説明

蛍光絵柄形成方法、蛍光絵柄を有する物品、積層体、及び磁気記録媒体、並びに蛍光絵柄形成用の転写用積層体

【課題】太陽光や室内光など通常の光線下では視認できず、紫外線照射装置による紫外線照射によって識別可能な蛍光絵柄の作製し、しかも該蛍光絵柄を形成したときにその印刷品質が通常光線下で一般的な印刷物と同様な検査方法で検査することができる蛍光絵柄の形成方法を提供する。
【解決手段】蛍光絵柄を形成される被記録材に近い側から、蛍光染料と着色顔料とを含有する蛍光絵柄形成層と、該蛍光絵柄形成層を隠蔽する不透明層とを形成し、前記蛍光絵柄形成層の蛍光染料のみを前記不透明層中に、または前記不透明層中を通って拡散させることを特徴とする蛍光絵柄形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被記録材上に、その表面へ紫外線照射することにより認識される蛍光性の絵柄を形成する方法に関するものであり、また、前記蛍光性の絵柄を形成する方法により形成された積層体に関する。また前記蛍光性の絵柄を形成する方法に使用する蛍光絵柄形成用の転写用積層体に関する。中でも前記被記録材が磁気記録媒体用の基材で、特にクレジットカードなどの磁気カードにおいて、その表面に蛍光性の絵柄を形成する方法、蛍光性の絵柄を有する磁気カード、及び蛍光性の絵柄を有する磁気カード製造用の転写用積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被記録材上に蛍光剤を含有するインクを用いて蛍光性の絵柄を形成することは広く行われている。このように作成された蛍光性の絵柄は、太陽光や室内光に含まれる紫外線によって蛍光発光を生じ、通常のインクを用いて形成された絵柄とは異なった、高い意匠性を物品に付与することができる。
この様な蛍光性の絵柄の中でも、通常の太陽光や室内光に含まれる程度の紫外線ではその存在を認識することができず、紫外線強度の高い、専用の紫外線照射装置を用いることによって初めて蛍光発光を認識することができる蛍光性の絵柄は、隠し印刷として真性製品の認証や贋作防止などに用いられている。特にセキュリティ性を重要視されるクレジットカードなどの磁気カードにおいては、このような蛍光絵柄形成の技術は重要であり、また、利用されてきた。
【0003】
磁気カードに蛍光性の絵柄を付与するためには、その磁気カードの構成部分の一部に、蛍光剤を含んだ印刷領域である蛍光絵柄形成層を作製する必要がある。
このような磁気カードとしては、磁気記録層と磁気記録層の色相を隠蔽する隠蔽層との間に蛍光絵柄層を設ける方法が開示されている。(特許文献1参照)。
また、転写用基材の上に剥離層、オーバーコート層、絵柄印刷層、隠蔽層、蛍光絵柄層を順次形成して転写体を作成し、その後、オーバーコート層から蛍光絵柄層までの層で構成された転写材を、あらかじめ磁気記録層を形成したカード基材上に転写させる磁気カードの形成方法、および該製造方法によって製造される磁気カードが開示されている(特許文献2参照)。
更に、あらかじめ磁気記録層を形成したカード基材上に、第1隠蔽層、蛍光インキ印刷層、第2隠蔽層、プロセスインキ印刷層、表面保護層を順次形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
前述した磁気カードでは、紫外線非照射時の蛍光絵柄形成層の存在が認識されることを避けるために、蛍光絵柄形成層の上側、すなわち蛍光絵柄形成層よりもカード表面に近い側に、蛍光絵柄形成層の存在を隠蔽するための隠蔽層が設けられている。しかしながらこの隠蔽層は、カードの表面側から照射された紫外線が蛍光絵柄形成層に含まれる蛍光剤まで達するように、また、蛍光絵柄形成層に含まれる蛍光剤から発せられる蛍光発光が磁気カードの表面から放出されるように設ける必要があり、紫外線および可視光線を完全に遮断するように設けることはできない。そのため、隠蔽層のみで蛍光絵柄形成層の存在を完全に隠蔽することはできず、蛍光絵柄形成層自体も通常の光線下において認識され難い色、すなわち透明、もしくは非常に淡い色とする必要があった。
【0005】
一方、一般的な印刷物の場合、欠点検査機による印刷品質の検査、および保証が普遍的に行われており、上述した蛍光性の絵柄に関しても同様の印刷品質の検査、保証が要求されている。現在、一般的に使用されている欠点検査機は、印刷物を照射する光源部分と印刷物の印刷状態を認識する部分とから構成されており、画像認識による印刷品質の検査が行われている。一般的な印刷物の場合、その印刷領域は着色されており背景とのコントラストが高いため、その画像を認識することは容易である。そのため、高い精度で印刷品質を検査、保証することが可能となっている。しかしながら上述した蛍光絵柄の場合、既に述べたように、通常の光線下における不可視性を確保するために透明、もしくは非常に淡い色合いとする必要があった。
【0006】
そのため、その蛍光絵柄と背景とのコントラストを確保することができず、その画像を認識することはできなかったため、通常の方法で印刷品質の検査をすることは不可能であった。また、蛍光絵柄形成領域と背景とのコントラストを向上させるため、検査光源として紫外線ランプを用いて蛍光絵柄を蛍光発光させ、その発光状態を利用して画像の認識を行う方法も考えられた。しかしながらこの場合においても、蛍光絵柄の蛍光発光の光量は一般的な印刷物の検査の場合と比較して非常に低く、その画像を通常の画像と同様の明瞭さで認識することはできす、印刷品質の検査をすることには困難が伴った。
【特許文献1】実開平3−40615号公報
【特許文献2】特開平9−309287号公報
【特許文献3】特開2002−2160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、太陽光や室内光など通常の光線下では視認できず、紫外線照射装置による紫外線照射によって識別可能な蛍光絵柄の作製し、しかも該蛍光絵柄を形成したときにその印刷品質が通常光線下で一般的な印刷物と同様な検査方法で検査することができる蛍光絵柄の形成方法を提供することである。
さらに本発明の目的は、上記方法で蛍光絵柄を形成された物品、積層体、および磁気記録媒体を提供することである。
さらに本発明の目的は、上記方法で蛍光絵柄を形成するときに使用する転写用積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被記録材上に紫外線照射により識別可能となる蛍光絵柄を形成する方法であって、前記被記録材に近い側から、蛍光染料と着色顔料とを含有する蛍光絵柄形成層と、該蛍光絵柄形成層を隠蔽する不透明層とを形成し、前記蛍光絵柄形成層の蛍光染料のみを前記不透明層中に、または前記不透明層中を通って拡散させることを特徴とする蛍光絵柄形成方法を提供する。さらに本発明は、前記蛍光絵柄形成方法により作成された蛍光絵柄を有する積層体を提供する。さらに本発明は、前記蛍光絵柄形成方法により作成された蛍光絵柄を有する物品を提供する。
さらに本発明は、転写用基材上に不透明層と、蛍光染料及び着色顔料を含有する蛍光絵柄形成層をこの順に積層してなる蛍光絵柄形成用の転写用積層体を提供する。
特に、磁気記録層を有する磁気カードなどの磁気記録媒体において、不透明層として磁気記録層を含有し、該磁気記録層と、その下層側に着色顔料と蛍光染料とを含有してなる蛍光絵柄形成層を有し、前記蛍光絵柄形成層の蛍光染料のみを、前記磁気記録層中を通って、磁気記録媒体の表面に近い方向へと拡散させることにより、蛍光絵柄を形成することを特徴とする蛍光絵柄形成方法、さらに前記蛍光絵柄形成方法により作成された蛍光絵柄を有する磁気記録媒体、及び前記蛍光絵柄を有する磁気記録媒体の製造に使用できる磁気ストライプ転写用積層体等の転写用積層体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蛍光絵柄形成層は、一般的な印刷インキに使用されているものと同様な着色顔料を含有し、該顔料によって着色されているため、蛍光絵柄形成層を設けた直後の取り扱いは、一般的な印刷物となんら変わるものではない。従って、一般的な印刷物と同様な検査方法、検査装置を使用することにより、その印刷品質の検査を高い精度で行うことが可能である。(印刷品質の保証)
【0010】
本発明の蛍光絵柄形成方法では、蛍光絵柄形成層に含有されていた蛍光染料は、加熱により、蛍光絵柄形成層の存在を隠蔽する不透明層中へあるいは不透明層の中を通って積層体の表面方向に拡散している。従って加熱によって拡散した蛍光染料は、不透明層の厚み方向全域にわたって存在し、不透明層の表層にまで達している。この表層付近に達した蛍光染料は紫外線の照射によって蛍光発光することが可能であり、また、不透明層の表層付近より発生した蛍光発光は物品、積層体、磁気記録媒体の表面より認識することが可能である。(蛍光発光性の確保)
【0011】
一方、本発明の方法で蛍光絵柄を作製された物品、積層体、磁気記録媒体においては、蛍光絵柄形成層は不透明層よりも下層に位置しており、太陽光や室内光等通常の光線下において、蛍光絵柄形成層の形状、色などが不透明層を通して認識されることはなく、蛍光絵柄形成層の存在は完全に隠蔽されている。ここで、本発明における不透明層は、可視光線領域の光線透過率が低く、その層を通して反対側に存在する層の色相、または形状を認識することが非常に困難な層のことをいう。
【0012】
また、蛍光染料の拡散のために行われる加熱において、蛍光絵柄形成層に含有された着色顔料は、蛍光染料のように加熱による拡散を起こすことはなく、着色顔料による色彩は不透明層によって隠蔽され続け、物品、積層体、または磁気記録媒体の表面から認識されることはない。したがって、通常の光線下での不透明層側からの蛍光絵柄形成層の不可視性は確保される。(不可視性の確保)
【0013】
以上より、本発明の蛍光絵柄の形成方法によれば、通常の光線下において蛍光絵柄形成層の存在が認識されない「不可視性」と、蛍光絵柄の印刷状態を高いレベルで検査することのできる「印刷品質の保証」、および紫外線の照射によって確実に蛍光絵柄が発光する「蛍光発光性」を同時に達成することが可能となる。
さらに、磁気カードを想定した場合、蛍光絵柄形成層が磁気記録層よりも下方に配置されることから、磁気カードとしての記録再生出力に変動を発生させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の蛍光絵柄形成方法を用いて被記録材に蛍光絵柄を作製するには、被記録材上に蛍光絵柄形成層を、例えば蛍光染料と着色顔料を含有する蛍光インキを印刷するなどの手段によって設け、次にこの蛍光絵柄形成層を完全に覆うように不透明層を設け、その後、加熱による不透明層中へまたは不透明層を通っての蛍光染料の拡散をさせることによって行うことができる。
【0015】
たとえば、蛍光絵柄が形成された磁気記録媒体を作製する場合、基材上に蛍光絵柄形成層を設けた後、その全面を覆うように不透明層である磁気記録層、及び必要に応じてその他の機能を有する層を設け、次いで、加熱による蛍光染料の拡散を行うことによって、蛍光絵柄を有する磁気記録媒体を作製することができる。この場合、磁気記録層よりも下方に位置する蛍光絵柄形成層の存在は、不透明な磁気記録層によって完全に隠蔽されており、通常の光線下では認識することはできない。また、本発明の場合、蛍光絵柄形成層を設ける際、もしくはその直後に、欠点検査機を用いてその印刷品質を検査することが可能であり、これによって、蛍光絵柄の印刷品質を保証することが可能である。なお、蛍光染料の拡散は不透明層の方向のみへの異方的拡散である必要はなく、被記録材方向への拡散も含む、等方的拡散であっても良い。
【0016】
また、本発明の蛍光絵柄形成方法は、転写用基材上に不透明層を設けた転写用積層体を作製し、これを用いて、あらかじめ蛍光絵柄形成層を設けた被転写基材上に前記不透明層を転写し、その後、加熱による不透明層中への蛍光染料の拡散させることによって行うことができる。たとえば、蛍光絵柄が形成された磁気記録媒体を作製する場合、転写用基材上に不透明層である磁気記録層及び必要に応じてその他の機能層からなる転写材を設けて転写用積層体を作製しておく。次に被記録材上に蛍光絵柄形成層を設け、前記の転写用積層体を使用して、被記録材上に、この蛍光絵柄形成層を覆うように磁気記録層を含む転写材を転写し、その後、加熱による磁気記録層中へのまたは磁気記録層を通っての蛍光染料の拡散を行うことによって、蛍光性の絵柄を有する磁気記録媒体を作成することができる。この場合においても蛍光絵柄の印刷品質が保証可能であることは既に述べたとおりである。また蛍光絵柄形成層自体を転写工程によって形成してもよい。ここで転写とは、転写用基材上に転写材を設けた転写用積層体と被記録材とを、転写材が被記録材と接するようにして重ね合わせ、接着し、その後、転写用基材を取り去って、転写材のみを被記録材上に残す工程をいう。
【0017】
更に、本発明の蛍光絵柄の形成方法は、転写用基材上に不透明層と蛍光絵柄形成層をこの順に作製し、これを用いて、被転写基材上に前記不透明層と蛍光絵柄形成層を転写し、その後、加熱による不透明層中への蛍光染料の拡散をさせることによって行うことができる。転写工程を用いる場合、転写用積層体における転写材の積層順と、転写後の積層体における転写材の積層順は逆になるため、転写用積層体においては不透明層を先に設ける必要がある。たとえば、ストライプ状の磁気記録層を有する転写用積層体を用いて蛍光絵柄を有する磁気カードを作製する場合、転写用基材上に不透明層である磁気記録層及び必要に応じてその他の機能層からなる転写材を設ける。次に、転写材上にさらに蛍光絵柄形成層を設け、蛍光絵柄形成機能付の転写用積層体を作製する。該転写用積層体は磁気カード用の磁気記録層の幅に予め裁断され、磁気ストライプ転写用積層体となる。これを用いて被記録材上に蛍光絵柄形成機能付の転写材を転写して、蛍光性の絵柄を有する磁気記録媒体を作成することができる。この場合、蛍光染料を不透明層である磁気記録層へと拡散するための加熱は、転写前の転写用積層体の状態で行ってもよく、また、転写後の磁気記録媒体の状態で行っても良い。いずれの場合においても蛍光絵柄形成層の印刷品質が着色顔料によって可視化された画像を用いて保証可能であることは既に述べたとおりである。
【0018】
蛍光絵柄のデザインは偽造防止の効果を向上させるために、頻繁に変更される可能性がある。このことから、蛍光絵柄形成層を形成する工程は蛍光絵柄を形成する工程のできるだけ最終部分にあることが好ましく、上述の転写用積層体を使用して積層体を形成する方法は好ましい。例えば磁気カードの磁気ストライプ部分に蛍光絵柄を形成する場合、蛍光絵柄形成層は、磁気ストライプ転写用積層体の最上層である感熱接着剤層上、または磁気ストライプが転写されるカード用シート上に予め形成されることが好ましい。この場合、あらかじめ蛍光絵柄形成層を設けない磁気ストライプ転写用積層体を作成しおくことができ、蛍光絵柄のデザインが決定次第、磁気ストライプ転写用積層体もしくは被転写基材上に蛍光絵柄印刷を行い蛍光絵柄形成層を設ける方法を採用することによって、受注から短納期で蛍光絵柄付き磁気ストライプ部分を有する磁気カードの製造が可能となる。
蛍光染料を不透明層中へ、又は不透明層を通って拡散させる前に不透明層の蛍光絵柄形成層とは反対側に蛍光染料拡散防止層を形成することができる。このような層を設けることによって不透明層の表面まで拡散した蛍光染料の、製造工程中、製造工程後における付着、散逸を防ぐことができる。
さらに蛍光絵柄を磁気記録媒体に形成するときは、不透明層としての磁気記録層に加えて、磁気記録層上で蛍光絵柄形成層とは反対側に、さらに着色層を不透明層の一部として追加することにより、磁気記録層の色相を隠蔽するとともに蛍光絵柄の視認性を改良させ、意匠性を向上させることができる。
【0019】
本発明の蛍光絵柄形成方法の実施態様の一つとして転写工程による蛍光絵柄を形成した磁気カードの製造方法を取り上げて更に詳細に説明する。
まず始めに、蛍光絵柄形成層を有する磁気ストライプ転写用積層体を作製し、それを利用して蛍光絵柄を有する磁気カードを製造する方法について図1と工程図である図7、磁気カードを示す図4を参照しつつ詳細に説明する。図1は蛍光絵柄形成層を有する磁気ストライプ転写用積層体の断面図、図7は蛍光絵柄形成層を有する磁気ストライプ転写用積層体の製造の流れ、および該磁気ストライプ転写用積層体を用いた磁気カード製造の流れである。図7においては、磁気ストライプ転写用積層体の感熱接着剤層の上、最上層として蛍光絵柄形成層を設ける場合について表示した。本発明においては、図1に示すように、転写用基材9に蛍光染料拡散防止層1、着色層3、磁気記録層4、感熱接着剤層5を順次塗布、積層する。
【0020】
その後、磁気ストライプ部分に設ける蛍光絵柄が決定次第、感熱接着剤層の上に蛍光絵柄印刷を施して蛍光絵柄形成層10を形成し、蛍光絵柄形成機能を有する転写用積層体を作製する。この蛍光絵柄形成層は着色顔料を含有しており、背景となる磁気記録層の暗い色合いと高いコントラストと有するように着色されている。そのため、一般的に使用されている欠点検査機によって、その印刷品質を検査、保証することが可能である。この印刷品質が保証された蛍光絵柄形成機能を有する転写用積層体を所定の幅に裁断し磁気ストライプ転写用積層体を作製する。なお印刷品質の検査は磁気ストライプ転写用積層体を作製後に行うこともできる。作製した磁気ストライプ転写用積層体を被転写基材であるカード用オーバーシートに熱圧接着し、転写用基材9を剥離してカード用オーバーシートの上に磁気ストライプ部分を転写する。
【0021】
この様にして得られた磁気ストライプ付オーバーシートを、カード用センターコア、および反対面のオーバーシートと重ね合わせて熱圧プレス(図7−(2))を行い、図4のようにカード用シートを一体化させる。図4においてはカード用センターコア7のさらに下側に図示していない反対面のオーバーシートが熱圧着されている。この熱圧プレス工程において、蛍光絵柄形成層に含有される蛍光染料は、磁気記録層と着色層を通って転写後の転写材の表面方向に拡散し、蛍光絵柄が磁気ストライプ表面からの紫外線照射によって識別可能な状態となる。また、熱圧プレス工程前の磁気ストライプ転写用積層体の状態での加熱(図7−(1))によっても蛍光絵柄形成層の蛍光染料を転写用基材方向に拡散させることができる。この加熱によってカード用オーバーシートに転写された転写材表面からの紫外線照射によって蛍光絵柄が識別可能な状態となる。(図2参照)このように、磁気ストライプ転写用積層体の状態における加熱工程(図7−(1))を行うことは、蛍光染料をより確実に拡散できるため好ましい。
【0022】
次に、本発明のもう一つの実施態様として、蛍光絵柄形成層をカード用オーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成する方法について、図3と工程図である図8、磁気カードの図である図4を参照しつつ詳細に説明する。
本方法においても、あらかじめ蛍光絵柄形成層を設けない磁気ストライプ転写用積層体を作成しておく段階までは図7で示す方法同じである。その後、磁気ストライプ部分に設ける蛍光絵柄が決定次第、被転写基材であるカード用オーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に蛍光絵柄印刷を施して蛍光絵柄形成層10を形成し、蛍光絵柄形成機能を有するカード用オーバーシートを作成する。この蛍光絵柄形成層は着色顔料を含有しており、背景となるほぼ透明なカード用オーバーシートを背景として、高いコントラストを有するように着色されている。そのため、一般的に使用されている欠点検査機によって、その印刷品質を検査、保証することが可能である。印刷品質が保証された蛍光絵柄形成機能を有するカード用オーバーシート上に磁気ストライプを転写した後、カード用センターコア、および反対面のオーバーシートと重ね合わせて熱圧プレス(図8−(2))を行い、カード用シートを一体化させる。この熱圧プレス工程において、蛍光絵柄形成層に含有される蛍光染料は、磁気記録層と着色層を通って転写後の転写材の表面方向に拡散し、蛍光絵柄が磁気ストライプ表面からの紫外線照射によって識別可能な状態となる。
【0023】
上記のような工程を経て製造された磁気カードの断面図を図4に示す。磁気記録層を含む磁気ストライプ転写材は、熱圧プレス工程によってカード用オーバーシート6に埋め込められる。また、蛍光絵柄形成層に含有されていた蛍光染料は磁気ストライプ転写材の中に拡散し、着色層3、磁気記録層4、感熱接着剤層5の厚み方向全てに亘って存在している。そのため、カード表面から照射される紫外線、および該紫外線によって蛍光染料から生じる蛍光発光は、着色層3および磁気記録層4の存在によって完全には遮蔽されること無く、蛍光絵柄が識別可能に発光する状態となっている。一方、蛍光絵柄形成層に含有される着色顔料は、蛍光染料のように拡散を起こすことなく、蛍光絵柄形成層にとどまり続けるため、その存在が不透明な磁気記録層などによって完全に隠蔽され、カード表面から認識されることはない。
【0024】
以上の様な手順で磁気ストライプ部分に蛍光絵柄を有する磁気カードを形成することが出来るが、本発明の蛍光絵柄形成方法は磁気ストライプ以外の場所にも、また磁気カード以外の磁気記録媒体にも、あるいは磁気記録層を有さない積層体の製造にも適用することができる。このような場合の蛍光絵柄形成方法には図7、図8の工程図において磁気記録層を省略したり、他の層を付け加えたり、磁気記録層を他の機能層に置き換えることによって対応することができる。さらに磁気ストライプ転写用積層体は、カード基材の一部を被覆するだけであるが、基材全面を被覆するような転写用積層体を用いてもよい。
【0025】
本発明の蛍光絵柄形成方法においては、蛍光絵柄形成層の蛍光染料を不透明層中に、又は不透明層を通って表面方向に拡散させて、その表面からの紫外線照射により識別可能な蛍光絵柄を形成する。そのため、蛍光絵柄形成層よりも上方に蛍光染料が拡散し、保持される領域が必要である。不透明層を含んだ蛍光絵柄形成層の上方の層が該領域を形成するが、該領域の膜厚が薄すぎると、該領域に存在する蛍光染料の絶対量が不足して蛍光絵柄形成を十分に行うことができない。また、蛍光染料が横方向に拡散して蛍光絵柄が不鮮明になりやすい。これに対して該領域の膜厚が厚すぎると、蛍光染料の拡散領域が広がり過ぎて、蛍光絵柄が不鮮明となりやすい。そのため、蛍光絵柄形成層の上方に位置する構成層の膜厚の総計は、蛍光染料の拡散を防止する層の膜厚を除いて2〜50μm程度が好ましく、3〜20μm程度がさらに好ましい。
【0026】
以下に本発明の転写用積層体の各構成部分について、磁気カードを例にとりつつ順を追ってさらに詳細に説明を行う。
本発明の蛍光絵柄形成方法を用いて、磁気カードに蛍光性の絵柄を有する磁気ストライプを形成するために使用される磁気ストライプ転写用積層体の一つの態様を図1の断面図に示す。図1の構成においては、転写用基材9、必要に応じて形成される蛍光染料拡散防止層1、必要に応じて形成される着色層3、磁気記録層4、必要に応じて形成される感熱接着剤層5を有する。
【0027】
本発明に用いる転写用基材としては、公知慣用のフィルムがいずれも使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド等のプラスチック等を挙げることができる。中でも抗張力や耐熱性を兼ね備えたポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、転写用基材の厚さには特に制限はないが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0028】
本発明の転写用積層体には、蛍光染料拡散防止層を設けることができる。蛍光染料拡散防止層は、熱により転写材中を通して拡散した蛍光染料が、磁気カードの外部にまで拡散することを防止する。すなわち、磁気カードの熱圧プレス工程などの加熱工程において、蛍光染料が蛍光染料拡散防止層を越えて外部へと漏出し、熱圧プレス用の金属板に付着するのを防止する。また、蛍光染料拡散防止層は、磁気カードにおいては、最表層となり、磁気ヘッドによるダメージから磁気記録層を守る表面保護の役割も担う層となる。
蛍光染料の漏出を効果的に防止するために、蛍光染料拡散防止層は蛍光染料拡散時の磁気ストライプ転写用積層体加熱温度や熱転写温度、磁気カードの熱圧プレス温度よりもガラス転移点が高いものである必要がある。
蛍光染料拡散防止層は、直下まで拡散してきた蛍光染料による絵柄を紫外線照射により容易に識別できるように、紫外線及び可視光線の波長で実質的に透明な特性を有していることが好ましい。
蛍光染料拡散防止層は結着樹脂を主成分としてなり、例えば、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸、アクリル酸などを加えた塩化ビニル系共重合体樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、を挙げることができる。また、これらの樹脂を混合して使用しても良い。
【0029】
蛍光染料拡散防止層用塗料に使用する溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類を挙げることができ、これらの溶剤を混合して使用することもできる。
蛍光染料拡散防止層中には、カードプレス適正を向上させるため、また、カードの耐久性を向上させるために必要に応じて、大豆レシチン、マイクロシリカ、ワックス等の添加剤を添加することができる。また、ポリイソシアネート化合物などの硬化剤を添加して、結着樹脂分子間を架橋することは、蛍光染料拡散防止層の耐久性を向上させるために好ましい。
蛍光染料拡散防止層は、上記の材料からなる蛍光染料拡散防止層用塗料をリバース方式、グラビア方式、マイクログラビア方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で転写用基材上に塗布することにより得られる。
蛍光染料拡散防止層の乾燥塗膜厚は、記録再生特性からいえば薄いほど良いが、蛍光染料拡散防止機能、および磁気ストライプの耐久性等とのバランスを考慮すると0.1〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがさらに好ましい。
【0030】
本発明の蛍光絵柄形成方法および転写用積層体における不透明層は、太陽光、室内光などの通常光線下において蛍光絵柄形成層の存在を視覚的に隠蔽する機能を有すると共に、加熱によって蛍光絵柄形成層から蛍光染料を拡散させ、紫外線照射装置による照射によって蛍光染料を発光可能に保持する不透明拡散層として機能する。不透明層としては、蛍光絵柄形成層の存在が判明しない程度の可視領域における隠蔽性を有していれば良く、結着樹脂中に着色顔料、磁性粉末等各種フィラーを分散させ、形成された層が好適に用いられる。また上記不透明性と拡散の許容性を有していれば、後述する磁気記録層のように、本来は他の機能を発揮するために形成されている層を、不透明層として兼用することができる。蛍光染料の拡散を容易にするためには、不透明層に用いる結着樹脂のガラス転移点温度が、蛍光染料拡散のために印加される温度よりも低いことが好ましい。
【0031】
本発明の不透明層として、もしくは不透明層の一部として着色層を設けることができる。着色層は、磁気ストライプ転写用積層体にあっては磁気記録層の色相を隠蔽し、磁気ストライプに色彩を施すために設けられる層である。蛍光絵柄を有する磁気ストライプの場合、着色層は蛍光絵柄を認識する際の背景となることから、着色層を設けることによって蛍光絵柄の識別を容易にし、また意匠性も向上させる効果もある。
着色層は結着樹脂と着色剤を含有してなる。着色層に使用する着色剤としては、無機顔料として、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどを挙げることができる。また、有機顔料として、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、インダンスレン系などが、有機染料として、フタロシアニン染料、アゾ染料、ニトロ染料、キノリン染料、メチン染料、アジン染料、ファタレイン染料などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。安定した着色のためには無機顔料または有機顔料の使用が好ましい。
また、磁気記録層の色相を効果的に隠蔽するために、リン片状金属粉も使用でき、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を挙げることができる。リン片状金属粉は板状形状にボールミル等で調整されるが、これらの形状は、面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。厚みは0.1〜1μm程度である。
【0032】
着色層に使用する結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば、蛍光染料拡散防止層のところで述べた結着樹脂に加え、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、セラック樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。蛍光染料の拡散を容易にするためには、着色層に用いる結着樹脂のガラス転移点温度が、蛍光染料拡散のために印加される温度よりも低いことが好ましい。
着色層用塗料に使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に蛍光染料拡散防止層のところで述べた溶剤等が使用できる。
着色層は、着色剤を結着樹脂、および結着樹脂を溶解する溶剤中に混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて、着色層用塗料を作成し、これをリバース方式、グラビア方式、マイクログラビア方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で塗布、乾燥することにより、設けることができる。
着色層の膜厚は、磁気記録層の色相を隠蔽するにためは厚いことが好ましい。しかしながら、着色層は、カード化した際に磁気記録層よりもカードの表層側に位置することになるため、その膜厚を大きくしすぎると、磁気ヘッドと磁気記録層とのスペーシングが大きくなり、その結果、再生出力特性が低下し、情報読み取り時のエラー発生の可能性が増大する。そのため、着色層の膜厚は、2〜5μm、特に3〜4μmであることが好ましい。
【0033】
磁気記録層の上方より識別することが可能な蛍光絵柄を作製するためには、本発明の不透明層として、もしくは不透明層の一部として磁気記録層を用いることができる。磁気記録層は例えば磁性粉末および結着樹脂を含有する。
磁気記録層に含有する磁性粉末としては、γ−酸化鉄、マグネタイト、コバルト被着酸化鉄、2酸化クロム、鉄系メタル磁性粉末、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の公知の磁性粉末を用いることができる。その保磁力は20〜320kA/mの範囲のものが好ましい。
磁気記録層に用いる結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば、着色層のところで述べた結着樹脂等を使用することができる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。蛍光染料の拡散を容易にするためには、磁気記録層に用いる結着樹脂のガラス転移点温度が、蛍光染料拡散のために印加される温度よりも低いことが好ましい。
また、磁気記録層用塗料に用いる溶剤としては、例えば蛍光染料拡散防止層のところで述べた溶剤等を使用することができる。
磁気記録層用塗料には、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル等の助剤類、さらにはカーボンブラックその他のフィラー類を添加することもできる。
【0034】
磁気記録層用塗料は、例えば上記磁性粉末、結着樹脂、溶剤を公知慣用の方法により、混練分散する事によって得られる。混練分散機としては、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、コボルミル、サンドミル、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダー、等が使用できる。
磁気記録層用塗料の塗布方法においては、特に制限はなく、公知慣用の塗布方式を使用できる。磁気記録層用塗料の塗布方式としては、例えばリバース方式、グラビア方式、マイクログラビア方式、ダイコーター方式等が使用できる。
また、上記塗布方式により磁気記録層用塗料を塗布した後、塗膜が乾燥しないうちに磁場配向処理を行うことが記録再生特性の点で好ましい。磁場配向処理方法としては、公知の方法、例えば反発対向永久磁石、ソレノイド型電磁石等を用いることができる。磁場強度としては1000〜6000Gの範囲が好ましい。
磁気記録層の乾燥膜厚は、好ましくは2〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜20μmの範囲である。
【0035】
本発明の転写用積層体には、転写材と被転写基材であるカード用オーバーシートを接着させる目的で感熱接着剤層を設けることができる。感熱接着剤層は、感熱接着性を示す結着樹脂を主成分としてなる。
感熱接着性を示す結着樹脂としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた塩化ビニル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。蛍光染料の拡散を容易にするためには、感熱接着剤層に用いる結着樹脂のガラス転移点温度が、蛍光染料拡散のために印加される温度よりも低いことが好ましい。
感熱接着剤塗料に用いる溶剤としては、例えば蛍光染料拡散防止層のところで述べた溶剤を使用することができる。
これらの結着樹脂を、溶剤と混合攪拌して溶解させて感熱接着剤塗料を調整し、この感熱接着剤塗料を磁気記録層上にリバース方式、グラビア方式、マイクログラビア方式、ダイコート方式などの公知の方式により塗布、乾燥することによって感熱接着剤層を得ることができる。
感熱接着剤層の膜厚は0.5〜15μmが好ましく、特に0.5〜5μmが好ましい。
【0036】
本発明の転写用積層体における蛍光絵柄形成層は、以下の蛍光絵柄形成用インキを印刷することによって設けることができる。
蛍光絵柄形成用インキは、結着樹脂、着色顔料、蛍光染料と溶剤を含んでいる。
蛍光絵柄形成用インキの蛍光染料としては、有機系の蛍光物質を用いることができる。具体的には、ベンゾオキサゾールチオフィン系、ジアミノスチルベン系、イミダゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、希土類錯体系等の蛍光染料を用いる。また、市販されている蛍光物質としては、Chiba Special Chemicals社製の商品名UVITEXシリーズ、日本化薬社製の商品名Kayalightシリーズ、BASF社製の商品名Thermoplastシリーズ、商品名Fluorolシリーズ、 商品名Lumogenシリーズ、記録素材総合研究所社製の商品名ルミカラー、Honeywell社製の商品名LUMILUXシリーズ等を用いることができる。無機系の蛍光物質は加熱による拡散を起こさないため、本発明の用途には適さない。また、蛍光染料は、不透明層中もしくは不透明層中を通って拡散し、物品の表層方向に拡散することから、蛍光絵柄の不可視性を確保する観点から、太陽光、もしくは通常の室内光の下で透明、もしくは非常に薄い色合いのものを使用する必要がある。
【0037】
蛍光絵柄形成用インキに使用する着色顔料としては、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、インダンスレン系、カーボンブラックの顔料などを挙げることができる。また、リン片状金属粉も使用でき、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。磁気カードの磁気ストライプ上に蛍光絵柄を形成する場合、蛍光絵柄形成層は、磁気記録層の暗い色合いをバックグラウンドとして、欠点検査機によって検査される場合が多いため、着色顔料としては、特に色調が明るく隠蔽性の高い、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム及び金属粉が好ましい。また、カード用オーバーシートに蛍光絵柄形成層を設ける場合には、カード用オーバーシートがほぼ透明であることから、カーボンブラックを使用することが好ましい。
【0038】
蛍光絵柄形成用インキに使用する結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば、蛍光染料拡散防止層、着色層、磁気記録層、感熱接着剤層で述べた結着樹脂が挙げられるが、磁気ストライプ転写用積層体と被転写用基材であるカード用オーバーシートとの接着性を阻害しない結着樹脂が好ましく、前記感熱接着剤のところで述べた結着剤樹脂が好適に使用できる。感熱接着性を有する結着樹脂を用い、かつ、蛍光絵柄の印刷領域が大きい場合、蛍光絵柄形成層のみで磁気ストライプ転写用積層体とカード用オーバーシートとの接着を担うことができ、感熱接着剤層を省略することができる。
蛍光絵柄印刷用インキに使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に蛍光染料拡散防止層、着色層、磁気記録層、感熱接着剤層のところで述べた溶剤が使用できる。
【0039】
蛍光絵柄印刷用インキは、着色顔料と蛍光染料とを結着樹脂、および結着樹脂を溶解する溶剤中に混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて作成することができる。また、着色顔料のみを結着樹脂と溶剤中に分散させて、着色顔料マスターバッチを作成し、そこに蛍光染料を添加、溶解して蛍光絵柄印刷用インキを調整してもよく、また、蛍光染料のみを結着樹脂と溶剤中に混合、溶解してマスターバッチを作成し、そこに着色顔料マスターバッチを添加して蛍光絵柄印刷用インキを調整しても良い。
【0040】
蛍光絵柄印刷層は、磁気ストライプ転写用積層体の例えば感熱接着剤層の上、もしくは、カード用オーバーシートの磁気ストライプを設ける部分等に蛍光絵柄印刷用インキを用いた印刷によって設けることができる。蛍光絵柄の印刷には、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の公知の印刷方法を用いることが出来るが、特に印刷品質、生産性の点から、グラビア印刷が適している。
蛍光絵柄形成層は、蛍光絵柄の形状に設けられることから、一般的には不連続な層となる。また、複数の蛍光絵柄印刷用インキを用いて多色の蛍光絵柄を形成することもでき、この場合、毛抜き印刷などの手法により、一見連続した層とすることもできる。
蛍光絵柄形成層を、磁気ストライプ転写用積層体の例えば感熱接着剤層の上に設ける場合、蛍光絵柄形成層の膜厚には特に制限はないが、蛍光絵柄形成層の膜厚が厚すぎると、印刷領域と非印刷領域との厚みの差が大きくなり、磁気ストライプ転写用積層体をリール状に巻き上げた際に転写用積層体が変形する可能性が大きくなる。転写用積層体の変形は、被転写基材であるカード用オーバーシートとの接着性を悪化原因となるため、蛍光絵柄印刷領域の膜厚は0.5〜5μmが好ましく、特に0.5〜2.0μmが好ましい。
また、蛍光絵柄形成層を、カード用オーバーシートの磁気ストライプを設ける部分に設ける場合にも、蛍光絵柄形成層の膜厚に特に制限は無いものの、磁気ストライプ転写用積層体との接着性を勘案して、蛍光絵柄形成層の膜厚は0.5〜5μmとすることが好ましく、特に0.5〜2.0μmとすることが好ましい。
【0041】
転写工程を有する蛍光絵柄形成方法において、蛍光絵柄形成層の蛍光染料を転写材内に拡散させる方法としては、例えば、転写材をカード用オーバーシートに転写する前に加熱する方法と、転写材をカード用オーバーシートに転写した後に加熱する方法が挙げられる。
転写材をカード用オーバーシートに転写する前に加熱する方法においては、蛍光絵柄形成層を転写材の例えば感熱接着剤層の上に設け、その後、転写用基材上に転写材が存在する状態で40〜80℃の恒温環境下に数時間〜数日間エージングする。この加熱によって蛍光染料は、転写用基材側に拡散し、転写材の転写後に転写材側からの紫外線照射によって蛍光絵柄が識別可能な状態となる。
転写材をカード用オーバーシートに転写した後に加熱する方法においては、磁気カード用シートを熱圧プレスする工程の加熱を利用して、蛍光染料を転写材内に拡散する方法を例えば挙げることができる。磁気カード用シートは、通常、磁気ストライプを有するオーバーシート、カードデザインを施したセンターコア、反対面のオーバーシートを重ね合わせて、熱圧プレス用金属板に挟み込み100〜160℃の温度をかけ、数分から数時間の熱圧プレスを行うことによって一体化し、作成される。この時、磁気ストライプを有するオーバーシートとして、蛍光絵柄形成層を有する磁気ストライプ転写用積層体をカード用オーバーシートに転写したもの、もしくは、磁気ストライプ転写用積層体を、蛍光絵柄形成層を有するカード用オーバーシートに転写したものを使用することによって、磁気カードに蛍光絵柄を付与することができる。この場合、磁気ストライプを有するオーバーシートの状態では、その転写材表面から蛍光絵柄を確認することはできないが、前述の熱圧プレス加工における加熱によって蛍光染料が転写材内部を転写材表面方向へと拡散し、最終的に磁気カード表面からの紫外線照射によって蛍光絵柄が識別可能な状態になる。
【0042】
カード用オーバーシート、およびカード用センターコアは、磁気カードとしての使用に耐え得る機械特性、耐水性、耐薬品性等が必要であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、非結晶コポリエステル(PET−G)等の合成樹脂シートが使用される。カード用オーバーシートの厚みは例えば100μmであり、センターコアシートは、1枚使用する場合は例えば540μmであり、2枚使用する場合は例えばそれぞれ270μmである。
上記に転写工程を用いて磁気カードに蛍光絵柄を形成する方法を詳細に説明した。磁気カード状基材に換えてシート状、カード状、板状等の任意の基材を用い、磁気記録層以外の不透明層を用いることにより上記工程で示したと同様の工程を用いて基材上に蛍光絵柄を形成し、積層体を作製することができる。不透明層、蛍光絵柄形成層等、転写用積層体の構成は各種基材への接着性、各積層体の用途を考慮して、最適な層構成と各層毎の配合を調整すればよい。
【0043】
本発明の蛍光絵柄形成方法で使用する、蛍光絵柄形成層や不透明層は転写用積層体を用いた転写工程によって適宜被記録材上に積層することができるが、転写工程を用いずに、各層を形成する塗料やインクによる塗布工程や印刷工程を用いて、順次被記録材上に必要な層を積層することもできる。塗布工程や印刷工程においては前述した各種の塗布、印刷方法に加え、インクジェット記録法による印刷も行うことができ、非平面で凹凸を有する非記録材上にも蛍光絵柄形成層その他の、本発明の方法に必要な層を形成することができる。このようにして作製された加熱工程前の積層体は、転写工程における場合と同じように40〜80℃の恒温環境下におけるエージング、または熱加圧工程により、蛍光絵柄形成層中の蛍光染料が不透明層中へ、又は不透明層を通って拡散する。
本発明の蛍光絵柄形成方法を用いることにより、極めて多様な基材に対して蛍光絵柄を形成することができる。
【0044】
本発明における被記録材としては、表面形状が極めて複雑な深い凹凸を有する基材、拡散時の加熱温度で不安定な基材、多孔質性や溶剤吸収性基材はあまり好ましくないが、特に限定されるものではない。被記録材としては蛍光絵柄形成層が安定的に形成でき、熱拡散に必要な温度まで加熱でき、さらに加熱時に被記録材内部へと蛍光染料が拡散しないような材質であることが好ましい。
このようにカード状基材上に蛍光絵柄を形成して、蛍光絵柄入り磁気カードを作製した上記本発明の実施態様は本発明の可能な実施態様のごく一部に過ぎない。例えば各種物品の一構成部品の塗装、着色工程で真偽判定や贋作防止の目的で上記方法により蛍光絵柄を形成することができる。物品によっては完成品の表面の一領域に上記方法で蛍光絵柄を形成することも可能である。
さらにエージングによって予め蛍光染料を拡散させた転写用積層体を用いると、該積層体による転写工程を用いることで転写可能なあらゆる被記録材に対して蛍光絵柄を形成することができる。本発明の物品の一例としては、紙幣、小切手、手形、トラベラーズチェック、パスポート、株券、証券、商品券、切手、葉書、図書券、保険証、運転免許証、証明書、プリペイドカード、フレキシブルディスク、MO、CD、DVD、ICカード、光カード、ポイントカード、会員カード、ブランドタグ、セキュリティシールなどがあげられる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない、尚、以下「部」は質量部を表すものとする。
【0046】
転写用基材 ポリエチレンテレフタレートフィルム(24μm厚)
蛍光染料拡散防止層用塗料
セルロースアセテート樹脂 8部
(ダイセル化学社製『L−20』)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂 2部
(イーストマンケミカル社製『CAP−504−0.2』
アセトン 25部
酢酸エチル 25部
トルエン 20部
シクロヘキサノン 20部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
セルロースアセテート樹脂、及びセルロースアセテートプロピオネート樹脂を、アセトン、酢酸エチル、トルエン、及びシクロヘキサノンの混合溶媒に加え、樹脂成分をディスパーにて完全に溶解した。その後、ポリイソシアネートを添加して、蛍光染料拡散防止層用塗料を作製した。
【0047】
着色層用塗料
リン片状金属粉:アルミニウム粉末 20部
(昭和アルミパウダー社製『210EA』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 16部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
シクロヘキサノン 17部
ポリイソシアネート 5部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサンの混合溶媒中に加え、樹脂成分をディスパーにて完全に溶解した。そこにリン片状アルミニウム粉末を添加し、さらにディスパーによって攪拌を行ってリン片状アルミニウム粉末を塗料中に均一に分散した。その後、ポリイソシアネートを添加して、着色層用塗料を作製した。
【0048】
磁気記録層用塗料
バリウムフェライト磁性粉 100部
(戸田工業社製『MC−127』;保磁力 220kA/m)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 15部
(日本ゼオン社製『MR−110』)
ポリウレタン樹脂 10部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
メチルエチルケトン 50部
トルエン 50部
シクロヘキサノン 25部
ポリイソシアネート 10部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記の材料を用い、特開平09−059541に示す方法により磁気記録層用塗料を作製した。
【0049】
感熱接着剤塗料
ポリウレタン樹脂 1部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
メチルエチルケトン 45部
トルエン 50部
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をメチルエチルケトン、トルエンの混合溶媒中に、ディスパーを用いて溶解して感熱接着剤塗料を作製した。
【0050】
蛍光絵柄形成用インキ〔A〕
有機系蛍光物質 3部
(Ciba Specialty Chemicals社製『UVITEX OB』)
酸化チタン(着色顔料) 6部
(テイカ株式会社製『JR−301』)
ポリウレタン樹脂 3部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 12部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
メチルエチルケトン 38部
トルエン 38部
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をメチルエチルケトン、トルエンの混合溶媒中に加え、ディスパーにて樹脂成分を完全に溶解した。そこへ酸化チタンを添加して、ビーズミルにて酸化チタンの分散を行い、その後、有機系蛍光物質を添加し、これをディスパーを用いて完全に溶解し、蛍光絵柄形成用インキ〔A〕を作製した。
【0051】
蛍光絵柄形成用インキ〔B〕
有機系蛍光物質 4部
(Ciba Specialty Chemicals社製『UVITEX OB』)
ポリウレタン樹脂 3部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 13部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40部
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をメチルエチルケトン、トルエンの混合溶媒中に加え、ディスパーにて樹脂成分を完全に溶解した。そこへ有機系蛍光物質を添加し、さらにディスパーにて攪拌を行って有機系蛍光物質を完全に溶解し、蛍光絵柄形成用インキ〔B〕を作製した。
【0052】
蛍光絵柄形成用インキ〔C〕
無機系蛍光物質 3部
(Honeywell社製『LUMILUX Red CD105FF』)
酸化チタン(着色顔料) 6部
(テイカ株式会社製『JR−301』)
ポリウレタン樹脂 3部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 12部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
メチルエチルケトン 38部
トルエン 38部
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をメチルエチルケトン、トルエンの混合溶媒中に加え、ディスパーにて樹脂成分を完全に溶解した。そこへ酸化チタンと無機系蛍光物質を添加して、ビーズミルにて酸化チタンと無機系蛍光物質の分散を行い、蛍光絵柄形成用インキ〔C〕を作製した。
【0053】
蛍光絵柄形成用インキ〔D〕
無機系蛍光物質 4部
(Honeywell社製『LUMILUX Red CD105FF』)
ポリウレタン樹脂 3部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 13部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40部
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をメチルエチルケトン、トルエンの混合溶媒中に加え、ディスパーにて樹脂成分を完全に溶解した。そこへ無機系蛍光物質を添加して、ビーズミルにて無機系蛍光物質の分散を行い、蛍光絵柄形成用インキ〔D〕を作製した。
【0054】
(実施例1)(蛍光絵柄形成層上に感熱接着剤層、磁気記録層と着色層を形成する。)
転写用積層体の作成
転写用基材の片面上に、上記の蛍光染料拡散防止層用塗料、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光染料拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光染料拡散防止層が1μm、着色層が2.5μm、磁気記録層が8μm、そして接着剤層が1.5μmとなるようにした。
蛍光絵柄形成層の作成
上記で作製した転写用積層体の感熱接着剤層上に、蛍光絵柄形成用インキ〔A〕を用いたグラビア印刷により、乾燥後の絵柄部分の膜厚が0.6μmとなるように、蛍光絵柄形成層を作成した。蛍光絵柄形成層を設けた転写用積層体の概念図を図5に示す。その後、蛍光絵柄形成層の形成された転写用積層体を60℃の恒温室に24時間放置して蛍光染料の転写材内への拡散を行った。
蛍光絵柄の検査
上記の蛍光絵柄の印刷品質を、EasyMax.MC(ヒューテック社製)を使用し、通常光源下で検査した。
磁気カード作成
上記で作製した転写用積層体を所定の幅に裁断して磁気ストライプ転写用積層体を作成した後、卓上型ヒートシーラー(テスター産業社製)を使用して、ポリ塩化ビニル製のカード用オーバーシート(太平化学社製)に磁気ストライプ転写用積層体を熱圧接着した。その後、磁気ストライプ転写用積層体の転写用基材を除去することによって、磁気ストライプ部分をカード用オーバーシートに転写して、磁気ストライプ付オーバーシートを得た。この磁気ストライプ付オーバーシートとカード用センターコア、および反対面のカード用オーバーシートを重ねて、平圧プレス機(東洋精機製作所製)を使用して、140℃、20kg/cm、20分間の熱圧プレス加工を行い、カード用シートの熱圧プレスを行った。その後、打ち抜き加工を行うことによって磁気カードを作製した。
【0055】
(実施例2)(蛍光絵柄形成層上に磁気記録層と着色層を形成する。)
転写用積層体の作成
転写用基材の片面上に、上記の蛍光染料拡散防止層用塗料、着色層用塗料、および磁気記録層用塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光染料拡散防止層、着色層、および磁気記録層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光染料拡散防止層が1μm、着色層が2.5μm、そして磁気記録層が8μmとなるようにした。
蛍光絵柄形成層の作成
上記で作製した転写用積層体の磁気記録層上に、蛍光絵柄形成用インキ〔A〕を用いたグラビア印刷により、乾燥後の絵柄部分の膜厚が0.6μmとなるように、蛍光絵柄形成層を作成した。その後、蛍光絵柄形成層の形成された転写用正規相対を60℃の恒温室に24時間放置して蛍光染料の転写材内への拡散を行った。
蛍光絵柄の検査
上記の蛍光絵柄の印刷品質を、EasyMax.MC(ヒューテック社製)を使用し、通常光源下で検査した。
感熱接着剤層
上記の転写用積層体の蛍光絵柄形成層を覆うように、上記の感熱接着剤塗料をリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、感熱接着剤層を設けた。感熱接着剤層の乾燥後の膜厚は、1.5μmとなるようにした。
磁気カード作成
上記で作製した転写用積層体を所定の幅に裁断して磁気ストライプ転写用積層体を作成し、実施例1の磁気カードの作成方法と同様にして磁気カードを作成した。
【0056】
(実施例3)(実施例1で60℃のエージングを行わない。)
実施例1の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の60℃の恒温室への24時間放置を行わない以外は、実施例1と同様にして、磁気カードを作成した。
【0057】
(実施例4)(実施例2で60℃のエージングを行わない。)
実施例2の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の60℃の恒温室への24時間放置を行わない以外は、実施例2と同様にして、磁気カードを作成した。
【0058】
(実施例5)(実施例1で蛍光絵柄形成層をカード用オーバーシート側に形成する。)
実施例1において、磁気ストライプ転写用積層体は実施例1と同様に作成し、蛍光絵柄形成層は磁気ストライプ転写用積層体ではなく、カード用オーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に、蛍光絵柄用インキ〔A〕を用いてグラビア印刷方式により、乾燥後の膜厚が0.6μmとなるように設けた。蛍光絵柄形成層を設けたカード用オーバーシートの概念図を図6に示す。以降の工程は、実施例1の磁気カード作成方法と同様にして磁気カードを作成した。なお、蛍光絵柄形成層の印刷品質の検査は、蛍光絵柄形成層が設けられたカード用オーバーシートに対して行った。
【0059】
(比較例1)(実施例1で着色顔料を含有しない蛍光絵柄印刷インキを用いる。)
転写用積層体の作成
転写用基材の片面上に、上記の蛍光染料拡散防止層用塗料、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光染料拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光染料拡散防止層が1μm、着色層が2.5μm、磁気記録層が8μm、そして接着剤層が1.5μmとなるようにした。
蛍光絵柄形成層の作成
上記で作製した転写用積層体の感熱接着剤層上に、蛍光絵柄形成用インキ〔B〕を用いたグラビア印刷により、乾燥後の絵柄部分の膜厚が0.6μmとなるように、蛍光絵柄形成層を作成した。その後、蛍光絵柄形成層の形成された転写用積層体を60℃の恒温室に24時間放置して蛍光染料の転写材内への拡散を行った。
蛍光絵柄の検査
上記の蛍光絵柄の印刷品質を、EasyMax.MC(ヒューテック社製)を使用し、通常光源下で検査した。
磁気カード作成
上記で作製した転写用積層体を所定の幅に裁断して磁気ストライプ転写用積層体を作成した後、卓上型ヒートシーラー(テスター産業社製)を使用して、ポリ塩化ビニル製のカード用オーバーシート(太平化学社製)に磁気ストライプ転写用積層体を熱圧接着した。その後、磁気ストライプ転写用積層体の転写用基材を除去することによって、磁気ストライプ部分をカード用オーバーシートに転写して、磁気ストライプ付オーバーシートを得た。この磁気ストライプ付オーバーシートとカード用センターコア、および反対面のカード用オーバーシートを重ねて、平圧プレス機(東洋精機製作所製)を使用して、140℃、20kg/cm、20分間の熱圧プレス加工を行い、カード用シートの熱圧プレスを行った。その後、打ち抜き加工を行うことによって磁気カードを作製した。
【0060】
(比較例2)(実施例2で着色顔料を含有しない蛍光絵柄印刷インキを用いる。)
転写用積層体の作成
転写用基材の片面上に、上記の蛍光染料拡散防止層用塗料、着色層用塗料、および磁気記録層用塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光染料拡散防止層、着色層、および磁気記録層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光染料拡散防止層が1μm、着色層が2.5μm、そして磁気記録層が8μmとなるようにした。
蛍光絵柄形成層の作成
上記で作製した転写用積層体の磁気記録層上に、蛍光絵柄形成用インキ〔B〕を用いたグラビア印刷により、乾燥後の絵柄部分の膜厚が0.6μmとなるように、蛍光絵柄形成層を作成した。その後、蛍光絵柄形成層の形成された転写用積層体を60℃の恒温室に24時間放置して蛍光染料の転写材内への拡散を行った。
蛍光絵柄の検査
上記の蛍光絵柄の印刷品質を、EasyMax.MC(ヒューテック社製)を使用し、通常光源下で検査した。
感熱接着剤層
上記の転写用積層体の蛍光絵柄形成層を覆うように、上記の感熱接着剤塗料をリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、感熱接着剤層を設けた。感熱接着剤層の乾燥後の膜厚は、1.5μmとなるようにした。
磁気カード作成
上記で作製した転写用積層体を所定の幅に裁断し、磁気ストライプ転写用積層体を作成し、比較例1の磁気カードの作成方法と同様にして磁気カードを作成した。
【0061】
(比較例3)(蛍光染料に換えて無機系蛍光物質を用いる。着色層厚2.5μm)
磁気ストライプ付きカード基材の作成
蛍光絵柄形成層を設けていない磁気ストライプ転写用積層体を、蛍光絵柄形成層を設けていないカード用オーバーシートに転写して作成した磁気ストライプ付オーバーシートと、カード用センターコア、および反対面のカード用オーバーシートをこの順に重ねて、熱圧プレス加工を行うことによって磁気ストライプ付カード基材を得た。
隠蔽カード用隠蔽層転写積層体の作成
転写用基材として、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この転写用基材の片面上に上記の蛍光染料拡散防止層用塗料、着色層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光染料拡散防止層、着色層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光染料拡散防止層が1μm、着色層が2.5μm、そして感熱接着剤層が1μm以下となるように形成した。感熱接着剤層を形成した後に蛍光絵柄形成用インキ〔C〕を用いて、グラビア印刷により蛍光絵柄形成層を作製した。蛍光絵柄形成層の乾燥後の厚みは0.6μmとなるようにした。
蛍光絵柄の検査
上記の蛍光絵柄形成層の印刷品質を、EasyMax.MC(ヒューテック社製)を使用し、通常光源下で検査した。
磁気カード作成
上記で作製した磁気ストライプ付カード基材に隠蔽カード用隠蔽層転写積層体の蛍光絵柄形成層側を重ね、熱圧プレス機により、温度130℃、圧力18kg/cm、時間20分加熱加圧して隠蔽カード用隠蔽層転写積層体を磁気ストライプ付カード基材に接着させた後、転写積層体の転写用基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離させ、磁気カードを作成した。
【0062】
(比較例4)(蛍光染料に換えて無機系蛍光物質を用いる。着色層厚7μm)
比較例3において、隠蔽カード用隠蔽層転写積層体の着色層の乾燥後の膜厚を7μmとする以外は比較例3と同様にして磁気カードを作成した。
【0063】
(比較例5)(有機染料に換えて無機系蛍光物質を用い、着色顔料を使用しない。)
比較例3において、蛍光絵柄形成用インクを蛍光絵柄形成用インク〔D〕とする以外は比較例3と同様にして磁気カードを作成した。
【0064】
評価方法
(蛍光絵柄印刷領域の不可視性)
太陽光、および室内光下にて、蛍光絵柄形成層の存在の有無を目視にて評価した。
○・・・蛍光絵柄形成層の存在を確認できない。
×・・・蛍光絵柄形成層の存在を確認できる。
【0065】
(紫外線照射による蛍光発光)
紫外線照射による蛍光絵柄の蛍光発光強度を目視にて評価した。
○・・・十分な蛍光発光が得られる。
△・・・蛍光発光が不十分であり、発光があることは認識できるが、絵柄は識別できない
×・・・蛍光発光が不十分であり、蛍光絵柄が全く認識できない。
【0066】
(欠点検査機による印刷品質の検査の可否)
EasyMax.MC(ヒューテック社製)を使用し、通常光源下での蛍光絵柄印刷品質の検査の可否を評価した。
○・・・十分な感度をもって印刷品質の検査が可能。
×・・・画像を認識できず、印刷品質の検査が不可能。
【0067】
(出力変動)
得られた磁気カードについてISO/IEC7811−6に準拠し、BARNES社製MAGTESTER2000を用いてその記録再生特性の測定を行い、下記式により出力変動を求めた。なお、この磁気カードサンプルを作成するために使用した転写型磁気テープに関しては、それぞれのスペーシングにあわせて磁気記録層の膜厚を調整し、出力平均値が基準カード出力に等しくなるよう調整を行った。
出力変動(%)=((出力最大値−出力最小値)/出力平均値)×100
○・・・5%未満。 △・・・5%以上、10%未満。 ×・・・10%以上。
【0068】
【表1】

【0069】
表1の結果から明らかのように、本実施例1〜4は、蛍光絵柄形成層の不可視性の確保、十分な蛍光発光強度の確保、および一般的な欠点検査機を使用した蛍光絵柄の印刷品質の保証を満足している。さらに、本実施例1〜4は蛍光絵柄印刷に用いた蛍光染料が磁気記録層、および着色層に拡散しているため、蛍光絵柄部分と非絵柄部分とで磁気ストライプ表面と磁気記録層の間の距離は実質的に変化しない。そのため、蛍光絵柄に起因する出力変動は全く発生しないため、これによりカードの真偽判定が確実になる。一方比較例1、比較例2は蛍光絵柄形成層に着色顔料が含有されていないため、印刷品質の検査ができない。比較例3、比較例4、比較例5は不透明層中を拡散しない無機系蛍光物質を用い、蛍光絵柄層を磁気記録層の上に設け着色層で蛍光絵柄層を隠蔽した。着色層が2.5μmでは蛍光絵柄を不可視化できず、7μmでは逆に紫外線照射による発光を確認できず、着色層の膜厚設定領域が狭い。また比較例5は蛍光絵柄層に着色顔料が含まれておらず印刷品質の検査ができなかった。さらに比較例3、4、5は磁気記録層上に形成されるため再生出力の変動が増加した。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の蛍光絵柄形成方法に使用する転写用積層体の一つの実施態様を示す断面図である。
【図2】前記転写用積層体のエージングを行ったときに、絵柄の蛍光染料が拡散する様子を概念的に示した断面図である。
【図3】本発明の蛍光絵柄形成方法の一つの実施態様であって、カード用オーバーシートに蛍光絵柄形成層を形成する場合を概念的に示した断面図である。
【図4】本発明の蛍光絵柄形成方法によって形成された磁気カードの一つの実施態様を示す断面図である。
【図5】実施例1で製造した磁気ストライプ転写用積層体と蛍光絵柄形成層を示した概念図である。
【図6】実施例5の製造において蛍光絵柄形成層を示した概略図である。
【図7】本発明の蛍光絵柄形成方法を用い、磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の一例を表す図である。
【図8】本発明の蛍光絵柄形成方法を用い、磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の他の例を表す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 蛍光染料拡散防止層
2 蛍光染料拡散領域
3 着色層
4 磁気記録層
5 感熱接着剤層
6 カード用オーバーシート
7 カード用センターコア
8 カードデザイン
9 転写用基材
10 蛍光絵柄形成層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材上に紫外線照射により識別可能となる蛍光絵柄を形成する方法であって、前記被記録材に近い側から、蛍光染料と着色顔料とを含有する蛍光絵柄形成層と、該蛍光絵柄形成層を隠蔽する不透明層とを形成し、前記蛍光絵柄形成層の蛍光染料のみを前記不透明層中に、または前記不透明層中を通って拡散させることを特徴とする蛍光絵柄形成方法。
【請求項2】
前記不透明層または前記蛍光絵柄形成層が、転写用基材上に前記不透明層または前記蛍光絵柄形成層を形成した転写用積層体を用い、転写工程で形成されるものである請求項1に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項3】
前記不透明層と前記蛍光絵柄形成層が、転写用基材上に前記不透明層と前記蛍光絵柄形成層をこの順に形成した転写用積層体を用いて前記被記録材上に、転写されるものである請求項1に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項4】
前記蛍光染料を拡散させる前に、前記不透明層の前記蛍光絵柄形成層とは反対側に、透明な蛍光染料拡散防止層を設ける請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項5】
前記不透明層は磁気記録層を含有する請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項6】
前記不透明層はさらに前記磁気記録層上で蛍光絵柄形成層とは反対側に形成された着色層とを含有する請求項5に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光絵柄形成方法によって蛍光絵柄が形成されたことを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の蛍光絵柄形成方法によって蛍光絵柄が形成されたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光絵柄形成方法によって蛍光絵柄が形成されたことを特徴とする物品。
【請求項10】
転写用基材上に不透明層と、蛍光染料及び着色顔料を含有する蛍光絵柄形成層をこの順に積層してなる蛍光絵柄形成用の転写用積層体。
【請求項11】
前記蛍光絵柄形成層の蛍光染料のみが、前不透明層中に、または前記不透明層中を通って拡散している請求項10に記載の転写用積層体。
【請求項12】
前記蛍光染料は前記不透明層の膜厚方向全幅にわたって分布している請求項11に記載の転写用積層体。
【請求項13】
前記転写用積層体の最も転写用基材に近い側に蛍光染料拡散防止層を有する請求項10〜12のいずれか1項に記載の転写用積層体。
【請求項14】
前記不透明層は磁気記録層を含有する請求項10〜13に記載の転写用積層体。
【請求項15】
前記不透明層は前記転写用基材に近い側から積層された着色層と磁気記録層とを含有する請求項14に記載の転写用積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−263946(P2006−263946A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81305(P2005−81305)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】