説明

融雪剤リサイクルシステム

【課題】純度の高い水を回収して地下水に戻しかつ融雪剤を含む溶解水を排水することなく再利用し得る融雪剤リサイクルシステムを提供する。
【解決手段】融雪剤を含有する融雪水と、この融雪水より相対的に温度の高い地下水等の温水との間で熱交換を行わせる熱交換器4と、前記熱交換器4を通った前記融雪水を、透過水と、この透過水に対して相対的に前記融雪剤の含有量が高い融雪配合水に分離する逆浸透膜8と、を備える融雪剤リサイクルシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪剤を含む溶解水の融雪剤の再利用に適したリサイクル技術に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地域で生活していく中で、除雪、屋根雪下ろしの作業は必要不可欠である。このような降雪地域において円滑な日常生活を維持するために、例えば道路等については除雪機による除雪、融雪剤の散布、地下水の散布などが行われる。また、民家等の屋根雪については、人手あるいは装置による雪下ろし作業が行われる。
【0003】
ところで、道路等に散布された融雪剤は、そのまま垂れ流しされることから、田畑や河川などに影響を及ぼすおそれがあった。また、屋根雪下ろしの作業については、人件費、時間、経費がかかり、特に高齢者には負担が大きかった。そこで、融雪剤を含んだ溶解水を再利用することにより、田畑等への影響を回避し、あるいは屋根雪の除雪を行うことが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−346666号公報
【特許文献2】特開2003−105314号公報
【特許文献3】特開2003−039091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、純度の高い水を回収し、かつ融雪剤を含む溶解水を排水することなく再利用し得る融雪剤リサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の融雪剤リサイクルシステム(融雪剤リサイクル装置)は、(a)融雪剤を含有する融雪水と、この融雪水より相対的に温度の高い温水(例えば地下水等)との間で熱交換を行わせる熱交換器と、(b)熱交換器を通った融雪水を、透過水と、この透過水に対して相対的に融雪剤の含有量が高い融雪配合水に分離する逆浸透膜と、を備える。
【0007】
かかる構成によれば、比較的に温度の高い(例えば13℃〜17℃程度)地下水等の温水の有する熱エネルギーを利用して融雪水の温度を上昇させ、その融雪水が逆浸透膜に導入され、透過水と融雪配合水に分離される。このとき、融雪水が凝固点降下している事があるが、その場合でも地下水等の温水を通水する事により、融雪水の温度を上昇させることができる。それにより、逆浸透膜内において融雪水から抽出される純度の高い水分からなる透過水を凍結させずに容易に取り出すことが可能となる。従って、逆透過膜の破損を回避できる。回収された透過水(純度の高い水)については、河川等へ戻しても自然界へ悪影響を与えることがない。また、得られた融雪配合水(溶解水)については、例えば高速道路、生活道路、民家の屋根、ビルの屋上等へ散布する等の再利用が可能となる。さらに、熱エネルギーを利用した後の地下水については、地下へ戻せば再利用できるので、地盤沈下等の影響は無いに等しい。また、逆浸透膜の透過水に対して環境問題をクリアできる様な液体(加温)、熱風、電熱ヒーターを利用する事により最小限のエネルギーで稼働できる。
【0008】
上記の融雪剤リサイクルシステムは、逆浸透膜によって分離された融雪配合水を熱交換器へ戻す循環系統を更に備えることも好ましい。
【0009】
それにより、融雪配合水の濃度が低い場合には、熱交換器を経て水温上昇をさせた後に逆浸透膜へ導入することにより、再度、透過水と融雪配合水に分離することができる。
【0010】
また、上記の融雪剤リサイクルシステムは、地下水の一部を逆浸透膜の透過水へ直接的に導入する配管系統を更に備えることも好ましい。
【0011】
それにより、透過水に地下水を合流させて、透過水の水温を上昇させることができるので、透過水の水温が低い場合にも逆浸透膜の破損を防止することができる。
【0012】
また、上記の融雪剤リサイクルシステムは、配管系統の途中に設けられ、地下水の一部を加熱する加熱手段を更に備えることも好ましい。
【0013】
それにより、透過水に合流させるべき地下水の水温をより上昇させることができるので、極寒の地域等においても逆浸透膜の凍結による破損を確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態の融雪剤リサイクルシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の融雪剤リサイクルシステムの構成を示す図である。図1に示す融雪剤リサイクルシステム1は、濾過フィルター2、逆止弁(チャッキー弁)3、熱交換器4、融雪剤配合水槽の保温コイル5、処理受水貯槽の保温コイル6、開閉バルブ7、逆浸透膜(逆浸透膜モジュール)8、処理受水貯槽9、逆止弁(チャッキー弁)10、ストレーナー11、開閉バルブ12、高圧ポンプ13、プレーフィルター14、融雪配合水槽15、高圧ポンプ16、開閉バルブ17、開閉バルブ18、熱交換器19を含んで構成されている。本実施形態の融雪剤リサイクルシステム1は、我が国における地下水の有する熱エネルギー(平均水温13℃〜17℃程度)を活用することにより、純度の高い水を回収し、かつ融雪剤を含有する融雪配合水(溶解水)を排水することなく再利用することを可能とするものである。以下、詳細に説明する。
【0016】
ポンプ等の取水手段を用いて所定場所から取水された地下水(地熱水)は、濾過フィルター2、逆止弁(チャッキー弁)3を経て2つに分岐される。分岐された一方の地下水は、螺旋状やU字状等に構成された熱交換器4を通過し、融雪剤配合水槽15の保温コイル5および処理受水貯槽9の保温コイル6を経て、地下へ戻される(再び地下水となる)。また、分岐された他方の地下水は、熱交換器19、開閉バルブ7およびこれらをつなぐ配管からなる配管系統を経て、適宜、逆浸透膜8の透過水に導入される。
【0017】
融雪剤を含有する融雪水は、処理受水貯槽9に集水され、ゴミなどを沈殿濾過させつつ消雪される。このとき、地下水の有する熱エネルギーが保温コイル6を介して処理受水貯槽9内の融雪水に伝達され、消雪に利用される。
【0018】
処理受水貯槽9に集水された融雪水は、逆止弁(チャッキー弁)10、ストレーナー11、開閉バルブ12を経て、高圧ポンプ13によって熱交換器4へ送り込まれる。プレーフィルター14を経て熱交換器4に送り込まれた融雪水には、この熱交換器4により、上記の地下水の有する熱エネルギーが与えられる。それにより、元々は低温であった融雪水の水温が上昇する。すなわち、融雪水とこれより相対的に温度の高い地下水との間で熱交換が行われる。
【0019】
熱交換器4によって水温が上昇した融雪水は逆浸透膜8に導入される。本実施形態における逆浸透膜8は、塩分高分離型の逆浸透膜である。この逆浸透膜8を通すことにより、融雪水は、融雪配合水と透過水とに分けられる。融雪水の水温が氷点下以下であるような場合にはこのような融雪配合水と透過水への分離が難しくなるが、本実施形態では、地下水の熱エネルギーを利用して熱交換器4によって融雪水の水温を上昇させているため、そのような不都合が解消される。
【0020】
また、透過水の水温が低く透過水が凍結してしまうような場合には、適宜上記した開閉バルブ7を開けて地下水を逆浸透膜8に導入する。それにより、地下水を透過水に合流させて透過水の水温を上昇させることができるので、逆浸透膜8の破損を防止することができる。
【0021】
逆浸透膜8を用いて得られた透過水は、その純度(EC計等で測定)に問題がなければ地下水として戻され、または生活水として利用される。なお、透過水の純度に問題がある場合には、図示のようにさらに多段の逆浸透膜を用いた場合、透過水をその逆浸透膜の原水入口に接続し、透過水と融雪配合水に分離してもよい。
【0022】
また、逆浸透膜8を用いて得られた融雪配合水は融雪剤配合水槽15に収容される。この融雪配合水は、比重検知フロートスイッチ型等のセンサー(図示せず)を用いて濃度が確認され、その濃淡に応じて以下の処理がなされる。
【0023】
融雪配合水の濃度が低い場合(薄い場合)には、処理受水貯槽9側の開閉バルブ12が自動的に閉じられ、開閉バルブ17が開けられ、かつ開閉バルブ18が閉じられる。そして、高圧ポンプ16により融雪剤配合水槽15から融雪配合水が送水され、この融雪配合水が高圧ポンプ13により熱交換器4に再度導入される。すなわち、高圧ポンプ16、13、開閉バルブ17、プレーフィルター14およびこれらの間をつなぐ配管からなる循環系統を通じて、融雪配合水が熱交換器4に戻される。熱交換器4を通過した融雪配合水は逆浸透膜8へ導入され、再度、透過水と融雪配合水に分離される。それにより、融雪剤配合水槽15に貯蔵される融雪配合水の濃度を高めることができる。
【0024】
融雪配合水の濃度が高い場合には、開閉バルブ17が閉じられ、かつ開閉バルブ18が開けられる。それにより、融雪剤配合水槽15に貯蔵されていた融雪配合水が消融雪剤水として活用される。融雪配合水の濃度については、融雪剤配合水槽15から逆浸透膜8へ融雪配合水を循環させる回数を適宜設定することによりコントロールできる。従って、常に地域に適した安定した濃度を維持できる。
【0025】
また、極寒の地域、地下水供給不足の地域等の場合には、上記した熱交換器19および熱交換器4の系統に、他のエネルギー源(電気、灯油、ガス等)による熱エネルギーを地下水に与えることにより、逆浸透膜8に水温の高い水を通水できる。それにより、逆浸透膜8の破損を回避でき、他のエネルギー源のコストが抑えられる。
【0026】
なお、本発明は上記した実施形態にのみ限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、温水としての地下水を利用できない場合には、上記した熱交換器19、熱交換器4、保温コイル5、6の系統に、逆浸透膜8(多段にした場合はさらに他の逆浸透膜)から出した透過水を循環し、上記の他のエネルギー源を利用して温め、地下水系統の配管に流すこともできる。なお、余った透過水は排水とする。また、上記した実施形態では比較的規模の大きな融雪剤リサイクルシステムを想定していたが、コンパクト化することにより比較的小規模な融雪剤リサイクル装置としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1:融雪剤リサイクルシステム
2:濾過フィルター
3:逆止弁(チャッキー弁)
4:熱交換器
5:融雪剤配合水槽の保温コイル
6:処理受水貯槽の保温コイル
7:開閉バルブ
8:逆浸透膜(逆浸透膜モジュール)
9:処理受水貯槽
10:逆止弁(チャッキー弁)
11:ストレーナー
12:開閉バルブ
13:高圧ポンプ
14:プレーフィルター
15:融雪配合水槽
16:高圧ポンプ
17:開閉バルブ
18:開閉バルブ
19:熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融雪剤を含有する融雪水と、この融雪水より相対的に温度の高い温水との間で熱交換を行わせる熱交換器と、
前記熱交換器を通った前記融雪水を、透過水と、この透過水に対して相対的に前記融雪剤の含有量が高い融雪配合水に分離する逆浸透膜と、
を備える融雪剤リサイクルシステム。
【請求項2】
前記逆浸透膜によって分離された前記融雪配合水を前記熱交換器へ戻す循環系統を更に備える、請求項1に記載の融雪剤リサイクルシステム。
【請求項3】
前記温水が地下水であり、該地下水の一部を前記逆浸透膜の透過水に直接的に導入する配管系統を更に備える、請求項1又は2に記載の融雪剤リサイクルシステム。
【請求項4】
前記配管系統の途中に設けられ、前記地下水の一部を加熱する加熱手段を更に備える、請求項3に記載の融雪剤リサイクルシステム。


【図1】
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【公開番号】特開2012−24720(P2012−24720A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167101(P2010−167101)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(397012277)
【Fターム(参考)】