説明

蛍光ランプ及びそれを用いた画像表示装置

【課題】従来の蛍光ランプ及びそれを用いた画像表示装置には、励起光の利用が不十分であり、発光効率が低いという課題があった。また、発光色のばらつきの低減という課題があった。これらを解決することにより、高輝度かつ高画質な画像表示装置を提供する。
【解決手段】 上記目的は、本発明である、蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、放電により1次光を発生させ、その1次光により蛍光膜を励起し2次光を得る構造を有する蛍光ランプにおいて、該蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、そのうち、蛍光膜の厚さ方向において、2次光を取り出す側の、少なくとも最表面層が、第1の発光色の蛍光体層であり、かつその部分以外が、複数の発光色の蛍光体を含む混合蛍光体層であることを特徴とする蛍光ランプ及びそれを光源とした画像表示装置により、解決することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示に好適な、高精細、長寿命、高輝度かつ色再現性が良い蛍光膜に関する。また、それを用いた液晶ディスプレイ等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本特許における画像表示装置とは、エネルギーを与えることにより蛍光体を励起し、発光させて画像情報を表示する装置のことである。これは、液晶などの非発光な表示部に、バックライトやサイドライトとして光源を備えた非自発光の画像表示装置も含める。また、前記液晶や光源を表示部として、駆動装置や画像処理回路等を組込み画像を表示させるシステム全体も画像表示装置に含める。
【0003】
以下、画像表示装置のうち、主に液晶表示装置を取り上げ説明する。液晶表示装置では、この光源5からの光をバックライトユニットにより液晶素子側へ導光し、液晶素子2において画素毎にその光の透過量を調整し、かつ画素毎に赤色、緑色、青色のいずれかの光を分光して透過することによりカラー表示を行う。
【0004】
一般に液晶表示装置の光源には、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)が用いられる。図5にCCFLの長軸方向での断面図を示した。CCFLはガラス管11の内壁に蛍光体12が塗布され、管両端に電極13を備えた構造である。また、管内には放電媒体14として水銀Hgと希ガス(アルゴンArやネオンNe)が封入されている。
【0005】
なお、この種のバックライト(光源と同義)に用いられるCCFLは、室内照明用の蛍光ランプとは異なり、非常に細長い特徴的な形状を有している。一般的に、室内照明用蛍光ランプは管径(管内径)30mm程度、管長1100mm程度である。これに対して、CCFLでは、例えば32インチ液晶表示装置の場合、管径(管内径)4mm程度、管長720mm程度である。CCFLでは、管径が非常に小さいことが特徴である。
【0006】
このようなCCFLでは、両端の電極13に高電圧を印加することにより点灯する。電圧印加により、電極から放出された電子が水銀Hgを励起し、励起された水銀Hgが基底状態に戻る際に紫外線を放射する。蛍光体はこの紫外線により励起され、可視光を管の外部へ放射する。
【0007】
CCFLに備えられた蛍光体12は、発光色が青色系(主発光ピーク波長が400nmから500nm程度)である青色蛍光体と、緑色系(主発光ピーク波長が500nmから600nm程度)である緑色蛍光体と、赤色系(主発光ピーク波長が600nmから650nm程度)である赤色蛍光体の粉末を所定の白色色度になるように混合して構成する。
【0008】
これら3色の蛍光体として一般には、青色蛍光体BaMgAl10O17:Eu2+、緑色蛍光体LaPO4:Tb3+,Ce3+、赤色蛍光体Y2O3:Eu3+が利用されることが多い。また、青色蛍光体として、(Ba,Ca,Mg,Sr)10(PO4)6Cl2:Eu2+(一般にSCA蛍光体と呼ばれる)、 緑色蛍光体として、BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+、赤色蛍光体としてYVO4:Eu3+が利用される場合もある。
【0009】
なお、蛍光体材料の通例表記として、「:」より前方は母体材料組成を、後方は発光中心を示し、母体材料の一部の原子を発光中心で置換していることを意味する。例えば、緑色蛍光体LaPO4:Tb3+,Ce3+ではLaPO4が母体材料であり、ランタンLaの一部を発光中心であるテルビウムTbで置換している。また、セリウムCeはTbの発光を増感させる増感剤として添加されている。このことから、LaPO4:Tb3+,Ce3+を(La,Tb,Ce)PO4と記述してもよい。
【0010】
CCFL(光源5)から放射された可視光は、図4に示すように、その直上に配置された拡散板6、プリズムシート7、偏光反射板8などの光学部材を透過してバックライトユニット1に対向する液晶素子2に入射する。また、CCFLからの光の利用効率を向上させるために、CCFLの直下には反射板4が配置され、反射板で反射した光も先述の光学部材を透過して液晶素子2へ入射する。
【0011】
一方、液晶素子2は図9に示す断面構造を有する。即ち、対向する一対のガラス基板21(21A、21B)と、その基板の内側表面上にそれぞれ配向膜23が塗布され、さらに基板間に液晶24と、カラーフィルタ25(赤色25A、緑色25B、青色25C)が挟持された構造である。
【0012】
ガラス基板21(21A−21B)間はスペーサ26により保持されている。偏光板22(22A、22B)は、一対の基板21(21A、21B)の外側にそれぞれ配置されている。液晶24は、配向膜23により一様な配向をしており、画素毎に形成された電極群(図9では示していない)に電圧を印加することにより駆動される。電圧が印加されると、液晶はそれによって生じる電界に応じて回転し、液晶層の屈折率が変化することで、光の透過量を調整する。
【0013】
また、カラーフィルタ25(25A、25B、25C)はバックライトユニット1からの白色光Wを画素毎に赤色光R、緑色光G、青色光Bに分光し、いずれかの光を透過する。液晶表示装置は、このように、バックライトユニットに備えられた光源からの光の透過量を液晶素子で画素毎に調整し、かつ画素毎に赤色、緑色、青色のいずれかの光を透過するカラーフィルタで分光することによりカラー表示を行う。
【0014】
上記白色光源に用いられる蛍光ランプの特性改善を目的とした、ランプに塗布された蛍光膜の構造に関する文献として、以下のものが挙げられる。しかし、この文献に示された例では、蛍光ランプの輝度を十分向上させることは出来ていない。
【0015】
【特許文献1】特開2002-56815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近年、液晶表示装置は、主に大型液晶テレビとしての市場拡大が進んでおり、更なる低コスト化と高画質化が要求されている。これら要求を解決するためには、光源であるCCFLの高輝度化と色度ばらつきの低減が課題である。
【0017】
特にCCFLの高輝度化は重要な課題であり、この課題を解決することにより、液晶表示装置の低コスト化を実現できる。例えば、同一輝度のバックライトユニットを設計する場合には、CCFLの本数を従来より削減することが可能となり、インバータ数も同時に削減できることを含めて考えれば、大きな低コスト化を実現できる。また、CCFLの高輝度化により、CCFLと液晶素子との間に介在する光学部材(例えば、輝度向上フィルムなど)を省くことが可能となり、液晶表示装置の低コスト化を実現できる。
【0018】
一方、CCFLの色度ばらつきは、液晶表示装置の画質に大きく影響する因子であり、その均一化は重要な課題である。液晶表示装置では、光源からの光の透過量を液晶素子により調整し、さらに分光することによって画像を表示するため、人間は液晶素子を通して光源を直視していることになる。従って、CCFLの色度特性が液晶表示装置の色調に直接影響する。
【0019】
したがって、本発明では、大型化の進む液晶表示装置の低コスト化と高画質化の両立を目的として、CCFLに代表される光源の輝度向上と、色度ばらつき低減を課題とし、以下で述べる手段によりこれらの課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明では、光源の高輝度化と、色度ばらつきという課題を解決し、高輝度かつ高画質の画像表示装置を提供することを目的として、以下の手段を用いる。
【0021】
上記目的は、蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、放電により1次光を発生させ、その1次光により蛍光膜を励起し2次光を得る構造を有する蛍光ランプにおいて、該蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、そのうち、蛍光膜の厚さ方向において、2次光を取り出す側の、少なくとも最表面層が、第1の発光色の蛍光体層であり、かつその部分以外が、複数の発光色の蛍光体を含む混合蛍光体であることを特徴とする蛍光ランプ、及びそれを用いた画像表示装置により解決することが出来る。
【0022】
また、本発明の他の構成として、蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、放電により1次光を発生させ、その1次光により蛍光膜を励起し2次光を得る構造を有する蛍光ランプにおいて、該蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、蛍光体全ての重量に対して、膜全体における第1の蛍光体の重量比をxとし、2次光を取り出す側の最表面層での第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲が0≦x<y≦1である蛍光膜を有することを特徴とする蛍光ランプ、及びそれを用いた画像表示装置により解決することが出来る。
【0023】
また、上記の本発明は、第1の発光色の蛍光体が、赤色、緑色、青色のうちいずれかの単色発光蛍光体とすることにより、効果を顕著とすることが出来る。
【0024】
また、上記の本発明は、第1の発光色の蛍光体の中位粒径d50が、3.0μm以下とすることにより、効果を顕著とすることが出来る。
【0025】
さらに、上記蛍光ランプにおいて、該蛍光膜がランプの内部表面を間隙なく覆っていることにより、効果を顕著とすることが出来る。
【0026】
さらに、上記蛍光ランプにおいて、前記蛍光ランプは、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び青色発光蛍光体を含む蛍光膜を有する冷陰極線構造の白色発光蛍光ランプとした場合、効果を顕著とすることが出来る。
【0027】
さらに、上記蛍光ランプに使用する蛍光体は、第1の蛍光体以外の蛍光体の中位粒径d50が、1.0μmから10.0μmの範囲とすることで、効果を顕著とすることが出来る。
【発明の効果】
【0028】
これらの手段が輝度向上及び色度ばらつき低減をもたらす原理を以下に記す。ランプ用蛍光膜の検討の結果、蛍光体を励起する紫外光は、全て利用されているわけではなく、蛍光膜を通過し利用されない紫外光が存在することがわかった。この紫外線の利用率を高めれば、蛍光ランプの輝度を向上させることが可能である。
【0029】
そこで、赤色、青色、緑色蛍光体単色による蛍光膜、及びこれらを混合した白色の蛍光膜について、紫外線利用率を検討した。その結果、単色蛍光膜は、粉体特性の調整により、紫外線利用率を高めることが可能であった。それに対し、混合した白色膜は、各蛍光体の粒径、粒子形状、比重などの粉体特性がそれぞれで異なることから、膜質を向上させにくく、紫外線利用率が単色膜より劣ることがわかった。
【0030】
この結果より、蛍光膜全体を、赤色、青色、緑色の混合膜とするよりも、単色膜の層を部分的に持つ構造とした方が、紫外線利用効率を高めることが出来る。すなわち、蛍光ランプの輝度を高めることが出来る。また、蛍光ランプは、細長い管内壁に蛍光膜を形成するため、完全な単色層を形成するのはコストアップにつながる場合がある。蛍光膜の形成しやすさを検討した結果、蛍光体が混合された状態でも、そのうち一種類の重量比率が高い層があれば、同様に紫外線利用効率を高められる事が出来た。また、これらの効果は、蛍光体の粒径や、膜形状が、前記した特定の要件を満たしたときに、顕著になることがわかった。
【0031】
また、三色を混合した膜は、膜形成の時に、各色の特性の違いから、単純計算して設定し混合した各色の比率と、発光する各色の比率が通常異なる。また、膜形成条件によって発光する各色の比率が異なってくる。一つの色を増減させると、他の2色にも影響を与えるため、色の調整が困難である。これらの要因が、蛍光ランプの色度ばらつきとなり、現在の膜構造では容易に低減することが出来ない。
【0032】
本発明では、一つの色を独立した層とするため、混合の場合と異なり、膜形成条件の影響を受けにくい。また、その色単独で増減が可能なため、色の調整が容易である。これらのことから、本発明の膜構造では、蛍光ランプの色度ばらつきが低減することがわかった。
【0033】
上記のような原理に基づくため、本発明の効果は、蛍光ランプの形状や励起方法に限定されず有効である。前述したCCFLランプは一例であり、例えば平面の形状を持つ蛍光ランプや、熱陰極管(HCFL)(Hot Cathode Fluorescent Lamp)や、Xe放電による紫外光を励起源として用いる蛍光ランプなどの場合でも有効である。
【0034】
また、本発明の効果は、蛍光体の種類に限定されず有効である。前述した蛍光体は一例であり、他の種類の蛍光体を用いた場合も有効である。なお、従来の蛍光管では、ガラス管の内面に蛍光体の保護層として発光しないYの微粒子をコーティングしていた。本発明のように、蛍光体の単層膜を用いることによってこのYの微粒子を省略できるというメリットを有する。逆に言えば、本発明にしたがって、単層の蛍光膜を形成しても、従来用いていた発光しないYを省略すれば、従来の蛍光管に比して製造コストを上昇させることなく輝度の向上、色度のバラつきを抑えることが出来る。
【0035】
本発明では以上の手段を用いることにより、光源の輝度向上と、色度ばらつきの低減を両立することができる。また、このような光源を用いることにより、画像表示装置において、高画質な画像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
本発明の構成の画像表示装置を以下の方法で作製し、その特性を評価した。本実施例における液晶表示装置は、図4に示すようにバックライトユニット1と液晶素子2とから構成される。さらに、バックライトユニット1は、白色光源5とそれを点灯するための駆動回路9(インバータ)、筐体3、反射板4、拡散板6、プリズムシート7、偏光反射板8から構成される。なお、上記バックライトユニットは例であり、上記全ての構成部品を含まなくてもよいし、他の構成部品を加えてもよい。要するにバックライトユニットは、画像を形成するために液晶素子2を照明するものを言う。
【0038】
本実施例では、白色光源として図5に示したCCFLを用いた。このとき、従来例として、赤色、緑色、青色を混合した蛍光膜を用いたCCFLを作製した。本発明の実施例1として、緑色蛍光体の蛍光膜を単色膜の層として独立させ、赤色、緑色、青色を混合した蛍光膜の層にさらに加えた構造のCCFLを作製した。以下、CCFLの作製と、このCCFLを用いたIPSモードの液晶表示装置の作製について述べる。
【0039】
CCFLの作製手順を以下に示す。まず、ビークルと呼ばれるニトロセルロースと酢酸ブチルから成る有機溶剤にアルミナなどの結着材、各色蛍光体材料を混合する。この混合液をサスペンジョンと称する。従来例作製のために、蛍光体として、青色蛍光体BaMgAl10O17:Eu2+、緑色蛍光体LaPO4:Tb3+,Ce3+、赤色蛍光体Y2O3:Eu3+を混合したサスペンジョンを用いた。また、本発明の実施例1作製のために、緑色蛍光体LaPO4:Tb3+,Ce3+のサスペンジョンを作製した。
【0040】
これら全ての蛍光体の粒径は、コールターメーターで測定した中位粒径d50が、1.0μmから10.0μmの範囲にあるものを用いた。次に、このサスペンジョンに、予め洗浄したガラス管の片側を浸し、もう一方の側よりポンプで吸入し、サスペンジョンを引き上げることによりガラス管内壁に蛍光体を塗布した。従来例では、三色混合のサスペンジョンを用いて1層の蛍光体層を形成した。実施例1として、緑色蛍光体のサスペンジョンによる層、及び三色混合の蛍光体層の2層を形成した。
【0041】
ガラス管の材質はコパールガラスであり、管径は3mmである。そして、ガラス管をベーキング(焼成)することにより、蛍光体を管内壁に固着させた。その後、電極を取り付け、ガラス管の片側を封止する。封止した側の逆側からアルゴンArやネオンNeなどの希ガスを注入し、排気することでガス圧を調整した。さらに水銀を注入後、ガラス管をシールした。最後に、このガラス管を一定時間点灯させてエージング処理を行った。
【0042】
次にバックライトユニットの組み立てを図4で説明する。上記完成した複数本のCCFL5を金属筐体3に配置した。液晶テレビのような高輝度を要求される液晶表示装置では、CCFL複数本を平面的に並べて配置する直下方式が採用される。
【0043】
金属筐体3とCCFL5との間には、CCFLから筐体側に出射した光を効率よく利用するための反射板4を配置した。また、液晶表示装置の輝度面内分布を抑えるために、CCFLの直上に拡散板6を配置した。さらに、液晶表示装置の輝度向上を目的として、プリズムシート7や偏光反射板8を配置した。CCFLにはインバータ9が接続され、CCFLの点灯制御はインバータの駆動によって行われた。なお、これらをまとめてバックライトユニット1と称する。
【0044】
バックライトユニット1の直上には、バックライト(白色光源CCFL)からの光の透過量を調整し、画素毎に赤色、緑色、青色に光を分光するカラーフィルタを有する液晶素子2を配置した。
【0045】
液晶素子の断面概略図は図9に示す通りである。基板21には、通常厚みが0.5mmのガラス基板を利用する。一方の基板21A上には、画素毎に電極(図9では図示されていない)を形成し、また、これら電極に電圧を供給する薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を形成した。他方の基板21Bには、画素毎にカラーフィルタ25(赤色25A、緑色25B、青色25C)を形成した。そして、これら一対の基板表面には液晶分子を配列させるための配向膜23を形成し、さらに基板間に液晶24を挟持した。また、基板の外側には偏光板22(22A、22B)を配置した。最後に、バックライトユニット1と液晶素子2とを組み合わせ、筐体10でカバーすることにより液晶表示装置を得た。
【0046】
本実施例1により、図1に示す本発明の膜構造を作製した。この場合、図1の単一蛍光体層は緑色蛍光体である。従来例と、実施例1との、白色輝度を測定し、従来例を100として相対輝度を示した結果を図2に示す。図2における白色の色温度は7000Kである。実施例1では、従来例より輝度が向上していることがわかる。
【0047】
また、これらの作製を複数行い、各液晶表示装置の赤色、緑色、青色、白色の色度値を測定した結果、実施例1の方が、従来例より、色のばらつきが少なかった。この色度値はCIEの(x、y)を測定することによって得ることが出来る。また、実施例1の蛍光膜は、切れ目無く蛍光ランプガラス管を覆っているものの方が、切れ目による隙間や孔などの間隙があるものよりも輝度が高かった。以上のように緑の単層膜を形成することによって紫外線の利用率、言い換えれば、紫外線の蛍光管外への透過率を下げることが出来る。
【0048】
これより、本発明により、CCFLの高輝度化と、色度ばらつきの低減とを両立することができることが示された。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【実施例2】
【0049】
実施例1と同様の方法で、実施例2を作製した。実施例2と、実施例1との相違は、青蛍光体BaMgAl10O17:Eu2+の単独のサスペンジョンを用いて、青色蛍光体のサスペンジョンによる層、及び三色混合の蛍光体層の2層を形成したことである。
【0050】
また、全ての蛍光体の粒径は、コールターメーターで測定した中位粒径d50が、1.0μmから10.0μmの範囲にあるものを用いた。本実施例2により、図1に示す本発明の膜構造を作製した。この場合、図1の単一蛍光体層は青色蛍光体である。
【0051】
従来例と、実施例2との、白色輝度を測定し、従来例を100として相対輝度を示した結果を図2に示す。実施例2では、従来例より輝度が向上していることがわかる。また、これらの作製を複数行い、各液晶表示装置の赤色、緑色、青色、白色の色度値を測定した結果、実施例2の方が、従来例より、色のばらつきが少なかった。
【0052】
また、実施例2の蛍光膜は、切れ目無く蛍光ランプガラス管を覆っているものの方が、切れ目による隙間や孔などの間隙があるものよりも輝度が高かった。
【0053】
これより、本発明により、CCFLの高輝度化と、色度ばらつきの低減とを両立することができることが示された。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【実施例3】
【0054】
実施例1と同様の方法で、実施例3を作製した。実施例3と、実施例1との相違は、赤色蛍光体Y2O3:Eu3+の単独のサスペンジョンを用いて、赤色蛍光体のサスペンジョンによる層、及び三色混合の蛍光体層の2層を形成したことである。
【0055】
このとき、赤色蛍光体単一の層においては、赤色蛍光体の粒径を、コールターメーターで測定した中位粒径d50が、0.05μm〜10μmの範囲で変化させ、その特性を比較した。また、混合層においては、赤色蛍光体を含む全ての蛍光体の粒径は、コールターメーターで測定した中位粒径d50が、1.0μmから10.0μmの範囲にある、一定の値の固定した粒径のものを用いた。
【0056】
本実施例3により、図1に示す本発明の膜構造を作製した。この場合、図1の単一蛍光体層は赤色蛍光体である。従来例と、実施例3との、白色輝度を測定し、従来例を100として相対輝度を示した結果を図3に示す。実施例3では、中位粒径d50が3.0μm以下のものにおいて、従来例より輝度が向上していることがわかる。
【0057】
また、これらの作製を複数行い、各液晶表示装置の赤色、緑色、青色、白色の色度値を測定した結果、実施例3の方が、従来例より、色のばらつきが少なかった。また、実施例3の蛍光膜は、切れ目無く蛍光ランプガラス管を覆っているものの方が、切れ目による隙間や孔などの間隙があるものよりも輝度が高かった。これより、本発明により、CCFLの高輝度化と、色度ばらつきの低減とを両立することができることが示された。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【0058】
本実施例では独立層としての赤蛍光体について粒径を3.0μm以下とすることによる効果を記載した。しかし、実施例1で用いた独立層としての緑蛍光体、実施例2で用いた独立層としての青蛍光体の粒径を3.0μm以下とすることによっても効果が得られることはもちろんである。ただし、緑または青の蛍光体を独立層として用いる場合は粒径を3.0μm以下としなくとも効果が得られるという特徴を有する。
【実施例4】
【0059】
本実施例4は、実施例1乃至3と比較して、光源の種類が異なる。実施例1乃至3ではCCFLを用いたが、本実施例では図6に示したHCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp、 熱陰極管)を用いた。HCFLに利用する蛍光体は、実施例1乃至3と同様である。
【0060】
HCFLは図6に示すように、CCFLに類似した構造であり、金属電極部13がフィラメント電極である点で大きく異なる。HCFLの両電極間に電圧を印加するとフィラメントから熱電子が放出され、この熱電子により水銀が励起され紫外線を放射する。
【0061】
従来例の蛍光膜を用いたHCFLと、実施例4との、白色輝度を測定した結果、実施例1乃至3と同様に、従来例より輝度が向上していることがわかった。また、これらの作製を複数行い、各液晶表示装置の赤色、緑色、青色、白色の色度値を測定した結果、実施例4の方が、従来例より、色のばらつきが少なかった。また、実施例4の蛍光膜は、切れ目無く蛍光ランプガラス管を覆っているものの方が、切れ目による隙間や孔などの間隙があるものよりも輝度が高かった。
【0062】
これより、本発明により、HCFLにおいても、高輝度化と、色度ばらつきの低減とを両立することができることが示された。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【実施例5】
【0063】
本実施例5は、実施例1乃至3と比較して、光源の種類が異なる。実施例1乃至3ではCCFLを用いたが、本実施例では図7に示したEEFL(External Electrode Fluorescent Lamp、 外部電極管)を用いた。EEFLに利用する蛍光体は、実施例1乃至3と同様である。
【0064】
EEFLの作製は、CCFLと比較して、電極部の形成が異なる。EEFLでは、ガラス管に蛍光体を塗布後、ガラス管の一方を封じ、排気した後、放電媒体である水銀を導入し、ガラス管の他方を封じる。その後、例えば銅テープのようなフレキシブルな電極をガラス管の外部に配置する。
【0065】
このようなEEFLではガラス管自体がコンデンサーの役割を果たすためにバラストコンデンサが不要となり、一つのインバータ9により複数本のランプ5を点灯する多点灯駆動が可能である。このことは、CCFLに比べインバータ数を大きく削減できることから低コスト化が期待できる。
【0066】
従来例の蛍光膜を用いたEEFLと、実施例5との、白色輝度を測定した結果、実施例1乃至3と同様に、従来例より輝度が向上していることがわかった。また、これらの作製を複数行い、各液晶表示装置の赤色、緑色、青色、白色の色度値を測定した結果、実施例5の方が、従来例より、色のばらつきが少なかった。また、実施例5の蛍光膜は、切れ目無く蛍光ランプガラス管を覆っているものの方が、切れ目による隙間や孔などの間隙があるものよりも輝度が高かった。
【0067】
これより、本発明により、EEFLにおいても、高輝度化と、色度ばらつきの低減とを両立することができることが示された。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【実施例6】
【0068】
本実施例6は、実施例1乃至3と比較して、光源の種類が異なる。実施例1乃至3ではCCFLを用いたが、本実施例では図8に示した平面光源を用いた。EEFLに利用する蛍光体は、実施例1乃至3と同様である。
【0069】
平面光源は、図8に示すように、蛍光体12を備えた密閉容器15(背面ガラス15A、前面ガラス15B)と、その背面ガラス上に配置された電極13(
13A、13B)から構成される構造を有する。蛍光体の単色膜は前面ガラス15B側に形成した。さらに電極上には、誘電体16が配置される。そして、この密閉容器内に放電媒体14が封入されている。放電媒体は、平面光源の種類によって異なるが、Xeガスを利用している光源や、水銀を利用している光源もある。
【0070】
従来例の蛍光膜を用いた平面光源と、実施例6との、白色輝度を測定した結果、実施例1乃至3と同様に、従来例より輝度が向上していることがわかった。また、これらの作製を複数行い、各液晶表示装置の赤色、緑色、青色、白色の色度値を測定した結果、実施例6の方が、従来例より、色のばらつきが少なかった。また、実施例6の蛍光膜は、切れ目無く前面ガラスを覆っているものの方が、切れ目による隙間や孔などの間隙があるものよりも輝度が高かった。
【0071】
これより、本発明により、平面光源においても、高輝度化と、色度ばらつきの低減とを両立することができることが示された。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の蛍光体層の構造を示す図である。
【図2】本発明と従来例との輝度特性を比較する図である。
【図3】緑色蛍光体相対輝度の特性を示す図である。
【図4】液晶表示装置の分解斜視図を示す図である。
【図5】冷陰極管(CCFL)の断面構造の概略を示す図である。
【図6】熱陰極管(HCFL)の断面構造の概略を示す図である。
【図7】外部電極管(EEFL)の断面構造の概略を示す図である。
【図8】平面型光源の概略的な断面を示す図である。
【図9】液晶素子の断面構造の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1…バックライトユニット、
2…液晶素子、
3…筐体(下)、
4…反射板、
5…光源(例えばCCFL)、
6…拡散板、
7…プリズムシート、
8…偏光反射板、
9…インバータ、
10…筐体(上)、
11…ガラス管、
12…蛍光体、
13…電極、
14…放電媒体、
15…密閉容器(15A、15B)、
16…隔壁、
21、31…ガラス基板、
22、32…偏光板、
23、33…配向膜、
24、34…液晶、
25(25A、25B、25C)…カラーフィルタ(赤色、緑色、青色)、
26…スペーサ、
27、37…画素電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、放電により1次光を発生させ、その1次光により蛍光膜を励起し2次光を得る構造を有する蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、そのうち、前記蛍光膜の厚さ方向において、2次光を取り出す側の、少なくとも最表面層が、第1の蛍光体による蛍光体層であり、かつその部分以外が、複数の蛍光体を含む混合蛍光体であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、放電により1次光を発生させ、その1次光により蛍光膜を励起し2次光を得る構造を有する蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、前記蛍光体全ての重量に対して、膜全体における第1の蛍光体の重量比をxとし、2次光を取り出す側の最表面層での前記第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲が0≦x<y≦1である蛍光膜を有することを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項3】
前記第1の蛍光体が、赤色、緑色、青色のうちのいずれかの単色発光蛍光体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記第1の蛍光体が緑色、青色のうちのいずれかの単色発光蛍光体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記第1の蛍光体は、中位粒径d50が、3.0μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項6】
前記第1の蛍光体の中位粒径d50は前記蛍光膜における前記第1の蛍光体以外の蛍光体の中位粒径d50よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
【請求項7】
前記蛍光膜は前記蛍光ランプの内部表面を間隙なく覆っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項8】
前記蛍光ランプは冷陰極蛍光ランプであることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
【請求項9】
前記蛍光ランプは熱陰極蛍光ランプであることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
【請求項10】
前記蛍光ランプはガラス管で形成され、前記第1の蛍光管は前記ガラス管の内壁に接することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項11】
前記第1の蛍光体によって形成される蛍光膜の紫外線透過率は、前記少なくとも2種の蛍光体で構成される蛍光膜の紫外線透過率よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項12】
液晶素子と光源に蛍光ランプを使用するバックライトユニットを含む液晶表示装置であって、
前記蛍光ランプは蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、放電により1次光を発生させ、その1次光により蛍光膜を励起し2次光を得る構造を有する蛍光ランプであって、前記蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、そのうち、前記蛍光膜の厚さ方向において、2次光を取り出す側の、少なくとも最表面層が、第1の蛍光体による蛍光体層であり、かつその部分以外が、複数の蛍光体を含む混合蛍光体である蛍光ランプであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
液晶素子と光源に蛍光ランプを使用するバックライトユニットを含む液晶表示装置であって、
前記蛍光ランプは蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、放電により1次光を発生させ、その1次光により蛍光膜を励起し2次光を得る構造を有する蛍光ランプであって、前記蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、前記蛍光体全ての重量に対して、膜全体における第1の蛍光体の重量比をxとし、2次光を取り出す側の最表面層での前記第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲が0≦x<y≦1である蛍光膜を有する蛍光ランプであることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−226492(P2008−226492A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58911(P2007−58911)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(503273790)株式会社日立ディスプレイデバイシズ (97)
【Fターム(参考)】