説明

蛍光ランプの製造方法及び蛍光ランプ及び電球形蛍光ランプ及び照明装置

【課題】蛍光体懸濁液の塗布量の不均一性を抑制することが可能な蛍光ランプの製造方法を提供する。
【解決手段】この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、螺旋旋回中心軸を略水平に設置し、少なくとも一方の旋回部終端が上を向く状態で、旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下になるように蛍光体懸濁液を注入する工程と、注入した蛍光体懸濁液が開口面から反対側に移動するようにガラス管を螺旋旋回中心軸を中心に回転させて、注入した蛍光体懸濁液を移動させながら塗布してゆく工程と、旋回部中心の先端まで蛍光体懸濁液が到達した後、ガラス管の回転の方向を反転させて回転させ、更に他の旋回部に蛍光体懸濁液を送る工程と、更にガラス管内全体に塗布が完了した後、回転を継続して余剰蛍光体懸濁液を流出させる工程と、乾燥工程とを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蛍光体塗布方法及び蛍光ランプ及び電球形蛍光ランプ及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、内壁に蛍光物質を塗布したガラス管と、ガラス管の両端に取り付けられた電極(フィラメント)とからなり、ガラス管内の空気を抜き真空にした後、少量の水銀とアルゴン等のガスが封入される。電極には、電子放射物質が塗布される。水銀は、紫外線を発生する。また、アルゴンガスは放電を開始しやすくする。さらに、電子放射物質は、熱電子を放出し放電を維持する。
【0003】
蛍光ランプは、電極間の放電で紫外線が発生し、ガラス管内に塗布した蛍光物質(蛍光体層)に紫外線が当たると可視光に変わる。
【0004】
ガラス管内面に形成されている蛍光物質(蛍光体層)は、蛍光体懸濁液として塗布された後、焼成されることで形成される。
【0005】
近年、電球形蛍光ランプは、一般白熱電球に相当する程度にまで小型化され、一般白熱電球用器具の光源を電球形蛍光ランプに置き換えるとういう需要が促進されている。
【0006】
この電球形蛍光ランプの一例として、発光管を螺旋状に屈曲させることにより放電路を長くして蛍光ランプを小形化したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、紫外線により蛍光体から励起した可視光を有効に利用して下方の輝度を向上させることができる発光管を提供することを目的として、以下に示す構成の電球形蛍光ランプが提案されている。即ち、この電球形蛍光ランプは、2重螺旋形状に湾曲成形されたガラス管内に蛍光膜が塗布された発光管を備えている。この発光管は、旋回軸A廻りを2重に旋回する旋回部と、この2つの旋回部を頂部で繋ぐ折り返し部とを有している。ガラス管の各横断面において、旋回軸Aと平行な方向であってガラス管の端部側の壁面に塗布された蛍光膜が、旋回軸Aと平行な方向であって折り返し部側の壁面に塗布された蛍光膜よりも厚くなっている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
このような2重螺旋状のガラス管への蛍光体塗布方法は、以下のように行われる。例えば、蛍光体懸濁液をガラス管の開口部から内部に注入し、内面に塗布する。次に、開口部が下になる姿勢にガラス管を保持して、蛍光体懸濁液を開口部から流出・滴下させる。最後に、ガラス管を乾燥させ蛍光体膜層を形成する。
【0009】
ガラス管内面における蛍光体懸濁液の塗布量は均一であることが望ましい。蛍光体層の膜厚が均一に形成されていないと、蛍光体層が薄い部分においては、ガラス管内部で発生した紫外線の可視光への変換効率が不十分となる。また、蛍光体層が厚い部分においては、形成された蛍光体層に光が阻まれてガラス管外部に放出しにくくなり、光にむらが生じることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−263972号公報
【特許文献2】特開2004−186147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記2重螺旋状のガラス管への蛍光体塗布方法では、ガラス管全体における塗布量が不均一になる傾向が見られる。即ち、折り返し部(開口部の反対側)に近づくにつれて塗布量が少なくなり、開口部に近づくにつれて塗布量が多くなる。
【0012】
また、旋回部の横断面における塗布量が不均一性になる傾向が見られる。即ち、旋回している旋回部の横断面における塗布量は、折り返し部側(開口部の反対側)が少なくなり、反対の開口部側が多くなる。
【0013】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、蛍光体懸濁液の塗布量の不均一性を制御することが可能な蛍光ランプの製造方法及び蛍光ランプ及び電球形蛍光ランプ及び照明装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、終端まで旋回が一様なフルスパイラル、もしくは旋回終端より旋回軸方向に旋回部分とは反対方向に延びる直線部を持つハーフスパイラルと呼ばれる二重螺旋形スパイラル状発光管用のガラス管の内面に蛍光体を塗布する蛍光ランプの製造方法であって、
螺旋旋回中心軸を略水平に設置し、少なくとも一方の旋回部終端が上を向く状態で、かつ旋回終端面が略水平となる状態で、上を向いた水平な旋回終端面から、この旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下になるように蛍光体懸濁液を注入する工程と、
注入した蛍光体懸濁液が開口面から反対側に移動するようにガラス管を螺旋旋回中心軸を中心に回転させて、注入した蛍光体懸濁液を移動させながら塗布してゆく工程と、
旋回部中心の先端まで蛍光体懸濁液が到達した後、ガラス管の回転の方向を反転させて回転させ、更に他の旋回部に蛍光体懸濁液を送る工程と、
更に前記ガラス管内全体に塗布が完了した後、回転を継続して余剰蛍光体懸濁液を流出させる工程と、
その後ガラス管端部の開口部より蛍光体懸濁液乾燥用温風を流入し乾燥させる乾燥工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させる回転を自転とすると、複数の自転軸を持つ一つの円盤状の公転面を持ち、かつ自転軸が公転面中心より放射状に設置され、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、公転面の一部を周回することにより塗布及び乾燥工程を終了することを特徴とする。
【0016】
この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させる回転を自転とすると、複数の自転軸を持つトラック状の公転面を持ち、かつ自転軸が公転面より外側に設置され、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、公転面の一部を周回することにより塗布及び乾燥工程を終了することを特徴とする。
【0017】
この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させ、複数の自転軸を持つ直線状の乾燥装置を持ち、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、乾燥装置を直線終了までに塗布及び乾燥工程を終了することを特徴とする。
【0018】
この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、二重螺旋形状のガラス管端部の開口部は、螺旋の延長であることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、二重螺旋形状のガラス管端部の前記開口部は、螺旋中心軸方向に螺旋から外れて屈曲していることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る蛍光ランプは、終端まで旋回が一様なフルスパイラル、もしくは旋回終端より旋回軸方向に旋回部分とは反対方向に延びる直線部を持つハーフスパイラルと呼ばれる二重螺旋形スパイラル状発光管用のガラス管を発光管として用いる蛍光ランプにおいて、
少なくとも両電極間を囲繞する発光管部の蛍光体層膜厚が、10μm以上かつ90μm以下であることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る蛍光ランプは、上記蛍光ランプの製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る電球形蛍光ランプは、上記蛍光ランプの製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る照明装置は、上記蛍光ランプもしくは上記電球形蛍光ランプを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係る蛍光ランプの製造方法は、蛍光体懸濁液の塗布量の不均一性を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1を示す図で、電球形蛍光ランプ1の外形図。
【図2】実施の形態1を示す図で、電球形蛍光ランプ1の内部を透視したランプ構造図。
【図3】実施の形態1を示す図で、二重螺旋形発光管2の正面図。
【図4】実施の形態1を示す図で、二重螺旋形発光管2のガラス管内面への蛍光体塗布方法を示す図。
【図5】実施の形態1を示す図で、旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下に蛍光体懸濁液13を注入した状態を示す側面図。
【図6】実施の形態1を示す図で、旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下に蛍光体懸濁液13を注入した状態を示す正面図。
【図7】実施の形態1を示す図で、蛍光ランプの蛍光体層膜厚と全光束との関係を示す図。
【図8】実施の形態1を示す図で、二重螺旋形発光管2の各段の蛍光体層膜厚を実施例と従来例とを比較した図。
【図9】理想の蛍光体層膜厚分布と従来塗布方法による蛍光体層膜厚分布を示す模式図。
【図10】実施の形態1を示す図で、JIS C 7620−2で規定された測定方法及び測定条件にて点灯した場合の2000時間点灯後の光束維持率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1.
図1、図2は実施の形態1を示す図で、図1は電球形蛍光ランプ1の外形図、図2は電球形蛍光ランプ1の内部を透視したランプ構造図である。
【0027】
図1の外形図に示すように、電球形蛍光ランプ1は、外管グローブ6と、口金5を有するカバー4とで、外郭(外囲器)が構成させる。
【0028】
また、図2に示すように、電球形蛍光ランプ1外囲器(外管グローブ6、カバー4)内に、二重螺旋形発光管2は、二重螺旋形発光管2を点灯させる高周波点灯回路3とが設けられる。二重螺旋形発光管2は、両端部にフィラメントからなる電極7を備えている。
【0029】
二重螺旋形発光管2を使用した電球形蛍光ランプ1は、U字形状のガラス管を複数本結合させた発光管よりも、一定空間内における発光管内の電極間距離を長くできる長所を有し、そして、さらに、発光管を構成するガラス管を細くし、旋回軸方向に隣合うガラス管の間隔を1mm程度に狭めることにより、発光管自身を延ばすことなく、旋回軸の廻りを旋回する旋回数を増やすことができる。これにより、発光管内の電極間距離を長くでき、白熱電球と同等の明るさが得られるという長所を有する。
【0030】
二重螺旋形発光管2を使用した電球形蛍光ランプ1は、例えば、一般電球60Wの代替となる電球形蛍光ランプEFA15/12品種である。
【0031】
二重螺旋形発光管2は、二重螺旋状に所定の高さを有する縦巻きで、一定の径を保って旋回された部分を有している。
【0032】
二重螺旋形発光管2は、終端まで旋回が一様なフルスパイラル、もしくは旋回終端より旋回軸方向に旋回部分とは反対方向に延びる直線部を持つハーフスパイラルと呼ばれる二重螺旋形のものとする。
【0033】
二重螺旋形発光管2の一方の端部から、二重螺旋形発光管2内部と排気を行うための排気管(図示せず)がある。
【0034】
排気管内には、水銀放出源(図示せず)が設けられる。水銀放出源は、液状水銀もしくは液状水銀同等の水銀蒸気圧を有する水銀合金、あるいは水銀蒸気圧が液状水銀と比べて低く調整された水銀合金で、通常水銀アマルガムと呼ばれるもので、これは、例えば、Inを主成分とするアマルガム形態、In−Bi−Hgや、その他、Pbを主成分とするアマルガム形態、Pb−Bi−Sn−Hgでもよい。
【0035】
高周波点灯回路3(電子安定器)の回路効率は90%以上である。
【0036】
図3は実施の形態1を示す図で、二重螺旋形発光管2の正面図である。二重螺旋形発光管2は、ガラス管2aと、フィラメントからなる電極7(図1参照)とを備える。
【0037】
ガラス管2aは、二重螺旋状の旋回部10を有する。旋回部10は、折り返し部8(頂部)を起点として、螺旋旋回中心軸Xの周りに一方の端部11まで旋回する第1の旋回部10aと、折り返し部8(頂部)を起点として、螺旋旋回中心軸Xの周りに他方の端部12まで旋回する第2の旋回部10bとからなる。
【0038】
ガラス管2aは、ソーダラムガラスの軟質ガラスである。ガラス管2a内には、水銀が約3.5mgと、緩衝用希ガスとしてアルゴンが常温時の圧力で約500Pa封入されている。
【0039】
ガラス管2aの内面には、紫外線を可視光へ変換する蛍光体を含む蛍光体層(図示せず)が形成されている。
【0040】
次に、ガラス管2aの蛍光体塗布方法について説明する。二重螺旋形発光管2は、以下の工程で製造される。
(1)直管状のガラス管を二重螺旋状に形成する工程;
(2)ガラス管内面に蛍光体を塗布し、蛍光体層を形成する工程;
(3)電極の封着、希ガス、水銀等の封入等の工程。
【0041】
図4は実施の形態1を示す図で、二重螺旋形発光管2のガラス管内面への蛍光体塗布方法を示す図である。以下、図4を参照しながら、ガラス管内面に蛍光体を塗布し、蛍光体層を形成する工程(蛍光体塗布方法)について説明する。
(a)注入工程:旋回中心軸Xを略水平に設置し、一方のガラス管2aの第1の旋回部10aの終端が上を向く状態で、かつ旋回終端面が略水平となる状態で、上を向いた水平な旋回終端面から、この旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下に蛍光体懸濁液13を注入する。
【0042】
図5、図6は実施の形態1を示す図で、図5は旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下に蛍光体懸濁液13を注入した状態を示す側面図、図6は旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下に蛍光体懸濁液13を注入した状態を示す正面図である。
【0043】
注入工程において、旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下に蛍光体懸濁液13を注入する理由(蛍光体懸濁液13の注入量を規定する理由)は、旋回部終端水平より多く注入すれば蛍光体懸濁液13は開口部14aよりガラス管2a外に溢れ、管内内周面未満とすれば蛍光体懸濁液13が管内内周面に接触しないため、螺旋状内側に塗り残しが発生するからである(図5、図6参照)。
【0044】
(b)塗布工程:注入した蛍光体懸濁液13が開口部14a側から反対側に移動するように、二重螺旋形状のガラス管2aを螺旋旋回中心軸Xを中心に回転させて、注入した蛍光体懸濁液13を移動させながら塗布していく。ガラス管2aの回転方向は、第1の旋回部10aの終端の位置が回転により上昇する方向である。
【0045】
(c)反転工程:旋回部中心の先端((折り返し部8(頂部))まで蛍光体懸濁液13が到達した後、二重螺旋形発光管2の回転の方向を反転させて回転し、更にもう一方の第2の旋回部10bに蛍光体懸濁液13を送る。
【0046】
(d)流出工程:更にガラス管2a内全体に蛍光体懸濁液13の塗布が完了した後、二重螺旋形発光管2の回転を継続して余剰な蛍光体懸濁液13を流出させる。
【0047】
(e)乾燥工程:その後、二重螺旋形状のガラス管2aの自転を停止させ、開口部14aと管内乾燥用インナーブロー送風ノズルとの相対位置関係を一定とし、熱風を開口部14よりガラス管2a内に送り込み蛍光体層を乾燥させる。
【0048】
尚、この蛍光体塗布方法は、生産ラインにおいては、以下に示す方法で実施される。即ち、二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させる回転を自転とすると、複数の自転軸を持つ一つの円盤状の公転面を持ち、かつ自転軸が公転面中心より放射状に設置され、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、公転面の一部を周回することにより塗布及び乾燥工程を終了する。
【0049】
また、別の方法として、二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させる回転を自転とすると、複数の自転軸を持つトラック状の公転面を持ち、かつ自転軸が公転面より外側に設置され、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、公転面の一部を周回することにより塗布及び乾燥工程を終了する方法もある。
【0050】
さらに、二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させ、複数の自転軸を持つ直線状の乾燥装置を持ち、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、乾燥装置を直線終了までに塗布及び乾燥工程を終了することを特徴とする。
【0051】
尚、二重螺旋形状のガラス管2a端部の開口部14aは、螺旋の延長であることを特徴とする。
【0052】
また、二重螺旋形状のガラス管2a端部の開口部14aは、螺旋旋回中心軸X方向に螺旋から外れて屈曲しているようにしてもよい。
【0053】
上述の蛍光体塗布方法は、電球形蛍光ランプ以外の蛍光ランプにも用いることができる。上述の蛍光体塗布方法により得られる蛍光体層は、膜厚が均一になり、ランプの光にむらが生じることがなくなる。
【0054】
図7は実施の形態1を示す図で、蛍光ランプの蛍光体層膜厚と全光束との関係を示す図である。蛍光ランプの発光効率を高くするためには、蛍光体層の膜厚を最適値にすることが重要である。この蛍光体層の膜厚の最適値は、蛍光体の粒径や粒度分布、混合する各蛍光体の属性に依存するが、概ね25μm程度である(図7参照)。
【0055】
図8は実施の形態1を示す図で、二重螺旋形発光管2の各段の塗布膜厚を実施例と従来例とを比較した図、図9は理想の蛍光体層膜厚分布と従来塗布方法による蛍光体層膜厚分布を示す模式図である。蛍光ランプの発光部分である両電極間の発光管内面の蛍光体層膜厚はいたるところで25μm程度にしたい(図9の理想の蛍光体層)。しかし、蛍光体懸濁液13で蛍光体を塗布乾燥して蛍光体層を形成する場合、乾燥前に蛍光体懸濁液13は重力で移動し、上が薄く下が厚くなり、現実的には多くの部分で最適値から外れている(図8参照)。従来は開口部14aを上として螺旋旋回中心軸Xを垂直とし蛍光体懸濁液13を注入し、反転させて余剰蛍光体懸濁液13を滴下排出させ、その姿勢で乾燥炉内で下方から温風を管内に流入し乾燥させていたため、図8、図9に示すような膜厚の分布になってしまっていた。従来塗布方法による蛍光体層膜厚分布は、即ち重力で落下する蛍光体懸濁液の影響で、上は薄く発光効率が悪く、下は樋に溜まるがごとく極めて蛍光体層は厚くなり、この部分はコストの高い蛍光体が多く分布しているにもかかわらず効率は低下している。
【0056】
蛍光ランプ発光効率に重要な役割を果たす両電極間の発光管部分の蛍光体層膜厚を、全光束が最適膜厚(25μm)の全光束の80%以上になるように制御することを目標とした。図7より、両電極間の発光管部分の蛍光体層膜厚を、10μm以上、かつ90μm以下にすれば良いことがわかる。
【0057】
管外径φ9mm、管内径7mmのソーダガラス管で、周回外径φ36mm、旋回数4.5回のフルスパイラル発光管で、電極間の放電長距離400mmの発光管を形成し、アルミナ保護膜を形成した後、従来同様の蛍光体懸濁液を用いて本実施の形態の製造方法で生産した発光管と(各部膜厚は、図7に示した通り、10〜90μmの範囲に収められた)と従来の垂直乾燥塗布方式で生産した発光管を、JIS C 7651に規定されたEFA15EL/12としてランプにし、比較検討した。その結果本塗布方式を用いた蛍光ランプは従来品に比べ、約5%の発光効率改善が実現できた(図8参照)。
【0058】
図10は実施の形態1を示す図で、JIS C 7620−2で規定された測定方法及び測定条件にて点灯した場合の2000時間点灯後の光束維持率を示す図である。更にこれらランプをJIS C 7620−2に従って寿命試験を行ったところ、予期せぬ効果として本実施の形態の電球形蛍光ランプ1(実施例)は、光束維持率も改善されたる事が判明した。これは再現性があり、本質的な効果であることが実験的に確かめられている。蛍光体層薄膜部におけるナトリウムの析出の影響が少なくなったことと、蛍光体層厚膜部における不純ガス吸蔵の影響が減少した事が考えられるが、明確には解析されていない。
【0059】
照明装置に上述の蛍光体塗布方法を用いる蛍光ランプもしくは電球形蛍光ランプを用いることにより、ランプの光にむらが生じることがない優れた照明装置が得られる。
【符号の説明】
【0060】
1 電球形蛍光ランプ、2 二重螺旋形発光管、2a ガラス管、3 高周波点灯回路、4 カバー、5 口金、6 外管グローブ、7 電極、8 折り返し部、10 旋回部、10a 第1の旋回部、10b 第2の旋回部、11 端部、12 端部、13 蛍光体懸濁液、14a 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
終端まで旋回が一様なフルスパイラル、もしくは旋回終端より旋回軸方向に旋回部分とは反対方向に延びる直線部を持つハーフスパイラルと呼ばれる二重螺旋形スパイラル状発光管用のガラス管の内面に蛍光体を塗布する蛍光ランプの製造方法であって、
螺旋旋回中心軸を略水平に設置し、少なくとも一方の旋回部終端が上を向く状態で、かつ旋回終端面が略水平となる状態で、前記上を向いた水平な旋回終端面から、この旋回終端面を起点とする1周回目の周回部において、液量が管内内周面以上かつ旋回部終端面以下になるように蛍光体懸濁液を注入する工程と、
注入した前記蛍光体懸濁液が開口面から反対側に移動するように前記ガラス管を前記螺旋旋回中心軸を中心に回転させて、前記注入した蛍光体懸濁液を移動させながら塗布してゆく工程と、
旋回部中心の先端まで前記蛍光体懸濁液が到達した後、前記ガラス管の回転の方向を反転させて回転させ、更に他の旋回部に前記蛍光体懸濁液を送る工程と、
更に前記ガラス管内全体に塗布が完了した後、前記回転を継続して余剰蛍光体懸濁液を流出させる工程と、
その後前記ガラス管端部の前記開口部より蛍光体懸濁液乾燥用温風を流入し乾燥させる乾燥工程と、
を含むことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させる回転を自転とすると、複数の前記自転軸を持つ一つの円盤状の公転面を持ち、かつ前記自転軸が前記公転面中心より放射状に設置され、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、前記公転面の一部を周回することにより塗布及び乾燥工程を終了することを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
前記二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させる回転を自転とすると、複数の前記自転軸を持つトラック状の公転面を持ち、かつ前記自転軸が前記公転面より外側に設置され、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、前記公転面の一部を周回することにより塗布及び乾燥工程を終了することを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項4】
前記二重螺旋形状ガラス管の中心軸を中心に回転させ、複数の前記自転軸を持つ直線状の乾燥装置を持ち、少なくとも各自転軸に設置された二重螺旋形状ガラス管は、前記乾燥装置を直線終了までに塗布及び乾燥工程を終了することを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
前記二重螺旋形状のガラス管端部の前記開口部は、螺旋の延長であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項6】
前記二重螺旋形状のガラス管端部の前記開口部は、螺旋中心軸方向に螺旋から外れて屈曲していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項7】
終端まで旋回が一様なフルスパイラル、もしくは旋回終端より旋回軸方向に旋回部分とは反対方向に延びる直線部を持つハーフスパイラルと呼ばれる二重螺旋形スパイラル状発光管用のガラス管を発光管として用いる蛍光ランプにおいて、
少なくとも両電極間を囲繞する発光管部の蛍光体層膜厚が、10μm以上かつ90μm以下であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法を用いて製造されることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法を用いて製造されることを特徴とする電球形蛍光ランプ。
【請求項10】
請求項8記載の蛍光ランプもしくは請求項9記載の電球形蛍光ランプを用いたことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119103(P2012−119103A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265904(P2010−265904)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】