説明

蛍光偏光検出装置

【課題】ノイズの発生を抑制し、またはS/N比を向上させることにより、正確で精密な測定を行うことができ、可動部を含まず、構成が簡単な蛍光偏光検出装置を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光偏光検出装置は、励起光を発光するレーザーダイオード、レーザーダイオードで発光した励起光を試料に向けるダイクロイックミラー、試料に向けられた励起光を集光する対物レンズを含む発光系と、試料を表面張力により保持する貫通孔を有する試料保持体と、励起光により該試料保持体に保持された試料から発生した蛍光を透過させる前記対物レンズおよび前記ダイクロイックミラー、ダイクロイックミラーを透過した蛍光を偏光により分ける偏光ビームスプリッター、分けられた蛍光それぞれを受光する受光器を含む受光系と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光偏光検出装置に関し、特に、蛍光偏光度、蛍光異方性、蛍光偏光解消性等を測定する蛍光偏光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例の蛍光偏光検出装置が特開平11−311603号公報に開示されている。この公報に記載の発明の蛍光偏光検出装置では、光源の発光方向前方にコンデンサレンズが設置され、レンズにより平行光線になった光束は、レンズ前方に設置されたフィルターを通過する。フィルターを通過した光束は所定の波長の光となり、さらに前方に設置された励起側偏光子を通過する。偏光子を通過した光束は、所定の偏光方向の直線偏光となり、さらに前方に設置された角型のセル(サンプルホルダ)の一側面より入射する。セル内の検体(蛍光物質)より蛍光が発せられると、励起光L1と直交する方向より得られる蛍光L2は、第2のフィルターを通過する、第2のフィルターを通過した光束は、所定の波長の光となり、さらに前方に設置された蛍光側偏光子を通過する。この偏光子は、蛍光L2の進行方向に垂直な面内で励起側偏光子に対し水平成分、垂直成分を交互に通過させる。蛍光側偏光子を通過した光は前方に設置された光検出器に入り、光検出器により検出される。
【0003】
ここで、セル内の検体により蛍光が発せられるが、それ以外に、ノイズとなる蛍光がセルから発せられることになる。また、発光系で用いられる発光素子(レーザーダイオード)が発する微弱な蛍光信号がノイズとなる。また、蛍光側偏光子は、蛍光L2の進行方向に垂直な面内で励起側偏光子に対し水平成分、垂直成分を交互に通過させるために回転(回動)させられる。また、セルの前後の発光側、受光側のいずれにおいても偏光子とフィルターの間には対物レンズが用いられている。
【0004】
なお、蛍光偏光検出装置または蛍光偏光検出方法に関連した文献には下記のものがある。
(1)蛍光偏光法による生体関連物質の測定に関する概説
非特許文献1〜3
(2)核酸ハイブリダイゼーション(核酸ハイブリッド形成反応)の計測
本装置を用いれば、核酸ハイブリッド形成反応によって、核酸(DNAやRNA)を測定または検出することができる。
【0005】
非特許文献4〜6
(3)抗原抗体反応の計測
本装置を用いれば、抗原抗体反応によって、タンパク質や生化学関連物質を測定または検出することができる。
【0006】
非特許文献7
(4)リガンド・レセプター反応の計測
本装置を用いれば、リガンド・レセプター反応によって、タンパク質や生化学関連物質を測定または検出することができる。
【0007】
非特許文献8
【特許文献1】特開平11−311603号公報
【非特許文献1】バイオセンサ・ケミカルセンサ事典;テクノシステム;光デバイス;分担執筆;2007;108-113.
【非特許文献2】バイオセンサーとバイオエレクトロニクス;朝倉書店;光技術を応用したバイオセンサー;分担執筆;1994;62-78.
【非特許文献3】化学と教育; 日本化学会; 病原性大腸菌O-157の迅速な検出法−DNAハイブリッド形成反応の基礎と応用; 鶴岡,福原,軽部; 1997; 45; 392- 393.
【非特許文献4】Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening; Bentham Publishers; Rapid hybridization at high salt concentration and detection of bacterial DNA using fluorescence polarization; Tsuruoka, M. and Karube, I.; 2003; 6; 225- 234.
【非特許文献5】Biosensors & Bioelectronics; Elsevier; The extremely rapid oligonucleotide hybridization and high throughput detection of microbial gene sequences using fluorescence polarization; Tsuruoka, M., Murano, S., Okada, M., Ohiso, I. and Fujii, T.; 2001; 16; 695- 699.
【非特許文献6】Nucleic Acids Symposium Series; Oxford University Press; Rapid and specific detection of RNA base sequence using fluorescence polarization; Tsuruoka, M. and Fujii, T; 1999; 42; 239- 240.
【非特許文献7】Biosensors & Bioelectronics; Elsevier; Fluorescence polarization immunoassay employing immobilized antibody; Tsuruoka, M., Tamiya, E. and Karube, I.; 1991; 6; 501- 505.
【非特許文献8】Analytical Sciences; 日本分析化学会; Weak Interaction between Inhibition Peptides and a Soluble Receptor of Fusion Protein in the Liquid Phase;Shimizu, M., Yoshiaki, Y., Sato, J. and Tsuruoka, M.; 2006; 22(9); 1185-1188.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、セル内の検体により蛍光が発せられるが、それ以外に、ノイズとなる蛍光がセルから発せられることになり、精密な検出が行えない。また、発光系で用いられる発光素子が発する微弱な蛍光信号と同じ波長の成分がノイズとなり、精密な検出が行えない。また、蛍光側偏光子は、蛍光L2の進行方向に垂直な面内で励起側偏光子に対し水平成分、垂直成分を交互に通過させるために回転(回動)させられので、故障等の原因になり易い可動部が存在することになる。また、セルの前後の発光側、受光側のいずれにおいても偏光子とフィルタの間には対物レンズが用いられており、構成が複雑となり、製造費が高価となる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ノイズの発生を抑制し、またはS/N比を向上させることにより、正確で精密な測定を行うことができ、可動部を含まず、構成が簡単な蛍光偏光検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の蛍光偏光検出装置は、励起光を発光するレーザーダイオード、該レーザーダイオードで発光した励起光を試料に向けるダイクロイックミラー、試料に向けられた励起光を集光する対物レンズとを含む発光系と、前記試料を表面張力により保持する貫通孔を有する試料保持体と、前記励起光により該試料保持体に保持された試料から発生した蛍光を透過させる前記対物レンズおよび前記ダイクロイックミラー、ダイクロイックミラーを透過した蛍光を偏光により分ける偏光ビームスプリッター、分けられた蛍光それぞれを受光する受光器を含む受光系と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下記の効果が得られる。
(1)蛍光偏光検出装置において、従来の装置に比べ大幅な小型化が可能である。
(1−1)半導体レーザーを用いた光学系を構成し、従来のキセノンランプ等を用いるシステムに対し、小型化に優れ、持ち運びも容易となる。
【0012】
(1−2)試料に励起光を照射する対物レンズと、励起光によって発生した蛍光を集光するレンズが同一であり、装置の小型化を可能にする。
(2)従来よりも、微量の試料による測定が可能である。
【0013】
(2−1)コヒーレントな光を集光する光学系を実現し、回折限界まで励起光を絞ることができ、測定試料が微量であっても、励起光のエネルギー密度を落とさず試料に照射することができる。
【0014】
(2−2)励起光中に微量に存在する蛍光光と同じ波長の光を、分散プリズムを用いた光学系で完全に取り除き、蛍光検出系への漏れこみをなくすことで、低ノイズ化を可能とする。
【0015】
(2−3)試料から発光された蛍光を、高NA対物レンズ,またはコーンミラーで効率よく集光することで微量な試料からの蛍光を検出可能とする。
(3)低価格にて高性能な蛍光偏光検出装置を実現できる。
【0016】
(3−1)低価格の青色半導体レーザーを励起光源として利用でき、装置の低下価格化が可能となる。
【0017】
(3−2)従来2つ以上必要であった高価なバンドパスフィルターを1つで済ます光学系により、低価格化を可能とする。
(4)その他
(4−1)装置内に可動部がなく、故障が起きにくい、信頼性の高い蛍光偏光検出装置を実現できる。
【0018】
(4−2)励起光には半導体レーザー,受光素子に高感度PINフォトダイオードを用い、電流消費量を抑えることができ、バッテリー駆動できる蛍光偏光検出装置を提供可能である。
【0019】
(4−3)サンプルおよび試薬液体が、ガラスやプラスチック等の液体保持用の壁によって隔てられていないため、蛍光測定における励起光の照射において、それらの保持用壁の光学的影響を受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の蛍光偏光検出装置は、
励起光を発光するレーザーダイオード、レーザーダイオードで発光した励起光を試料に向けるダイクロイックミラー、試料に向けられた励起光を集光する対物レンズを含む発光系と、
試料を表面張力により保持する貫通孔を有する試料保持体と、
励起光により該試料保持体に保持された試料から発生した蛍光を透過させる前記対物レンズおよび前記ダイクロイックミラー、ダイクロイックミラーを透過した蛍光を偏光により分ける偏光ビームスプリッター、分けられた蛍光それぞれを受光する受光器を含む受光系と、
を備える。
【実施例】
【0021】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の蛍光偏光検出装置の内部構成を示す図である。大きくは、試料に励起光を入射させる発光系(1〜6)と、試料が蛍光を発した光を取り込む受光系(5〜12)とに分けられる。
【0022】
発光系は、試料を励起するための励起光を発光するレーザーダイオード1、そのレーザー光をコリメートして平行光にするレンズ2、及び偏光方向を規定する偏光板3、レーザー光の波長付近のみを通すバンドパスフィルター4、励起光を試料の方へ反射して導くダイクロイックミラー5、励起光のレーザーを集光して微小な試料に照射する対物レンズ6(NA0.2程度)から成る。
【0023】
受光系は、発光系と同じ筐体内に配置され、試料より発光された蛍光を捕捉する対物レンズ6、蛍光の波長を透過するダイクロイックミラー5、蛍光の波長付近のみを透過させるバンドパスフィルター7、蛍光の偏光成分を分離する偏光ビームスプリッター8、偏光成分ごとに分離された蛍光を集光して受光器に導く集光レンズ9、および10、そして集光された微弱な蛍光信号を受光し電気信号へ変換する受光器11、12から成る。
【0024】
上記構成の蛍光偏光検出装置の好ましい特徴として、試料に励起光を照射する対物レンズと、励起光によって発生した蛍光を集光するレンズが同一であり(図中符号6で示す)、装置の小型化を実現できる。また、励起光と蛍光との光路上の分離には、ダイクロイックミラー5を用い、励起光と蛍光との波長の違いを利用しお互いの干渉を排除している。詳しくは、ダイクロイックミラーの働きとして、レーザーダイオードの励起光の波長に対しては光を反射して、励起光を対物レンズ6に導き、試料より発せられた蛍光については、対物レンズ6によって集められた蛍光の波長を透過して受光器11、12に導くことになる。
【0025】
蛍光偏光検出装置の大きな課題の一つは、励起光と蛍光の分離であり、受光部に励起光が混じると蛍光の強度の測定にノイズとして現われ、正しい蛍光の測定が困難になる。この励起光の受光部への漏れ込みを防ぐため、実施例1では、先に述べたダイクロイックミラー5での励起光と蛍光の分離のみでなく、蛍光の波長付近のみを透過させるバンドパスフィルター7をダイクロイックミラー5から受光器11、12の間に設置して、励起光が受光部へ漏れ込むことを最大限防いでいる。
(実施例2)
図2は本発明の実施例2の蛍光偏光検出装置の内部構成を示す図である。また、実施例2では、実施例1に対して、より励起光の受光部への漏れ込みを防止でき、さらに多くの蛍光信号の受光部へ導くことのできる、図2において、発光系は、試料を励起するための励起光として望ましい光の波長を発光する半導体レーザーダイオード14、そのレーザー光をコリメートして平行光にするレンズ15、余分な波長成分を光の屈折率差を利用して進行方向を変える波長分散プリズム16、及び小型化のために光を折り曲げるミラー17、励起光の光のビーム径を1/3程度に細くするためのビーム成形プリズム18、19、そして進行方向を変えた励起光波長以外の光をブロックする遮光板21、励起光を試料の方へ反射して導くダイクロイックミラー24、励起光のレーザーを集光して微小な試料に照射する高NAの対物レンズ22から成る。
【0026】
また、その光路中には20で示されるビームスプリッターが入っており、一部の励起光を集光レンズ32で集光し、受光素子33で受ける。この目的は、半導体レーザーの発光を安定させるためのパワーモニターとして用い、発光量に変動があった場合、その変化をレーザードライバー34に伝え、レーザードライバー内でのフィードバック制御によって半導体レーザーの発光量を一定に保つ仕組みである。
【0027】
受光系は、実施例1とほぼ同じ構成で、試料より発光された蛍光を捕捉する高NA対物レンズ22、蛍光の波長を透過するダイクロイックミラー24、蛍光の波長付近のみを透過させるバンドパスフィルター26、蛍光の偏光成分を分離する偏光ビームスプリッター27、偏光成分ごとに分離された蛍光を集光して受光器に導く集光レンズ28、30、そして集光された微弱な蛍光信号を受光し電気信号へ変換する受光器29、31から 成る。
【0028】
ここで、検出系、受光系以外の電気回路構成にも言及しておく。レーザードライバー34は、半導体レーザー14を駆動し、先ほど言及したパワーモニターの電圧変化より、出力変動を検知して出力変動を抑え、安定した一定の出力で半導体レーザー14を発振させる。試料から発せられた蛍光は、受光器30、31で電気信号に変換された後、増幅器35にて後に信号処理をしやすい電圧まで増幅され、中継器36でA/D変換等を行い、37のパーソナルコンピューターにて計測、測定などが行われる。
【0029】
本構成の特徴としては、励起光に半導体レーザーを使用する場合、半導体レーザーの発振する光には、励起光の波長以外に、微弱ながら信号として得られる蛍光の波長と同じ成分が含まれており、それを光学フィルターによって除去するのではなく、光の波長によって屈折率の変わる分散性の高いガラスを利用したプリズム16で、所望の波長成分以外の光の進行方向を変え、遮光板21でブロックして、検出系に漏れ込まないようにするものである。光学フィルターでは、僅かながらも、所望の波長成分以外の光を通してしまい、検出系にノイズとして入り込む欠点があった。本装置では、物理的に所望の波長成分以外の光をカットできるため、ノイズの少ない蛍光検出系を構成できる。
【0030】
また、別の特徴として、励起光レーザービームをビーム成形プリズム18、19にて対物レンズ直径より1/3ほど細くし、高NA対物レンズ22の中心付近を通し、試料に励起光を入射させていることが挙げられる。この方式により、励起光は、高NA対物レンズの一部を利用するのみで、試料に集光スポットを結ぶ際、試料の大きさに対し、小さくなり過ぎることを防ぎ、万遍なく試料に励起光を当てることができる。そこで発生した蛍光は、対物レンズ22が高NA(例えばNA0.6)であるため、対物レンズから見て74°の範囲で取り込まれ、先の実施例1と比べ(対物レンズのNAは0.2程度)角度にして3倍ほどであることから、取り込み面積で9倍の集光性能が見込め、より高い感度で測定することができる。
(実施例3)
図3は、実施例3として本発明の装置で用いられる試料保持体を拡大して示す図である。さらに、実施例1、2の構成に共通した、本蛍光偏光検出装置の他の特徴として、励起光が照射され蛍光を発する試料の位置においては、図3にその部分の拡大図を示すように、中心に試料を保持する微小な穴の空いた試料保持体13で構成し、液体状の試料を、その貫通した微小な空間内で、表面張力によって流れ出すことなく保持する状態にしていることが挙げられる。その効果として、励起光と試料の間に他の物質が介在せず、集光した励起光を直接照射して、試料から発せられる蛍光を捉えることができ、試料以外の物質の影響を避けることが可能となる。
【0031】
加えて、本発明の実施例1、2の蛍光偏光検出装においては、蛍光信号の検出部にも特徴があり、試料より発せられた蛍光の偏光成分の違いを検出するための手段として、偏光ビームスプリッター(図1で符号8で示し、図2で符号27示す)を配置し、蛍光の偏光成分が変化した場合には一方の受光器の受光光量が低下し、もう一方の受光器の受光光量が増加するような構成をとっている。この構成によって、検光子を回転させるなどして偏光方向の変化を読み取る従来手法に比べ、装置に可動部分がなく、高信頼性、小型化が実現できるようになる。加えて、レーザーダイオード、受光器共、消費電力が少ない部品を選択できることから、電池駆動も可能であり、持ち運びが容易な携帯性を実現することができる。
(実施例4)
図4は本発明の実施例4の蛍光偏光検出装置の内部構成を示す図である。本発明の蛍光偏光検出装置の内部構成として、実施例1、2とは別の構成例として、図4のような構成をとることも可能であり、さらなる高感度な蛍光偏光検出ができるようになる。図4を参照して、その好ましい特徴を示す。
【0032】
本構成は、実施例1、2と同様に発光系と、受光系とに区分され、発光系は、レーザーダイオード38、それを試料に向けて集光するレンズ39、光軸を90度曲げて試料方向へレーザー光を向かわせるロッドミラー40から成る。受光系は、試料から発せられる蛍光を集めるコーンミラー42、その集められた光を集束光として受光器に導く集光レンズ43、蛍光の偏光成分を分離する偏光ビームスプリッター44、偏光成分ごとに分離された蛍光を受光し電気信号へ変換する受光器45、46から成る。なお、本構成において試料保持容器41は、中空ガラス管等の透明な材料で作られたパイプ状のもので、その中空部分に液体状の試料が充填される。
【0033】
励起光が試料に入射し、試料より蛍光が発せられる際に、その蛍光は試料から見て特定の方向へのみ発散するのではなく、あらゆる方向に発散していくものであり、発散光をより多く捕捉する方が感度を上げることができる。本構成の好ましい特徴としては、コーンミラー42を試料位置にかぶさるように配置し、中空ガラス管等の透明な容器41に入れた試料より発生する蛍光のほとんどを、コーンミラー42によって効率よく集光できることにある。
【0034】
コーンミラー42で反射された蛍光は、集光レンズ43で収束光状にまとめられ、偏光ビームスプリッター44を経て、蛍光の偏光成分が変化した場合には一方の受光器の受光光量が低下し、もう一方の受光器の受光光量が増加するような構成を成し、受光器で電気信号に変換されて、所望の信号を感度よく得ることができる。
【0035】
このような構成をとることにより、また、別の利点として、部品点数をより削減することができ、製作コストを低減することも可能となる。
(実施例5)
図5は実施例5として本発明の装置で用いられる試料保持体を示す図である。図5に示すように、この実施例の試料保持体には、縦方向と横方向に配列された多数の試料保持孔(表面張力で試料を保持する貫通孔)が形成されている。多数の試料を試料保持体の試料保持孔で保持し、試料保持体を順次縦方向、横方向に移動させることによって、多数の試料を短時間で測定できる。
(実験例)
腸管出血性大腸菌O−157由来のベロ毒素I型遺伝子を非対称PCR法により増幅した。この増幅産物1μLと測定用試薬(プローブDNA)1μLとを混合し、その溶液を図3の13と同型のサンプルホルダにセットし、図1に示す構成の試作装置により蛍光偏光度を測定した。その測定結果を図6に示す。図6より、ベロ毒素I型遺伝子の非対称PCR産物に対する蛍光偏光度は、陰性コントロール1と陰性コントロール2、および合成相補DNAに対する蛍光偏光度より高い値を示した。これは、上記遺伝子が十分に増幅され、かつ測定用試薬がその増幅された遺伝子とハイブリッド形成反応により結合したことを意味している。この参考例に示すように、本発明の蛍光偏光検出装置は生体関連物質であるDNAを測定することができる。
【0036】
なお、図6の横軸は測定物を示しており、「陽性」とは非対称PCRによる上記遺伝子の増幅産物を示し、「合成」とはプローブDNAに対して同一鎖長かつ相補的配列をもつ合成DNAを示し、「陰性C1」とは上記遺伝子を含まずに上記と同じ非対称PCRを行った産物(陰性コントロール1)を示し、そして「陰性C2」とは一切のDNAを含まない希釈用緩衝液(陰性コントロール2)を示す。図6の縦軸は偏光度を示し、通常無単位である偏光度を1000倍した値をプロットし便宜的単位として「mP」で表した。図6すなわち棒グラフの各棒は、各測定物と測定用試薬とを混合した直後から5分後までに3回測定した値の平均値を示し、エラーバーはサンプリング標準偏差を示す。なお、この遺伝子増幅、およびその増幅産物を検出する試薬に関しては非特許文献5に詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1の蛍光偏光検出装置の内部構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例2の蛍光偏光検出装置の信号処理系を含んだ内部構成を示す図である。
【図3】実施例3として本発明で用いられる試料保持体を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施例4の蛍光偏光検出装置の内部構成を示す図である。
【図5】実施例5として本発明で用いられる試料保持体を示す図である。
【図6】本発明の実験例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1〜6 発光系
5〜12 受光系
1 レーザーダイオード
2 レンズ
3 偏光板
4 バンドパスフィルター
5 ダイクロイックミラー
6 対物レンズ
7 バンドパスフィルター
8 偏光ビームスプリッター
9、10 集光レンズ
11、12 受光器
13 試料保持体
14 レーザーダイオード
15 レンズ
16 波長分散プリズム
17 ミラー
18、19 ビーム成型プリズム
21 遮光板
22 対物レンズ
24 ダイクロイックミラー
26 バンドパスフィルター
27 偏光ビームスプリッター
28、30 集光レンズ
29、31 受光器
38 レーザーダイオード
39 レンズ
40 ロッドミラー
41 試料保持容器
42 コーンミラー
43 レンズ
44 偏光ビームスプリッター
45、46 受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を発光するレーザーダイオード、該レーザーダイオードで発光した励起光を試料に向けるダイクロイックミラー、試料に向けられた励起光を集光する対物レンズを含む発光系と、
前記試料を表面張力により保持する貫通孔を有する試料保持体と、
前記励起光により該試料保持体に保持された試料から発生した蛍光を透過させる前記対物レンズおよび前記ダイクロイックミラー、ダイクロイックミラーを透過した蛍光を偏光により分ける偏光ビームスプリッター、分けられた蛍光それぞれを受光する受光器を含む受光系と、
を有することを特徴とする蛍光偏光検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の蛍光偏光検出装置において、前記レーザーダイオードと前記ダイクロイックミラーとの間に、レーザーダイオードが試料の蛍光を発生するための所定の波長の励起光以外の波長の励起光を取り除く除去手段を有することを特徴とする蛍光偏光検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の蛍光偏光検出装置において、前記除去手段は、レーザーダイオードからの光を分散させる波長分散プリズムと、該波長分散プリズムを分散して透過した光の方向を変更するミラーと、該ミラーからの反射光を成型する成型プリズムを有することを特徴とする蛍光偏光検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の蛍光偏光検出装置において、前記除去手段は、前記成型プリズムから光に含まれている所定の波長以外の波長の光を遮光する遮光板をさらに有することを特徴とする蛍光偏光検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の蛍光偏光検出装置において、前記試料保持体が複数の試料を表面張力により保持する複数の貫通孔を有することを特徴とする蛍光偏光検出装置。
【請求項6】
励起光を発光するレーザーダイオード、該レーザーダイオードで発光した励起光を試料に向けるダイクロイックミラー、試料に向けられた励起光を集光する対物レンズを含む発光系と、
励起光により蛍光を発生する前記試料を保持する試料保持容器と、
励起光によって前記試料から発生して半径方向に分散した蛍光を前記対物レンズに向けるコーンミラーと、
前記試料から直接の蛍光と前記コーンミラーからの蛍光を透過させる前記対物レンズおよび前記ダイクロイックミラー、ダイクロイックミラーを透過した蛍光を偏光により分ける偏光ビームスプリッター、分けられた蛍光それぞれを受光する受光器とを含む受光系と、
を有することを特徴とする蛍光偏光検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−117287(P2010−117287A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291689(P2008−291689)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(308038772)
【出願人】(000134110)株式会社デジタルストリーム (3)
【Fターム(参考)】