍光ランプを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る蛍光ランプは、バルブ用およびフレア用の軟質ガラスに環境負荷物質である鉛が含有されていないため地球環境に優しい。加えて、バルブ用の軟質ガラスにはストロンチウムおよびバリウムも含有されておらず、従来の鉛を含有しない軟質ガラスよりも作業温度範囲が広く加工性が良いため、バルブ封止工程やバルブ成形工程における作業性が良い。したがって、蛍光ランプの製造歩留りが良い。
【0007】
なお、本願において軟質ガラスとは、30〜380℃の膨張係数が80×10−7/K以上のガラスを意味する。また、鉛、ストロンチウムまたはバリウムを実質的に含有しないとは、意識的に含有させていないことを意味し、不純物レベルで鉛、ストロンチウムまたはバリウムを含有する軟質ガラスは、実質的にそれらを含有しない軟質ガラスに該当する。
【0008】
また、前記バルブの軟質ガラスの軟化点が700℃以下であって、かつ、軟化点と作業点との温度差が350℃以上である場合は、前記軟質ガラスが蛍光ランプ用として十分な加工性を有するため、よりバルブ封止工程やバルブ成形工程における作業性が良い。
なお、本願において、軟化点とはガラスの粘性度ηが、η=107.65dPa・sの時の温度、作業点とはガラスの粘性度ηが、η=104.0dPa・sの時の温度である。
【0009】
また、前記バルブの軟質ガラスが、実質的に酸化物換算で、SiO:60〜80wt%、Al:0.5〜5wt%、B:0〜5wt%、LiO:0〜7wt%、NaO:3〜17wt%、KO:1〜12wt%、MgO:0.5〜10wt%、CaO:0.5〜10wt%、ZnO:0〜10wt%、ZrO:0〜5wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Sb:0〜1wt%、CeO:0〜1wt%を含有する場合は、前記軟質ガラスが蛍光ランプ用として加工性以外の特性についても良好であるため、より蛍光ランプの品質が高い。
【0010】
また、前記フレアの軟質ガラスが、実質的に酸化物換算で、SiO:60〜80wt%、Al:0.5〜5wt%、B:0〜5wt%、LiO:0.5〜7wt%、NaO:3〜10wt%、KO:1〜12wt%、MgO:0.5〜10wt%、CaO:0.5〜10wt%、SrO:0〜10wt%、BaO:0〜12wt%、ZnO:0〜10wt%、ZrO:0〜5wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Sb:0〜1wt%、CeO:0〜1wt%を含有する場合は、さらに蛍光ランプの品質が高い。
【0011】
また、前記フレアの軟質ガラスが、実質的にストロンチウムおよびバリウムを含有しない場合は、前記フレアの軟質ガラスの加工性も良いため、バルブ封止工程における作業性が更に良い。
また、前記フレアの筒状部の肉厚をtmm、外径をAmmとしたとき、以下の関係、
0.55≦t≦0.95、かつ、20t−9≦A≦20t−3
を満たす場合は、バルブ封止工程における歩留りが99%以上である。
【0012】
また、以下の関係、
t≦0.9、かつ、20t−8≦A≦20t−4
を満たす場合は、バルブ封止工程における歩留りが99.7%以上である。
また、前記バルブの外径をBmmとしたとき、以下の関係、
0.25B≦A≦0.75B
を満たす場合は、一般的なサイズのバルブを備えた歩留りの良い蛍光ランプを得ることができる。
【0013】
また、前記フレアの軟質ガラスの30〜380℃の膨張係数が90×10−7〜104×10−7/Kである場合、電極のリード線とフレアとの膨張係数の差が小さくなるため、当該リード線が封止されている部分にクラックが生じ難い。
また、さらに口金を備え、前記口金が透明或いは透光性を有する場合は、バルブの端部が不透明な口金で覆われている従来の蛍光ランプよりも外観的にも好ましい蛍光ランプを得ることができる。
【0014】
本発明に係る照明装置は、上記のような地球環境に優しく製造歩留りの良い蛍光ランプを備えているため、地球環境に優しく生産性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る蛍光ランプおよび照明装置について、図面に基づき説明する。
(1)蛍光ランプおよび照明装置の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る環状型蛍光ランプを示す一部破断平面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る蛍光ランプ1は、環型蛍光ランプであって、環状のバルブ10と、当該バルブ10の両端部11,12にそれぞれ封着されたステム20,30と、当該バルブ10の両端部11,12に跨ってそれらを覆うように取り付けられた口金40とを備える。
【0016】
バルブ10は、その内面に保護層(不図示)および蛍光体層(不図示)が順次積層されており、内部に水銀蒸気を供給するためのアマルガム粒50と、希ガスの一例であるアルゴンガスとが封入されている。
図2は、バルブ封着前のステムを説明するための図であって、(a)はステムを構成する各部材を示す図、(b)はステムを示す断面図である。ステム20とステム30とは略同じ構成であるため、それらの代表例としてステム30について説明する。
【0017】
図2(b)に示すように、ステム30は、電極31と、当該電極31がマウントされたフレア32と、当該フレア32に融着された排気管33とで構成される。ステム30は、図2(a)に示すようなフィラメントコイル34、一対のリード線35,36、フレア管32’およびガラス細管33’を組み立ててなる。
電極31は、フィラメントコイル34と一対のリード線35,36とからなり、当該フィラメントコイル34は、前記一対のリード線35,36の一方(バルブ10内に配置される方)の端部間に跨って、かしめ又は溶接等により取り付けられている。
【0018】
図2(b)に示すように、フレア32は、リード線35,36が封着されたマウント部37aと、当該マウント部37aからフィラメントコイル34と反対側に延出する筒状部37bと、当該筒状部37bから更にフィラメントコイル34と反対側に延出する鍔部38とからなる。
フレア32は、フレア管32’が加工されたものであって、フレア管32’のストレート部37’は、その一部が溶融し、ガラス細管33’の一方の端部と合わさってマウント部37aを形成する。また、残りの部分は、溶融・変形しないまま筒状部37bとなる。また、フレア管32’のフレア部38’は、そのままフレア32の鍔部38となる。鍔部38は、バルブ封止工程において、その一部がバルブ10の前駆体であるガラス管10’の端部と溶融接合される。フレア32のガラス組成は、他の部材のガラスと混ざり合わない筒状部37bの組成で特定できる。
【0019】
筒状部37bは、その全体にわたって外径Aおよび肉厚tがそれぞれ略均一である。筒状部37bの外径Aは、フレア管32’のストレート部37’の外径A’と略同じであり、前記筒状部37bの肉厚tは、フレア管32’の肉厚t’と略同じである。
排気管33は、図2(a)に示すようなガラス細管33’を加工したものであって、ガスを排気しバルブ10内部を真空にするため、また内部に希ガスおよびアマルガム粒50を投入するために使用される。ガラス細管33’の一方の端部は、フレア32のマウント部37aに融着されている。一方、他方の端部は、バルブ10内にアルゴンガスを入れ、さらにアマルガム粒50を投入したあと封止される。なお、一方のステム20の排気管(不図示)は、ステム20をバルブ10に封着する前に予め先端を焼き切って封止しておく。
【0020】
図1に示すように、口金40は、本体部41と当該本体部41に設けられた複数の接続ピン42とを備える。
本体部41の両端部には、バルブ10の端部11,12が収容されている。ステム30(20)はバルブ10の端部12(11)に封着されているため、ステム30(20)のフレア32は本体部41の内部に位置する。
【0021】
本体部41は、透明であって、バルブ10の端部11,12の全体が外側から見えるようになっている。そのため、端部11,12からも光を取り出すことができ、ランプ全体の点灯時の外観が好ましい円環状となっている。
一般に、鉛を含有するガラスは、加工するとガラス中の鉛が酸化物として析出し加工部分が黒くなってしまう。そのため、鉛を含有するガラスで形成したフレアは黒っぽい色になる。従来の蛍光ランプは、このようなフレアを用いていたために、当該フレアのあるバルブの端部を不透明な口金で覆い隠し、蛍光ランプの外観を良好に保っていた。しかし、端部を不透明な口金で覆い隠していたため、それら端部からの光束を取り出すことができず、環状型蛍光ランプの発光部分が好ましい円環状にならなかった。
【0022】
本実施の形態に係る蛍光ランプ1は、フレア32に鉛を含有するガラスが用いられていないため、当該フレア32が黒っぽい色になることがない。そのため、不透明な口金で端部11,12を覆い隠す必要がなく、バルブ端部収容部42,43を透明にすることができるため、発光部分を好ましい円環状とすることができる。
なお、バルブ端部収容部42,43は、必ずしも透明である必要はなく、不透明であっても良い。しかし、バルブ端部収容部42,43が透明或いは透光性を有していれば、上記した効果を得ることができる。このような構成は、特に、環状型蛍光ランプ、二重環状型蛍光ランプ、スクエア型蛍光ランプ、二重スクエア型蛍光ランプ、ツイン蛍光ランプ等のように、バルブの端部同士が近い位置にある単口金タイプの蛍光ランプの場合に有効である。ただし、直管型蛍光ランプのようなバルブの両端部が互いに離れた位置にある両口金タイプの蛍光ランプであっても、より多くの光束を取り出すことができるという点において効果がある。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係る照明装置を示す斜視図である。図3に示すように、本実施の形態に係る照明装置100は、光源として上述した蛍光ランプ1を備えている。蛍光ランプ1は、装置本体101内に収容されており、当該装置本体101に取り付けられた点灯手段102により点灯させる。
(2)蛍光ランプの製造方法
蛍光ランプの製造方法を、図4〜6に基づいて説明する。
【0024】
図4は、蛍光ランプの製造方法を説明する図であって、(a)は蛍光体層形成工程を説明する図であり、(b)および(c)はそれぞれバルブ封止工程を説明する図であり、(d)はバルブ成形工程を説明する図である。
まず、蛍光体層形成工程において、図4(a)に示すように、内面に保護膜が形成されたガラス管10’内に3波長の蛍光体懸濁液60を流し込み、前記ガラス管10’の内面を前記蛍光体懸濁液60で濡らす。次に、蛍光体懸濁液60を乾燥させ、焼成炉で約1分間550〜660℃で焼成して蛍光体層を形成する。
【0025】
次に、バルブ封止工程において、ガラス管10’の両端部付近の蛍光体層を除去した後、図4(b)に示すように、前記両端部にそれぞれステム20,30を挿入し、図4(c)に示すような位置で封着する。
バルブ10の端部11,12にステム20,30を封着する代表的な方法として、ドロップシール方式とバットシール方式について説明する。
【0026】
図5は、ドロップシール方式を説明する図である。ドロップシール方式では、まず、図5(a)に示すようにガラス管10’を縦向きに固定し、図5(b)に示すように下側の開口部11’から管内にステム30を挿入する。次に、図5(c)に示すように、バーナー61,62で、ステム30の鍔部38とその鍔部38付近のガラス管10’とを加熱し、図5(d)に示すように、鍔部38とガラス管10’とを融着する。なお、ガラス管10’の余分な部分14は、自重により落下して切り離される。
【0027】
図6は、バットシール方式を説明する図である。バットシール方式では、まず、図6(a)に示すようにガラス管10’を横向きに固定し、その端縁をバーナー63,64で加熱して開口部10’が狭くなるよう加工する。次に、図6(b)に示すように狭くなった開口部10’にステム30を挿入し、図6(c)に示すように、バーナー65,66で、ステム30の鍔部38とその鍔部38付近のガラス管10’とを加熱し、図6(d)に示すように、鍔部38とガラス管10’とを融着する。
【0028】
図4に戻って、バルブ成形工程では、図4(d)に示すように、ストレート形のガラス管10’を、雰囲気が700〜900℃程度に制御された炉内に入れ、環状に曲げ加工する。
その後、排気工程において、未封止の排気管33を介しバルブ10内の不純ガスを排気する。次に、希ガス封入工程において、排気管33を介してアルゴンガスをバルブ10内に入れ、さらにアマルガム封入工程において、排気管33からバルブ10内にアマルガム粒50を投入する。その後、排気管33の先端部を焼き切って封止する。
【0029】
なお、本実施の形態に係る製造方法では、バルブ10片側からのみ排気を行う方式を採用しており、一方のステム20の排気管(不図示)は予め先端が焼き切られ封止されている。
そして最後に、バルブ10の両端部11,12に口金40が取り付けられ、蛍光ランプ1が完成する。
【0030】
(3)バルブ用およびステム用の軟質ガラス
バルブ用の軟質ガラスは、実質的に鉛、ストロンチウムおよびバリウムを含有しない軟質ガラスである。当該軟質ガラスの組成は、SiO:60〜80wt%、Al:0.5〜5wt%、B:0〜5wt%、LiO:0〜7wt%、NaO:3〜17wt%、KO:1〜12wt%、MgO:0.5〜10wt%、CaO:0.5〜10wt%、ZnO:0〜10wt%、ZrO:0〜5wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Sb:0〜1wt%、CeO:0〜1wt%であることが好ましい。以下にそれぞれの成分について詳細に説明する。
【0031】
SiOは、ガラスの骨格を形成する成分であり、少なくなり過ぎると、ガラスの粘性が下がり加工性が悪くなり過ぎる。また、多くなり過ぎると、ガラスの粘性が硬くなり変形させ難くなる。SiOの好ましい含有量は60〜80wt%である。
Alは、化学耐久性を良くする成分であり、少なくなり過ぎると、その化学耐久性が悪くなり保存が利き難くなる。また、多くなり過ぎると、ガラスが不均質となり脈理が増加する。Alの好ましい含有量は0.5〜5wt%である。
【0032】
は、任意成分であり、少量の添加で膨張係数を低下させ失透を減ずる効果がある。しかし、多く添加し過ぎると、作業点温度が下がり作業温度範囲が狭くなり過ぎるため加工が困難になる。Bの好ましい含有量は0〜5wt%である。
NaOは、添加することで粘性を低下させる効果や膨張係数を増加させる効果があり、少なくなり過ぎると、その効果が得られなくなる。また、多くなり過ぎると、化学耐久性が悪くなり保存が利き難くなる。NaOの好ましい含有量は3〜17wt%である。
【0033】
Oは、添加することでNaOと同じような効果が得られるが、膨張係数の増加の影響度合いはNaOより大きい。また、NaOと共存させることにより、混合アルカリ効果を発揮し、電気抵抗率を高める効果も発揮する。少なくなり過ぎるとその効果が得られなくなり、多くなり過ぎると膨張係数が大きくなり過ぎる。KOの好ましい含有量は1〜12wt%である。
【0034】
LiOは、添加することでNaOやKOと同じような効果が得られるが、膨張係数の増加はNaOより小さい。また、NaOやKOと共存させることにより、さらなる混合アルカリ効果を発揮し、電気抵抗率を更に高める効果も発揮する。少なくなり過ぎるとその効果が得られなくなり、多くなり過ぎるとガラスが分相するおそれがある。LiOの好ましい含有量は0〜7wt%である。
【0035】
MgO、CaOおよびZnOは、添加することで化学耐久性を高める効果がある。少なくなり過ぎるとその効果が得られなくなり、多くなり過ぎるとガラスが失透するおそれがある。MgOの好ましい含有量は0.5〜10wt%であり、CaOの好ましい含有量は0.5〜10wt%であり、ZnOの好ましい含有量は0〜10wt%である。
ZrOは、任意成分であり、添加することで硬度を高める効果がある。多くなり過ぎると、ガラスが結晶化するおそれがある。ZrOの好ましい含有量は0〜5wt%である。
【0036】
Feは、各種原料の不純物として混入する物質であるが、原料精製によりその添加量を調整することができ、添加することで紫外線を吸収することができる。少なくなり過ぎるとその効果が得られなくなり、多くなり過ぎるとガラスが着色するおそれがある。Feの好ましい含有量は0.01〜0.2wt%である。
Sbは任意成分であり、ガラス溶融炉内で原料から発生するガスを効率よく清澄させる効果があるが、多くなり過ぎるとガラスが着色するおそれがある。Sbの好ましい含有量は0〜1wt%である。
【0037】
CeOは任意成分であり、添加することで紫外線を吸収する効果があるが、多くなり過ぎると紫外線照射により着色する、いわゆるソラリゼーションが起こるおそれがある。CeOの好ましい含有量は0〜1wt%である。
バルブ用の軟質ガラスには、所定の組成となるように調合したガラス原料をガラス溶融窯に投入し、例えば1500〜1600℃で溶融させ、ガラス化させて製造する。得られた溶融ガラスをダンナー法等の管引き法によって管状に成形後、所定の寸法に切断してバルブ用のガラス管とする。
【0038】
バルブ用の軟質ガラスには、環境負荷物質である鉛が含有されていないため、当該軟質ガラスで作成されたバルブ10を備える本実施の形態に係る蛍光ランプ1は地球環境に優しい。また、バルブ用の軟質ガラスは、ストロンチウムおよびバリウムも含有しないため、作業温度範囲が広い。
図7は、ガラスの作業温度範囲を示す図である。図7から明らかなように、本実施の形態係るバルブ用のガラスの作業温度範囲は、従来の鉛を含有しないガラス(比較例1のガラス)の作業温度範囲よりも広く、鉛を含有するガラス(比較例2のガラス)の作業温度範囲と比べても遜色がない。したがって、ステム20,30をバルブ10の端部11,12に封着するバルブ封止工程や、ガラス管10’を曲げ加工するバルブ成形工程において作業性が良く、蛍光ランプ1の製造歩留りが良い。
【0039】
次に、フレア用のガラスについて説明する。フレア用のガラスは、実質的に鉛を含有しない。当該フレア用の軟質ガラスは、ストロンチウムおよびバリウムを含有する場合がある点においてバルブ用の軟質ガラスと相違するが、それ以外の成分については基本的に前記バルブ用の軟質ガラスと同様の構成を有する。
フレア用の軟質ガラスの組成は、SiO:60〜80wt%、Al:0.5〜5wt%、B:0〜5wt%、LiO:0.5〜7wt%、NaO:3〜10wt%、KO:1〜12wt%、MgO:0.5〜10wt%、CaO:0.5〜10wt%、SrO:0〜10wt%、BaO:0〜12wt%、ZnO:0〜10wt%、ZrO:0〜5wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Sb:0〜1wt%、CeO:0〜1wt%であることが好ましい。
【0040】
図8は、フレア用のガラスの組成を示す図である。上記組成を満たしストロンチウムおよびバリウムを含有するガラスとしては、例えば図8に示すNo.1およびNo.2のガラスが挙げられる。
SrOとBaOは、原子半径が大きい元素の酸化物であることから、PbOの代わりの効果、すなわち電気抵抗率を高める効果がある。多くなり過ぎると、作業点が下がりすぎ作業温度範囲が狭くなり過ぎるため加工が困難になる欠点がある。
【0041】
SrOの好ましい含有量は0〜10wt%であり、BaOの好ましい含有量は0〜12wt%である。フレア用の軟質ガラスに、ストロンチウムおよびバリウムが含有されていなければ作業温度範囲が広くなるため、バルブにステムを封着する工程における作業性がより向上する。
NaOの好ましい含有量は、バルブ用のガラスの場合3〜17wt%であったが、フレア用のガラスの場合3〜10wt%である。NaOが10wt%を超えるようなガラス、例えば図8におけるNo.3またはNo.4のようなガラスは、電気抵抗が低く過ぎてリード線35,36を封着するフレア用として好ましくない。したがって、No.1およびNo.2のガラスのように混合アルカリ効果によりNaOの含有量を10wt%以下に抑えたガラスの方が好ましい。
【0042】
SrO、BaOおよびNaO以外の成分については、フレア用の軟質ガラスと同様であるため説明を省略する。
フレア用の軟質ガラスは、リード線35,36であるジュメット線を封止するガラスであることから、封着不良を低減させるために膨張係数を調整することがより好ましい。ここで、ジュメット線の膨張係数は30〜380℃で94×10−7/K、バルブ用の軟質ガラスの膨張係数が30〜380℃で約100×10−7/Kであることから、フレア用の軟質ガラスの膨張係数は30〜380℃で90×10−7〜104×10−7/Kであることが好ましい。
【0043】
フレア用の軟質ガラスには、環境負荷物質である鉛が含有されていないため、当該軟質ガラスで作成されたフレア32を有するステム20,30を備えた本実施の形態に係る蛍光ランプ1は地球環境に優しい。また、フレア用の軟質ガラスにストロンチウムおよびバリウムが含有されていない場合は、作業温度範囲が広いためバルブ封止工程における歩留りが良い。
【0044】
図9は、本発明に係る蛍光ランプの封止工程における歩留りを示す図である。図9に示す結果から、フレア32の寸法は、フレア32の筒状部37bの肉厚をtmm、外径をAmm、としたとき、以下の式1の関係と式2の関係の両方を満たすことが好ましい。
0.55≦t≦0.95 ・・・(式1)
20t−9≦A≦20t−3 ・・・(式2)
その理由を以下に説明する。
【0045】
バルブ10の端部11,12にステム30が封着される構成の蛍光ランプ1は、一般的にバルブ10の外径Bmmが、15.5≦B≦38である。
そのような状況において、0.55>tであると、筒状部37bの肉厚tが薄いためステム30(20)の外径が小さくなり過ぎ、バルブ10の外側から熱するバーナーの熱がフレア32に十分伝わらず、封止が不十分になる。一方、t>0.95であると、筒状部37bの肉厚tが厚すぎて十分にフレア32のガラスを溶融させることができず、封止が不十分となる。
【0046】
次に、0.55≦t≦0.95において、20t−9>Aを満たす場合、マウント部37aを形成するのに不十分なガラス量となり、マウント部37aの形成が不可能になる。また、A>20t−3を満たすときは、ガラス量が多くなり過ぎるため、ステム20,30封着時に熱量が必要になり、バルブ10に歪が広範囲に残って歩留りが悪くなる。
上記条件式を満たすことで、ドロップシール方式でステム20,30を封着する場合だけでなく、バットシール方式でステム20,30を封着する場合にも、歩留りが安定することがわかった。
【0047】
バットシール方式では、生産速度が速い設備を使用するため、短時間でフレア32のガラスを加熱する必要がある。しかし、ステム20,30を形成するガラスを、鉛を含有するガラスから鉛を含有しないガラスに置き換えると、ガラスを所望の粘性にするためによりも大きな熱量を加えなければならず、その結果、急加熱によりフレア32に一時歪が入りそれが原因で割れ歩留りが悪くなる。それでも、フレア32を上記条件式が満たされる寸法とすることで、一時歪の大きさを低減し、その結果として歩留りを改善することができる。
【0048】
以上のように、フレア32のガラスを鉛を含有するものから鉛を含有しないものに置き換えると共に、フレア32を上記条件式が満たされる寸法とすることで、工法に変更を加えることなく歩留りを改善することができる。
さらに、0.25B>Aであると、バルブ10とフレア32の筒状部37bとの間が広くなり、鍔部38をより広がった形状にしなければならないが、鍔部38を広げ過ぎると加工時の加熱ムラから、鍔部38が波打つなどの形状不良が発生し易くなるため好ましくない。また、A>0.75Bであると、バルブ10とフレア32との間が狭くなり、ステム30をバルブ10へ挿入した時に、互いが接触して割れるなど不良が発生し易くなる。
【0049】
図10は、比較例2の蛍光ランプの封止工程における歩留りを示す図である。図9と図10とを比較すると分かるように、本実施の形態に係る蛍光ランプ1は、封止歩留りが99.7%以上の範囲(表中において「○」で示す範囲)が比較例の蛍光ランプと同等であり、封止歩留りが99.0%以上の範囲(表中において「○」および「△」で示す範囲)が比較例の蛍光ランプよりも広い。したがって、本実施の形態に係る蛍光ランプ1は、バルブ10およびフレア32に鉛を含有するガラスを用いていないにもかかわらず、鉛を含有するガラスを用いた従来の蛍光ランプよりも封止歩留りが良いと評価することができる。
【0050】
以上、本発明に係る蛍光ランプおよび照明装置を実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明の内容は、上記の実施の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、環状型蛍光ランプ、二重環状型蛍光ランプ、スクエア型蛍光ランプ、二重スクエア型蛍光ランプ、ツイン蛍光ランプ、直管型蛍光ランプなど蛍光ランプ全般およびそれら蛍光ランプを備えた照明装置に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る環状型蛍光ランプを示す一部破断平面図
【図2】バルブ封着前のステムを説明するための図であって、(a)はステムを構成する各部材を示す図、(b)はステムを示す断面図
【図3】本発明の一実施形態に係る照明装置を示す斜視図
【図4】蛍光ランプの製造方法を説明する図であって、(a)は蛍光体層形成工程を説明する図であり、(b)および(c)はそれぞれバルブ封止工程を説明する図であり、(d)はバルブ成形工程を説明する図
【図5】ドロップシール方式を説明する図
【図6】バットシール方式を説明する図
【図7】ガラスの作業温度範囲を示す図
【図8】フレア用のガラスの組成を示す図
【図9】本発明に係る蛍光ランプの封止工程における歩留りを示す図
【図10】比較例2の蛍光ランプの封止工程における歩留りを示す図
【符号の説明】
【0053】
1 蛍光ランプ
10 バルブ
11,12 端部
20,30 ステム
31 電極
32 フレア
37b 筒状部
40 口金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に鉛、ストロンチウムおよびバリウムを含有しない軟質ガラスからなるバルブと、
前記バルブの端部に封止され、実質的に鉛を含有しない軟質ガラスからなるフレアと当該フレアにマウントされた電極とを有するステムと
を備えることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記バルブの軟質ガラスは、軟化点が700℃以下であって、かつ、軟化点と作業点との温度差が350℃以上であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記バルブの軟質ガラスは、実質的に酸化物換算で、
SiO:60〜80wt%、
Al:0.5〜5wt%、
:0〜5wt%、
LiO:0〜7wt%、
NaO:3〜17wt%、
O:1〜12wt%、
MgO:0.5〜10wt%、
CaO:0.5〜10wt%、
ZnO:0〜10wt%、
ZrO:0〜5wt%、
Fe:0.01〜0.2wt%、
Sb:0〜1wt%、
CeO:0〜1wt%、
を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記フレアの軟質ガラスは、実質的に酸化物換算で、
SiO:60〜80wt%、
Al:0.5〜5wt%、
:0〜5wt%、
LiO:0.5〜7wt%、
NaO:3〜10wt%、
O:1〜12wt%、
MgO:0.5〜10wt%、
CaO:0.5〜10wt%、
SrO:0〜10wt%、
BaO:0〜12wt%、
ZnO:0〜10wt%、
ZrO:0〜5wt%、
Fe:0.01〜0.2wt%、
Sb:0〜1wt%、
CeO:0〜1wt%、
を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記フレアの軟質ガラスは、実質的にストロンチウムおよびバリウムを含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項6】
前記フレアの筒状部の肉厚をtmm、外径をAmmとしたとき、以下の関係、
0.55≦t≦0.95、かつ、20t−9≦A≦20t−3
を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項7】
以下の関係、
t≦0.9、かつ、20t−8≦A≦20t−4
を満たすことを特徴とする請求項6記載の蛍光ランプ。
【請求項8】
前記バルブの外径をBmmとしたとき、以下の関係、
0.25B≦A≦0.75B
を満たすことを特徴とする請求項6または7に記載の蛍光ランプ。
【請求項9】
前記フレアの軟質ガラスは、30〜380℃の膨張係数が90×10−7〜104×10−7/Kであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項10】
さらに口金を備え、前記口金が透明或いは透光性を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の蛍光ランプを備えることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−123821(P2008−123821A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305913(P2006−305913)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】