説明

蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置および画像表示装置

【課題】 封止樹脂として珪素含有化合物を用いる場合に、発光装置の耐久性は維持しつつ、ハンドリング可能な粘度を実現し、さらに従来主流として用いられていたエポキシ樹脂と同等以上の接着性をも満足する半導体発光素子の封止用蛍光体含有組成物、並びにこれを用いた発光装置、画像表示装置、および照明装置を提供する。
【解決手段】 (A)蛍光体、(B)珪素含有化合物および(C)溶剤を含有し、(C)溶剤が炭素数5〜10の炭化水素でかつ沸点が150℃以下であることを特徴とする蛍光体含有組成物、並びにこれを用いた発光装置、画像表示装置、および照明装置。好ましくは、(C)溶剤が、ヘキサン、シクロヘキサンから選ばれる1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置、および画像表示装置に関する。詳しくは、半導体発光装置に使用される蛍光体含有組成物、および前記蛍光体含有組成物を用いて形成された発光装置、および前記発光装置を用いて形成された照明装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光装置は、照明装置や画像表示装置等の各種光源に用いられている。半導体発光装置は、通常、半導体発光素子を、蛍光体が分散配置 された封止層で封止され
ることにより形成される。この封止層は蛍光体と、封止材と呼ばれる樹脂様物質と、必要に応じて添加剤を配合された組成物からなり、この組成物を発光素子が配置された基体に充填、塗布を行なうことによって、発光素子が封止されている。この組成物が液体の場合は、充填、塗布などの後に、熱や光などによって重合、硬化させて固体の封止層とされることもある。
【0003】
従来、多くの半導体発光装置は前記封止材としてエポキシ樹脂を用いているものが主流であった(特許文献1)。しかしながら、波長が短い高エネルギーの光に対する耐光性、並びに耐熱性が充分でないなどの理由で大電力用発光装置としては耐久性に問題があった。そこで、エポキシ樹脂のこれらの欠点を解消する候補として珪素含有化合物が検討されている(特許文献2)。ところが珪素含有化合物はエポキシ樹脂に比べて一般に接着性等に劣り、発光素子や素子が配置されるパッケージから剥離しやすいという問題があるため、耐光性や耐熱性における優位性にもかかわらず実用化に至っていないのが現状である。
【0004】
一方、半導体発光装置に用いる蛍光体含有組成物は、発光素子を封止する充填、塗布などの工程があり、前記組成物の粘度は適切な範囲にあることがハンドリングする実用上必須である。そこで、前記組成物の粘度管理が重要となる。
従来、組成物粘度の調整方法として溶剤を添加する方法は知られているが(特許文献2)、選択する溶剤によっては、蛍光体含有組成物の安定性が悪い場合があった。また、溶剤の添加によって、蛍光体含有組成物を用いた半導体発光装置の高耐久性及び高接着性までをも担保するという概念はこれまで提示されたことはなく、それを達成する技術もこれまで知られていなかった。
【特許文献1】特開2000−286458号公報
【特許文献2】特表2005−537651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の様に、半導体発光装置の技術分野において、珪素含有化合物としての耐久性は維持しつつ、ハンドリングに適した粘度を実現し、さらに従来主流として用いられていたエポキシ樹脂と同等以上の接着性をも満足する蛍光体含有組成物が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は鋭意検討の結果、珪素含有化合物に特定の溶剤を用いることにより、珪素含有化合物の耐久性を維持しつつハンドリングに適した粘度を持ち、さらに実用的な接着性までも兼ね備えた蛍光体組成物が得られることを見いだした。
すなわち、本発明の要旨は下記〔1〕〜〔5〕に存する。
〔1〕(A)蛍光体、(B)珪素含有化合物および(C)溶剤を含有し、(C)溶剤が炭素数4〜10の炭化水素でかつ沸点が150℃以下であることを特徴とする蛍光体含有組
成物。
〔2〕(C)溶剤が、ヘキサン、シクロヘキサンから選ばれる1以上である前記〔1〕に記載の蛍光体含有組成物。
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の蛍光体含有組成物を用いて形成された発光装置。
〔4〕前記〔3〕に記載の発光装置を用いて形成された照明装置。
〔5〕前記〔3〕に記載の発光装置を用いて形成された画像表示装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]蛍光体含有組成物
本発明の蛍光体含有組成物は、(A)蛍光体、(B)珪素含有化合物および(C)溶剤を含有し、(C)溶剤が炭素数4〜10の炭化水素でかつ沸点が150℃以下であることを必須要件とする。また、要すればその他の任意成分を含有していてもよい。
[1−1](A)蛍光体
本発明の蛍光体含有組成物に用いられる蛍光体とは、一般に光の照射によって可視光を発する物質をいう。
【0008】
かかる蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるYAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが好ましい。
【0009】
結晶母体の好ましい例としては、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物、YS等の酸硫化物、(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩、YSiO、ZnSiO等の珪酸塩、SnO、Y等の酸化物、GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩、Ca10(PO(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl等のハロリン酸塩、Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0010】
但し、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであればいずれも用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、本明細書では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。この場合、( )内の元素の合計は1モルである。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0011】
[1−1−1]橙色ないし赤色蛍光体
橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「橙色ないし赤色蛍光体」という。
)としては、以下のものが挙げられる。当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常580nm以上、好ましくは585nm以上、また通常780nm以下、好ましくは700nm以下の波長範囲にあることが好適である。このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0012】
また、その他、赤色蛍光体としては、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn、等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY(SiO:Eu、Ca(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)SiNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−x−yScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0013】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0014】
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Mg)(PO:Sn2+等のSn付活リン酸塩蛍光体等が挙げられる。
【0015】
以上例示した赤色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
以上の例示の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce、(La,Y)S:Euが好ましく、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、(La,Y)S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)SiO:Euが好ましい。
【0016】
[1−1−2]緑色蛍光体
緑色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という。)としては、以下のも
のが挙げられる。 緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用
することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常490nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは515nm以上、また、通常560nm以下、好ましくは540nm以下、より好ましくは535nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0017】
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0018】
また、その他、緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Mg,Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)
S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi10:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。 また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0019】
[1−1−3]青色蛍光体
青色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という。)としては以下のもの
が挙げられる。青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは470nm以下、より好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0020】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)(POCl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0021】
また、その他、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr
Si・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0022】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。 以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Ca,Mg)SiO:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Euが好ましく、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
なお、上述のような蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0023】
[1−1−4]黄色蛍光体
黄色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「黄色蛍光体」という。)としては以下のもの
が挙げられる。)黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
【0024】
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やM12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0025】
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。 また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0026】
[1−1−5]蛍光体の組み合わせ
本発明の蛍光体含有組成物に使用される蛍光体の具体的な好ましい組み合わせの例として、赤色蛍光体としてEu付活窒化物蛍光体から選ばれる1以上の蛍光体、ならびに緑色蛍光体としてCe付活珪酸塩蛍光体およびCe付活酸化物蛍光体から選ばれる1以上の蛍光体を含有する蛍光体含有組成物が挙げられる。
【0027】
Eu付活窒化物赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg
,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等
が挙げられ、中でもCaAlSiN:Eu(以下「CASN」と略記することがある。)、および(Sr,Ca)AlSiN:Eu(以下「SCASN」と略記することがある)が好適である。
【0028】
Ce付活珪酸塩緑色蛍光体としては、CaScSi12:Ce、Ca(Sc
,Mg,Na,Li)Si12:Ce等が挙げられ、中でもCa(Sc,Mg,
Na,Li)Si12:Ce(以下「CSMS」と略記することがある)が好適である。
Ce付活酸化物緑色蛍光体としては、CaSc:Ce(以下「CSO」と略記することがある。)の組み合わせが挙げられる。これらの蛍光体の組み合わせと配合比率は半導体発光装置とした際に所望の色度座標、演色指数、発光効率などが得られるように適宜変更すればよい。
【0029】
[1−1−6]その他の蛍光体の物性
本発明に使用する蛍光体の粒径は特に制限はないが、中央粒径(D50)で通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。D50が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう虞がある。一方、D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる虞がある。
【0030】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。また、蛍光体粒子の形状は、蛍光体部形成に影響を与えない限り、特に限定されない。
【0031】
なお、本発明において、中央粒径(D50)、粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から得ることが出来る。前記重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールなどの溶媒に蛍光体を分散させる。
【0032】
レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定する。
この重量基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を中央粒径D50と表記する。また、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDが小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0033】
[1−1−7]蛍光体の表面処理
本発明に使用する蛍光体は、耐水性を高める目的で、または蛍光体含有組成物中で蛍光体の不要な凝集を防ぐ目的で、表面処理が行われていてもよい。
かかる表面処理の例としては、例えば特開2002−223008号公報に記載の有機材料、無機材料、ガラス材料などを用いた表面処理、特開2000−96045号公報等に記載の金属リン酸塩による被覆処理、金属酸化物による被覆処理、シリカコート等の公知の表面処理が挙げられる。
【0034】
具体的には、例えば蛍光体の表面に上記金属リン酸塩を被覆させるには、(i)所定量
のリン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどの水溶性のリン酸塩と塩化カルシウム、硫酸ストロンチウム、塩化マンガン、硝酸亜鉛等のアルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の水溶性の金属塩化合物とを蛍光体を懸濁した水中に添加し、攪拌する。(ii)アルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の金属のリン酸塩を懸濁水中で生成させると共に、生成したこれらの金属リン酸塩を蛍光体表面に沈積させる。(iii)水分を除去する。
【0035】
また、シリカコートとしては、水ガラスを中和してSiOを析出させる方法、アルコキシシランを加水分解したもので表面処理する方法(例えば、特開平3−231987号公報)等が挙げられ、分散性を高める点においてはアルコキシシランを加水分解したもので表面処理する方法が好ましい。
【0036】
[1−1−8]蛍光体の配合量
本発明にかかる(A)蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。(A)蛍光体の配合量は、通常発光装置としたときに得ようとする発光色により決定されるが、後述する(B)珪素含有化合物100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、更に好ましくは1重量部以上であり、通常100重量部以下、80重量部以下、更に好ましくは60重量部以下である。(A)蛍光体の配合量が少なすぎる場合は特に問題はないが、多すぎると蛍光体含有組成物の流動性が悪くなり、発光装置を作製する際に、例えば半導体発光素子を封入するための塗布工程、もしくは充填工程が困難になる。
【0037】
[1−2](B)珪素含有化合物
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダー樹脂としての役割を有する。珪素含有化合物は、一般に耐熱性、耐紫外線(UV)性等に優れるため、特に本発明に好適に用いられる。
珪素含有化合物としては、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0038】
[1−2−1]シリコーン系材料
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば一般組成式(1)で表される化合物及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
・・・式(1)
ここで、RからRは同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。またM、D、T及びQは0から1未満であり、M+D+T+Q=1を
満足する数である。
シリコーン系材料を半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
【0039】
[1−2−2]シリコーン系材料の種類
また、シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0040】
[1−2−2−1]付加型シリコーン系材料
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0041】
[1−2−2−2]縮合型シリコーン系材料
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0042】
【化1】

【0043】
(式(1)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を
表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
【0044】
【化2】

【0045】
(式(2)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を
表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし
、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
また、硬化触媒としては、例えば金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。
【0046】
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば特願2006−47274号〜47277号明細書及び特願2006−176468号明細書に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが欠点とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
〈1〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
〈2〉後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
【0047】
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80
ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〈3〉シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
【0048】
本発明においては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈1〉を有するシリコーン系材料が好ましい。より好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料が好ましい。以下、上記の特徴〈1〉〜〈3〉について説明する。
[1−2−2−2−1]特徴〈1〉(ケイ素含有率)
本発明に好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiOのみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略す
る。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。 {ケイ素含有率の測定}
【0049】
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
[1−2−2−2−2]特徴〈2〉(固体Si−NMRスペクトル)
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
【0050】
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に好適なシリコーン系材料において、(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般に後述の(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
【0051】
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大きすぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
【0052】
また、ピークの半値幅が小さすぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
【0053】
本発明に好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使
用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。 {固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}
【0054】
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
【0055】
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX-400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料 テトラメトキシシラン
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
【0056】
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
【0057】
[1−2−2−2−3]特徴〈3〉(シラノール含有率)
本発明に好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0058】
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば(固体Si−NMRスペクトル)の(固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出)において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0059】
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、
デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
【0060】
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。[1−2−3](B)珪素含有化合物の含有量
(B)珪素含有化合物は、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。(B)珪素含有化合物の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で(A)蛍光体を添加する必要がある。少なすぎると流動性がなく取り扱いにくい。
【0061】
(B)珪素含有化合物は、前述の様に、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。そのバインダーは、珪素含有化合物を単独で用いてもよいが、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。他の熱硬化性樹脂は、珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度含有することが望ましい。他の熱硬化性樹脂の含有量は、通常、バインダーに対して25重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0062】
[1−3](C)溶剤
本発明の蛍光体含有組成物に用いられる(C)溶剤は、前記(B)珪素含有化合物の粘度を適切な範囲とし、同時に(B)珪素含有化合物を用いて形成された半導体発光装置の耐久性を維持しつつ、この組成物を熱硬化して形成された封止層の発光素子、基体、パッケージ等への高い接着性を担保する目的で用いられる。
【0063】
本発明にかかる(C)溶剤が上記効果を奏する理由は明らかでないが、以下の理由を推定することができる。即ち、沸点の比較的低い溶剤は揮発性が高いので、珪素含有化合物の熱硬化時に揮発し、硬化した後の蛍光体含有組成物中にはほとんど残存していないことがわかっており、また、熱硬化後の蛍光体含有組成物は柔軟性が増し、熱などによる応力を吸収しやすくなっている。柔軟性が増す理由は定かではないが、揮発過程で微小なボイドを形成しているためと考えられる。
【0064】
半導体発光装置の熱応力に対する試験法の一つとして半田リフロー試験がある。最近の鉛フリーの流れの中でリフローには260℃程度が要求されている。この柔軟性を有する熱硬化封止層は、溶媒を使用せずに形成された剛直な封止層に比べて、リフロー時の剥離が起こりにくい特徴がある。
本発明にかかる(C)溶剤の沸点は通常50℃以上、好ましく60℃以上であり、150℃以下、好ましくは90℃以下である。沸点が高すぎると熱硬化時に組成物中に残留する可能性があり、その場合、リフロー時に溶剤が揮発し剥離が起きることがある。一方、沸点が低すぎる作業中に揮発して取り扱いが不便である。
【0065】
本発明にかかる(C)溶剤は炭素数5〜 10好ましくは5〜8の炭化水素である。こ
のような炭化水素は、環状、直鎖状、分岐状の炭化水素を用いることができ、具体的には、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等を挙げることができる。中でもヘキサン、シクロヘキサンが珪素含有化合物と相溶性の観点から好ましい。
【0066】
また、(C)溶剤は、1種類を単独で、または2種類を混合して用いることも出来る。
(C)溶剤は、蛍光体含有組成物の粘度が所望の値となるように、(B)珪素含有化合物の粘度に応じて添加量を調整することができる。(B)珪素含有化合物又は(B)珪素含有化合物を含むバインダーに対して、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。(B)珪素含有化合物の量が多すぎると粘度が高く、少なすぎると流動性が低いため取り扱いにくい。
【0067】
また、本発明の要旨を超えない範囲で、(C)溶剤以外の溶剤を混合しても良い。このような混合溶剤は、特に制限はないが、例えば残留してしまう可能性を考慮して、酸化や還元されにくいアルコールやエーテル系の溶剤を挙げることができる。具体的には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、メトキリベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、シンナミルアルコール、ベンズヒドロール、ベンジルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
(C)溶剤以外の溶剤を添加する場合、その含有量は、通常、(B)珪素含有化合物又は(B)珪素含有化合物を含むバインダーに対して通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0068】
[1−4]その他の成分
本発明の蛍光体含有組成物は、上記成分の他に、硬化剤、硬化触媒、架橋材、色素、酸化防止剤、安定化剤(燐系加工安定化剤などの加工安定化剤、酸化安定化剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤などの耐光性安定化剤など)、シランカップリング剤、光拡散材、フィラーなど、当該分野で公知の添加物のいずれをも用いることができる。
【0069】
[1−5]蛍光体含有組成物の製造方法、特性
本発明の蛍光体含有組成物は、例えば後述する方法により製造される。また、製造された蛍光体組成物は、粘度、劣化度において、後述する各種特性を有することが好ましい。
[1−5−1]製造方法
本発明の蛍光体含有組成物は、(A)蛍光体(B)珪素含有化合物、(C)溶剤、必要に応じて架橋剤、硬化触媒、フィラー、その他の成分を配合し、ミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、ニーダー等で混合する等、従来公知の方法で製造することができる。
【0070】
この場合、(B)珪素含有化合物、架橋剤、硬化触媒、(A)蛍光体及びシリカ微粒子などのフィラー、(C)炭素数5〜10の炭化水素でかつ沸点が150℃以下である溶剤、並びに他の添加剤を全て混合して、1液の形態として蛍光体含有組成物を製造しても良いが、(i)(B)珪素含有化合物と(A)蛍光体、(C)溶剤及びフィラーを主成分とする珪素含有化合物液と、(ii)架橋剤と硬化触媒を主成分とする架橋剤液の2液を調製しておき、使用直前に珪素含有化合物液と架橋剤液を混合して液状蛍光体含有組成物を製造しても良い。また、(C)溶剤以外を全て混合した後、もしくは、全てを混合した後で、粘度調整として(C)溶剤を添加してもよい。
【0071】
[1−5−2]蛍光体含有組成物の物性
[1−5−2−1]粘度
本発明の蛍光体含有組成物の粘度は、通常500mPa・s以上、好ましくは1000mPa・s以上、さらに好ましくは2000mPa・s以上であり、通常15000mP
a・s以下、10000mPa・s以下、好ましくは8000mPa・s以下である。粘度が高すぎると注入時に配管の閉塞などトラブルの原因となりやすく、また気泡が抜けにくい、更には半導体素子のリードワイヤーの断線が起こりやすいなどの悪影響をもたらす。一方、粘度が低すぎると蛍光体粒子の沈降が起こるので好ましくない。
上記の粘度はE型粘度計を用いて閉鎖系で測定する。通常25℃、回転数5rpmの条件で測定する。
【0072】
[1−5−2−2]耐紫外線性
本発明の蛍光体含有組成物は耐紫外線性が以下の様に優れていることが特徴である。即ち、下記の耐紫外線性試験における透過率維持率が高く、紫外線に対する耐久性が高い。
〔耐紫外線性試験〕
i)加速耐光試験機(スガ試験機株式会社製メタリングウエザーメーターMV3000)で340nmでの照射強度を0.4kW/mとし、3日間処理する。
ii)処理前後の波長450nmの光の透過率を測定し、処理前の透過率に対する処理後の透過率の割合(透過率維持率)を算出し、これを劣化の指標として評価する。
【0073】
[1−5−2−3]接着性(リフロー性)
接着性とは蛍光体含有組成物と半導体チップ及びパッケージなどの界面の接着性をいう。半導体発光装置は通電により発光すると同時に、発熱する。そこで、それぞれの材質の熱膨張係数が異なることに起因し、前記界面には応力が発生し、界面での接着力が低い場合には剥離が起こる。また、半導体発光装置を回路基板等に直接半田付けすることがあり、その工程においては半導体発光装置が短時間に急激な加熱を受けるため、同様の界面剥離が生ずることがある。半導体発光装置の熱応力に対する試験法の一つとして半田リフロー試験がある。本試験法は発光装置を融解した半田浴に浸漬、取り出しを繰り返し、発光装置の耐久性を試験するものである。
【0074】
具体的には蛍光体含有組成物を充填し硬化させたパッケージを85℃85%RHに1時
間置いたのち、260℃に加温した半田浴にパッケージの底面を10秒間接触させる。これを4回繰り返した後でパッケージ表面の蛍光体含有組成物の変化、例えば蛍光体含有組成物と半導体チップ及びカップなどの界面での剥離の有無を確認する。
[2]発光装置
本発明の発光装置は、[1]に記載の蛍光体含有組成物を用いて、公知の方法により形成される。以下、本発明の発光装置について説明する。
[2−1]光源
本発明の発光装置における光源は、前記[1−1]の(A)蛍光体を励起する光を発光するものである。光源の発光波長は、蛍光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の蛍光体を使用することができる。通常は、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する蛍光体が使用可能であり、具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光体が使用される。この光源としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(LED)や半導体レーザーダイオード(LD)等が使用できる。
【0075】
中でも、光源としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、同じ電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlxGayN発光層、GaN発光層、又はInxGayN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInxGayN発光層
を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InxGayN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
なお、上記においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlxGayN層、GaN層、又はInxGayN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0076】
[2−2]蛍光体の選択
本発明の発光装置において、前述の蛍光体(赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、1種以上の蛍光体を適切に組み合わせればよい。光源として青色発光素子を使用する場合は蛍光体として青色の補色関係にある黄色蛍光体を、より演色性の高い白色を得るには赤、及び緑色蛍光体を使用することが好ましい。近紫外光を発する半導体発光素子を用いる場合は赤、緑、青の3色の蛍光体を使用するのが好ましい。
【0077】
具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、光源と、蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、以下の(i)〜(iii)の組み合わせ
が挙げられる。
(i)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体および緑色蛍光体を使用する。
(ii)光源として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を併用する。
(iii)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、橙色蛍光体および緑色蛍光体
を使用する。
【0078】
[2−3]発光装置の構成
本発明の発光装置は、上述の光源および本発明の蛍光体含有組成物を備えていればよく、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の光源および蛍光体含有組成物を配置してなる。この際、光源の発光によって蛍光体が励起されて発光を生じ、且つ、この光源の発光および/または蛍光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、赤色蛍光体は、緑色蛍光体、青色蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、赤色蛍光体を含有する層の上に緑色蛍光体を含有する層が、さらにその上に青色蛍光体を含有する層が積層されていてもよい。
【0079】
[2−4]発光装置の実施形態
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置1は、フレーム2と、光源である青色LED3と、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し、それとは異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4からなる。
【0080】
フレーム2は、青色LED3、蛍光体含有部4を保持するための金属製の基部である。フレーム2の上面には、図1中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成され
ている。これにより、フレーム2はカップ形状となっているため、発光装置1から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。更に、フレーム2の凹部2A内面は、銀などの金属メッキにより、可視光域全般の光の反射率を高められており、これにより、フレーム2の凹部2A内面に当たった光も、発光装置1から所定方向に向けて放出できるようになっている。
【0081】
フレーム2の凹部2Aの底部には、光源として青色LED3が設置されている。青色LED3は、電力を供給されることにより青色の光を発するLEDである。この青色LED3から発せられた青色光の一部は、蛍光体含有部4内の発光物質(蛍光体)に励起光として吸収され、また別の一部は、発光装置1から所定方向に向けて放出されるようになっている。
また、青色LED3は前記のようにフレーム2の凹部2Aの底部に設置されているが、ここではフレーム2と青色LED3との間は接着剤5によって接着され、これにより、青色LED3はフレーム2に設置されている。
【0082】
更に、フレーム2には、青色LED3に電力を供給するための金製のワイヤ6が取り付けられている。つまり、青色LED3の上面に設けられた電極(図示省略)とは、ワイヤ6を用いてワイヤボンディングによって結線されていて、このワイヤ6を通電することによって青色LED3に電力が供給され、青色LED3が青色光を発するようになっている。なお、ワイヤ6は青色LED3の構造にあわせて1本又は複数本が取り付けられる。
【0083】
更に、フレーム2の凹部2Aには、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4が設けられている。蛍光体含有部4は、本発明による蛍光体含有組成物により形成されている。蛍光体は、青色LED3が発する青色光により励起されて、青色光よりも長波長の光である光を発する物質である。蛍光体含有部4を構成する蛍光体は一種類であっても良いし、複数からなる混合物であってもよく、青色LED3の発する光と蛍光体発光部4の発する光の総和が所望の色になるように選べばよい。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と白色との間の中間的な色であっても良い。
【0084】
モールド部7は、青色LED3、蛍光体含有部4、ワイヤ6などを外部から保護するとともに、配光特性を制御するためのレンズとしての機能を持つ。モールド部7には主にエポキシ樹脂を用いることができる。
図2は、図1に示す発光装置1を組み込んだ面発光照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。図2において、8は面発光照明装置、9は拡散板、10は保持ケースである。
【0085】
この面発光照明装置8は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース10の底面に、多数の発光装置1を、その外側に発光装置1の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置したものである。発光の均一化のために、保持ケース10の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板9を固定している。
そして、面発光照明装置8を駆動して、発光装置1の青色LED3に電圧を印加することにより青色光等を発光させる。その発光の一部を、蛍光体含有部4において波長変換材料である蛍光体が吸収し、より長波長の光に変換し、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により、高輝度の発光が得られる。この光が拡散板9を透過して、図面上方に出射され、保持ケース10の拡散板9面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0086】
また、本発明の発光装置において、特に励起光源として面発光型のものを使用する場合、蛍光体含有部を、本発明による蛍光体含有組成物の液状のものを用いて、ディップ塗布、ブレード塗布、インクジェット塗布などの手段によって膜状とするのが好ましい。即ち、面発光型の発光体からの光は断面積が十分大きいので、蛍光体含有部をその断面の方向に膜状とすると、第1の発光体からの蛍光体への照射断面積が蛍光体単位量あたり大きくなるので、蛍光体からの発光の強度をより大きくすることができる。
【0087】
また、光源として面発光型のものを使用し、蛍光体含有部として膜状のものを用いる場合、光源の発光面に、直接膜状の蛍光体含有部を接触させた形状とするのが好ましい。ここでいう接触とは、光源と蛍光体含有部とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、光源からの光が蛍光体含有部の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を高くすることができる。
【0088】
図3は、このように、光源として面発光型のものを用い、蛍光体含有部として膜状のものを適用した発光装置の一例を示す模式的斜視図である。図3中、11は、前記蛍光体を有する膜状の蛍光体含有部、12は光源としての面発光型GaN系LD、13は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、光源12のLDと蛍光体含有部11とそれぞれ個別につくっておいてそれらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、光源12の発光面上に蛍光体含有部11を製膜(成型)させても良い。これらの結果、光源12と第2の蛍光体含有部11とを接触した状態とすることができる。
【0089】
[3]発光装置の用途
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。また、単独で、又は複数個を組み合わせて用いても良い。具体的には、例えば、照明ランプ、液晶パネル用等のバックライト、超薄型照明等の種々の照明装置、画像表示装置の光源として使用することができる。なお、本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、カラーフィルターと併用してもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[1]実施例1、2、比較例1〜7の製造
[1−1]実施例1
信越化学工業社製付加硬化型シリコーン樹脂(商品名:LPS−1400;主材)と
硬化剤(商品名:C−1400)との混合物100重量部(主材:硬化剤=100:10
)に 溶剤ヘキサン3重量部を加えてシンキー社製攪拌装置(あわとり練太郎AR−10
0)で3分混練して組成物とした。
【0091】
リフロー試験用には、東洋電波社製SMD LEDパッケージ「TY−SMD1202B」(2.8mm×3.5mm×1.9mm)を使用して、LEDパッケージの最上面まで充填し、150℃、4時間の雰囲気下で硬化させた。十分冷却した後、リフロー試験を行った。結果を表1に示す。
耐紫外線性試験用には、縦50mm横20mm幅2mmの成型型に組成物を流し込み、150℃、4時間の雰囲気下で硬化させた。十分冷却した後、耐紫外線性試験を行った。結果を表1に示す。
【0092】
[1−2]実施例2
実施例1の溶剤ヘキサンをシクロヘキサンに変更した以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
[1−3]比較例1
実施例1の溶剤ヘキサンを加えないこと以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、
同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
【0093】
[1−4]参考例1
比較例1の組成物に橙色蛍光体として(Sr,Ba)SiO:Eu 6.3重量部、緑色蛍光体としてSr2BaSiO5:Eu 6.3重量部、日本アエロジル社製シリカ微粒子(商品名:アエロジルRY200S)0.5重量部を加えたこと以外は比較例1と同様にして組成物を作成し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
[1−5]比較例2
シリコーン樹脂をジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂(商品名:YX8043;主材)と硬化剤(商品名:YLH1113)との混合物100重量部(主材:硬化剤=1
00:70)に変更し、硬化温度を100℃3時間の後さらに150℃3時間とした以外は比較例1と同様にして組成物を作製し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
【0094】
[1−6]比較例3
実施例1の溶剤ヘキサンをトルエンに変更した以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
[1−7]比較例4
実施例1の溶剤ヘキサンをドデカンに変更した以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
[1−8]比較例5
実施例1の溶剤ヘキサンをオクタデカンに変更した以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
【0095】
[1−9]比較例6
実施例1の溶剤ヘキサンをメチルエチルケトンに変更した以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
[1−10]比較例7
実施例1の溶剤ヘキサンをエタノールに変更した以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、同様の方法により封止材入りパッケージを製造した。
【0096】
[2]性能評価
[2−1]粘度測定
粘度はブルックフィールド社製E型粘度計(DV−II+Pro コーンプレートタイプ)を用いて閉鎖系で測定する。通常25℃、回転数5rpmの条件で測定した。
[2−2]接着性(リフロー性)評価
組成物を充填し硬化させたパッケージ(東洋電波社製SMD LEDパッケージ「TY−SMD1202B」(2.8mm×3.5mm×1.9mm))を85℃85%RHに1時間置いたのち、260℃に加温した半田浴にパッケージの底面を10秒間接触させる
。これを4回繰り返した後でカップ表面の組成物の変化やパッケージと組成物との間の剥離を確認する。表面われや剥離が観察された場合は不良とし、試験前と変化がない場合を良とした。試験回数は5回とし、良品の割合を%で示した。
【0097】
[2−3]耐紫外線性評価
i)スガ試験機株式会社製加速耐光試験機「メタリングウエザーメーターMV3000」を用いて、340nmでの照射強度を0.4kW/mとし、3日間処理した。
ii)処理前後の波長450nmの光の透過率を測定し、処理前の透過率に対する処理後の透過率の割合(透過率維持率)を算出した。
【0098】
【表1】

【0099】
なお、封止樹脂に蛍光体もしくはフィラーなどの無機粉体を添加した場合、封止層を加熱・冷却した際の体積膨張・収縮が緩和されるためにリフロー性は良好になる傾向にある(参考例1参照)。
本実施例は、蛍光体等の影響によらない厳密なリフロー性を確認するため、あえて蛍光体等を配合しなかった。実際の蛍光体含有組成物においては、蛍光体等を配合するため、溶剤の配合量を多めにし、粘度を調整する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置、及び画像表示装置は、珪素含有化合物としての耐久性は維持しつつ、ハンドリング可能な粘度を実現し、さらに従来主流として用いられていたエポキシ樹脂と同等以上の接着性をも満足するという極めて優れた効果を奏する。従って、当該各分野における産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の発光装置を用いた面発光照明装置の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の発光装置の他の実施の形態を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
1 発光装置
2 フレーム
2A フレームの凹部
3 青色LED(第1の発光体)
4 蛍光体含有部(第2の発光体)
5 銀ペースト
6 ワイヤ
7 モールド部
8 面発光照明装置
9 拡散板
10 保持ケース
11 蛍光体含有部
12 光源
13 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)蛍光体、(B)珪素含有化合物および(C)溶剤を含有し、(C)溶剤が炭素数5〜10の炭化水素でかつ沸点が150℃以下であることを特徴とする蛍光体含有組成物。
【請求項2】
(C)溶剤が、ヘキサン、シクロヘキサンから選ばれる1以上である請求項1に記載の蛍光体含有組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蛍光体含有組成物を用いて形成された発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発光装置を用いて形成された照明装置。
【請求項5】
請求項3に記載の発光装置を用いて形成された画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−115332(P2008−115332A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302030(P2006−302030)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】