説明

蛍光灯の電気回路

【課題】回収して再利用可能な蛍光灯の電気回路を提供する。
【解決手段】蛍光灯の電気回路は、蛍光灯管51、パワー駆動回路5、共振インダクタLr5、共振コンデンサーCr5、断路器F5を備える。蛍光灯管51の両端部には、第1フィラメント510と、第2フィラメント511とが取り付けられる。パワー駆動回路5は、制御回路50と、第1パワースイッチQ51と、第2パワースイッチQ52とを有し、フィラメント510、511と並列接続される。共振インダクタLr5は、第1パワースイッチQ51および第2パワースイッチQ52の間と、第2フィラメント511との間に直列接続され、共振コンデンサーCr5は、断路器F5と直列接続された上、フィラメント510、511の間に並列接続される。断路器F5の許容電流は、断路器F5を除きすべての回路と素子が焼損しないことを確保する電流値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光灯の電気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁式安定器は、蛍光灯管が発明されて以来、もっとも典型的な安定器である。蛍光灯管を点灯させる周波数は、商用の交流電源の周波数である。通常、安定器の電気回路は、以下のステップにより、蛍光灯管を点灯させる。
イ、 蛍光灯管両端部のフィラメントの予熱を行い、
ロ、 高電圧を発生し、蛍光灯管内部のアルゴンガスを遊離させ、
ハ、 蛍光灯管が点灯された後、蛍光灯管内部の電流の安定化または制限を行う。
【0003】
しかし、電子時代に入ると、業者は、数千ヘルツの周波数を蛍光灯管の点灯に使用し、蛍光灯管の発光効率を有効に向上できることを突き止めた。近年、次から次へと、各種の蛍光灯管の電子安定器の電子回路が業者により開発され、蛍光灯管と他の灯具に応用されている。従来のケイ素鋼板を主とする電磁式安定器の電気回路は、体積が大きく、重いほか、スタータの寿命が短いなどの欠点があり、電子安定器の電気回路に取って代わられている。
【0004】
その後、材料化学と製造技術が向上されたため、業者は、蛍光灯管を研究開発したところ、蛍光灯管の径が細いほど発光効率が高くなることに気づいた。現在、小さい管径の蛍光灯管が普及するばかりでなく、市販中のU型、らせん型などの省エネ電球など、様々なスタイルの細い管径の蛍光灯管が開発されている。細い管径の蛍光灯管は極めて高い発光効率を有するため、タングステンフィラメントを発光体とする白熱電球に代わって、日常の照明灯具の主流となっている。しかし、細い管径の蛍光灯管が点灯し始め、または点灯の過程に、蛍光灯管両端部のソケット部が突然に赤く発熱し、さらに高温によりソケット部のプラスチック部材が溶融するおそれがある。よって、世界の安全規格において、管径がT5(16mm)以下の蛍光灯管の電子安定器電気回路に「耐用年限保護」の基準と要求が追加されている。
なお、蛍光灯の電気回路は例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−296443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、業者が開発した各種の蛍光灯管電子安定器の電気回路はすべて前述の「耐用年限保護」に規定されたテストをクリアしているが、テストをクリアした電子安定器の電気回路は、蛍光灯管両端部のフィラメントの抵抗値に大きな差があるときのみ、保護効果を発揮する。これに対して、フィラメントが老朽化または瑕疵による断線し、瞬時的にアーク放電と高温を引き起こされたときには、ただちに反応できないため、保護作用を発揮できない。よって、市販の電子安定器は、仮に前述の「耐用年限保護」規定のテストをクリアしていても、前述のようなフィラメントが断線し、アーク放電と高温によるソケット部の潜在的な不具合は、いまだに有効に対策できていないことが現状である。
【0007】
現在市販中の電気式安定器の一例として、よく見かける電子安定器は図1〜図3に示すように、ハーフブリッジLC直列共振回路を備える。蛍光灯管31両端部のフィラメント32の予熱方式が異なり、電気回路それぞれにわずかな構成の違いがある。しかし、電気回路の構成に違いがあっても、市販の電子安定器の共振コンデンサーCr3の両端部は、蛍光灯管31両端部のフィラメント2に並列接続されている。そのため、蛍光灯管31両端部のフィラメント32が老朽化または瑕疵により断線し、フィラメントにアーク放電を引き起し、蛍光灯管31の電流が切断されると、電子安定器の共振インダクタLr3と共振コンデンサーCr3とにより共振回路が構成される。共振コンデンサーCr3において、極めて高い共振電流が突然に発振されると、共振コンデンサーCr3が破裂し、電子安定器の電気回路に取り付けられた他の回路と素子または電気回路板を破損するか、または電気回路板が焼損するおそれがある。
【0008】
そのほか、フィラメント32より引き起こすアーク放電の時間が長くなると、蛍光灯31両端部の温度がただちに数千度までに上昇し、灯具上で蛍光灯管31両端部のソケットを固定するプラスチック部材が発熱する。使用者は、故障したまたは焼損した蛍光灯管または電子安定器を廃棄処分し、環境を汚染し、資源を浪費している。
【0009】
近年、環境意識の台頭から、各種物品の回収、修理ならび再利用は、各国政府と業界がますます重視する課題となっている。しかし、電子安定器と蛍光灯管とが使用に堪えなくなったとき、蛍光灯管のフィラメントが断線しており、修理して再利用することはできない。電子安定器内部の電気回路と部品とは、定格を超えた共振電流によって完全に破損されている。よって、使用できない電子安定器と蛍光灯管とを回収して再利用することはできない。
【0010】
このような現象は、環境保護の障害となっている。よって、構造が単純な蛍光灯の電気回路(すなわち、蛍光灯の電子安定器回路)を提供すること、また、蛍光灯管のフィラメントが老朽化または瑕疵により瞬時に断線しフィラメントにアーク放電を引き起したとき、共振回路をただちに切断し稼働を中止させることによって、共振回路が過度なエネルギー要求により共振コンデンサーに定格を超える共振電圧と共振電流を発生させ蛍光灯内部の電気回路と素子を焼損させることを確実に防止すること、さらに、蛍光灯の電気回路の回収再利用を図ることは、本発明の主な研究課題である。
【0011】
上記問題を解決するため、本発明の目的は回収して再利用可能な蛍光灯の電気回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明による蛍光灯の電気回路は、蛍光灯管、自励または他励のパワー駆動回路、共振回路と断路器(たとえば、ヒューズ)とを備える。そのうち、蛍光灯管の両端部には、第1フィラメントと、第2フィラメントとが取り付けられる。パワー駆動回路は、制御回路と、第1パワースイッチと、第2パワースイッチとを有し、蛍光灯管両端部のフィラメントと並列接続される。共振回路は、共振インダクタと共振コンデンサーとを有し、共振インダクタは、第1パワースイッチおよび第2パワースイッチの間と、蛍光灯管のフィラメントとの間に直列接続され、共振コンデンサーは、断路器と直列接続してから、蛍光灯管両端部のフィラメントの間に並列接続される。断路器の許容電流は、蛍光灯管電気回路の断路器を除きすべての素子が焼損しないことを確保する電流値とする。
【0013】
これにより、蛍光灯管のフィラメントが老朽化または瑕疵により断線し、電気放電によって蛍光灯管の電流が切断され、共振回路に極めて高い共振電圧と共振電流が突然に発振される。共振コンデンサーに流れる共振電流は断路器の許容電流を超えると、断路器により共振回路を遮断し、稼働を中止させる。仮に、だんだん増加する共振電圧と共振電流を断路器によって断ち切っておかないと、蛍光灯管の電気回路に取り付けられた数多くの回路と素子は、共振回路による過度なエネルギー要求により焼損するおそれがある。
【0014】
上記により、本発明による蛍光灯の電気回路は、断路器を利用し、共振回路による過度なエネルギー要求による焼損を防止することができる。そのほか、フィラメントがアーク放電によって継続に発生した高温から蛍光灯管を支えるソケットのプラスチック部材の溶融することを防ぐことができる。したがって、業者は蛍光灯の電気回路を回収して再利用することができ、資源と環境保護の目的を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の正温度係数抵抗予熱始動式電子安定器の電気回路図である。
【図2】従来技術の典型的な直列共振形電子安定器の電気回路図である。
【図3】従来技術の予熱始動式電子安定器の電気回路図である。
【図4】本発明の第一実施形態による蛍光灯の電気回路の構造図である。
【図5】本発明の第二実施形態による蛍光灯の電気回路の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による蛍光灯の電気回路を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
図4に示すように、蛍光灯の電気回路は、パワー駆動回路5を有し、パワー駆動回路5は少なくとも一つの制御回路50と2つのパワースイッチQ51、Q52とを有する。パワー駆動回路5が他励のパワー駆動回路の場合、制御回路50は制御チップまたは共振制御チップであり、パワー駆動回路5が自励のパワー駆動回路の場合、制御回路50は小型トランスによって構成される自励の共振回路である。
【0017】
第1パワースイッチQ51および第2パワースイッチQ52のオンオフの切換は制御回路50によって行われる。第1パワースイッチQ51のゲート電極および第2パワースイッチQ52のゲート電極をそれぞれ制御回路50に対応の制御ピンと接続させ、第2パワースイッチQ52のドレイン電極を電源Viの正極に接続させ、ソース電極を第1パワースイッチQ51のドレイン電極と接続させ、第1パワースイッチQ51のソース電極を電源Viの負極に接続する。
【0018】
これにより、蛍光灯の電気回路は、制御回路50によって第1パワースイッチQ51および第2パワースイッチQ52のオンオフを切換え、電源Viより安定な入力電圧を獲得し、蛍光灯管51を点灯させる。蛍光灯管51の両端部にそれぞれ第1フィラメント510と第2フィラメント511とが取り付けられている。そのうち、第1フィラメント510の一端は、第2パワースイッチQ52のドレイン電極に接続され、第2フィラメント511の一端は、共振インダクタLr5と一シールドコンデンサーCb5に接続した上、第2パワースイッチQ52のソース電極に接続される。第1フィラメント510と第2フィラメント511との他端は、断路器F5と共振コンデンサーCr5とに直列接続される。
【0019】
引き続き、図4を参照する。断路器F5はヒューズまたはその他の等効果素子であり、断路器F5の許容電流は、断路器F5を除き、すべての電気回路と素子が焼損しないことを確保する電流値とする。よって、共振インダクタLr5と共振コンデンサーCr5より構成される共振回路は、制御回路50によって、第1パワースイッチQ51および第2パワースイッチQ52のオンオフを切換える。共振コンデンサーCr5において、次第に増加する共振電圧が共振され、蛍光灯管51内部のアルゴンガスを遊離可能な電圧に達したとき、蛍光灯管51が点灯し始め、その内部の液体水銀は水銀蒸気に励起され、水銀原子は蛍光灯管51内部において加速された電子電流に衝突した後、電子エネルギー準位のトランジションを引き起し、紫外光が出射される。この紫外光は、蛍光灯管51管壁の蛍光体に衝突し、可視光に転化される。
【0020】
蛍光灯管51が点灯される過程において、蛍光灯管51内部の灯管電流が同時に2つのフィラメント510と511を通過し、2つのフィラメント510と511を発熱させ、灯管電流を継続に供給するためのホットエレクトロン(hot electron)が発生される。2つのフィラメント510と511の部材は、タングステンフィラメントに電子粉末流体(通常は酸化バリウム)を塗布して構成されている。よって、2つのフィラメント510と511が発熱しホットエレクトロンを発生する過程で、電子粉末流体は次第に消尽され、フィラメント510または511が細くなり、抵抗値が高くなって断線する。一部の断線発生は2つのフィラメント510または511自身の瑕疵による。しかし、2つのフィラメント510または511に断線が発生したとき、残った一部のフィラメントに電気アークを引き起し、極めて高い温度が発生する。このとき、蛍光灯管51内部の電流が中断され、共振回路より極めて高い共振電圧と共振電流が瞬時に共振され、共振コンデンサーCr5に流れる共振電流が断路器F5の許容電流を超えるとき、共振電流によって断路器F5で共振回路を遮断し、稼働を中止させる。
【0021】
これに対して、フィラメント510または511が断線したとき、蛍光灯の電気回路において、共振コンデンサーCr5に断路器F5が直列接続されていないときは、共振回路で瞬時に共振された共振電圧と共振電流が引き続き上昇し、蛍光灯の電気回路に取り付けられたパワードライバQ51とQ52などの回路と素子が焼損する。さらに、フィラメントの電気アークが数千度の高温に達し、蛍光灯管51を支えるソケットのプラスチック部材が溶融する。このように、本実施形態による蛍光灯の電気回路は、フィラメントの電気アークによる高温発生が蛍光灯ソケットを支えるプラスチック部材の溶融を防ぐことができる。それにより、フィラメント510または511が断線し、灯管51が使用に堪えないときに、蛍光灯の電気回路の制御回路50、第1パワースイッチQ51、第2パワースイッチQ52、共振コンデンサーLr5、シールドコンデンサーCb5、共振コンデンサーCr5などの回路と素子は断路器F5により保護され、回収して再利用されることができる。よって、蛍光灯の電気回路は、業者によって回収された後、蛍光灯管51と断路器F5とが交換されることだけで、再利用されることができる。これにより、資源の節約と環境保護の目的を実現することができる。
【0022】
(第二実施形態)
図5に示すように、共振インダクタLr5は、第2フィラメント511の一端と第2パワースイッチQ52のソース電極との間に直列接続されており、シールドコンデンサーCb5は、第1フィラメント510の一端と第2パワースイッチQ52のドレイン電極との間に直列接続されている。
【0023】
蛍光灯の電気回路の構造変更にかかわらず、本発明で主張する蛍光灯の電気回路は、図4と5に示すように、共振コンデンサーCr5と断路器F5とが直列接続された後に、蛍光灯管51両端部のフィラメント510と511の右側(図4と5参照)または左側に並列接続されるものを指す。電子安定器の技術に詳しい当業者は、本発明の思想に基づき、いかなる蛍光灯管51両端部のフィラメント510および511の左側または右側に、共振コンデンサーCr5と断路器F5と互いに直列接続される回路を並列接続することによって、共振コンデンサーCr5において定格を超えた共振電圧と共振電流を発振させ、断路器F5でただちに共振回路を遮断することは、本発明が主張する蛍光灯の電気回路構造の技術的範囲に含まれるものとする。
【0024】
本発明の好ましい実施形態は以上説明の通りである。ただし、本発明の権利範囲はこれらに限られないものとする。当該技術を熟知する者は、本発明で開示された技術内容により、容易に想到する等効果の変化などは、なお本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
5 ・・・パワー駆動回路
50 ・・・制御回路
51 ・・・蛍光灯管
510 ・・・第1フィラメント
511 ・・・第2フィラメント
Cr5 ・・・共振コンデンサー
Cb5 ・・・シールドコンデンサー
F5 ・・・断路器
Lr5 ・・・共振インダクタ
Q51 ・・・第1パワースイッチ
Q52 ・・・第2パワースイッチ
Vi ・・・電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光灯管と、パワー駆動回路と、共振インダクタと、共振コンデンサーと、断路器と、を備える蛍光灯の電気回路であって、
前記蛍光灯管は、両端部に第1フィラメントと、第2フィラメントとが取り付けられ、
前記パワー駆動回路は、制御回路と、第1パワースイッチと、第2パワースイッチとを有し、
前記制御回路は、前記第1パワースイッチおよび前記第2パワースイッチのオンオフを切換え、
前記第1パワースイッチは、一端が前記第2パワースイッチの一端と直列接続され、他端が電源の負極に接続され、
前記第2パワースイッチの他端は、前記電源の正極と前記第1フィラメントとに接続され、
前記共振インダクタは、前記第1パワースイッチおよび前記第2パワースイッチの間と、前記第2フィラメントとの間に直列接続され、
前記共振コンデンサーは、前記断路器と直列接続され、前記蛍光灯管両端部の前記第1フィラメントと前記第2フィラメントとの間に並列接続され、
前記共振インダクタと前記共振コンデンサーとにより共振回路を構成し、
前記断路器の許容電流は、断路器を除きすべての電気回路と素子が焼損しないことを確保する電流値とし、
前記共振コンデンサーより共振電圧と共振電流を共振させ、前記共振電流が前記断路器の前記許容電流を超えると、前記断路器により前記共振回路を遮断し、前記共振回路の稼働を中止させることを特徴とする蛍光灯の電気回路。
【請求項2】
一端は前記第1パワースイッチと前記第2パワースイッチとの間に接続され、他端は前記共振インダクタに接続されるシールドコンデンサーを備えることを特徴とする請求項1に記載の蛍光灯の電気回路。
【請求項3】
前記第2パワースイッチと前記第1フィラメントとの間に直列接続されるシールドコンデンサーを備えことを特徴とする請求項1に記載の蛍光灯の電気回路。
【請求項4】
前記第1パワースイッチのゲート電極および前記第2パワースイッチのゲート電極は、前記制御回路に対応する制御ピンに接続され、
前記第2パワースイッチは、ドレイン電極が前記電源の正極および前記第1フィラメントに接続され、ソース電極が前記第1パワースイッチのドレイン電極に接続され、
前記第1パワースイッチのソース電極は、前記電源の負極に接続されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の蛍光灯の電気回路。
【請求項5】
前記断路器はヒューズであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光灯の電気回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79669(P2012−79669A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271468(P2010−271468)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(599084131)天網電子股▲分▼有限公司 (8)
【Fターム(参考)】