説明

蛍光物質成形体及びその製造方法、発光装置

【課題】 新規な蛍光物質成形体の製造方法を提供すること、また、ガラス粉末に対する蛍光体粉末の配合比を高くした蛍光物質成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】 蛍光体粉末と無機部材粉末との混合物を、放電プラズマ焼結法を用いて無機部材粉末を溶融させ、その後、冷却する蛍光物質成形体の製造方法に関する。また、この蛍光物質成形体の製造方法により得られる蛍光物質成形体であって、蛍光体の濃度は5重量%以上である蛍光物質成形体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光物質成形体、蛍光物質成形体の製造方法、及び蛍光物質成形体を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体を用いた発光装置として、青色の発光を行うLEDチップと、青色光を黄色に変換するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体と、を組み合わせた白色に発光する発光装置が知られている。YAG蛍光体は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂に分散させてLEDチップの周囲に配置している。しかし、LEDチップの高出力化やLEDチップの発熱に伴い、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が劣化されやすくなっている。このため、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂に代えて、耐熱性、耐光性に優れたガラスを用いた発光装置が知られている(例えば、特許文献1乃至6参照)。
【0003】
従来の半導体発光装置として、基体と、基体に固着された半導体発光素子と、半導体発光素子を被覆するコーティング材と、を備え、コーティング材は光透過性を有するポリメタロキサン又はセラミックである半導体発光装置が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照)。コーティング材は、蛍光物質を含有しており、ポリメタロキサン結合を主体として形成されたガラスである旨が記載されている。コーティング材を構成するコーティング材形成溶液は、通常は液体であるが、空気中又は酸素雰囲気中で加熱すると成分の分解又は酸素の吸収により金属酸化物のメタロキサン結合を主体とする透明なコーティング材を生成する。これらのコーティング材形成溶液に蛍光物質の粉末を混合して半導体発光素子の周囲に塗布すれば、光変換作用を発揮する蛍光物質を含有するコーティング材を形成することができる。このコーティング材の形成方法は、コーティング材を基体の凹部内に注入して、約150℃〜200℃の温度で焼成し、蛍光物質を含有するコーティング材を固化形成して、半導体発光素子を封止する。コーティング材の焼成温度は半導体発光素子の融点よりも十分に低い。このように、ポリメタロキサン結合を主体として形成されたガラスは融点が低く、半導体発光素子を封止する際、ガラスは液状となっている。この液状のガラスを固化する際に、各部材の膨張係数が異なるため、ワイヤが切断されたり、半導体発光素子が基体から剥離されたりすることがある。
【0004】
また、従来の発光装置として、セラミックスで形成されたケースの凹部にLEDチップがマウントされ、低融点ガラスをバインダーとする蛍光体がLEDチップの周囲に塗布されている発光装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。この低融点ガラスをLEDチップの周囲に塗布され、加熱、溶融が行われて固化される。そのため、低融点ガラスを固化する際に、各部材の膨張係数が異なるため、ワイヤが切断されたり、LEDチップがケースから剥離されたりすることがある。また、低融点ガラスは光の取り出し効率が悪い。これは、低融点ガラスが着色されているため、LEDチップから出射された光が低融点ガラスの着色部分で一部吸収されるからである。さらに、低融点ガラスであるため、熱や湿度に弱く、化学的安定性も悪いという欠点もある。
【0005】
また、従来の発光装置として、青色光源と発光色変換部材とを有し、青色光源から発せられる青色光の一部を黄色に変換し、残部の青色光と合成して白色光を得る発光装置が知られている(例えば、特許文献5参照)。発光色変換部材は、軟化点が500℃より高いガラス中にYAl12系の無機蛍光体が分散されている。発光色変換部材は、無機蛍光体粉末とガラス粉末を混合し、発光色変換部材用材料を得る。この発光色変換部材用材料に樹脂バインダーを添加して加圧成型し、円盤状の予備成型体を製作する。この予備成型体を焼成して樹脂バインダーを除去して焼結させ、発光色変換部材を得る。この予備成型体の焼結温度は400℃〜850℃である。実施例においてガラス中に含有されている無機蛍光体の密度は0.05体積%〜10.0体積%である。この発光色変換部材は、無機蛍光体粉末とガラス粉末とを樹脂バインダーを除去して焼結させていることから、無機蛍光体を高濃度に充填することはできない。無機蛍光体を高濃度に充填すると非常に脆い発光色変換部材となるからである。
【0006】
さらに、従来の発光装置として、紫外線LED素子と発光色変換部材とを有し、紫外線LED素子から発せられる紫外線を可視光に変換する発光装置が知られている(特許文献6参照)。発光色変換部材は、酸化物ガラス粉末と蛍光体粉末とを90対10、95対5の配合比で調合し、少量の樹脂バインダーを添加して混合した後、金型で加圧成型してボタン状予備成型体を作製する。この予備成型体を酸化物ガラスの軟化点プラスマイナス150℃の温度範囲で焼結させ円盤状発光色変換部材を得ている。酸化ガラスの軟化点−150℃より低い温度ではガラスが流動し難く、緻密な焼結体を得ることが難しくなる。軟化点+150℃より高い温度では蛍光体がガラスに溶け出し、発光が弱くなったりガラスが変色したりするおそれがある。また、酸化ガラス粉末に対する蛍光体粉末の配合比を高くした場合、非常に脆い焼結体となる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−349340号公報
【特許文献2】特開2000−349347号公報
【特許文献3】特開2001−85747号公報
【特許文献4】特開2004−200531号公報
【特許文献5】特開2003−258308号公報
【特許文献6】特開2006−202726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、従来の発光装置に使用される、蛍光体粉末とガラス粉末とを用いた発光色変換部材は上述のような問題を有している。このことから、本発明は、ガラス粉末に対する蛍光体粉末の配合比を高くした蛍光物質成形体を提供することを目的とする。また、蛍光物質成形体の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明は、蛍光体粉末と無機部材粉末との混合物を、放電プラズマ焼結法を用いて無機部材粉末を溶融させ、その後、冷却する蛍光物質成形体の製造方法に関する。これにより極めて短時間に蛍光物質成形体を製造することができる。また、蛍光体粉末と無機部材粉末とを強固に複合化することができる。
【0011】
放電プラズマ焼結法(Spark Plasma Sintering Method)とは、圧粉体粒子間隙に直接パルス状の電気エネルギーを投入し、火花放電により瞬時に発生する高温プラズマ(放電プラズマ)の高エネルギーを熱拡散、電界拡散などへ効果的に応用することで、低温度から2000℃以上の超高温領域において従来法に比べ低い温度域、短時間で焼結あるいは焼結接合を可能とする材料合成加工技術をいう。
【0012】
前記放電プラズマ焼結法は、前記混合物に15kN以上の圧力を加えることが好ましい。特に30kN以上3MN以下の圧力を加えることがより好ましい。これにより短時間で緻密な成形体を得ることができる。
【0013】
また、前記放電プラズマ焼結の工程後、アニール処理を施すことが好ましい。これにより、所望とする光拡散効力を備えた蛍光物質成形体を得ることができる。
【0014】
本発明は、蛍光体粉末と無機部材粉末とが混合され、溶融後に得られる蛍光物質成形体であって、前記蛍光体の濃度は5重量%以上、好ましくは10重量%以上である蛍光物質成形体に関する。これにより、強固かつ薄型の蛍光物質成形体を提供することができる。
【0015】
蛍光物質成形体の焼結密度は、真密度に対して95%以上であることが好ましい。これにより、さらに強固かつ薄型で、光取り出し効率の高い蛍光物質成形体を提供することができる。
【0016】
前記無機部材は、200℃以上のガラス転移点を持つガラスを用いることができる。また480℃以下のガラス転移点を持つガラスが好ましい。これにより耐熱性に優れた発光装置を提供することができる。また比較的ガラス転移点の低い物質を使用することができる。
【0017】
前記無機部材は、前記蛍光体の少なくとも1種の蛍光体組成、前記蛍光体の結晶系とほぼ同一の組成、または前記蛍光体の結晶系のいずれか1つを有することが好ましい。これにより、放電プラズマ焼結過程における蛍光体と無機部材との溶融拡散もしくは熱拡散により蛍光体の変換効率が低下することを抑制することができる。また、蛍光体と無機部材との界面を、組成的、結晶的にほぼ連続とすることができることから、蛍光体と無機部材との接合界面における光の損失を低減させることができる。
【0018】
さらに、前記無機部材と前記蛍光体の屈折率差は、1.0以下であることが好ましい。これにより、蛍光体にて変換された光を効率よく外部へ取り出すことができる。
【0019】
前記蛍光体は、平均粒径が10nm以上100μm以下のものを用いることができる。放電プラズマ焼結法は、ナノサイズの蛍光体粒子と無機部材とを均一に混合できるため、均一な発光を得ることができる。また、放電プラズマ焼結法では、蛍光体粒子が粒子成長することを抑制しながら焼結することができる。このため、小さいサイズの蛍光体粒子を分散したまま焼結することができ、光拡散に優れた蛍光物質成形体を得ることができる。
また、平均粒径が50μm以上の蛍光体を用いる場合は、蛍光体の変換効率、取り出し効率が良くなるため、発光強度の高い蛍光体成形体を得られ易い。但し、蛍光体の平均粒径は、大きくすぎると無機部材との均一性が得られにくいことから、100μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明は、発光素子と、前記発光素子の周囲に配置される前記製造方法により製造された蛍光物質成形体、又は前記蛍光物質成形体と、を有する発光装置に関する。これにより発光素子から出射される光の少なくとも一部は蛍光物質成形体に照射され、蛍光物質成形体に含有されている蛍光体が波長変換され、発光素子と異なる波長の光を放出する。この蛍光体からの光と、蛍光物質成形体を透過する発光素子からの光と、が混合し、白色光などの混色光を放出する発光装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明したように構成されているので、極めて短時間に蛍光物質成形体を製造することができる製造方法を提供することができる。また、強固、かつ、薄型の蛍光物質成形体を提供することができる。さらに、白色光などの混色光を放出する発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る蛍光物質成形体及びその製造方法、発光装置について、実施の形態及び実施例を用いて説明する。だたし、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定されない。図1は、実施の形態に係る蛍光物質成形体を示す概略斜視図である。図2は、実施の形態に係る放電プラズマ焼結装置を示す概略説明図である。
【0023】
<蛍光物質成形体>
実施の形態に係る蛍光物質成形体10は、蛍光体粉末20と無機部材粉末30との混合物に放電プラズマ焼結法を用いて溶融後に冷却することによって得られる。蛍光物質成形体10の形状は特に限定されないが、平板状や円柱状、直方体等の形状を採ることができる。蛍光物質成形体10の厚みは特に限定されないが、発光素子から出射された光が透過する厚さとすることができる。例えば、蛍光物質成形体10の厚さを0.5mm〜5.0mmとすることができる。また、発光素子から出射された光の大部分を遮断するが、蛍光物質成形体10からの光を高出力に放出することができる、蛍光体20の密度の高い薄型の蛍光物質成形体10とすることもできる。蛍光物質成形体10の大きさは特に限定されない。蛍光物質成形体10は放電プラズマ焼結法により得られたそのままでも使用できるが、所定の大きさとするため、蛍光物質成形体10の側面を切断機で切断したり、若しくは蛍光物質成形体10の一部に傷を付け、この傷に沿って応力を加え、分割したりしてもよい。さらに、この切断若しくは分割後、蛍光物質成形体10の側面を研磨してもよい。また、蛍光物質成形体10の表面を研磨しなくても使用できる場合があるが、蛍光物質成形体10の表面を研磨して凹凸を小さくしたものも使用できる。蛍光物質成形体10における蛍光体20の濃度は10重量%以上であることが好ましいが、5重量%以上のものも使用できる。
【0024】
蛍光物質成形体10の原料となる蛍光体粉末20、無機部材粉末30等について詳述する。
【0025】
(蛍光体、蛍光体粉末)
蛍光物質成形体10は蛍光体(蛍光体粉末)20を含有する。明細書において「蛍光体粉末」は蛍光物質成形体として複合化される前の原料として使用される状態を意味し、「蛍光体」は蛍光物質成形体として複合化された後の状態を意味する。蛍光体20は発光素子から出射された光を吸収して波長変換を行い、発光素子と異なる波長の光を発するものであればよい。蛍光体粉末20の大きさは特に限定されず、数nmから数十μm程度のものを使用することができる。蛍光体粉末20は扱いやすさの観点から3μm〜10μm程度が好ましい。
【0026】
ここで、本明細書において、粒径値とはFisher Sub Sieve Sizer‘s No(フィッシャー、サブ、シーブ、サイザーズ、ナンバー)と呼ばれる空気透過法を用いた平均粒径の値を示す。
【0027】
原料に用いる蛍光体粉末20の具体例としては、以下に示すものを挙げることができる。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体・サイアロン系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類硫化物蛍光体、アルカリ土類チオガレート蛍光体、チオケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これに限定されない。
【0028】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体は、MSi:Eu、MAlSiN:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。また、MSi:EuのほかMSi10:Eu、M1.8Si0.2:Eu、M0.9Si0.110:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などもある。
【0029】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体は、MSi:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。
【0030】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活されるサイアロン系蛍光体は、Mp/2Si12−p−qAlp+q16−p:Ce、M−Al−Si−O−N(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。qは0〜2.5、pは1.5〜3である。)などがある。
【0031】
Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体には、M(POX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれかである。)などがある。
【0032】
アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体には、MX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれかである。)などがある。
【0033】
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl:R、SrAl1425:R、CaAl:R、BaMgAl1627:R、BaMgAl1612:R、BaMgAl1017:R(Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれかである。)などがある。
【0034】
アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体には、MSiO:Eu(M=Ca、Sr、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。
【0035】
アルカリ土類硫化物蛍光体には、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Euなどがある。
【0036】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、YAl12:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、(Y,Gd)(Al,Ga)12の組成式で表されるYAG系蛍光体などがある。また、Yの一部若しくは全部をTb、Lu等で置換したTbAl12:Ce、LuAl12:Ceなどもある。
【0037】
その他の蛍光体には、MS:Eu、ZnGeO:Mn、0.5MgF・3.5MgO・GeO、MGa:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。
【0038】
上述の蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又は、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0039】
また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0040】
これらの蛍光体は発光素子からの励起光により、黄色、赤色、緑色、青色に発光スペクトルを有するものを使用することができるほか、これらの中間色である黄色、青緑色、橙色などに発光スペクトルを有するものも使用することができる。これらの蛍光体を種々組み合わせて使用することにより、種々の発光色を有する発光装置を製造することができる。
【0041】
例えば、青色に発光するGaN系、InGaN系化合物半導体発光素子を用いて、YAl12:Ce若しくは(Y0.8Gd0.2Al12:Ceの蛍光体に照射し、波長変換を行う。発光素子からの光と、蛍光体からの光との混合色により白色に発光する発光装置を提供することができる。
【0042】
例えば、緑色から黄色に発光するCaSi:Eu又はSrSi:Euと、蛍光体である青色に発光する(Sr,Ca)(POCl:Eu、赤色に発光するCaSi:Eu又はCaAlSiN:Euと、からなる蛍光体を使用することによって、演色性に優れた白色に発光する発光装置を提供することができる。これは、色の三源色である赤・青・緑を使用しているため、蛍光体の配合比を変えることのみで、所望の白色光を実現することができる。
【0043】
(無機部材、無機部材粉末)
蛍光物質成形体10は無機部材粉末30を含有する。明細書において「無機部材粉末」は蛍光物質成形体として複合化される前の原料として使用される状態を意味し、「無機部材」は蛍光物質成形体として複合化された後の状態を意味する。無機部材粉末30は蛍光体粉末20を保持するために用いられる。また、発光素子から出射された光の一部又は蛍光体20から放出された光の一部が透過するものであれば特に限定されない。具体的には、無機部材粉末30はガラス、セラミックスなどである。特に、無機部材粉末30は、軟化点が比較的低く、安価であることからガラスが好ましい。
【0044】
無機部材粉末30として、一般的な透明誘電体無機材料を用いることができる。具体的には、ホウケイ酸ガラス、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオビウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムなどがあげられるが、放熱性および光取り出し効率を考慮すると、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。また、無機部材粉末30は、混合する蛍光体20の少なくとも1種の蛍光体組成、前記蛍光体の結晶系とほぼ同一の組成、または前記蛍光体の結晶系のうち、少なくとも1つを有していることが好ましい。これにより、放電プラズマ焼結過程における蛍光体と無機部材との溶融拡散もしくは熱拡散により蛍光体の変換効率が低下することを抑制することができる。また、蛍光体と無機部材との界面を、組成的、結晶的にほぼ連続とすることができることから、蛍光体と無機部材との接合界面における光の損失を低減させることができる。
【0045】
(ガラス)
無機部材粉末30としてガラス粉末31を用いることができる。ガラス粉末31は蛍光物質成形体10に変態したとき、発光素子からの光を透過するとともに、蛍光体20を保持するものであれば良い。ガラス粉末31の大きさは特に限定されず数nm〜数mmのものを使用することができる。
【0046】
鉛フリーのガラス31は200℃以上700℃以下のガラス転移温度を持つことが好ましい。また、鉛フリーのガラス31の融点は220℃以上であり800℃以下であることが好ましい。一方、鉛入りのガラス31は300℃以上700℃以下のガラス転移温度を持つことが好ましい。また、鉛入りのガラス31の融点は400℃以上であり、800℃以下であることが好ましい。ガラス粉末31は放電プラズマ焼結法を用いて溶融するため、比較的高いガラス転移点を持つガラス粉末31を使用することができる。ガラス転移温度以上融点よりも低い温度にガラス粉末31を加熱して軟化状態にすることにより蛍光物質成形体10を成型することができる。特に、ガラス31は430℃以上600℃以下のガラス転移温度を有していることが好ましい。但し、この軟化状態は融点以上に液状化されたものではない。ガラス粉末31が融点以上に加熱されて液状化すると蛍光体粉末20とガラス粉末31との熱膨張係数差によりクラックが生じやすくなるからである。
【0047】
ガラス31の材質は、B―SiO、BaO―B―SiO、ZnO−B―SiO等が挙げられる。SiO(シリカ)、B(三酸化二ホウ素)、ZnO(酸化亜鉛)、TiO(酸化チタン(IV))、の他に、PbO、Ga、CdO、BaO、Al、La、TaO、LiO、ZrO、WO、Nb、P、NaO、KO、CaO、BaO、BaO、MgO、MnO、等の酸化物、LiF、NaF、KF、AlF、MgF、CaF、SrF、BaF、YF、LaF、SnF、ZnF等のフッ化物を含有することもできる。これにより融点、ガラス転移温度、屈折率等を所定の値に調節することもできる。屈折率を所定の値に調節することにより発光素子からの光の取り出し効率を高めることができる。また、Pbを含有することにより光沢を増し、透明性を向上することもできる。また、Pbを含有することにより製造工程における蛍光物質成形体10の装置からの取り出しを容易に行うことができる。ガラス31は鉛の含有量が100ppm以下であることが好ましく、実質的に含有されていないことが特に好ましい。環境保護の観点からである。
【0048】
(その他)
蛍光物質成形体10には、蛍光体粉末20、無機部材粉末30と共に光拡散部材を含有させてもよい。具体的な光拡散部材としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、アルミン酸バリウム等が好適に用いられる。光拡散部材の大きさは特に限定されず、中心粒径が1nm以上300μm以下、好ましくは中心粒径が1nm以上100μm以下のものを使用することができる。
【0049】
(放電プラズマ焼結法)
放電プラズマ焼結法に用いる放電プラズマ焼結装置100は、蛍光体粉末20と無機部材粉末30との粉体混合物に対して低電圧でパルス状大電流を投入し、火花放電現象により瞬時に発生する放電プラズマの高エネルギーにより無機部材粉末を溶融させるものである。放電プラズマ焼結装置100は、カーボン製の上部パンチ110と下部パンチ120と焼結ダイ130とによって粉体混合物を挟み込んでいる。焼結ダイ130は筒状を成しており、筒状の内部に粉体混合物が配置される。上部パンチ110と下部パンチ120の少なくとも一方は焼結ダイ130の筒状内部を上下に移動可能である。上部パンチ110と下部パンチ120は、上部パンチ電極140と下部パンチ電極150との間に挟まれている。上部パンチ電極140は上部パンチ110と連結されており、また、下部パンチ電極150は下部パンチ120と連結されている。上部パンチ電極140と下部パンチ電極150は上部パンチ110と下部パンチ120を伝って、粉体混合物を圧縮する方向に圧力を加えることができる。粉体混合物及び上部パンチ110と下部パンチ120、焼結ダイ130は、真空チャンバー160内に配置されている。上部パンチ電極140と下部パンチ電極150とは電源170に電気的に接続されている。
【0050】
<蛍光物質成形体の製造方法>
蛍光物質成形体10は、蛍光体粉末20と無機部材粉末30との混合物を、放電プラズマ焼結法を用いて無機部材粉末を溶融し、その後、冷却することにより製造することができる。ここでは無機部材粉末30としてガラス粉末31を例にとって説明する。
【0051】
(1)計測された蛍光体粉末20と計測されたガラス粉末31との混合物を上部パンチ110と下部パンチ120と焼結ダイ130とによって挟み込まれる空間内に配置する。
【0052】
(2)上部パンチ電極140と下部パンチ電極150を用いて電源170から所定の電圧をかけ、所定の電流を流す。上部パンチ電極140に接続された上部パンチ110と、下部パンチ電極150に接続された下部パンチ120と、は発熱する。電流はマイクロ秒間隔のパルス状で流す。電圧は10ボルト前後、電流は数百アンペア以上であるが、混合物の量、種類により適宜変更する。また、投入時間は混合物の量、種類により適宜変更するが、1分〜15分程度と極めて短時間である。昇温速度は混合物の量、種類に応じて適宜変更でき、例えば電流100A/分〜300A/分とすることができる。電流を流すとともに、上部パンチ110と下部パンチ120とに上下方向の圧力を加える。加える圧力は適宜変更するが、15KN以上、好ましくは30KN〜3MNである。単位面積(パンチ)当たりの圧力に相当する。真空チャンバー内の温度は2000℃以下であることが好ましい。真空チャンバーとしているが、大気、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気なども使用することができる。このように、電流をマイクロ秒間隔のパルス状で流すため混合物相互の接触部に放電プラズマが発生する。この放電プラズマにより瞬時に発生する高温プラズマの高エネルギーを熱拡散・電界拡散などへ効果的に応用することで低温から2000℃以上の超高温領域において昇温・保持を含め3分〜20分程度の短時間で「焼結」「焼結結合」を行うことができる。以上を放電プラズマ焼結法とする。
【0053】
(3)これにより無機部材が溶融された蛍光物質成形体10を得る。
【0054】
蛍光物質成形体10の焼結密度は、光取り出し効率および機械的強度を考慮すると、真密度に対して90%以上、より好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上であることが好ましい。
【0055】
しかしながら、蛍光物質成形体10は、焼結密度を高く形成すると、色度・輝度ムラが生じやすい。そこで、蛍光物質成形体10の焼結密度を高くする場合、放電プラズマ焼結法の冷却工程後、アニール処理を施すことが好ましい。アニール処理は、蛍光体成形体の種類により選択された温度下と雰囲気下にて行われる。例えば、大気中、窒素中、水素/窒素混合ガス中などにて行われる。アニール処理は、成形体が焼結された直後に施しても良く、成形体に切断加工を施した後に施しても良い。これにより、蛍光物質成形体10に光拡散効果をもたらすことができる。アニール工程により光拡散効果が増す理由としては、焼結過程において失活した蛍光体粉末の粒界近傍の付活剤が再活性化され、無機部材との屈折率差が顕著になるためであると考えられる。このようにして得られた蛍光物質成形体10が組み込まれた発光装置は、照射先に発光素子のダイスパターンが映し出されず、均一な発光を得ることができる。
【0056】
ここで、本明細書において、焼結密度とは、蛍光体と無機部材の組成、結晶系により計算される理論密度と、アルキメデス法で測定された成形体密度との割合(%)で表す。理論密度の代わりに、真密度も用いることもできる。真密度は、例えば、島津製作所製アキュピックを用いて測定される。焼結・成形前の蛍光体粉末と無機部材粉末との混合物を所定の容器Aに投入して計量する。その後、容器AにHeガス充填し一定圧力にした後、容積既知の容器BにHeガスを開放する。最後に、連結された容器AとBの平行圧力を測定することで、総体積と圧力変化とを利用し粉体混合物の粉末の体積を測定することができる。重量と得られた粉末体積により、目的となる真密度を計算することができる。成形体密度は、あらかじめ重量を測定した蛍光体成形体を水などの液体を満たした容器に入れ、溢れ出た水の体積により成形体の重量を割ることで測定するアルキメデス法を用いる。
【0057】
<発光装置>
発光装置は、光源と蛍光物質成形体10とを少なくとも有する。光源は、蛍光物質成形体10に含有される蛍光体20を励起するものであれば限定されないが、小型で長寿命であることから半導体発光素子が好ましい。光源から出射された光は蛍光物質成形体10に照射され、蛍光物質成形体10は光源と異なる波長の光を放出する。この光源からの光の一部と、蛍光物質成形体10からの光の一部と、が混合して所定の発光色を実現することができる。また、紫外線領域に発光する光源を用い、蛍光物質成形体10から放出される光を発光色とする発光装置とすることもできる。
【0058】
(発光素子)
発光素子は、紫外線領域に発光する発光素子や、青紫色系、青色系、青緑色系、緑色系等に発光する発光素子を使用することができる。発光素子の発光ピーク波長は、360〜550nmに発光ピーク波長を有しているものが好ましい。発光素子は、発光ダイオード素子(LED)やレーザ素子(LD)などを含む。青色系に発光する発光素子は、III族窒化物系化合物発光素子であることが好ましい。発光素子は、例えばサファイア基板上にGaNバッファ層を介して、Siがアンドープのn型GaN層、Siがドープされたn型GaNからなるn型コンタクト層、アンドープGaN層、多重量子井戸構造の発光層(GaN障壁層/InGaN井戸層の量子井戸構造)、Mgがドープされたp型GaNからなるp型GaNからなるpクラッド層、Mgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層が順次積層された積層構造を有するものを使用することができる。
【0059】
(被膜)
蛍光物質成形体10の表面に被膜を形成することもできる。被膜は蛍光物質成形体10の白濁を抑制することができる。蛍光物質成形体10の白濁はガラスが結晶化することに起因する。また水分の透過を抑制することもできる。被膜は光拡散部材、紫外線吸収材などを含有させたものを使用することができる。例えば所定の波長の光(350nm以下の波長及び550nm以上の波長の光)を吸収する被膜を用いることにより、特定の波長の光(350nmから550nmまでの波長の光)を取り出すことができる発蛍光物質成形体10を提供することができる。被膜は一層だけでなく、多層構造とすることもできる。多層構造とすることにより透過率を上げることもできる。
【0060】
(パッケージ)
パッケージは発光素子及び蛍光物質成形体10を配置する。パッケージに発光素子が載置され、発光素子からの光が直接または間接に外部に放出される位置に蛍光物質成形体10を配置する。パッケージの形状は特に限定されず、カップ状、平板状、アレイ状などを採ることができる。例えば、カップ状のパッケージを使用して、カップ内に発光素子を配置して、カップの開口部分を蛍光物質成形体10で封止することもできる。また、平板状の台座と一部に開口部があるキャップとを有するパッケージを使用して、台座に発光素子を配置して、キャップの開口部に蛍光物質成形体10を配置することもできる。さらに、複数の開口部を有するアレイを使用し、開口部内に発光素子を配置して、開口部に蛍光物質成形体10を配置することもできる。パッケージは、ポリフタルアミドや液晶高分子などの樹脂、ガラスエポキシ基板、セラミックスなどの材料を用いることができる。
【0061】
[実施例1乃至3]
以下、実施例1乃至3に係る蛍光物質成形体について説明する。図1は、実施の形態に係る蛍光物質成形体を示す概略斜視図である。図3は、積分球を用いた測定方法を示す概略説明図である。図4は、実施例2に係る蛍光物質成形体の光束と励起光出力との測定結果を示す図である。図5は、実施例2に係る蛍光物質成形体の光出力と励起光出力との測定結果を示す図である。図6は、実施例2に係る蛍光物質成形体の発光スペクトルを示す図である。図7は、実施例2に係る蛍光物質成形体の発光スペクトルを示す図である。
【0062】
実施例1乃至3に係る蛍光物質成形体10は、原料に蛍光体粉末20とガラス粉末31とを用い、放電プラズマ焼結法により製造される。
【0063】
蛍光体粉末20は、LuAl12:Ce蛍光体と、CaSiAlN:Eu蛍光体と、の2種類を用いる。LuAl12:Ce蛍光体とCaSiAlN:Eu蛍光体の平均粒径は約5μmである。
【0064】
ガラス粉末31は、ホウケイ酸ガラスを用いる。ホウケイ酸ガラスはガラス転移点が500℃、屈伏点550℃、比重2.39g/ccである。ホウケイ酸ガラスの平均粒径は約120μmである。
【0065】
LuAl12:Ce蛍光体とCaSiAlN:Eu蛍光体とを用いる蛍光体粉末20と、ホウケイ酸ガラスを用いるガラス粉末31と、の原料混合比(g)は、(LuAl12:Ce蛍光体):(CaSiAlN:Eu蛍光体):(ホウケイ酸ガラス)=14.88:0.62:84.50である。
【0066】
放電プラズマ焼結装置100は、SPSシンテックス株式会社製(装置形式:SPS−9.40MK−VII)を用いる。蛍光物質成形体10の大きさが直径約34mmの円柱状となる焼結ダイ130を用いる。上部パンチ110と下部パンチ120、焼結ダイ130は、グラファイト製を用いる。真空チャンバーは約10Pa以下に保持し、冷却水を流している。昇温速度は電流を約200A/分で流す。上部パンチ110と下部パンチ120との上下方向のプレスは約28KNとする。
【0067】
実施例1では、蛍光体粉末20と無機物粉末31との混合原料の仕込み量を4.0g使用する。ホウケイ酸ガラスのガラス転移点以上の温度520℃で約3分間電流を流し続ける。その結果、ガラスの直径が約34mm、厚さが1.3〜1.9mmの円柱状の蛍光物質成形体10を得る。
【0068】
実施例2では、蛍光体粉末20と無機物粉末31との混合原料の仕込み量を4.0g使用する。ホウケイ酸ガラスのガラス転移点以上の温度540℃で約5分間電流を流し続ける。その結果、ガラスの直径が約34mm、厚さが1.5〜1.7mmの円柱状の蛍光物質成形体10を得る。
【0069】
実施例3では、蛍光体粉末20と無機物粉末31との混合原料の仕込み量を4.0g使用する。ホウケイ酸ガラスのガラス転移点以上の温度530℃で約5分間電流を流し続ける。その結果、ガラスの直径が約34mm、厚さが1.5〜1.7mmの円柱状の蛍光物質成形体10を得る。
【0070】
(測定)
実施例2で製造された蛍光物質成形体10を積分球220を用いて測定する。測定系は、光源に445nmに発光ピークを持つレーザ光を発するレーザ素子200と、レーザ素子200に接続された光ファイバ210と、を用い、光ファイバの先端に蛍光物質成形体10を設ける。レーザ素子200から出射された光は光ファイバ210を伝って蛍光物質成形体10に照射される。蛍光物質成形体10から放出された光は積分球220に全て入光され光束が測定される。
【0071】
この結果、レーザ素子200からの光と、蛍光物質成形体10からの光と、の混色光は白色を示した。この白色光は黄色から赤色成分までを有するため演色性が良い。また、蛍光物質成形体10は従来の樹脂に比べて化学的・熱的に安定である。また、従来のホットプレスと異なり、放電プラズマ焼結法は小さな熱履歴でガラス形成ができるため、耐熱性に弱い蛍光体粉末20であっても成形することができる。
【0072】
[実施例4]
蛍光体粉末20に、Y(Al,Ga)12:Ce蛍光体を用いる。蛍光体粉末20と、ホウケイ酸ガラスを用いるガラス粉末31と、の原料混合比(g)は、(Y(Al,Ga)12:Ce):(ホウケイ酸ガラス)=15.5:84.5である以外は実施例2と同じである。
発光ピーク波長が455nmである光を発するLEDを用いて蛍光物質成形体に照射すると黄色の発光を示す。
【0073】
[実施例5]
蛍光体粉末20に、SrAl1425:Eu蛍光体と、Y(Al,Ga)12:Ce蛍光体と、CaSiAlN:Eu蛍光体と、の3種類を用いる。SrAl1425:Eu蛍光体と、Y(Al,Ga)12:Ce蛍光体と、CaSiAlN:Eu蛍光体とを用いる蛍光体粉末20と、ホウケイ酸ガラスを用いるガラス粉末31と、の原料混合比(g)は、(SrAl1425:Eu):(Y(Al,Ga)12:Ce):(CaSiAlN:Eu蛍光体):(ホウケイ酸ガラス)=5.5:9.3:9.38:0.62:84.5ある以外は実施例2と同じである。
発光ピーク波長が455nmである光を発するLEDを用いて蛍光物質成形体に照射すると橙色の発光をしめす。
【0074】
[実施例6]
蛍光体粉末20を、BaMgAl1017:Eu蛍光体と、Y(Al,Ga)12:Ce蛍光体と、の2種類を用い、BaMgAl1017:Eu蛍光体と、Y(Al,Ga)12:Ce蛍光体と、とを用いる蛍光体粉末20と、ホウケイ酸ガラスを用いるガラス粉末31と、の原料混合比(g)は、(BaMgAl1017:Eu):(Y(Al,Ga)12:Ce):(ホウケイ酸ガラス)=5.7:9.8:84.5である以外は実施例2と同じである。
発光ピーク波長が405nmである光を発するLEDを用いて蛍光物質成形体に照射すると白色の発光を示す。
【0075】
[実施例7および8]
実施例7では、平均粒径が5.7μmである(Y0.95Gd0.052.85Ce0.15Al12蛍光体粉末20と平均粒径が約0.5μmである酸化アルミニウム31とを有し、前記蛍光体粉末20の濃度が約10重量%である混合原料を用いる。放電プラズマ焼結装置100は、実施例1と同様の装置を用いる。焼結ダイ130に前記混合原料を約38g仕込み、昇温速度約50℃/分にて約1304℃まで昇温し、約5分間保持する。上部パンチ110と下部パンチ120との上下方向のプレスは約46kNとする。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して97.7%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0076】
実施例8では、蛍光体粉末20の濃度が約20重量%である混合原料を用いる以外は、実施例7と同様にして蛍光物質成形体10を形成する。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して99.3%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0077】
[実施例9]
蛍光体粉末20として、(Y0.9Gd0.12.85Ce0.15Al12蛍光体粉末とY2.82.85Ce0.2Al12蛍光体粉末を約8:1の重量比で混合した平均粒径が10.7μmである蛍光体粉末20を用いる以外は実施例8と同様の混合原料を用いる。放電プラズマ焼結装置100は、実施例1と同様の装置を用いる。焼結ダイ130に前記混合原料を約38g仕込み、昇温速度約47℃/分にて約1315℃まで昇温する。上部パンチ110と下部パンチ120との上下方向のプレスは約46kNとする。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して99.3%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0078】
[実施例10乃至12]
実施例10では、蛍光体粉末20として、平均粒径が4.4μmであるY2.935Ce0.065Al12蛍光体粉末20を用いる以外は実施例8と同様にして混合してなる混合原料を用いる。放電プラズマ焼結装置100は、実施例1と同様の装置を用いる。焼結ダイ130に前記混合原料を約35g仕込み、昇温速度約43℃/分にて約1300℃まで昇温する。上部パンチ110と下部パンチ120との上下方向のプレスは約46kNとする。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して98.5%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0079】
実施例11では、蛍光体粉末20の濃度を40重量%とする以外は、実施例10と同様にして混合して蛍光物質成形体を形成する。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して98.6%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0080】
実施例12では、蛍光体粉末20の濃度を60重量%とする以外は、実施例10と同様にして混合して蛍光物質成形体を形成する。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して99.4%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0081】
[実施例13]
無機部材粉末31として、平均粒径が1.1μmであるY粉末20を用いる以外は、実施例8と同様の混合原料を用いる。放電プラズマ焼結装置100は、実施例1と同様の装置を用いる。焼結ダイ130に前記混合原料を約46g仕込み、昇温速度約38℃/分にて約1300℃まで昇温する。上部パンチ110と下部パンチ120との上下方向のプレスは約46kNとする。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して96.8%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0082】
[実施例14]
無機部材粉末31として、平均粒径が2.0μmであるMgF粉末20を用いる以外は、実施例8と同様の混合原料を用いる。放電プラズマ焼結装置100は、実施例1と同様の装置を用いる。焼結ダイ130に前記混合原料を約32.1g仕込み、昇温速度約50℃/分にて約900℃まで昇温する。上部パンチ110と下部パンチ120との上下方向のプレスは約46kNとする。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して97.2%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0083】
[実施例15]
無機部材粉末31として、平均粒径が4.3μmであるYAl12粉末20を用いる以外は、実施例10と同様の混合原料を用いる。放電プラズマ焼結装置100は、実施例1と同様の装置を用いる。焼結ダイ130に前記混合原料を約44g仕込み、昇温速度約40℃/分にて約1300℃まで昇温する。上部パンチ110と下部パンチ120との上下方向のプレスは約46kNとする。この結果、直径が約34mm、厚さが約10mm、焼結密度が真空密度に対して98.1%である円柱状の蛍光物質成形体10が得られる。
【0084】
(測定)
実施例7乃至15で得られた蛍光物質成形体10を、分光蛍光光度計(日立社製:F−4500)を用いて測定する。測定系は、光源にXeランプを用い、Xeランプから出射された光が蛍光物質成形体に照射し、蛍光物質成形体から放出された光がフォトマルチプライヤ(浜松ホトニクス社製:R928)に入光するように蛍光物質成形体を設ける。Xeランプから出射された光は励起側分光器を通ることで460nmの光に分光され、蛍光物質成形体に照射される。蛍光物質成形体から放出された光がフォトマルチプライヤに入光され輝度が測定される。測定した輝度は使用した蛍光体の粉末状態での輝度に対する相対値として表示される。その結果、実施例7乃至15で得られた蛍光物質成形体の輝度は、それぞれ、73.3%、74.4%、72.0%、98.4%、77.3%、74.0%、72.2%、80.0%、71.3%である。
【0085】
[実施例16乃至22]
実施例7乃至15において、それぞれ焼結工程後に大気中にて1400℃のアニールを2時間施す。この結果、色鮮やかで光拡散状態の優れた蛍光物質成形体が得られる。アニールの雰囲気は、大気中以外、N雰囲気やH/Nなどの還元雰囲気で行うこともできる。
【0086】
[実施例23乃至29]
発光ピーク波長が460nmの光を発する発光ダイオードの周囲に、それぞれ実施例7乃至13にて得られた蛍光物質成形体を配置されてなる発光装置を形成する。その結果、発光装置の色度は、それぞれ、(x/y)=(0.4543/0.5296)、(x/y)=(0.4798/0.5093)、(x/y)=(0.4568/0.529)、(x/y)=(0.4447/0.5381)、(x/y)=(0.4488/0.5358)、(x/y)=(0.4513/0.5335)、(x/y)=(0.4557/0.5274)、(x/y)=(0.4653/0.5199)、(x/y)=(0.4441/0.5382)である。実施例7乃至15において得られる発光色は、全て黄色系の発光であるが、成形体の厚みや、透明誘電体の無機部材の選定、蛍光体と無機部材との配合比を調整することにより、白色光を得ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の蛍光物質成形体の製造方法は、ガラス粉末などの無機部材粉末に蛍光体粉末を分散させて固定することに利用することができる。この蛍光物質成形体は耐熱性、耐光性に優れているため、高出力の光源を用いた発光装置に利用することができる。その発光装置はヘッドライトなどの車載、照明、バックライトなどに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施の形態に係る蛍光物質成形体を示す概略斜視図である。
【図2】実施の形態に係る放電プラズマ焼結装置を示す概略説明図である。
【図3】積分球を用いた測定方法を示す概略説明図である。
【図4】実施例2に係る蛍光物質成形体の光束と励起光出力との測定結果を示す図である。
【図5】実施例2に係る蛍光物質成形体の光出力と励起光出力との測定結果を示す図である。
【図6】実施例2に係る蛍光物質成形体の発光スペクトルを示す図である。
【図7】実施例2に係る蛍光物質成形体の発光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
10 蛍光物質成形体
20 蛍光体粉末(蛍光体)
30 無機部材粉末(無機部材)
31 ガラス粉末(ガラス)
100 放電プラズマ焼結装置
110 上部パンチ
120 下部パンチ
130 焼結ダイ
140 上部パンチ電極
150 下部パンチ電極
160 真空チャンバー
170 電源
200 レーザ素子
210 光ファイバ
220 積分球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粉末と無機部材粉末との混合物を、放電プラズマ焼結法を用いて無機部材粉末を溶融させ、その後、冷却することを特徴とする蛍光物質成形体の製造方法。
【請求項2】
前記放電プラズマ焼結法は、前記混合物に15kN以上の圧力を加えることを特徴とする請求項1に記載の蛍光物質成形体の製造方法。
【請求項3】
前記放電プラズマ焼結の工程後、アニール処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の蛍光物質成形体の製造方法。
【請求項4】
蛍光体粉末と無機部材粉末とが混合され、前記無機部材粉末が溶融された後に得られる蛍光物質成形体であって、前記蛍光体の濃度は5重量%以上であることを特徴とする蛍光物質成形体。
【請求項5】
焼結密度は、真密度に対して90%以上であることを特徴とする請求項4に記載の蛍光物質成形体。
【請求項6】
前記無機部材は、200℃以上のガラス転移点を持つガラスであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光物質成形体。
【請求項7】
前記無機部材は、前記蛍光体の少なくとも1種の蛍光体組成、前記蛍光体の結晶系とほぼ同一の組成、または前記蛍光体の結晶系のうち、少なくとも1つを有していることを特徴とする請求項4記載の蛍光物質成形体。
【請求項8】
前記無機部材と前記蛍光体の屈折率差は、1.0以下であることを特徴とする請求項7に記載の蛍光物質成形体。
【請求項9】
前記蛍光体は、平均粒径が10nm以上100μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の蛍光物質成形体。
【請求項10】
発光素子と、前記発光素子の周囲に配置される請求項1若しくは2に記載の製造方法により製造された蛍光物質成形体、又は請求項4乃至8のいずれかに記載の蛍光物質成形体と、を有することを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−91546(P2009−91546A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182459(P2008−182459)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】