説明

融着接続点収納トレイ、及びこれを備えた光クロージャ

【課題】主ケーブルから取り出した光ファイバ心線と、引落し光ケーブルから取り出した光ファイバ心線とを融着接続する際の作業性を改善する。
【解決手段】主ケーブルから取り出した光ファイバ1aと引落し光ケーブル2から取り出した光ファイバ2aとの融着接続点3を収納する融着接続点収納トレイ14であって、底部14aとこの底部14aの蓋体側に設けられた側壁14bとを有しクロージャ長手方向に延びるトレイ本体14’の前記蓋体側の側壁14bの外面に、前記引落し光ケーブル2を仮固定するためのケーブル仮固定部15を設けた構成である。融着接続作業は、引落し光ケーブル2をケーブル仮固定部15に仮固定した状態で行う。引落し光ケーブル2の、剛性がありかつ湾曲状態にあって姿勢・位置のコントロールがしにくいという問題は解消され、融着接続の作業性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光クロージャ内に設けられる融着接続点収納トレイ、及びこれを備えた光クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信線路に設けられる架空光クロージャとして、図6、図7に示すように、光クロージャ5内に導入された主ケーブル1から取り出した光ファイバ心線1a(1a’)と、光クロージャ5から引き落とされる例えば片端コネクタ付き光ケーブル2(2’)の光ファイバ心線2a(2a’)との融着接続点3、3’を収納する融着接続部収納トレイ4を備えた小形の光クロージャがある。
光クロージャ5は、クロージャ本体6とこのクロージャ本体6に開閉可能に被せられる蓋体7とで筒状をなしている。8は光ファイバ心線の取り出しをしない主ケーブルすなわち通過ケーブル、9は防水把持具である。
光クロージャが小形で主ケーブルから取り出す必要のある光ファイバ心線数が少ない場合、したがって、トレイに収納すべき融着接続点の数が少ない場合、トレイも小形なものを用いる。
従来、このような場合のトレイとして、光ファイバ心線の余長を伴わずに融着接続点を収納する構造のトレイ、例えば簡略化して示した図示の融着接続部収納トレイ4のように、樹脂製で、底部4aと両側の側壁4b、4cとでコ字形断面をなす細長い溝形トレイを用いる場合がある。この小形の溝形トレイ4は前記クロージャ本体6の内壁6aに取り付けられる。4dは融着接続部保持部である。
【0003】
ところで、上記のような小形の細長い溝形トレイ4とは異なるが、光ファイバ心線を仮固定できるという機能の点で本願発明と共通するものとして、特許文献1のファイバ保持具がある。
この特許文献1のファイバ保持具は、光ファイバ心線を挟持するプラスチック製挟持部の下面にプラスチック磁石からなる取付部を持つ構造であり、鋼板製の接続箱の広い平坦な内面の適宜の箇所に取付部を吸着させて用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−20004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のコ字形断面の細長い溝形トレイ4を持つ光クロージャ5において、主ケーブル1から取り出した光ファイバ心線1aとコネクタ付き光ケーブル2の光ファイバ心線2aとを融着接続する場合、図7(イ)に実線で示すように、トレイ4の外側(クロージャ本体6の内壁6aと反対側)で融着接続機により融着接続するが、光ケーブル2は剛性がありかつ湾曲状態にあるので、融着接続する際に光ケーブル2の姿勢・位置のコントロールがしにくく、作業性が悪いという問題がある。
なお、特許文献1のようなファイバ保持具は、このような細長い溝形トレイ4には使用できない。
【0006】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、光クロージャに導入されたの主ケーブルから取り出した光ファイバ心線と、光クロージャから引き落される光ケーブルの光ファイバ心線とを融着接続する際の融着接続作業のしにくさを改善できる融着接続部収納トレイ、及び光クロージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1の発明は、クロージャ本体と蓋体とで筒状体をなす光クロージャの前記クロージャ本体に取り付けられて、光クロージャ内に導入された主ケーブルから取り出した光ファイバと光クロージャから引き落される引落し光ケーブルから取り出した光ファイバとの融着接続点を収納する融着接続点収納トレイであって、
底部とこの底部の蓋体側に設けられた側壁とを有しクロージャ長手方向に延びるトレイ本体の前記側壁の外面に、前記引落し光ケーブルを仮固定するためのケーブル仮固定部を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1の融着接続部収納トレイにおいて、ケーブル仮固定部として、トレイ本体の側壁外面とで上向き開口の溝形を形成するL形突出部を側壁外面にトレイ長手方向に間隔をあけて複数設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2の融着接続部収納トレイにおいて、トレイ本体が、クロージャ本体の内壁にヒンジを介して取り付けられて、蓋体側に倒すことが可能にされていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の光クロージャは、請求項1又は2の融着接続点収納トレイを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5は、請求項4の光クロージャにおいて、自身の内部空間自体が前記引落し光ケーブルの余長空間とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トレイの外側で主ケーブル側の光ファイバと引落し光ケーブルの光ファイバとを融着接続する際に、引落し光ケーブルをトレイの側壁外面のケーブル仮固定部に仮固定した状態で、融着接続作業を行うことができる。
したがって、引落し光ケーブルの、剛性がありかつ湾曲状態にあって姿勢・位置のコントロールがしにくいという問題は解消され、融着接続の作業性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例の融着接続部収納トレイを備えた光クロージャを示すもので、(イ)は蓋体を外した状態の光クロージャの正面図、(ロ)は(イ)のA−A矢視図である。
【図2】(イ)は図1における融着接続部収納トレイの部分についてのB−B断面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図である。
【図3】上記融着接続部収納トレイの詳細構造を示すもので、融着接続部収納トレイの斜視図である。
【図4】(イ)は図3の融着接続部収納トレイの平面図、(ロ)は同正面図である。
【図5】図4(イ)のD−D断面図である(但し、図4(イ)の左方部分の図示を省略)。
【図6】従来の融着接続部収納トレイを備えた光クロージャを示すもので、(イ)は蓋体を外した状態の光クロージャの正面図、(ロ)は(イ)のE−E矢視図である。
【図7】(イ)は図6における融着接続部収納トレイの部分についてのF−F断面図、(ロ)は(イ)のG−G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した融着接続部収納トレイ及び光クロージャについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の一実施例の融着接続部収納トレイ14を備えた光クロージャ5を示すもので、(イ)は蓋体を外した状態の光クロージャの正面図、(ロ)は(イ)のA−A矢視図である。図2(イ)は図1における融着接続部収納トレイ14の部分についてのB−B断面図(但し、融着接続作業時の状態で示す)、(ロ)は(イ)のC−C断面図である。
この光クロージャ5は、光通信線路に設けられる架空光クロージャであり、光クロージャ5内に導入された主ケーブル1から取り出した光ファイバ心線1a(1a’)と、光クロージャ5から引き落とされる片端コネクタ付き光ケーブル2(2’)の光ファイバ心線2a(2a’)との融着接続点3、3’を収納する本発明の一実施例の融着接続部収納トレイ14を備えた小形の光クロージャである。
光クロージャ5は、クロージャ本体6とこのクロージャ本体6に開閉可能に被せられる蓋体7とで筒状をなしている。8は光ファイバ心線の取り出しをしない主ケーブルすなわち通過ケーブル、9は防水把持具である。
前記の各片端コネクタ付き光ケーブル2、2’は例えば、2心のターミネーション型光ケーブル20を分離させた1.5mmφの光ファイバコードである。
なお、光クロージャから引き落とされる光ケーブルは、必ずしも片端コネクタ付き光ケーブルでなくてもよい(コネクタ等がついていない単なる光ケーブルでもよい)。
また、実施例では光ケーブル20から分離させる光ファイバが、光ファイバ心線の周りに抗張力繊維を配置し外被で被覆した光ファイバコードであるが、光ケーブルから分離させる光ファイバはコードに限らず、光ファイバ心線でもよい。光ファイバ心線と比べて剛性の高いコードの場合に、融着接続の作業性が改善される効果がより顕著であるが、光ファイバ心線の場合でも、仮固定することで、フリーの状態の場合と比べて融着接続作業の際の姿勢・位置のコントロールが容易になり、作業性が改善される。
【0016】
この実施例の融着接続部収納トレイ14は、樹脂製であり、融着接続部保持部14dを有する底部14aと両側の側壁14b、14cとでコ字形断面をなす細長い溝形トレイである点は、従来の融着接続部収納トレイ4と同様であるが、本発明では、トレイ本体14’のクロージャ蓋体側の側壁14bの外面に、前記引落し光ケーブル2を仮固定するためのケーブル仮固定部15を設けている。トレイ本体14’とは、トレイ14のケーブル仮固定部15を除いた部分を指す。
前記ケーブル仮固定部15は、トレイ本体の側壁14bの外面とで上向き開口の溝15bを形成するL形突出部15aを側壁14bの外面に樹脂一体成形して設けており、図示例ではトレイ長手方向に間隔をあけて4箇所設けている。L形突出部15aと側壁14bとで形成される上向き開口の溝15bは、光ケーブル2の径より幅を僅かに狭くしており、光ケーブル2をみだりに動かないように嵌合保持できる。
また、実施例の融着接続部収納トレイ14は、図2(ロ)に示すように、クロージャ本体6の内壁6a側(クロージャ蓋体7と反対側)の側壁14cがクロージャ本体6の内壁6aにヒンジ16を介して取り付けられており、融着接続作業時に、図2(ハ)のように蓋体7側に倒すことが可能にされている。なお、ヒンジ16で回動可能なトレイ14の姿勢保持手段は適宜の手段を採用できるが、詳細説明及び図示は省略する。
【0017】
上記の光クロージャ5において、主ケーブル1から取り出した光ファイバ心線1aとコネクタ付き光ケーブル2の光ファイバ心線2aとを融着接続する場合の作業を説明すると、図2(イ)に実線で示すように、トレイ4の外側(クロージャ本体6の内壁6aと反対側)で融着接続機により融着接続するが、その際、光ケーブル2の被覆端部2bの近傍をL形突出部15aで形成された溝15bに嵌合させて仮固定した上で、融着接続の作業を行う。
例えば1.5mmφの光ファイバコードである光ケーブル2は剛性があり、かつ接続作業時には湾曲状態にあるので、光ケーブル2をフリーのままにしていては、融着接続する際に光ケーブル2の姿勢・位置のコントロールがしにくいが、上記の通り光ケーブル2がケーブル仮固定部15で保持されることで、そのような問題が解消され、融着接続作業の作業性が良好になる。
なお、融着接続作業時には、図2(ハ)のように、トレイ14を蓋体7側に倒した状態とするが、ケーブル仮固定部15を設けたことと相俟って、作業性が良好である。
融着接続を完了した後、図2(イ)に2点鎖線で示すように、光ファイバ心線2aを光ケーブル2の被覆端部近傍とともにトレイ14内に収容し、融着接続点を補強部材で補強した融着接続部3を1対の保持リブからなる融着接続部保持部14dに嵌合させて保持する。
【実施例2】
【0018】
図1、図2では融着接続部収納トレイ14を簡略化して示したが、図3〜図5に実施例の融着接続部収納トレイ14の詳細構造を示す。
トレイ14の両端部に、光ケーブル2を導入するケーブル導入部14eと光ファイバ心線導入部14fとを有する。ケーブル仮固定部15を形成するL形突出部15aは4つ設けている。
また、図示例の融着接続部保持部14dは、細くかつ長い融着接続部を保持する場合と、太くかつ短い融着接続部を保持する場合との両方に対応可能な構造であり、長い保持リブ14daと短い保持リブ14dbとの一対の保持リブからなる。14gは光ファイバ心線の飛び出しを防ぐ突片である。14hはクロージャ本体6の内壁6aに固定したブラケット6bに取り付けられるヒンジ軸である。
【実施例3】
【0019】
上述の実施例では、ケーブル仮固定部15として、L形突出部15aをトレイ本体の側壁14bの外面に樹脂一体成形して構成したが、突出部の形状は必ずしもL形に限定されない。
また、実施例では、トレイ本体14’の蓋体側の側壁14bをケーブル仮固定部15の一部として利用しているが、ケーブル仮固定部を、トレイ本体14’の側壁14bとは別に構成することもできる。その場合、底部とその両側の側壁とからなる独立した概ね溝形断面のケーブル仮固定部をトレイ本体14’と一体に形成してもよいし、また、別部材を取り付けて構成してもよい。
また、融着接続部収納トレイ14は、ヒンジ16(ヒンジ軸14h)を介してクロージャ本体6の内壁6aに取り付けて、前に倒せる構成としたが、クロージャ本体6に単に固定したものでもよい。融着接続部保持部14dの構成は適宜設計変更できる。
また、実施例の融着接続部収納トレイ14のトレイ本体14’は、底部14aとその両側の側壁14b、14cとを有する構造であるが、クロージャ本体6の内壁6aと一体に形成されて内壁6aがトレイ本体の一方の壁部を兼ねている構造(内壁6a側の側壁14cがない断面形状)であってもよい。
実施例は架空光クロージャとして説明したが、必ずしも架空用に限定されない。
【符号の説明】
【0020】
1 主ケーブル
1a、1a’ 光ファイバ心線
2、2’ 引落しケーブル
2a、2a’ 光ファイバ心線
3、3’ 融着接続点(融着接続部)
5 光クロージャ
6 クロージャ本体
6a 内壁
6b ブラケット
7 蓋体
14 融着接続部収納トレイ
14’ トレイ本体
14a 底部
14b (蓋体側の)側壁
14c (蓋体と反対側の)側壁
14d 融着接続部保持部
15 ケーブル仮固定部
15a L形突出部
15b 溝
16 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロージャ本体と蓋体とで筒状体をなす光クロージャの前記クロージャ本体に取り付けられて、光クロージャ内に導入された主ケーブルから取り出した光ファイバと光クロージャから引き落される引落し光ケーブルから取り出した光ファイバとの融着接続点を収納する融着接続点収納トレイであって、
底部とこの底部の蓋体側に設けられた側壁とを有しクロージャ長手方向に延びるトレイ本体の前記側壁の外面に、前記引落し光ケーブルを仮固定するためのケーブル仮固定部を設けたことを特徴とする融着接続点収納トレイ。
【請求項2】
前記ケーブル仮固定部として、トレイ本体の側壁外面とで上向き開口の溝形を形成するL形突出部を側壁外面にトレイ長手方向に間隔をあけて複数設けたことを特徴とする請求項1記載の融着接続点収納トレイ。
【請求項3】
前記トレイ本体が、クロージャ本体の内壁にヒンジを介して取り付けられて、蓋体側に倒すことが可能にされていることを特徴とする請求項1記載の融着接続点収納トレイ。
【請求項4】
請求項1又は2の融着接続点収納トレイを備えたことを特徴とする光クロージャ。
【請求項5】
自身の内部空間自体が前記引落し光ケーブルの余長空間とされていることを特徴とする請求項4に記載の光クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−232491(P2011−232491A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101876(P2010−101876)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】