説明

融合タンパク質、その使用、およびその製造方法

本発明は、タンパク質のアミノ酸末端から開始し、(i)サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチド、(ii)第1のペプチドリンカー、(iii)ヒトβ−2ミクログロブリン、(iv)第2のペプチドリンカー、(v)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(vi)第3のペプチドリンカー、(vii)抗体のscFv断片の重鎖に由来する可変領域、(viii)そのようなscFv断片の軽鎖に由来する可変領域に存在する連続するアミノ酸に対応する連続するアミノ酸を含んでなる融合タンパク質であって、前記(vii)および(viii)に対応する連続するアミノ酸は、ペプチド結合により、または第4のペプチドリンカーに対応する連続するアミノ酸により直接的に共に結合され、前記scFv断片は、メソセリンに特異的に結合する抗体に由来する融合タンパク質を提供する。本発明は、それをコードする核酸構築物、その製造方法、その組成物およびその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願の全体にわたって、ある一定の刊行物が引用されている。これらの刊行物に対する完全な引用は、特許請求の範囲のすぐ前に記載されている。これらの刊行物の開示は、本明細書中に援用され、本発明に関連する技術をより完全に述べる。
【0002】
現在の免疫監視理論によると、免疫系は、継続的に形質転換細胞を特定し、破壊する。しかしながら、見かけ上有効な免疫反応から逸脱し、結果として腫瘍になる細胞がある(1−4)。免疫反応からの腫瘍の逃避は、多くの研究において示されているよく確立された現象であり、広範な種類の示されたメカニズムにより引き起こされる(1−4)。これらのメカニズムの中には、抑制性のサイトカインの産生、主要抗原ペプチドの喪失、死滅メカニズム(アポトーシス)に対する耐性、およびMHCクラスIの喪失(1−4)がある。腫瘍発達に強く関連することが示されている逃避メカニズムの1つは、MHCクラスI分子の喪失または下方制御である。この逃避メカニズムは多くの腫瘍において豊富に存在し、多くの異なる突然変異の結果であり得る。いくつかの研究は、MHCクラスI負荷の弱いスポットおよび提示経路を明らかにしており、β-2-ミクログロブリンの喪失、TAP1/TAP2突然変異、LMP突然変異、MHC遺伝子におけるヘテロ接合性の喪失、および特異的なMHCアレルの下方制御が含まれる。
【0003】
現在の癌免疫療法の戦略は、典型的に、免疫系の2つのアームを使用する:すなわち体液性の系および細胞性の系である。第1に、細胞表面の腫瘍に付随する抗原に対して向けられた高親和性モノクローナル抗体(mAbs)の全身性の注入は、臨床試験において統計学的に有意な抗腫瘍活性を示す(5,6)。さらに、サイトカインまたは毒素のようなエフェクターを運ぶ抗腫瘍mAbsは、現在、臨床試験において評価されている(7)。特異的な癌免疫療法に対する第2の主要なアプローチは、免疫系の細胞性のアーム、主にCD8+細胞障害性Tリンパ球を用いる。2つの主要な戦略は、現在、免疫系の細胞性アームの抗腫瘍効果を増大させるために使用される:(i)Tリンパ球により認識されることが既知のペプチドを有する患者の活性免疫化、および(ii)改善された抗腫瘍効力を有する反応性の高いT細胞の亜集団の選択、活性化、および増殖を可能にする養子移入治療。第1のアプローチにおいて、最近同定された腫瘍関連抗原(例えば、gp100、MAGE群、NY−ESO−1)に由来するMHC拘束ペプチドは、予防接種する患者に使用される。これらの腫瘍特異的な抗原に由来するペプチドは、特定の組織におけるそれらの独占的な発現により、高い特異性を有する(8−11)。第2の戦略である養子性の細胞移入は、最近、転移性の黒色腫の患者において印象的な結果を示し、異なる過剰発現した自己由来の分化抗原に対する高度に選択された腫瘍反応性のT細胞が単離され、エクスビボで消費され、患者に再導入された。このアプローチにおいて、T細胞の持続性のクローンの再増殖、インビボでの増殖、機能的な活性、および腫瘍部位への輸送が示された(12−14)。
【0004】
最近示された新規の免疫治療アプローチは、2つのよく確立された領域を利用する:(i)高い免疫原性のMHC/ペプチド複合体を提示する細胞の除去における、CD8+細胞障害性Tリンパ球の既知の有効性、および(ii)抗体の組み換え断片、主に単鎖Fv断片(scFVs)を介した腫瘍特異的細胞表面抗原ターゲッティング。このアプローチは、2つの機能的に異なる実体で構成される組み換え融合タンパク質を利用する:(i)高度に免疫原性の腫瘍またはウイルスに由来するペプチドを有する単鎖MHCクラスI分子、および(ii)腫瘍特異的な高い親和性のscFv断片(15)。いくつかのグループは、これまでに、ストレプトアビジン上に多量体化されたビオチン標識されたMHCペプチドまたは化学的な接合を介して腫瘍特異的抗体に結合した単量体HLA−A2/インフルエンザ(Flu)マトリックスペプチド複合体が、インビトロで、コートされた腫瘍細胞のTリンパ球に媒介される溶解を引き起こし得ることを示している(16−20)。しかしながら、これらのアプローチは、化学的な接合を利用し、抗体全体またはより大きな断片、例えばFab断片を使用する。しかしながら、カップリング法のための産生および均一性ならびに腫瘍浸透能力は、そのような分子の大きなサイズにより制限される。Levらは、単鎖組み換えHLA−A2と腫瘍特異的なscFvsとの間に形成される遺伝子融合について述べている。これらの融合は、インビトロおよびインビボにおいて機能的であることが示されており、特異的に、ターゲットで被覆された腫瘍細胞のインビトロおよびインビボのT−リンパ球に媒介される溶解を引き起こすことができる(15)。新規のキメラ分子の安定性は、MHC溝におけるペプチドの存在に高度に依存する。それ故、キメラ分子のscHLA−A2ドメインからのペプチドの解離は、その安定性を改善することができる。Ovedらは、ペプチドが短いリンカーを介してscHLA−A2/scFv構築物に結合する新規のキメラ分子を構築することによりこの問題に取り組んだ。この新規の融合タンパク質は、そのインビトロでの生化学活性および生物活性を試験された(21)。
【0005】
その二重の活性を維持することができる新規の融合タンパク質に対する必要性が広く認識されており:scFv部分を介して腫瘍標的細胞に結合し、ならびにその特異性が共有結合的に結合したHLA−A2拘束ペプチドにより支配されるCD8+T細胞の補充を介して、強力であり、効果的であり、且つ特異的な細胞障害性を媒介する。
【0006】
適応性の免疫反応のMHCクラスI拘束CD8+細胞障害性T細胞(CTL)エフェクターアームは、異物として腫瘍細胞を認識するため、および結果として腫瘍破壊を生じるイベントのカスケードを惹起するために最もよく備えられている。しかしながら、腫瘍においては免疫エフェクターメカニズムを逸脱するための複雑化した方法が発達し、最もよく研究されているのは、CTLにより認識される抗原を提示するMHCクラスI分子の下方制御である。
【0007】
免疫治療に対するこれまでのアプローチの制限を克服し、新規のアプローチを開発するために、組み換え分子が構築され、単鎖MHCは、癌特異的組み換え抗体断片または腫瘍細胞により発現される受容体に結合するリガンドとの融合を介して、特異的に腫瘍細胞を標的とする。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、タンパク質のアミノ酸末端から開始し、(i)サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチド、(ii)第1のペプチドリンカー、(iii)ヒトβ−2ミクログロブリン、(iv)第2のペプチドリンカー、(v)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(vi)第3のペプチドリンカー、(vii)抗体のscFv断片の重鎖に由来する可変領域、(viii)そのようなscFv断片の軽鎖に由来する可変領域に存在する連続するアミノ酸に対応する連続するアミノ酸を含んでなる融合タンパク質を提供し、前記(vii)および(viii)に対応する連続するアミノ酸は、ペプチド結合により、または第4のペプチドリンカーに対応する連続するアミノ酸により直接的に共に結合され、前記scFv断片は、メソセリンに特異的に結合する抗体に由来する。
【0009】
本発明は、前記融合タンパク質およびキャリアを含んでなる組成物も提供する。
本発明はさらに、タンパク質のアミノ酸末端から開始し、(i)サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチド、(ii)第1のペプチドリンカー、(iii)ヒトβ−2ミクログロブリン、(iv)第2のペプチドリンカー、(v)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(vi)第3のペプチドリンカー、(vii)抗体のscFvの重鎖に由来する可変領域、(viii)そのようなscFv断片の軽鎖に由来する可変領域に存在する連続するアミノ酸に対応する連続するアミノ酸を含んでなる融合タンパク質をコードする核酸構築物を提供し、前記(vii)および(viii)に対応する連続するアミノ酸は、ペプチド結合により、または第4のペプチドリンカーに対応する連続するアミノ酸により直接的に共に結合され、前記scFv断片は、メソセリンに特異的に結合する抗体に由来する。
【0010】
本発明はさらに、本発明による融合タンパク質を30重量%以上含んでなる細菌性に発現した封入体の独立した調製を提供する。
【0011】
本発明は、融合タンパク質を発現するように融合タンパク質を含んでなる形質転換細胞を培養することを含んでなる融合タンパク質を製造するための方法およびそのように発現した融合タンパク質を回収するための方法も提供する。
【0012】
本発明はさらに、CTLに媒介される腫瘍細胞に対する免疫反応を惹起し、腫瘍細胞を殺すのに有効な量で、本発明の融合タンパク質を腫瘍細胞に接触させることを含んでなる、腫瘍細胞を選択的に死滅させる方法も提供する。
【0013】
最後に、本発明はさらに、その表面にメソセリンを発現する腫瘍細胞の治療方法であって、CTLに媒介される腫瘍細胞に対する免疫反応を惹起し、それにより腫瘍細胞を治療するのに有効な量で、本発明の融合タンパク質を腫瘍細胞と接触させることを含んでなる方法を提供する。
【0014】
本発明の典型的な分子として、短いペプチドリンカー(15アミノ酸)を介してHLA−A2のα1、α2およびα3ドメインに融合したβミクログロブリンで構成される単鎖MHC分子は、メソセリンを標的とするscFv SS1に融合した。共有結合的に結合したペプチドを含む融合タンパク質を構築するために、CMV pp65タンパク質に由来する9アミノ酸ペプチドNLVPMVATV(配列番号4)は、20アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)を介して、scHLA−A2/SS1(scFv)のN末端に融合した。融合タンパク質は、大腸菌において発現し、機能的な分子は、CMV/scHLA−A2/SS1(scFv)の存在下、インビトロでのリフォールディングにより作られた。フローサイトメトリー研究は、標的抗体断片の特異性に完全に依存する様式で、抗原陽性、HLA−A2陰性のヒト腫瘍細胞をHLA−A2ペプチド複合体でラベルする可能性について明らかにした。
【0015】
最も重要なことは、標的腫瘍細胞のCMV/scHLA−A2/SS1 (scFv)に媒介されたコーティングは、効率的且つ特異的なHLA−A2−拘束、CMVペプチド特異的なCTLに媒介される溶解に対してそれらを感受性にした。これらの結果は、腫瘍細胞におけるMHC−ペプチド複合体の抗体に導かれる腫瘍抗原特異的なターゲッティングが、それらにCTL死滅に対する感受性を与え、増強することを示す。この新規のアプローチは、天然同種のMHCリガンドの抗体ターゲッティングに基づく新規の免疫療法およびCTLに基づく細胞毒性メカニズムの発達に対する道を開く。
【0016】
本発明に関して、新規の方法は、標的腫瘍細胞によるクラスIMHC発現の程度に非依存性の様式で、腫瘍細胞表面における再標的クラスIMHCペプチド複合体に発達した。最後まで、本発明の実施形態においては、2つのアームを有する分子が使用された。1つのアームはターゲッティング部分であり、長い間、放射性同位体、毒素または薬物が癌細胞を標的にするために使用されてきた腫瘍または分化抗原に向けられた抗体の腫瘍特異的な組み換え断片を含んでなる。第2のエフェクターアームは、HLA−A2重鎖の3つの細胞外ドメインに結合したヒトβ2−ミクログロブリンで構成される単鎖MHC分子(scMHC)である(24、25、WO01/72768)。単鎖組み換え遺伝子における2つのアームをコードする遺伝子を結合し、前記遺伝子を発現させることにより、例えば、HLA−A2−CMVペプチドの存在下でのインビトロリフォールディングにより、新しい分子が大腸菌中で効率的に発現し、産生される。ここで述べるように、このアプローチは、標的腫瘍細胞に、それらのMHC発現レベルに関係なく細胞障害性T細胞による溶解に対する感受性を与え、それ故、CTLに媒介される抗腫瘍免疫を増強するための新規のアプローチとして使用され得る。この新規のアプローチは、天然同種MHCリガンドおよびCTLに基づく細胞障害性メカニズムを利用して腫瘍細胞の選択的な死滅および除去を可能にする新規の分類の組み換え治療剤の開発を導くであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1A−B: scHLA−A2/SS1(scFv)およびpep(CMV)/scHLA−A2/SS1(scFv)(化合物A)の模式図。図1Aは、4アミノ酸リンカーを介してSS1(scFv)のN末端に融合したscHLA−A2のC末端を示す。図1Bは、CMV pp65ペプチド、すなわちNLVPMVATV(配列番号4)が20アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)を介してscHLA−A2/SS1 (scFv)のN末端に融合したことを示す。
【図2】化合物Aをコードする核酸配列(配列番号1)。
【図3】図3A−B:化合物Aの発現および精製。図3Aは、単離された封入体のSDS/PAGE分析を示す。図3Bは、イオン交換クロマトグラフィーでの精製後の化合物AのSDS/PAGE分析を示す。
【図4】組み換えメソセリンに対する化合物Aの結合。メソセリンは、イムノプレート上に固定化され、化合物Aの用量依存性の結合は、高次構造感受性mAb W6(33,34)によりモニターされた。
【図5−1】図5A−B:メソセリン発現細胞に対する化合物Aの結合性。図5A−Bは、メソセリン陽性HLA−A2陰性のA431K5細胞およびメソセリン陰性HLA−A2陰性のA431細胞に対する化合物Aの結合性のフローサイトメトリー分析を示す。図5Aは、K1 mAb(31,32)のA431K5細胞への結合性を示し、図5Bは、K1 mAbのA431細胞に対する結合性の欠如を示す。
【図5−2】図5C−D:メソセリン発現細胞に対する化合物Aの結合性。図5Cは、化合物AのA431K5細胞への結合性を示し、図5Dは、化合物AのA431細胞への結合性の欠如を示す。結合性は、抗HLA−A2特異的抗体BB7.2(35)およびFITC標識された二次抗体を用いてモニターされた。
【図6】図6A−B:化合物AによるHLA−A2陰性腫瘍細胞のCTLに媒介される溶解の増強作用。図6Aでは、[S35]メチオニン放出分析において、メソセリン形質移入A431K5細胞および親のメソセリン陰性A431細胞が化合物A(10μg)およびCMV特異的なCTLと共にインキュベートされた。図6Bは、[S35]メチオニン放出分析において、メソセリン形質移入A431K5細胞および親のメソセリン陰性A431細胞が異なる濃度の化合物AおよびCMV特異的なCTLと共にインキュベートされた場合の化合物Aの用量依存性の活性を示す。
【図7】pep/scHLA−A2/SS1(scFv)(化合物B)の模式図。化合物Bにおいて、ペプチドNLVPMVATVは、15アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)を介してscHLA−A2/SS1 (scFv)のN末端に融合した。
【図8】化合物Bをコードする核酸配列(配列番号22)。
【図9】図9A−B:化合物Bの発現および精製。図9Aは、単離された封入体のSDS/PAGE分析を示す。図9Bは、イオン交換クロマトグラフィーでの精製後の化合物BのSDS/PAGE分析を示す。
【図10−1】図10A−C:メソセリン発現細胞に対する化合物Bの結合性。図10A−Fは、メソセリン陽性HLA−A2陰性A431K5細胞およびメソセリン陰性HLA−A2陰性A431細胞に対する化合物Bの結合性のフローサイトメトリー分析を示す。図10Aは、K1 mAbのA431K5細胞に対する結合性を示し、図10Bは、K1 mAbのA431細胞に対する結合性の欠如を示す。図10Cは、化合物BのA431K5細胞への結合性を示す。
【図10−2】図10D−F:メソセリン発現細胞に対する化合物Bの結合性。図10Dは、化合物BのA431細胞への結合性の欠如を示す。図10Eは、化合物Aと化合物BのA431K5細胞への結合性の比較を示し、図10Fは、化合物Aおよび化合物BのA431細胞への結合性の欠如を示す。結合は、抗HLA−A2特異的抗体BB7.2およびFITC標識された二次抗体を用いてモニターされた。
【図11】図11A−B:化合物BによるHLA−A2陰性腫瘍細胞のCTLに媒介される溶解の増強作用。図11Aでは、[S35]メチオニン放出分析において、メソセリン形質移入A431K5細胞および親のメソセリン陰性A431細胞が化合物B(10μg)およびCMV特異的なCTLと共にインキュベートされた。図11Bは、[S35]メチオニン放出分析において、メソセリン形質移入A431K5細胞および親のメソセリン陰性A431細胞が異なる濃度の化合物AおよびCMV特異的なCTLと共にインキュベートされた場合の化合物Bの用量依存性の活性を示す。
【図12】化合物Bおよび化合物AによるHLA−A2陰性腫瘍細胞のCTLに媒介される溶解の増強作用。メソセリン形質移入A431K5細胞および親のメソセリン陰性A431細胞は、[S35]メチオニン放出分析において、異なる濃度の化合物Bまたは化合物AおよびCMV特異的なCTLと共にインキュベートされた。図は、化合物AとA431K5細胞のインキュベーション、化合物BとA431K5細胞のインキュベーション、化合物AとA431細胞のインキュベーション、および化合物BとA431細胞のインキュベーションの結果を示す。
【図13】図13A−B:scHLA−A2/SS1(scFv)およびM1cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)の模式図。図13Aは、4アミノ酸リンカーを介してscFvのN末端に融合したscHLA−A2のC末端を示す。図13Bは、15アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)を介してscHLA−A2/SS1(scFv) のN末端に融合したM158−66ペプチドを示す。
【図14】M1cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質をコードする核酸配列(配列番号23)。
【図15】図15A−B:M1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の発現および精製。図15Aは、単離された封入体のSDS/PAGE分析を示す。図15Bは、イオン交換クロマトグラフィーでの精製後のM1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のSDS/PAGE分析を示す。
【図16】M1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の組み換えメソセリンに対する結合性。メソセリンは、イムノプレート上に固定化され、M1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)の用量依存性の結合を、立体構造感受性mAbによりモニターした(W6)。
【図17−1】図17A−B:メソセリン発現細胞に対するM1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の結合性。図17A−Dは、メソセリン陽性HLA−A2陰性A431K5細胞およびメソセリン陰性HLA−A2陰性A431細胞に対するM1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)の結合性のフローサイトメトリー分析を示す。図17Aは、K1 mAbのA431K5細胞に対する結合性を示し、図17Bは、K1 mAbのA431細胞に対する結合性を示す。
【図17−2】図17Cは、M1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のA431K細胞に対する結合性を示し、図17Dは、M1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のA431細胞に対する結合性の欠如を示す。結合性は、抗HLA−A2特異的抗体BB7.2およびFITC標識された二次抗体を用いてモニターされた。
【図18】M1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)融合タンパク質によるHLA−A2陰性腫瘍細胞のCTLに媒介される溶解の増強。[S35]メチオニン放出分析において、メソセリン形質移入A431K5細胞および親のメソセリン陰性A431細胞を、異なる濃度のM1−cov/scHLA−A2/SS1 (scFv)およびM1特異的HLA−A2拘束CTLと共にインキュベートした。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明は、タンパク質のアミノ末端から開始し、(i)サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチド、(ii)第1のペプチドリンカー、(iii)ヒトβ−2ミクログロブリン、(iv)第2のペプチドリンカー、(v)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(vi)第3のペプチドリンカー、(vii)抗体のscFv断片の重鎖に由来する可変領域、(viii)そのようなscFv断片の軽鎖に由来する可変領域に存在する連続するアミノ酸に対応する連続するアミノ酸を含んでなる融合タンパク質を提供し、前記(vii)および(viii)に対応する連続するアミノ酸は、ペプチド結合により、または第4のペプチドリンカーに対応する連続するアミノ酸により直接的に共に結合され、前記scFv断片は、メソセリンに特異的に結合する抗体に由来する。
【0019】
1つの実施形態において、前記第1のペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)を有する。もう1つの実施形態において、前記第2のペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)を有する。もう1つの実施形態において、前記第3のペプチドリンカーは、アミノ酸配列ASGG(配列番号10)を有する。もう1つの実施形態において、前記第4のペプチドリンカーは、アミノ酸配列GVGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)を有する。もう1つの実施形態において、前記サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチドは、アミノ酸配列NLVPMVATV(配列番号4)を有する。
【0020】
ここで使用される場合、「第1のペプチドリンカー」、「第2のペプチドリンカー」および「第4のペプチドリンカー」は、アミノ酸配列がGXGGS(配列番号20)である単量体のペプチドまたはそれらの多量体で構成されるペプチドを意味し、Xはいずれのアミノ酸でもよい。これらのペプチドリンカーは、そのような単量体ペプチドの2〜10の多量体であってよい。そのような多量体において、各単量体ペプチドは、アミノ酸Xの同一性に依存して、多量体における他の単量体ペプチドと同じまたは異なってよい。1つの実施形態において、単量体ペプチドにおけるXは、アミノ酸バリン(V)である。もう1つの実施形態において、単量体ペプチドにおけるXはアミノ酸グリシン(G)である。現在好ましい実施形態において、前記ペプチドリンカーは、3または4の単量体ペプチドの多量体、特に最もN末端のXがアミノ酸Vであり、2番目および3番目のXがアミノ酸Gである3つの単量体ペプチドの多量体を含んでなる。
【0021】
1つの実施形態において、(vii)に対応する連続するアミノ酸、それに続く第4のペプチドリンカー、およびそれに続く(viii)の配列は、配列番号12に示されている。
【0022】
もう1つの実施形態において、融合タンパク質である化合物Aの連続するアミノ酸は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する。
【0023】
本発明は、本発明による融合タンパク質およびキャリアを含んでなる組成物も提供する。1つの実施形態において、前記融合タンパク質は、治療的に有効な量で前記組成物中に存在し、前記キャリアは薬学的に許容可能なキャリアである。
【0024】
本発明は、タンパク質のアミノ酸末端から開始し、(i)サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチド、(ii)第1のペプチドリンカー、(iii)ヒトβ−2ミクログロブリン、(iv)第2のペプチドリンカー、(v)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(vi)第3のペプチドリンカー、(vii)抗体のscFv断片の重鎖に由来する可変領域、(viii)そのようなscFv断片の軽鎖に由来する可変領域に存在する連続するアミノ酸に対応する連続するアミノ酸を含んでなる融合タンパク質をコードする核酸構築物も提供し、前記(vii)および(viii)に対応する連続するアミノ酸は、ペプチド結合により、または第4のペプチドリンカーに対応する連続するアミノ酸により直接的に共に結合され、前記scFv断片は、メソセリンに特異的に結合する抗体に由来する。1つの実施形態において、前記核酸構築物は、配列番号1に示す核酸配列を有する。
【0025】
本発明は、本発明の核酸構築物を含んでなるベクターも提供する。そのようなベクターの例は、プラスミド、ウイルス、ファージ等である。
【0026】
本発明はさらに、本発明の核酸構築物および動作可能にそれらに結合したプロモーターを含んでなる発現ベクターを提供する。
【0027】
本発明は、本発明によるベクターを含んでなる形質転換細胞も提供する。前記形質転換細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞および原虫細胞からなる群より選択されるいずれかであってよい。あるいは、前記形質転換細胞は、細菌細胞であってよい。
【0028】
本発明は、本発明による融合タンパク質を30重量%以上含んでなる細菌性に発現した封入体の独立した調製を提供する。
【0029】
本発明は、融合タンパク質が発現するように本発明の形質転換細胞を培養すること、およびそのように発現した融合タンパク質を回収することを含んでなる融合タンパク質の製造方法も提供する。1つの実施形態において、融合タンパク質の回収は、発現した融合タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィーに供することを含んでなる。もう1つの実施形態において、前記融合タンパク質は、封入体において発現される。1つの実施形態において、前記方法はさらに、前記融合タンパク質を分離およびリフォールディングするように封入体を処理し、活性型の融合タンパク質を産生することを含んでなる。もう1つの実施形態において、前記融合タンパク質を分離するために前記封入体を処理することは、前記封入体を変性剤と接触させることを含んでなる。
【0030】
ここで使用される場合、融合タンパク質の「活性型」とは、メソセリンが腫瘍細胞の表面に存在する場合に融合タンパク質がメソセリンに特異的に結合することを可能にする融合タンパク質の3次元構造を意味する。
【0031】
本発明は、腫瘍細胞を選択的に死滅させる方法であって、腫瘍細胞に対するCTLに媒介される免疫反応を惹起するのに有効な量で本発明の融合タンパク質を細胞と接触させ、それにより腫瘍細胞を死滅させることを含んでなる方法も提供する。1つの実施形態において、前記腫瘍細胞は患者の中にあり、前記接触は、前記融合タンパク質を患者に投与することにより行われる。
【0032】
本発明はさらに、表面にメソセリンが発現する腫瘍細胞を処理する方法であって、腫瘍細胞に対するCTLに媒介される免疫反応を惹起するのに有効な量で本発明による融合タンパク質を腫瘍細胞と接触させ、それにより腫瘍細胞を処理することを含んでなる方法を提供する。1つの実施形態において、前記腫瘍細胞は固体の腫瘍中に存在する。もう1つの実施形態において、前記固体の腫瘍は、卵巣、肺、膵臓もしくは頭/首の癌、または中皮腫に見られる。
【0033】
本発明は、(i)新規の融合タンパク質;(ii)その製造方法;(iii)それをコードする核酸構築物;および(iv)細胞、特に癌細胞を選択的に死滅させるためのそれらの使用方法を提供する。
【0034】
本発明の原理および操作は、ここに示す図および記述を参照することにより、より理解できる。
【0035】
本発明が、その出願において、明細書に示された詳細な説明または実施例に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態を包含し、種々の方法で実施することが可能である。また、ここで使用される表現および用語は説明することを目的としており、限定するものとしてみなされるべきではない。
【0036】
腫瘍の発達は、しばしば、免疫抑制性の因子の放出および/またはMHCクラスI抗原提示機能の下方制御を伴う(2)。特異的なCTL反応が患者において示される場合でさえ、抗腫瘍CTL個体が珍しく、非常に稀であり、CTLが機能的またはアレルギー性でない場合があるため、この反応は低い(26)。さらに、特定の腫瘍に関連するペプチドが存在する腫瘍細胞の表面におけるMHCペプチド複合体の数が低いということはよく確立されている(27)。腫瘍に対する免疫反応を刺激することができるワクチンを発達させることに向けられた有意な進歩は、与えられた腫瘍タイプに関連するタンパク質抗原の同定を含み、MHCクラスIおよびクラスII拘束結合モチーフに対する腫瘍抗原のエピトープマッピングが同定され、現在、種々のワクチン接種プログラムにおいて使用されている(14,11,8)。適切なペプチドを提示するMHCクラスI分子は、CTLによる認識および死滅のための特異的なシグナルを提供する必要がある。しかしながら、腫瘍逸脱の主要なメカニズムは、HLAプロファイルの低下、下方制御または変化であり、細胞が適切な腫瘍抗原を提示する場合でさえ標的細胞がCTL溶解に反応しないようにし得る。
【0037】
本発明は、この問題を回避する新規のアプローチを提供する。本発明が実施される一方で、腫瘍細胞におけるクラスIMHC−ペプチド複合体の腫瘍特異的なターゲッティングは、関連するHLA−A2拘束CTLによる溶解に対してHLA−A2陰性細胞に感受性を与える効率的且つ効果的な方法であることが示された。腫瘍細胞に対してCTLを向け直すこの新規の方法は、相対的に高い程度の特異性で、腫瘍に発現する悪性細胞上に局在し得るCMVリガンドおよび組み換え抗メソセリン抗体断片の使用を利用する。
【0038】
前記抗メソセリン抗体ターゲッティング断片およびCMVリガンドは、効率的且つ機能的に折りたたまれ得る単鎖HLA−A2分子に融合する。
【0039】
ここで示される結果は、scMHC−ペプチド複合体のリガンド誘導ターゲッティングまたは癌特異的抗体を介した腫瘍細胞の死滅のために活性CTLを補充する本発明のアプローチの利点を明示する。これらの結果は、腫瘍細胞に対して向け直す天然の細胞性免疫反応に基づく新規の免疫療法アプローチの発達に対する道を開く。
【0040】
本発明の融合タンパク質またはその部分が固相タンパク合成を含むいくつかの方法により調製され得ることが認められる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも分子の主要部、例えばscHLA−A2ドメイン(CMVペプチドを含む場合または含まない場合)およびscFVドメインは、前記分子をコードするそれぞれの核酸構築物の翻訳により作られる。
【0041】
従って、1〜3のオープンリーディングフレームは、翻訳を介して図1Bの分子を合成するために必要とされる。これらのオープンリーディングフレームは、1、2、または3の核酸分子に存在し得る。それ故、例えば、単一の核酸構築物は、1、2または3つ全てのオープンリーディングフレームを有し得る。1〜3のシス活性制御配列は、1〜3のオープンリーディングフレームの発現を制御するために使用されてよい。例えば、単一のシス活性制御配列は、シストロン様の態様で、1、2または3のオープンリーディングフレームの発現を制御してよい。あるいは、3つの独立したシス活性制御配列は、3つのオープンリーディングフレームの発現を制御するために使用されてよい。他の組み合わせも考えられる。
【0042】
前記オープンリーディングフレームおよびシス活性制御配列は、1〜3の核酸分子により保有されてよい。例えば、各オープンリーディングフレームおよびそのシス活性制御配列は、異なる核酸分子により保有されるか、またはオープンリーディングフレームの全ておよびそれらに関連するシス活性制御配列は、単一の核酸分子により保有される。他の組み合わせも考えられる。
【0043】
前記融合タンパク質の発現は、形質転換/形質移入ベクターとして役に立つ核酸分子のいずれか(例えば、プラスミド、ファージ、ファージミドまたはウイルス)を用いた単一の細胞もしくは多数の細胞の形質転換/形質移入および/または同時形質転換/同時形質移入により影響され得る。
【0044】
アミノ酸配列が配列番号2であり、N末端アミノ酸メチオニンを含む融合タンパク質が細菌性の細胞において発現されるような融合タンパク質を意味する可能性が高いことは認識されるであろう。融合タンパク質を発現するために使用される特異的な細菌性の細胞に依存して、N末端メチオニンは切断され、除去される。従って、本発明による融合タンパク質は、N末端メチオニンを含むものと含まないものがあると考えられる。一般的に、本発明による融合タンパク質が真核細胞において発現される場合、N末端メチオニンを欠いている。それ故、本発明により発現された融合タンパク質のアミノ酸配列は、前記タンパク質が発現される細胞の型に依存して、そのようなN末端メチオニンを含んでもよいし、含まなくてもよいと認識される。
【0045】
いつまたはどこで使用されても、リンカーペプチドは、本質的にフレキシブルであるアミノ酸配列から選択され、それらにより結合されたポリペプチドは、それらの発現に従って独立に且つ自然に折りたたまれ、結果として、機能的または活性のある単鎖(sc)ヒトβM/HLA複合体、抗体ターゲッティングまたはヒトβM/HLA−CMV拘束抗原複合体の形成を促進する。
【0046】
ここで述べられている核酸構築物のいずれも、その中のコーディングポリヌクレオチドに動作可能に結合した少なくとも1のシス活性制御配列を含んでなる。好ましくは、前記シス活性制御配列は、細菌中で機能的である。あるいは、前記シス活性制御配列は、酵母中で機能的である。あるいは、前記シス活性制御配列は、動物細胞中で機能的である。あるいは、前記シス活性制御配列は、植物細胞中で機能的である。
【0047】
前記シス活性制御配列は、プロモーター配列および付加的な転写エンハンサー配列または翻訳エンハンサー配列を含んでよく、これらは全て、宿主細胞に導入された場合にポリヌクレオチドの発現を促進するのに役立つ。プロモーターの特別な例は、種々の真核性および原核性の発現系と関連して、それに続く実施例の節で述べられている。
【0048】
単一のシス活性制御配列は、1以上のオープンリーディングフレームを含む単一の転写物の直接的な転写のために核酸構築物中で利用される。後者の場合、内部に位置する核酸配列の転写を可能にするために、内部リボソーム侵入部位(IRES)が利用され得る。
【0049】
単一の細胞中での独立したポリペプチドの同時発現が選択されるときはいつでも、使用される構築物は、前記独立したポリペプチドの発現レベルが最適化され、それにより最も高い割合の最終産物が得られるように構成されるべきである。
【0050】
本発明の核酸構築物により利用される好ましいプロモーター(シス活性制御配列の例である)は、強い構成プロモーターであり、宿主細胞形質転換後、ポリヌクレオチドに対する高い発現レベルが得られる。
【0051】
高いレベルの発現は、高いコピー数の核酸構築物を用いた宿主細胞の形質転換、または結果として生じる転写産物を安定化し、そのような転写産物の分解または「ターンオーバー」を減少させるシス活性配列を利用することにより影響を受けることが認識される。
【0052】
ここで使用される場合、「形質転換細胞」という用語は、外来の核酸配列が導入され、それにより安定的にまたは一過性に宿主細胞が遺伝的に変化した細胞を意味する。それは、当該分野で周知の種々の方法を用いて、天然または人工的な条件下で生じ、それらのいくつかは宿主細胞の特別な実施例に関連して以下に詳細に記載されている。
【0053】
形質転換宿主細胞は、真核細胞であってよく、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞および原生動物細胞であるか、あるいは前記細胞は細菌性の細胞であってよい。
【0054】
真核生物宿主細胞の発現について利用される場合、本発明による核酸構築物は、シャトルベクターであってよく、ともに大腸菌(ここで、前記構築物は、適切な選択可能マーカーおよび複製の起源を含んでなる)において増殖されてよく、真核宿主細胞中での発現に対して適合性である。本発明による核酸構築物は、例えば、プラスミド、バクミド(bacmid)、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工的なクロモソームであってよい。
【0055】
適切な哺乳動物発現系には、限定するものではないが、Invitrogen(商標) Corporation (Carlsbad, CA USA)から入手可能なpcDNA3、pcDNA3.1(+/-)、pZeoSV2(+/-)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、Promega(商標) Corporation (Madison WI USA)から入手可能なpCI、Stratagene(登録商標)(La Jolla, CA USA)から入手可能なpBK-RSVおよびpBK-CMV、Clontech(登録商標)Laboratories, Inc. (Mountain View, CA USA)から入手可能なpTRES、ならびにそれらの誘導体が含まれる。
【0056】
昆虫細胞培養も、本発明の核酸配列を発現するために利用され得る。適切な昆虫発現系には、限定するものではないが、maxBac(商標)(Invitrogen(商標) Corporation, Carlsbad, CA USA) BacPak(商標)(Clontech(登録商標) Laboratories, Inc. Mountain View, CA USA), または Bac-to-Bac(商標)(Invitrogen(商標)/Gibco(登録商標), Carlsbad, CA USA)のような種々の供給業者から商業的に入手可能なバキュロウイルス発現系およびその誘導体が含まれる。
【0057】
本発明の核酸配列の発現は、植物細胞中で行われてよい。ここで使用される場合、「植物細胞」という用語は、植物プロトプラスト、植物組織培養の細胞、植物由来組織の細胞、植物全体の細胞を意味する。
【0058】
植物細胞に核酸構築物を導入する種々の方法がある。そのような方法は、核酸構築物もしくはその部分の植物細胞のゲノムへの安定な導入、またはこれらの配列が植物細胞のゲノムに安定に導入されない場合における核酸構築物の一過性の発現に依拠する。
【0059】
本発明の核酸構築物に含まれるような外来性の核酸配列を植物細胞ゲノムに安定に遺伝子導入する2つの主要な方法がある:
(i)アグロバクテリウムに媒介される遺伝子導入:Klee et al. (1987) Annu. Rev. Plant Physiol. 38:467-486; Klee and Rogers in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Vol. 6, Molecular Biology of Plant Nuclear Genes, eds. Schell, J., and Vasil, L. K., Academic Publishers, San Diego, Calif. (1989) p. 2-25; Gatenby, in Plant Biotechnology, eds. Kung, S. and Arntzen, C. J., Butterworth Publishers, Boston, Mass. (1989) p. 93-112.
(ii)直接的なDNA取り込み:Paszkowski et al., in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Vol. 6, Molecular Biology of Plant Nuclear Genes eds. Schell, J., and Vasil, L. K., Academic Publishers, San Diego, Calif. (1989) p. 52-68; プロトプラストへのDNAの直接的な取り込みの方法を含む, Toriyama, K. et al. (1988) Bio/Technology 6:1072-1074。植物細胞の短時間の電気ショックにより誘発されるDNA取り込み: Zhang et al. Plant Cell Rep. (1988) 7:379-384. Fromm et al. Nature (1986) 319:791-793. 粒子衝撃による植物細胞または組織へのDNA注入, Klein et al. Bio/Technology (1988) 6:559-563; McCabe et al. Bio/Technology (1988) 6:923-926; Sanford, Physiol. Plant. (1990) 79:206-209; マイクロピペット系の使用による: Neuhaus et al., Theor. Appl. Genet. (1987) 75:30-36; Neuhaus and Spangenberg, Physiol. Plant. (1990) 79:213-217;または発芽花粉を用いたDNAの直接的なインキュベーションによる, DeWet et al. in Experimental Manipulation of Ovule Tissue, eds. Chapman, G. P. and Mantell, S. H. and Daniels, W. Longman, London, (1985) p. 197-209; and Ohta, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83:715-719。
【0060】
アグロバクテリウム系には、植物ゲノムDNAに組み込まれる定義されたDNA断片を含むプラスミドベクターの使用が含まれる。植物組織の接種方法は、植物種およびアグロバクテリウム送達系に依存して変化する。広く使用されるアプローチは、リーフディスク方法であり、例えばHorsch et al. in Plant Molecular Biology Manual A5, Kluwer Academic Publishers, Dordrecht (1988) p. 1-9を参照されたい。補足的なアプローチは、減圧浸潤と組み合わせてアグロバクテリウム送達系を使用する。前記アグロバクテリウム系は、特に、安定に形質転換された双子葉類植物の生成において実行可能である。
【0061】
植物細胞へ直接DNAを導入する種々の方法がある。エレクトロポレーションにおいて、プロトプラストは、強い電場に短時間曝される。マイクロインジェクションにおいて、DNAは、非常に小さなマイクロピペットを用いて細胞に直接機械的に注入される。マイクロ粒子照射において、DNAは、硫酸マグネシウム結晶、タングステン粒子または金粒子のような微粒子上に吸着され、前記微粒子は、細胞または植物組織へと物理的に加速される。直接的なDNA導入は、植物細胞を一過性に形質転換するために利用することもできる。
【0062】
いくつかの場合において、第1および第2の核酸配列の植物細胞発現に対して利用され得る適切な植物プロモーターには、限定するものではないが、CaMV 35Sプロモーター、ユビキチンプロモーター、および構成的または組織特異的な態様で核酸配列を発現することができる他の強力なプロモーターが含まれる。
【0063】
植物ウイルスは、形質転換ベクターとして使用されてもよい。植物細胞宿主の形質転換に有用であると示されているウイルスには、CaV、TMVおよびBVが含まれる。植物ウイルスを使用する植物の形質転換は、U.S. Pat. No. 4,855,237 (BGV), EP-A 67,553 (TMV), Japanese Published Application No. 63-14693 (TMV), EPA 194,809 (BV), EPA 278,667 (BV); and Gluzman, Y. et al., Communications in Molecular Biology: Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, pp. 172-189 (1988)に記載されている。外来DNAを植物を含む多くの宿主中で発現するために使用されるシュードウイルス粒子については、WO 87/06261に記載されている。
【0064】
植物中の非ウイルス性の外来核酸配列の導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上述した参考文献ならびにDawson, W. O. et al., Virology (1989) 172:285-292; Takamatsu et al. EMBO J. (1987) 6:307-311; French et al. Science (1986) 231:1294-1297; およびTakamatsu et al. FEBS Letters (1990) 269:73-76に記載されている。
【0065】
ウイルスがDNAウイルスである場合、前記構築物からウイルス自体が作られる。あるいは、上述した核酸配列を用いて望ましいウイルスベクターを構築するのを容易にするために、ウイルスは最初に細菌性プラスミド中にクローン化されてよい。ウイルスはその後、プラスミドから切除されてよい。ウイルスがDNAウイルスである場合、複製の細菌性起源は、ウイルスDNAに結合してよく、その後細菌により複製される。このDNAの転写および翻訳は、ウイルスDNAをキャプシド形成するコートタンパク質を作るであろう。ウイルスがRNAウイルスである場合、該ウイルスは、一般的に、cDNAとしてクローン化され、プラスミド中に導入される。前記プラスミドは、その後、構築物の全てを作るために使用される。RNAウイルスは、プラスミドのウイルス配列を転写することにより作られ、ウイルス遺伝子の転写により、ウイルスRNAをキャプシド形成するコートタンパク質が作られる。
【0066】
本発明の構築物に含まれるような非ウイルス性の外来核酸配列の植物中における導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上述した参考文献ならびに米国特許第5,316,931号公報に記載されている。
【0067】
酵母細胞は、本発明による宿主細胞として使用することができる。本発明の核酸配列の酵母中での発現に適した酵母発現ベクターの多くの例は、当該分野で既知であり、商業的に入手可能である。そのようなベクターは、通常、当該分野で周知の化学的またはエレクトロポレーション形質転換方法を介して酵母宿主細胞に導入される。商業的に入手可能な系には、例えば、pYES(商標)(Invitrogen(商標)Corporation, Carlsbad CA, USA)またはYEX(商標)(Clontech(登録商標)Laboratories, Mountain View, CA USA)が含まれる。
【0068】
上述したような真核生物の発現系における発現の場合、核酸構築物は、好ましくはシグナルペプチドコード配列を含み、第1および第2の核酸配列から作られるポリペプチドは、結合したシグナルペプチドを介して分泌経路へ向けられる。例えば、哺乳動物、昆虫および酵母宿主細胞において、発現されたポリペプチドは培地中に分泌される一方、植物発現系においては、ポリペプチドはアポプラスト中に分泌されるか、または細胞下オルガネラに向けられる。
【0069】
細菌性の宿主は、当該分野で既知の形質転換方法により前記核酸配列で得異質転換され、例えば、化学的な形質転換(例えばCaCl)またはエレクトロポレーションが含まれる。
【0070】
本発明の核酸配列を発現するために利用することができる細菌性の発現系の多くの例は、当該分野で既知である。商業的に入手可能な細菌性の発現系には、限定するものではないが、pET(商標)発現系(Novagen(登録商標), EMB Biosciences, San Diego, CA USA)、pSE(商標)発現系 (Invitrogen(商標)Corporation, Carlsbad CA, USA)またはpGEX(商標)発現系(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ USA)が含まれる。
【0071】
以下の実験の詳細の節に記載されているように、細菌性の発現は、発現されたポリペプチドが該ポリペプチドの回収および精製を容易に受け入れる実質的に純粋な封入体を形成するため、特に有益である。
【0072】
それ故、本発明は、30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の本発明の融合タンパク質または融合タンパク質の混合物で構成される細菌的に発現された封入体の調製を提供する。そのような封入体の単離およびそれらに由来する融合タンパク質の精製は、以下の実験の詳細の節に詳細に記載する。融合タンパク質の細菌的な発現は、高い量の純粋且つ活性を有する形態の融合タンパク質を提供し得る。
【0073】
以下の実験の詳細の節に示すように、発現された融合タンパク質は、当該分野において周知の分画技術を用いて容易に単離され、例えば変性-再生ステップを介して精製される実質的に純粋な封入体を形成する。
【0074】
本発明の融合タンパク質は、MHC拘束ペプチドの存在下で再生およびリフォールディングされてよく、本発明の他のポリペプチドと結合、同時発現、または混合され、単鎖MHCクラスIポリペプチドと結合することができる。実施例の節でさらに述べるように、これは、実質的に純粋なMHCクラスI抗原性ペプチド複合体を作ることを可能にし、サイズ排除クロマトグラフィーを介してさらに精製され得る。
【0075】
リフォールディングに使用されるCMVペプチドが、細菌中でMHCクラスI分子のscHLA−A2鎖と共に同時発現するか(独立したペプチドとして)、またはMHCクラスI分子のscHLA−A2鎖に融合することが認識されるであろう。そのような場合、発現した融合タンパク質およびペプチドは、単離され、MHCクラスI抗原性ペプチド複合体形成に利用される封入体を共に形成する。
【0076】
以下の実施例の節では、ここで述べられている発明の種々の側面のそれぞれについての特異的な実施例を提供する。これらの実施例は、いずれかの方法で限定するとみなされるべきではなく、本発明は、同じ、さらにはいくらか異なる方法で実施することができる。しかしながらこれらの実施例は、本発明の種々の変形例および実施形態をどのように実施するかについて、当該分野における通常の技術の1つを教示する。
【0077】
一般的に、ここで使用される用語および本発明において利用される実験的手法は分子的、生化学的、微生物学的、および組み換えのDNA技術を含む。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、その全てが本明細書中に援用される"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989); "Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994); Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989); Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988); Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York; Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998); methodologies as set forth in U.S. Pat. Nos. 4,666,828; 4,683,202; 4,801,531; 5,192,659 and 5,272,057; "Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994); "Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition; "Current Protocols in Immunology" Volumes I-III
Coligan J. E., ed. (1994); Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994); Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980); available immunoassays are extensively described in the patent and scientific literature, see, for example, U.S. Pat. Nos. 3,791,932; 3,839,153; 3,850,752; 3,850,578; 3,853,987; 3,867,517; 3,879,262; 3,901,654; 3,935,074; 3,984,533; 3,996,345; 4,034,074; 4,098,876; 4,879,219; 5,011,771 and 5,281,521; "Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984); "Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985); "Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984); "Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986); "Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986); "A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984) and "Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press; "PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990); Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996);を参照されたい。他の一般的な参考文献は、本明細書を通して提供される。ここにおける方法は、当該分野で周知であり、読者に便宜を提供すると考えられる。ここに含まれる全ての情報は、明細書中に援用される。
【0078】
実験の詳細
物質および方法:
化合物Aのクローニング
scHLA-A2/SS1 (scFv)は、短いリンカーASGG(配列番号4)を介してscHLA-A2のC末端とSS1 scFv のN末端とを結合することにより、上述したように構築された(15)。共有結合性に結合したMHC拘束ペプチドを有するscHLA−A2/SS1 (scFv)を構築するために、プライマー5’M1-5'GGAAGCGTTGGCGCATATGGGCATTCTGGGCTTCGTGTTTACC CTGGGCGGAGGAGGATCCGGTGGCGGAGGTTCAGGAGGCGGTGGATCGA TCCAGCGTACTCCAAAG3'(配列番号13)および3’VLscSS1-5'GCAGTAAGGAATTCTCATTATTTTATTTCCAACTTTGT3'(配列番号14)を用いたPCRオーバーラップ伸長反応により、ペプチドリンカーGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)を用いて、MHC拘束ペプチドをscHLA-A2/SS1 (scFv)分子のN末端に融合させた。5’M1プライマーにおいて、沈黙の突然変異がリンカー配列に挿入され、配列におけるこの変化は、BamH1拘束部位を作る。
【0079】
PCR産物は、TAクローニングベクター(pGEM-T Easy Vector, Promega(商標)Corporation, Madison, WI USA)に、続いてT7プロモーターに基づく発現ベクター(PRB)に、NdeIおよびEcoRI拘束部位を用いてサブクローン化された。
【0080】
化合物Aを産生するために、dsDNAプライマーとのライゲーションのための鋳型としてM1/scHLA−A2/SS1 (scFv) が使用された。M1/scHLA−A2/SS1 (scFv)(PRBプラスミド中)は、NdeIおよびBamHIを用いて消化され、プラスミド画分は、CMVペプチド配列およびリンカー配列の伸長を含むdsDNAプライマー5’CMVcovLL (カセット):5'TATGAACCTGGTGCCGATGGTCGCGACCGT TGGAGGTGGCGGTTCTGGCGGAGGAG-3'(配列番号15)および3’CMVcovLL(カセット):5'GATC CTCCTCCGCCAGAACCGCCACCTCCAACGGTCGCGACCATCGGCACCAGGTTCA3'(配列番号16)にライゲートした。プライマー(5’CMVcovLL (カセット)および3’CMVcovLL(カセット))のアニーリングは、95℃で2分間プライマーをインキュベートした後、室温で1時間インキュベートすることにより行われた。ライゲーション産物は、プラスミド増幅のために大腸菌DH5αに形質転換された。プラスミドはQIAGEN(登録商標)ミニプレップキット(Qiagen(登録商標), Inc., Valencia, CA USA)により精製され、サンプルは配列分析のためにセットされた。
【0081】
化合物Aの発現リフォールディングおよび精製
化合物Aは、封入体として大腸菌LB21(λDE3)細胞(Novagen(登録商標), Madison, WI USA)において発現された。化合物A構築物は、熱衝撃により大腸菌細胞に形質転換され、細胞はLBAMPプレート上に蒔かれ、37℃で一晩インキュベートされた。コロニーは、グルコース、MgSO4、AMPおよび塩を補充された富栄養培地(スーパーブロス)に移された。細胞は、37℃でDO=2(600nm)に培養され、IPTGを用いて誘発され(最終濃度1mM)、37℃でさらに3時間インキュベートされた。
【0082】
封入体は、0.2 mg/mlのリゾチームを用いた細胞分裂により細胞ペレットから精製され、続いてトリトン(登録商標)X-100(オクチルフェノールポリ[エチレングリコールエーテル], Roche Diagnostics GmbH, Roche Applied Science, Mannheim, Germany)および0.5M NaClを加えた。封入体のペレットは、遠心分離により回収され(13,000rpm、60分、 4℃)、20mM EDTAを含有する50mM Tris 緩衝液 pH 7.4で3回洗浄された。単離され、精製された封入体は、6M グアニジン HCl pH 7.4中で可溶化され、続いて65-mM DTE を用いて還元された。可溶化され、還元された封入体は、1:100希釈により、0.1-M Tris、0.001M EDTA、0.5-M アルギニン、および0.09-mM 酸化グルタチオンを含有する酸化還元−混合緩衝系pH 9にリフォールディングされ、10℃で24時間インキュベートされた。リフォールディングされた後、タンパク質は 150-mM Urea, 20-mM Tris, pH 8に対して透析され、続いて塩(NaCl)勾配を適用したQ-セファロース(登録商標)カラム (7.5mm I.D 60cm) (Sigma-Aldrich, Inc., St. Louis, MO USA)を用いて、イオン交換クロマトグラフィーにより可溶性の化合物Aを精製した。化合物Aを含有するピーク画分は、PBSを用いた緩衝液交換に供された。
【0083】
化合物Bのクローニング
scHLA-A2/SS1 (scFv)は、上述したように、短いリンカーASGG(配列番号15)を介して、scHLA-A2のC末端をSS1 scFv のN末端に結合させることにより構築された。共有結合性に結合したMHC拘束ペプチドを有するscHLA-A2/SS1 (scFv)を構築するために、MHC-拘束ペプチドおよびぺプチドリンカーGGGGSGGGGSGGGGS (配列番号8)を、プライマー5'-Nde-209B2M:5'GGAAGCGTTGGCGCATATGATCATGGACCAGGTTCCGTTCTCTGTTGGCGAGGAGGGTCCGGTGGCGGAGGTTCAGGAGGCGGTGGATCGATCCAGCGTACTCCAAAG3'(配列番号17)および3'VLscSS1-5'GCAGTAAGG AATTCTCAT TATTTTATTTCCAACTTTGT3'(配列番号18)を用いたPCRオーバーラップ伸長反応によりscHLA-A2/SS1(scFv)分子のN末端に融合させた。209cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)分子は、化合物Bの構築のための鋳型として使用された。この分子において、CMVペプチドNLVPMVATV (配列番号4)は、プライマー5'GGAAGCGTTGGCGCATATGGGCATTCTGGGCTTCGTGTTTACCCTGGGCGAGGAGGATCCGGTGGCGGAGGTTCAGGAGGCGGTGGATCGATCCAGCGTACTCCAAAG3'(配列番号17)およびthe3'VLscSS15'GCAGTAAGGAATTCTCATTATTTTAT TTCCAACTTTGT3'(配列番号18)を使用したPCR反応により、209cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)配列(209ペプチドを交換する)に導入された。
【0084】
化合物Bの発現および精製プロトコルは、化合物Aの発現および精製のプロトコルと同じであった。
化合物Bの生化学的および生物学的な性質を分析するために使用された全ての方法は、化合物Aの活性を分析するために使用される方法と同じである。
【0085】
M1-COV/scHLA-A2/SS1 (scFv)の構築
M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質を構築するために、MI 58-66ペプチドは、 5'M1-リンカープライマー:5'GGAAGCGTTGGCGCATATGGGCATTCTGGGCTTCGTGTTTACCCTGGGCGG AGGAGGATCCGGTGGCGGAGGTTCAGGAGGCGGTGGATCGATCCAGCGTACTCCAAAG3'(配列番号13) および3'VLscSS1- 5'GCAGTAAGGAATTCTCAT TATTTTATTTCCAACTTTGT3'(配列番号14)を用いたオーバーラッピングPCR反応により、短い15アミノ酸リンカーを介してscHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のN末端に融合した。PRBプラスミドは、scHLA-A2/SS1 (scFv)を含む鋳型として使用された。M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の発現および精製プロトコルは、化合物Aの発現および精製プロトコルと同じである。M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の生化学的および生物学的な性質を分析するために使用された全ての方法は、化合物Aの活性を分析するために使用される方法と同一である。
【0086】
フローサイトメトリー
細胞は化合物Aと共にインキュベートされ (60分、4℃、100μl中、10μg/ml)、洗浄され、抗-HLA-A2 MAb BB7.2と共にインキュベートされた (60分、4℃, 10μl/ml)。細胞は洗浄され、二次抗体として役立つ抗マウスFITCと共にインキュベートされた (60分、4℃、10μl/ml)。続いて細胞が洗浄され、FACSカリバ(caliber)フローサイトメーター(Becton-Dickinson, San Jose, CA USA)により分析された。
【0087】
酵素結合免疫吸着アッセイ
イムノプレート(Falcon(登録商標), Becton-Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ USA)は、10μg/mlの精製された細菌性に産生された組み換えメソセリンでコートされた(O/N、4℃)。プレートは、PBSを含有する2%スキムミルクでブロックされ、種々の濃度の化合物Aと共にインキュベートされ(60分, RT)、PBSで3回洗浄された。結合は、抗-HLA-コンフォメーション-依存抗体W6/32 (60分, RT, 1μg/ml)を用いて検出され、プレートはPBSを用いて3回洗浄され、抗マウスIgG-ペルオキシダーゼと共にインキュベートされた(60分, RT, 1μg/ml)。反応は、TMB (DAKO)を用いて進行され、50μl H2SO4 2Nの添加により終結された。抗メソセリン抗体(K1)は、ポジティブコントロールとして使用された。イムノプレートは、450nmフィルターを用いたELISAリーダーにより分析された(Anthos 2001(登録商標), Anthos Labtech, Salzburg, Austria)。
【0088】
細胞障害性分析
細胞障害性は、S35-メチオニン放出分析により測定された。標的細胞は、メチオニンを含まないRPMI 10% FCS中で、培養プレートにおいて2時間培養され、その後、15μCi/mlのS35メチオニン(NEN)と共に一晩インキュベートした。標的細胞がトリプシン処理により回収され、40ml RPMI 10% FCSで2回洗浄された。標的細胞は、RMPI+10% FCSを含む96ウェルプレートに蒔かれ (5×103 細胞/ウェル)、37℃, 5% CO2で一晩インキュベートされた。標的細胞は、異なる濃度の化合物A融合タンパク質と共に2時間インキュベートされ、エフェクターCTL細胞が異なる標的に加えられ:エフェクター比,プレートは、8〜12時間、37℃, 5% CO2でインキュベートされた。インキュベーションの後、標的細胞からのS35-メチオニン放出は、培養上清の25μlサンプルにおいて測定された。全ての試験は、3通り行われ、溶解は直接算出された: ([実験的な放出−自発的な放出]/[最大放出−自発的な放出])×100。自発的な放出は、エフェクター細胞非存在下における標的細胞からのS35メチオニン放出として測定され、最大放出は、0.05M NaOHにより溶解した標的細胞からのS35-メチオニン放出として測定された。
【0089】
細胞株
A431およびA431K5細胞(扁平上皮細胞癌)は、10% FCS、L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI培地中に維持された。A431K5細胞株はメソセリンを用いて安定に形質移入されたヒト扁平上皮細胞癌A431細胞であり、形質移入された細胞は、700μg/ml G418 (Gibco-BRL(登録商標), Invitrogen(商標) Inc., Carlsbad, CA USA)を用いて維持された。
【0090】
CMV pp65 エピトープ (NLVPMVATV)に対して特異性を有するCTL'sは、Dr Ditmar Zehn (Charitee, Berlin)により提供された。CTL'sは、健康なHLA-A2陽性ドナーからのペプチドパルスされ、放射された(4000rad) PBMC's と共にインキュベートされ、AIMV培地+8.9% FCS+50μM-2-メルカプトエタノール+ペニシリン/ストレプトマイシン1×105 U/L中に保持された。
【0091】
結果
化合物Aの構築
短いペプチドリンカー(15アミノ酸)を介してHLA−A2遺伝子のα1、α2およびα3に融合したβ2ミクログロブリン遺伝子で構成される単鎖MHC分子をコードする構築物は、メソセリンを標的とするscFV SS1に融合した(図1A)。この構築物は、その生化学的活性および生物学的活性について詳細に分析され、インビトロおよびインビボで機能的であることが見出された(15)。共有結合性に結合したペプチドを用いて融合タンパク質を構築するために、CMV pp65タンパク質に由来する9アミノ酸ペプチド (NLVPMVATV) (配列番号4)は、20アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS (配列番号6)を介してscHLA-A2/SS1(scFv)融合タンパク質のN末端に融合した(図1B)。化合物Aは、2つのステップで構築された:第1に、M1/scHLA-A2/SS1(scFv)と呼ばれる共有結合性の融合タンパク質がオーバーラップ伸長PCRにより構築された。この構築において、インフルエンザM158-66ペプチドGILGFVFTL (配列番号21)および15アミノ酸リンカーは、scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のN末端に融合した。この構築において、新規の独特な制限部位(BamHI)がサイレントミューテーションによりリンカーに挿入された。第2のステップにおいて、M1/scHLA-A2/SS1 (scFv)の全配列を含むPRBプラスミドは、NdeIおよびBamHI制限酵素を用いて消化された。この消化は、2つの断片を産生した。1つの断片は、ペプチドおよびリンカー配列の部分を含み、2つめの断片は、プラスミド、リンカーの部分およびscHLA-A2/SS1 (scFv)配列を含む。プラスミド、リンカーの部分およびscHLA-A2/SS1 (scFv)配列を含む断片は、リンカー配列の伸長およびCMV pp65ペプチド配列をコードするdsDNAプライマーにライゲートした(図1B)。新規のプラスミドは、大腸菌DH5α細胞に形質転換され、陽性のコロニーはDNAシークエンシングに送られた(図2)。
【0092】
化合物Aの発現および精製
化合物Aは、イソプロピルβ−D−チオガラクトシドを用いた誘発に基づいて、大腸菌BL21細胞中に発現し、多量の組み換えタンパク質が細胞内封入体中に蓄積した。単離され、精製された封入体のSDS/PAGE分析は、妥当な大きさの化合物Aは全封入体重量の80〜90%を構成することを明らかにした(図3A)。単離された可溶化封入体は、酸化還元混合緩衝液中で還元され、リフォールディングされた。単量体の可溶性融合タンパク質(化合物A)は、Q−セファロース(登録商標)におけるイオン交換クロマトグラフィーにより精製された。化合物AのSDS/PAGE分析は、72KDaの予想された大きさを有する高度に精製された単量体の分子を明らかにした(図3B)。
【0093】
化合物Aの生物学的活性
ELISA
精製された化合物Aのその標的抗原に対する結合能力を試験するために、組み換えメソセリンがイムノプレートに固定化された。化合物Aの結合性は、高次構造感受性のmAb W6/32を用いてモニターされ、この抗体は、その溝においてペプチドにより正しく折りたたまれたMHC分子を認識する。図4に示すように、化合物Aの組み換えメソセリンに対する結合性は用量依存性である。これは、化合物Aの2つの機能的なドメインであるscFv (SS1)ドメインおよびペプチド/scHLA-A2ドメインが正しく折りたたまれていることを示す。さらに、前記融合タンパク質のscFv (SS1)ドメインは、活性型であり、特異的にメソセリンに結合することができる。
【0094】
フローサイトメトリー分析(FACS)
化合物Aのメソセリン発現細胞株に対する結合能力を試験するために、FACS分析が行われた。モデルとして、HLA−A2陰性である標的細胞が使用され、抗-HLA-A2 mAbの反応性は、表面にメソセリンを発現する細胞に対する化合物Aの結合性を測定するために使用され得る。このメソセリン陽性、HLA-A2陰性の細胞のモデルは、腫瘍細胞がそのHLA発現を喪失する極端な場合を表す。それ故、FACS分析について、HLA-A2陰性A431K5細胞が使用され、それは、メソセリンで安定に形質移入されたヒト扁平上皮細胞癌A431細胞である。メソセリン陰性且つHLA-A2陰性である親のA431ヒト扁平上皮細胞癌細胞は、陰性対照として使用された。化合物Aの標的細胞に対する結合性は、一次抗体としての抗-HLA-A2 mAb BB7.2、続いてFITC標識された二次抗体を用いてモニターされた。メソセリン 抗-mAb K1は、メソセリンの発現レベルを試験するために使用された。図5Aに示すように、A431K5細胞は、高いレベルのメソセリンを発現する一方、親のA431細胞は標的抗原を発現しない。細胞株A431およびA431K5は、HLA-A2特異的抗体(BB7.2)を用いてHLA-A2の発現についても試験され、両方の細胞株はHLA-A2陰性であった。しかしながら、A431K5細胞が化合物Aと共にプレインキュベートされた場合、それらはHLA-A2特異的抗体BB7.2を用いて陽性に染色された(図5B)。抗原陰性A413細胞は、影響されなかった。化合物AがA431K5に対して特異的に結合し、A431細胞に対して結合しないことは、前記結合が融合のターゲッティングscFv ドメインとメソセリンとの相互作用にもっぱら依存しており、細胞表面に自然に発現した場合に、前記融合タンパク質がその標的抗原に結合できることを意味する。
【0095】
細胞障害性試験
化合物AがHLA-A2-拘束 CMV pp65 NLVPMVATV (配列番号4)特異的なCTLsによるHLA-A2陰性メソセリン陽性細胞の死滅を媒介する能力を試験するために、HLA-A2陰性メソセリン形質転換A431K5細胞およびHLA-A2-陰性メソセリン陰性A431親細胞を用いて、S35-メチオニン放出試験が行われた。CMV特異的CTLsの死滅能力を決定するために、MetS35で放射標識され、CMVペプチドNLVPMVATVが添加されたHLA-A2-陽性JY細胞を用いて、細胞障害性試験が行われた。CMV特異的なCTLsによるJY細胞の平均の特異的な死滅は、47%、10:1のE:T比であった(データは示さない)。図6aに示すように、化合物Aは、A431K5細胞(メソセリン-陽性 HLA-A2-陰性)の死滅を効果的に媒介した。ペプチド負荷されたJY細胞と比較して、特異的な死滅は66%に達した。それ故、融合タンパク質を用いた死滅は、最適な標的を提示するペプチドパルス(peptide pulsed)抗原提示細胞と比較してずっと効果的であった。しかしながら、標的A431K5細胞が化合物AとのプレインキュベーションなくCMV特異的CTLs単独とインキュベートされた場合または化合物Aとのプレインキュベーションありもしくはなしで標的細胞がA431メソセリン陰性細胞である場合、細胞障害活性は観察されなかった。次に、図6bに示すように、化合物Aの効力を測定するために滴定実験が行われ、メソセリン陽性A431K5細胞は、0.5〜1μg/mlのIC50で用量依存性であった。
【0096】
これらの結果は、メソセリン陽性 HLA-A2陰性のA431K5細胞の死滅が特異的であり、化合物Aの標的ドメイン(scFv/SS1)によるメソセリンの認識およびCMV CTLsのペプチド/scHLA-A2ドメインに対する特異性により制御されることを示す。
【0097】
化合物Bの生物学的活性
フローサイトメトリー分析(FACS)
化合物Bのメソセリン発現細胞株に対する結合能力を試験するために、フローサイトメトリー分析が行われた。モデルとしてHLA-A2陰性の標的細胞が使用され、抗HLA-A2 mAbの反応性は、化合物Bの細胞表面抗原に対する結合性を示す。A431K5細胞は、メソセリンが安定に形質移入されたヒト扁平上皮細胞癌A431細胞であり、HLA-A2陰性である。対照として、親のA431ヒト扁平上皮細胞癌細胞が使用され、メソセリン陰性且つHLA-A2陰性である。化合物Bの標的細胞に対する結合性は、一次抗体としての抗-HLA-A2 mAb BB7.2、続いてFITC標識された二次抗体によりモニターされた。メソセリンの発現レベルを試験するために、陽性対照として市販の抗メソセリン mAb K1が使用された。図10A-Bに示すように、A431K5細胞は高いレベルのメソセリンを発現する一方、親のA431細胞はメソセリンを発現しない。細胞株A431およびA431K5は、HLA-A2特異的抗体(BB7.2)を用いたHLA-A2の発現についても試験され、両方の細胞株はHLA-A2陰性であった。しかしながら、A431K5細胞を化合物Bと共にプレインキュベートした場合、それらはHLA-A2特異的抗体BB7.2で陽性に染色された一方、対照のA431細胞は染色されなかった(図10C-D)。A431K5細胞には特異的に結合するがA431細胞には結合しない化合物Bの結合性は、その結合が標的scFvドメインとメソセリンとの相互作用にもっぱら依存することを示す。
【0098】
化合物Aの融合と比較した化合物Bの結合性を分析するために、同じ条件および濃度で両分子を用いてFACS分析が行われた。図10E-Fに示すように、両方の融合タンパク質と共にプレインキュベーションした場合、メソセリン陽性細胞A431K5のみがHLA-A2特異的Abで陽性に染色されたが、化合物Aはよりよい結合性を示した。
【0099】
細胞障害性試験
化合物BがHLA-A2-拘束CMV NLVPMVATV (配列番号4)特異的CTLsによるHLA-A2陰性メソセリン陽性細胞の死滅を媒介する能力を試験するために、HLA-A2-陰性 メソセリン-形質転換A431K5細胞およびHLA-A2-陰性メソセリン-陰性A431親細胞を用いてS35-メチオニン放出試験が行われた。CMV-特異的CTLsの死滅ポテンシャルを測定するために、MetS35 で放射標識されCMVペプチドNLVPMVATVが負荷されたHLA-A2-陽性JY細胞を用いて細胞障害性試験が行われた。CMV-特異的CTLsによるJY細胞の平均の特異的な死滅は、10:1のE:T比を用いて約45〜50%であった(データは示されていない)。図11Aに示すように、化合物BはA431K5細胞(メソセリン-陽性 HLA-A2-陰性)の死滅を効果的に媒介し、この特異的な死滅は、ペプチド負荷されたJY細胞と比較して66%(JY細胞と比較して150%)であった。しかしながら、標的A431K5細胞が化合物BとのプレインキュベーションなくCMV-特異的CTLs単独とインキュベートされた場合または標的細胞が化合物Bとのプレインキュベーションありもしくはなしでメソセリン陰性である場合(A431細胞)、細胞障害活性は観察されなかった。融合タンパク質の能力を決定する滴定試験は、図11Bに示すように、メソセリン陽性A431K5細胞の死滅が用量依存性であることを示す。抗原性ペプチドがβ-2ミクログロブリンに共有結合性に結合するために使用されるペプチドの長さにおいて異なる化合物Bと化合物A融合タンパク質の細胞障害活性を比較するために、両方の融合タンパク質に対して同一の条件を使用して、S35-メチオニン放出試験が行われた。図12に示すように、両方の分子は、A431K5細胞の死滅を効果的且つ特異的に媒介したが、A431細胞については媒介しなかった。相対的に高濃度の融合タンパク質(化合物Bおよび化合物A)が使用された場合、両方の分子の死滅活性は同様であった。しかしながら、低濃度の融合タンパク質が使用された場合、おそらくより良い安定性およびより長いリンカーによるMHCペプチド結合溝におけるCNVペプチドの位置により、化合物Aの細胞障害活性は優れていた。
【0100】
M1-COV/scHLA-A2/SS1
M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質は、オーバーラップ伸長PCR反応により構築され、インフルエンザM1 58-66ペプチドおよび15アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSGGGGSはscHLA-A2/SS1(scFv)融合タンパク質のN末端に融合した(図13)。PCR産物は、TA-クローニングベクター(p-GEM, Promega)にライゲートされ、大腸菌DH5α細胞に形質転換された。陽性コロニーが選択され、挿入断片はEcoRIおよびNdeIを用いて単離された。前記挿入断片はPRB発現ベクターにライゲートされ、大腸菌DH5α細胞に形質転換された。陽性コロニーは、DNAシークエンシングに送られた(図14)。
【0101】
化合物Bの発現および精製
M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質は、イソプロピルβ-D-チオガラクトシドの導入に基づいて大腸菌BL21細胞において発現され、多量の組み換えタンパク質が細胞内封入体中に蓄積された。単離され、精製された封入体のSDS/PAGE分析は、妥当なサイズのM1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質が全封入体重量の80〜90%を構成することを明らかにした(図15A)。単離された可溶化封入体は還元され、酸化還元混合緩衝液中、インビトロでリフォールディングされた。単量体の可溶性融合タンパク質(M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv))は、Q-sheparose(登録商標)を用いたイオン交換クロマトグラフィーにより精製された。M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のSDS/PAGE分析は、72 KDaの望ましいサイズを有する高度に精製された単量体分子を明らかにした(図15B)。
【0102】
ELISA
精製されたM1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のその標的抗原に対する結合能力を試験するために、組み換えメソセリンがイムノプレートに固定化された。M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の結合性は、立体構造感受性mAb W6/32を用いてモニターされ、この抗体は、その溝においてペプチドと正確に重なるMHC分子を認識する。図16に示すように、M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の組み換えメソセリンに対する結合性は用量依存性である。これは、M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の2つの機能的なドメインであるscFv (SS1)ドメインおよびM1-cov/scHLA-A2ドメインが正確に折りたたまれることを示す。さらに、融合タンパク質のscFv (SS1)ドメインは活性形態であり、特異的にメソセリンに結合し得る。
【0103】
フローサイトメトリー分析(FACS)
M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質のメソセリン発現細胞株に対する結合能力を試験するために、FACS分析が使用された。モデルとしてHLA-A2陰性の標的細胞が使用され、M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の細胞表面抗原に対する結合性をモニターするために、抗HLA-A2 mAbが使用される。FACS分析のために、メソセリン形質転換A431K5細胞が使用された。M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質の標的細胞に対する結合性は、一次抗体としての抗HLA-A2 mAb BB7.2、続いてFITC標識された二次抗体によりモニターされた。メソセリンの発現レベルを試験するために、陽性対照として市販の抗メソセリン mAb K1が使用された。図17A-Bに示すように、A431K5細胞は高いレベルのメソセリンを発現する一方で、親のA431細胞はメソセリンを発現しない。細胞株A431およびA431K5は、HLA-A2特異的抗体(BB7.2)を用いてHLA-A2のそれらの発現についても試験され、両方の細胞株でHLA-A2陰性であった。しかしながら、A431K5細胞をM1-cov/scHLA-A2/SS1(scFv)融合タンパク質と共にプレインキュベートした場合、それらはHLA-A2-特異的抗体 BB7.2で陽性に染色された(図17C-D)。M1-cov/scHLA-A2/SS1(scFv)融合タンパク質がA431K5細胞に特異的に結合し、A431細胞には結合しないことは、この結合が標的ドメイン(scFv(SS1))とメソセリンとの相互作用にもっぱら依存することを示す。
【0104】
細胞障害性試験
M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質がHLA-A2-拘束 M158-66特異的CTLsによるHLA-A2-陰性 メソセリン-陽性細胞の死滅を媒介する能力を試験するために、HLA-A2-陰性 メソセリン形質転換A431K5細胞を使用したS35-メチオニン放出試験が行われた。図18に示すように、M1-cov/scHLA-A2/SS1 (scFv)融合タンパク質は、A431K5細胞(メソセリン陽性 HLA-A2-陰性)の溶解を媒介しなかった。しかしながら、溝にM158-66ペプチドを有するscHLA-A2/SS1(scFv)は、HLA-A2-拘束 M158-66特異的CTLsによるメソセリン陽性標的細胞の死滅を媒介した。
【0105】
考察
この研究は、共有結合性に結合したペプチド/scMHC/scFv融合タンパク質が腫瘍細胞を標的とする能力は、関連するHLA-A2-拘束CTLsにより溶解されやすいHLA-A2陰性細胞を与え得ることを示す。以前にLev et al., and Oved et al. (15,21)により示されたように、この方法は2つの主要な利点を有する。第1に、相対的に高い程度の特異性を有し、形質転換された表現型(例えば、成長因子受容体および/または分化抗原)を通常伴う腫瘍マーカーを発現する悪性細胞上に位置し得る組み換えAb断片の使用を利用する。第2に、この方法は、例えばウイルス特異的T細胞エピトープのような標的MHCペプチド複合体に存在する予め選択された高度に抗原性のペプチドエピトープに対して特異的な、高度な反応性の細胞障害性T細胞の特定の集合を補充することができる。このプラットフォームアプローチは、腫瘍、ウイルス、または細菌性T細胞エピトープに由来する単一の、予め選択された、高度に抗原性のペプチドを有するMHC-ペプチド複合体の多くの型を標的とする能力と組み合わせて、種々の腫瘍特異的抗原を標的とする多くの腫瘍特異的scFv断片を有する複数の分子を生じる。これらの例は、短いリンカー(20AA)により結合された9のアミノ酸ペプチドと以前に報告したscHLA-A2/scFv融合タンパク質(15AA)とを融合することにより1ステップ進んだ方法を表し、そうすることにより、融合タンパク質の一般的な安定性を延長するMHC溝においてペプチドを安定化する。融合タンパク質の新しい産生のためのモデルとして、本発明は、CMV pp65由来(NLVPMVATV)がscHLA-A2/SS1 (scFv)分子のN末端に融合した融合タンパク質の構築ならびにその生化学的および生物学的特徴に関する。新規の融合タンパク質の2つのドメインがインビトロでリフォールディングされ、HLA-A2溝内にペプチドを有する正確に折りたたまれた分子およびその標的抗原に特異的に結合することができる活性標的ドメイン(scFv)を形成することが示されている。さらに、この融合タンパク質は、HLA-A2-拘束CTLsによるHLA-A2-陰性メソセリン-陽性腫瘍細胞の溶解を首尾よく媒介した。
【0106】
腫瘍の発達は、免疫抑制因子の分泌および/またはMHCクラスI抗原提示機能の下方制御をしばしば伴う(2)。特異的なCTL反応が患者において示された場合でさえ、抗腫瘍CTL集合が珍しく、非常にまれであるため、この反応は低く、CTLが機能的でないかアネルギー性である場合がある(26)。さらに、特定の腫瘍に付随するペプチドを提示する腫瘍細胞の表面におけるMHC-ペプチド複合体の数が低いことはよく確立されている(27)。ここで示すように、新規の方法はこれらの問題を克服した。第1に、腫瘍細胞は、それらの内在性のMHC発現から独立したMHCペプチド複合体でコートされている。第2に、通常腫瘍表現型(例えば成長因子受容体および分化抗原)の一部である腫瘍特異的抗原の使用は、これらの下方制御を妨げ、治療の効果を延長する。第3に、最も重要なことには、融合タンパク質のエフェクタードメインであるMHC-ペプチド複合体は、MHC溝を有するペプチドに依存してCTLの特異的集合を補充し得る。
【0107】
明確に、それぞれの実施形態と関連して記載されている本発明のある一定の特徴は、単一の実施形態を組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔に、単一の実施形態と関連して記載されている本発明の種々の特徴は、別々に、またはいずれかの適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【0108】
本発明は、その特定の実施形態と組み合わせて記載されているが、多くの代替、修飾および変形が当業者には自明であることが明らかである。従って、そのような全ての代替、修飾および変形が、特許請求の範囲の精神および広範な範囲に包含されることが意図される。本明細書中で言及される全ての出版物、特許および特許出願は、それぞれ個々の出版物、特許または特許出願が本明細書中に援用されることが特異的且つ個々に示された場合と同じ範囲で、その全体が本明細書中に援用される。加えて、本明細書中の参考文献の引用または解釈は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用できることの承認として解釈されるべきでない。
【0109】
〔参考文献〕
1. Gilboa,E. How tumors escape immune destruction and what we can do about it. Cancer Immunol. Immunother. 48, 382-385 (1999).
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質のアミノ酸末端から開始し、(i)サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチド、(ii)第1のペプチドリンカー、(iii)ヒトβ−2ミクログロブリン、(iv)第2のペプチドリンカー、(v)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(vi)第3のペプチドリンカー、(vii)抗体のscFv断片の重鎖に由来する可変領域、(viii)そのようなscFv断片の軽鎖に由来する可変領域に存在する連続するアミノ酸に対応する連続するアミノ酸を含んでなる融合タンパク質であって、前記(vii)および(viii)に対応する連続するアミノ酸は、ペプチド結合により、または第4のペプチドリンカーに対応する連続するアミノ酸により直接的に共に結合され、前記scFv断片は、メソセリンに特異的に結合する抗体に由来する融合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質であって、前記第1のペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)を有する融合タンパク質。
【請求項3】
請求項1に記載の融合タンパク質であって、前記第2のペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)を有する融合タンパク質。
【請求項4】
請求項1に記載の融合タンパク質であって、前記第3のペプチドリンカーは、アミノ酸配列ASGG(配列番号10)を有する融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1に記載の融合タンパク質であって、前記第4のペプチドリンカーは、アミノ酸配列GVGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)を有する融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1に記載の融合タンパク質であって、前記サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチドは、アミノ酸配列NLVPMVATV(配列番号4)を有する融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1に記載の融合タンパク質であって、前記(vii)に対応する連続するアミノ酸、それに続く第4のペプチドリンカー、それに続く(viii)の配列は配列番号12である融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1に記載の融合タンパク質であって、前記連続するアミノ酸は、配列番号2で示されたアミノ酸配列を有する融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の融合タンパク質およびキャリアを含んでなる組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、前記融合タンパク質は治療的に有効な量で組成物中に存在し、前記キャリアは薬学的に許容可能なキャリアである組成物。
【請求項11】
タンパク質のアミノ酸末端から開始し、(i)サイトメガロウイルスヒトMHC拘束ペプチド、(ii)第1のペプチドリンカー、(iii)ヒトβ−2ミクログロブリン、(iv)第2のペプチドリンカー、(v)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(vi)第3のペプチドリンカー、(vii)抗体のscFv断片の重鎖に由来する可変領域、(viii)そのようなscFv断片の軽鎖に由来する可変領域に存在する連続するアミノ酸に対応する連続するアミノ酸を含んでなる融合タンパク質をコードする核酸構築物であって、前記(vii)および(viii)に対応する連続するアミノ酸は、ペプチド結合により、または第4のペプチドリンカーに対応する連続するアミノ酸により直接的に共に結合され、前記scFv断片は、メソセリンに特異的に結合する抗体に由来する核酸構築物。
【請求項12】
配列番号1に示す核酸配列を有する請求項11に記載の核酸構築物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の核酸構築物を含んでなるベクター。
【請求項14】
請求項11または12に記載の核酸構築物およびそれらに動作可能に結合したプロモーターを含んでなる発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含んでなる形質転換細胞。
【請求項16】
請求項15に記載の形質転換細胞であって、前記細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞および原生動物細胞からなる群より選択される真核細胞である形質転換細胞。
【請求項17】
請求項15に記載の形質転換細胞であって、前記細胞は細菌性の細胞である形質転換細胞。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の融合タンパク質を30重量%以上含んでなる、細菌性に発現した封入体の単離物。
【請求項19】
請求項15または16に記載の形質転換細胞を培養し、融合タンパク質を発現させ、前記発現した融合細胞を回収することを含んでなる融合タンパク質の製造方法。
【請求項20】
請求項17に記載の形質転換細胞を培養し、融合タンパク質を発現させ、前記発現した融合タンパク質を回収することを含んでなる融合タンパク質の製造方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載の方法であって、前記融合タンパク質の回収は、発現した融合タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィーに供することを含んでなる方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、前記融合タンパク質は封入体中に発現する方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記封入体を処理し、融合タンパク質を分離およびリフォールディングし、生物学的に活性な形態で融合タンパク質を産生することをさらに含んでなる方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記融合タンパク質を分離するための封入体の処理は、前記封入体を変性剤と接触させることを含んでなる方法。
【請求項25】
腫瘍細胞を選択的に死滅させる方法であって、前記細胞を有効量の請求項1〜8のいずれか1項に記載の融合タンパク質と接触させ、腫瘍細胞に対するCTLに媒介される免疫反応を惹起し、腫瘍細胞を死滅させることを含んでなる方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記腫瘍細胞は患者内にあり、前記接触は前記融合タンパク質を患者に投与することにより行われる方法。
【請求項27】
表面にメソセリンを発現する腫瘍細胞の治療方法であって、前記腫瘍細胞を有効量の請求項1〜8のいずれか1項に記載の融合タンパク質と接触させ、腫瘍細胞に対するCTLに媒介される免疫反応を惹起し、それにより腫瘍細胞を治療することを含んでなる方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記腫瘍細胞は固体の腫瘍中に存在する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記固体の腫瘍は、卵巣、肺、膵臓もしくは頭/頸の癌、または中皮腫に関連する腫瘍である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−537175(P2009−537175A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512056(P2009−512056)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/011953
【国際公開番号】WO2007/136778
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【出願人】(399042535)テクニオン・リサーチ・アンド・ディベロップメント・ファウンデーション・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】