蛍光体
【課題】 本発明は、非常に簡単な方法で合成することが可能であり、可視光領域及び赤外光領域、紫外光領域である365nm付近にも十分な励起源が存在する蛍光体に関する。
【解決手段】 化学式: CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)m(式中、Aは、Sc、Y、La、Gd、Lu、Al、Ga、Inから選択される元素であり、Rは、Mo、W、Vから選択される元素であり、Dは、Li、Ag、Al、Ga、Inから選択される元素であり、k、m、n、l、x、yは、所定の範囲にある実数である。)で表される蛍光体であって、可視光領域及び赤外光領域、紫外線領域に少なくとも一つの励起スペクトルを有し、発光スペクトルのピーク波長が、930nmから1100nmの領域に有することを特徴とする蛍光体である。
【解決手段】 化学式: CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)m(式中、Aは、Sc、Y、La、Gd、Lu、Al、Ga、Inから選択される元素であり、Rは、Mo、W、Vから選択される元素であり、Dは、Li、Ag、Al、Ga、Inから選択される元素であり、k、m、n、l、x、yは、所定の範囲にある実数である。)で表される蛍光体であって、可視光領域及び赤外光領域、紫外線領域に少なくとも一つの励起スペクトルを有し、発光スペクトルのピーク波長が、930nmから1100nmの領域に有することを特徴とする蛍光体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポ−ト、各種証明書、各種有価証券及び印紙等のセキュリティ印刷物の偽造防止材料として使用することができる。肉眼では視認不可能な赤外光を発する不可視発光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行券や有価証券等の偽造を防止する方法としては、例えば、印刷物の一部を肉眼では観察することができない蛍光を発光する蛍光物質を含有するインキにより印刷して潜像画像を形成し、その潜像画像に可視光線又は赤外線を照射して蛍光体を励起し、蛍光体から発する肉眼では観察することができない赤外線を受光して潜像画像の有無を検知する光学式読取装置による方法が知られている。
【0003】
このような蛍光体を用いた印刷物は、真贋判定のための潜像画像を肉眼で観察することができず、当該印刷物の偽造が困難であり、偽造された有価証券等を確実に発見することができる。また、当該蛍光体の発光特性は、真正な有価証券の製造者にしか分からないため、有価証券等を偽造すること自体が極めて困難である。
【0004】
そのような蛍光体の一例としては、化学式が(A1−x−yNdxYby)VO4で表される蛍光体であって、Aは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)及びランタン(La)の少なくとも一つの元素であり、xは、0.01≦x≦0.3であり、yは、0.01≦y≦0.4であり、x+yは、(x+y)≦0.5であり、y/xは、0.2≦(y/x)≦6であり、該構成のバナジン酸塩系の蛍光体にすることによって、化学的安定性が良好であり、かつ、発光特性の良好な蛍光体がある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、化学式が(Ln、Nd、Yb)A5(BO)4で表され、Lnは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)及びランタン(La)の少なくとも一つの元素であり、Aは、Na、Kのいずれか一つであり、Bは、W,Moのいずれか一つであり、モリブデン酸を主体とする蛍光体である(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、化学式がD1−x−yNdxYbyPO4である(式中、Dは、Al、Bi、B、In、Ga、Y、Lu、Sc、Gd、La及びCeから成る群から選択される少なくとも2種の元素である、(但しY−Lu、Y−La、La−Lu及びY−La−Luの元素の組合せは除く、)0<x≦0.5;0<y≦0.5及び0<x+y<1である。)で表されることを特徴とする蛍光体がある(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4020408号公報
【特許文献2】特開昭54−100991号公報
【特許文献3】特許第3438188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、硝酸塩作製工程、シュウ酸塩共沈殿物作製工程等の合成工程が複数あるため、製造に時間がかかり、高価であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載の技術は、紫外域の励起スペクトルが小さいため、紫外域である365nm励起での発光強度が極めて低いという問題があった。
【0010】
また、特許文献2の記載の技術は、アルカリ金属元素であるカリウム及びナトリウムを多く含むため、耐水性等の堅ろう性に問題があり、さらに、赤外線の発光強度が低いという問題があった。
【0011】
また、同様に、特許文献3に記載の技術は、赤外線の発光強度が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の蛍光体は、化学式:CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)m(式中、Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、Rは、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)から選択される元素であり、Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、kは、n(ただし、nは1≦n≦15の範囲にある実数を表す)であるか、又は、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、mは、k=nの場合は、n+1、n+3、n+4、n+7、又は、k=6n−3の場合は、4nでありlは、0又は2であり、xは、0.1≦x≦0.9の範囲にある実数であり、yは、0.1≦y≦0.9の範囲にある実数であるが、x+yは、0.2≦(x+y)≦1の範囲にあり、x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。)で表される蛍光体であって、励起スペクトルにおいて、240nmから390nm、414nmから698nm及び729nmから900nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0013】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、kはn(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す。)であり、m=n+3(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.3≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=0であることを特徴とする蛍光体である。
【0014】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Y(イットリウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、kはn(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す)であり、m=n+4(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.4≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=2であることを特徴とする蛍光体である。
【0015】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、kはn(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す。)であり、m=n+7(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.6≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=2であることを特徴とするとする蛍光体である。
【0016】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Y(イットリウム)であり、Rは、V(バナジウム)であり、kは、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す。)であり、m=4n(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.2≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=0であることを特徴とする蛍光体である。
【0017】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、240nmから370nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0018】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、245nmから390nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0019】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、246nmから368nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0020】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、246nmから375nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0021】
また、本発明の蛍光体は、Ca(Sc0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(La0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Gd0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Lu0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca7(Nd0.5Yb0.5)2(WoO4)10のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0022】
また、本発明の蛍光体は、Ca2Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)12、Ca2Ag2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Ag2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca8(Li・Ag)2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca6Li2(Nd0.5Yb0.5)2(WO4)10、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Ga0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(In0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(WO4)6のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0023】
また、本発明の蛍光体は、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca6Li2Al2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)13、Ca2Li2Al2(Sc0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(La0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Gd0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Lu0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(Wo4)9のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0024】
また、本発明の蛍光体は、Ca3(Y0.8Nd0.1Yb0.1)2(VO4)4、Ca9(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(VO4)8、Ca15(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)12、Ca21(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)16、Ca27(Nd0.5Yb0.5)2(VO4)20のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0025】
また、本発明の蛍光体は、蛍光体に紫外線硬化型ワニスを混合して成ることを特徴とする紫外線硬化型インキである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の蛍光体は、赤外線の発光強度が非常に高く、非常に簡単な方法で合成することができるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明の蛍光体は、カルシウムイオン(Ca2+)を含ませたことで紫外域の365nm付近に高い励起エネルギーを有する蛍光体となったことから、可視光領域及び赤外光領域以外の励起光においても、赤外域における発光強度が非常に高い蛍光体を提供することができるという効果を奏する。
【0028】
また、本発明の蛍光体は、水に溶けやすいアルカリ土類金属を多量に使用しておらず、耐水性等の堅ろう性が良好な材料を提供することができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明の蛍光体は、可視光領域及び赤外光領域以外にも、短波長である紫外線領域である365nm付近にも十分な励起源があるため、UV励起でも赤外発光する材料を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の蛍光体の製造方法。
【図2】従来技術の蛍光体の製造方法。
【図3】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図4】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図5】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図6】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図7】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図8】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図9】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図10】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図11】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図12】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図13】比較例1の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図14】本発明の一実施の形態の蛍光体と比較例1の蛍光体の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0032】
(蛍光体1の組成)
本発明の一実施形態として、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表される蛍光体について説明する。
【0033】
本発明の蛍光体は、上記化学式において、Dlは、いずれの元素も含まず、m=n+3である。また、nは、1≦n≦15である。カルシウム(Ca)の量nがn<1の場合は、ネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の分散性が悪くなるので、発光強度が低下するからである。なお、n>15の場合は、賦活剤であるネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の化合物中での割合が小さくなるため発光が小さくなる。
【0034】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)の希土類元素を使用することができる。また、賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは0.1≦y≦0.9である。x、yが上記の範囲で特に高発光の材料となる。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1,1/9≦(x/y)≦9の関係にあり、(x/y)=1の場合が好ましい。ネオジウムが光エネルギ−を吸収し、吸収したエネルギ−をイッテルビウムにエネルギ−移動して発光する機構であるため、ネオジウム(Nd)の量xとイッテルビウム(Yb)の量yとの関係が、1/9>(x/y)及び(x/y)>9の場合は、エネルギ−移動が悪いため発光強度は小さくなるからである。また、0.1>(x+y)の場合は、賦活材料が少なすぎるため、発光強度は小さくなるからである。また、Rには、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)を使用することができる。
【0035】
蛍光体は、母体結晶構造中の一部を賦活剤で置き換えたものであり、本発明の賦活剤は、ネオジウムとイッテルビウムである。この賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムが、蛍光体母体中で、均一に分散することにより発光強度も高くなる。ここでは、炭酸カルシウムが776℃で熱分解することで、発生したnモルの酸化カルシウム(nCaO)が蛍光体母体の核となり、希土類酸化物及び(n+3)モルの三酸化モリブデン酸(MoO3)が固相反応して、理論上、Can(A1−x−y,Ndx,Yby)2(MoO4)n+3なる蛍光体が形成される。ここで、炭酸カルシウムの量が多いほど熱分解と同時に賦活剤も均一に分散しやすくなるため、高発光強度の蛍光体が得られると考えられる。なお、賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムの量が少ない場合は、発光強度を得ることができない。また、賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムの量が多い場合は、濃度消光により蛍光体の発光強度が低下する。
【0036】
(蛍光体2の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表され、前述した蛍光体1と異なる組成の蛍光体2について説明する。なお、蛍光体1と同様の内容である、n、A、Rについては、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0037】
賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1であり,x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。
【0038】
Dは、リチウム(Li)、銀(Ag)及びその混合元素(Li・Ag)のいずれか一つであり、l=2である。また、m=n+1である。よって、CanD2(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)n+1となる蛍光体2が形成される。
【0039】
(蛍光体3の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表され、前述した蛍光体1及び蛍光体2と異なる組成の蛍光体3について説明する。なお、蛍光体1と同様の内容である、n、Rについては、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0040】
賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1であり,x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。
【0041】
Dは、リチウム(Li)、銀(Ag)及びその混合元素(Li・Ag)のいずれか一つであり、l=2である。Aは、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)のいずれか一つの元素である。また、m=n+4である。よって、CanLi2(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)n+4なる蛍光体3が形成される。
【0042】
(蛍光体4の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表され、前述した蛍光体1から蛍光体3と異なる組成の蛍光体4について説明する。なお、蛍光体1と同様の内容である、n、A、Rについては、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0043】
Dは、リチウム(Li)と、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)及びその混合元素(Li・Al、Li・Ga、Li・In)のいずれか一つの元素であり、l=2であるため、Li2Al2、Li2Ga2、Li2In2である。また、m=n+7である。よって、CanD2(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)n+7なる蛍光体4が形成される。
【0044】
賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1であり,x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。
【0045】
蛍光体4は、母体結晶構造中の一部を賦活剤で置き換えたものであり、本発明の賦活剤はネオジウムとイッテルビウムである。この賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムが、蛍光体母体中で均一に分散することで発光強度も高くなる。ここでは、炭酸カルシウムが776℃で熱分解することで、発生したnモルの酸化カルシウム(nCaO)が蛍光体母体の核となり、これに、1モルの酸化リチウム(Li2O)、及び(n+4)モルの三酸化モリブデン酸(MoO3)が個相反応することで、理論上、CanLi2(Nd0.5、Yb0.5)2(MoO4)n+4なる蛍光体が形成される。ここで、炭酸カルシウムの量が多いほど熱分解と同時に賦活剤も均一に分散しやすくなるため、高発光強度の蛍光体が得られる。
【0046】
また、酸化リチウムを添加することで結晶性が良くなると考えられるが、発光強度を高めることが出来た。これは、焼成温度である800℃〜900℃では、三酸化モリブデン及び酸化リチウムが融点以下の状態であるので、融剤的な働きをしていることも考えられる。
【0047】
(蛍光体5の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=6n−3で表される蛍光体について説明する。
【0048】
本発明の蛍光体は、上記化学式において、Dlは、いずれの元素も含まず、m=4nである。また、nは、1≦n≦5である。カルシウム(Ca)の量nがn<1の場合は、ネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の分散性が悪くなるので、発光強度が低下するからである。なお、n>5の場合は、賦活剤であるネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の化合物中での割合が小さくなるため、発光が小さくなる。
【0049】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)の希土類元素を使用することができる。また、賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。x、yが上記の範囲で特に高発光の材料となる。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1、1/9≦(x/y)≦9の関係にあり、(x/y)=1の場合が好ましい。ネオジウムが光エネルギ−を吸収して、吸収したエネルギ−をイッテルビウムにエネルギ−移動して発光する機構であるため、ネオジウム(Nd)の量xとイッテルビウム(Yb)の量yとの関係が、1/9>(x/y)及び(x/y)>9の場合は、エネルギ−移動が悪いため、発光強度が小さくなるからである。また、0.1>(x+y)の場合は、賦活材料が少なすぎるため、発光強度は小さくなるからである。また、Rには、V(バナジウム)を使用することができる。
【0050】
(蛍光体の原料)
カルシウム(Ca)の原料の一例としては、炭酸カルシウム(CaCO3)を使用することができる。Aで表される希土類元素の一例であるイットリウム(Y)の原料としては、酸化イットリウム(Y2O3)を使用することができる。共賦活剤であるネオジウム(Nd)及びイッテルビウム(Yb)の原料としては、好ましくは、三酸化ネオジウム(Nd2O3)及び三酸化イッテルビウム(Yb2O3)を使用する。その他、シュウ酸ネオジウム及びシュウ酸イッテルビウム、又は塩化ネオジウム及び塩化イッテルビウム等を化学両論的に添加することもできる。また、ネオジウムとイッテルビウムの配合割合については、等モルである1:1の場合で最も発光強度が良好である。これは、ネオジウムが受けたエネルギ−をイッテルビウムにエネルギ−移動させるので、等モルの場合が最も効率が高いからであると考えられる。また、モリブデン酸(MoO4)の原料の一例としては、三酸化モリブデン(MoO3)を用いることができる。リチウムの原料の一例としては、酸化リチウム(Li2O)及び炭酸リチウム(Li2CO3)が使用することが出来る。アルミニウム(Al)の原料の一例としては、α−アルミナ(Al2O3)を使用することができる。
【0051】
(蛍光体の製造工程)
次に、本発明の蛍光体の製造工程について説明する。図1に示すように、本発明の蛍光体の製造工程は、混合物作製工程と、攪拌混合工程と、焼成工程と、粉砕工程と、湿式攪拌工程から成る。
【0052】
混合物作製工程は、蛍光体の各原料を化学量論的に、目的とする化合物を得るように各材料を精秤して粉体の混合物をつくる。化学量論的とは、反応系内の個々の分子における反応の組み換えであるから、反応に関与した量は、比例関係が成立するということである。攪拌混合工程は、粉体同士の混合であるため、混ざりがたく、粉体同士を混ざりやすくなるように、比較的、沸点が低いエタノ−ル又はメタノ−ル等のアルコ−ルを加えて攪拌混合する。なお、比較的沸点が低いエタノ−ル又はメタノ−ル等のアルコール類を使用するのは、混合後は速やかに溶剤を揮発させるためである。焼成工程は、前記の攪拌工程終了後に乾燥させた粉体混合物を電気炉で、大気下焼成温度776℃〜1200℃で、1時間〜20時間焼成する。焼成温度が776℃以下では、炭酸カルシウムが脱炭酸しないため化合物を合成できないからである。また、焼成温度が1200℃以上では、合成物が溶解しやすくなり、反応容器が割れやすくなるので好ましくない。粉砕工程は、焼成反応により合成された粒子が数十ミクロンまで成長しているので、印刷に使用できる程度まで粒子径を小さくする工程である。湿式攪拌工程は、粉砕工程後に、粉体を、ジルコニアビーズと水又はアルコールの中で、3時間〜5時間湿式攪拌する工程である。次に、湿式攪拌工程後の混合物をろ過及び乾燥させて目的とする材料を得る。なお、本発明の蛍光体の製造工程は、特許文献1記載の蛍光体の製造工程と比較して、非常に簡単な方法で合成することができる。例えば、特許文献1記載の蛍光体の製造工程は、図2に示すように、硝酸塩作製工程、シュウ酸塩共沈殿物作製工程、ろ過工程等の複数の工程があり、ろ過工程等においては、一定温度で加熱等を行う必要があるため、合成工程が複雑となるからである。
【0053】
(蛍光体の詳細な製造工程)
次に、一例として、本発明の蛍光体1の製造工程を詳細に説明する。
【0054】
(混合物作製工程)
まず、混合物作製工程においては、カルシウム(Ca)の原料の一例として炭酸カルシウム(CaCO3)、Aで表される希土類元素の一例であるイットリウム(Y)の原料として酸化イットリウム(Y2O3)、ネオジウム(Nd)の原料の一例として酸化ネオジウム(Nd2O3)、イッテルビウム(Yb)の原料の一例として酸化イッテルビウム(Yb2O3)、四酸化モリブデン(MoO4)の原料の一例として三酸化モリブデン(MoO3)とを用いて、前述した各原料を化学量論的に精秤して粉体の混合物を作製する。
【0055】
(攪拌混合工程)
次に、攪拌混合工程について説明する。攪拌混合工程においては、前述の混合物を均一に分散させるため、液状で比較的沸点が低いエタノ−ル又はメタノ−ル等のアルコ−ル系の溶媒を加え、溶媒下において混合物を攪拌混合させる。
【0056】
(焼成工程)
次に、焼成工程について説明する。焼成工程においては、上記混合物の乾燥後、粉体の混合物をアルミナ製の容器に移し、電気炉で、大気下焼成温度776℃〜1200℃で1時間〜20時間焼成する。
【0057】
(粉砕工程)
次に、粉砕工程について説明する。粉砕工程は、焼成後の上記混合物を容器から取り出して粉砕機で粉砕する。
【0058】
(湿式攪拌工程)
次に、湿式攪拌工程について説明する。湿式攪拌工程においては、機械粉砕した合成物の平均粒子を1ミクロン程度の粉体にするため、プラスチック製の容器に移し、Φ2mmのジルコニアビ−ズ及びエタノ−ルを使用して、湿式で3〜4時間程度、攪拌する。そして、湿式攪拌工程後の混合物を、ろ過及び乾燥させて目的とする蛍光体が得られる。
【実施例1】
【0059】
まず、Can(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+3で表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)、Rにモリブデン(Mo)を使用し、表1に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0060】
【表1】
【0061】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表2に示す蛍光体を作製した。
【0062】
【表2】
【実施例2】
【0063】
次に、Can(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+3で表される蛍光体について、Aがイットリウム(Y)以外の蛍光体としてスカンジウム(Sc)、ランタン(La)、ガドリウム(Gd)、ルテシウム(Lu)をそれぞれ使用し、表3に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0064】
【表3】
【0065】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表4に示す蛍光体を作製した。
【0066】
【表4】
【実施例3】
【0067】
次に、Can(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+3で表される蛍光体について、Rにタングステン(W)を使用し、表5に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0068】
【表5】
【0069】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下1200℃で4時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表6に示す蛍光体を作製した。
【0070】
【表6】
【実施例4】
【0071】
次に、CanD2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+4で表される蛍光体について、Dにリチウム(Li)、銀(Ag)又はリチウムと銀とを併用(Li・Ag)して使用し、Aに酸化イットリウムを使用し、Rにモリブデン(Mo)又はタングステン(W)を使用し、表7に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0072】
【表7】
【0073】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表8に示す蛍光体を作製した。
【0074】
【表8】
【実施例5】
【0075】
次に、CanD2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+4で表される蛍光体について、Dにリチウム(Li)、Aにアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)を使用し、Rにモリブデン(Mo)又はタングステン(W)を使用し、表9に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0076】
【表9】
【0077】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表10に示す蛍光体を作製した。
【0078】
【表10】
【実施例6】
【0079】
次に、実施例5の応用例として、CanLi2Al2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+7 で表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、ガドリウム(Gd)、ルテシウム(Lu)、Rにモリブデン(Mo)を使用し、表11に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0080】
【表11】
【0081】
前述の原料は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で5時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥し表12に示す蛍光体を作製した。
【0082】
【表12】
【実施例7】
【0083】
次に、実施例5の応用例として、CanLi2Al2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+7で表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)、Rにタングステン(W)を使用し、表13に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0084】
【表13】
【0085】
前述の配合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下1200℃で4時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表14に示す蛍光体を作製した。
【0086】
【表14】
【実施例8】
【0087】
次に、Ca6n−3(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)4nで表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)を使用し、RにV(バナジウム)を使用した表15に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0088】
【表15】
【0089】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下1150℃で4時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表16に示す蛍光体を作製した。
【0090】
【表16】
【0091】
次に、作製した上記のサンプルS−1からS−32の蛍光体について、蛍光分光光度計(株式会社堀場製作所Fluorolog−3)により励起波長585nmにおける最大発光強度を測定し、各種サンプルと比較例1(特許文献1記載の材料)の発光強度の測定値を表17に示した。なお、発光強度は、比較例1の発光強度を100とした場合における相対輝度とした。また、各サンプルの例として、S−1については、図3(a)に励起スペクトルを示し、図3(b)に発光スペクトル示す。また、S−5、S−10、S−11、S−13、S−17、S−20、S−22、S−27、S−28についても、励起スペクトルと発光スペクトルを図4から図12にそれぞれのサンプルごと示した。なお、比較のため、比較例1についても、図13(a)に励起スペクトルを示し、図13(b)に585nmの光により励起して得た発光スペクトル示す。
【0092】
【表17】
【0093】
表17に示した結果から明らかなように、各種サンプルの蛍光体は、比較例1と比べても、発光強度が高く、好ましい蛍光体であることがわかった。
【0094】
また、代表例として、図14(a)に示すように紫外領域の328nmの光で励起した場合、図14(b)に示すように可視光領域の585nmの光で励起した場合、図14(c)に示すように赤外線領域の825nmの光で励起した場合のいずれも、比較例1に対して、より好ましい発光特性を有していることがわかった。
【0095】
次に、作製した蛍光体のサンプルについて、配合量10及び20wt%のUVインキを作製して、インキ比重を測定するとともに、ベタ印刷物を作製し、蛍光分光光度計(株式会社堀場製作所Fluorolog−3)により励起波長585nmにおける最大発光強度を測定し、各種サンプルと比較例1(特許文献1記載の材料)の発光強度の測定値を表18に示した。なお、発光強度は、比較例1の発光強度を100とした場合における相対輝度とした。
【0096】
【表18】
【0097】
表18に示した結果から明らかなように、各種サンプルの蛍光体は、インキ化して印刷物とした場合においても、比較例1と比べて発光強度が高いことがわかった。
【0098】
次に、上記印刷物における堅ろう性を調べるため、塩酸1%及び水酸化ナトリウム1%に24時間浸漬させた場合の耐性を評価した。
【0099】
【表19】
【0100】
表19に示すように、印刷物の耐薬品性については、発光強度をほぼ維持することができ、比較例1と比べて発光強度も良好であった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポ−ト、各種証明書、各種有価証券及び印紙等のセキュリティ印刷物の偽造防止材料として使用することができる。肉眼では視認不可能な赤外光を発する不可視発光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行券や有価証券等の偽造を防止する方法としては、例えば、印刷物の一部を肉眼では観察することができない蛍光を発光する蛍光物質を含有するインキにより印刷して潜像画像を形成し、その潜像画像に可視光線又は赤外線を照射して蛍光体を励起し、蛍光体から発する肉眼では観察することができない赤外線を受光して潜像画像の有無を検知する光学式読取装置による方法が知られている。
【0003】
このような蛍光体を用いた印刷物は、真贋判定のための潜像画像を肉眼で観察することができず、当該印刷物の偽造が困難であり、偽造された有価証券等を確実に発見することができる。また、当該蛍光体の発光特性は、真正な有価証券の製造者にしか分からないため、有価証券等を偽造すること自体が極めて困難である。
【0004】
そのような蛍光体の一例としては、化学式が(A1−x−yNdxYby)VO4で表される蛍光体であって、Aは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)及びランタン(La)の少なくとも一つの元素であり、xは、0.01≦x≦0.3であり、yは、0.01≦y≦0.4であり、x+yは、(x+y)≦0.5であり、y/xは、0.2≦(y/x)≦6であり、該構成のバナジン酸塩系の蛍光体にすることによって、化学的安定性が良好であり、かつ、発光特性の良好な蛍光体がある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、化学式が(Ln、Nd、Yb)A5(BO)4で表され、Lnは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)及びランタン(La)の少なくとも一つの元素であり、Aは、Na、Kのいずれか一つであり、Bは、W,Moのいずれか一つであり、モリブデン酸を主体とする蛍光体である(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、化学式がD1−x−yNdxYbyPO4である(式中、Dは、Al、Bi、B、In、Ga、Y、Lu、Sc、Gd、La及びCeから成る群から選択される少なくとも2種の元素である、(但しY−Lu、Y−La、La−Lu及びY−La−Luの元素の組合せは除く、)0<x≦0.5;0<y≦0.5及び0<x+y<1である。)で表されることを特徴とする蛍光体がある(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4020408号公報
【特許文献2】特開昭54−100991号公報
【特許文献3】特許第3438188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、硝酸塩作製工程、シュウ酸塩共沈殿物作製工程等の合成工程が複数あるため、製造に時間がかかり、高価であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載の技術は、紫外域の励起スペクトルが小さいため、紫外域である365nm励起での発光強度が極めて低いという問題があった。
【0010】
また、特許文献2の記載の技術は、アルカリ金属元素であるカリウム及びナトリウムを多く含むため、耐水性等の堅ろう性に問題があり、さらに、赤外線の発光強度が低いという問題があった。
【0011】
また、同様に、特許文献3に記載の技術は、赤外線の発光強度が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の蛍光体は、化学式:CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)m(式中、Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、Rは、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)から選択される元素であり、Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、kは、n(ただし、nは1≦n≦15の範囲にある実数を表す)であるか、又は、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、mは、k=nの場合は、n+1、n+3、n+4、n+7、又は、k=6n−3の場合は、4nでありlは、0又は2であり、xは、0.1≦x≦0.9の範囲にある実数であり、yは、0.1≦y≦0.9の範囲にある実数であるが、x+yは、0.2≦(x+y)≦1の範囲にあり、x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。)で表される蛍光体であって、励起スペクトルにおいて、240nmから390nm、414nmから698nm及び729nmから900nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0013】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、kはn(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す。)であり、m=n+3(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.3≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=0であることを特徴とする蛍光体である。
【0014】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Y(イットリウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、kはn(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す)であり、m=n+4(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.4≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=2であることを特徴とする蛍光体である。
【0015】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、kはn(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す。)であり、m=n+7(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.6≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=2であることを特徴とするとする蛍光体である。
【0016】
また、本発明の蛍光体におけるAは、Y(イットリウム)であり、Rは、V(バナジウム)であり、kは、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す。)であり、m=4n(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す。)であり、x=yであり、x+yは、0.2≦(x+y)≦1であり、x/yは、1であり、l=0であることを特徴とする蛍光体である。
【0017】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、240nmから370nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0018】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、245nmから390nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0019】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、246nmから368nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0020】
また、本発明の蛍光体は、励起スペクトルにおいて、246nmから375nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である。
【0021】
また、本発明の蛍光体は、Ca(Sc0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(La0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Gd0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Lu0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca7(Nd0.5Yb0.5)2(WoO4)10のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0022】
また、本発明の蛍光体は、Ca2Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)12、Ca2Ag2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Ag2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca8(Li・Ag)2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca6Li2(Nd0.5Yb0.5)2(WO4)10、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Ga0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(In0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(WO4)6のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0023】
また、本発明の蛍光体は、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca6Li2Al2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)13、Ca2Li2Al2(Sc0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(La0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Gd0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Lu0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(Wo4)9のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0024】
また、本発明の蛍光体は、Ca3(Y0.8Nd0.1Yb0.1)2(VO4)4、Ca9(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(VO4)8、Ca15(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)12、Ca21(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)16、Ca27(Nd0.5Yb0.5)2(VO4)20のいずれかの化学式で表されることを特徴とする蛍光体である。
【0025】
また、本発明の蛍光体は、蛍光体に紫外線硬化型ワニスを混合して成ることを特徴とする紫外線硬化型インキである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の蛍光体は、赤外線の発光強度が非常に高く、非常に簡単な方法で合成することができるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明の蛍光体は、カルシウムイオン(Ca2+)を含ませたことで紫外域の365nm付近に高い励起エネルギーを有する蛍光体となったことから、可視光領域及び赤外光領域以外の励起光においても、赤外域における発光強度が非常に高い蛍光体を提供することができるという効果を奏する。
【0028】
また、本発明の蛍光体は、水に溶けやすいアルカリ土類金属を多量に使用しておらず、耐水性等の堅ろう性が良好な材料を提供することができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明の蛍光体は、可視光領域及び赤外光領域以外にも、短波長である紫外線領域である365nm付近にも十分な励起源があるため、UV励起でも赤外発光する材料を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の蛍光体の製造方法。
【図2】従来技術の蛍光体の製造方法。
【図3】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図4】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図5】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図6】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図7】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図8】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図9】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図10】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図11】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図12】本発明の一実施の形態の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図13】比較例1の蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図14】本発明の一実施の形態の蛍光体と比較例1の蛍光体の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0032】
(蛍光体1の組成)
本発明の一実施形態として、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表される蛍光体について説明する。
【0033】
本発明の蛍光体は、上記化学式において、Dlは、いずれの元素も含まず、m=n+3である。また、nは、1≦n≦15である。カルシウム(Ca)の量nがn<1の場合は、ネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の分散性が悪くなるので、発光強度が低下するからである。なお、n>15の場合は、賦活剤であるネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の化合物中での割合が小さくなるため発光が小さくなる。
【0034】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)の希土類元素を使用することができる。また、賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは0.1≦y≦0.9である。x、yが上記の範囲で特に高発光の材料となる。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1,1/9≦(x/y)≦9の関係にあり、(x/y)=1の場合が好ましい。ネオジウムが光エネルギ−を吸収し、吸収したエネルギ−をイッテルビウムにエネルギ−移動して発光する機構であるため、ネオジウム(Nd)の量xとイッテルビウム(Yb)の量yとの関係が、1/9>(x/y)及び(x/y)>9の場合は、エネルギ−移動が悪いため発光強度は小さくなるからである。また、0.1>(x+y)の場合は、賦活材料が少なすぎるため、発光強度は小さくなるからである。また、Rには、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)を使用することができる。
【0035】
蛍光体は、母体結晶構造中の一部を賦活剤で置き換えたものであり、本発明の賦活剤は、ネオジウムとイッテルビウムである。この賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムが、蛍光体母体中で、均一に分散することにより発光強度も高くなる。ここでは、炭酸カルシウムが776℃で熱分解することで、発生したnモルの酸化カルシウム(nCaO)が蛍光体母体の核となり、希土類酸化物及び(n+3)モルの三酸化モリブデン酸(MoO3)が固相反応して、理論上、Can(A1−x−y,Ndx,Yby)2(MoO4)n+3なる蛍光体が形成される。ここで、炭酸カルシウムの量が多いほど熱分解と同時に賦活剤も均一に分散しやすくなるため、高発光強度の蛍光体が得られると考えられる。なお、賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムの量が少ない場合は、発光強度を得ることができない。また、賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムの量が多い場合は、濃度消光により蛍光体の発光強度が低下する。
【0036】
(蛍光体2の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表され、前述した蛍光体1と異なる組成の蛍光体2について説明する。なお、蛍光体1と同様の内容である、n、A、Rについては、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0037】
賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1であり,x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。
【0038】
Dは、リチウム(Li)、銀(Ag)及びその混合元素(Li・Ag)のいずれか一つであり、l=2である。また、m=n+1である。よって、CanD2(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)n+1となる蛍光体2が形成される。
【0039】
(蛍光体3の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表され、前述した蛍光体1及び蛍光体2と異なる組成の蛍光体3について説明する。なお、蛍光体1と同様の内容である、n、Rについては、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0040】
賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1であり,x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。
【0041】
Dは、リチウム(Li)、銀(Ag)及びその混合元素(Li・Ag)のいずれか一つであり、l=2である。Aは、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)のいずれか一つの元素である。また、m=n+4である。よって、CanLi2(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)n+4なる蛍光体3が形成される。
【0042】
(蛍光体4の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=nで表され、前述した蛍光体1から蛍光体3と異なる組成の蛍光体4について説明する。なお、蛍光体1と同様の内容である、n、A、Rについては、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0043】
Dは、リチウム(Li)と、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)及びその混合元素(Li・Al、Li・Ga、Li・In)のいずれか一つの元素であり、l=2であるため、Li2Al2、Li2Ga2、Li2In2である。また、m=n+7である。よって、CanD2(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)n+7なる蛍光体4が形成される。
【0044】
賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1であり,x/yは、1/9≦(x/y)≦9である。
【0045】
蛍光体4は、母体結晶構造中の一部を賦活剤で置き換えたものであり、本発明の賦活剤はネオジウムとイッテルビウムである。この賦活剤であるネオジウムとイッテルビウムが、蛍光体母体中で均一に分散することで発光強度も高くなる。ここでは、炭酸カルシウムが776℃で熱分解することで、発生したnモルの酸化カルシウム(nCaO)が蛍光体母体の核となり、これに、1モルの酸化リチウム(Li2O)、及び(n+4)モルの三酸化モリブデン酸(MoO3)が個相反応することで、理論上、CanLi2(Nd0.5、Yb0.5)2(MoO4)n+4なる蛍光体が形成される。ここで、炭酸カルシウムの量が多いほど熱分解と同時に賦活剤も均一に分散しやすくなるため、高発光強度の蛍光体が得られる。
【0046】
また、酸化リチウムを添加することで結晶性が良くなると考えられるが、発光強度を高めることが出来た。これは、焼成温度である800℃〜900℃では、三酸化モリブデン及び酸化リチウムが融点以下の状態であるので、融剤的な働きをしていることも考えられる。
【0047】
(蛍光体5の組成)
次に、化学式が、CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)mにおいて、k=6n−3で表される蛍光体について説明する。
【0048】
本発明の蛍光体は、上記化学式において、Dlは、いずれの元素も含まず、m=4nである。また、nは、1≦n≦5である。カルシウム(Ca)の量nがn<1の場合は、ネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の分散性が悪くなるので、発光強度が低下するからである。なお、n>5の場合は、賦活剤であるネオジウム(Nd)とイッテルビウム(Yb)の化合物中での割合が小さくなるため、発光が小さくなる。
【0049】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)の希土類元素を使用することができる。また、賦活剤であるNd(ネオジウム)の取り得る範囲xは、0.1≦x≦0.9であり、Yb(イッテルビウム)の取り得る範囲yは、0.1≦y≦0.9である。x、yが上記の範囲で特に高発光の材料となる。また、xとyの関係は、0.2≦(x+y)≦1、1/9≦(x/y)≦9の関係にあり、(x/y)=1の場合が好ましい。ネオジウムが光エネルギ−を吸収して、吸収したエネルギ−をイッテルビウムにエネルギ−移動して発光する機構であるため、ネオジウム(Nd)の量xとイッテルビウム(Yb)の量yとの関係が、1/9>(x/y)及び(x/y)>9の場合は、エネルギ−移動が悪いため、発光強度が小さくなるからである。また、0.1>(x+y)の場合は、賦活材料が少なすぎるため、発光強度は小さくなるからである。また、Rには、V(バナジウム)を使用することができる。
【0050】
(蛍光体の原料)
カルシウム(Ca)の原料の一例としては、炭酸カルシウム(CaCO3)を使用することができる。Aで表される希土類元素の一例であるイットリウム(Y)の原料としては、酸化イットリウム(Y2O3)を使用することができる。共賦活剤であるネオジウム(Nd)及びイッテルビウム(Yb)の原料としては、好ましくは、三酸化ネオジウム(Nd2O3)及び三酸化イッテルビウム(Yb2O3)を使用する。その他、シュウ酸ネオジウム及びシュウ酸イッテルビウム、又は塩化ネオジウム及び塩化イッテルビウム等を化学両論的に添加することもできる。また、ネオジウムとイッテルビウムの配合割合については、等モルである1:1の場合で最も発光強度が良好である。これは、ネオジウムが受けたエネルギ−をイッテルビウムにエネルギ−移動させるので、等モルの場合が最も効率が高いからであると考えられる。また、モリブデン酸(MoO4)の原料の一例としては、三酸化モリブデン(MoO3)を用いることができる。リチウムの原料の一例としては、酸化リチウム(Li2O)及び炭酸リチウム(Li2CO3)が使用することが出来る。アルミニウム(Al)の原料の一例としては、α−アルミナ(Al2O3)を使用することができる。
【0051】
(蛍光体の製造工程)
次に、本発明の蛍光体の製造工程について説明する。図1に示すように、本発明の蛍光体の製造工程は、混合物作製工程と、攪拌混合工程と、焼成工程と、粉砕工程と、湿式攪拌工程から成る。
【0052】
混合物作製工程は、蛍光体の各原料を化学量論的に、目的とする化合物を得るように各材料を精秤して粉体の混合物をつくる。化学量論的とは、反応系内の個々の分子における反応の組み換えであるから、反応に関与した量は、比例関係が成立するということである。攪拌混合工程は、粉体同士の混合であるため、混ざりがたく、粉体同士を混ざりやすくなるように、比較的、沸点が低いエタノ−ル又はメタノ−ル等のアルコ−ルを加えて攪拌混合する。なお、比較的沸点が低いエタノ−ル又はメタノ−ル等のアルコール類を使用するのは、混合後は速やかに溶剤を揮発させるためである。焼成工程は、前記の攪拌工程終了後に乾燥させた粉体混合物を電気炉で、大気下焼成温度776℃〜1200℃で、1時間〜20時間焼成する。焼成温度が776℃以下では、炭酸カルシウムが脱炭酸しないため化合物を合成できないからである。また、焼成温度が1200℃以上では、合成物が溶解しやすくなり、反応容器が割れやすくなるので好ましくない。粉砕工程は、焼成反応により合成された粒子が数十ミクロンまで成長しているので、印刷に使用できる程度まで粒子径を小さくする工程である。湿式攪拌工程は、粉砕工程後に、粉体を、ジルコニアビーズと水又はアルコールの中で、3時間〜5時間湿式攪拌する工程である。次に、湿式攪拌工程後の混合物をろ過及び乾燥させて目的とする材料を得る。なお、本発明の蛍光体の製造工程は、特許文献1記載の蛍光体の製造工程と比較して、非常に簡単な方法で合成することができる。例えば、特許文献1記載の蛍光体の製造工程は、図2に示すように、硝酸塩作製工程、シュウ酸塩共沈殿物作製工程、ろ過工程等の複数の工程があり、ろ過工程等においては、一定温度で加熱等を行う必要があるため、合成工程が複雑となるからである。
【0053】
(蛍光体の詳細な製造工程)
次に、一例として、本発明の蛍光体1の製造工程を詳細に説明する。
【0054】
(混合物作製工程)
まず、混合物作製工程においては、カルシウム(Ca)の原料の一例として炭酸カルシウム(CaCO3)、Aで表される希土類元素の一例であるイットリウム(Y)の原料として酸化イットリウム(Y2O3)、ネオジウム(Nd)の原料の一例として酸化ネオジウム(Nd2O3)、イッテルビウム(Yb)の原料の一例として酸化イッテルビウム(Yb2O3)、四酸化モリブデン(MoO4)の原料の一例として三酸化モリブデン(MoO3)とを用いて、前述した各原料を化学量論的に精秤して粉体の混合物を作製する。
【0055】
(攪拌混合工程)
次に、攪拌混合工程について説明する。攪拌混合工程においては、前述の混合物を均一に分散させるため、液状で比較的沸点が低いエタノ−ル又はメタノ−ル等のアルコ−ル系の溶媒を加え、溶媒下において混合物を攪拌混合させる。
【0056】
(焼成工程)
次に、焼成工程について説明する。焼成工程においては、上記混合物の乾燥後、粉体の混合物をアルミナ製の容器に移し、電気炉で、大気下焼成温度776℃〜1200℃で1時間〜20時間焼成する。
【0057】
(粉砕工程)
次に、粉砕工程について説明する。粉砕工程は、焼成後の上記混合物を容器から取り出して粉砕機で粉砕する。
【0058】
(湿式攪拌工程)
次に、湿式攪拌工程について説明する。湿式攪拌工程においては、機械粉砕した合成物の平均粒子を1ミクロン程度の粉体にするため、プラスチック製の容器に移し、Φ2mmのジルコニアビ−ズ及びエタノ−ルを使用して、湿式で3〜4時間程度、攪拌する。そして、湿式攪拌工程後の混合物を、ろ過及び乾燥させて目的とする蛍光体が得られる。
【実施例1】
【0059】
まず、Can(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+3で表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)、Rにモリブデン(Mo)を使用し、表1に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0060】
【表1】
【0061】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表2に示す蛍光体を作製した。
【0062】
【表2】
【実施例2】
【0063】
次に、Can(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+3で表される蛍光体について、Aがイットリウム(Y)以外の蛍光体としてスカンジウム(Sc)、ランタン(La)、ガドリウム(Gd)、ルテシウム(Lu)をそれぞれ使用し、表3に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0064】
【表3】
【0065】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表4に示す蛍光体を作製した。
【0066】
【表4】
【実施例3】
【0067】
次に、Can(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+3で表される蛍光体について、Rにタングステン(W)を使用し、表5に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0068】
【表5】
【0069】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下1200℃で4時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表6に示す蛍光体を作製した。
【0070】
【表6】
【実施例4】
【0071】
次に、CanD2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+4で表される蛍光体について、Dにリチウム(Li)、銀(Ag)又はリチウムと銀とを併用(Li・Ag)して使用し、Aに酸化イットリウムを使用し、Rにモリブデン(Mo)又はタングステン(W)を使用し、表7に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0072】
【表7】
【0073】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表8に示す蛍光体を作製した。
【0074】
【表8】
【実施例5】
【0075】
次に、CanD2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+4で表される蛍光体について、Dにリチウム(Li)、Aにアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)を使用し、Rにモリブデン(Mo)又はタングステン(W)を使用し、表9に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0076】
【表9】
【0077】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で20時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表10に示す蛍光体を作製した。
【0078】
【表10】
【実施例6】
【0079】
次に、実施例5の応用例として、CanLi2Al2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+7 で表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、ガドリウム(Gd)、ルテシウム(Lu)、Rにモリブデン(Mo)を使用し、表11に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0080】
【表11】
【0081】
前述の原料は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下900℃で5時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥し表12に示す蛍光体を作製した。
【0082】
【表12】
【実施例7】
【0083】
次に、実施例5の応用例として、CanLi2Al2(A1−x−yNdxYby)2(RO4)n+7で表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)、Rにタングステン(W)を使用し、表13に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0084】
【表13】
【0085】
前述の配合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下1200℃で4時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表14に示す蛍光体を作製した。
【0086】
【表14】
【実施例8】
【0087】
次に、Ca6n−3(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)4nで表される蛍光体について、Aにイットリウム(Y)を使用し、RにV(バナジウム)を使用した表15に示す原料を用いた混合物から蛍光体を作製した例について説明する。
【0088】
【表15】
【0089】
前述の混合物は、溶媒であるエタノ−ルを使用し、アルミナ製乳鉢中で混合して乾燥させた。乾燥後に配合物をアルミナ製ボ−トに移し、配合物を電気炉にて酸化雰囲気下1150℃で4時間焼成させた。乾燥後に電気炉から取り出し、焼成物を空気中で放冷した。焼成物は、Φ2mmのジルコニア製ビ−ズ及びエタノ−ルを使用してペイントシェ−カ−で5時間湿式粉砕させた。湿式粉砕後、ろ過及び乾燥して表16に示す蛍光体を作製した。
【0090】
【表16】
【0091】
次に、作製した上記のサンプルS−1からS−32の蛍光体について、蛍光分光光度計(株式会社堀場製作所Fluorolog−3)により励起波長585nmにおける最大発光強度を測定し、各種サンプルと比較例1(特許文献1記載の材料)の発光強度の測定値を表17に示した。なお、発光強度は、比較例1の発光強度を100とした場合における相対輝度とした。また、各サンプルの例として、S−1については、図3(a)に励起スペクトルを示し、図3(b)に発光スペクトル示す。また、S−5、S−10、S−11、S−13、S−17、S−20、S−22、S−27、S−28についても、励起スペクトルと発光スペクトルを図4から図12にそれぞれのサンプルごと示した。なお、比較のため、比較例1についても、図13(a)に励起スペクトルを示し、図13(b)に585nmの光により励起して得た発光スペクトル示す。
【0092】
【表17】
【0093】
表17に示した結果から明らかなように、各種サンプルの蛍光体は、比較例1と比べても、発光強度が高く、好ましい蛍光体であることがわかった。
【0094】
また、代表例として、図14(a)に示すように紫外領域の328nmの光で励起した場合、図14(b)に示すように可視光領域の585nmの光で励起した場合、図14(c)に示すように赤外線領域の825nmの光で励起した場合のいずれも、比較例1に対して、より好ましい発光特性を有していることがわかった。
【0095】
次に、作製した蛍光体のサンプルについて、配合量10及び20wt%のUVインキを作製して、インキ比重を測定するとともに、ベタ印刷物を作製し、蛍光分光光度計(株式会社堀場製作所Fluorolog−3)により励起波長585nmにおける最大発光強度を測定し、各種サンプルと比較例1(特許文献1記載の材料)の発光強度の測定値を表18に示した。なお、発光強度は、比較例1の発光強度を100とした場合における相対輝度とした。
【0096】
【表18】
【0097】
表18に示した結果から明らかなように、各種サンプルの蛍光体は、インキ化して印刷物とした場合においても、比較例1と比べて発光強度が高いことがわかった。
【0098】
次に、上記印刷物における堅ろう性を調べるため、塩酸1%及び水酸化ナトリウム1%に24時間浸漬させた場合の耐性を評価した。
【0099】
【表19】
【0100】
表19に示すように、印刷物の耐薬品性については、発光強度をほぼ維持することができ、比較例1と比べて発光強度も良好であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式:
CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)
(式中、
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)から選択される元素であり、
Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、
kは、n(ただし、nは1≦n≦15の範囲にある実数を表す)であるか、又は、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、
mは、k=nの場合は、n+1、n+3、n+4、n+7、又は、k=6n−3の場合は、4nであり、
lは、0又は2であり、
xは、0.1≦x≦0.9の範囲にある実数であり、
yは、0.1≦y≦0.9の範囲にある実数であるが、
x+yは、0.2≦(x+y)≦1の範囲にあり、x/yは、1/9≦(x/y)≦
9である。)で表される蛍光体であって、
励起スペクトルにおいて、240nmから390nm、414nmから698nm及び729nmから900nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、
kはn(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す)であり、
m=n+3(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.3≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=0であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
Aは、Y(イットリウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、
Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、
kはn(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す)であり、
m=n+4(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.4≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=2であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、
Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、
kはn(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す)であり、
m=n+7(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.6≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=2であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項5】
Aは、Y(イットリウム)であり、
Rは、V(バナジウム)であり、
kは、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、
m=4n(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.2≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=0であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項6】
励起スペクトルにおいて、240nmから370nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項2に記載の蛍光体。
【請求項7】
励起スペクトルにおいて、245nmから390nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
【請求項8】
励起スペクトルにおいて、246nmから368nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項4に記載の蛍光体。
【請求項9】
励起スペクトルにおいて、246nmから375nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項5に記載の蛍光体。
【請求項10】
前記蛍光体は、Ca(Sc0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(La0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Gd0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Lu0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca7(Nd0.5Yb0.5)2(WoO4)10のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の蛍光体。
【請求項11】
前記蛍光体は、Ca2Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)12、Ca2Ag2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Ag2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca8(Li・Ag)2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca6Li2(Nd0.5Yb0.5)2(WO4)10、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Ga0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(In0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(WO4)6のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項3又は請求項7に記載の蛍光体。
【請求項12】
前記蛍光体は、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca6Li2Al2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)13、Ca2Li2Al2(Sc0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(La0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Gd0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Lu0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(Wo4)9のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項4又は請求項8に記載の蛍光体。
【請求項13】
前記蛍光体は、Ca3(Y0.8Nd0.1Yb0.1)2(VO4)4、Ca9(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(VO4)8、Ca15(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)12、Ca21(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)16、Ca27(Nd0.5Yb0.5)2(VO4)20のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項5又は請求項9に記載の蛍光体。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項記載の蛍光体に紫外線硬化型ワニスを混合して成ることを特徴とする紫外線硬化型インキ。
【請求項1】
下記化学式:
CakDl(A1−x−y,Ndx,Yby)2(RO4)
(式中、
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)から選択される元素であり、
Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択される元素であり、
kは、n(ただし、nは1≦n≦15の範囲にある実数を表す)であるか、又は、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、
mは、k=nの場合は、n+1、n+3、n+4、n+7、又は、k=6n−3の場合は、4nであり、
lは、0又は2であり、
xは、0.1≦x≦0.9の範囲にある実数であり、
yは、0.1≦y≦0.9の範囲にある実数であるが、
x+yは、0.2≦(x+y)≦1の範囲にあり、x/yは、1/9≦(x/y)≦
9である。)で表される蛍光体であって、
励起スペクトルにおいて、240nmから390nm、414nmから698nm及び729nmから900nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、
kはn(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す)であり、
m=n+3(ただし、nは1≦n≦10の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.3≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=0であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
Aは、Y(イットリウム)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、
Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、
kはn(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す)であり、
m=n+4(ただし、nは2≦n≦8の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.4≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=2であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
Aは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリウム)、Lu(ルテシウム)から選択されるいずれか一つの元素であり、
Rは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)であり、
Dは、Li(リチウム)、Ag(銀)から選択される元素であり、
kはn(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す)であり、
m=n+7(ただし、nは2≦n≦6の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.6≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=2であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項5】
Aは、Y(イットリウム)であり、
Rは、V(バナジウム)であり、
kは、6n−3(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、
m=4n(ただし、nは1≦n≦5の範囲にある実数を表す)であり、
x=yであり、
x+yは、0.2≦(x+y)≦1であり、
x/yは、1であり、
l=0であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項6】
励起スペクトルにおいて、240nmから370nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項2に記載の蛍光体。
【請求項7】
励起スペクトルにおいて、245nmから390nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
【請求項8】
励起スペクトルにおいて、246nmから368nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項4に記載の蛍光体。
【請求項9】
励起スペクトルにおいて、246nmから375nm、414nmから442nm、452nmから490nm、495nmから545nm、564nmから610nm、670nmから695nm、729nmから769nm、784nmから838nm及び800nmから830nmに少なくとも一つのピーク波長を有し、かつ、発光スペクトルが、930nmから1100nmにピーク波長を有することを特徴とする請求項5に記載の蛍光体。
【請求項10】
前記蛍光体は、Ca(Sc0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(La0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Gd0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca(Lu0.7Nd0.15Yb0.15)2(MoO4)4、Ca7(Nd0.5Yb0.5)2(WoO4)10のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の蛍光体。
【請求項11】
前記蛍光体は、Ca2Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Li2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)12、Ca2Ag2(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca8Ag2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca8(Li・Ag)2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)12、Ca6Li2(Nd0.5Yb0.5)2(WO4)10、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Ga0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(In0.6Nd0.2Yb0.2)2(MoO4)6、Ca2Li2(Al0.6Nd0.2Yb0.2)2(WO4)6のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項3又は請求項7に記載の蛍光体。
【請求項12】
前記蛍光体は、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca6Li2Al2(Nd0.5Yb0.5)2(MoO4)13、Ca2Li2Al2(Sc0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(La0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Gd0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Lu0.4Nd0.3Yb0.3)2(MoO4)9、Ca2Li2Al2(Y0.4Nd0.3Yb0.3)2(Wo4)9のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項4又は請求項8に記載の蛍光体。
【請求項13】
前記蛍光体は、Ca3(Y0.8Nd0.1Yb0.1)2(VO4)4、Ca9(Y0.6Nd0.2Yb0.2)2(VO4)8、Ca15(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)12、Ca21(Y0.2Nd0.4Yb0.4)2(VO4)16、Ca27(Nd0.5Yb0.5)2(VO4)20のいずれかの化学式で表されることを特徴とする請求項5又は請求項9に記載の蛍光体。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項記載の蛍光体に紫外線硬化型ワニスを混合して成ることを特徴とする紫外線硬化型インキ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−21161(P2011−21161A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169746(P2009−169746)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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