説明

蛍光体および発光ダイオード装置

【課題】複数の色の発光が高輝度で得られ、寿命のバラツキの少ない蛍光体を、安価かつ容易に提供することを目的とする。
【解決手段】本発明では、MIIIII(ここで、MIIは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛)のいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga(ガリウム)、In(インジウム)のいずれか、またはこれらの組み合わせである)で表される母体材料に、Mn(マンガン)と、Al(アルミニウム)と、添加元素Rとが添加され、該添加元素Rは、元素周期律表の第IIIa族元素のうちの少なくとも一つの元素であり、励起された際に、複数の色の発光が生じる蛍光体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置等に使用される蛍光体に関し、特に、複数の色の発光を示す蛍光体に関する。さらに、本発明は、そのような蛍光体を有する発光ダイオード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、希土類元素を使用した粉末または薄膜状の蛍光体は、例えば、ディスプレイ装置および照明装置の分野において広く使用されている。特に近年、発熱しないため安全で、長寿命の照明装置として、青色発光ダイオードを光源とした、白色を含む各発光色が得られる発光ダイオード装置が注目を集めている。
【0003】
これらの発光ダイオード装置では、光の混色の原理に基づいて、人工的に様々な色の光を作り出している。例えば、同じ励起エネルギー源によって赤色に発光する蛍光体と、緑色に発光する蛍光体とを組み合わせることによって、人間の目には黄色に見える光を提供することができる。
【0004】
また白色発光ダイオード装置では、近紫外から青色(波長400nm〜450nm)の光源を励起源として発光する、各色(例えば、赤、緑および青)の発光蛍光体を適正に組み合わせて使用することにより、白色光が形成される。ただし、蛍光体の組み合わせによって、形成される白色光の輝度および演色は異なるため、これまでに様々な材料系について、白色光用の蛍光体の研究が行われている。
【0005】
白色発光ダイオード装置用の蛍光体としては、例えば、(Y,Gd)(Al,Ga)12の組成式で表されるYAG系酸化物母体格子中にCeをドープした蛍光体(以下、単に「YAG:Ce」と称する)が使用される。このYAG:Ce蛍光体は、近紫外から青色領域の励起源によって発光し、その発光色は黄色(波長560nm〜600nm)である。従って、発光源としてInGaN系青色LED素子を使用し、この素子の表面にYAG:Ce蛍光体を薄くコーティングした発光装置では、InGaN系青色LED自身からの発光による青色と、コーティングからの黄色の両方の発光の混合により、白色光を得ることができる。
【0006】
また、近紫外から青色領域の光源と、この光源によって、赤色および緑色の各発光を示すそれぞれの蛍光体を組み合わせて使用することにより、白色光を得ることも可能である(なお、通常、青色は青色LED自身によって得られる)。
【0007】
例えば、赤色(波長600nm〜800nm)の蛍光体としては、母体材料として、CaCOを20〜50mol%(CaO換算)、Alを0〜30mol%、SiOを25〜60mol%、AlNを5〜50mol%含み、発光中心イオンとなる希土類酸化物または遷移金属酸化物の含有量が0.1〜20mol%であるオキシ窒化物ガラス系の蛍光体が提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、近紫外から青色領域の発光ダイオード光源により励起され、緑色領域(波長540nm〜560nm)の発光を示す蛍光体として、SrGa:Eu蛍光体が報告されている(非特許文献1、2)。さらに、SrGa母体材料に、CeとMnイオンが同時に添加され、700nm付近にピーク波長を持つ赤色発光する材料では、励起帯は、400〜450nm程度であり、近紫外から青色領域の発光ダイオード光源が使用できる(非特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−214162号公報
【非特許文献1】Wu H、Zhang XM、Guo CFら、「緑色/赤色蛍光体が予めコーティングされたINGaN系青色発光ダイオードチップからの3帯域白色光」、IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS、17(6)、p1160−1162、6月、2005年
【非特許文献2】Huh YD、Shim JH、Kim Yら、「3帯域白色光の発光ダイオードの光特性」、JOURNAL OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY、150(2)、H57−H60、2月、2003年
【非特許文献3】三浦、日高、滝沢、「MnとCeを二重添加したSrGa2S4の発光スペクトル」、第67回応用物理学会学術講演会予稿29p−H6、p.1311
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述のような、発光源としてInGaN系青色発光ダイオード素子を使用し、この素子の表面にYAG:Ce蛍光体を薄くコーティングした白色発光ダイオード装置によって得られる発光は、図1に示すようなスペクトル特性を示す。すなわち、この白色発光ダイオード装置による発光では、緑色領域(波長490nm〜540nm)と、赤色領域(波長600nm〜800nm)での発光強度が低下し、高演色性の白色光を得ることはできないという問題がある。
【0010】
また、オキシ窒化物ガラス系の赤色蛍光体を利用した白色発光ダイオード装置では、以下に示すような、本蛍光体に特有の問題がある。図2には、オキシ窒化物ガラス系蛍光体の発光スペクトルを示す。本蛍光体では、波長600nm〜800nmの領域に強度ピークを有する発光スペクトル(図のA線)が得られる。しかしながら、この蛍光体は、図2のB線に概略的に示すように、赤色の発光に利用される励起スペクトルの波長が、550〜600nmの長波長側にまで延びている。これは、この蛍光体が励起源である近紫外〜青色領域(波長400nm〜470nm)の発光の他、波長550nm前後の緑色の発光をも吸収してしまうことを意味する。従って、波長400〜480nmの領域で発光する緑色蛍光体(例えば、SrGa:Eu)を同時に使用しても、この蛍光体からの発光が吸収されて緑色の輝度が不十分となり、白色の調整が難しくなるという問題が生じる。
【0011】
一方、前述のSrGaのような、一般式がMIIIII(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)で表される、チオガレートと呼ばれる材料を母体材料とした赤色蛍光体としては、現在のところCeとMnが共添加された材料が報告されている。しかしながら、この材料の発光は、ピーク波長が700nmであり、視感度の極めて低い領域にある。また、白色光を得るためには、例えば、そのようなチオガレート系材料と前述のオキシ窒化物ガラス系蛍光体とを混合して蛍光体を構成するか、あるいはそのようなチオガレート系材料と緑色蛍光体(例えば、SrGa:Eu)とを混合して蛍光体を構成する必要がある。しかしながらこれらの場合、視感度の低い領域で発光する前述の赤色蛍光体に起因した次のような問題:すなわち、各色のバランスを取ることが難しくなり、例えば、白色にする場合には、赤の輝度を極度に高めなければならなくなるという問題、またこれに起因して、各色の蛍光体間で寿命のバラツキが生じやすくなり、いずれか一方の色の蛍光体が劣化すると、残りの色の蛍光体の特性が劣化していなくても、適正な白色光を得ることができなくなってしまうという問題、さらには、蛍光体の製造工程が複雑となり、製造コストが増大するという問題が生じる。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、赤色を含む複数の色の発光が高輝度で得られ、寿命のバラツキの少ない蛍光体を、安価かつ容易に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、MIIIII(ここで、MIIは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛)のいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga(ガリウム)、In(インジウム)のいずれか、またはこれらの組み合わせである)で表される母体材料に、Mn(マンガン)と、Al(アルミニウム)と、添加元素Rとが添加され、該添加元素Rは、元素周期律表の第IIIa族元素のうちの少なくとも一つの元素であり、励起された際に、複数の色の発光が生じる蛍光体が提供される。
【0014】
ここで、前記添加元素Rは、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)およびYb(イッテリビウム)のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0015】
さらに、前記添加元素Rは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)およびLa(ランタン)のうちの少なくとも一つを含んでも良い。
【0016】
また、当該蛍光体中に、Mnは、当該蛍光体に対して、0.1〜20mol%の濃度で含まれていても良い。
【0017】
また、当該蛍光体中に、Alは、当該蛍光体に対して、0.1〜50mol%の濃度で含まれていても良い。
【0018】
また、添加元素Rの少なくとも一つは、当該蛍光体に対して、0.1〜20mol%の濃度で含まれていても良い。
【0019】
また、当該蛍光体は、励起された際に、前記複数の色の発光の混色によって、白色光が形成されるものであっても良い。
【0020】
特に、そのような蛍光体では、前記添加元素Rは、Ceを含み、さらにEu、TbおよびErのうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0021】
また、本発明では、光源と、該光源からの光によって励起される蛍光体とを有する発光ダイオード装置であって、前記蛍光体は、前述の特徴を有する、複数の色の発光が生じる蛍光体であることを特徴とする発光ダイオード装置が提供される。
【0022】
ここで、発光ダイオード装置の前記光源は、InGaN系青色発光ダイオードを有しても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、赤色を含む複数の色の発光が高輝度で得られ、寿命のバラツキの少ない蛍光体を、安価かつ容易に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の特徴について、より詳しく説明する。
【0025】
本発明では、MIIIII(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)を母体材料とし、これに発光中心としてのMnと、Alと、周期律表の第IIIa族に位置する添加元素Rとを含む「多色発光蛍光体」が提供される。
【0026】
なお、本願では、複数の発光中心元素に起因して、複数の色の発光が生じ、これらの発光の混色によって、結果的に所望の色の光(以下、「混合光」という)が得られる蛍光体を、「多色発光蛍光体」と称する。また、これらの発光の混色によって、結果的に白色光が得られる蛍光体を、特に、「多色発光白色蛍光体」と称する。
【0027】
ここで、第IIIa族に位置する添加元素Rの中には、ルミネッセンス挙動を示すもの、すなわち励起エネルギーによって自身が発光するもの(Laを除くランタノイド)と、ルミネッセンス挙動を示さないもの、すなわち励起エネルギーを供給しても自身が発光しないもの(Y、Sc、La)とがある。
【0028】
しかしながら、多色発光蛍光体を製作する場合、添加元素Rのうちの少なくとも一つは、自身が発光するものである必要がある。そうでなければ、複数の色の発光を得ることができないからである。なおMnは、以下に示すようにAlおよび共添加剤の働きによって、Alが含まれない場合よりも視感度の高い領域に、赤色(ピーク波長650nm)の発光を示す(図3参照)。また、その励起帯は、390〜450nmにあり、緑色領域には、励起帯を持たず、前記青色発光ダイオードの発光を励起源として適用することができる(図4参照)。
【0029】
従って、添加元素Rは、例えば、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)およびYb(イッテリビウム)のうちの少なくとも一つから選定される。
【0030】
このように、本発明の多色発光蛍光体は、複数の色の発光が得られるにも関わらず、母体材料には、一般式MIIIII(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)で表される、1種類の材料しか含まないという特徴を有する。
【0031】
なお、これまで、MIIIII(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)を母体材料とする赤色発光蛍光体は、BaIn:Eu、CaIn:EuおよびSrIn:Eu等、研究段階のものに限られていた(Georgobiani AN、Dzhabbrarov RB、Izzatov BMら、INORGANIC MATERIALS、33(2)、pp.148−152、1997年)。しかしながら、これらの材料は、発光輝度が低く、色純度が劣るなどの問題があり、これまで、前述のMIIIII材料を母体材料とする赤色発光蛍光体の中で、実用に耐え得るものは、実質的には存在していなかった。
【0032】
これに対して、本願発明者らは、鋭意研究開発を進めた結果、このMIIIII母体材料系に、Mnと、Alと、共添加剤とを添加することによって、色純度の良好な高輝度の赤色の発光が得られることを見出した。ここで、Mnと、Alと、同時に添加される共添加剤は、元素の周期律表の第IIIa族に位置するいずれか一つの元素、またはそれらの組み合わせの中から選定される。
【0033】
なお、通常の場合、Mnは、MIIIIIを母体材料とする蛍光体に添加しても、発光しないことが知られている。それにも関わらず、MIIIII母体材料系に、Mnと、共添加剤とを添加することによって、深い赤色の発光が生じる明確な原因は、今のところ不明である。ただし、Mn単独の添加では、赤色領域の発光が生じないことから、共添加剤が本材料系の発光中心であるMnの発光を助長する役割を果たしている可能性がある。例えば、SrGa母体材料にMnが添加された場合、蛍光体の母体材料中のGa原子は、ドーパントであるMn原子と置換されると考えられる。ただし、この置換だけでは、励起エネルギー源(例えば、青色領域の光)が照射されても、Mnが発光する程の活性は、得られない。これに対して、SrGaに、さらに前述の共添加剤を添加した場合、蛍光体の母体材料中のSr原子が共添加剤原子と置換され、これにより、Mnがより活性化されやすくなると考えられる。さらにAlを加えることにより、Mnの結晶場が弱くなって、発光波長が視感度の高い短波長側にシフトするものと考えられる。
【0034】
本発明は、このような本願発明者らの研究成果に基づいてなされたものであり、前述の特徴(すなわち、1種類の母体材料しか含まないという特徴)を有する多色発光蛍光体は、本願発明者らが開発した赤色発光蛍光体、すなわちMIIIII母体材料にMnと、Alと、共添加剤とが添加された蛍光体によって、初めて達成されるものである。ここで、幸いなことに、発光中心となるMnの発光を助長する共添加剤は、前述の添加元素Rと同様の元素群に対応しており、すなわち周期律表の第IIIa族に含まれる元素である。前述のように、これらの添加元素Rは、Mnによる赤色の発光と組み合わせて複数の色の発光を生じさせる上で、多色発光蛍光体に必須の元素である。従って、基本的には、これらの添加元素Rの存在によって、Mnの赤色の発光が実現され、さらにAlによって視感度の高い領域に、良好な赤色の発光を得ることが可能となる。また、本発明による多色発光蛍光体は、一つの母体材料のみを含むため、最小限の材料で複数の色の発光を示す蛍光体を得ることができるとともに、蛍光体の製造方法が簡略化され、製造コストを抑制することができる。
【0035】
表1には、MIIIII母体材料に、発光中心として、MnおよびAlとともに添加される添加元素Rの一例と、その添加元素Rが、波長400〜450nmの領域の光源によって励起された際に放出される光の発光色を示す。
【0036】
【表1】

なお、この表には、発光スペクトルのおおよその波長範囲と、ピーク波長の値(括弧内)が同時に示されている。
【0037】
この表から、Mnを発光中心とするMIIIII母体材料に、これらの元素を添加することによって、赤色を含む多色発光蛍光体を容易に調製することができることがわかる。また、添加元素を適正に選択した場合、Mnによる赤色の発光と当該添加元素の発光との混色により、結果的に所望の様々な色の混合光を提供することができる。
【0038】
さらに、本発明による多色発光蛍光体では、複数の発光の混色によって得られる混合光の演色および/または色度座標は、例えば、母体材料中のMIIとMIIIの組み合わせおよび/または濃度、ならびにMn、Alおよび添加元素Rの濃度を調整することにより、容易に制御することができる。
【0039】
また、例えば、さらなる発光を生じさせずに、あるいは、赤色以外の発光の強度を変化させずに、Mnによる赤色の発光のみをより高めたい場合など、特定の条件の下で多色発光蛍光体の色度座標等を調整する必要がある場合には、前述のような自身が発光しない元素(Y、Scおよび/またはLa)を、さらに蛍光体に添加しても良い。
【0040】
このように、本発明の多色発光蛍光体は、混合光を構成する各発光色のバランス調整に対して極めて好適な柔軟性を有し、様々な色度座標の混合光を、容易に発現させることができる。
【0041】
本発明による多色発光蛍光体に、発光中心として含まれるMnの濃度は、特に限られないが、例えば、蛍光体全体に対して、0.1〜20mol%の範囲である。Mnの発光色を調整するAlの濃度は、特に限られないが、例えば、蛍光体全体に対して、0.1〜50mol%の範囲である。Alの濃度がこれを超えると、Al原子は、水分中のOH基と反応して酸化され、材料自身が化学的に不安定になるためである。
【0042】
図5には、一例として、SrGa母体材料に、発光中心として、Mn、AlおよびCeを含む多色発光蛍光体について、Al濃度を1mol%に固定して、Mn濃度を変化させた場合の、MnおよびCeの発光強度の影響を示したグラフを示す。この測定では、Mn濃度を0〜50mol%まで変化させている。またCeの添加量は、蛍光体全体に対して3mol%で一定である。この図から、Mn濃度が0.1〜20mol%の範囲では、MnおよびCeのいずれにおいても良好な発光強度が得られることがわかる。特に、Mn濃度が5〜15mol%の範囲である場合、Mnの発光強度が最大となる。ただし、Mnの濃度が10mol%までの範囲では、Mnの濃度が高くなるに伴い、Ceの発光強度は低下する。またMnの濃度が10mol%を超えると、Ceの発光強度はあまり変化しなくなる。以上のことから、MnおよびCeの両方において良好な発光強度を得るためには、Mnの濃度は、5〜10mol%の範囲であることがより好ましいといえる。
【0043】
また、本発明による複数の色の発光を示す蛍光体に、発光中心として含まれる添加元素Rの濃度は、特に限られないが、例えば、蛍光体全体に対して、0.1〜20mol%の範囲である。特に、添加元素Rの濃度は、0.1〜10mol%の範囲であることが好ましく、3〜7mol%の範囲であることがさらに好ましい。
【0044】
また、本発明による多色発光白色蛍光体には、さらに、Sc、Y、およびLaのうちの少なくとも一つの元素を含んでも良い。これらの元素は、前述のように、自身がルミネッセンス挙動を示すことはないが、これらの元素の添加によって、Mnによる赤色の発光がより助長される。これらの元素を添加する場合、これらの元素は、蛍光体全体に対して、0.05mol%〜5mol%程度含まれても良い。
【0045】
本発明による多色発光蛍光体は、混合光として白色光が得られる「多色発光白色蛍光体」とすることも可能である。
【0046】
特に、「多色発光白色蛍光体」を製作する場合、添加元素Rは、Ceを含み、さらにEu、TbおよびErのうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。MIIIII(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)を母体材料とし、これにAl、および発光中心としてのCeを含む蛍光体は、近紫外から青色の領域(波長400nm〜450nm)の励起エネルギーによって、青色(波長約450nm前後)の発光を示す。また、同母体材料に発光中心として、Eu、TbまたはErを含む蛍光体は、それぞれ、緑色の領域(例えば、波長472nm〜623nm)、緑黄色領域(例えば、波長477nm〜506nm)または緑色領域(例えば、波長514nm〜536nm)で発光を示す(詳細は、表1参照のこと)。従って、MIIIII(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)を母体材料とし、これにAl、および発光中心として、MnおよびCeを含み、さらにEu、TbおよびErのうちの少なくとも一つを含む多色発光蛍光体を調製することにより、混合光として白色光を提供する多色発光白色蛍光体を容易に得ることが可能になる。ただし、この組み合わせは単なる一例であって、Mnと、他の添加元素Rとの組み合わせによっても、混合光として白色光を提供する多色発光白色蛍光体を得ることができることは、当業者には明らかである。
【0047】
本発明による多色発光白色蛍光体は、発光中心として赤色(ピーク波長650nm)の発光特性を示すMnを含む。このため、従来のようなYAG:Ce蛍光体を使用した際に生じる問題、すなわち赤色領域での発光強度が低下し、高輝度の白色光を得ることができないという問題が解消される。
【0048】
また、母体材料に、発光中心として含まれるMnは、その励起帯が波長390〜450mの領域、すなわち近紫外から青色の領域にあるため、青色発光ダイオードからの発光によって、効率的に励起され、緑色の発光を吸収することはない。従って、従来のオキシ窒化物ガラス系の蛍光体を使用した際に生じるような、緑色の発光が吸収され、緑色の輝度が不十分となり、白色の調整が難しくなるという問題が回避される。
【0049】
さらに、本発明による多色発光白色蛍光体では、赤色を含む各色の蛍光体の母体材料は、いずれも、MIIIIIで表される同一の材料であるため、従来の母体材料が異なることに起因した問題:すなわち、視感度の低い領域での赤色発光のため、色バランスの調整が複雑となり、各色の蛍光体で寿命のバラツキが生じやすくなり、いずれか一方の色の蛍光体が劣化すると、残りの色の蛍光体の特性が劣化していなくても、適正な白色光を得ることができなくなってしまうという問題が回避される。
【0050】
本発明に係る多色発光蛍光体は、例えば、以下の方法により製作することができる。なお、以下の例では、SrGa母体材料に、Alならびに発光中心として、Mn(赤色発光)、Eu(緑色発光)およびCe(青色発光)を含む多色発光白色蛍光体を例に、その製造方法を説明する。ただし、同様の製造方法を、同様の母体材料を有し、異なる発光中心を含む他の多色発光白色蛍光体、さらには白色以外の発光色を示す多色発光蛍光体にも適用することができることは、明らかであろう。
【0051】
まず、SrGa母体材料粉末と、所定量のAl源用粉末と、所定量のMn源用粉末と、所定量のEu源用粉末と、所定量のCe源用粉末とを含む混合粉末を調製する。SrGa母体材料粉末の平均直径は、特に限られないが、例えば0.1μm〜20μmの範囲である。また、Al源用、Mn源用、Eu源用およびCe源用の粉末は、金属であっても硫化物であっても良く、粉末の平均直径は、例えば0.1μm〜20μmの範囲である。粉末混合には、乾式、湿式のいずれの方法を利用しても良く、乾式の場合は、例えば、ボールミル等を行って粉砕混合しても良い。
【0052】
次に得られた混合粉末を焼成する。焼成は、例えば、前述の混合粉末を石英ボートに入れ、これを電気炉で熱処理後、急冷させることにより行われる。通常の場合、熱処理雰囲気は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、またはこれに5vol%程度のHS(硫化水素)ガスを含む混合雰囲気で行われる。通常の場合は、焼成温度は、600℃〜1200℃程度であり、900℃〜1000℃程度であることが好ましい。また焼成時間は、例えば、30分から2時間程度である。
【0053】
焼成処理によって得られた焼成体は、そのまま使用しても、粉砕により粉末状にして使用しても良い。
【0054】
一方、本発明の多色発光白色蛍光体は、粉末の他、薄膜としても提供することができる。
【0055】
本発明の多色発光白色蛍光体を薄膜状の蛍光体として製作する場合、この蛍光体は、CVD(化学気相蒸着法)、PVD(物理気相蒸着法)および電子線蒸着法を含む蒸着法、あるいはスパッタ法等によって形成することができる。
【0056】
例えば、蒸着法を用いて本発明に係る多色発光白色蛍光体を製作する場合、蒸着源として、Sr、Ga、Al、Mn、EuおよびCeのそれぞれの材料を使用し、基板温度を500℃以上に保持した状態で、これらの蒸発源を基板上に蒸着させることにより、本発明に係る蛍光体を成膜することができる。薄膜の厚さは、蒸着時間を変えることにより、自由に調節することができる。
【0057】
また電子線蒸着法を利用する場合には、SrSにMn化合物、Eu化合物およびCe化合物を混合して加圧成形した蒸発源と、Alを含むGa蒸発源との、2種類の蒸発源が使用されても良い。すなわち、これらの蒸発源を同時に蒸発させて、500℃以上の温度に保った基板上に供給することにより、本発明に係る多色発光白色蛍光体を薄膜状に成膜することができる。この場合も、薄膜の厚さは、蒸着時間を変えることにより、自由に調節することができる。
【0058】
成膜後に、さらに後熱処理として、不活性ガス雰囲気または不活性ガスと硫化水素(例えば、5vol%)の混合ガス雰囲気で、ランプ加熱あるいはレーザ加熱を行っても良い。これにより、薄膜蛍光体の特性を向上させることが可能になる。
【0059】
一方、スパッタ法では、SrGaの母体材料に、Al、Mn、EuおよびCeを添加した混合材料がターゲットとして使用される。また、アルゴンガスまたはアルゴンガスと硫化水素ガス(5vol%)の混合ガスがスパッタガス源として使用される。すなわち、室温〜600℃程度の範囲に加熱された基板に対して、このスパッタガスを0.1〜数Paのガス圧力でスパッタさせることにより、基板上に薄膜蛍光体が形成される。薄膜の厚さは、スパッタ時間を変えることにより、自由に調節することができる。その後、さらに後熱処理として、不活性ガス雰囲気または不活性ガスと硫化水素(例えば、5%)の混合ガス雰囲気で、ランプ加熱あるいはレーザ加熱を行っても良い。これにより、薄膜蛍光体の特性を向上させることが可能になる。
【0060】
なお、前述の蛍光体粉末および薄膜の形成方法において、蛍光体の原料として、さらにSc、Yおよび/またはLa(以下、Sc等という)を添加しても良い。例えば、粉末の蛍光体を得る場合には、前述の各材料の粉末に、Sc等の金属粉末または硫化物粉末を同時に添加しても良い。また、蒸着法により薄膜蛍光体を得る場合には、前述の蒸着源に加えて、Sc等の蒸着源が追加される。これらの元素は、前述のように、それ自身は発光しないが、Mnの活性を高める働きを有するため、赤色の強度を高める必要がある場合等、特定の目的がある場合に添加される。
【0061】
このような本発明に係る多色発光白色蛍光体を含む多色発光蛍光体は、例えば、照明装置用の蛍光体等に使用することができる。
【0062】
例えば、本発明による多色発光白色蛍光体を、InGaN系青色発光ダイオード素子の表面に薄膜状にコーティングした場合、青色発光ダイオード素子からの発光を励起源として、Mnによる赤色の発光と、添加元素Rによる発光とが生じ、これにより光の混色が生じ、結果的に白色光を放射する白色LEDを提供することができる。
【0063】
また、本発明による白色以外の発光色を示す蛍光体を、InGaN系青色発光ダイオード素子の表面に薄膜状にコーティングした場合、青色発光ダイオード素子からの発光を励起源として、Mnによる赤色の発光と、添加元素Rによる発光とが生じ、これにより光の混色が生じ、結果的に所望の色の光を放射するLEDを提供することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0065】
(実施例1)
実施例1では、Mnによる赤色の発光を確認するため、以下の方法により、SrGaを母体材料とし、これにAlおよび発光中心としてMnを含み、さらにCeを含む蛍光体を作製した。
【0066】
まず、平均粒子直径が1μmのSrGa粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)に、平均粒子直径が1μmのAl金属粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)1mol%と、平均粒子直径が1μmのMn金属粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)6mol%と、平均粒子直径が1μmのCe粉末(99.9%、高純度化学(株)社製)0.2mol%とを添加して、ミル混合器(型番8000:スペックス社製)で30分間粉砕撹拌し、混合原料粉末を得た。
【0067】
次に、この混合原料粉末約4gを石英ボートに入れ、これを電気炉内に設置した。次に、電気炉内の雰囲気をアルゴン+5vol%硫化水素雰囲気とし、1200℃で1時間、石英ボートを保持し、混合原料粉末を焼成した。
【0068】
得られた粉末を乳鉢を用いて、平均粒径1μm程度に粉砕して、実施例1に係る蛍光体粉末を得た。
【0069】
次に、中心波長405nmの励起光源でこの蛍光体を発光させた場合に生じる発光特性について評価した。図3には、この実施例1に係る蛍光体から放射される光のスペクトル特性を示す。この図から、実施例1に係る蛍光体では、波長約650nmに赤色の発光ピークが得られることがわかる。この発光の色度座標(x,y)は、赤色領域の(0.69,0.30)であり、色純度の良好な発光が得られていることがわかる。さらに図4には、この実施例1に係る蛍光体の励起帯を示すスペクトルを示す。390〜450nmのLEDで励起することができる帯域に、励起帯がある一方、緑色領域に励起帯は認められない。
【0070】
なお、同様の測定を、Ceを含まない同様の材料で実施したが、その場合、赤色の領域に発光ピークは生じなかった。従って、Ceは、Mnの発光を活性化する役割を果たしているものと考えられる。また、Alを含まない同様の材料において、同様の評価を実施したが、その場合には、波長700nmに赤色の発光ピークが生じた。
【0071】
(実施例2)
実施例2では、以下の方法により、SrGaを母体材料とし、これにAlならびに発光中心としてMnおよびCeを含む蛍光体を作製した。
【0072】
まず、平均粒子直径が1μmのSrGa粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)に、平均粒子直径が1μmのAlF粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)1mol%と、平均粒子直径が1μmのMnS粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)6mol%と、平均粒子直径が1μmのCe粉末(99.9%、高純度化学(株)社製)0.3mol%とを添加して、ミル混合器(型番8000:スペックス社製)で30分間粉砕撹拌し、混合原料粉末を得た。
【0073】
次に、この混合原料粉末約4gを石英ボートに入れ、これを電気炉内に設置した。次に、電気炉内の雰囲気をアルゴン+5vol%硫化水素雰囲気とし、1200℃で1時間、石英ボートを保持し、混合原料粉末を焼成した。
【0074】
得られた粉末を乳鉢を用いて、平均粒径1μm程度に粉砕して、実施例2に係る蛍光体粉末を得た。
【0075】
次に、中心波長405nmの励起光源でこの蛍光体を発光させた場合に生じる発光特性について評価した。図6には、この実施例2に係る蛍光体から放射される光のスペクトル特性を示す。この図において、波長450〜500nmの領域の青色ピークは、Ceによる発光ピークに相当し、波長約650nmの領域の赤色ピークは、Mnによる発光ピークに相当する。この結果から、SrGaを母体材料とし、これに発光中心としてMnおよびCeを添加することによって、赤色と青色の発光が得られることがわかった。
【0076】
(実施例3)
実施例3では、SrGaを母体材料とし、これにAlならびに発光中心としてMnおよびEuを含む蛍光体を作製した。
【0077】
まず、平均粒子直径が1μmのSrGa粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)に、平均粒子直径が1μmのAlF粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)1mol%と、平均粒子直径が1μmのMn粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)3mol%と、平均粒子直径が1μmのEuS粉末(99.9%、高純度化学(株)社製)3mol%とを添加して、ミル混合器(型番8000:スペックス社製)で30分間粉砕撹拌し、混合原料粉末を得た。
【0078】
次に、この混合原料粉末約4gを石英ボートに入れ、これを電気炉内に設置した。次に、電気炉内の雰囲気をアルゴン+5vol%硫化水素雰囲気とし、1200℃で1時間、石英ボートを保持し、混合原料粉末を焼成した。
【0079】
得られた粉末を乳鉢を用いて、平均粒径1μm程度に粉砕して、実施例3に係る蛍光体粉末を得た。
【0080】
次に、中心波長約405nm前後の励起光源でこの蛍光体を発光させた場合に生じる発光特性について評価した。図7には、この実施例3に係る蛍光体から放射される光のスペクトル特性(C線)を示す。ただし、明確化のため、この図には、Mnによる赤色の発光ピークは示されていない。また、同図には、発光中心であるEuを励起させるための励起源のスペクトル(D線)を同時に示している。この励起光源には、近紫外から青色の領域(波長380〜440nm)までの励起帯がある。この図から、SrGaを母体材料とし、これに発光中心としてEuを添加することにより、波長550nm近傍にピークを有する緑色の発光が得られることがわかった。
【0081】
(実施例4)
実施例4では、SrGaを母体材料とし、これにAlならびに発光中心としてMn、EuおよびCeを含む蛍光体を作製した。
【0082】
まず、平均粒子直径が1μmのSrGa粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)に、平均粒子直径が1μmのAlF粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)1mol%と、平均粒子直径が1μmのMn粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)3mol%と、平均粒子直径が1μmのEuS粉末(99.9%、高純度化学(株)社製)3mol%と、平均粒子直径が1μmのCe粉末(99.9%、高純度化学(株)社製)3mol%とを添加して、ミル混合器(型番8000:スペックス社製)で30分間粉砕撹拌し、混合原料粉末を得た。
【0083】
次に、この混合原料粉末約4gを石英ボートに入れ、これを電気炉内に設置した。次に、電気炉内の雰囲気をアルゴン+5vol%硫化水素雰囲気とし、1200℃で1時間、石英ボートを保持し、混合原料粉末を焼成した。
【0084】
得られた粉末を乳鉢を用いて、平均粒径1μm程度に粉砕して、実施例4に係る蛍光体粉末を得た。
【0085】
次に、中心波長405nm前後の励起光源でこの蛍光体を発光させた場合に生じる発光特性について評価した。図8には、この実施例4に係る蛍光体から放射される光のスペクトル特性を示す。この図から、発光中心のCe、EuおよびMnの各元素に対応して、それぞれ、波長450nm、540nmおよび690nm近傍に、強度ピークが生じていることがわかる。この蛍光体から得られる発光の色度座標(x,y)は、白色領域の(0.36,0.34)であった。
【0086】
このように、MIIIII母体材料に、Alならびに発光中心としてMnおよびその他の第IIIa族添加元素を含む蛍光体は、白色を含む各色の混合光を放射する発光ダイオード装置用の蛍光体として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の蛍光体は、電子線、紫外線、X線、電界等の励起エネルギー源を蛍光体に照射して発光させる装置、例えば、白色発光ダイオード装置等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】YAG:Ce蛍光体がコーティングされたInGaN系青色発光ダイオードの発光ピークを示す図である。
【図2】オキシ窒化物ガラス系蛍光体の発光ピークを、励起スペクトルとともに示した図である。
【図3】SrGa:Mn,Ce,Al蛍光体の赤色発光スペクトルを示す図である。
【図4】SrGa:Mn,Ce,Al蛍光体の赤色発光の励起帯を表すスペクトルを示す図である。
【図5】SrGa:Mn,Ce,Al蛍光体の赤色発光スペクトル中のMn濃度の変化が、MnおよびCeの発光強度に及ぼす影響を示したグラフである(AlおよびCe濃度は、蛍光体に対してそれぞれ、1mol%および3mol%で一定である)。
【図6】実施例2に係る蛍光体の発光ピークを示す図である。
【図7】実施例3に係る蛍光体の発光ピークを、励起スペクトルとともに示した図である。
【図8】実施例4に係る蛍光体の発光ピークを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
A オキシ窒化物系蛍光体のフォトルミネッセンススペクトル
B オキシ窒化物系蛍光体の励起スペクトル
C SrGa:Euのフォトルミネッセンススペクトル
D SrGa:Euの励起スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IIIII(ここで、MIIは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛)のいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga(ガリウム)、In(インジウム)のいずれか、またはこれらの組み合わせである)で表される母体材料に、Mn(マンガン)と、Al(アルミニウム)と、添加元素Rとが添加され、該添加元素Rは、元素周期律表の第IIIa族元素のうちの少なくとも一つの元素であり、
励起された際に、複数の色の発光が生じる蛍光体。
【請求項2】
前記添加元素Rは、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)およびYb(イッテリビウム)のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記添加元素Rは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)およびLa(ランタン)のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
Mnは、当該蛍光体に対して、0.1〜20mol%の濃度で含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の蛍光体。
【請求項5】
Alは、当該蛍光体に対して、0.1〜50mol%の濃度で含まれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の蛍光体。
【請求項6】
添加元素Rの少なくとも一つは、当該蛍光体に対して、0.1〜20mol%の濃度で含まれていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の蛍光体。
【請求項7】
励起された際に、前記複数の色の発光の混色によって、白色光が形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の蛍光体。
【請求項8】
前記添加元素Rは、Ceを含み、さらにEu、TbおよびErのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7に記載の蛍光体。
【請求項9】
光源と、該光源からの光によって励起される蛍光体とを有する発光ダイオード装置であって、
前記蛍光体は、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の蛍光体であることを特徴とする発光ダイオード装置。
【請求項10】
前記光源は、InGaN系青色発光ダイオードを有することを特徴とする請求項9に記載の発光ダイオード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−96831(P2009−96831A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267055(P2007−267055)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】