説明

融雪装置の制御装置

【課題】本発明は、正確に、融雪を必要とする時期や融雪を必要としない時期に合わせて、融雪装置を稼動させることができる融雪装置の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の融雪装置の制御装置は、融雪装置8により融雪が行なわれる場所での降雪を検出し、降雪した雪片数Mと気温Kに基づき融雪装置8の運転開始を制御し、融雪が行なわれる場所の表面温度Tを離れた地点から検出し、当該検出温度にしたがい融雪装置8の運転停止を制御するようにした。同制御により、融雪装置8の運転は降雪状況に合わせて開始され、また対象となる場所の温度が、融雪を必要としない温度状況に合わせて停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面などの対象物に積雪した雪を融かす融雪装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪が多く見られる地方では、散水装置などの融雪装置を用いて、生活に必要な道路や歩道などを雪害から守ることが行なわれている。
【0003】
融雪装置の運転管理は面倒なので、近時では、降雪を検出する降雪センサを用いた制御装置を採用して、自動で融雪装置の運転を制御させることが行なわれる。
【0004】
融雪装置の制御装置には、降雪の有無を検出する降雪センサを用いて、融雪装置の運転を開始したり停止したりすることが行なわれる(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2002−30628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、降雪センサは、降雪の有無を検出するだけなので、同検出に依存していたのでは、正確に、融雪を必要とする時期や、融雪を必要としないすむ時期を判別するのは難しい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、正確に、融雪を必要とする時期や融雪を必要としない時期に合わせて、融雪装置を稼動させることができる融雪装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、融雪装置により融雪が行なわれる場所での降雪を検出し、降雪した雪片数に基づき融雪装置の運転開始を制御する運転開始制御手段と、融雪が行なわれる場所の表面温度を離れた地点から検出し、当該検出温度にしたがい融雪装置の運転停止を制御する運転停止制御手段とを具備した構成を採用した。
【0008】
同構成により、融雪装置の運転は降雪状況に合わせて開始される。さらに融雪装置は、対象となる場所の温度が、融雪を必要としない温度状況に合わせて停止する。
【0009】
特に運転開始制御手段として、降雪が検出されると、降雪した一定時間当たりの雪片をカウントする雪片カウント手段と、気温を検出する気温検出手段と、気温が一定温度以下で雪片カウント数が一定個数以上のとき融雪装置の運転開始信号を出力する開始信号出力手段とを有した構成を採用すると、正確に融雪したい時期に融雪装置が運転される。
【0010】
また運転停止制御手段として、融雪装置の運転開始とともに、融雪が行なわれる場所の表面温度を、離れた地点から検出する放射式温度センサと、放射式温度センサの検出温度が所定温度以上になると融雪装置の運転停止信号を出力する停止信号出力手段とを有した構成を採用すると、正確に融雪を必要としなくなった時期に融雪装置の運転が行なえる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、正確に、融雪装置を、融雪を必要とする時期や融雪を必要としない時期に合わせて稼動させることができる。しかも、融雪装置の運転開始と運転停止とは、全く異なるパラメータで制御されるので、誤動作の発生は抑えられる利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、気温および一定時間当たりの雪片カウント数を用いて、融雪装置の運転開始信号を出力するので、正確に、融雪したいときに、融雪装置の運転を開始させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、離れた地点から検出される、融雪対象物の表面温度が所定温度以上に上昇するときに、融雪装置の運転停止信号を出力するので、正確に、融雪が必要とせずにすむ状態となったときに、融雪装置の運転を停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図1および図2に示す一実施形態にもとづいて説明する。
【0015】
図1中Aは、例えば路面凍結防止用の散水式の融雪装置の制御装置の全体を示していて、同図中1は、融雪処理が実施される降雪地帯(融雪が行なわれる場所)に有る対象物、例えば路面、2は同路面1の路肩に沿って配管された散水管、2aは同散水管2に多数形成(一部だけ図示)された散水ノズルを示している。
【0016】
また同図中5は井戸(散水供給源)、6は同井戸5の井戸水(地下水)を揚水する揚水ポンプ、例えば水中ポンプを示している。この水中ポンプ6の吐出部は、吐出配管7を介して、散水管2,2に接続してあり、融雪装置をなす散水装置8を構成している。これにより、水中ポンプ6の電動モータ部6a(ポンプ駆動源)が励磁すると、ポンプ部6bのポンプ運転により井戸水が散水管2,2へ圧送されて、各散水ノズル2aから井戸水が路面1へ散水される。つまり、路上の融雪が行なわれるようにしている。
【0017】
同図中10は、例えば路面1の側方に建てられた支柱である。例えば支柱1の最上段には、支柱1の側方へ突き出るようにして、降雪センサ11(本願の降雪検出手段に相当)が据え付けられている。降雪センサ11は、例えば拡散反射式光電センサが用いられている。同センサには、例えばセンサ本体11aの前方を投光する投光部12aと、前方から入射する反射光を受光する受光部12bとを有した光学式が用いられる。つまり、投光部12aの前方(センサ本体11a前方)を雪片Sが通過すると、投光部12aの光が雪片Sを反射して、受光部12bへ入射するようにしてある。この受光部12bで検出される雪片Sの有無により、降雪発生が検出されるようにしている。また同センサ11には、気温を検出する温度センサ17(本願の気温検出手段に相当)が内蔵されている。なお、13は、降雪センサ11を支柱10に支えるためのブラケットを示す。
【0018】
また支柱1のうち、例えば降雪センサ11の下側の地点には、離れた地点から、融雪処理が実施される場所の表面温度、具体的には路上の温度を検出する放射式温度センサ15が据え付けられている。放射式温度センサ15には、路上の放射エネルギーが入射部16aへ入射すると、放射エネルギーの強さを演算部16bで演算処理し、得られた強さから路上の温度を測定する機能をもつ。例えば赤外線を探知する構造が用いられる。放射式温度センサ15には、表面温度の測定に必要な機器として、予め自己の雰囲気温度(気温に相当)を検出する冷接点温度検出用温度センサ17が設けてある。なお、18は、放射式温度センサ15を支柱10に支えるためのブラケットを示す。
【0019】
また支柱10の中段には、制御盤20が据え付けてある。制御盤20内には、例えばマイクロコンピュータを有する回路基板で構成された制御部21が収められている。この制御部20に、温度センサ17、降雪センサ11の出力部、放射式温度センサ15の出力部が接続される。
【0020】
この制御部21には、降雪センサ11を用いて、散水装置8の運転開始を制御する機能が設定されている。これには、降雪センサ11で検出した検出情報を用い、気温と降雪した雪片Sの個数に基づき散水装置8の運転開始を制御する機能が用いられている(本願の運転開始制御手段に相当)。具体的には、同機能には、
・降雪が生じる一定気温以下において、降雪センサ11により降雪が検出されると、降雪センサ11の検出される雪片Sを用いて、一定時間当たり(例えば1分当たり)の雪片Sの個数をカウントする機能(本願の雪片カウント手段に相当)、
・この雪片カウント数が一定個数以上になると、水中ポンプ6を起動させる運転開始信号を出力する機能(本願の開始信号出力手段に相当)が用いられている(散水開始)。
【0021】
また制御部21には、放射式温度センサ15を用いて、散水装置8の運転停止を制御する機能が設定されている。これには、放射式温度センサ15で検出した温度にしたがい散水装置8の運転停止を制御する機能が用いられている(本願の運転停止制御手段に相当)。具体的には、同機能には、
・水中ポンプ6の起動とともに、放射式温度センサ15にて、路面の温度、つまり路上の積雪面の温度を検出する機能、
・放射式温度センサ15で検出した温度が一定温度値以上(所定温度以上)になると、水中ポンプ6の運転を停止させる機能(本願の停止信号出力手段に相当)が用いられている(散水停止)。
【0022】
つぎに、このように構成された融雪装置の作用を、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0023】
制御盤20を起動させると、まず、フローチャートのステップS1に示されるように、制御部21は、降雪センサ17の一部を構成する温度センサ17(気温検出用)の出力から気温Kを読み取る。続いてステップS2へ進み、気温Kと予め設定された一定気温値αとの対比から、降雪が発生しやすい気温状況であるかを判定する。気温Kが一定気温値α以下であると、ステップS3へ進み、降雪センサ11からの出力の有無を判定する。
【0024】
ここで、路面1が有る地域で降雪現象が発生とする。すると、図1に示されるように降雪センサ11の受光部12bへ、センサ本体11aの前方を通過する雪片Sから反射した、投光部12aからの反射光が入射する。制御部21は、この雪片Sの検出から、降雪が発生したと判定する。すると、ステップS4へ進み、雪片Sの計数が始まる。
【0025】
すなわち、ステップS4では、受光部12bで検出される雪片Sの一定時間当たり(例えば1分間当たり)の個数カウントが行なわれる。
【0026】
続くステップS5により、雪片カウント数Mが、予め設定された一定個数β以上か否かの対比から、路面1上の積雪状況を判定する。この一定個数β以上であると、路面1上に積雪した雪が、例えば自動車の走行を妨げるおそれ状況、すなわち路面凍結を発生しやすい状況になると判定する。これにより、散水(融雪)を開始する時期の判定が行なわれ、制御部21から、散水装置8の運転を開始する信号が出力される。
【0027】
すると、ステップS6に示されるように水中ポンプ6が起動し、図1に示されるように散水ノズル2aから、路面1へ井戸水が散水され、井戸水が有する熱エネルギーにより、路面1上に積雪している雪を融かす。
【0028】
また散水の開始と共に、制御部21は、続くステップS7に示されるように、路面1から離れた地点に有る放射式温度センサ15から、路上の積雪面の温度Tを検出している。
【0029】
ここで、路上では、井戸水の散水により、雪が融け、その後、路面1が温度上昇するという挙動が生じる。
【0030】
ステップS8では、放射式温度センサ15で検出される積雪面の温度Tが、一定温度値β以上、すなわち路面1が融雪処置の必要がない状況になったか否かを判定している。
【0031】
散水による融雪が進み、温度Tが一定温度値β以上になると、制御部21は、路面1が融雪処置の必要がない温度まで上昇したと判定する。つまり、散水を停止する時期の判定が行なわれる。
【0032】
すると、制御部21からは、散水装置8の運転を停止する信号が出力され、ステップS9に示されるように水中ポンプ6の運転が停止する。つまり、路面1への散水が停止する。
【0033】
このように散水式の融雪装置は、雪片Sをカウントするという、降雪状況を監視して運転を開始する制御と、路面などの対象物の表面温度の状況を監視して運転を停止する制御との組み合わせにより、正確に、融雪を必要とする時期や融雪を必要としない時期に合わせて稼動させることができる。しかも、融雪装置の運転開始と運転停止とは、全く異なるパラメータで制御されるので、誤動作の発生を抑えることができる。
【0034】
特に、融雪装置の運転開始には、気温Kおよび一定時間当たりの雪片カウント数Mを用いて行なう制御を採用したので、正確に、融雪したいとき、融雪装置の運転を開始させることができる。また融雪装置の運転停止には、対象物の表面温度の挙動を用いて行なう制御を採用したので、正確に、融雪が必要とせずにすむ状態となったとき、融雪装置の運転を停止させることができる。
【0035】
本発明の一実施形態では、本発明を散水式の融雪装置に適用したが、これに限らず、他の方式の融雪装置の制御に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る融雪装置の制御装置の構成を示す図。
【図2】同制御装置の制御を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0037】
1…路面(対象物)、8…散水装置、11…降雪センサ(降雪検出手段)、15…放射式温度センサ、17…温度センサ(気温検出手段)、21…制御部(運転開始制御手段、雪片カウント手段、開始信号出力手段、停止信号出力手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融雪装置により融雪が行なわれる場所での降雪を検出し、降雪した雪片数と気温に基づき前記融雪装置の運転開始を制御する運転開始制御手段と、
融雪が行なわれる場所の表面温度を離れた地点から検出し、当該検出温度にしたがい前記融雪装置の運転停止を制御する運転停止制御手段と
を具備してなることを特徴とする融雪装置の制御装置。
【請求項2】
前記運転開始制御手段は、
融雪装置により融雪が行なわれる場所における降雪の発生を検出する降雪検出手段と、
前記降雪が検出されると、降雪した一定時間当たりの雪片をカウントする雪片カウント手段と、
気温を検出する気温検出手段
気温が一定温度以下で雪片カウント数が一定個数以上のとき前記融雪装置の運転開始信号を出力する開始信号出力手段と
を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の融雪装置の制御装置。
【請求項3】
前記運転停止制御手段は、
融雪装置の運転開始とともに、融雪が行なわれる場所の表面温度を、離れた地点から検出する放射式温度センサと、
前記放射式温度センサの検出温度が所定温度以上になると前記融雪装置の運転停止信号を出力する停止信号出力手段と
を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の融雪装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−127951(P2008−127951A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317385(P2006−317385)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】