説明

融雪剤

【課題】 安価であり、且つ公害を発生させることがなく、さらに、融雪効率がよく扱い易い融雪剤を提供すること。
【解決手段】 炭素原子単体、または数個の炭素原子の結合体から成る原子状炭素の粉末と、カルシウムとを水中に溶解させ、水素イオンによりPH値が8以上に維持されたマイナスイオン水の中に前記原子状炭素とカルシウムとを遊離させた融雪剤を実現する。融雪剤に用いられる原子状炭素は、有機物を無酸素雰囲気において所定の温度で加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の成分を、600℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で公害が発生し難い融雪剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、日本に限らず全世界において、融雪剤には塩化カルシウム(CaCl2)が使用されている。この塩化カルシウムは、最も安価な融雪剤として大量に生産され、且つ販売、使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−322637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、塩化カルシウムが持つ酸化作用、すなわち塩害と称する公害が時間とともに道路を走る車の錆びを促進し、また道路の近くの田畑を汚染して農作物に被害が出ていることはよく知られている。このような状況であっても、塩化カルシウムよりも安価で効果がある融雪剤が見当たらないため、融雪剤には、多くの場合、そのまま塩化カルシウムが用いられている。
【0005】
本発明は上記のような従来の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、安価であり、且つ公害を発生させない融雪剤を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、融雪効率がよく扱い易い融雪剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、炭素原子単体、または数個の炭素原子の結合体から成る原子状炭素の粉末と、カルシウムとを水中に溶解させ、水素イオンによりPH値が8以上に維持されたマイナスイオン水の中に前記原子状炭素とカルシウムとを遊離させた融雪剤を実現することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水に炭素と、カルシウムを混入させて融雪剤を実現したため、塩化カルシウムを使用する必要がなく、塩害などのない融雪剤とすることができる。
【0009】
また、水に混入された炭素が雪の結晶を分解させることにより、融雪作用を促進し、融雪速度を速めることができるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で用いられる原子状炭素の好ましい実施の形態についての200万倍の電子顕微鏡写真である。
【図2】図1を拡大して示す図である。
【図3】本発明に係る原子状炭素の製造を行うに適した装置の形態を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明に係る原子状炭素材料を元素記号で模式的に表した図である。
【図5】前記製造方法と同じ条件の下で温度を550℃で短時間だけ養生したときの炭素材料の倍率200万倍の電子顕微鏡写真である。
【図6】図5を拡大して示す図である。
【図7】本発明に係る原子状炭素材料をX線解析したときの結果を表す図である。
【図8】本発明の融雪剤を使用して雪を溶解させた実験例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の融雪剤)
本発明の融雪剤は水と、本発明により得られた炭素と、カルシウムとからなる。本発明に使用する水は、川、沼、湖、水道水などのいずれでもよい。前記水に混合される炭素は一般に販売され使用される活性炭ではなく、竹や木材などの有機材料を無酸素状態で比較的低温(600℃以下)で加熱(乾留)して製造したものである。本発明の炭素は、所謂結晶化(グラファイト化)していないで炭素原子1個1個、または炭素原子が数個(せいぜい5〜6個)で存在可能であり粒径が1nm(ナノメートル)以下(計算値によれば1.66Å)からせいぜい10nm以下である、不活性のアモルファス炭素である。この炭素を粉体にすると、粒径が100nm(ナノメートル)以下である(別表1参照)。また、カルシウムは焼かず、無酸素状態で比較的低温(600℃以下)で加熱(乾留)して有機物状態を保ったカルシウムを使用する。このカルシウムも粉体に加工される。
【0012】
(使用炭素)
ここで、上記本発明で使用される炭素について説明する。図1は本発明において用いられる塊状の炭素の好ましい実施の形態についての200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。また、図2は図1の画像中野四角枠で表された部分Aの拡大図である。これらの写真により、上述したように、本発明の炭素は、所謂結晶化(グラファイト化)していないで炭素原子1個1個、または炭素原子が数個(せいぜい5〜6個)で存在可能であり粒径が1nm(ナノメートル)以下からせいぜい10nm以下であることが確認できる。特に図2に挙げられた炭素の例を検討すると、10nmの中に無数の非晶質性物質があり、10nmの中に約1Åから大きくて2nm程度の炭素が集合しており、平均の大きさは1.66Å(オングストローム)となっている。炭素の径から考えて1Åは炭素Cが1つ、棒状の2nmのものは炭素Cが5〜7個鎖状にイオン結合しているものであり、グラファイト炭素6面体を構成しない有機物状態であることがわかる。このように本発明の炭素はグラファイト化しておらず粒径が1nm以下から10nm以下であることから、この明細書では本発明の炭素のことを「原子状炭素」(原子状態に限りなく近い炭素)と称する。図1では原子状炭素は塊状であるが、個々の原子状炭素は他の原子状炭素と非結合の状態で、単に寄り集まっている状態に過ぎず、ほぼ単体の状態である。
【0013】
次に、前記図1に示した原子状炭素についての製造方法の好ましい例について説明する。
【0014】
図3は前記図1に示した原子状炭素の製造方法を実施するための好ましい製造装置の一例を示すものであり、気密に開閉可能な蓋2を有する処理槽1内に有機物からなる原料3を気密状態の下に装填するともに処理槽1内の雰囲気を無酸素雰囲気にする第1工程と、処理槽1内に装填された原料3を所定の温度で加熱して前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の所期成分を、分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて処理槽1から排出させる第2工程と、処理槽1内に残存する原子状炭素を回収する第3工程とを有している。
【0015】
第1工程で用いられる炭素の原料としては例えば高分子や植物等の普通に存在する有機物を用いることができるが、特に、炭素単体を含むものは炭素単体が結晶化して分子状を呈していることと、このような分子状の炭素単体は本発明の原子状の炭素に変換することはできず、製造した炭素に分子状の炭素が混入するので原料としては好ましくない。炭素原料としては特に木材や竹(生のものがよい)が好適である。
【0016】
更に詳しく説明すると、処理槽1は例えば適宜の径と深さとを有する有底円筒型の処理槽本体1aを有し、この処理槽本体1aの開口部に、例えば数個の突起からなる固定部材14により固定されるか、又はねじ込み等により開閉可能な蓋体2が気密に嵌装されており、鉄又はそれに類する金属により形成されたカマ111の内側に、適宜の手段により処理槽1の外部から通電可能な遠赤外線炭素セラミックヒータや炭素フィラメント等のヒータ112が網体113により装着されており、カマ111の外側面には断熱材114を介して最外部に外装材115が配置されており、内部の周壁11及び底部12及び底部12に立設されたポール13にヒータ112が装備されている。
【0017】
また、前記蓋2には、蓋2を閉じて気密状態とした処理槽1内に通じる吸気通路21と排気通路22とが設けられている。殊に、これらの通路には開閉弁(図示してない)がそれぞれ配置されている。蓋2の下面には、吸気通路21や排気通路22等からの不要物の侵入、排出を防ぐフィルタ15が設けてある。また、図中の16はヒータ112に通電するスイッチであり、処理槽1に組み込まれている。
【0018】
次に、本実施の形態につき前記工程毎に詳細に説明する。まず、第1工程では、蓋2を開放した状態で、例えば生の竹である原料3を装填して蓋2を閉じ、排気通路22を開放した状態で処理槽1内に吸気通路21から例えば窒素ガスを送入して処理槽1内を窒素ガスで完全に置換して無酸素状態とし、吸気通路21と排気通路22との開閉弁を閉じる。
【0019】
そして、次に、第2工程に移り、ヒータ112に通電して最初に処理槽1内、即ち、装填した原料3を100〜150℃に保ち、原料3及び窒素雰囲気中の水分を充分に気化させ、吸気通路21から窒素を導入させた状態で排気通路22から水分、酸素、窒素を含む気体として処理槽1の外部へと排出することにより、処理槽1内及び原料3を無酸素状態で且つ乾燥状態にする。
【0020】
次いで、再び、処理槽1内を窒素雰囲気とした後、ヒータ112に通電して原料3を200〜350℃に保ち、原料3中の塩素を遊離させて前記水分の場合と同様にして原料3内の塩素を処理槽1から排出する。
【0021】
更に、処理槽1内を窒素雰囲気とした後、ヒータ112に通電して原料3を350〜450℃に保ち、前記水分及び塩素の場合と同様にして原料3中の残りの高分子成分を遊離させて処理槽1から排出し、第2工程を終了する。
【0022】
以上の第2工程を終了した時点で処理槽1内には450℃では気化しない炭素すなわち、原子状炭素が残存する。次いで、ヒータ112の通電を停止して、吸気通路21から低温の窒素を導入させて排気通路22から排出させることにより、50〜100℃程度まで冷却した後、蓋2を開放して処理槽1内に残存する炭素を取り出すので酸化されることがなく、蓋2を開放して大気雰囲気中に取り出し第3工程を終了する。この第3工程の終了により本発明の原子状炭素が生成される。
【0023】
図4は本発明の原子状炭素の原子構造を模式的に示す図である。この原子状炭素は炭素原子一個一個が、4本の腕のそれぞれに何らの原子或いはイオンと結合していない状態で個別に存在しているため、高いイオン吸着能力を有する。
【0024】
このイオン吸着能力についてみると、本発明である原子状炭素は、有機化合物として存在していた状態、即ち、粒子の大きさが1nm以下(理論的には1.66Å)の原子に近い状態で、図4に示すように炭素原子の1個当たり4個のイオンを吸着する能力を有する状態であるため、本発明の原子状炭素は、60個の炭素原子で構成されるフラーレンのイオン吸着能力60の4倍,即ち240のイオン吸着能力を有し、また、1000個の炭素原子で構成されるカーボンナノチューブのイオン吸着能力1000の4倍,即ち4000のイオン吸着能力を有することになり、きわめて活性である。
【0025】
殊に、本発明の原子状炭素はグラファイト化している従来の炭素と異なり更に細かいばかりか各種の物質と化合物を作ることが可能であり、特に人体に対しても毒性を有しないので水を改善する能力が高いという性質を持つ。
【0026】
このようにして本実施の形態において得られた塊状の原子状炭素は化合している他の成分を熱分解して遊離する過程で酸素に触れることがないので、石炭、コークス、活性炭などのように生成段階で酸化されることがなく、また、加熱温度も他の成分の分解温度である500℃以下(好ましくは450℃前後)としたので炭素自身に同素体結合を生じさせるだけの励起エネルギーを与えることがなく、単に化合している他の成分が遊離するだけであり、原料3に化合物として結合していた状態、即ち、原子状のままで固定され、前記図1に示した原子状炭素が得られた。
【0027】
また、図5は、前記図1に示したものと同じ原子状炭素を550〜600℃で短時間(約30分)保った場合の200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。図6は図4を拡大した図である。この場合には原子状炭素の塊の表面(図5、図6の左側)から内部に向けて炭素が横に整列し、部分的にグラファイト化が進行している様子が確認できる。したがって450℃を境にそれ以上高温になると急激とグラファイト化が進み、結晶化し無機質の炭素に変化していくことがわかり、本発明の原子状炭素材料である有機質の特徴が失われることになる。ただし、上記550〜600℃といったような、450℃を越えた温度でも加熱時間が短かければ原子状炭素の塊の全体がグラファイト化されることはなく、原子状炭素材料である有機質の特徴を保持することは可能である。
【0028】
これらのことからも本実施の形態が従来一般に結晶化(グラファイト化)されている炭素とは異なり原子状の炭素であることを確認することができる。
【0029】
上記製造方法で得られた原子状炭素は多数の原子状の炭素が原子間引力により集合して塊として得ることができる。このようにして得られた原子状炭素の分光放射出力を求めると、図7のようになる。この図は本発明に係る原子状炭素の表面温度を100℃に加熱し、そのときに得られる放射線量をフーリエ変換赤外分光光度計により測定した結果をグラフに表したものであり、横軸に放射線の波長を表し、縦軸に放射線量(或いは強さ)を示す。図7から明らかなように、本発明の原子状炭素は黒体の出力にきわめて高い放射線出力を示すことが分かる。また、本発明の原子状炭素は、100℃に加熱されたときに、5〜15ミクロンの波長の放射線、すなわち遠赤外線を著しく大量に放射することが分かる。そして、図1、図2および図4乃至図7の分析により本発明に係る原子状炭素材料が非晶質で原子状の有機質炭素であることが確認された。
【0030】
なお、図3に示した本実施の形態の製造装置(方法)において、無酸素雰囲気を形成するために安価で安定しているとともに低温ガス化も容易な窒素ガスを用いたが、他の不活性ガスを用いてもよく、また、製造装置として図3に示した処理槽型のものを用いたが、他の型式の製造装置を用いることもできる。
【0031】
上記のようにして得られた塊状の原子状炭素は使用目的に応じて、例えば塊状のまま、或いはミルなどを用いて粉末状に粉砕される。本発明における融雪剤に用いるときは、ミルなどを用いて100nm程度、或いはそれ以下の粒径に粉砕して粉末状にして利用される。粉末状とする場合は、600℃以下(好ましくは450℃前後)の雰囲気で粉末にすることにより、粉砕過程におけるグラファイト化を防ぐことができる。上述のようにして製造方法された粉末状の原子状炭素は、同じく粉末状にされたカルシウムとともに、水に混合され、液体状の融雪剤が製造される。この融雪剤における水、原子状炭素及びカルシウムの各成分の混合割合は、重量比で、概略、
水 90%
原子状炭素 5%
カルシウム 5%
である。
【0032】
上記水、原子状炭素及びカルシウムの各成分の混合割合は、本発明を限定するためのものではなく、一例として示すものである。そして、上記水、原子状炭素及びカルシウムの各成分の混合割合は、雪の状態(寒冷地、極寒冷地など、各地域によって異なる)に応じて変化させることができる。また、本発明の液体状の融雪剤は500〜1000倍に希釈して使用される。
【0033】
原子状炭素は、上述のように水の中に投入されると、マイナスイオン水をつくることができる。すなわち、原子状炭素(粉末のものがよい)を水の中に投入すると原子状炭素水溶液ができる。この原子状炭素水溶液は、原子状炭素が持つ優れた遠赤外線放出能力により水の分子が強く、持続的な振動を受ける。これにより水の分子は分解されて水素イオンH+ と水酸イオンOH- に電離する。また、炭素が炭素以下の原子番号を持つ元素との結合に強い親和力を有するので、原子状炭素(C)が、原子状炭素水溶液の水素イオン(H+)を吸着して、水素イオン(H+)と水酸イオン(OH-)への電離を促し、さらに電離した水素イオン(H+)は原子状炭素(C)に吸着される。その結果、原子状炭素水溶液中には水酸イオン(OH-)(すなわち、マイナスイオン)の割合が多くなり、マイナスイオン水となる。このマイナスイオン水はアルカリ性を示す。上記のような作用において、原子状炭素は、その強力なイオン吸着力により水素イオンと結合する。このため、本発明のマイナスイオン水は内部に多数のマイナスイオンを含んだ水となり、活性にすぐれているなど、種々の良好な性質を有する。本発明の融雪剤はこの状態のところへカルシウムが混入していることにより、カルシウムによる融雪作用が促進され、且つマイナスイオン水に含まれる原子状炭素が融雪作用を及ぼすため融雪効果が著しく向上せしめられる。原子状炭素及びカルシウムが投入される水は、水道水、井戸水、その他の自然の水であってもよく、種々の用途に応じて選ばれる。
【0034】
(本発明の融雪剤の使用例)
500〜1000倍に希釈された本発明の融雪剤を雪の上に散布すると、1時間当たり7〜10cm(センチメートル)の雪が溶解される。本発明の融雪剤を使用して雪を溶解させた実験例を図8に示す。この実験は平成22年2月5日に宮城県石巻市桃生町にて行われた。当日の天候は晴れ、積雪は7〜8cmであった。図8において、(a)は地上の降雪表面に融雪剤を散布した状態を示す。このときの天候は晴れ気温は摂氏2℃であった。図8(a)のほぼ中央部に上下方向に延びる黒色部分(黒く見える部分は重点散布箇所であり、まだ雪が融けているわけではない)及びその周辺のグレー部分(軽度散布箇所)が雪上に散布された融雪剤である。融雪剤の散布直後から活発な融雪反応が起こった。図8(b)は融雪剤の散布後30分経過したときの雪の状態を示す。このときの天候は晴れ気温は摂氏2℃であった。この時点では、軽度散布箇所と未散布箇所との間に約5cmの顕著な段差が認められた。なお、重点散布箇所と軽度散布箇所との間には融雪量の差は認められなかった。図8(c)は融雪剤の散布後60分経過したときの雪の状態を示す。このときの天候は晴れ気温は摂氏3℃であった。この時点では、融雪剤散布箇所には完全に地表表面が露出し完璧な融雪が完了した。他方において、融雪剤未散布箇所では殆ど融雪は進行しておらず、積雪状態のままであった。
【0035】
以上の実験結果から、次のことが明らかとなった。
(1)本発明の融雪剤は濃縮状態のものを使わなくても、微量、または雪表面の色が変化する程度まで希釈化されたものを使うだけで充分である。
(2)気温による影響は考えられるが、日本の雪国程度の地域であれば、1〜2mm/分の融雪効果が期待できる。
(3)実験当日は晴天であり直射日光の下で実験が行われた。曇天時での実験も行うことにより、さらに正確な効果が得られる可能性が認められる。
【0036】
本発明の融雪剤は黒色の液体からなるが、この融雪剤に混合されている原子状炭素は粉体状態で粒径が100nm以下であっても原子状炭素自体の粒径は10nm以下の不活性のアモルファス炭素であるため、融雪作用は次のようにして行われる。
【0037】
雪の結晶の大きさが平均100〜500μm(マイクロメートル)であることはよく知られている。本発明の融雪剤の原料となっている原子状炭素は10nm以下(雪の結晶の1/10000以下)であるため、この融雪剤を雪の上に散布すると、原子状炭素は結晶の中へ容易に進入し雪の結晶を切断して繋がりを断ち、バラバラにする。結晶の繋がりが断たれると、雪は元の水に戻るからこの現象により融雪作用が行われる。
【0038】
また、本発明の原子状炭素は、通常の水に5%(重量比)入れて熱すると、沸騰する温度が15%下がり85℃付近になる。したがって、水が氷になる(逆に氷が水になる)凝固点降下が促進され、より低い温度でも融雪作用が行われる。さらにカルシウムについてみると、本発明の融雪剤では、使用するカルシウムは酸化していないため、このカルシウムが混合された水を一種の炭酸水状態にすることができ、水に放散するときに溶解熱を出す。これらの2種類の効果が安全で公害を出さない融雪剤を実現する。
【0039】
他方において、炭素は黒色であるから太陽光の熱を吸収して温度を上げるという説明が従来においてなされ、本発明にもこれは当てはまるが、本発明にとっては、このような現象は第二義的な意味合いしか持たない。或いは、本発明では上記炭素による結晶の切断と、凝固点降下と、熱の吸収とが相俟って融雪作用を促進する。
【0040】
本発明の融雪剤に混合されている原子状炭素は粒径が10nm以下の不活性のアモルファス炭素であることから、上述の作用に加えてさらに次のような作用を有する。
(1)酸化防止作用を及ぼす。
(2)雪解け水は田畑にとっては原子状炭素を含む活性水となり土壌改良作用を及ぼし、農作物の生長を促進する。
(3)車両に付着した油などによる錆びを防止する。
以上の作用により、従来の融雪剤の欠点を補い、さらに環境改善に貢献する。
【0041】
(本発明の融雪剤の安全テスト結果)
本発明の融雪剤について安全テストに関する動物実験を行った。この安全テストは、動物の験体としてラット・マウスを用い、このラット・マウスに本発明の融雪剤を投与(注射による接種、および飲用摂取)することにより行った。その結果によれば、本発明の融雪剤は生物などの有機物に悪影響を与えるものでないことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
水と、炭素原子単体、または数個の炭素原子の結合体から成る原子状炭素と、カルシウムとを用いて、融雪剤を実現する。このような融雪剤により、融雪効果が高く、且つ生物に安全で、公害を引き起こさないようにすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 処理槽、
2 蓋、
3 原料、
11 周壁
12 底部
13 ポール
14 固定部材
111 カマ
112 ヒータ
113 網体
114 断熱材
115 外装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子単体、または数個の炭素原子の結合体から成る原子状炭素の粉末と、カルシウムとを水中に溶解させ、水素イオンによりPH値が8以上に維持されたマイナスイオン水の中に前記原子状炭素とカルシウムとを遊離させたことを特徴とする融雪剤。
【請求項2】
原子状炭素は、有機物を無酸素雰囲気において所定の温度で加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の成分を、600℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて得られるものであることを特徴とする請求項1記載の融雪剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−219689(P2011−219689A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92792(P2010−92792)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(510104078)株式会社EEN (1)
【Fターム(参考)】