説明

蛍光ランプ

【課題】簡易かつ低コストで、リード線同士の接触による外観劣化を防止することが可能な蛍光ランプ点灯装置を提供する。
【解決手段】フィラメント電極14a、14bを有する発光管14と、スイッチング素子であるFET5、6を介して一次巻線111に供給される電流を、磁気結合された予熱二次巻線122、123を介してフィラメント電極14a、14bに流してフィラメント電極14a、14bを予熱するチョークコイル11とを備える蛍光ランプ100であって、一次巻線111と予熱二次巻線122、一次巻線111と123とは、それぞれ至近距離内に配され、予熱二次巻線は、線径が0.14mm以下の巻線である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電球型蛍光ランプに関し、特に予熱点灯式の電球型蛍光ランプにおける、リード線接触時の回路遮断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電球型蛍光ランプ(以下、「蛍光ランプ」という。)としては、インバータ方式のものが、主流を占めている。インバータ方式は、交流電源より供給される交流電力を直流電力に一旦変換した後、30〜100キロヘルツの高周波電力に変換して発光管に電力を供給し、発光管を点灯させる方式であり、従来の磁気回路方式のものに比べ、発光効率が高く、点灯回路を軽量化できるというメリットがある。
【0003】
インバータ方式では、蛍光ランプの始動時に、予熱回路で発光管の電極が加熱され、それと同時に発光管の電極間には、共振による大きな振幅をもつ電圧が印加され、当該電圧が発光管の始動電圧より高くなると、発光管内で放電が開始され、発光管が点灯される(特許文献1)。
一方、蛍光ランプにおいては、発光管の各電極から導出され、各電極と予熱回路とを接続するリード線同士が接触しやすい位置に配されている場合がある。
【0004】
このような場合に、リード線同士が万一接触すると、予熱回路において、接触したリード線が発熱体となり、その熱によって、ケース等が変色したり、変形したりして外観が損なわれることがある。
特に、特許文献2に記載されているように、スパイラル状発光管を有する蛍光ランプの場合には、各リード線を予熱回路と接続するための、回路基板上の連結ピンは、近接して配されているため、スパイラル状発光管の両端部から導出される各一対のリード線を、それぞれ対応する連結ピンに接続する際に、リード線同士が接触しやすい。
【0005】
このため、蛍光ランプにおいては、リード線同士の接触に対する種々の防護措置が施されている。
例えば、リード線をシリコーンやガラスなどの絶縁材料で被覆することが行われている。
これにより、リード線が絶縁材料で絶縁されるので、リード線が発熱体とならないようにすることができる。
【0006】
又、蛍光ランプによっては、予熱回路に、負温度特性抵抗素子(NTC)を挿入することが行われている。
これにより、リード線同士の接触により、リード線が発熱体となったとしても、NTCによって、予熱回路の電気抵抗が温度上昇とともに、低減され、リード線が過熱されるのを防ぐことができる。
【0007】
又、特許文献2では、回路基板上の各連結ピンが近接しないように配置することにより、リード線同士が接触するのを防止している。
【特許文献1】特開平10−79298号公報
【特許文献2】特願2003−580767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リード線同士の接触による外観劣化を防止するために、リード線を絶縁材料で被覆したり、NTCを予熱回路に挿入したりすると、余分に部品コストがかかり、製造工程数も増えてしまうという問題が生じる。
又、特許文献2のように、連結ピンを対向配置させるだけでは、対になっているリード線同士の接触を防止できないという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、簡易かつ低コストで、リード線同士の接触による外観劣化を防止することが可能な蛍光ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成する為、本発明は、フィラメント電極を有する発光管と、一次巻線と当該一次巻線に磁気結合された二次巻線とを含み、スイッチング素子を介して前記一次巻線に供給される電流を、前記二次巻線を介して前記フィラメント電極に流して前記フィラメント電極を予熱する予熱コイルユニットとを備える蛍光ランプであって、前記予熱コイルユニットにおいて、前記一次巻線と前記二次巻線とは、至近距離内に配され、前記二次巻線は、線径が0.14mm以下の巻線であることを特徴とする。
【0011】
前記予熱コイルユニットにおいて、前記一次巻線と前記二次巻線は、隣接して共通のコアに巻回されていることとすることができる。
前記二次巻線は、少なくとも100mmの長さを有することとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る上記構成の蛍光ランプにおいては、二次巻線の線径が細く(0.14mm以下)されており、フィラメント電極に接続されたリード線同士が接触した場合に、二次巻線による発熱量が大きくなるので、二次巻線から至近距離の範囲内にある一次巻線111が、熱によりレアショートされるまでの時間を発熱量が増加した分だけ短くすることができる。
【0013】
その結果、リード線同士の接触後、短時間で大電流が生じ、それがスイッチング素子に流れてスイッチング素子を破壊し、予熱動作を停止させることができるので、蛍光ランプの外観が、接触により発熱体となったリード線によって長時間加熱されて変色したり、変形したりすることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態)
<構成>
図1は、本実施の形態における蛍光ランプ100の一部切り欠き正面図(図1(a))及び底面図(図1(b))である。図2は、蛍光ランプ100の展開図である。図1、図2に示す蛍光ランプ100は、100Wタイプの白熱電球代替用の22W品種の電球型蛍光ランプである。
【0015】
蛍光ランプ100は、放電路がスパイラル状に湾曲した発光管14と、発光管14を保持するホルダー25と、発光管14を点灯させる回路部品を回路基板上に配置した点灯回路ユニット50と、口金40に取り付けられ、ホルダー25を固定し、点灯回路ユニット50を収納する樹脂ケース30とから構成される。
(発光管14)
軟質ガラスから構成されるガラス管(例えば、外形φ:9.0mm)を略中央部で折り返し、両端部を封止して形成される。
【0016】
発光管14は、管内面に蛍光体を塗布したガラス管を屈曲させて構成されており、略中央部以外の部分が互いに同方向に重なり合うように螺旋状に屈曲させた二重螺旋構造となっており、ガラス管の両端部が螺旋方向に沿って屈曲されている。
又、ガラス管内には、不活性ガス(例えば、100%アルゴンガス)が500Paで充填され、ガラス管内の両端部には、フィラメントコイルからなるフィラメント電極(不図示)がそれぞれ設けられ、両端部からは、それぞれ、フィラメント電極を保持する一対のリード線101、102(ここでは、リード線として、Fe,Ni,Crの合金(合金組成:Fe52Ni42Cr6、外形φ:0.4mm)が用いられている。)が導出されている。
【0017】
導出されている各リード線は、ガラス管を溶融することにより、ガラス管に封止固定されている。
この各一対のリード線が、蛍光ランプ100の組み立て工程等において、接触された状態になる場合がある。
又、両電極間の放電路長は、約700mmに設定されている。
(ホルダー25)
LCP(液晶ポリマー)などの樹脂材から構成されており、図2に示すように、皿上の形状をなし、底面26と、その縁端部に壁状に設けられた外周壁27とからなる。
【0018】
底面26には、発光管14の両端部の近傍領域の形状とそれぞれ係合する挿入孔(図2の25a、25b)が穿設されている。
発光管14の両端部の近傍領域は、各挿入孔に挿入された後、挿入孔に生ずる隙間にシリコーン樹脂が充填され、ホルダー25に固定される。
又、外周壁27には、図2に示すように、後述する回路基板51に設けられた突起52と係合する孔221が4箇所に穿設され、後述する樹脂ケース30に設けられた係合用の孔32(図2では、図面描写上の制約により1箇所のみ示されているが、実際には2箇所ある。)と係合する突起222が2箇所、凸設されている
(樹脂ケース30)
PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂材から構成され、図2に示すように漏斗状の形状をなし、樹脂ケース30の上部には、口金40が装着され、内周面31には、ホルダー25の各突起222と係合する孔32が穿設されている。
【0019】
ホルダー25を樹脂ケース30の開口部側から挿入して、ホルダー25の突起222を孔32と嵌合させることにより、ホルダー25は、樹脂ケース30に固定される。
(点灯回路ユニット50)
所定のパターンの配線が形成された回路基板51に、キャパシタ、トランジスタ、チョークコイルなどの複数の部品が実装されて構成されている。
【0020】
回路基板51は、縁端部の4箇所に、ホルダー25の各孔221と係合する突起52が立設され、縁端部の他の2箇所に、発光管14の両端部から導出される各1対のリード線を係止するための、切り欠き部53を有する。
さらに、各切り欠き部53の周縁には、リード線と接続するための1対の連結ピン54a、54bが立設されている。
【0021】
連結ピン54a、54bは、導電性材料で構成され、発光管14から導出された各リード線は、各連結ピンに別々に巻き付けられることにより、回路基板51に形成された配線と電気的に接続される。
(点灯回路の構成)
図3は、発光管14が1対のリード線101、102を介して、点灯回路ユニット50と電気的に接続されることにより、形成される蛍光ランプ100の点灯回路の回路構成を示す図である。
【0022】
符号1は、交流電源を示す。交流電源1としては、例えば家庭用のコンセントから供給される電源を用いることができ、実効値100Vの交流電圧を整流回路3に出力する。
符号2で示すキャパシタは、符号19で示すインダクタとフィルタ回路を構成し、交流電源1のノイズを遮断する。
符号3は、整流回路を示し、交流電源1より出力される交流電力を直流電力に変換する。整流回路3には、符号22で示す負温度特性抵抗素子(NTC)が接続されている。
【0023】
符号4は、平滑キャパシタを示し、直流電流を受取り、電荷を蓄積し、リブル電流を減少させる。
符号5、6は、スイッチング素子、すなわち、Nチャンネル形FET(電界効果トランジスタ)(以下、「FET5」という。)、Pチャンネル形FET(以下、「FET6」という。)をそれぞれ示し、それぞれのスイッチが交互にオン状態になることにより、符号11で示すチョークコイルに電流が流れ、符号14で示す発光管14の両電極14a、14bが予熱され、チョークコイル11と共振回路を構成する、符号12で示すキャパシタの両端電圧が上昇し、発光管14の始動電圧よりも高くなった時点で、発光管14において絶縁破壊を生じ、放電が開始され、発光管14の負性抵抗により、点灯回路からの供給電流が制限され、放電が維持される。
【0024】
FET5のゲート、ソース間には、逆極性に接続された、符号20で示すツェナダイオードと符号21で示すツェナダイオードとの直列回路 が接続されている。
又、FET6のドレイン、ソース間には、符号9で示す抵抗と、符号23で示すキャパシタが並列に接続されている。
図5は、チョークコイル11の巻線構造を示す。図5の符号60は、コア(例えば、フェライトコア)を示し、図5の符号111は、図3の回路構成において、同符号で示す一次巻線を示し、図5の符号112は、図3の回路構成において、同符号で示す昇圧巻線を示し、図5の符号121は、図3の回路構成において、同符号で示す二次巻線を示し、図5の符号122は、図3の回路構成において同符号で示す予熱二次巻線を示し、図5の符号123は、図3の回路構成において同符号で示す予熱二次巻線を示し、図5の61は、絶縁テープを示す。
【0025】
予熱二次巻線122、一次巻線111、昇圧巻線112、予熱二次巻線123、絶縁テープ61、二次巻線121は、この順番にコア60に同方向に巻きつけられ、各巻線の巻きはじめ部と巻き終わり部は、接続端子(不図示)と接続されて、接続端子を介して点灯回路に接続される。
ここでの各巻線のターン数は、予熱二次巻線122が4ターン、一次巻線111が105.5ターン、昇圧巻線112が30.5、予熱二次巻線123が4ターン、二次巻線が4.5ターンである。
【0026】
各巻線の材質としては、例えば銅を用いることができ、各巻線の表面は絶縁被膜(例えば、ポリエステルーナイロン被膜、ポリウレタン被膜、ポリエステル被膜、ポリエステルイミド被膜など)で被覆されている。
各巻線の線径は、予熱二次巻線122、123が0.03〜0.14mm、一次巻線111が0.12mm、昇圧巻線112が0.2mm、二次巻線121が0.2mmである。
【0027】
後述するリード線接触時における回路停止動作において、一次巻線111、昇圧巻線112を迅速にレアショートさせることにより、短時間で点灯回路を停止させ、蛍光ランプに外観異常が現出されるのを防止するには、予熱二次巻線の線径は、0.14mm以下であればよく、0.03mmより小さくてもよいが、巻線を取り扱う上で必要な強度を維持するためには、少なくとも0.03mm以上の線径が必要である。
【0028】
又、一次巻線111の線径については、上記の場合に、限定されず、0.12mmより大きくてもよいし、小さくてもよい。昇圧巻線112、二次巻線121の線径についても同様である。
又、上記防止効果を得るための予熱二次巻線の長さは、後述する実施例の結果より、概ね100mm以上であればよい。
【0029】
FET5、FET6が交互にオン状態になることにより、チョークコイル11に電流が流れると、一次巻線111に電流が流れ、一次巻線111と電磁結合された昇圧巻線112の両端に電圧が誘起され、発光ランプ14に対し、キャパシタ12の両端電圧に加えて、昇圧巻線112の電圧が印加される。
これにより、本実施の形態の蛍光ランプのように高い電圧を必要とする蛍光ランプに対し、点灯維持に必要な電力を供給することができる。
【0030】
又、一次巻線111に電流が流れると、一次巻線111と磁気結合された予熱二次巻線122、123の各両端に電圧が誘起され、この電圧によって、発光管14の各フィラメント電極14a及び14bに電流が流れ、両フィラメント電極が予熱される。
符号7、8、18、24は、抵抗を示す。
抵抗18は、交流電源1から大電流が点灯回路に流れるのを防止するための抵抗であり、抵抗24は、蛍光ランプのリーク、蛍光ランプ内への不純ガスの混入、蛍光ランプの延命末期などに、蛍光ランプ内の電圧が上昇し、点灯回路に大電流が流れた場合に、スイッチング素子が破壊されるのを防止するために、図3に示すようにFET5と直列に接続されている。
【0031】
符号17は、結合キャパシタを示し、流れ込む電流から直流成分をカットする。
次に、点灯回路による予熱動作について説明する。
(予熱動作)
変換された直流電力が、抵抗7、8、9に同時に供給されると、各抵抗の抵抗値に応じた電圧が、各抵抗の両端に生じ、抵抗8の両端に生じた電圧によって、Nチャンネル形FET5(以下、「FET5」という。)のスイッチがオンになり、符合10で示すトリガキャパシタに電荷が蓄積される。
【0032】
トリガキャパシタ10の両端の電圧が、FET5のスレッシュホールド電圧に達すると、トリガキャパシタ10に蓄積された電荷が、FET5のゲートに供給され、FET5のスイッチがオンになる。
FET5のスイッチがオンになると、電流が、平滑キャパシタ4の陽極側から、FET5、チョークコイル11の一次巻線111を通って、チョークコイル11と共振回路を構成するキャパシタ12、及び符号13で示す正温度特性抵抗素子(PTC)を流れる。
【0033】
又、一次巻線111に電流が流れると、一次巻線111と磁気結合しているチョークコイル11の二次巻線121、予熱二次巻線122、123の各両端に、それぞれ電圧が誘起され、FET5のゲートとソース間の電圧が高くなり、FET5のスイッチは、オン状態を保つとともに、予熱二次巻線122、123から発光管14のフィラメント電極14a、14bに電流が流れ、各フィラメント電極が予熱される。
【0034】
その後、二次巻線121を流れる電流は、二次巻線121に接続されている、符号15で示すインダクタ及びインダクタ15と共振回路を構成する、符号16で示すキャパシタの共振によって、極性が逆になって、逆方向に流れ始め、FET5のゲートとソース間の電圧がスレシュホールド電圧より小さくなり、FET5のスイッチがオフとなる。
一方、二次巻線121を流れる電流が逆方向に流れることにより、FET6のゲートとソース間の電圧は、大きくなり、FET6のスイッチがオンとなる。
【0035】
FET6のスイッチがオンになると、キャパシタ12に蓄積された電荷が、一次巻線111、FET6に供給されて電流が流れ、この電流は、キャパシタ12と一次巻線111とで構成される直列共振回路によって共振するとともに、一次巻線111と磁気結合しているニ次巻線121、予熱二次巻線122、123の各両端に、電圧が誘起され、FET6のゲートとソース間の電圧が高くなり、FET6のスイッチは、オン状態を保つとともに、予熱二次巻線122、123から発光管14のフィラメント電極14a、14bに電流が流れ、各フィラメント電極が予熱される。
【0036】
その後、二次巻線121を流れる電流は、二次巻線121に接続されている、インダクタ15及びインダクタ15と共振回路を構成する、キャパシタ16の共振によって、極性が逆になって、逆方向に流れ始め、FET6のゲートとソース間の電圧がスレシュホールド電圧より小さくなり、FET6のスイッチがオフとなる。
一方、二次巻線121を流れる電流が逆方向に流れることにより、FET5のゲートとソース間の電圧は、大きくなり、FET5のスイッチがオンとなる。
【0037】
このように、FET5、6のスイッチが交互にオンされることにより、一次巻線111に連続的に電流が流れ、予熱二次巻線122、123の各両端に電圧が誘起され、予熱二次巻線122、123から発光管14のフィラメント電極14a、14bに電流が連続的に流れ、各フィラメント電極が予熱される。
(回路停止動作)
次に、1対のリード線101、102において、対になっているリード線同士が接触した状態になっている場合における点灯回路の停止動作について説明する。
【0038】
1対のリード線101において、対になっているリード線同士が接触状態になると、フィラメント電極14aに電流が流れなくなるため、非接触時に比べ、予熱回路の抵抗値が小さくなり、接触状態のリード線対101、予熱二次巻線122に流れる電流量が大きくなり、リード線対101及び予熱二次巻線122における発熱量が、非接触時に比べ、大きくなる。
【0039】
予熱二次巻線122における発熱量が大きくなると、図5に示すように、予熱二次巻線122に隣接している一次巻線111が加熱され、さらに一次巻線111に隣接している昇圧巻線112が、加熱された一次巻線111によって連鎖的に加熱され、やがて一次巻線111、昇圧巻線112の表面の絶縁被膜が溶けて、一次巻線111、昇圧巻線112がレアショートし、一次巻線111、昇圧巻線112のインダクタンスが下がり、インピダンスが小さくなり、一次巻線111及び昇圧巻線112と直列に接続されているスイッチング素子に大電流が流れて、スイッチング素子が破壊され、点灯回路が停止する。
【0040】
同様に、もう一方のリード線対102のリード線同士が接触状態になった場合においても、図5に示すように、予熱二次巻線123に隣接している昇圧巻線112が加熱され、さらに、加熱された昇圧巻線112に隣接している一次巻線111が連鎖的に加熱され、やがて昇圧巻線112及び一次巻線111の表面の絶縁被膜が溶けて、昇圧巻線112及び一次巻線がレアショートし、昇圧巻線112及び一次巻線111と直列に接続されているスイッチング素子に大電流が流れて、スイッチング素子が破壊され、点灯回路が停止する。
【0041】
図6は、図5の62で示す、予熱二次巻線122と一次巻線111とが隣接する部分における、各巻線の表面の状態を示すイメージ図である。図6の左側の図は、リード線同士が非接触の状態にある場合の予熱二次巻線122及び一次巻線111の表面の状態を示している。符号70は、各巻線の導電性部材(例えば、銅線)を示し、符号71は、導電性部材を被覆している絶縁被膜を示している。
【0042】
図6の右側の図は、リード線同士が接触状態にある場合の予熱二次巻線122及び一次巻線111の表面の状態を示している。右側の図では、予熱二次巻線122が、リード線同士の接触により、過剰に発熱し、その熱により、各巻線の導電性部材を被覆していた絶縁被膜が溶けて、予熱二次巻線122及び一次巻線111がそれぞれ短絡している状態になっていることを示す。
【0043】
ここで、一次巻線111及び昇圧巻線112がレアショートするまでに時間がかかると、点灯回路が停止されず、その間、接触状態のリード線対101が発熱し続け、その熱が、ホルダー25やケース50に伝導され続けることになるが、本発明においては、予熱二次巻線122、123の線径を細く(0.14mm以下)することにより、予熱二次巻線122、123の抵抗値を大きくし、リード線対接触時の発熱量を大きくしている。
【0044】
これにより、リード線対101又は102のリード線同士の接触後、一次巻線111及び昇圧巻線112がレアショートされるまでの時間を短くし、短時間で点灯回路を停止させることができるので、ホルダー25やケース50が、発熱したリード線対101、102によって長時間加熱されて変色したり、変形したりすることを防止することができる。
(実施例)
(リード線誤接触試験)
(試験方法)
蛍光ランプ100の予熱二次巻線122、123の線径を0.10〜0.20とし、リード線対101、102の何れかにおいて、リード線同士を誤接触させた状態で、蛍光ランプ100に交流電圧を供給し、交流電圧の供給開始後、点灯回路が停止されるまでの時間を測定し、さらに、停止された時の蛍光ランプ100の外観の状態を観察した。
【0045】
(リード線の構成部品)
合金組成がFe52Ni42Cr6の合金、線径0.4mm
(点灯回路の構成部品)
交流電源1:100V、チョークコイル11:850μH(一次巻線111:ターン数105.5,線径0.12mm,長さ2400mm(概算値)),(二次巻線121:ターン数4.5,線径0.20mm,長さ113mm(概算値)),(昇圧巻線112:ターン数30.5,線径0.20mm,長さ766mm),(予熱二次巻線122、123:ターン数4.0,線径0.10〜0.20mm,長さ100mm)、インダクタ15:680μH,インダクタ19:47μH,抵抗7:1/4W,2MΩ、NTC22:4Ω、PTC13:1kΩ、抵抗8:1/8W,150KΩ、抵抗9:1/4W,150KΩ、抵抗18:1/2W,1Ω、抵抗24:1/4W,1Ω、キャパシタ2:0.039μF、平滑キャパシタ4:27μF、キャパシタ10:0.12μF、キャパシタ12:8200pF、キャパシタ16:3300pF、キャパシタ17:0.1μF、キャパシタ23:220pF、FET5、6;ドレインーソース間電圧(VDS)=0.2kV、ツェナダイオード20、21:ツェナ電圧=10V
なお、上記の各巻線の材質は銅であり、各巻線の表面を被覆する絶縁被膜は、ポリエステルーナイロンである。
【0046】
又、一次巻線111は、複数(3本若しくは4本)の銅線を撚り合わせた撚り線(いわゆるリッツ線)が使用され、上記に示す線径は、撚り合わされた各銅線の線径を表す。ここでは、撚り合わせる銅線の数は、5本若しくは6本とすることも可能である。
(試験結果)
図4は、リード線誤接触試験の試験結果を示す。図4に示すように、予熱二次巻線の線径が、0.16mm以上で、外観に異常(具体的には、ホルダー25の一部が溶けた状態)が認められ、0.14mm以下では、外観に異常は認められなかった。
【0047】
又、点灯回路が停止されるまでの時間は、線径が0.10〜0.12mmの場合は、交流電圧供給開始直後、線形が0.14mmの場合は、16〜60秒、線径が0.16mm以上の場合は、30〜10,800秒であった。
又、全ての線径の場合において、回路停止時のチョークコイル11は、レアショートされた状態になっていた。
(補足)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されないのは勿論である。
(1)本実施の形態においては、22W品種の蛍光ランプを例として説明したが、本発明を適用できるのは、22W品種に限らず他の品種(例えば12W品種)にも適用できる。又、発光管もスパイラル状の発光管に限らず他の形状(例えば、U字状)の発光管にも、本発明を適用できる。
(2)本実施の形態では、グローブを備えていない電球型蛍光ランプの例について記載したが、本発明は、グローブを備える電球型蛍光ランプについても適用することができる。
(3)本発明を適用できる電球型蛍光ランプのタイプは、本実施の形態のものに限らず、他のタイプ、例えば、一般電球型(A型)、ボール型(G型)、ダブルU型(D型)、筒型(T型)、環形(C型)の電球型蛍光ランプにも適用できる。
(4)本実施の形態においては、図5に示す巻線構造をチョークコイルに適用したが、チョークコイルの代わりにトランスに適用することとしてもよい。
【0048】
又、巻線構造は、図5に示す巻線構造に限定されず、一次巻線111又は昇圧巻線112と予熱二次巻線122、一次巻線111又は昇圧巻線112と予熱二次巻線123とが、それぞれ、熱が良好に伝導される程度に近接して配される巻線構造であればよい。
(5)本実施の形態においては、点灯回路におけるスイッチング素子として、電界効果トランジスタ(FET)を用いたが、他のスイッチング素子、例えば、ハイポーラトランジスタを用いることとしてもよい。
【0049】
又、本実施の形態においては、スイッチング素子を2つとしたが、2つに限定されず、例えば、1つとすることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電球型蛍光ランプに関し、特に予熱点灯式の蛍光ランプにおける、リード線接触時の回路遮断技術として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】蛍光ランプ100の一部切り欠き正面図蛍光ランプ100の一部切り欠き正面図(図1(a))及び底面図(図1(b))である。及び底面図(図1(b))である。
【図2】蛍光ランプ100の展開図である。
【図3】蛍光ランプ100の点灯回路の回路構成を示す図である。
【図4】リード線誤接触試験の試験結果を示す。
【図5】チョークコイル11の巻線構造を示す。
【図6】図5の62で示す、予熱二次巻線122と一次巻線111とが隣接する部分における、各巻線の表面の状態を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0052】
1 交流電源
2、12、16、23 キャパシタ
キャパシタ
3 整流回路
4 平滑キャパシタ
・ FET
7、8、9、18、24 抵抗
10 トリガキャパシタ
11 チョークコイル
13 PTC
14 発光管
15、19 インダクタ
17 結合キャパシタ
20、21 ツェナダイオード
22 NTC
25 ホルダー
25a、25b 挿入孔
26 底面
27 外周壁
30 樹脂ケース
31 内周面
32、221 孔
40 口金
50 点灯回路ユニット
51 回路基板
52、222 突起
53 切り欠き部
54a、54b 連結ピン
60 コア
61 絶縁テープ
100 蛍光ランプ
101、102 1対のリード線
111 一次巻線
112 昇圧巻線
121 二次巻線
122、123 予熱二次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメント電極を有する発光管と、一次巻線と当該一次巻線に磁気結合された二次巻線とを含み、スイッチング素子を介して前記一次巻線に供給される電流を、前記二次巻線を介して前記フィラメント電極に流して前記フィラメント電極を予熱する予熱コイルユニットとを備える蛍光ランプであって、
前記予熱コイルユニットにおいて、前記一次巻線と前記二次巻線とは、至近距離内に配され、
前記二次巻線は、線径が0.14mm以下の巻線である
ことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記予熱コイルユニットにおいて、前記一次巻線と前記二次巻線は、隣接して共通のコアに巻回されている
ことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記二次巻線は、少なくとも100mmの長さを有する
ことを特徴とする請求項2記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−273343(P2007−273343A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99047(P2006−99047)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】