説明

蛍光体含有ガラス及びその製造方法

【課題】製造時、加工時等にガラス及び蛍光体粒子が加熱された際に、蛍光体粒子の劣化を抑制することのできる蛍光体含有ガラスを提供する。
【解決手段】波長変換用の蛍光体含有ガラスにおいて、蛍光体粒子7と、蛍光体粒子7の表面を覆う被覆材71と、被覆材71により表面が覆われた蛍光体粒子7を含むガラス材6と、を有し、被覆材71はガラス材6のガラス転移温度以上の耐熱性を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体含有ガラス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光ランプに塗布されるシリケート系蛍光体において、蛍光体粒子の表面をホウ素化合物にてコーティングする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、EL(エレクトロルミネッセンス)ランプに使用される蛍光体において、蛍光体粒子の表面を耐水性無機系物質で被覆した後、被覆物質の表面を溶融し固化する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、蛍光体粒子の表面被覆方法として、有機溶媒中に蛍光体粒子を分散状態とし、1種または複数の金属アルコラートの加水分解反応を利用して、蛍光体粒子の表面を金属酸化物、または金属の被覆酸化物で被覆する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、発光素子を封止するガラスに蛍光体粒子を含有させることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平2−91188号公報
【特許文献2】特開平4−178486号公報
【特許文献3】特開平4−279693号公報
【特許文献4】特開2008−71837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献4に記載のように、蛍光体粒子をガラスに含ませると、蛍光体含有ガラスの製造時、加工時等に加えられる熱により、蛍光体粒子が劣化して発光特性が変化するおそれがある。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造時、加工時等にガラス及び蛍光体粒子が加熱された際に、蛍光体粒子の劣化を抑制することのできる蛍光体含有ガラス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明では、蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子の表面を覆う被覆材と、前記被覆材により表面が覆われた前記蛍光体粒子を含むガラス材と、を有し、前記被覆材は、前記ガラス材のガラス転移温度以上の耐熱性を有する蛍光体含有ガラスが提供される。
【0006】
上記蛍光体含有ガラスにおいて、前記被覆材は、前記ガラス材のガラス転移温度にて、前記蛍光体粒子及び前記ガラス材の固溶を阻止することが好ましい。
【0007】
上記蛍光体含有ガラスにおいて、前記蛍光体粒子は、珪酸塩系蛍光体であり、前記ガラス材は、珪酸系ガラスであるようにしてもよい。
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、蛍光体粒子の表面を被覆材により覆う被覆工程と、前記被覆材により表面が覆われた前記蛍光体粒子からなる蛍光体粉末とガラス粉末とを混合して混合粉末を作製する混合工程と、前記混合粉末を焼成する焼成工程と、を含み、前記被覆材は、前記焼成工程における焼成温度以上の耐熱性を有する蛍光体含有ガラスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造時、加工時等にガラス及び蛍光体が加熱された際に、蛍光体の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1から図5は本発明の一実施形態を示し、図1は発光装置の概略縦断面図である。
【0011】
図1に示すように、この発光装置1は、フリップチップ型のGaN系半導体材料からなるLED素子2と、LED素子2を搭載する搭載基板3と、搭載基板3に形成されタングステン(W)−ニッケル(Ni)−金(Au)で構成される回路パターン4と、LED素子2を封止するとともに搭載基板3と接着され蛍光体粒子7を含むガラス封止部6とを有する。また、LED素子2と搭載基板3との間には、ガラスがまわりこまない中空部5が形成されている。本実施形態においては、搭載基板3および回路パターン4が、LED素子2を搭載しLED素子2へ電力を供給するための搭載部を構成している。
【0012】
発光素子としてのLED素子2は、サファイア(Al)からなる成長基板の表面に、III族窒化物系半導体をエピタキシャル成長させることにより、バッファ層と、n型層と、MQW層と、p型層とがこの順で形成されている。このLED素子2は、700℃以上でエピタキシャル成長され、その耐熱温度は600℃以上であり、後述する低融点の熱融着ガラスを用いた封止加工における加工温度に対して安定である。また、LED素子2は、p型層の表面に設けられるp側電極21を有するとともに、p型層からn型層にわたって一部をエッチングすることにより露出したn型層に形成されるn側電極22を有する。p側電極21とn側電極22には、それぞれバンプ23が形成される。
【0013】
LED素子2は、厚さ100μmで300μm角に形成されており、熱膨張率は7×10−6/℃である。ここで、LED素子2のGaN層の熱膨張率は5×10−6/℃であるが、大部分を占めるサファイアからなる成長基板の熱膨張率が7×10−6/℃であるため、LED素子2本体の熱膨張率は成長基板の熱膨張率と同等となっている。尚、各図においてはLED素子2の各部の構成を明確にするために実寸と異なるサイズで各部を示している。
【0014】
搭載基板3は、アルミナ(Al)の多結晶焼結材料からなり、厚さ0.25mmで1.0mm角に形成されており、熱膨張率が7×10−6/℃である。図1に示すように、搭載基板3の回路パターン4は、基板表面に形成されてLED素子2と電気的に接続される表面パターン41と、基板裏面に形成されて外部端子と接続可能な裏面パターン42と、を有している。表面パターン41と裏面パターン42は、搭載基板3を厚さ方向に貫通するビアホールに設けられるビアパターン43により電気的に接続されている。
【0015】
ガラス封止部6は、蛍光体粒子7が均一に分散された珪酸系ガラスからなる。本実施形態においては、珪酸系ガラスとして、ZnO−B−SiO−Nb−NaO−LiO系の熱融着ガラスが用いられる。尚、ガラスの組成はこれに限定されるものではなく、例えば、熱融着ガラスは、LiOを含有していなくてもよいし、任意成分としてZrO、TiO等を含んでいてもよい。図1に示すように、ガラス封止部6は、搭載基板3上に直方体状に形成され、厚さが0.5mmとなっている。
【0016】
ガラス封止部6の側面6aは、ホットプレス加工によって搭載基板3と接着された板ガラスが、搭載基板3とともにダイサー(dicer)でカットされることにより形成される。また、ガラス封止部6の上面6bは、ホットプレス加工によって搭載基板3と接着された板ガラスの一面である。この熱融着ガラスは、ガラス転移温度(Tg)が490℃で、屈伏点(At)が520℃であり、LED素子2のエピタキシャル成長層の形成温度よりも、ガラス転移温度(Tg)が十分に低くなっている。本実施形態においては、エピタキシャル成長層の形成温度よりも、ガラス転移温度(Tg)が200℃以上低くなっている。また、熱融着ガラスの100℃〜300℃における熱膨張率(α)は6×10−6/℃である。熱膨張率(α)は、ガラス転移温度(Tg)を超えるとこれより大きな数値となる。これにより、熱融着ガラスは約600℃で搭載基板3と接着し、ホットプレス加工が可能となっている。また、ガラス封止部6の熱融着ガラスの屈折率は1.7である。
【0017】
ここで、熱融着ガラスとは加熱により溶融状態又は軟化状態として成形したガラスであり、ゾルゲル法により成形されるガラスと異なる。ゾルゲルガラスでは成形時の体積変化が大きいのでクラックが生じやすくガラスによる厚膜を形成することが困難であるところ、熱融着ガラスはこの問題点を回避することができる。また、ゾルゲルガラスでは細孔を生じるので気密性を損なうことがあるが、熱融着ガラスはこの問題点を生じることもなく、LED素子2の封止を的確に行うことができる。
【0018】
図2は、発光装置のガラス封止部の拡大断面説明図である。
図2に示すように、蛍光体粒子7は、被覆材71により表面が覆われている。蛍光体粒子7は、LED素子2のMQW層から発せられる青色光により励起されると、黄色領域にピーク波長を有する黄色光を発する黄色蛍光体である。本実施形態においては、蛍光体粒子7として珪酸塩系蛍光体が用いられ、その平均粒径は6〜20μmであり、最大粒径は50μmである。珪酸塩系蛍光体は、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu2+である。尚、蛍光体粒子7は、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)系蛍光体や、YAG系と珪酸塩系蛍光体を所定の割合で混合したもの等であってもよい。
【0019】
被覆材71は、ガラス封止部6のガラス転移温度以上の耐熱性を有する。本実施形態においては、被覆材71は、アルミナ(Al)の微粒子からなり、最大粒子径は1μmであり、厚さは20nm〜1μmである。本実施形態においては、被覆材71の耐熱温度は、1000℃以上である。尚、被覆材71は、耐熱性を有するものであればアルミナ以外の材料であってもよく、例えばシリカを用いてもよい。
【0020】
以上のように構成された発光装置1では、回路パターン4を通じてLED素子2に電圧が印加されると、LED素子2から青色光が発せられる。LED素子2から発せられた青色光の一部はガラス封止部6内の蛍光体粒子7により黄色光に変換され、他部は蛍光体粒子7により波長変換されることなくガラス封止部6から外部へ放出される。これにより、ガラス封止部6から放射される光は、黄色領域と青色領域とにピーク波長を有することとなり、この結果、装置外部へは白色光が放射される。
【0021】
この発光装置1の製造方法について、図3の工程説明図を参照して以下に説明する。
まず、平均粒径が15μmの珪酸塩系蛍光体からなる蛍光体粒子7の表面を、アルミナからなる被覆材71により被覆する(被覆工程)。本実施形態においては、有機溶媒を用いて、アルミナの微粒子を蛍光体粒子7の表面に付着させた後、加熱することにより蛍光体粒子7に結合させる。
【0022】
一方、ガラス封止部6のガラス材である珪酸系ガラスを粉砕して、平均粒径が30μmのガラス粉末を作製する。このガラス粉末に、被覆材71により表面が覆われた蛍光体粒子7からなる蛍光体粉末を混合して混合粉末を作製する(混合工程)。本実施形態においては、被覆材71付きの蛍光体粒子7がガラス粉末内に均一に分散された混合粉末10を作製する。
【0023】
次いで、混合粉末10をガラス転移温度で焼成することにより、蛍光体含有ガラスが製造される(焼成工程)。具体的には、混合工程にて生成された混合粉末10を荷重を加えながら溶融した後に、この混合粉末を固化して蛍光体含有ガラスとしての蛍光体分散ガラス11を生成する。ここで、被覆材71は、ガラス転移温度である焼成温度以上の耐熱性を有することから、焼成工程にてガラス材と蛍光体粒子7とが接触するようなことはなく、焼成工程にて蛍光体粒子7が被覆材71により保護され、蛍光体粒子7の劣化が抑制される。特に、本実施形態においては、ガラス材が珪酸塩系ガラスであり、蛍光体粒子7が珪酸塩系蛍光体であることから、仮に被覆材71が存在しないならば、ガラス材と蛍光体粒子7が固溶して蛍光体の特性が損なわれてしまう。
【0024】
図4は蛍光体分散ガラスの加工状態を示す説明図であり、(a)は混合粉末から蛍光体分散ガラスを生成する加工装置を示し、(b)は混合粉末から生成された蛍光体分散ガラスを示し、(c)は得られた蛍光体分散ガラスをスライスした状態を示している。
【0025】
より具体的には、図4(a)に示すように、下台80の平坦な上面80aに、下台80上の所定領域を包囲する筒状の側面枠81を設けて、上方を開口した凹部82を形成する。凹部82は上下にわたって同じ断面であり、凹部82の断面形状に対応して形成された荷重治具83の下部83aが、凹部82内で上下に移動可能となっている。この凹部82に混合粉末10を入れた後、凹部82内を加圧する荷重治具83をセットする。そして、雰囲気空気を、7.6Torrに減圧するとともに650℃に加熱し、荷重治具83を利用して20kg/cmの圧力を混合粉末10に加えて溶解する。
【0026】
この後、溶解した混合粉末10を冷却して固化することにより、図4(b)に示すような、光学的に影響が生じるサイズの残留気泡や白濁を生じることなく被覆材71付きの蛍光体粒子7が分散された蛍光体分散ガラス11を得ることができる。生成された蛍光体分散ガラス11は、図4(c)に示すように、ガラス封止部6の厚さに対応するようスライスされて板状に加工される(板状加工工程)。本実施形態においては、ガラス封止部6の厚さは0.5mmである。
【0027】
一方、蛍光体分散ガラス11とは別個に、ビアホールが形成された搭載基板3を用意し、搭載基板3の表面に回路パターンに応じてWペーストをスクリーン印刷する。次いで、Wペーストを印刷された搭載基板3を1000℃余で熱処理することによりWを搭載基板3に焼き付け、さらに、W上にNiめっき、Auめっきを施すことで回路パターン4を形成する(パターン形成工程)。
【0028】
次に、搭載基板3の回路パターン4の表面パターン41に複数のLED素子2を各バンプ23によって電気的に接合する(素子実装工程)。本実施形態においては、p側2点、n側1点の合計3点のバンプ接合が施される。
【0029】
そして、各LED素子2を実装した搭載基板3を下金型91、板状の蛍光体分散ガラス30を上金型92にセットする。下金型91及び上金型92にはそれぞれヒータが配置され、各金型91,92で独立して温度調整される。次いで、図5に示すように、略平坦な搭載基板3の実装面に蛍光体分散ガラス11を重ねて、下金型91及び上金型92を加圧し、窒素雰囲気中でホットプレス加工を行う。本実施形態においては、ホットプレス加工の温度は、600℃であり、被覆材71の耐熱温度の範囲である。従って、被覆材71は、ホットプレス加工時の加工温度以上の耐熱性を有することから、ホットプレス加工時にガラス材と蛍光体粒子7とが接触するようなことはなく、蛍光体粒子7が被覆材71により保護され、蛍光体粒子7の劣化が抑制される。
【0030】
これにより、LED素子2が搭載された搭載基板3に蛍光体分散ガラス11が融着され、LED素子2は搭載基板3上で蛍光体分散ガラス11により封止される(ガラス封止工程)。ここで、図5は、ホットプレス加工の状態を示す模式説明図である。本実施形態においては、加圧圧力を20〜40kgf/cm程度として加工を行った。ここで、ホットプレス加工は、各部材に対して不活性な雰囲気中で行えばよく、窒素雰囲気の他に例えば真空中で行うようにしてもよい。
【0031】
ここで、ホットプレス加工のサイクルタイムを短縮するために、プレス前に予熱ステージを設けてガラス封止部6を予め加熱したり、プレス後に徐冷ステージを設けてガラス封止部6の冷却速度を制御するようにしてもよい。また、予熱ステージ及び徐冷ステージにおいてプレスすることも可能であり、ホットプレス加工時の工程は適宜に変更可能である。
【0032】
以上の工程で、複数の発光装置1が横方向に連結された状態の図5に示すような中間体12が作製される。この後、ガラス封止部6と一体化された搭載基板3をダイサー(dicer)にセットして、各LED素子2を分離するようダイシングして発光装置1が完成する(ダイシング工程)。ガラス封止部6及び搭載基板3がともにダイサーによりカットされることで、搭載基板3及びガラス封止部6の側面が面一となる。
【0033】
以上説明したように、被覆材71がガラス転移温度以上の耐熱性を有するので、蛍光体含有ガラスの製造時、及び、蛍光体含有ガラスを用いたLED素子2の封止加工時に、蛍光体粒子7の劣化を抑制することができる。特に、本実施形態においては、ガラス材と蛍光体粒子7とがガラス転移温度以上で互いに固溶し易い性質を有することから、被覆材71によりこれらの固溶を阻止し、蛍光体としての特性を損なうことなくガラス中に蛍光体粒子7を分散させることができる。
【0034】
尚、前記実施形態では、LED素子2としてGaN系半導体材料からなるものを用いた発光装置1を説明したが、LED素子はGaN系のLED素子2に限定されず、例えばZnSe系やSiC系のように他の半導体材料からなる発光素子であってもよい。
【0035】
また、前記実施形態においては、珪酸塩系蛍光体と珪酸系ガラスの組合せを示したがが、例えば燐酸塩系蛍光体と燐酸系ガラス、硼酸塩系蛍光体と硼酸塩系ガラス等のように、蛍光体とガラスが同系の無機材料からなり、ガラス転移温度以上で互いに固溶し易い他の組合せであっても、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、例えばYAG系蛍光体と珪酸系ガラスのように互いに固溶し難い組合せであっても、蛍光体粒子7の劣化を抑制することができる。
【0036】
また、前記実施形態においては、1つのLED素子2が封止された発光装置1を示したが、例えば図6に示すように、複数のLED素子2が一括して封止された発光装置101としてもよいことは勿論である。図6の発光装置101は、3つのLED素子2が所定方向(図6中横方向)に並べられるとともに電気的に直列に接続されている。
【0037】
また、前記実施形態においては、ガラス封止部6が直方体状に形成されたものを示したが、例えば図7に示すように、表面が湾曲して形成されたものであってもよい。図7の発光装置201は、縦横3つずつで計9つのLED素子2が搭載基板3に搭載され、ガラス封止部6の表面6cが半球状に形成されている。
【0038】
また、前記実施形態のガラス封止部6は耐候性に優れているものの、装置の使用条件等によって結露が生じた場合には、ガラス封止部6が変質するおそれがある。これに対しては、結露が生じない装置構成とすることが望ましいが、例えば図8に示すように、ガラス封止部6の表面を被覆する透明材61を設けて、高温状態での結露によるガラスの変質を防止するようにすることができる。図8の発光装置301では、透明材61としてシリコン樹脂が用いられ、透明材61の表面はLED素子2から発せられた光を集光するレンズ形状をなしている。尚、透明材61として、耐湿性だけでなく、耐酸性及び耐アルカリ性を有するものとして、例えばSiO系、Al系等のような無機材料を用いることもできる。
【0039】
また、前記実施形態においては、蛍光体含有ガラスによりLED素子2を封止するものを示したが、例えば図9に示すように、LED素子2と離隔して用いるようにしてもよい。図9の発光装置401は、フェイスアップ型のLED素子402が、樹脂からなるケース体403の底部に搭載されている。ケース403の底部には一対のリードフレーム404が露出しており、ケース403の開口が板ガラス405により塞がれている。板ガラス405は、前記実施形態のガラス材と同じ材質であり、被覆材71により表面が覆われた蛍光体粒子7が分散されている。この発光装置401によれば、LED素子402と板ガラス405が離隔して配置されているので、LED素子402発光時の熱が板ガラス405へ伝達することはなく、LED素子402から伝達される熱による蛍光体粒子7の劣化を抑制することができる。
【0040】
さらに、図10に示すように、蛍光体含有ガラスをレンズ504として用いることもできる。図10の発光装置501は、水平方向へ延びる一対のリードフレーム503と、リードフレーム503にフリップチップ実装されるLED素子502と、リードフレーム503に固定されLED素子502から発せられる光を集光するレンズ504と、を有している。ここで、各リードフレーム503の先端の上面は他の部分よりも凹んで形成され、各凹部に収納され各リードフレーム503に掛け渡されるサブマウント505が設けられている。サブマウント505は、LED素子502に電力を供給するための配線506を有している。レンズ504は、LED素子502を収容する凹部504aを有し、リードフレーム503及びサブマウント505の平坦な上面に載置して固定されている。
【0041】
また、前記実施形態においては、素子搭載基板がアルミナからなるものを示したが、アルミナ以外のセラミックから構成するようにしてもよい。アルミナより熱伝導性に優れる高熱伝導性材料からなるセラミック基板として、例えば、BeO、W−Cu基板等を用いてもよい。さらに、前記実施形態においては、発光素子としてLED素子2を用いたもの示したが、発光素子はLED素子に限定されず、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明の一実施形態を示す発光装置の概略縦断面図である。
【図2】図2は発光装置のガラス封止部の拡大断面説明図である。
【図3】図3は工程説明図である。
【図4】図4は蛍光体分散ガラスの加工状態を示す説明図であり、(a)は混合粉末から蛍光体分散ガラスを生成する加工装置を示し、(b)は混合粉末から生成された蛍光体分散ガラスを示し、(c)は得られた蛍光体分散ガラスをスライスした状態を示している。
【図5】図5はホットプレス加工の状態を示す模式説明図である。
【図6】図6は変形例を示す発光装置の概略縦断面図である。
【図7】図7は変形例を示す発光装置の概略縦断面図である。
【図8】図8は変形例を示す発光装置の概略縦断面図である。
【図9】図9は変形例を示す発光装置の概略縦断面図である。
【図10】図10は変形例を示す発光装置の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 発光装置
2 LED素子
3 搭載基板
4 回路パターン
5 中空部
6 ガラス封止部
6a 側面
6b 上面
6c 表面
7 蛍光体粒子
10 混合粉末
11 蛍光体分散ガラス
12 中間体
21 p側電極
22 n側電極
23 バンプ
41 表面パターン
42 裏面パターン
43 ビアパターン
44 放熱パターン
61 透明材
71 被覆材
80 下台
80a 上面
81 側面枠
82 凹部
83 荷重治具
83a 下部
91 下金型
92 上金型
101 発光装置
201 発光装置
301 発光装置
401 発光装置
402 LED素子
403 ケース体
404 リードフレーム
405 板ガラス
501 発光装置
502 LED素子
503 リードフレーム
504 レンズ
504a 凹部
505 サブマウント
506 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子と、
前記蛍光体粒子の表面を覆う被覆材と、
前記被覆材により表面が覆われた前記蛍光体粒子を含むガラス材と、を有し、
前記被覆材は、前記ガラス材のガラス転移温度以上の耐熱性を有する蛍光体含有ガラス。
【請求項2】
前記被覆材は、前記ガラス材のガラス転移温度にて、前記蛍光体粒子及び前記ガラス材の固溶を阻止する請求項1に記載の蛍光体含有ガラス。
【請求項3】
前記蛍光体粒子は、珪酸塩系蛍光体であり、
前記ガラス材は、珪酸系ガラスである請求項2に記載の蛍光体含有ガラス。
【請求項4】
蛍光体粒子の表面を被覆材により覆う被覆工程と、
前記被覆材により表面が覆われた前記蛍光体粒子からなる蛍光体粉末とガラス粉末とを混合して混合粉末を作製する混合工程と、
前記混合粉末を焼成する焼成工程と、を含み、
前記被覆材は、前記焼成工程における焼成温度以上の耐熱性を有する蛍光体含有ガラスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−83704(P2010−83704A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253528(P2008−253528)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】