説明

螺旋管形成用ストリップ

【構成】 螺旋管形成用ストリップ10は、帯状に形成されるストリップ本体16を含み、たとえば下水管100の内面100aに沿って螺旋状に巻回されて、幅方向側縁どうしがジョイナ12に接合されることによって螺旋管14を形成する。ストリップ本体16の一方の面には、ストリップ本体16の幅方向に所定の間隔を隔てて複数のリブ18が形成されている。それぞれのリブ18には、アンカ部22が形成されており、たとえば、そのうちの少なくとも1つのアンカ部22bが、リブ18の先端20よりもストリップ本体16側の位置に形成される。
【効果】 ストリップと充填材との固定強度を低下させずに、下水管の内面と充填材との付着強度を増大させることができる。したがって、ストリップと下水管の内面とを強固に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、螺旋管形成用ストリップに関し、特にたとえば、管の内面に沿って螺旋状に巻回され、その幅方向側縁どうしをジョイナに接合されることによって螺旋管を形成する、螺旋管形成用ストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水管の内面に沿って螺旋状に巻回されるストリップの幅方向縁部どうしをジョイナで接合することによって、螺旋管を形成する技術が公知である。このような螺旋管では、ストリップと下水管の内面とを強固に固定することが要求される。
【0003】
たとえば、特許文献1の螺旋管では、ストリップの各側縁に形成されている条溝に、ジョイナの各側縁に形成されている突条が嵌合することで、ストリップの側縁どうしが接合されている。ストリップには、下水管の内面に向かって突出する断面略T字状のリブが形成されており、このリブの先端に形成されたアンカ部が下水管とストリップとの間に充填される充填材に埋め込まれ、充填材の硬化後には、このアンカ部が充填材に係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公開2004−251340号[F16L 1/00]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、ストリップのアンカ部を充填材に係止させることによって、ストリップと充填材とを固定しているが、ストリップと下水管の内面とを強固に固定するためには、ストリップと充填材とを固定するだけでは不十分である。たとえば、ストリップと充填材とが固定されていても、この充填材と下水管の内面とが適切に付着していなければ、螺旋管の天井部分の垂れ下がり等が発生する恐れがある。これを解決するために、ストリップと下水管の内面との当接面積を減少させて、その分だけ充填材と下水管の内面との付着面積を拡大させる方法が考えられる。しかし、ストリップと下水管の内面との当接面積を減少させるために、アンカ部の幅を小さくしても、これによってストリップのアンカ効果が低下するため、結果として、ストリップの下水管の内面への固定強度を低下させてしまうこととなる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、螺旋管形成用ストリップを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、管の内面に強固に固定することができる、螺旋管形成用ストリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、帯状に形成されるストリップ本体と、ストリップ本体の幅方向に所定の間隔を隔てて形成される複数のリブとを備える螺旋管形成用ストリップにおいて、リブの先端よりもストリップ本体側の位置に少なくとも1つのアンカ部を形成したことを特徴とする、螺旋管形成用ストリップである。
【0010】
第1の発明では、螺旋管形成用ストリップ(10)は、帯状に形成されるストリップ本体(16)を含み、たとえば、下水管(100)の内面(100a)に沿って螺旋状に巻回されて、幅方向側縁どうしがジョイナ(12)に接合されることによって螺旋管(14)を形成する。ストリップ本体の一方の面には、ストリップ本体の幅方向に所定の間隔を隔てて複数のリブ(18)が形成されている。それぞれのリブには、アンカ部(22)が形成されており、たとえば、そのうちの少なくとも1つのアンカ部(22b)が、リブの先端(20)よりもストリップ本体側の位置に形成される。
【0011】
第1の発明によれば、アンカ効果を低下させずに、ストリップと下水管の内面との当接面積を小さく抑えて、下水管の内面と充填材との付着面積を拡大させることができる。つまり、ストリップと充填材との固定強度を低下させずに、下水管の内面と充填材との付着強度を増大させることができる。したがって、ストリップと下水管の内面とを強固に固定することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、複数のアンカ部がリブの高さ方向に並んで形成される。
【0013】
第2の発明では、複数のアンカ部(22)がリブ(18)の高さ方向に並んで形成される。実施例では、リブの先端(20)に、第1アンカ部(22a)が形成され、この第1アンカ部よりもストリップ本体(16)側の位置に、第2アンカ部(22b)が形成される。
【0014】
第2の発明によれば、各々のアンカ部の幅を小さく設定しても、ストリップのアンカ効果を維持することができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明に従属し、複数のアンカ部は、第1アンカ部とこの第1アンカ部よりもストリップ本体側の位置に形成される第2アンカ部とを含み、第1アンカ部は、第2アンカ部の幅よりも小さい幅を有する。
【0016】
第3の発明では、アンカ部(22)は、第1アンカ部(22a)と、この第1アンカ部よりもストリップ本体(16)側の位置に形成される第2アンカ部(22b)を含み、第1アンカ部は、第2アンカ部の幅よりも小さな幅を有している。
【0017】
第4の発明は、第3の発明に従属し、第1アンカ部は、リブの先端に形成されるかつ当該リブの先端側へ向かうにつれて拡大する形状を有する。
【0018】
第4の発明では、リブ(18)の先端(20)には、第1アンカ部(22a)が形成される。第1アンカ部は、たとえば、先端側で幅が大きく始端側で幅が小さい略台形状を有しており、その先端面が下水管(100)の内面(100a)に当接する。
【0019】
第4の発明によれば、ストリップの下水管の内面に対する安定性を向上させることができる。また、第1アンカ部への負担が軽減されるため、第1アンカ部が壊れたり、変形したりせず、その機能を維持し続けることができる。
【0020】
第5の発明は、第2ないし4のいずれかの発明に従属し、リブの高さ方向に隣接するアンカ部の互いに向かい合う面がそれぞれ異なる角度で突出して形成される。
【0021】
第5の発明では、リブ(18)の高さ方向に隣接するアンカ部(22)の互いに向かい合う面がそれぞれ異なる角度で突出して形成される。実施例では、第2アンカ部(22b)の先端面が、リブ(18)に対して垂直方向に突出して形成されており、第1アンカ部(22a)におけるその先端面と向かい合う面は、リブの先端(20)側へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成される。
【0022】
第5の発明によれば、ストリップを押出成形するときに、隣接するアンカ部どうしが金型を挟み込もうとしても、その挟み込もうとする力を逃がすことができる。したがって、合成樹脂を押し出し易くなり、ストリップの生産性が向上する。
【0023】
第6の発明は、第1ないし第5の発明のいずれかに従属し、互いに隣接するリブの間には、補強部材が取り付けられ、補強部材が、ストリップ本体と当該ストリップ本体の直近のアンカ部との間に保持される。
【0024】
第6の発明では、互いに隣接するリブ(18)の間には、補強部材(52)が取り付けられる。たとえば、補強部材の高さは、ストリップ本体(16)と当該ストリップ本体の直近のアンカ部(22)との垂直距離よりも小さい寸法であり、補強部材の最大幅は、互いに隣接するリブどうしの間隔よりも小さく、互いに隣接する第2アンカ部の内側端どうしの間隔よりも大きい寸法である。このため、ストリップ(10)に取り付けられた補強部材は、アンカ部によってその落下が防止され、ストリップ本体(16)とアンカ部との間に保持される。
【0025】
第6の発明によれば、ストリップを下水管の内面に沿って螺旋状に巻回するときにも、ストリップから補強部材が極めて外れにくい。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、リブの先端よりもストリップ本体側の位置にアンカ部が形成されるため、ストリップと充填材との固定強度を低下させずに、下水管の内面と充填材との付着強度を増大させることができる。したがって、ストリップと下水管の内面とを強固に固定することができる。
【0027】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施例の螺旋管形成用ストリップの使用状態を示す断面図である。
【図2】図1の螺旋管形成用ストリップを示す断面図である。
【図3】図1の螺旋管形成用ストリップのアンカ部を示す図解図である。
【図4】図1のジョイナを示す断面図である。
【図5】図1の螺旋管形成用ストリップに補強部材を取り付けた状態を示す図解図である。
【図6】図1の螺旋管形成用ストリップとジョイナとを使用して下水管の内面に螺旋管を形成した状態を示す図解図である。
【図7】この発明の他の一実施例の螺旋管形成用ストリップのアンカ部を示す図解図である。
【図8】図7の螺旋管形成用ストリップに補強部材を取り付けた状態を示す図解図である。
【図9】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管形成用ストリップのアンカ部を示す図解図である。
【図10】図9の螺旋管形成用ストリップに補強部材を取り付けた状態を示す図解図である。
【図11】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管形成用ストリップのアンカ部を示す図解図である。
【図12】図11の螺旋管形成用ストリップに補強部材を取り付けた状態を示す図解図である。
【図13】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管形成用ストリップのアンカ部を示す図解図である。
【図14】図13の螺旋管形成用ストリップに補強部材を取り付けた状態を示す図解図である。
【図15】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管形成用ストリップのアンカ部を示す図解図である。
【図16】図15の螺旋管形成用ストリップに補強部材を取り付けた状態を示す図解図である。
【図17】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管形成用ストリップのアンカ部を示す図解図である。
【図18】図17の螺旋管形成用ストリップに補強部材を取り付けた状態を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照して、この発明の一実施例である螺旋管形成用ストリップ(以下、単に「ストリップ」という。)10は、たとえば老朽化した下水管100を更生するために、下水管100の内面100aに沿って螺旋状に巻回され、その幅方向側縁どうしがジョイナ12に接合されることによって螺旋管(内管)14を形成する。
【0030】
なお、この実施例では、下水管100はヒューム管であるが、これに限定される必要はなく、ヒューム管以外のたとえば合成樹脂製管や金属製管の下水管にも適用することがで
きる。
【0031】
図1および図2に示すように、ストリップ10は、たとえば硬質塩化ビニル等のような合成樹脂の押出成形によって連続的に形成されるものであり、帯状の本体(ストリップ本体)16を含む。
【0032】
本体16の一方の面には、下水管100の内面100aに向かって突出する帯状のリブ18が形成されている。リブ18は、本体16の長手方向に沿ってその全体に亘って形成され、複数、この実施例では、3つのリブ18が、本体16の幅方向に所定の間隔を隔てて形成されている。後で詳細に説明するように、互いに隣接するリブ18の間には、詳細は後述する、補強部材52が取り付けられる。
【0033】
リブ18には、リブ18の高さ方向に並んで第1アンカ部22aと第2アンカ部22bが形成されている。以下、アンカ部22を位置などに応じて区別する場合には、第1アンカ部22a、第2アンカ部22bなどを用い、これらを包括して表現する場合にはアンカ部22を用いる。
【0034】
図3に示すように、第1アンカ部22aは、リブ18の先端20に形成される。第1アンカ部22aは、リブ18の先端20側へ向かうにつれて拡大する形状を有しており、下水管100に螺旋管14を形成した状態で、その先端面と下水管100の内面100aとが面接触する(図1参照)。第1アンカ部22aは、先端側で幅が大きく始端側で幅が小さい略台形状に形成され、その先端側の面(先端面)の幅は、たとえば6mmである。
【0035】
第2アンカ部22bは、第1アンカ部22aよりも本体16側(始端側)の位置、つまりリブ18の先端20よりも本体16側(始端側)の位置に形成される。第2アンカ部22bは、断面略長方形状を有しており、その中央部がリブ18と結合している。第2アンカ部22bの幅は、第1アンカ部22aの最大幅、つまり第1アンカ部22aの先端面の幅よりも小さく設定されており、たとえば9mmである。つまり、アンカ部22は、全体として、リブ18の先端20側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなる形状に形成されている。
【0036】
第2アンカ部22bの先端側の面は、リブ18に対して垂直方向に突出して形成されており、第1アンカ部22aの始端側の面と互いに結合している。また、第1アンカ部22aにおける第2アンカ部22bの先端側の面と向かい合う面、つまり、第1アンカ部22aの始端側の面から先端側の面に延びる面は、リブ18の先端20側へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成されている。このように、この実施例では、第1アンカ部22aおよび第2アンカ部22bの互いに向かい合う面がそれぞれ異なる角度で突出して形成される。
【0037】
また、後で詳細に説明するように、互いに隣接する第2アンカ部22bの内側端どうしの間隔は、補強部材52の幅方向の最大長さ(最大幅)よりも小さく設定されており、補強部材52をストリップ10へ取り付けた状態では、この第2アンカ部22bによって補強部材52の落下が防止されることとなる。
【0038】
ただし、この実施例における「内側」とは、ストリップ10(本体)中央側を意味し、「外側」とは、その反対側を意味する。
【0039】
図2に戻って、本体16の幅方向の両側縁には、条溝24が形成されている。各条溝24は、本体16の長手方向に沿ってその全体に亘って形成され、本体16に近い第1壁26と本体16から遠い第2壁28とを備えている。
【0040】
第1壁26には、受部30が形成されている。受部30は、第1壁26から内側に向かう窪みであり、たとえば、第1壁26の始端(本体16側の端)に形成される。後で詳細に説明するように、ストリップ10の第1係合部34とジョイナ12の第2係合部44とが係合した状態では、この受部30にジョイナ12の幅方向の側縁が嵌め合わされることとなる。このため、たとえば、ストリップ10ないしジョイナ12が回転して、それがストリップ10とジョイナ12との離脱力として作用しても、ジョイナ12の側縁がストリップ10の受部30に当たって係止されることによって、ストリップ10とジョイナ12との離脱が防止される。
【0041】
また、第1壁26の内側面には、補強部32が形成されている。補強部32は、第1壁26および第2壁28の形状を安定させるためのものであり、たとえば、第1壁26の先端から内側へ延びて、第1壁26とこの第1壁26と最も近い(直近の)リブ18とを連結する。
【0042】
第2壁28の外側面には、第1係合部34が形成されている。第1係合部34は、第2壁28の先端側へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成される。たとえば、第1係合部34は、断面略三角形状を有しており、その先端側の面は、第2壁28に対して垂直に形成される。
【0043】
さらに、第2壁28の外側面には、当たり部36が形成されている。当たり部36は、第1係合部34よりも先端の位置に形成され、第2壁28から外側に向けて突出する。後で詳細に説明するように、ストリップ10の第1係合部34とジョイナ12の第2係合部44とが係合した状態では、当たり部36と第2突条42の外側面とが当接する。このため、たとえば、ストリップ10ないしジョイナ12が回転して、それがストリップ10とジョイナ12との離脱力として作用しても、ストリップ10の当たり部30がジョイナ12の第2突条42に当たって係止されることによって、ストリップ10とジョイナ12との離脱が防止される。
【0044】
これら受部30,補強部32,第1係合部34および当たり部36は、本体16の長手方向に沿ってその全体に亘って形成されている。
【0045】
図1および図4に示すように、ジョイナ10は、たとえば硬質塩化ビニル等のような合成樹脂の押出成形によって連続的に形成されるものであり、帯状の本体(ジョイナ本体)38を含む。
【0046】
本体38の幅方向の両側縁には、本体38の長手方向に沿ってその全体に亘って、第1突条40、および第2突条42が形成されている。第1突条40は、本体38に対して垂直に形成され、下水管100の内面に向かって突出する。第1突条40は、ストリップ10の条溝24に相当する大きさを有しており、ストリップ10とジョイナ12とを接合させるときには、ストリップ10の条溝24に嵌め合わされる。
【0047】
第2突条42は、第1突条40よりも内側に形成され、第1突条40と協働してストリップ10の第2壁28を挟持する。第2突条42の先端は、内側に向けて屈曲しており、ストリップ10のリブ18と同様に、下水管100とストリップ10との間に充填される充填材102に係合する。
【0048】
第2突条42の外側面には、ストリップ10の第1係合部34と係合可能な第2係合部44が形成されている。第2係合部44は、第2突条42の始端側(本体38の側)へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成される。たとえば、第2係合部44は、断面略三角形状を有しており、その始端側の面が、第2突条42に対して垂直に形成される。
【0049】
また、本体38の、第1突条40と第2突条42との間の位置には、エラストマなどの止水材46が設けられている。止水材46は、薄い板状体であり、本体38の長手方向に沿ってその全体に亘って連続して設けられて、ストリップ10の第2壁28をジョイナ12の第1突条40と第2突条42との間に嵌め込んだときに、ストリップ10の第2壁28の始端と接触して、これらの間を止水する。
【0050】
さらに、本体38の一方の面の、略中央部には、フレキシブル部48が形成されている。フレキシブル部48は、材質がたとえば合成ゴム,軟質合成樹脂またはエラストマ等であって、本体38の長手方向に沿ってその全体に亘って連続して形成されている。図5に示すように、このフレキシブル部48は、幅方向の各側縁48a,48aが互いに間隔を隔てた状態で、ジョイナ12の本体38の長手方向に沿って本体38の外面に固着されている。
【0051】
また、本体38の、フレキシブル部48の側縁48aと側縁48aとの間の位置には、屈曲部50が形成されている。屈曲部50は、断面形状がほぼ逆U字状であり、本体38の幅方向の略中央部を屈曲して形成されたものである。屈曲部50は、本体38の長手方向の全体に亘って連続して形成されており、本体38の外面側(下水管100の側)に突出している。
【0052】
図5に示すように、補強部材52は、材質がたとえば鋼等の金属製、または硬質塩化ビニル等の合成樹脂製であり、たとえば所定の幅および厚みで形成された1つの帯状体を屈曲することによって形成される。この補強部材52は、ストリップ10に装着して使用するものであり、帯状の本体54(補強部材本体)を含む。
【0053】
本体54は、水平方向に延びる天板部56と、この天板部56の幅方向両側を下方向に屈曲して形成された左右の側壁部58と、各側壁部58の下端縁をさらに内側に屈曲して形成された左右の底板部60とからなり、断面略台形状を有している。
【0054】
側壁部58は、天板部56から外側に向かって傾斜するテーパ状に形成される。一方の側壁部58の下端縁と他方の側壁部58の下端縁との水平距離、すなわち、補強部材52の幅方向の最大長さ(最大幅)は、互いに隣接するリブ18どうしの間隔と略等しい寸法であり、たとえば27mmである。つまり、補強部材52をストリップ10へ取り付けた状態では、互いに隣接するリブ18のそれぞれに補強部材52の側壁部58の下端縁が当接することとなる。
【0055】
また、側壁部58の上端縁と下端縁との垂直距離、すなわち、補強部材52の高さ方向の長さ(高さ)は、ストリップ10における本体16と第2アンカ部22bとの垂直距離よりも少し小さい寸法であり、たとえば14mmである。さらに、上述したように、補強部材52の最大幅は、互いに隣接する第2アンカ部22bの内側端どうしの間隔よりも大きい寸法である。つまり、ストリップ10へ取り付けられた補強部材52は、ストリップ10の本体16と最も近い(直近の)第2アンカ部22bによってその落下が防止され、この第2アンカ部22bと本体16との間に保持されることとなる。
【0056】
図2−図6を参照して、下水管100の内面100aに螺旋管14を形成して、下水管100を更生する方法を以下に示す。
【0057】
先ず、図2に示すストリップ10と補強部材52とを準備して、図5に示すように、ストリップ10に補強部材52を取り付ける。具体的には、ストリップ10のリブ18を少し左右に押し拡げて、たとえば天板部56がストリップ10の本体16に当接するまで補強部材52を押し込み、ストリップ10の本体16と第2アンカ部22bとの間に補強部材52を収容する。ただし、ストリップ10の製造段階でストリップ10に補強部材52を取り付けておくこともできる。
【0058】
次に、図4に示すジョイナ12を準備する。そして、ストリップ10を下水管100の内面100aに沿って螺旋状に巻回するとともに、隣接するストリップ10の幅方向側縁どうしをジョイナ12で接合して、図6に示すように、螺旋管14を形成する。ストリップ10とジョイナ12とを接合するときには、ストリップ10の条溝24とジョイナ12の第1突条40とを嵌め合わせるとともに、ストリップ10の第2壁28をジョイナ12の第1突条40と第2突条42との間に嵌め込んで、第1係合部34の先端側の面とジョイナ12の第2係合部44の始端側の面とを当接させる。これによって、ストリップ10の第1係合部34とジョイナ12の第2係合部44とが互いに係合することとなる。
【0059】
続いて、下水管100の内面100aと螺旋管14との間に充填材102を充填する。たとえば、充填材102には、セメントミルク等のようなモルタルを用いる。ストリップ10に形成されているリブ18は、この充填材102内に埋め込まれ、充填材102の硬化後は、このリブ18が充填材102に固定される。これで螺旋管14の施工が終了する。
【0060】
この実施例では、アンカ部22のうちの少なくとも1つがリブ18の先端20よりも本体16側の位置に形成される。このため、ストリップ10のアンカ効果を低下させずに、ストリップ10と下水管100の内面100aとの当接面積を小さく抑えて、下水管100の内面100aと充填材102との付着面積を拡大させることができる。つまり、この実施例によれば、ストリップ10と充填材102との固定強度を低下させずに、下水管100の内面100aと充填材102との付着強度を増大させることができる。したがって、ストリップ10と下水管100の内面100aとを強固に固定することができる。
【0061】
さらに、この実施例では、リブ18の高さ方向に複数のアンカ部22が並んで形成されるため、各々のアンカ部22の幅を小さく設定しても、ストリップ10のアンカ効果を維持することができる。このため、リブ18の先端にその幅を小さく設定したアンカ部22を形成するとともに、このアンカ部22よりも本体16側の位置に他のアンカ部22を形成すれば、ストリップ10と下水管100の内面100aとの当接面積を小さく抑えたまま、ストリップ10と下水管100の内面100aとの安定を確保することが可能となり、この場合には、ストリップ10を下水管100の内面100aに沿って螺旋状に巻回するときの施工性を向上させることができる。
【0062】
さらに、この実施例によれば、第1アンカ部20は、第2アンカ部22の幅よりも小さい幅を有しており、アンカ部22は、全体として、リブ18の先端20側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなる形状に形成されている。このため、たとえばリブ18とリブ18との間に補強部材52を押し込む際に、リブ18をスムーズに左右に押し拡げて、ストリップ10の本体16と第2アンカ部22との間に補強部材52を収容することができる。したがって、ストリップ10に補強部材52を容易に取り付けることができる。
【0063】
さらにまた、この実施例では、第1アンカ部22aは、リブ18の先端20側へ向かうにつれて拡大する形状を有している。このため、ストリップ10の下水管100の内面100aに対する安定性を向上させることができる。また、第1アンカ部20への負担が軽減されるため、第1アンカ部は、壊れたり、変形したりせず、その機能を維持し続けることができる。
【0064】
また、この実施例では、第1アンカ部22aおよび第2アンカ部22bの互いに向かい合う面がそれぞれ異なる方向に突出して形成される。ここで、上述したように、ストリップ10は、硬質塩化ビニル等のような合成樹脂の押出成形によって連続的に形成されるが、第1アンカ部22aおよび第2アンカ部22bの互いに向かい合う面が同じ方向に突出して形成されている場合には、ストリップ10を押出成形するときに冷却によって合成樹脂が収縮すること等で、第1アンカ部22aと第2アンカ部22bとが金型を挟み込んでしまい、生産性が悪くなる恐れがある。これに対し、この実施例によれば、リブ18の高さ方向に隣接する第1アンカ部22aおよび第2アンカ部22bの互いに向かい合う面がそれぞれ異なる角度で突出して形成されるため、ストリップ10を押出成形するときに冷却によって合成樹脂が収縮して、隣接するアンカ部どうしが金型を挟み込もうとしても、その挟み込もうとする力を逃すことができる。したがって、合成樹脂を押し出し易くなり、ストリップ10の生産性が向上する。
【0065】
さらにまた、この実施例では、互いに隣接するリブ18の間に補強部材52が取り付けられ、この補強部材52が、ストリップ10の本体16と第2アンカ部22bとの間に保持される。このため、ストリップ10を下水管100の内面100aに沿って螺旋状に巻回するときにも、ストリップ10から補強部材52が極めて外れにくくい。また、下水管100が屈曲ないし湾曲している場合であっても、ストリップ10から補強部材52が極めて外れにくくなる。
【0066】
なお、上述の実施例では、ストリップ10は、老朽化した下水管100を更生する螺旋管14を形成するために用いられたが、これに限定される必要はない。たとえば、新設の下水管100の内面100aを保護する螺旋管14を形成するために用いることもできる。
【0067】
また、上述の実施例では、ストリップ10は、下水管100の内面100aに沿って螺旋状に巻回され、その幅方向側縁どうしをジョイナに接合されることによって螺旋管14を形成したが、これに限定される必要はない。たとえば、ストリップ10(本体16)の一方側縁に条溝24を形成するとともに、ストリップ10(本体16)の他方側縁に条溝24と嵌合可能な突条を形成し、互いに隣接するストリップ10の条溝24と突条とを嵌合させてそれらを接合することによって、螺旋管14を形成してもよい。
【0068】
さらに、上述の実施例では、ストリップ10に3つのリブ18が形成され、その3つのリブ18のそれぞれの間に補強部材52が装着されたが、これに限定される必要はなく、ストリップ10自体の強度および螺旋管14の直径に応じて、螺旋管14を適切に補強できるように、適切な本数の補強部材52を使用すればよい。
【0069】
さらにまた、上述の実施例では、リブ18には、断面略台形状の第1アンカ部22aと断面略長方形状の第2アンカ部22bとが形成された。しかしながら、これらは、あくまでストリップと下水管の内面とを強固に固定するためのものであり、要は、アンカ効果を低下させずに、下水管100の内面100aと充填材102との付着面積を拡大させることができるのであれば、アンカ部22の形状は特に限定されるものではない。
【0070】
たとえば、図7および図8に示すストリップ10の変形実施例では、第1アンカ部22aが、断面略長方形状に形成され、第2アンカ部22bも、断面略長方形状に形成される。第1アンカ部22aは、第2アンカ部22bの幅よりも小さい幅を有している。
【0071】
また、図9および図10に示すストリップ10の変形実施例では、第1アンカ部22aが、断面略長方形状に形成され、第2アンカ部22bが、リブ18の先端20側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなる断面略三角形状に形成される。第1アンカ部22aは、第2アンカ部22bの最大幅、つまり第2アンカ部22bの始端側の面の幅よりも小さい幅を有している。
【0072】
さらに、図11および図12に示すストリップ10のリブ18の変形実施例では、第1アンカ部22aが、断面略楕円形状に形成され、第2アンカ部22bが、断面略長方形状に形成される。第1アンカ部22aの直径は、第2アンカ部22bの幅よりも小さく設定される。この実施例によれば、第1アンカ部22aの先端側の面が、リブ18の先端20側へ向かうにつれて幅方向の長さが小さくなる緩やかな曲面状に形成されるため、リブ18とリブ18との間に補強部材52を押し込み易い。したがって、ストリップ10に補強部材52をより容易に取り付けることができる。
【0073】
また、図13および図14に示すストリップ10のリブ18の変形実施例では、第1アンカ部22aが、リブ18の先端20側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなる断面略三角形状に形成され、第2アンカ部22bが、断面略長方形状に形成される。第1アンカ部22aの最大幅、つまり第1アンカ部22aの始端側の面の幅は、第2アンカ部22bの幅よりも小さく設定される。この実施例によれば、第1アンカ部22a自身がリブ18の先端20側へ向かうにつれて幅方向の長さが小さくなる形状を有しているため、図11および図12に示す実施例と同様に、リブ18とリブ18との間に補強部材52を押し込み易い。したがって、ストリップ10に補強部材52をより容易に取り付けることができる。さらに、第1アンカ部22aと下水管100の内面100aとが点接触するため、ストリップ10と下水管100の内面100aとの当接面積を狭小に抑えることができる。したがって、ストリップ10と下水管100の内面100aとをより強固に固定することができる。
【0074】
また、図15および図16に示すストリップ10のリブ18の変形実施例では、第1アンカ部22aおよび第2アンカ部22bのそれぞれが、リブ18の先端20側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなる断面略三角形状に形成される。第1アンカ部22aの最大幅、つまり第1アンカ部22aの始端側の面の幅は、第2アンカ部22bの最大幅、つまり第2アンカ部22bの始端側の面の幅よりも小さく設定される。この実施例によれば、第1アンカ部22aおよび第2アンカ部22b自身がリブ18の先端20側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなる形状を有しているため、図11―図14に示す実施例と同様に、リブ18とリブ18との間に補強部材52を押し込み易い。したがって、ストリップ10に補強部材52をより容易に取り付けることができる。さらに、図13および図14に示す実施例と同様に、第1アンカ部22aと下水管100の内面100aとが点接触するため、ストリップ10と下水管100の内面100aとの当接面積を狭小に抑えることができる。したがって、ストリップ10と下水管100の内面100aとをより強固に固定することができる。
【0075】
さらにまた、上述の実施例では、リブ18の高さ方向に第1アンカ部20と第2アンカ部22とが並んで形成されたが、これに限定される必要はない。たとえば、図17および図18に示すように、リブ18の先端20よりも本体16側に1つのアンカ部22を形成するだけでもよい。この場合にも、図1の実施例と同様に、ストリップ10のアンカ効果を低下させずに、ストリップ10と下水管100の内面100aとの当接面積を小さく抑えて、下水管100の内面100aと充填材102との付着面積を拡大させることができる。したがって、ストリップ10と下水管100の内面100aとを強固に固定することができる。また、図示は省略するが、リブ18の高さ方向に第3アンカ部、第4アンカ部、・・・と、任意の数のアンカ部を形成することもできる。
【0076】
さらに、上述の実施例では、補強部材52の最大幅は、互いに隣接するリブ18どうしの間隔に略等しい寸法に設定され、補強部材52をストリップ10へ取り付けた状態では、互いに隣接するリブ18のそれぞれに補強部材52の側壁部58の下端縁が当接した。しかしながら、これらは、あくまでストリップ10に取り付けた補強部材52を本体16と第2アンカ部22bとの間に保持するためのものであり、要は、補強部材52の最大幅が、互いに隣接する第2アンカ部22bの内側端どうしの間隔よりも大きく、互いに隣接するリブ18の間隔よりも小さい寸法であればよい。
【0077】
さらに、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 …螺旋管形成用ストリップ
12 …ジョイナ
14 …螺旋管
16 …ストリップ本体
18 …リブ
22,22a,22b …アンカ部
24 …条溝
40 …第1突条
42 …第2突条
52 …補強部材
100 …下水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成されるストリップ本体と、前記ストリップ本体の幅方向に所定の間隔を隔てて形成される複数のリブとを備える螺旋管形成用ストリップにおいて、
前記リブの先端よりも前記ストリップ本体側の位置に少なくとも1つのアンカ部を形成したことを特徴とする、螺旋管形成用ストリップ。
【請求項2】
複数のアンカ部が前記リブの高さ方向に並んで形成される、請求項1記載の螺旋管形成用ストリップ。
【請求項3】
前記複数のアンカ部は、第1アンカ部とこの第1アンカ部よりも前記ストリップ本体側の位置に形成される第2アンカ部とを含み、前記第1アンカ部は、前記第2アンカ部の幅よりも小さい幅を有する、請求項2記載の螺旋管形成用ストリップ。
【請求項4】
前記第1アンカ部は、前記リブの先端に形成されるかつ当該リブの先端側へ向かうにつれて拡大する形状を有する、請求項3記載の螺旋管形成用ストリップ。
【請求項5】
前記リブの高さ方向に隣接する前記アンカ部の互いに向かい合う面がそれぞれ異なる角度で突出して形成される、請求項2ないし4のいずれかに記載の螺旋管形成用ストリップ。
【請求項6】
互いに隣接する前記リブの間には、補強部材が取り付けられ、前記補強部材が、前記ストリップ本体と当該ストリップ本体の直近の前記アンカ部との間に保持される、請求項1ないし5のいずれかに記載の螺旋管形成用ストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−52706(P2011−52706A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199599(P2009−199599)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【出願人】(507157676)株式会社クボタ工建 (8)
【Fターム(参考)】