説明

蛍光体基板と画像表示装置、及びこれらの製造方法

【課題】電子放出素子を備えた画像表示装置に用いる蛍光体において、装置の製造時の加熱工程による劣化を防止する。
【解決手段】蛍光体粒子44aの表面にSiO2からなる被覆層44bを形成し、該被覆層44bにBi、Pb、Sn、Sbのいずれかの金属49を、該被覆層の表面における金属濃度が0.05ppm以上となるように付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出表示装置(FED)、プラズマ表示装置(PDP)等、発光体として蛍光体を有する平面型画像表示装置に関する。特に、平面型画像表示装置に用いられる蛍光体や蛍光体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
FEDやPDP等の平面型画像表示装置は、蛍光体を発光させることにより画像を表示するものである。そのため、これらの平面型画像表示装置では、輝度の高い蛍光体を用いる必要がある。
【0003】
しかしながら、蛍光体を有する画像表示装置を製造する過程において、蛍光体の輝度が劣化してしまうことがある。また、画像表示装置を製造した後においては、画像表示装置を長時間使用するにつれて、蛍光体の輝度が劣化してしまうこともある。
【0004】
そこで、蛍光体粒子の表面にSiO2を主成分とした被覆層を形成し、蛍光体粒子を保護する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−338959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、被覆層を形成した蛍光体であっても、画像表示装置を製造する工程において該蛍光体を加熱する場合、該被覆層にクラックが発生し、蛍光体粒子表面が帯電して蛍光体が劣化してしまう。
【0007】
本発明は、輝度の劣化を抑制し得る蛍光体基板の製造方法、及び、画像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、輝度の劣化が抑制された蛍光体基板、及び該蛍光体基板を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、SiO2を含有する被覆層をその表面に有する蛍光体粒子の前記被覆層に、Bi、Pb、Sn、Sbのいずれかの金属を、該被覆層の表面における前記金属の濃度が0.05ppm以上となるように付与する工程と、
前記蛍光体粒子と、該蛍光体粒子の表面を被覆する被覆層と、該被覆層に付与された金属とを有する蛍光体を、基板上に配置して、前記蛍光体を加熱する工程と、
を有することを特徴とする蛍光体基板の製造方法である。
【0010】
本発明の第2は、電子放出素子を有する電子源基板と、蛍光体を有する蛍光体基板と、を備えた画像表示装置の製造方法であって、該蛍光体基板を上記本発明の蛍光体基板の製造方法によって製造することを特徴とする。
【0011】
本発明の第3は、基板と、前記基板上に配置された、蛍光体粒子と、該蛍光体粒子の表面を被覆する、SiO2を含有する被覆層と、該被覆層表面に付与されたBi、Pb、Sn、Sbのいずれかの金属とを有し、該被覆層の表面における上記金属の濃度が0.05ppm以上である蛍光体とを備えることを特徴とする蛍光体基板である。
【0012】
本発明の第4は、電子放出素子を有する電子源基板と、蛍光体を有する蛍光体基板と、を備え、該蛍光体基板が、本発明第3の蛍光体基板であることを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蛍光体粒子の表面に被覆層を設けた蛍光体において、加熱工程を経ても該被覆層のクラックの発生が防止され、輝度低下が抑制される。よって、本発明によれば輝度の劣化が抑制された蛍光体を備えた蛍光体基板が実現し、該蛍光体基板を用いて高画質表示の画像表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像表示装置の一例の全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明により得られる蛍光体基板の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明の画像表示装置の構成について、図1を用いて説明する。
【0016】
本発明の画像表示装置は、電子放出素子を有する電子源基板と、蛍光体を有する蛍光体基板と、を備え、該蛍光体基板が後述する本発明の蛍光体基板であることを特徴とする。そして、本発明の画像表示装置の製造方法は、後述する本発明の蛍光体基板の製造方法により蛍光体基板を製造することに特徴を有する。
【0017】
図1は、本発明の画像表示装置の一実施形態の概略構成を示す斜視図であり、一部を切り欠いた状態で示している。図中、31は電子源基板、32はX方向配線、33はY方向配線、34は電子放出素子である。電子放出素子34としては、表面伝導型電子放出素子、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型などの電子放出素子を用いることができる。41は電子源基板31を固定した基板(リアプレート)、46はガラス基板43の内面に蛍光体44とアノード電極としてのメタルバック45等が形成された蛍光体基板(フェースプレート)である。42は支持枠であり、この支持枠42に基板41、蛍光体基板46がフリットガラス等を介して取り付けられ、外囲器47を構成している。ここで、基板41は主に電子源基板31の強度を補強する目的で設けられるため、電子源基板31自体で十分な強度を持つ場合には、別体の基板41は不要である。また、蛍光体基板46と基板41との間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持たせた構成とすることもできる。
【0018】
m本のX方向配線32は、端子Dx1,Dx2,…Dxmと接続されている。n本のY方向配線33は、端子Dy1,Dy2,…Dynと接続されている(m,nは、共に正の整数)。これらm本のX方向配線32とn本のY方向配線33との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している。
【0019】
高圧端子はメタルバック45に接続され、例えば10[kV]の直流電圧が供給される。これは電子放出素子から放出される電子に蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0020】
図2は、図1の蛍光体基板46の構成を示す図である。図2(a)に示すように、ガラス基板43の上にはブラックマトリクス48が形成されている。ブラックマトリクス48の間に蛍光体44が形成され、蛍光体44の上にメタルバック45が形成されている。図2(b)は、蛍光体44を拡大した断面模式図である。
【0021】
本発明の蛍光体基板は、図2(b)に示すように、基板43と、前記基板上に配置された、蛍光体粒子44aと、該蛍光体粒子44aの表面を被覆する、SiO2を含有する被覆層44bと、該被覆層44b表面に付与された特定の金属49とを有する。このように被覆層44bの表面に特定の金属49が存在することにより、後述する加熱工程における被覆層44bのクラック発生を抑制することができる。尚、金属49は被覆層44bの表面だけではなく、更にその内部に含まれていてもよい。
【0022】
本発明の蛍光体基板の製造方法は、SiO2を含有する被覆層44bをその表面に有する蛍光体粒子44aの前記被覆層44bに特定の金属49を付与した後、係る蛍光体44を基板43上に配置して、加熱することに特徴を有する。
【0023】
本発明で用いられる蛍光体は、画像表示装置に一般的に用いられている蛍光体である。具体的には、SrGa24:Eu2+、BaAl24:Eu、CaAlSiN3:Eu、CaS:Eu、Sr2Si58:Eu、SrY24:Eu、CaMgSi26:Eu、ZnS:Cu,Al(P22)などが挙げられる。中でも、母剤がチオガレートの蛍光体が好ましく用いられ、特に、アルカリ土類チオガレートが好ましく、中でもストロンチウムチオガレートが好ましい。また、付活剤がEu2+であるものが好ましく用いられるが、Eu2+以外にもCe3+等を用いることができる。
【0024】
蛍光体粒子44aの平均粒径は4乃至6μmである。
【0025】
本発明に係る被覆層44bの形成方法としては、例えば、先に挙げた特許文献1に記載された方法が用いられ、該被覆層44bはSiO2を含んでいる。好ましくはSiO2を主成分とする、或いはSiO2からなる被覆層である。また、係る被覆層44bの厚さは好ましくは30乃至100μmである。また、係る被覆層44bは通常、アルコキシド化合物を用いて形成されるため、該被覆層44bにはバリウム、ストロンチウム、アルミニウムなどの金属が残存する場合がある。
【0026】
本発明において被覆層44bに付与される金属は、Bi、Pb、Sn、Sbのいずれかである。また、該金属は、被覆層44bの表面に0.05ppm以上となるように付与される。尚、付活剤がEu2+の蛍光体粒子を用いた場合、被覆層44bに付与する金属が多過ぎると、該金属が蛍光体粒子44aの表面にまで達して該蛍光体粒子44aを酸化させる恐れがある。そのため、付活剤がEu2+の蛍光体粒子44aを用いた場合には、被覆層44b表面における金属濃度は10ppm以下にすることが望ましい。
【0027】
蛍光体44の基板43上への配置は、ディスペンサー、印刷、又は、インクジェット法などによって蛍光体44と樹脂との混合物を配置し、その後、加熱工程により樹脂を消失させることにより、実施される。用いられる樹脂の具体的な例としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、セルロース系ポリマー、ポリエチレン、シリコンポリマー、ポリスチレン、アクリルポリマーなどである。セルロース系ポリマーとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースである。シリコンポリマーとしては、例えば、ポリメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンである。
【0028】
本発明においては、蛍光体粒子44aの表面を覆う被覆層44bに特定の金属49が付与されていることから、係る加熱工程において被覆層44bのクラック発生が抑制され、輝度低下が低減する。
【実施例】
【0029】
(実施例1乃至8)
平均粒径が5μm、母剤がチオガレートで付活剤がEu2+であるSrGa24:Eu2+の蛍光体粒子を用い、表面にSiO2からなる被覆層を形成した。被覆層の厚さは100nmと30nmの2種類とした。
【0030】
厚さ30nmの被覆層は、シリコンのアルコキシド化合物をフィラー分散液中で加水分解する方法によった。手順は以下の通りである。
【0031】
先ず100gの蛍光体粉末を計量した後、500mlの特級エタノールの入った1リットルビーカー中に投入し、ラボスターラーを用いて分散させた。次いで、約8gのテトラエトキシシラン(TEOS:キシダ化学製)を滴下し、更に攪拌を続けながら10ml/minの滴下速度で全体が1000mlとなるまで純水を滴下させた。滴下終了後も更に1h攪拌を続けた後、静置、上澄み除去、純水を加え攪拌を行う操作を5回繰り返して行い、最後にろ過した後、このろ過ケークを140℃で2h乾燥することにより、SiO2被覆された蛍光体粒子を得ることができた。
【0032】
厚さ100nmの被覆層は、27gのTEOSを添加し同様の手順により得ることができた。TEOSを用いてフィラー物質へのマイクロカプセル被覆を行うことは例えば「矢野彰一郎等、日本レオロジー学会誌、vol.33、2005」に記載されている。具体的には、直接水中に懸濁させ、この系に触媒としての酸を滴下させ加水分解を起こさせる方法もあるが、酸が蛍光体に対し悪影響を与えるため、触媒を用いずに溶媒中の極性を徐々に高め加水分解させる方法を用いた。
【0033】
得られた被覆層は蛍光体粒子の表面を連続的に覆っていた。
【0034】
次に、上記被覆層に金属としてBiを付与した。具体的には、酸化ビスマス(ナカライテスク社製、酸化ビスマス(III))をテルピネオールに分散させ、この溶液に、表面に被覆層を形成した蛍光体粒子を混合し、攪拌した後に、150℃でテルピネオールを蒸発させた。尚、酸化ビスマスの量を調整することで、所望の濃度のBiを被覆層に付与することができる。
【0035】
実施例1乃至4は、被覆層の厚さを100nmとし、付与するBiの量を変えたものである。また、実施例5乃至8は、被覆層の厚さを30nmとし、付与するBiの量を変えたものである。
【0036】
Biを付与した後の被覆層表面のBi濃度をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)により測定した。具体的には、蛍光体をICP−MS(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Xシリーズ2 ICP−MS)で測定することにより、各元素の含有濃度が求まる。この方法で蛍光体に付与したBi濃度が求まるが、本例では、Biは被覆層表面に付与しているので、この方法で求めたBi濃度が被覆層表面に付与したBi濃度となる。尚、後述するPb、Sn、Sbも同様の測定方法で測定される。
【0037】
次いで、バインダー樹脂としてエチルセルロースを用い、蛍光体ペーストを作製した。この蛍光体ペーストをガラス基板の上にスクリーン印刷により塗布した。その後、焼成温度を450℃として焼成を行い、蛍光体基板を得た。焼成後の蛍光体基板における蛍光体の被覆層のBi濃度を上記ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)により測定した。具体的には、焼成後の蛍光体基板から蛍光体を採取し、これをテフロン(登録商標)ビーカーに秤取し、硫酸、硝酸及び塩酸で加熱分解した後、希王水で加温溶解し、定容とした。この溶液について、ICP−MSでBi濃度を測定し、試料中の含有量を求めた。
【0038】
また、焼成後の蛍光体を断面TEMで確認した結果、被覆層にクラックは確認されなかった。
【0039】
さらに、輝度計(TOPCON社製BM7)を使用して蛍光体のカソードルミネッセンス輝度測定を行った。発光輝度は、各蛍光体膜に加速電圧10kV、電流密度1μA/mm2の電子線を照射して測定した。
【0040】
その結果、実施例1乃至8では相対輝度はいずれも同等なものであった。以下、実施例1乃至8の蛍光体の輝度を相対輝度の基準(100%)とする。
【0041】
また、蛍光体膜の寿命半減投入電荷量Q(C/cm2)を以下のようにして求めた。
【0042】
輝度を計測しながら、蛍光体膜に加速電圧10kV、電流密度1μA/mm2の電子線を照射し続け蛍光体を劣化させた。蛍光体の発光輝度が半減するまでの照射時間の積算値と電流密度の積から投入電荷量を計算し寿命半減投入電荷量Q(C/cm2)とし、蛍光体の寿命を評価した。
【0043】
実施例1乃至4の蛍光体の評価結果を表1に、実施例5乃至8の蛍光体の評価結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
(比較例1乃至8)
被覆層に付与するBiの濃度を変える以外は実施例1乃至8と同様の方法で蛍光体を用意し、蛍光体基板を作製して評価した。比較例1乃至4は被覆層の厚さが100nm、比較例5乃至8は被覆層の厚さが30nmである。また、比較例1,5はBiを全く付与しなかった。結果を表3,表4に示す。
【0047】
焼成後の蛍光体基板における蛍光体を断面TEMで確認した結果、比較例1乃至8のいずれも被覆層にクラックが確認された。特に、被覆層表面のBi濃度が低くなるにつれて、より多くのクラックが確認された。
【0048】
また、比較例1乃至8のいずれも実施例1乃至8に比べて相対輝度が低くなった。特に、被覆層表面のBi濃度が低くなるにつれて、相対輝度がより低くなった。
【0049】
また、蛍光体の寿命が半減するまでの投入電荷量である寿命半減投入電荷量Q(C/cm2)は、比較例1乃至8のいずれもが実施例1乃至8に比べて小さくなった。特に、被覆層表面のBi濃度が低くなるにつれて、寿命半減投入電荷量がより小さくなった。これは、被覆層の表面にクラックが生じた結果、蛍光体粒子表面が帯電し、蛍光体が劣化したためと考えられる。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
以上の実施例1乃至8、及び比較例1乃至8より、被覆層の表面のBi濃度を0.05ppm以上とすることにより、被覆層の表面にクラックが生じるのを抑制することができることがわかった。
【0053】
(実施例9乃至12、比較例9乃至12)
被覆層の表面に付与する金属をBiに代えてPbとした以外は実施例1乃至8、比較例1乃至8と同様の方法で蛍光体を用意し、蛍光体基板を作製して評価した。結果を表5,表6に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
以上の実施例9乃至12、及び比較例9乃至12より、被覆層の表面のPb濃度を0.05ppm以上とすることにより、被覆層の表面にクラックが生じるのを抑制することができることがわかった。
【0057】
(実施例13乃至16、比較例13乃至16)
被覆層の表面に付与する金属をBiに代えてSnとした以外は実施例1乃至8、比較例1乃至8と同様の方法で蛍光体を用意し、蛍光体基板を作製して評価した。結果を表7,表8に示す。
【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
以上の実施例9乃至12、及び比較例9乃至12より、被覆層の表面のSn濃度を0.05ppm以上とすることにより、被覆層の表面にクラックが生じるのを抑制することができることがわかった。
【0061】
(実施例17乃至20、比較例17乃至20)
被覆層の表面に付与する金属をBiに代えてSbとした以外は実施例1乃至8、比較例1乃至8と同様の方法で蛍光体を用意し、蛍光体基板を作製して評価した。結果を表9,表10に示す。
【0062】
【表9】

【0063】
【表10】

【0064】
以上の実施例9乃至12、及び比較例9乃至12より、被覆層の表面のSb濃度を0.05ppm以上とすることにより、被覆層の表面にクラックが生じるのを抑制することができることがわかった。
【0065】
(実施例21乃至36)
蛍光体粒子を、平均粒径が4乃至6μmのZnS:Cu,Al(P22)に代え、さらに被覆層表面の金属濃度を代えた以外は、実施例1乃至20と同様の方法で蛍光体を用意し、蛍光体基板を作製して評価した。結果を表11,表12に示す。
【0066】
【表11】

【0067】
【表12】

【0068】
(実施例37乃至44)
被覆層表面の金属濃度を代えた以外は、実施例1乃至20と同様の方法で蛍光体を用意し、蛍光体基板を作製して評価した。結果を表13,表14に示す。
【0069】
【表13】

【0070】
【表14】

【0071】
表11乃至表14より、蛍光体粒子がZnS:Cu,Al(P22)である場合と比較して、蛍光体粒子がSrGa24:Eu2+である場合でも、被覆層表面の金属濃度が15ppmの時は、寿命半減投入電荷量Qが小さくなっていることが分かる。これは、被覆層に付与する金属の量が多過ぎるとSrGa24:Eu2+の場合、蛍光体の寿命が短くなることを意味する。この原因について詳細は不明であるが、被覆層内に拡散した金属が蛍光体粒子の表面に達すると付活剤のEu2+が酸化されてしまうことが原因の一つであると考えられる。そのため、付活剤がEu2+の蛍光体粒子である場合には、被覆層表面の金属濃度は、10ppm以下とすることが好ましい。同様の結果は、蛍光体粒子として、BaAl24:Eu、CaAlSiN3:Eu、CaS:Eu、Sr2Si58:Eu、SrY24:Eu、CaMgSi26:Euを用いた場合にも粒径にかかわらず見られた。
【符号の説明】
【0072】
44 蛍光体
44a 蛍光体粒子
44b 被覆層
46 蛍光体基板
49 金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2を含有する被覆層をその表面に有する蛍光体粒子の前記被覆層に、Bi、Pb、Sn、Sbのいずれかの金属を、該被覆層の表面における前記金属の濃度が0.05ppm以上となるように付与する工程と、
前記蛍光体粒子と、該蛍光体粒子の表面を被覆する被覆層と、該被覆層に付与された金属とを有する蛍光体を、基板上に配置して、前記蛍光体を加熱する工程と、
を有することを特徴とする蛍光体基板の製造方法。
【請求項2】
前記蛍光体粒子の付活剤がEu2+である請求項1に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項3】
前記被覆層表面の金属濃度が10ppm以下である請求項2に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項4】
前記蛍光体粒子の母剤がチオガレートである請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項5】
電子放出素子を有する電子源基板と、蛍光体を有する蛍光体基板と、を備えた画像表示装置の製造方法であって、該蛍光体基板を請求項1乃至4のいずれかに記載の蛍光体基板の製造方法によって製造することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項6】
基板と、前記基板上に配置された、蛍光体粒子と、該蛍光体粒子の表面を被覆する、SiO2を含有する被覆層と、該被覆層表面に付与されたBi、Pb、Sn、Sbのいずれかの金属とを有し、該被覆層の表面における上記金属の濃度が0.05ppm以上である蛍光体とを備えることを特徴とする蛍光体基板。
【請求項7】
前記蛍光体粒子の付活剤がEu2+である請求項6に記載の蛍光体基板。
【請求項8】
前記被覆層表面の金属濃度が10ppm以下である請求項7に記載の蛍光体基板。
【請求項9】
前記蛍光体粒子の母剤がチオガレートである請求項6乃至8のいずれかに記載の蛍光体基板。
【請求項10】
電子放出素子を有する電子源基板と、蛍光体を有する蛍光体基板と、を備え、該蛍光体基板が、請求項6乃至9のいずれかに記載の蛍光体基板であることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−198890(P2010−198890A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41863(P2009−41863)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】