説明

蛍光体に基づく真正物証明システム

少なくとも2つ、好ましくは、3つ以上の蛍光体材料のブレンド(混合物)が真正物証明されるべき物品/文書に展着されるか、または、真正物証明されるべき物品/文書の内部に含まれるフォトルミネセンス・セキュリティマーキングとして使用される蛍光体(フォトルミネセンス)材料に基づく真正物証明システムである。好ましくは、蛍光体材料は、それぞれが、波長380nmから780nmを有する可視光を含む「目に安全」な励起用放出光によって励起可能である。さらに、励起されたとき、セキュリティマーキングは、好ましくは、可視光をさらに放出し、それによって、励起用放出光および/またはフォトルミネセンス・マーキングによって発生された光への偶発的な露光の場合にオペレータの目への損傷の危険性を最小限に抑える。物品/文書の真正物証明性は、マーキングを励起し、セキュリティマーキングから放出された光の1つ以上の選択されたパラメータを真正物証明用蛍光体ブレンドの固有の放出スペクトルの対応するパラメータと比較することにより、蛍光体の組成の証明によって真正物証明することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、Yi−Qun Li外によって、2009年10月22日付けで出願された、発明の名称が「Phosphor Based Authentication System」である米国正規特許出願第12/604268号と、Yi−Qun Li外によって、2008年10月23日付けで出願された、発明の名称が「Phosphor Based Authentication System」である米国仮特許出願第61/107928号とに基づく優先権を主張する。両出願は、参照によって本明細書中にそっくりそのまま含まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は、蛍光体(フォトルミネセンス)材料に基づく真正物証明システムに係わり、より詳しくは、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする方法、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする装置、および、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
関連技術の説明
真正物証明とは、何かあるものを真正物証明性があるとして、すなわち、あるものに関して行われた主張が真実であるとして、確証または確認する行為である。物品または文書の真正物証明は、通常は、1つ以上の真正物証明ファクタを用いて物品または文書の由来を確認することを必要とする。物品または文書は、多くの場合、物品/文書を1つ以上のセキュリティマーキングまたはセキュリティ機器を含むことになる。セキュリティマーキング/セキュリティ機器の実施例は、文書中の透かしと、個人小切手上の磁気印刷と、銀行券上のマイクロ印刷と、オイルおよびガス中のアンチボディと、酒類およびアルコール飲料中の分子認識試薬と、パッケージ上の熱転写インクおよび色ずれ色素と、クレジットカード上のホログラムと、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングと、バーコードと、電子タグ機器と、薬剤カプセル上の不可視マーカなどを含む。
【0004】
世界経済フォーラム(WEF)によって後援された研究は、薬剤、煙草、贅沢品、電子部品、衣服、および、他の品目のような商品を偽造する割合が世界貿易の7から9%であり、総額が1年当たり7000億ドルを超えると推定する。世界保健機関(WHO)およびFDA(米国食品医薬品局)は、どんなものでも医薬品および関連製品の5から8%が偽物であると推定する。人々の健康を危険に晒すだけでなく、偽造は、毎年およそ3000万ドルの収入の損失を生じさせる。
【0005】
カラー印刷技術および画像走査技術の持続的な向上のため、例えば、銀行券、身分証明書、パスポート、運転免許証、入場券のような文書の偽造が増加する。付加的に、クレジットカード、デビットカード、および、セキュリティカードの偽造が、コンピュータおよびカードリーダの広範囲の利用可能性のため増加する。取引のグローバル化、組織犯罪、および、多くの場合に軽い罰則と一体となった高収益が偽造と関連付けられていることが原因となって、ブランド保護が非常に戦略的な課題になった。
【0006】
偽造に対抗し、そしてブランドを保護するため、RFID(無線周波数識別)と、ホログラフィと、安定同位体標識と、分子認識標識と、サーモクロミック材料と、色ずれインクと、可視蛍光色素および不可視蛍光色素付きのタグと、蛍光体材料に基づくマーキングとを含む種々のセキュリティ技術が開発されている。
【0007】
蛍光体材料を利用するセキュリティマーキングは、励起波長と、近赤外(NIR)までの紫外(UV)を網羅する固有のシグネチャを有する放出スペクトルと、ピーク強度と、ピーク波長と、減衰時間または期間と、スペクトル中の特有のピークの上昇および下降とを含むある程度の数の潜在的な真正物証明ファクタを提供する。物品または文書の真正物性を証明するため、蛍光体セキュリティマーキングを物品/文書に設けることが知られている。物品/文書の真正物証明性は、UVランプのような励起用光源から物品に高エネルギー放出光を照射し、そして物体から反射されたUV光の強度と、蛍光体セキュリティマーキングによって発生された蛍光の量とを測定することにより証明される。光沢特性(反射および放出)が所定の境界内に入る場合、物品は真正物証明性があるとして証明される。
【0008】
蛍光体(フォトルミネセンス)材料は、i)ダウンコンバートおよびii)アップコンバートの2つのカテゴリに特徴付けることができる。ダウンコンバート型フォトルミネセンス材料の場合、材料は、UVのような高エネルギー光子、または、X線またはγ線のような高イオン化放出光で励起され、可視またはNIRスペクトル領域で発光する。逆に、アップコンバート型またはアンチストークス型フォトルミネセンス材料は、NIR、特に、980nm放出光のような2つ以上の低エネルギー光子を吸収し、そしてIR光子を合計する工程によって、より波長の短い単一の高エネルギー光子(例えば、可視光)を放出する。
【0009】
以下、UV蛍光体と称する大部分のUV励起可能ダウンコンバート蛍光体は、低圧水銀蒸気ランプからの254nm線または365nm線によって励起することができる。放出(フォトルミネセンス)スペクトルを分析することにより、蛍光体の正体を決定することができる。UV蛍光体は、1980年代および1990年代にセキュリティ市場で広範囲に亘って使用された。UV蛍光体の欠点は、これらのUV蛍光体の大半が紙に基づく基材上で強く蛍光発光し、そしてこの蛍光発光が蛍光マーキングの有効性を低下させる可能性があることである。UV蛍光体に伴うさらなる問題は、UV励起用放出光が人の目に有害であることである。安全性の観点から、電磁スペクトルの可視部分の範囲内、すなわち、380から700nmに含まれる励起用放出光によって励起することができる蛍光体が理想的であると考えられる。
【0010】
アップコンバージョン工程は、1つの吸収体Yb3+(イッテルビウム)と、典型的に、青Tm3+(ツリウム)領域、緑Er3+(エルビウム)領域、または、赤Yb3+領域における3種類の放出体のうちの1つ以上とに依存する。最初の赤外光子の吸収は、希土類イオンを比較的長寿命の第1の励起状態に促す。後続の赤外光子がこの励起されたイオンに衝突する場合、赤外光子は、吸収確率に依存して、吸収されることがあり、それによって、このイオンを第2のより高い励起状態に促す。第2の状態から基底状態へのイオンの遷移は、より高いエネルギー(すなわち、より短い波長)を有する光子の放出を生じる。アップコンバート蛍光体材料は、Yb3+の吸光度に依存するので、アップコンバート蛍光体材料の1つずつは、980nm(IR)レーザダイオードによって励起することができる。アップコンバート蛍光体の実施例は、Eu3+、Yb3+賦活酸硫化イットリウムYS:Er,Ybである。IR(980nm)励起可能蛍光体の他の実施例は、米国特許第6686074号および米国特許第6841092号に記載されているようにYb3+、Tm3+賦活酸硫化ガドリニウムである。
【0011】
アップコンバート蛍光体に伴う問題は、これらのアップコンバート蛍光体の比較的低い効率に起因して、アップコンバート蛍光体がレーザによって発生された高強度IR放出光によって励起される必要があり、そしてこのような放出光が人の目に有害であるということである。目の損傷の可能性を低くするため、国際特許出願公開第2000/60527号は、蛍光体材料の中に検出可能な放出光を誘起するために十分なピークパワーを有するようにパルス型動作モードで動かされるNIRレーザを用いてアップコンバート蛍光体材料を励起することと、レーザ放出光の平均パワーが目の損傷を生じないために十分に低くなるようにパルス繰り返し周波数および期間が選択されることとを教示する。
【0012】
UV蛍光体を含有するインクは、比較的低コストでセキュリティ産業において容易に入手可能である。しかし、このようなインクの広範囲に亘る使用により、偽造者は、様々なインクおよびインクの使用に関して精通するようになる。さらに、偽造者は、製品サンプルからの蛍光体を含むインクの特性と一致するUV蛍光体と同じインクを複製または調達し、そして偽造品に同じインクを適用することができる。この問題を解決するため、800nmから1600nmまで変化するIR部分の中の光によって励起可能であるアップコンバート蛍光体を含むインクが開発された。米国特許5766324号は、IR波形範囲の中の光を吸収しない黒色着色剤と組み合わされたIR蛍光体を含むIRセキュリティ・インクについて記載する。
【0013】
米国特許第7030371号は、ルミネセンス放出が、励起用放出光への露光中または露光後のいずれかの固有の時間間隔中に測定されるフォトルミネセンス・セキュリティマーキングの特性を測定する方法を開示する。一方の時間間隔中に測定された強度値が他方の時間間隔中に測定された強度値から減算され、この減算の結果がルミネセンス・セキュリティマーキングから放出された光を表す。一方の時間間隔の期間は、励起用放出光への露光時間の25%より短い。
【0014】
米国特許第5331140号は、蛍光バーコードを読み取るバーコード読み取りシステムを開示する。バーコードは、高調波関係にない2つの周波数で正弦波または矩形波変調された放出光で照射され、そして2つの変調周波数の和および差に対応する周波数でバーコードによって照射された放出光が検出される。
【0015】
高度のセキュリティを提供し、そして携帯可能な真正物証明機器を用いて証明することができる費用のかからない真正物証明システムの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態は、好ましくは、各蛍光体材料が波長380nmから780nmを有する可視光を含む「目に安全」な励起用放出光によって励起可能である2つ以上の蛍光体材用のブレンドを含むフォトルミネセンス・セキュリティマーキングを利用する蛍光体に基づく真正物証明システムを対象にする。好ましくは、励起されたとき、セキュリティマーキングは、可視光をさらに放出し、それによって、励起用放出光および/またはフォトルミネセンス・マーキングによって発生された光への偶発的な露光の場合にオペレータの目への損傷の危険性を実質的に最小限に抑える。
【0017】
本発明によれば、真正物証明用セキュリティマーキングが波長範囲が380から780nmの範囲内にある選択された波長を有し、そして励起されたときに既知の放出特性を有している励起用放出光によって励起可能である少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含む、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする方法であって、a)選択された波長を有する励起用放出光でマーキングを照射するステップと、b)マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、c)少なくとも1つの測定されたパラメータを既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そしてパラメータが所定の範囲内に入る場合、マーキングの真正物性を証明するステップと、を含む方法が提供される。
【0018】
一装置では、マーキングは、第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光のみにより励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と、第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲に入る波長を有する励起用放出光によって励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料とを含み、この方法は、a)第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、b)第1の波長範囲および第2の波長範囲の重なり合う領域の範囲に入る波長を有する励起用放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、c)第1の波長範囲と重なり合わない第2の波長範囲の一部分の範囲に入る波長を有する励起用放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、d)少なくとも1つの測定されたパラメータを既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そしてパラメータが所定の範囲内に入る場合、マーキングの真正物性を証明するステップと、を含む。
【0019】
都合の良いことに、選択されたパラメータは、1つ以上の選択された波長範囲に入る放出された光の強度を含み、典型的に、波長範囲は、蛍光体材料のうちの1つから生じる予想放出ピークを含む。一装置では、マーキングの真正物証明性は、選択された範囲に入る放出された光の相対強度(すなわち、比率)を既知の放出特性の対応する比率と比較することによって証明される。代替的に、および/または、付加的に、選択されたパラメータは、放出ピークの強度および/または波長と、放出ピークの立ち上がりレートおよび/または立ち下がりレートと、放出ピーク強度および/または波長の比率と、放出トラフの強度および/またはと、放出トラフ強度および/または波長の比率と、変曲点の波長および/または強度と、変曲点強度および/または波長の比率と、放出ピーク、放出トラフ、および/または、変曲点の個数と、放出ピーク若しくは放出トラフの形状、または、放出スペクトルの全体形状および/または形式と、を含むことができる。
【0020】
第1の蛍光体材料が第1の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能であり、そして第2の蛍光体材料が第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である2つの蛍光体材料のブレンドまたは混合物を含むフォトルミネセンス・マーキングを使用する考え方は、それ自体で新規性があると考えられる。したがって、本発明の第2の態様によれば、真正物証明用セキュリティマーキングが少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含み、少なくとも1つの蛍光体材料のみが第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光のみにより励起可能であり、そして少なくとも1つの蛍光体材料が第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲に入る波長を有する励起用放出光によって励起可能である、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする方法であって、第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、第1の波長範囲および第2の波長範囲の重なり合う領域の範囲に入る波長を有する励起用放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、第1の波長範囲と重なり合わない第2の波長範囲の一部分の範囲に入る波長を有する励起用放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、測定された少なくとも1つの選択されたパラメータを既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そしてパラメータが所定の範囲内に入る場合、マーキングの真正物性を証明するステップと、を含む方法が提供される。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、真正物証明用セキュリティマーキングが波長範囲380から780nmの範囲内にある選択された波長を有し、そして励起されたときに既知の放出特性を有している励起用放出光によって励起可能である少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含む、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする装置であって、選択された波長を有する励起用放出光を放出し、そしてマーキングを照射するように動作できる少なくとも1つの励起用光源と、マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するように動作できる検出器と、少なくとも1つの測定されたパラメータを既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そして少なくとも1つの測定されたパラメータが所定の範囲内に入る場合、マーキングの真正物性を証明する処理手段と、を含む装置が提供される。
【0022】
一実施では、この装置は、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングから放出された光を選択された波長領域に分割する波長分離手段をさらに含み、そして検出器は、選択された波長領域毎に強度を測定するように動作できる。この波長分離手段は、ゲルフィルタ、光ファイバ・グレーティング、グレーティング、または、プリズムのような1つ以上の光フィルタを含むことができる。
【0023】
本発明の別の態様によれば、第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光のみにより励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と、第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲に入る波長を有する励起用放出光によって励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料とを含むタイプのフォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする装置であって、第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光を放出し、そしてマーキングを照射するように動作できる第1の独立に動作する励起用光源と、第2の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光を放出し、そしてマーキングを照射するように動作できる第2の独立に動作する励起用光源と、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するように動作できる検出器と、少なくとも1つの選択されたパラメータを既知の放出特性を有する対応するパラメータと比較し、そしてパラメータが所定の範囲内に入る場合、マーキングの真正物性を証明する処理手段と、を含み、a)第1の波長範囲の放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するため動作し、b)第1の放出範囲および第2の放出範囲の励起用放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するため動作し、c)第1の波長範囲と重なり合わない第2の波長範囲の一部分の範囲に入る放出光でマーキングを照射し、そしてマーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するため動作し、d)少なくとも1つの選択されたパラメータの値を既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そしてパラメータが所定の範囲内に入る場合、マーキングの真正物性を証明するように動作できる装置が提供される。
【0024】
本発明の方法と同様に、本発明の装置は、選択された波長領域の強度と、選択された波長領域の強度の比率と、放出ピークの強度および/または波長と、放出ピークの立ち上がりおよび/または立ち下がりのレートと、放出ピーク強度および/または波長の比率と、放出トラフの強度および/または波長と、放出トラフ強度および/または波長の比率と、変曲点の波長および/または強度と、変曲点強度および/または波長の比率と、放出ピーク、放出トラフ、および/または、変曲点の個数と、または、放出ピークの形状と、を含むことができる1つ以上の選択されたパラメータに基づいてフォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物性を証明(認証)する。
【0025】
好ましくは、励起されたとき、セキュリティマーキングは、可視光を放出し、それによって、励起用放出光および/またはフォトルミネセンス・マーキングによって発生された光への偶発的な露光の場合にオペレータの目への損傷の危険性を最小限に抑える。蛍光体材料は、好ましくは、ダウンコンバート材料を含むので、少なくとも1つの励起用光源は、好ましくは、波長範囲400から450nmを有する励起用放出光を発生するように動作できる。典型的に、少なくとも1つの励起用光源は、1つ以上の発光ダイオードを含む。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、各蛍光体材料が波長範囲380から780nmに入る選択された波長を有する励起用放出光によって励起可能である少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つの蛍光体材料のブレンドを含む。一装置では、蛍光体材料は、同じホスト格子構造を有している。同じホスト格子を有している蛍光体材料のブレンドの利点は、このような組成が、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングを偽造するために正確な蛍光体ブレンドを分析し決定することをより困難にさせることである。
【0027】
一実施形態では、蛍光体材料は、同じ選択された波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である。別の実施形態では、少なくとも1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲を有する励起用放出光のみにより励起可能であり、少なくとも1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である。
【0028】
好ましくは、マーキングが少なくとも3つの蛍光体材料のブレンドを含むとき、少なくとも1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能であり、少なくとも1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を包含する第2の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能であり、そして少なくとも1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲および第2の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲および第2の波長範囲を包含する第3の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である。
【0029】
好ましくは、励起されたとき、セキュリティマーキングは、可視光を放出し、それによって、励起用放出光および/またはフォトルミネセンス・マーキングによって発生された光への偶発的な露光の場合にオペレータの目への損傷の危険性を最小限に抑える。したがって、蛍光体材料は、好ましくは、波長範囲400から450nmを有する励起用放出光によって励起可能であるダウンコンバート材料を含む。
【0030】
蛍光体材料の完全な混合を可能にするため、各蛍光体材料は、好ましくは、平均粒子サイズ5ミクロン以下、好ましくは、2ミクロン以下、または、1ミクロン以下を有している。
【0031】
フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、無機蛍光体材料、または、アルミネート、シリケート、ニトリド、サルフェート、オキシナイトライド、オキシサルフェート、および、ガーネットに基づく蛍光体材料を含む有機蛍光体材料のブレンドを含むことができる。マーキングは、対応する励起用光源によって励起可能であるダウンコンバート蛍光体材料およびアップコンバート蛍光体材料のブレンドを含むことができる。
【0032】
蛍光体材料のブレンドは、インクのようなバインダ材料と共に含ませることが可能であり、例えば、インクジェット印刷、活版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、または、他の印刷堆積方法によって、混合物がその後に物品または文書の表面に展着される。代替的に、蛍光体材料のブレンドは、例えば、ポリカーボネート材料、アクリル材料、または、シリコン材料のようなポリマ材料の中に含ませることができ、ポリマ材料がその後にシートまたはファイバ(スレッド/フィラメント)に加工され、シートまたはファイバをその後に文書、または、贅沢品もしくはブランド衣服のような他の物品に含ませることができる。少なくとも1つのシートが励起用放出光および蛍光体材料から放出された光を伝送する紙またはポリマのような材料のシートの間に蛍光体材料のブレンドを積層することも考えられる。積層されたシートは、その後に、例えば、クレジットカード/キャッシュカード/ストアカード、または、積層されたシートで構成されたカードの一部に展着させることができる。代替的に、蛍光体材料が紙シートの間に積層されるとき、マーキングは、フォトルミネセンス「透かし」の形式を含むことができるか、または、ラベルの形式で文書に展着させることができる。さらに別の装置では、蛍光体材料が、金属箔、金属ワイヤ、または、金属片の表面に展着され、そして箔/ワイヤ/片が物品の表面に展着されるか、または、銀行券のような文書の中に含まれる。
【0033】
フォトルミネセンス・マーキングのセキュリティをさらに向上させるため、蛍光体材料がバーコードまたは他の符号化スキームの一部として含まれることがさらに考えられる。一装置では、バーコードの線(バー)は、異なる蛍光体ブレンドを含み、そして異なる蛍光体材料からなる一連の線が符号化のさらなる形式として使用されることができる。
【0034】
本発明のさらに別の態様によれば、少なくとも1つの蛍光体材料が第1の波長範囲を有する励起用放出光のみにより励起可能であり、そして少なくとも1つの蛍光体材料が第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を包含する第2の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である、少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含むフォトルミネセンス・セキュリティマーキングが提供される。
【0035】
本発明がより良く理解されるように、本発明の実施形態が添付図面を参照して、単に一例として次に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による真正物証明システムの概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による検出器装置の略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による光ファイバに基づく検出器装置の略図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による光ファイバに基づく検出器装置の略図である。
【図5】本発明の第4の実施形態による分光計検出器装置の略図である。
【図6】蛍光体ブレンドの真正物証明をする際に用いられるパラメータを示す放出スペクトルの概略図である。
【図7a】異なるブレンドを有する3つの蛍光体材料フォトルミネセンス・セキュリティマーキングのための正規化放出スペクトル(強度対波長)を表す図である。
【図7b】図7aのスペクトルのより長い波長部分を表す図である。
【図8a】第1の波長および第2の波長を有する励起用放出光によって励起されたフォトルミネセンス・セキュリティマーキングの概略的な放出スペクトル(強度対波長)を表す図である。
【図8b】第1の波長のみを有する励起用放出光によって励起されたフォトルミネセンス・セキュリティマーキングの概略的な放出スペクトル(強度対波長)を表す図である。
【図8c】第2の波長のみを有する励起用放出光によって励起されたフォトルミネセンス・セキュリティマーキングの概略的な放出スペクトル(強度対波長)を表す図である。
【図9a】バーコードの形式をしたフォトルミネセンス・マーキングの略図である。
【図9b】バーコードの形式をしたフォトルミネセンス・マーキングの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の実施形態は、少なくとも2つ、好ましくは、3つ以上の蛍光体材料のブレンド(混合物)が真正物証明されるべき物品/文書に展着され、および/または、真正物証明されるべき物品/文書の内部に含まれるフォトルミネセンス・セキュリティマーキングとして用いられる蛍光体(フォトルミネセンス)材料に基づく真正物証明システムを対象にする。好ましくは、蛍光体材料は、各蛍光体材料が波長380nmから780nmを有する可視光を含む「目に安全」な励起用放出光によって励起可能である。さらに、励起されたとき、セキュリティマーキングは、好ましくは、可視光をさらに放出し、それによって、励起用放出光および/またはフォトルミネセンス・マーキングによって発生された光への偶発的な露光の場合にオペレータの目への損傷の危険性を実質的に除去する。典型的に、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、2つ以上のピークを有する固有の放出スペクトルを有し、そして物品/文書は、セキュリティマーキングから放出された光の1つ以上の選択されたパラメータを真正物証明用蛍光体ブレンドの固有の放出スペクトルの対応するパラメータと比較することにより、蛍光体の組成の検定によって証明(認証)することができる。
【0038】
本明細書では、選択された波長範囲に入る励起用放出光によって励起可能である蛍光体材料とは、この蛍光体がフォトダイオードのような光検出器によって測定できるような十分な強度を有する光を放出するように、この蛍光体が選択された波長範囲に入る波長を有する励起用放出光によって励起される能力を有することを意味する。励起用放出光の波長範囲が最大スペクトル効率のための波長範囲であることは要求されない。
【0039】
図1は、物品12の真正物性を証明する本発明による真正物証明システム10の概略図である。例えば、銀行券、パスポート、身分証明書、入場券(例えば、抽選券、コンサートチケットなど)、または、セキュリティカード、クレジットカード、もしくは、身分証明カードのようなカードといった文書を含むことができる物品12は、物品の表面にフォトルミネセンス・セキュリティマーキング14を有している。フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14は、インクのようなバインダ材料22の中に含まれた3つの蛍光体材料16、18、20のブレンドを含み、そして混合物が、その後に、例えば、インクジェット印刷、活版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、または、他の印刷もしくは堆積方法によって、物体12の表面に展着される。蛍光体材料のブレンドは、インクのようなバインダ材料と共に含ませることが可能であり、混合物が、その後に、例えば、インクジェット印刷、活版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、または、他の印刷堆積方法によって、物品または文書の表面に展着される。代替的に、蛍光体材料のブレンドは、例えば、ポリカーボネート材料、アクリル材料、または、シリコン材料のようなポリマ材料の中に含ませることができ、ポリマ材料がその後にシートまたはファイバ(スレッド/フィラメント)に加工され、シートまたはファイバをその後に文書、または、贅沢品もしくはブランド衣服のような他の物品に含ませることができる。少なくとも1つのシートが励起用放出光および蛍光体材料から放出された光を伝送するポリマまたは紙のような材料のシートの間に蛍光体材料のブレンドを積層することも考えられる。積層されたシートは、その後に、例えば、クレジットカード/キャッシュカード/ストアカード、または、積層されたシートで構成されたカードの一部に展着させることができる。代替的に、蛍光体材料が紙シートの間に積層されるとき、マーキングは、フォトルミネセンス「透かし」の形式を含むことができるか、または、ラベルの形式で文書に展着させることができる。さらに別の装置では、蛍光体材料が、金属箔、金属ワイヤ、または、金属片の表面に展着され、そして箔/ワイヤ/片が物品の表面に展着されるか、または、銀行券のような文書の中に含まれる。
【0040】
図1では、蛍光体材料がそれぞれ円形シンボル16、三角形シンボル18、および、正方形シンボル20によって示される。各蛍光体材料は、好ましくは、同じホストマトリックスを有しているダウンコンバート蛍光体を含み、そして波長λexを有する励起用放出光によって励起されたとき、蛍光体材料ブレンドの放出特性においてそれぞれの波長λ、λ、λでそれぞれの放出ピーク「a」、「b」、「c」を生じる。フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの内部で蛍光体材料によって吸収されない励起用放出光λexは、反射され、波長λexに放出ピーク「d」を生じることになる。
【0041】
物品12の真正物証明性は、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14の固有の放出スペクトルの1つ以上の選択されたパラメータを通じて、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14の真正物性を証明することにより、携帯型、好ましくは、ハンドヘルド型真正物証明機器24(図1では破線ボックスによって示される)を用いて証明される。真正物証明機器24は、波長λexを有する励起用放出光28でフォトルミネセンス・セキュリティマーキング14を照射するように動作できる励起用光源26と、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14のフォトルミネセンスによって発生された放出光32を測定する検出器装置30とを含む。励起用光源26および検出器装置30は、マイクロプロセッサまたはFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)のような専用回路を含むことができるコントローラ34の制御下で動かされる。励起用光源26は、好ましくは、オペレータの目が励起用放出光28に露光された場合にオペレータの目への損傷を最小限に抑えるために、「目に安全」であり、かつ、電磁スペクトルの可視部分の範囲(すなわち、380から780nm)に入る励起用放出光28を発生する1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む。励起用放出光λexの選定は、蛍光体ブレンドの組成および蛍光体材料がダウンコンバートであるか、または、アップコンバートであるかに依存することになる。好ましくは、励起されたとき、セキュリティマーキングは、可視光を放出し、それによって、励起用放出光および/またはフォトルミネセンス・マーキングによって発生された光への偶発的な露光の場合にオペレータの目への損傷の危険性を実質的に除去する。より高い効率のため、蛍光体材料は、好ましくは、ダウンコンバート材料を含み、そして波長範囲400から500nmにおいて青色光で構成された励起用放出光によって励起される。アップコンバート蛍光体が用いられるとき、励起用放出光は、波長範囲λex=650から1000nmに入る赤色からNIR(近赤外)までの光を含むことができる。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施形態による検出器装置30の略図であり、受光アパーチャ36と、コリメータレンズ38と、第1および第2の光スプリッタ40および42と、第1、第2および第3の光帯域通過(BP)フィルタ44、46および48と、第1、第2および第3の光検出器50、52および54と、第1、第2および第3のアナログ・デジタル(AからD)変換器74、76および78とを含む。物品12から放出/反射された光32が受光アパーチャ36によって受信され、そしてコリメータレンズ38によって、第1のビームスプリッタ40に入射する実質的に平行なビーム56に平行光化される。物品12から放出された光32は、物品/マーキングによって反射された励起用放出光28と、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14の内部の蛍光体材料のフォトルミネセンスによって発生された光との組み合わせを含むことになる。光スプリッタ40は、例えば、ビーム56が角度45°で鏡に衝突し、強度が実質的に等しい2つのビーム58および60に分割されるように構成されたハーフ・シルバー・ミラーのような部分反射鏡を含むことができる。一方のビーム58が光スプリッタ40によって伝送され、そしてもう一方のビーム60がスプリッタによって反射される。光スプリッタ40によって伝送されたこの光58は、第1の光帯域通過(BP)フィルタ44によって濾波され、そしてフィルタによって伝送された濾波光が第1の光検出器50によって検出される。第1の光帯域通過フィルタ44は、動作中に、第1の光検出器50が第1の放出ピーク「a」に対応する光、すなわち、波長λに中心が位置している光の強度を測定することになるように、予想される第1の放出ピーク「a」に対応する光伝送通過帯域を有している。第1の光検出器は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)66を生じる。
【0043】
各光帯域通過フィルタ44、46、48は、ガラスまたはプラスチック材料、典型的に、ポリカーボネートまたはアクリルの中に含まれた様々な無機または有機化合物を含むゲルフィルタを含むことができる。代替的に、フィルタ44、46、48は、複数の光学層が透明基材、典型的に、ガラス基材に堆積したダイクロイックフィルタを含むことができる。ダイクロイックフィルタは、非常に厳密な通過帯域の観点で優れた光学性能を提供するが、ダイクロイックフィルタは、製造するためより費用がかかり、適当であるときはいつでもコスト節約のためゲルフィルタを使用することが好ましい。
【0044】
第1の光スプリッタ40によって反射された光60は、第2の光スプリッタ42によって、1つが反射光62であり、そして1つが伝送光64である実質的に等しい強度を有する2つのビーム62、64にさらに分割される。第2のスプリッタ42によって反射された光62は、第2の光帯域通過フィルタ46によって濾波され、そしてフィルタによって伝送された濾波光は、第2の光検出器52によって検出される。第2の光帯域通過フィルタは、動作中に、第2の光検出器52が第2の放出ピーク「b」に対応する光、すなわち、波長λに中心が位置している波長を有する光の強度を測定することになるように、第2の放出ピーク「b」に対応する光通過帯域特性を有している。第2の光検出器52は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)68を生じる。
【0045】
第2の光スプリッタ42によって伝送された光64が第3の光帯域通過フィルタ48によって濾波され、そしてフィルタによって伝送された濾波光が第3の光検出器54によって検出される。第3の光帯域通過フィルタ48は、動作中に、第3の光検出器54が第3の放出ピーク「c」に対応する光、すなわち、波長λに中心が位置している光の強度を測定することになるように、第3の放出ピーク「c」に対応する光通過帯域特性を有している。第3の光検出器は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)70を生じる。
【0046】
光検出器50、52、54によって発生され、電圧V、V、Vを含み、波長λ、λ、λに中心が位置している光の強度にそれぞれ関係付けられた電気信号66、68、70は、対応するアナログ・デジタル(AからD)変換器74、76、78によって、測定強度を表す数値に変換される。数値はデータバス80を介してプロセッサ34によって読み取られる。
【0047】
動作中に、プロセッサ34は、3つの数値の比率(例えば、電圧V:V、V:V、V:V、V:V:V)を真正物証明用蛍光体ブレンドのために予想された対応する比率と比較し、そしてこれらの比率が予め選択された境界(余裕)の範囲内で対応する場合、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14は、従って、物品12は、真正物証明されるべきであると判断される。真正物証明機器24は、マーキングが可聴インジケータ(ビープ音)、特有の色灯(例えば、緑色)のような可視インジケータなどのインジケータ35(図1を参照のこと)を用いて、または、オペレータが感じることができる低周波振動のような別の物理的インジケータによって真正物証明されることをユーザに示す。測定された比率が所定の範囲内に入らない場合、機器は、好ましくは、対応する否定的インジケータ35(例えば、緑色灯)を発生する。
【0048】
場合によっては、検出器装置30は、励起用放出光λexを阻止する光フィルタ82をさらに含むことができる。図2に示されるように、フィルタ82は、コリメータレンズ38と第1の光スプリッタ40との間に設けることができるか、または、受光アパーチャ36の一部として設けることができる。フォトルミネセンス・マーキングがダウンコンバート蛍光体材料のブレンドを含むとき、フィルタ82は、実質的に減衰されないλexより長い波長を有する光を伝送するが、しかし、λex以下の波長を有する光を実質的に阻止する光学特性を有している。
【0049】
測定される光32は、強度(パワー)に基づいて分割(分離)されるので、光検出器50、52、54によって測定された光強度は、絶対強度値ではなくなることが分かるであろう。例えば、第1の光スプリッタ40の結果として、光検出器50によって測定された強度値は、受光アパーチャ36によって受信された光のおよそ半分の値であるが、光検出器52、54によって測定された強度値は、第2の光スプリッタ42の影響のため、これらの実際値のおよそ4分の1である。その結果、値は、ピーク強度の相対比率を計算する前に、プロセッサ34によって拡大縮小することが可能であり、または、真正物証明機器24は、真正物証明用蛍光体のブレンドで構成された基準セキュリティマーキングを用いて校正することができる。さらに、光パワー分割装置により、第1の光帯域通過フィルタ44の帯域通過は、最低予想強度を有するピークに対応するように選択される。
【0050】
他の実施形態では、検出器装置30は、付加的な光スプリッタ、光帯域通過フィルタ、および、励起波長λexに対応する光の強度を測定する光検出器をさらに含むことができる。このような装置を用いて、機器は、励起用放出光ピークの大きさに正規化された放出ピーク「a」、「b」、「c」の大きさに基づいて放出スペクトルの真正物性を証明することができる。
【0051】
図2に示された光学系のような自由空間光学系を用いる検出器装置30と同様に、他の実施形態では、光が光ファイバまたは固体導波路のような光媒体の内部に案内される光学装置を使用することがさらに考えられる。導波路型装置の利点は、これらの導波路装置が振動または衝撃の影響を受ける程度が少ないより小型検出器装置の製造を可能にすることである。このような検出器装置330の実施例が図3に示される。所与の実施形態に対応する最初の図番が先行する類似した符号は、類似した部品を指し示すため使用される。例えば、図2の光検出器50、52、54は、それぞれ、図3では、350、352、354として指し示される。
【0052】
図3は、図2の検出器装置30と機能的に等価である光ファイバに基づく検出器装置330の略図である。受光アパーチャ36によって受信された光32が、コリメータレンズ338によって、第1の光ファイバ384に結合される、光356は、第1の光ファイバ384によって、この光が第2の光フィルタ386と第3の光フィルタ388との間で均等に分割される第1の光スプリッタ340に案内される。光スプリッタ340は、典型的に、石英ファイバスプリッタ/カプラを含む。第2の光ファイバ386の内部の光358は、第1の光帯域通過フィルタ344によって濾波され、そしてフィルタによって伝送された光が第1の光検出器350によって検出される。
【0053】
好ましくは、光帯域通過フィルタ344、346、348は、光ファイバ・ブラック・グレーティングを含む。周知のとおり、ファイバ・ブラッグ・グレーティングは、光ファイバのコアの中に実効屈折率の周期的な摂動を含む。典型的に、摂動は、ある一定の長さ(例えば、数メートルまたは数センチメートル)に亘っておよそ周期的であり、そしてこの周期は、およそ数百ナノメートルである。ファイバ・ブラッグ・グレーティングは、屈折率の構造的な変化、従って、永続的な変更を誘起するUVレーザ(例えば、KrFまたはArFエキシマレーザ)のような強い紫外線(UV)源を用いて屈折率の周期的な変動を光ファイバのコアに「刻む」または「書き込む」ことによって作成される。光ファイバ・グレーティングを使用する利点は、検出器装置が接近した波長間隔を有するピークとピークとを識別することを可能にする非常に狭い通過帯域(およそ1nm)を有する帯域通過フィルタを製造できることである。
【0054】
第1のファイバ・ブラッグ・グレーティング344は、予想される第1の放出ピーク「a」に対応する波長を有する実質的に減衰しない光の伝送を可能にするが、他の波長を有する光(すなわち、放出ピーク「b」、「c」および「d」を含む光)を反射する(グレーティング構造によって決定された)光伝送通過帯域特性を有している。その結果、動作中に、第1の光検出器350は、波長λに中心が位置している波長を有する光である第1の放出ピーク「a」に対応する光の強度を測定することになる。第1の光検出器350は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)366を生じる。
【0055】
第3の光ファイバ388の中の光360は、第2の光スプリッタ342によって、第4の光ファイバ390および第5の光ファイバ392に均等にさらに分割される。第4の光ファイバ390の中の光362は、第2の光帯域通過フィルタ(ファイバ・ブラッグ・グレーティング)346によって濾波され、そしてフィルタによって伝送された濾波光は、第2の光検出器352によって検出される。第2の光帯域通過フィルタ346は、動作中に、第2の光検出器352が第2の放出ピーク「b」に対応する光、すなわち、波長λに中心が位置している波長を有する光の強度を測定することになるように、第2の放出ピーク「b」に対応する(グレーティング構造によって決定された)光通過帯域特性を有している。第2の光検出器352は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)368を生じる。
【0056】
第5の光ファイバ392の中の光364は、第3の光帯域通過フィルタ348によって濾波され、そしてファイバによって伝送された濾波光が第3の光検出器354によって検出される。第3の光帯域通過フィルタ(ファイバ・ブラッグ・グレーティング)348は、動作中に第3の光検出器354が第3の放出ピーク「c」に対応する光、すなわち、波長λに中心が位置している波長を有する光の強度を測定することになるように、第3の放出ピーク「c」に対応する光通過帯域特性を有している。第3の光検出器354は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)370を生じる。
【0057】
光検出器350、352、354によって発生され電圧V、V、Vを含み、波長λ、λ、λに中心が位置している光の強度にそれぞれ関係付けられた電気信号366、368、370は、対応するアナログ・デジタル(AからD)変換器374、376、378によって、測定強度を表す数値に変換される。数値はデータバス80を介してプロセッサ34によって読み取られる。
【0058】
動作中に、プロセッサ34は、3つの数値の比率(例えば、電圧V:V、V:V、V:V、V:V:V)を真正物証明用蛍光体ブレンドのため予想された比率と比較し、そしてこれらの比率が予め選択された境界(余裕)の範囲内で対応する場合、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14は、従って、物品12は、真正物証明されるべきであると判断される。
【0059】
検出された光が強度(パワー)に基づいて分割(分離)される検出器装置に加えて、他の実施形態では、波長範囲に基づいて、測定された光を分割することがさらに考えられる。図4は、光サーキュレータ494およびファイバ・ブラッグ・グレーティング・フィルタ444、446、448が、強度ではなく、波長範囲に基づいて、受信された光32を分割するため使用される、光ファイバに基づく検出器装置370の略図である。図番が先行する類似した符号は、類似した部品を指し示すため使用される。例えば、図3の光検出器350、352、354は、それぞれ、図4では、450、452、454として示される。
【0060】
受光アパーチャ436によって受信された光32は、コリメータレンズ438によって、第1の光ファイバ484の中に結合される。光456は、第1の光ファイバ484によって、4ポート光サーキュレータ494の第1のポート1に案内される。周知の通り、光サーキュレータは、光が一方向のみに、例えば、ポート1からポート2へ、次に、ポート2からポート3へ、そして以下同様に進行することを可能にするマルチポート光ファイバ部品である。その結果、ポート2から放出された光がサーキュレータへ反射される場合、光は元のポート1へ向けられるのではなく、ポート3へ向けられる。光サーキュレータの利点は、入力と反射された光パワーの高いアイソレーションと、非常に低い挿入損失とを有していることである。
【0061】
光456は、光サーキュレータ494の第2のポート2から出て、そして第2の光ファイバ486に沿って第1のファイバ・ブラッグ・グレーティング444まで進行する。第1のファイバ・ブラッグ・グレーティング444は、予想される第1の放出ピーク「a」に対応する光の実質的に減衰しない伝送を可能にするが、他の波長を有する光496(すなわち、放出ピーク「b」、「c」および「d」を含む光)を反射する(グレーティング構造によって決定された)光伝送通過帯域特性を有している。その結果、動作中に、第1の光検出器450は、波長λに中心が位置している波長を有する光である第1の放出ピーク「a」に対応する光の強度を測定することになる。第1の光検出器450は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)466を生じる。
【0062】
第1のファイバ・ブラッグ・グレーティング444によって反射された光496は、第1のファイバ486に沿って、光サーキュレータ494の第2のポート2まで戻り、そして光サーキュレータの第3のポート3から出て第4の光ファイバ490に入る。光496は、第4の光ファイバ490に沿って、第2のファイバ・ブラッグ・グレーティング446まで進行する。第2のファイバ・ブラッグ・グレーティング446は、予想される第2の放出ピーク「b」に対応する光の実質的に減衰しない伝送を可能にするが、他の波長を有する光498(すなわち、放出ピーク「c」および「d」を含む光)を反射する(グレーティング構造によって決定された)光伝送通過帯域特性を有している。その結果、動作中に、第2の光検出器452は、第2の放出ピーク「b」に対応する光、すなわち、波長λに中心が位置している波長を有する光の強度を測定することになる。第2の光検出器452は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)468を生じる。
【0063】
第2のファイバ・ブラッグ・グレーティング446によって反射された光498は、第4の光ファイバ490に沿って、光サーキュレータ494の第3のポート3まで戻り、そして光サーキュレータの第4のポート4から出て第5の光ファイバ492に入る。光498は、第5の光ファイバ492に沿って、第3のファイバ・ブラッグ・グレーティング448まで進行する。第3のファイバ・ブラッグ・グレーティング448は、予想される第3の放出ピーク「c」に対応する光の実質的に減衰しない伝送を可能にするが、他の波長を有する光(すなわち、放出ピーク「d」を含む光)を反射する(グレーティング構造によって決定された)光伝送通過帯域特性を有している。その結果、動作中に、第3の光検出器454は、波長λに中心が位置している波長を有する光である第3の放出ピーク「c」に対応する光の強度を測定することになる。第3の光検出器454は、このようにして、大きさ(電圧)が波長λでの光の強度に関係付けられた電気信号(V)470を生じる。
【0064】
光検出器450、452、454によって発生され、波長λ、λ、λでの光の強度にそれぞれ関係付けられた電圧V、V、Vを含む電気信号466、468、470が対応するアナログ・デジタル(AからD)変換器474、476、478によって、測定強度を表す数値に変換される。数値はデータバス80を介してプロセッサ34によって読み取られる。
【0065】
動作中に、プロセッサ34は、3つの数値の比率(例えば、電圧V:V、V:V、V:V、V:V:V)を真正物証明用蛍光体ブレンドのため予想された対応する比率と比較し、そしてこれらの比率が予め選択された境界(余裕)の範囲内で対応する場合、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14は、従って、物体12は、真正物証明されるべきであると判断される。
【0066】
他の検出器装置では、複屈折光スプリッタのような他の光学部品を用いて波長範囲に基づいて測定光を分割することがさらに考えられる。
【0067】
説明された検出器装置(すなわち、図2、3および4の検出器装置)のそれぞれでは、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14の真正物証明性は、測定された放出ピークの比率および/または正規化された大きさを真正物証明用蛍光体ブレンドの放出ピークの比率および/または正規化された大きさと比較し、これらが予め選択された余裕の範囲に入ることを証明することによって証明される。このような検出器装置は、実施するために比較的簡単であり、かつ、費用がかからないが、検出器装置が光強度を測定する波長(λ、λ、λ)は、帯域通過フィルタの光学特性によって固定されることが分かる。その結果、このような検出器装置は、単一蛍光体ブレンドを含むフォトルミネセンス・セキュリティマーキングを証明する場合に限り適している。他の実施形態では、検出器装置は、フォトルミネセンス標識から放出された光32の放出スペクトル(強度対波長)を測定する能力を備えた分光計装置を含むことが考えられる。このような検出器装置において説明されるように、プロセッサ34は、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングを証明するため、放出スペクトルの他の選択されたパラメータを真正物証明用蛍光体ブレンドから予想された対応するパラメータと比較することができる。さらに、このような検出器装置は、この分解能に依存して、ほとんどすべての蛍光体ブレンドで構成されたフォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物性を証明するため使用できることが分かる。
【0068】
図5は、測定光32の波長成分を分離するためプリズム5100を使用する分光計検出器装置530の略図である。検出器装置は、典型的にスロット(スリット)の形をした受光アパーチャ536と、凸円柱レンズ538と、プリズム5100と、画像センサ5102とを含む。物体12から放出された光32が受光アパーチャ536によって受信され、そしてレンズによって平行光化され、この光556がプリズム5100の面に入射する。周知の通り、プリズムは、光の波長に応じて光をスペクトル成分5104に分解し、そしてこれらの成分が画像センサ5100によって検出される。電荷結合デバイス(CCD)または相補的金属酸化物半導体(CMOS)デバイスを含むことができる画像センサ5100は、典型的にスペクトルの可視部分に対応する波長範囲に亘って光の強度を測定する。画像センサ5100によって測定された放出スペクトルは、データバス80を介して、プロセッサ34へ送られ、このプロセッサがその後にこの放出スペクトルを分析、そして物体の真正物証明をするためにスペクトルの選択されたパラメータを標準スペクトルの対応するパラメータと比較する。他の装置では、測定光が光グレーティングまたはアレイ導波路グレーティング(AWG)を使用してスペクトル成分に空間的に分解できることが分かる。付加的に、センサ上で光を走査するためにプリズムまたはグレーティングが移動させられる走査分光計装置が使用できる。このような装置では、センサは、この場合、簡単な光検出器を含むことができる。
【0069】
放出ピークの比率は、好ましい真正物証明パラメータであるが、他のパラメータがフォトルミネセンス・マーキングから放出された光の真正物性を証明するため使用できる。このようなパラメータの実施例が図6に示される。図6におけるスペクトルは、波長(λ、λ、λ)およびピーク強度(I、I、I)に3つのピーク「a」、「b」、「c」と、波長(λ、λ、λ)およびトラフ強度(I、I、I)に3つのトラフ「d」、「e」、「f」と、波長(λ)および強度(I)に1つの変曲点「g」とを有している。選択されたパラメータは、
・放出ピークの実際の波長(λ、λ、λ)および/または強度(I、I、I
・放出トラフの実際の波長(λ、λ、λ)および/または強度(I、I、I
・放出スペクトル中の変曲点に対応する波長(λ)および/または強度(I
・放出ピークの立ち上がりのレート(δI/δλ)
・放出ピークの立ち下がりのレート(δI/δλ)
・放出ピーク強度の比率(例えば、I:I:I、I:I、I:I、I:I
・放出ピーク波長の比率(例えば、λ:λ:λ、λ:λ、λ:λ、λ:λ
・放出トラフ強度に対する放出ピーク強度の比率(例えば、I:I、I:I、I:I、I:I、I:I、I:I、I:I、I:I
・放出トラフ波長に対する放出ピーク波長の比率(例えば、λ:λ、λ:λ、λ:λ、λ:λ、λ:λ、λ:λ、λ:λ、λ:λ
・ピーク線幅(すなわち、半値全幅FWHM)
・ピーク線幅の比率、および、
・励起用光源のスイッチが切られたときの蛍光体フォトルミネセンスの減衰のレート(図6に示されず)
を含むがこれらに限定されない。
【0070】
前述の通り、本発明によるフォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、「目に安全」である励起用放出光によって励起されたときにブレンドが同定可能な放出スペクトルを生じるように、少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つの蛍光体材料のブレンドを含む。好ましくは、異なる蛍光体材料が異なるアクチベータおよび/またはコアクチベータまたは異なる濃度を含む同じホストマトリックスを有している。同じホストマトリックスを有している蛍光体材料のブレンドの利点は、このような組成がフォトルミネセンス・セキュリティマーキングを偽造するために蛍光体ブレンドを分析し、リバースエンジニアリングすることをより困難にすることである。
【0071】
構成蛍光体材料は、様々な材料の間でより優れた混和性を確保するために小さい粒子サイズを有していることが好ましい。好ましくは、本発明の蛍光体ブレンドは、平均粒子サイズ(径)が5ミクロン(μm)未満、好ましくは、2μm未満、そして場合によっては、1μm未満である蛍光体粒子で構成される。
【0072】
図7aおよび図7bは、3つの蛍光体材料P、P、Pを含む4種類の重量比率ブレンドの正規化された放出スペクトルを示す。蛍光体材料は、それぞれ、(i)P 波長λ=612nmである赤色光を発生するユーロピウム(Eu)賦活イットリウムオキサイドY1.94Eu0.06と、(ii)P 波長λ=514nmである緑色光を発生するユーロピウム/マンガン(Mn)賦活バリウム・マグネシウム・アルミネートBa0.9Eu0.1Mg0.6Mn0.4Al10と、(iii)P 波長λ=444から445nmである青色光を発生するユーロピウム賦活バリウム・マグネシウム・アルミネートBa0.9Eu0.1MgAl1017とを含む。4つの蛍光体ブレンドは、それぞれ、ブレンド1−4/1/1、ブレンド2−8/1/1、ブレンド3−8/2/1、および、ブレンド4−16/2/1である蛍光体P、P、Pの重量比率ブレンドを含む。フォトルミネセンス・セキュリティマーキングをインジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)に基づくLEDによって発生させた波長λex=400nmを有する励起用放出光を用いて励起した。放出スペクトルを緑色蛍光体P(Ba0.9Eu0.1Mg0.6Mn0.4Al10)によって発生させた光に対応する第2の放出ピークに正規化した。図7bは、第3の放出ピークを詳細に示すより長い波長でのスペクトルの一部である。表1は、放出ピークの正規化強度I、I、I、および、第1の放出ピークと第2の放出ピークとの間のトラフの正規化強度IR/Gに対するそれぞれの値を放出ピーク間の比率および放出トラフに対する放出ピークの比率と共に表形式にする。
【0073】
【表1】

【0074】
各蛍光体ブレンドは、パラメータの特性集合(すなわち、正規化強度の比率)を有することが表1から分かる。図7は、蛍光体材料の様々な重量比率ブレンドが、ピークおよび/またはトラフの波長が実質的に変化しないが、放出ピーク強度の固有の比率および/またはトラフ強度に対する放出ピークの固有の比率を有するそれぞれの放出スペクトルをどのように生じるかを示す。同じ蛍光体材料の様々な重量比率ブレンドを使用する特有の利点は、各ブレンドが実質的に同じ波長でピークおよび/またはトラフを生じるので、図2、3および4に示された波長範囲のような選択された波長範囲のための強度を測定する簡単な光検出器装置が利用できることである。
【0075】
本発明の真正物証明システムは、例えば、Siがシリコン、Oが酸素であり、Aがストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)またはカルシウム(Ca)を含み、Dが塩素(Cl)、フッ素(F)、窒素(N)または硫黄(S)を含むとき、一般組成式ASi(O,D)またはASi(O,D)を有するシリケートに基づく蛍光体のような無機蛍光体と共に用いるため特に適している。シリケートに基づく蛍光体の実施例は、(同様にIntematrix Coporationに譲渡された)本出願人の同時係属中の米国特許出願第2006/0145123号、米国特許出願第2006/0261309号、米国特許出願第2007/0029526号、および、米国特許出願第7311858号に開示され、各出願の内容が参照によって本明細書に含まれる。
【0076】
米国特許出願第2006/0145123号において教示されるように、ユーロピウム(Eu2+)賦活シリケートに基づく緑色蛍光体は、一般式(Sr,A(Si,A)(O,A2+x:Eu2+を有し、式中、Aは、例えば、Mg、Ca、Ba、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)、または、セリウム(Ce)のような2陽イオン、1陽イオンと3陽イオンとの組み合わせのうちの1つであり、Aは、例えば、ホウ素、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、N、または、リン(P)のような3、4または5陽イオンであり、Aは、例えば、F、Cl、臭素(Br)、NまたはSのような1、2または3陰イオンである。この式は、A陽イオンがSrを置換し、A陽イオンがSiを置換し、そしてA陰イオンが酸素を置換することを示すため記述された。xの値は1.5と2.5との間に入る整数または非整数である。
【0077】
米国特許第7311858号は、式ASiO:Eu2+Dを有し、式中、AがSr、Ca、Ba、Mg、Znまたはカドミウム(Cd)よりなる二価金属のうちの1つであり、そしてDがF、Cl、Br、ヨウ素(I)、P、SおよびNよりなるドーパントであるシリケートに基づく黄緑色蛍光体を開示する。ドーパントDは、約0.01から20モルパーセントまで変化する量で蛍光体中に存在してもよく、ドーパントの少なくとも一部が酸素陰イオンと置き換わり、蛍光体の結晶格子の中に含まれる。蛍光体は、(Sr1−x−yBa)SiO:Eu2+Dを含むことができ、式中、Mは、Ca、Mg、ZnまたはCdを含み、そして0≦x≦1かつ0≦y≦1である。
【0078】
米国特許出願第2006/0261309号は、(M1)SiOの結晶構造と実質的に同じ結晶構造を有する第1の相と、(M2)SiOの結晶構造と実質的に同じ結晶構造を有する第2の相とを有し、式中、M1およびM2がそれぞれにSr、Ba、Mg、CaまたはZnを含む、2相シリケートに基づく蛍光体を教示する。少なくとも一方の相が二価ユーロピウム(Eu2+)で活性化され、少なくとも一方の相がF、Cl、Br、SまたはNを含むドーパントDを含有する。少なくとも一部のドーパント原子は、ホストシリケート結晶の酸素原子格子部位に位置していると考えられる。
【0079】
米国特許出願第2007/0029526号は、式(Sr1−xEuSiOを有し、式中、MがBa、Mg、CaまたはZnからなる二価金属のうちの少なくとも1つであり、0<x<0.5、2.6<y<3.3、および、0.001<z<0.5であるシリケートに基づく有機蛍光体を開示する。この蛍光体は、約565nmより長いピーク放出波長を有する可視光を放出するように構成されている。
【0080】
蛍光体は、本出願人の同時係属中の米国特許出願第2006/0158090号および米国特許7390437号(同様にIntematix Corporationに譲渡されている)において教示されているようなアルミネートに基づく材料、または、同時係属中の米国特許出願第2008/0111472号において教示されているようなアルミニウム−シリケート蛍光体をさらに含むことができ、これらの1つずつの内容は参照によって本明細書中に含まれる。
【0081】
米国特許出願第2006/0158090号は、式M1−xEuAl[1+3y/2]を有し、式中、MがBa、Sr、Ca、Mg、Mn、Zn、Cu、Cd、Smまたはツリウム(Tm)からなる二価金属のうちの1つであり、そして0.1<x<0.9かつ0.5≦y≦12であるアルミネートに基づく緑色蛍光体を教示する。
【0082】
米国特許第7390437号は、式(M1−xEu2−zMgAl[2+3y/2]を有し、式中、Mが二価金属BaまたはSrのうちの少なくとも1つであるアルミネートに基づく青色蛍光体を開示する。一組成では、蛍光体は、約280nmから420nmまで変化する波長中の放出光を吸収し、約420nmから560nmまで変化する波長を有する可視光を放出するように構成され、そして0.05<x<0.5または0.2<x<0.5であり、3≦y≦12であり、0.8≦z≦1.2である。蛍光体は、Cl、BrまたはIのようなハロゲンドーパントHをさらに添加することができ、一般組成式(M1−xEu2−zMgAl[2+3y/2]:Hを有することができる。
【0083】
米国特許出願第2008/0111472号は、混合された二価陽イオンおよび三価陽イオンを含み、一般式(Sr1−x−y3−mEu(Si1−zAl)Oを有し、式中、Mは、量が0≦x≦0.4であるBa、MgまたはCaから選択された少なくとも1つの二価金属であり、Tは、量が0≦y≦0.4であるY、ランタン(La)、Ce、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、Tm、イッテルビウム(Yt)、ルテチウム(Lu)、トリウム(Th)、プロトアクチウウム(Pa)またはウラニウム(U)から選択された三価金属であり、zおよびmが範囲0≦z≦0.2および0.001≦m≦0.5であるアルミニウム−シリケート橙赤色蛍光体を教示する。この蛍光体は、シリケート結晶の内部でハロゲンが酸素格子部位に存在するように構成されている。
【0084】
蛍光体は、内容が参照によって本明細書中に含まれる本出願人の同時係属中の仮特許出願第61/054399号において教示されるように、ナイトライドに基づく赤色蛍光体材料をさらに含むことができる。仮特許出願61/054399号は、式M3W[(2/3)m+z+a+(4/3)b−w]を有し、式中、Mがベリリウム(Be)、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cdまたは水銀(Hg)から選択された二価元素であり、MがB、Al、Ga、In、Y、Se、P、As、La、Sm、アンチモン(Sb)、または、Biから選択された三価元素であり、MがC、Si、Ge、スズ(Sn)、Ni、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、Cr、Pb、Tiまたはジルコニウム(Zr)から選択された四価元素であり、DがF、Cl、BrまたはIから選択されたハロゲンであり、ZがEu、Ce、Mn、TbまたはSmから選択されたアクチベータであり、Nが窒素であり、量は0.01≦m≦1.5、0.01≦a≦1.5、0.01≦b≦1.5、0.0001≦w≦0.6、および、0.0001≦z≦0.5である、ナイトライドに基づく赤色蛍光体を教示する。この蛍光体は、640nmより長い放出ピーク波長を有する可視光を放出するように構成されている。
【0085】
蛍光体は、本明細書中に記載された実施例に限定されることなく、有機蛍光体材料、または、例えば、ナイトライドおよび/またはサルフェート蛍光体材料、オキシナイトライドおよびオキシサルフェート蛍光体、または、ガーネット材料(YAG)のような無機蛍光体材料であるアップコンバート蛍光体またはダウンコンバート蛍光体の両方を含むどのような蛍光体材料でも含むことができることが分かる。
【0086】
他の実施形態では、異なる波長の励起用放出光でフォトルミネセンス・セキュリティマーキングを励起し、そして励起用光源の動作の様々な組み合わせに対する放出スペクトルおよび/または放出スペクトルの選択された(複数の)パラメータを測定するため、2つ以上の個別に動作可能である励起用光源(LED)26を使用することが考えられる。励起用光源を異なる組み合わせ/順列で作動させることと、放出スペクトルおよび/または選択された(複数の)パラメータを測定することとは、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物性を証明するさらなるレベルのセキュリティを提供する。このような装置では、各励起用光源26は、作動されたとき、それぞれの波長λex1、λex2を有する励起用放出光を発生し、例えば、励起用放出光400nmおよび465nmを放出するLEDを含むことができる。LEDおよびLEDの放出波長の実施例が表2に掲載される。
【0087】
【表2】

【0088】
このようなシステムでは、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、(i)第1の波長λex1(例えば、400nm)を有する励起用放出光のみにより励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と、(ii)両方の励起波長λex1およびλex2を有する放出光(例えば、波長範囲400から465nmに入る励起用放出光)によって励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料とのブレンドを含む。換言すると、1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲を有する励起用放出光のみにより励起可能であり、そして1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲と重なり合い、かつ、第1の波長範囲を含む第2の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である。各蛍光体材料は、励起されたとき、それぞれの異なる波長でそれぞれの放出ピーク(P1、P2)を有する光を放出する。適当な蛍光体材料の実施例が表3および表4に掲載される。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
このような真正物証明システムの動作が(a)第1および第2の波長λex1およびλex2を有する励起用放出光と、(b)第1の波長λex1のみを有する励起用放出光と、(c)第2の波長λex2のみを有する励起用放出光とによって励起されたフォトルミネセンス・セキュリティマーキングのための概略的な放出スペクトルを表す図8を参照して以下に記載される。動作中に、両方の励起用光源が作動され、そしてフォトルミネセンス・セキュリティマーキングが両方の波長λex1およびλex2を有する励起用放出光で照射されるとき、(図8aに示されるように)放出スペクトルは2つの蛍光体材料からの放出の和であり、この場合、第2の蛍光体材料は、両方の波長を有する励起用放出光によって励起可能であるため、第2の蛍光体材料からの比例的により大きい寄与が存在する。フォトルミネセンス・セキュリティマーキングが第1の波長のみを有する励起用放出光で照射されたとき、(図8bに示されるように)放出スペクトルは、この場合も第1の蛍光体材料および第2の蛍光体材料からの放出の和であるが、第2の蛍光体材料からの寄与は比較的弱い。最後に、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングが第2の波長のみを有する励起用放出光で照射されるとき、(図8cに示されるように)放出スペクトルは、第2の蛍光体材料からの寄与のみを含有している。このように、励起用光源を異なる組み合わせ/順列で動かし、そして放出スペクトル、および/または、例えば、第1の放出ピークの強度と第2の放出ピークの強度の比率のような放出スペクトルの選択された(複数の)パラメータを測定することによって、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物性を証明するためのさらなるレベルのセキュリティを提供する。2つの励起用光源に対する「オン」および「オフ」の様々な組み合わせをマイクロプロセッサの中にプログラムすることができる。
【0092】
さらなる実施形態では、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングを励起し、そして作動された励起用光源の様々な組み合わせに対して放出スペクトルおよび/または放出スペクトルの選択されたパラメータを測定するために、3つの個別に動作する励起用光源を使用することが考えられる。例えば、各励起用光源は、それぞれの励起波長λex1、λex2およびλex3(例えば、400nm、465nmおよび525nm)の励起用放出光を発生するように動作できるLEDを含むことができる。このような装置では、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、(i)第1の波長λex1(例えば、400nm)を有する放出光のみにより励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と、(ii)第1および第2の波長λex1およびλex2の両方を有する放出光(例えば、波長範囲400から460nmを有する励起用放出光)によって励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と、(iii)すべての励起波長λex1、λex2およびλex3を有する放出光(例えば、波長範囲400から510nmを有する励起用放出光)によって励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料とのブレンドを含む。一般に、蛍光体材料は、それぞれが、対応する異なる波長に放出ピークを有している。
【0093】
【表5】

【0094】
3つの励起用光源を用いると、励起用光源を動かすことができる7つの異なる組み合わせが存在し、これらの組み合わせは、
・励起用光源1のみ(λex1
・励起用光源2のみ(λex2
・励起用光源3のみ(λex3
・励起用光源1および2(λex1+λex2
・励起用光源1および3(λex1+λex3
・励起用光源2および3(λex2+λex3)、および、
・3つすべての励起用光源(λex1+λex2+λex3
である。
【0095】
動作中に、3つすべての励起用光源が動作し、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングが3つすべての波長λex1、λex2およびλex3を有する励起用放出光で照射されるとき、放出スペクトルは、3つの蛍光体材料からの放出の和であり、この場合、第2の蛍光体材料および第3の蛍光体材料のそれぞれは、少なくとも2つの波長(λex1およびλex2)を有する励起用放出光によって励起可能であるため、第2の蛍光体材料および第3の蛍光体材料からの比例的により大きい寄与が存在する。第1の励起用光源のみが動かされるとき、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、第1の波長λex1のみを有する励起用放出光で照射され、そして放出スペクトルは、この場合も、3つの蛍光体材料からの放出の和であるが、第2の蛍光体材料および第3の蛍光体材料からの寄与は比較的弱い。第2の励起用光源のみが動かされるとき、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、第2の波長λex2のみを有する励起用放出光で照射され、そして放出スペクトルは、第2の蛍光体材料および第3の蛍光体材料のみからの放出の和である。第3の励起用光源のみが動かされるとき、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、第3の波長λex3のみを有する励起用放出光で照射され、そして放出スペクトルは、第3の蛍光体材料のみからの放出に対応する。第1の励起用光源および第2の励起用光源が動作するとき、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、波長λex1およびλex2を有する励起用放出光で照射され、そして放出スペクトルは、3つの蛍光体材料からの放出の和であり、第3の蛍光体からの寄与は、3つすべての励起用光源が動作する状況より低くなる。第1の励起用光源および第3の励起用光源が動作するとき、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、波長λex1およびλex3を有する励起用放出光で照射され、そして放出スペクトルは、3つの蛍光体材料からの放出の和であり、第3の蛍光体からの寄与は、第1の励起用光源および第2の励起用光源が動作する状況より高くなる。最後に、第2の励起用光源および第3の励起用光源が動作するとき、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングは、波長λex2およびλex3を有する励起用放出光で照射され、そして放出スペクトルは、第2の蛍光体材料および第3の蛍光体材料からの放出の和であり、第2の蛍光体が単一波長の放出光によって励起され、そして第3の蛍光体が2つの波長の放出によって励起されるので、各寄与の大きさはより低くなる。その結果、フォトルミネセンス・マーキングは、どの励起用光源が動作するかに依存して、最大で7つの異なる放出スペクトルを生じることができる。
【0096】
本発明が説明された特定の実施形態に限定されないこと、および、本発明の範囲に含まれる変形を行えることが分かる。例えば、他の実施形態では、フォトルミネセンス・セキュリティマーキング14は、例えば、バーコードのようなさらなるセキュリティ機器を含ませることが考えられる。バーコードの形をしたフォトルミネセンス・セキュリティマーキングが図9aおよび9bに示される。周知のように、バーコードは、データを符号化するため使用される幅および/または間隔を有する一連の平行線(バー)を含む。図9aに示されるように、そして本発明によれば、フォトルミネセンス・バーコード・マーキングは、少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含有するインクで構成された一連の平行線106を含む。フォトルミネセンス・バーコード・マーキング14は、蛍光体材料を励起しない光を使用する従来型のバーコード・スキャナ装置を用いて読み取ることができ、そして蛍光体マーキングは、前述の真正物証明機器を用いて証明することができる。他の装置では、図9bに示されるように、バーコードは、異なる蛍光体および/または蛍光体ブレンドを含有する一連のバー106、108、110を含むことができる。このようなフォトルミネセンス・セキュリティマーキングと一体となって、真正物証明機器は、好ましくは、励起用放出光を使ってバーコードを走査し、そして放出スペクトルが個別のバーおよび/または選択されたバーのグループに対して測定される。異なる蛍光体材料を含有するバー106、108、110は、設定された順序で装置することができるか、または、バーの順序は、例えば、バーの順序をバーの符号化に連結することにより符号化することができる。一装置では、特定の幅を有するバーは、それぞれの蛍光体または蛍光体ブレンドを含むことができる。他の装置では、フォトルミネセンス・マーキングは、バーコードの線と線との間の空間の中に設けることができる。本発明のフォトルミネセンス・マーキングは、本質的に2次元バーコードであるマトリックス符号のような他の符号化の形式に含ませることができ、データがドット、正方形、および、他の幾何学的シンボルのパターンの形式で符号化されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真正物証明用セキュリティマーキングが、
波長範囲が380から780nmの範囲内にある選択された波長を有し、
そして励起されたときに既知の放出特性を有している励起用放出光によって励起可能である少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含む、
フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする方法であって、
a)前記選択された波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射するステップと、
b)前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、
c)前記少なくとも1つの測定されたパラメータを前記既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そして前記パラメータが所定の範囲内に入る場合、前記マーキングの真正物性を証明するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記マーキングは、
第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光のみにより励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と、
前記第1の波長範囲と重なり合い、かつ、前記第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲に入る波長を有する励起用放出光によって励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と
を含み、
a)前記第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、
b)前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲の重なり合う領域の範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、
c)前記第1の波長範囲と重なり合わない前記第2の波長範囲の一部分の範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、
d)前記少なくとも1つの測定されたパラメータを前記既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そして前記パラメータが所定の範囲内に入る場合、前記マーキングの真正物性を証明するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの選択されたパラメータは、
選択された波長領域の強度と、選択された波長領域の強度の比率と、
放出ピークの強度と、放出ピークの波長と、放出ピークの立ち上がりのレートと、放出ピークの立ち下がりのレートと、放出ピーク強度の比率と、放出ピーク波長の比率と、
放出トラフの強度と、放出トラフの波長と、放出トラフ強度の比率と、放出トラフ波長の比率と、
変曲点の波長と、変曲点の強度と、変曲点強度の比率と、変曲点波長の比率と、
放出ピークの個数と、放出トラフの個数と、変曲点の個数と、
放出ピークの形状と、
これらの組み合わせとよりなるグループから選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
真正物証明用セキュリティマーキングが少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含み、
少なくとも1つの蛍光体材料のみが第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光のみにより励起可能であり、
そして少なくとも1つの蛍光体材料が前記第1の波長範囲と重なり合い、かつ、
前記第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲に入る波長を有する励起用放出光によって励起可能である、
フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする方法であって、
a)前記第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、
b)前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲の重なり合う領域の範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、
c)前記第1の波長範囲と重なり合わない前記第2の波長範囲の一部分の範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するステップと、
d)ステップa)、b)およびc)において測定された前記選択されたパラメータを既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そして前記パラメータが所定の範囲内に入る場合、前記マーキングの真正物性を証明するステップと、
を含む方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの選択されたパラメータは、
選択された波長領域の強度と、選択された波長領域の強度の比率と、
放出ピークの強度と、放出ピークの波長と、放出ピークの立ち上がりのレートと、放出ピークの立ち下がりのレートと、放出ピーク強度の比率と、放出ピーク波長の比率と、
放出トラフの強度と、放出トラフの波長と、放出トラフ強度の比率と、放出トラフ波長の比率と、
変曲点の波長と、変曲点の強度と、変曲点強度の比率と、変曲点波長の比率と、
放出ピークの個数と、放出トラフの個数と、変曲点の個数と、
放出ピークの形状と、
これらの組み合わせとよりなるグループから選択される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
真正物証明用セキュリティマーキングが、波長範囲380から780nmの範囲内にある選択された波長を有し、
そして励起されたとき、既知の放出特性を有している励起用放出光によって励起可能である少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含む、
フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする装置であって、
前記選択された波長を有する励起用放出光を放出し、そして前記選択された波長を有する励起用放出光でマーキングを照射するように動作できる少なくとも1つの励起用光源と、
前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するように動作できる検出器と、
前記少なくとも1つの測定されたパラメータを既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そして前記少なくとも1つの測定されたパラメータが所定の範囲内に入る場合、前記マーキングの真正物性を証明する処理手段と、
を含む装置。
【請求項7】
前記フォトルミネセンス・セキュリティマーキングから放出された前記光を選択された波長領域に分割する波長分離手段をさらに含み、
そして前記検出器は、選択された波長領域毎に強度を測定するように動作できる、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記波長分離手段は、
光フィルタ、ゲルフィルタ、ダイクロイックフィルタ、グレーティング、光ファイバ・グレーティング、および、プリズムよりなるグループから選択される、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの選択されたパラメータは、
選択された波長領域の強度と、選択された波長領域の強度の比率と、
放出ピークの強度と、放出ピークの波長と、放出ピークの立ち上がりのレートと、放出ピークの立ち下がりのレートと、放出ピーク強度の比率と、放出ピーク波長の比率と、
放出トラフの強度と、放出トラフの波長と、放出トラフ強度の比率と、放出トラフ波長の比率と、
変曲点の波長と、変曲点の強度と、変曲点強度の比率と、変曲点波長の比率と、
放出ピークの個数と、放出トラフの個数と、変曲点の個数と、
放出ピークの形状と、
これらの組み合わせとよりなるグループから選択される、
請求項6に記載の装置。
【請求項10】
真正物証明性マーキングが、
第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光のみにより励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と、
前記第1の波長範囲と重なり合い、かつ、前記第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲に入る波長を有する励起用放出光によって励起可能である少なくとも1つの蛍光体材料と
を含む、フォトルミネセンス・セキュリティマーキングの真正物証明をする装置であって、
i)前記第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光を放出し、そして前記第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射するように動作できる第1の独立に動作する励起用光源と、
ii)前記第2の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光を放出し、そして前記第2の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射するように動作できる第2の独立に動作する励起用光源と、
iii)前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するように動作できる検出器と、
iv)前記少なくとも1つの選択されたパラメータを既知の放出特性を有する対応するパラメータと比較し、そして前記パラメータが所定の範囲内に入る場合、前記マーキングの真正物性を証明する処理手段と、
を含み、
前記装置は、
a)前記第1の波長範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するため動作し、
b)前記第1の放出範囲および前記第2の放出範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の前記少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するため動作し、
c)前記第1の波長範囲と重なり合わない前記第2の波長範囲の一部分の範囲に入る波長を有する励起用放出光で前記マーキングを照射し、そして前記マーキングから放出された光の前記少なくとも1つの選択されたパラメータを測定するため動作し、
d)前記少なくとも1つの選択されたパラメータの値を既知の放出特性の対応するパラメータと比較し、そして前記パラメータが所定の範囲内に入る場合、前記マーキングの真正物性を証明するように動作できる
装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの選択されたパラメータは、
選択された波長領域の強度と、選択された波長領域の強度の比率と、
放出ピークの強度と、放出ピークの波長と、放出ピークの立ち上がりのレートと、放出ピークの立ち下がりのレートと、放出ピーク強度の比率と、放出ピーク波長の比率と、
放出トラフの強度と、放出トラフの波長と、放出トラフ強度の比率と、放出トラフ波長の比率と、
変曲点の波長と、変曲点の強度と、変曲点強度の比率と、変曲点波長の比率と、
放出ピークの個数と、放出トラフの個数と、変曲点の個数と、
放出ピークの形状と、
これらの組み合わせとよりなるグループから選択される、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの励起用光源は、波長範囲400から450nmを有する励起用放出光を発生するように動作できる、
請求項6に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの励起用光源は、発光ダイオードである、
請求項6に記載の装置。
【請求項14】
各蛍光体材料が
波長範囲380から780nmに入る選択された波長を有する励起用放出光によって励起可能である少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含む、
フォトルミネセンス・セキュリティマーキング。
【請求項15】
前記蛍光体材料は、同じホスト格子構造を有している、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項16】
各蛍光体材料は、同じ波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項17】
前記少なくとも1つの蛍光体材料は、第1の波長範囲を有する励起用放出光のみにより励起可能であり、
そして少なくとも1つの蛍光体材料は、前記第1の波長範囲と重なり合い、かつ、前記第1の波長範囲を包含する第2の異なる波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項18】
前記マーキングは、少なくとも3つの蛍光体材料のブレンドを含み、
少なくとも1つの蛍光体材料が、第1の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能であり、
少なくとも1つの蛍光体材料が、前記第1の波長範囲と重なり合い、かつ、前記第1の波長範囲を包含する第2の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能であり、
そして少なくとも1つの蛍光体材料が、前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲と重なり合い、かつ、前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲を包含する第3の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項19】
少なくとも2つの蛍光体材料の前記ブレンドは、
バインダ材料と共に含まれるグループ、
インクと共に含まれるグループ、
ポリマ材料の中に含まれるグループ、
ポリマ材料のシートの中に含まれるグループ、
ポリマ材料のファイバの中に含まれるグループ、
少なくとも1つのシートが前記励起用放出光と前記蛍光体材料から放出された光とを伝送する材料のシートの間に積層されるグループ、
金属箔の表面に展着されるグループ、
金属箔の表面に展着され、および、バーコードの一部分として含まれるグループ
から選択される、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項20】
前記蛍光体材料は、波長範囲400から450nmを有する励起用放出光で励起可能である、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項21】
各蛍光体材料は、5ミクロン以下、2ミクロン以下、および、1ミクロン以下よりなるグループから選択された平均粒子サイズを有している、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項22】
前記蛍光体材料は、アルミネート、シリケート、ニトリド、サルフェート、オキシナイトライド、オキシサルフェート、および、ガーネット材料よりなるグループから選択される、
請求項14に記載のマーキング。
【請求項23】
少なくとも1つの蛍光体材料が第1の波長範囲を有する励起用放出光のみにより励起可能であり、
そして少なくとも1つの蛍光体材料が、前記第1の波長範囲と重なり合い、かつ、前記第1の波長範囲を包含する第2の波長範囲を有する励起用放出光によって励起可能である、 ところの少なくとも2つの蛍光体材料のブレンドを含む
フォトルミネセンス・セキュリティマーキング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2012−507084(P2012−507084A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533379(P2011−533379)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061896
【国際公開番号】WO2010/048535
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】