説明

蛍光ランプ

【課題】低電圧で速やかに点灯することができるとともに、点灯時に紫外線を遮蔽することのできる蛍光ランプを提供する。
【解決手段】蛍光ランプ1は、両端に一対の電極が配置されて、内部に不活性ガス及び水銀が封入されるガラスバルブ2と、ガラスバルブ2の内面に形成される透明導電膜3と、透明導電膜3の上に形成される保護層4と、保護層4の上に形成される蛍光体よりなる発光層5とを備えている。透明導電膜3は、酸化スズ(SnO)によって形成されている。保護層4は、超微粒子の酸化亜鉛(ZnO)と酸化チタン(TiO)との混合材料で形成されるとともに、単位面積当たりの重量が、0.04mg/cm以上0.1mg/cm以下に設定され、膜厚が、2.5μm以上4.0μm以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、一般的なラピッドスタ−ト形の蛍光ランプ10の構造を示している。蛍光ランプ10は、直管状のガラスバルブ20を備えており、その内面には透明導電膜30がほぼ全長に亘って形成されている。そして、透明導電膜30の上には、保護層40が透明導電膜30を覆うように積層されている。さらに、保護層40の上には、蛍光体よりなる発光層50が積層されている。また、ガラスバルブ20の両端には、フィラメント60aを備えた一対の電極60,60が配置されており、ガラスバルブ20の内部には、不活性ガスや水銀が封入されている。
【0003】
透明導電膜30は、例えば酸化スズ(SnO)によって構成され(特許文献1参照)、保護層40は、例えば酸化亜鉛(ZnO)及び酸化チタン(TiO)の混合材料によって構成され(特許文献2参照)、発光層50は、例えばハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(PO)3FCl:Sb,Mnならびに希土類蛍光体から構成される(特許文献3参照)。
【0004】
蛍光ランプ10では、電極60,60間に電圧が印加されると、フィラメント60aからの電子放出が活発化することに伴い、不活性ガスの放電に対する抵抗が低下していく。そして、ガスの抵抗がガラスバルブ20の管壁抵抗を下回ったときに電極60,60の間に放電が生じて、蛍光ランプ10は点灯する。この際、透明導電膜30は、上述の管壁抵抗を低下させる導体として機能する。これにより、低い電圧が電極60,60の間に印加されている状態でも、ガスの抵抗が管壁抵抗を容易に下回るようになり、蛍光ランプ10は点灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−111207号公報
【特許文献2】特許第3861557号公報
【特許文献3】特開2005−276691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで蛍光ランプの製造ラインでは、生産性の向上を図るために、年々生産スピードが速くなっており、近年では7000〜8000本/時間程度のスピードで生産が行われている。これに起因して、蛍光ランプの製造時において、ガラスバルブに加えられる熱や、ガラスバルブ内に封入されるガスの圧力や混合率が適正に調整されない場合には、蛍光ランプの始動特性が悪化する虞れがある。
【0007】
すなわち、電圧印加時における管壁抵抗は、上述のガラスバルブに加えられる熱により変動し、また、電圧印加時におけるガスの抵抗は、上述のガスの圧力や混合率により変動する。このことから、上述のガラスバルブに加えられる熱やガスの圧力等が適正に調整されない場合には、電圧印加時において、ガスの抵抗が管壁抵抗を容易に下回らなくなることで、蛍光ランプの始動時間が長くなったり、点灯に要する電圧(電極間の放電に要する電圧)が高いものとなる。
【0008】
また近年では、蛍光ランプが点灯時に発する紫外線のために、食品の劣化や、商品の色あせ等が生ずることが問題視されている。
【0009】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、低電圧で速やかに点灯することができるとともに、点灯時に紫外線を遮蔽することのできる蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る蛍光ランプは、両端に一対の電極が配置されて、内部に不活性ガス及び水銀が封入されるガラスバルブと、前記ガラスバルブの内面に形成される透明導電膜と、前記透明導電膜の上に形成される保護層と、前記保護層の上に形成される蛍光体よりなる発光層とを備え、前記透明導電膜は、酸化スズから形成され、前記保護層は、超微粒子の酸化亜鉛と酸化チタンとの混合材料で形成されるとともに、単位面積当たりの重量が、0.04mg/cm以上0.1mg/cm以下に設定され、膜厚が、2.5μm以上4.0μm以下に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光ランプによれば、保護層が、酸化チタンと酸化亜鉛との混合材料からなり、単位面積当たりの重量が0.04mg/cm以上0.1mg/cm以下に設定され、膜厚が2.5μm以上4.0μm以下に設定されていることで、保護層は、透明導電膜とともに、電圧印加時における管壁抵抗を低下させる導体として機能するようになる。これにより、製造時にガラスバルブ2に加えられる熱や、製造時にガラスバルブ2内に封入されるガスの圧力や混合率に影響を受けることなく、電圧印加時には、ガスの抵抗が管壁抵抗を容易に下回るようになる。これにより、本実施の形態における蛍光ランプは、低電圧で速やかに点灯する。
【0012】
また、保護層を、紫外線遮蔽機能を有する酸化チタン及び酸化亜鉛の混合材料によって構成し、さらに保護層の単位面積当たりの重量や膜厚を、上述の範囲に設定していることで、保護層による紫外線遮蔽機能が効果的に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における蛍光ランプの断面図である。
【図2】本発明の実施例としての蛍光ランプと比較例としての蛍光ランプとの分光分布を示す図である。
【図3】一般的なラピッドスタ−ト形の蛍光ランプの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態における蛍光ランプ1を示す断面図である。
【0015】
蛍光ランプ1は、図3に示した蛍光ランプ10と同様、直管状のガラスバルブ2の両端に一対の電極が配置されたラピッドスタート形の蛍光ランプであり、ガラスバルブ2の内部には、Ar,Ne,Kr,Xeからなる不活性ガスや水銀が所定量封入されている。
【0016】
ガラスバルブ2の径は、32mm以上38mm以下に設定されており、ガラスバルブ2の内面には、酸化スズ(SnO)からなる透明導電膜3が形成されている。
【0017】
透明導電膜3の上には、保護層4が透明導電膜3を覆うように積層されている。保護層4は、超微粒子の酸化亜鉛と酸化チタンとの混合材料を使用して形成されたものである。保護層4の単位面積当たりの重量は、0.04mg/cm以上0.1mg/cm以下に設定され、保護層4の膜厚は、2.5μm以上4.0μm以下に設定されている。また、保護層4の形成に用いられる酸化亜鉛の粒子は、径が0.010μm以上0.035μm以下であり、BET比表面積(BET法により測定される比表面積の値)が40m/g以上50m/g以下である。
【0018】
さらに、保護層4の上には発光層5が積層されている。発光層5は、ハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(POFCl:Sb,Mnと希土類蛍光体とから構成されている。希土類蛍光体は、赤が、Y:Euまたは3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、緑が、LaPO:Ce,Tb、青が、BaMgAl1627:Eu,(Mn)または(Sr,Ca,Ba)(POCl:Euの蛍光体を少なくとも一つ使用して構成されている。また、発光層5の単位面積当たりの重量は、3mg/cm以上5mg/cm以下に設定されている。
【0019】
本実施の形態による蛍光ランプ1によれば、保護層4が、酸化亜鉛と酸化チタンとの混合材料からなり、単位面積当たりの重量が0.04mg/cm以上0.1mg/cm以下に設定され、膜厚が2.5μm以上4.0μm以下に設定されていることで、保護層4は、酸化スズから構成された透明導電膜3とともに、電圧印加時における管壁抵抗を低下させる導体として機能するようになる。このため、製造時にガラスバルブ2に加えられる熱や、製造時にガラスバルブ2内に封入されるガスの圧力や混合率に影響を受けることなく、電圧印加時には、ガスの抵抗が管壁抵抗を容易に下回るようになる。これにより、本実施の形態における蛍光ランプ1は、低電圧で速やかに点灯する。
【0020】
また、保護層4を、紫外線遮蔽機能を有する酸化亜鉛及び酸化チタンの混合材料によって構成し、さらに保護層4の単位面積当たりの重量や膜厚を、上述の範囲に設定していることで、保護層4による紫外線遮蔽機能が効果的に発揮される。
【0021】
本発明は、上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲において種々改変することができる。
【0022】
例えば、本発明は、ラピッドスタート形の蛍光ランプだけではなく、高周波点灯専用形の蛍光ランプなど、その他の形式の蛍光ランプにも適用することができる。
【0023】
また、発光層4は、それぞれハロリン酸カルシウム蛍光体及び希土類蛍光体から構成された複数の層から構成され得る。
【0024】
次に、本発明の効果を確認するために行った試験について説明する。表1に、試験を行った実施例1〜3及び比較例の概要を示す。実施例1〜3及び比較例では、NEC製直管蛍光灯(FLR40SEX−N/M)で採用されているガラスバルブを使用している。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例1は、保護層4を、酸化亜鉛(ZnO)の粒子と酸化チタン(TiO)の粒子とを、1:1の比率で混合した材料(10%液)によって形成している。
【0027】
実施例2は、保護層4を、酸化亜鉛(ZnO)の粒子と酸化チタン(TiO)の粒子とを、2:1の比率で混合した材料(10%液)によって形成している。
【0028】
実施例3は、保護層4を、酸化亜鉛(ZnO)の粒子と酸化チタン(TiO)の粒子とを、1:2の比率で混合した材料(10%液)によって形成している。
【0029】
そして実施例1〜3では、保護層4の単位面積当たりの重量を0.04mg/cm以上0.1mg/cm以下に設定し、保護層4の膜厚を2.5μm以上4.0μm以下に設定した結果、透明導電膜3上への保護層4の付着量は、実施例1では289mgとなり、実施例2では267mgとなり、実施例3では274mgとなっている。
【0030】
比較例は、保護層4を、酸化アルミニウム(Al)によって構成している。
【0031】
なお、透明導電膜3と発光層5とについては、実施例1〜3及び比較例のいずれにおいても、上記実施の形態で述べた条件に従って形成している。
【0032】
表2は、実施例1〜3及び比較例に対して行った始動性確認試験の結果である。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例1〜3及び比較例では、蛍光ランプの安定作動状態におけるランプ電流・ランプ電圧・ランプ電力は同程度になるものの、始動電圧及び低温始動電圧については、実施例1〜3は、比較例に比して小さくなることが確認された。
【0035】
表3は、実施例1〜3及び比較例に対して行った紫外線遮蔽効果試験の結果を示している。
【0036】
【表3】

【0037】
表3に示すように、実施例1〜3は、比較例に比して、紫外線の波長領域(280nm以上360nm以下)における分光放射強度が小さくなることが確認された。
【0038】
また、表3の紫外線遮蔽率は、実施例1〜3及び比較例の蛍光ランプの点灯時における紫外線遮蔽率を示している。比較例では、紫外線を全く遮蔽することができなかったのに対して、実施例1〜3では、紫外線を99%〜100%といった高確率で遮蔽できることが確認された。
【0039】
図2は、実施例1〜3及び比較例の分光分布を示す図であり、縦軸が相対分光パワー(%)であり、横軸が波長(nm)である。図2に示すように、実施例1〜3では、紫外線の波長領域(280nm以上360nm)において、相対分光パワーが、ほぼ0%で推移している。これに対して、比較例では、紫外線の波長領域(280nm以上360nm)において、相対分光パワーが0.5%〜1%の範囲で推移している。このことから、実施例1〜3は、比較例に比して、紫外線の波長領域において優れた遮断特性を有することが確認された。
【0040】
その他、本発明の好適な変形として、以下の構成が含まれる。
【0041】
本発明に係る蛍光ランプについて、好ましくは、前記保護層の形成に用いる酸化亜鉛の粒子は、径が0.010μm以上0.035μm以下であり、BET比表面積が、40m/g以上50m/g以下であることを特徴とする。
【0042】
また好ましくは、前記発光層の単位面積当たりの重量は、3mg/cm以上5mg/cm以下に設定されることを特徴とする。
【0043】
また好ましくは、前記発光層は、ハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(POFCl:Sb,Mnと希土類蛍光体とから構成され、前記希土類蛍光体は、赤が、Y:Euまたは3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、緑が、LaPO:Ce,Tb、青が、BaMgAl1627:Eu,(Mn)または(Sr,Ca,Ba)(POCl:Euの蛍光体を少なくとも一つ使用して構成されていることを特徴とする。
【符号の説明】
【0044】
1 蛍光ランプ
2 ガラスバルブ
3 透明導電膜
4 保護層
5 発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に一対の電極が配置されて、内部に不活性ガス及び水銀が封入されるガラスバルブと、
前記ガラスバルブの内面に形成される透明導電膜と、
前記透明導電膜の上に形成される保護層と、
前記保護層の上に形成される蛍光体よりなる発光層とを備え、
前記透明導電膜は、酸化スズから形成され、
前記保護層は、超微粒子の酸化亜鉛と酸化チタンとの混合材料で形成されるとともに、単位面積当たりの重量が、0.04mg/cm以上0.1mg/cm以下に設定され、膜厚が、2.5μm以上4.0μm以下に設定されることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記保護層の形成に用いる酸化亜鉛の粒子は、径が0.010μm以上0.035μm以下であり、BET比表面積が、40m/g以上50m/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記発光層の単位面積当たりの重量は、3mg/cm以上5mg/cm以下に設定されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記発光層は、ハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(POFCl:Sb,Mnと希土類蛍光体とから構成され、
前記希土類蛍光体は、赤が、Y:Euまたは3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、緑が、LaPO:Ce,Tb、青が、BaMgAl1627:Eu,(Mn)または(Sr,Ca,Ba)(POCl:Euの蛍光体を少なくとも一つ使用して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−23291(P2011−23291A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169004(P2009−169004)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】