説明

血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置

【課題】被測定者への拘束が低減でき、被測定者に苦痛を与えることなく高精度に血圧情報を測定することが可能な血圧情報測定装置用カフを提供する。
【解決手段】カフ100Aは、足背動脈231を圧迫して血圧情報を測定するために足200に装着されて使用されるものであって、装着状態において足背動脈231が位置する部分の足甲201の表面を覆うように配置される圧迫用空気袋130と、装着状態において土踏まず202a部分の足底202の表面を覆うように配置される固定用空気袋140と、装着状態において足甲201および足底202を覆うように足200に巻き付けられることで圧迫用空気袋130および固定用空気袋140をそれぞれ足200に向けて押し付け固定する固定部材としての自在変形部材110および締付けベルト120とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧情報の測定に際して生体に巻き付けられて使用される血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧情報を測定することは、その人の健康状態を知る上で非常に重要なことである。近年においては、たとえば脳卒中や心不全、心筋梗塞等の心血管系疾患のリスク解析に資する代表的な指標としてその有用性が広く認められている収縮期血圧値、拡張期血圧値等を測定することに限られず、脈波を測定すること等によって心臓負荷や動脈硬化度等を捉える試み等もなされている。
【0003】
血圧情報測定装置は、これら血圧情報を測定するための装置であり、循環器系疾患の早期発見や予防、治療等の分野においてさらなる活用が期待されている。なお、血圧情報には、収縮期血圧値、拡張期血圧値、平均血圧値、脈波、脈拍、動脈硬化度を示す各種指標等、循環器系の種々の情報が広く含まれる。
【0004】
一般に、血圧情報の測定には、血圧情報測定装置用カフ(以下、単にカフとも称する)が利用される。ここで、カフとは、内空を有する膨縮袋を含む帯状または環状の構造物であって生体の一部に装着が可能なものを意味し、気体や液体等の作動体を上記内空に注入することによって膨縮袋を膨張させて動脈を圧迫することで血圧情報の測定に利用されるもののことを指す。
【0005】
生体に装着されて使用されるカフとしては、手首に巻き付けられて使用されるものや、上腕に巻き付けられて使用されるもの、足首に巻き付けられて使用されるもの等、種々の構成のものが知られている。
【0006】
特に、手首に巻き付けられて使用される手首式カフとしては、たとえば、特開2009−183629号公報(特許文献1)に開示のものや、特開2010−119447号公報(特許文献2)に開示のものがある。これら特許文献1または2に開示された手首式カフにあっては、カフに内包される空気袋によって手首中を延在する橈骨動脈およびその近傍の生体組織が圧迫されるように構成されており、これにより血圧情報の測定が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−183629号公報
【特許文献2】特開2010−119447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カフを装着する部位を手首や上腕、足首等とした場合には、当該部位の動脈の近傍組織が比較的軟質な生体組織を多く含むため、当該部位の動脈のみを選択的に圧迫しようとすると、当該部位の動脈が選択的な圧迫により近傍組織の方向へ押し出されることになり、適切な動脈圧迫が困難となり、結果として正確に血圧情報を測定することが困難になる。
【0009】
そのため、手首、上腕、足首等を測定部位とした場合には、当該部位の動脈のみを選択的に圧迫するのではなく、近傍組織を含めたすくなくとも測定部位半周以上をカフによって圧迫する必要がある。したがって、カフによる測定部位の圧迫により血圧測定中の拘束感が非常に高いものとなっていた。
【0010】
さらに、このように測定部位を半周以上カフで圧迫すると、その内圧が血圧(動脈の内圧)より低い静脈を圧閉することになり、血圧測定中に当該部位より末梢側に鬱血が生じてしまう等、被測定者に苦痛を与えかねないものとなっていた。
【0011】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、被測定者への拘束が低減でき、被測定者に苦痛を与えることなく高精度に血圧情報を測定することが可能な血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明者は、カフが装着される被測定部位として、踝よりも足指側に位置する足甲および足底を含む部分の足を採用することに着目した。当該部位には、足背動脈が延在しており、当該足背動脈を圧迫することで手首や上腕、足首等を被測定部位とする場合と同様に血圧情報の測定が可能である。
【0013】
このように、動脈の近傍組織が骨や腱等の比較的硬質な生体組織である足背動脈を測定部位とすることで、動脈を選択的に圧迫しても上記のように動脈が近傍組織の方向へ押し出されることを防止でき、正確な血圧情報測定が可能となるとともに、測定部位付近の静脈を圧閉することが低減でき、末梢側の鬱血の低減が図られ、結果として被測定者の拘束感および苦痛を低減できることになる。
【0014】
しかしながら、足背動脈を測定部位としたとき、動脈を圧迫するためのカフは踝よりも足指側に位置する足甲および足底を含む部分の足に装着されることになる。このカフが装着される足甲および足底を含む部位は、手首や上腕、足首等に比較してその外形形状が偏平でかつ歪であるため、足背動脈が位置する部分の近傍を均等に圧迫することが困難になる問題がある。より詳細には、当該部位に位置する足甲は、踝側から足指側に向けて緩やかに傾斜しており、また当該部位に位置する足底には、凹状の土踏まずが位置している。
【0015】
そのため、上記部位に巻き付けられて使用されるカフの固定方法を、従来公知の手首式カフや上腕式カフ、足首式カフ等と同様の帯状の構造をそのまま適用した場合には、膨縮袋の膨張に伴ってカフが浮き上がってしまい、カフの位置ずれが生じて測定精度が大幅に低下してしまうといった問題が生じてしまう。特に、足背動脈を選択的に圧迫した場合、足底に位置する土踏まず部分を覆った状態でカフが巻き付け固定されることになるため、カフの浮き上がりや位置ずれが顕著に現れる。
【0016】
そこで、本発明者らは、当該問題をも解決すべく、以下に示す如くの血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置を考案した。
【0017】
本発明に基づく血圧情報測定装置用カフは、足背動脈を圧迫して血圧情報を測定するために、足甲および足底を覆うように巻き付けられることで足に装着されて使用されるものであって、装着状態において足背動脈が位置する部分の足甲表面を覆うように配置される第1膨縮袋と、装着状態において少なくとも土踏まず部分の足底表面を覆うように配置される第2膨縮袋と、装着状態において足甲および足底を覆うように足に巻き付けられることで上記第1膨縮袋および上記第2膨縮袋をそれぞれ足に向けて押し付け固定する固定部材とを備えている。
【0018】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフにあっては、上記第2膨縮袋が、装着状態において足の周方向に沿って足底表面を覆う大きさを有していることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフにあっては、上記第2膨縮袋が、装着状態において足の周方向に沿って足底表面および足の両側面を覆う大きさを有していてもよい。
【0020】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフにあっては、上記第2膨縮袋が、装着状態において足の周方向に沿ってその全周を覆う大きさを有するとともに上記第1膨縮袋の外周面を覆っていてもよい。
【0021】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフにあっては、上記固定部材が、足甲および足底を覆うように足に巻き付けられる巻付け部と、上記巻付け部を足に巻き付けた状態を維持するための固定手段とを含んでいることが好ましい。
【0022】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフにあっては、上記巻付け部が、装着状態において上記第1膨縮袋の外側に位置し、足甲表面に沿わせて宛がわれる非弾性の宛がい部材と、足に対して締め付けられることで上記宛がい部材を足甲表面に向けて押し付ける締付けベルトとを含んでいることが好ましい。
【0023】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフにあっては、上記宛がい部材が、複数のパーツを上記巻付け部の周方向に並べて配置し、これら周方向に並べて配置された複数のパーツのうちの隣接するもの同士を回転可能に連結することで構成された自在変形部材にて構成されていることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の局面に基づく血圧情報測定装置は、上述した本発明に基づく血圧情報測定装置用カフと、上記第1膨縮袋および上記第2膨縮袋を膨縮させる膨縮機構と、上記第1膨縮袋内の圧力および上記第2膨縮袋内の圧力を検知する圧力検知部と、上記圧力検知部によって検知された圧力情報に基づいて血圧値を算出する血圧値算出部とを備えている。
【0025】
上記本発明の第1の局面に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記第1膨縮袋および上記第2膨縮袋を膨縮させる際に、上記第2膨縮袋内の圧力が常に上記第1膨縮袋内の圧力と同等以上かあるいは拡張期血圧値程度に維持されるように、上記膨縮機構の動作が制御されることが好ましい。
【0026】
上記本発明の第1の局面に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記第2膨縮袋を出入りすることで上記第2膨縮袋を膨縮させる作動体が、上記第1膨縮袋を出入りすることで上記第1膨縮袋を膨縮させる作動体よりも難圧縮性であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、被測定者への拘束が低減でき、被測定者に苦痛を与えることなく高精度に血圧情報を測定することが可能な血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】踝よりも足指側に位置する部分の足の内部組織を概略的に示した正面図である。
【図2】踝よりも足指側に位置する部分の足の内部組織を示した模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における血圧計用カフの装着状態を示す模式正面図である。
【図4】図3に示す血圧計用カフの装着状態を示す模式側面図である。
【図5】図3に示す血圧計用カフの装着状態を示す模式断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における血圧計の機能ブロックの構成を示す図である。
【図7】図6に示す血圧計の制御部の動作フローを示す図である。
【図8】図6に示す血圧計の制御部の他の動作フローを示す図である。
【図9】図6に示す血圧計の制御部のさらに他の動作フローを示す図である。
【図10】第1変形例に係る血圧計用カフの装着状態を示す模式断面図である。
【図11】第2変形例に係る血圧計用カフの装着状態を示す模式断面図である。
【図12】第3変形例に係る血圧計用カフの装着状態を示す模式断面図である。
【図13】第4変形例に係る血圧計の機能ブロックの構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2における脈波計用カフの装着状態を示す模式断面図である。
【図15】本発明の実施の形態2における脈波計の機能ブロックの構成を示す図である。
【図16】図15に示す脈波計の制御部の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同等のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0030】
図1は、被測定部位である、踝よりも足指側に位置する部分の足の内部組織を概略的に示した図であり、図2は、図1に示すII−II線に沿った模式断面図である。まず、本発明の実施の形態について詳細に説明するに先立って、これら図1および図2を参照して、以下に示す実施の形態における血圧情報測定装置用カフが装着される被測定部位である、踝よりも足指側に位置する部分の足の内部組織の構成について説明する。なお、図2に示す足の断面は、左足の当該部位を末梢側から中枢側に向けて見た場合のものである。
【0031】
図1および図2に示すように、足200の足首203よりも足指側に位置する部分には、足甲201と足底202とが位置している。足甲201は、足200の上面側の部位であり、足底202は、足200の下面側の部位である。なお、足底202の所定位置には、凹状の形状を有する土踏まず202aが位置している。
【0032】
足200の内部の所定位置には、第一中足骨211および第二中足骨212を含む複数の骨と、長母趾伸筋腱221および短母趾伸筋腱222を含む複数の腱と、足背動脈231、内側足底動脈232および外側足底動脈233を含む複数の動脈とが位置している。このうち、足背動脈231は、第一中足骨211と第二中足骨212との間の足甲201側の部分に延在しており、足首203側から足指側に向けて走行している。
【0033】
以下に示す本発明の実施の形態における血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置は、いずれも、カフが足甲201および足底202を覆うように足200に巻き付けられて装着されることで、第一中足骨211および第二中足骨212が位置する部分近傍の足背動脈231を選択的に圧迫可能に構成されたものである。当該カフが装着される上記部位は、第一ないし第五中足骨等が内部に位置することで手首や上腕、足首等に比較して軟質な生体組織の占める割合が比較的小さい部位である。
【0034】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置用カフは、上述した被測定部位としての足200に巻き付けられて使用される足式血圧計用カフであり、本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置用カフは、当該足式血圧計用カフを具備し、上述した足200中を延在する足背動脈231を当該カフに内包された膨縮袋としての空気袋を用いて圧迫し、足背動脈231の内圧の変動を当該空気袋の内圧の変動として捉え、これに基づいて収縮期血圧値および拡張期血圧値等の血圧値を測定する足式血圧計である。
【0035】
図3は、本実施の形態における血圧計用カフの装着状態を示す模式正面図であり、図4は、当該血圧計用カフの装着状態を示す模式側面図である。また、図5は、本実施の形態における血圧計用カフの装着状態を示す、図3および図4に示すV−V線に沿った模式断面図である。まず、これら図3ないし図5を参照して、本実施の形態における血圧計用カフの構造について説明する。なお、図5に示す足の断面は、左足を末梢側から中枢側に向けて見た場合のものであり、図3ないし図5においては、理解を容易とするために、カフの表面の大部分を覆うこととなる外装カバーの図示は省略してある。
【0036】
図3ないし図5に示すように、本実施の形態における血圧計用カフ100Aは、宛がい部材としての自在変形部材110と、締付けベルト120と、第1膨縮袋としての圧迫用空気袋130と、第2膨縮袋としての固定用空気袋140と、図示しない外装カバーとを主として備えている。このうち、自在変形部材110および締付けベルト120は、上述した圧迫用空気袋130および固定用空気袋140をそれぞれ足200に向けて押し付け固定するための固定部材に相当するとともに、足甲201および足底202を覆うように足200に巻き付けられる巻付け部に相当する。
【0037】
図示しない外装カバーは、装着状態において足200に接触することとなるシート状の内布と、装着状態において内布よりも外側に位置することとなるシート状の外布とを重ね合わせてその周縁を接合(たとえば縫合や溶着等)することによって袋状に形成されており、上述した自在変形部材110、締付けベルト120の一部、圧迫用空気袋130および固定用空気袋140を内包している。なお、締付けベルト120の大部分は、当該外装カバーの外部に引き出された状態とされる。
【0038】
圧迫用空気袋130は、足200の内部を延在する足背動脈231を圧迫するために、装着状態において足背動脈231が位置する部分の足甲201の表面を含む部分を覆うように配置される。より詳細には、圧迫用空気袋130は、足背動脈231が位置する部分の足甲201の表面と、足200の周方向に沿って当該部分を挟み込む位置の足甲201の表面とを覆うように配置される。なお、圧迫用空気袋130は、たとえば自在変形部材110に図示しない両面テープ等によって固定されることにより、カフ100Aに組付けられている。
【0039】
圧迫用空気袋130は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなる。圧迫用空気袋130としては、たとえば2枚の樹脂シートを重ね合わせ、その周縁を溶着することによって袋状に形成されたものが利用される。圧迫用空気袋130の内部に位置する膨縮空間は、図示しないニップルを介して後述するエア管80(図6参照)に接続されており、後述する圧迫用エア系コンポーネント30に含まれる加圧ポンプ31および排気弁32(いずれも図6参照)によってその加減圧が行なわれる。
【0040】
なお、圧迫用空気袋130を構成する樹脂シートの材質としては、伸縮性に富んでおり、溶着後において膨縮空間からの漏気がないものであればどのようなものでも利用が可能である。このような観点から、樹脂シートの材質としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂や、軟質塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等が挙げられる。
【0041】
固定用空気袋140は、装着状態において土踏まず202a部分が位置する足底202の表面を覆うように配置される。より詳細には、固定用空気袋140は、土踏まず202aと同等程度の大きさとなるように構成されており、装着状態において凹状の土踏まず202aに宛がわれるように配置される。なお、固定用空気袋140は、たとえば締付けベルト120に図示しない両面テープ等によって固定されることにより、カフ100Aに組付けられている。
【0042】
固定用空気袋140は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなる。固定用空気袋140としては、たとえば2枚の樹脂シートを重ね合わせ、その周縁を溶着することによって袋状に形成されたものが利用される。固定用空気袋140の内部に位置する膨縮空間は、図示しないニップルを介して後述するエア管81(図6参照)に接続されており、後述する固定用エア系コンポーネント40に含まれる加圧ポンプ41および排気弁42(いずれも図6参照)によってその加減圧が行なわれる。
【0043】
なお、固定用空気袋140を構成する樹脂シートの材質としては、伸縮性に富んでおり、溶着後において膨縮空間からの漏気がないものであればどのようなものでも利用が可能である。このような観点から、樹脂シートの材質としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂や、軟質塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等が挙げられる。
【0044】
自在変形部材110は、後述するパーツ110a〜110cを含む複数のパーツをカフ100Aの周方向に並べて配置し、これら周方向に並べて配置された複数のパーツのうちの隣接するもの同士を連結ピンにて回転可能に連結したベルト状の部材である。個々のパーツは、カフ100Aの周方向の端部に凹部と凸部(図3および図4参照)とを有しており、これら隣接するパーツの凹部と凸部とが嵌め合わされた状態で上記連結ピンにて隣接するパーツが回転可能に連結されている。これにより、自在変形部材110は、宛がわれた足200の表面形状に沿って任意の形状に変化可能であり、装着状態において足200にフィットする。自在変形部材110は、装着状態において足甲201の表面に配置され、上述した圧迫用空気袋130の外側に位置している。
【0045】
自在変形部材110を構成する複数のパーツの各々は、圧迫用空気袋130に比較して剛性の高い部材にて構成され、圧迫用空気袋130の膨張によって個々のパーツ自体が弾性変形しないことが好ましい。当該観点から、複数のパーツの各々は、たとえばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体樹脂等の樹脂からなる部材か、低伸縮性となるように強化された繊維部材、あるいは金属部材等にて構成される。なお、各パーツの周方向長さは、足200の周囲長よりも十分に小さな大きさとする。
【0046】
複数のパーツが連結されて構成された自在変形部材110の周方向の一方端に位置するパーツ110aには、挿通孔110a1が設けられており、当該自在変形部材110の周方向の他方端に位置するパーツ110bには、挿通孔110b1が設けられている。これら一対の挿通孔110a1,110b1は、いずれも締付けベルト120が挿通される孔であり、当該挿通孔110a1,110b1に挿通された締付けベルト120が足200に締め付けられることにより、自在変形部材110の浮き上がりが防止される。
【0047】
また、自在変形部材110の周方向の所定位置に配置されたパーツ110cには、装着状態において外側に向かって突出して位置するように取付部110c1が設けられている。当該取付部110c1には、締付けベルト120の一端部120aが固定的に取付けられている。
【0048】
締付けベルト120は、上述したように自在変形部材110を足200に向けて締め付けることで圧迫用空気袋130を足200に向けて押し付けるための部材であり、また固定用空気袋140を足200に向けて直接押し付けるための部材でもある。締付けベルト120は、カフ100Aの周方向に沿って延びる柔軟な長尺の部材からなり、長手方向に一端部120aと他端部120bとを有している。締付けベルト120の長手方向の他端部120b寄りの外周面上には、面ファスナ122が取付けられている。
【0049】
締付けベルト120は、装着状態において足甲201の表面側の一部および足底202の表面に配置される。ここで、足甲201の表面側に配置された部分の締付けベルト120は、上述した自在変形部材110の外側に位置しており、足底202の表面に配置された部分の締付けベルト120は、上述した固定用空気袋140の外側に位置している。
【0050】
締付けベルト120は、非伸縮性かあるいは若干の伸縮性を有する部材にて構成されていることが好ましく、たとえば布や合成樹脂等の帯状の部材からなる。面ファスナ122は、締付けベルト120にて自在変形部材110を締め付けた状態を維持するための固定手段に相当し、被固定面としての締付けベルト120の表面に宛がわれることで当該宛がわれた部分の締付けベルト120に固定される。
【0051】
締付けベルト120は、装着状態において自在変形部材110の上記他方端寄りの部分を覆うように巻き付けられ、自在変形部材110の上記他方端に位置するパーツ110bに設けられた挿通孔110b1に対して外側から内側に向けて挿し込まれ、さらに自在変形部材110の上記一方端に位置するパーツ110aに設けられた挿通孔110a1に対して内側から外側に向けて挿し込まれて折り返されている。そして、締付けベルト120の折り返された部分は、折り返されていない部分の締付けベルト120に重ね合わされ、その他端部120b寄りの部分が面ファスナ122によって固定される。
【0052】
以上により、締付けベルト120が足200に締め付けられた状態において、自在変形部材110が周方向に沿って引っ張られた状態となり、その浮き上がりが防止されるとともに、自在変形部材110によって圧迫用空気袋130が足甲201の表面に向けて押し付けられ、かつ締付けベルト120によって固定用空気袋140が土踏まず202a部分の足底202の表面に向けて押し付けられる。
【0053】
図6は、本実施の形態における血圧計の機能ブロックの構成を示すブロック図である。次に、この図6を参照して、本実施の形態における血圧計の機能ブロックの構成について説明する。
【0054】
図6に示すように、本実施の形態における血圧計1Aは、上述したカフ100Aに加え、本体10Aを具備している。本体10Aは、エア管80,81を介してカフ100Aに接続されており、制御部20と、表示部21と、メモリ部22と、操作部23と、電源部24と、圧迫用エア系コンポーネント30と、固定用エア系コンポーネント40とを主として備えている。
【0055】
圧迫用エア系コンポーネント30は、加圧ポンプ31と、排気弁32と、圧力センサ33とを含んでおり、これら加圧ポンプ31、排気弁32および圧力センサ33が、上述した圧迫用空気袋130にエア管80を介して接続されている。このうちの加圧ポンプ31および排気弁32は、圧迫用空気袋130を加減圧するための膨縮機構に相当し、圧力センサ33は、圧迫用空気袋130の内圧を検知する圧力検知部に相当する。なお、本体10Aには、圧迫用エア系コンポーネント30の付属回路として、加圧ポンプ駆動回路35、排気弁駆動回路36および発振回路37が設けられている。
【0056】
固定用エア系コンポーネント40は、加圧ポンプ41と、排気弁42と、圧力センサ43とを含んでおり、これら加圧ポンプ41、排気弁42および圧力センサ43が、上述した固定用空気袋140にエア管81を介して接続されている。このうちの加圧ポンプ41および排気弁42は、固定用空気袋140を加減圧するための膨縮機構に相当する。なお、本体10Aには、固定用エア系コンポーネント40の付属回路として、加圧ポンプ駆動回路45、排気弁駆動回路46および発振回路47が設けられている。
【0057】
制御部20は、たとえばCPU(Central Processing Unit)にて構成され、血圧計1Aの全体を制御するための手段である。表示部21は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)にて構成され、測定結果等を表示するための手段である。メモリ部22は、たとえばROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)にて構成され、血圧値測定のための処理手順を制御部20等に実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果等を記憶したりするための手段である。操作部23は、被測定者等による操作を受付けてこの外部からの命令を制御部20や電源部24に入力するための手段である。電源部24は、制御部20に電力を供給するための手段である。
【0058】
制御部20は、加圧ポンプ31,41および排気弁32,42を駆動するための制御信号を加圧ポンプ駆動回路35,45および排気弁駆動回路36,46にそれぞれ入力したり、測定結果としての血圧値を表示部21やメモリ部22に入力したりする。また、制御部20は、圧力センサ33によって検出された圧力値に基づいて被測定者の血圧値を取得する血圧情報取得部(不図示)を含んでおり、この血圧情報測定部によって取得された血圧値が、測定結果として上述した表示部21やメモリ部22に入力される。また、制御部20は、圧力センサ43によって検出された圧力値に基づいて固定用空気袋140の加圧状態を判別する。なお、血圧計1Aは、測定結果としての血圧値を外部の機器(たとえばPC(Personal Computer)やプリンタ等)に出力する出力部を別途有していてもよい。出力部としては、たとえばシリアル通信回線や各種の記録媒体への書き込み装置等が利用可能である。
【0059】
加圧ポンプ駆動回路35は、制御部20から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ31の動作を制御する。排気弁駆動回路36は、制御部20から入力された制御信号に基づいて排気弁32の開閉動作を制御する。加圧ポンプ31は、圧迫用空気袋130の膨縮空間に空気を供給することにより圧迫用空気袋130の内部の圧力(以下、「カフ圧」とも称する)を加圧するためのものであり、その動作が上述した加圧ポンプ駆動回路35によって制御される。排気弁32は、圧迫用空気袋130の内部の圧力を維持したり、圧迫用空気袋130の膨縮空間を外部に開放してカフ圧を減圧したりするためのものであり、その動作が上述した排気弁駆動回路36によって制御される。圧力センサ33は、たとえば静電容量型の圧力センサであり、圧迫用空気袋130の内部の圧力に応じてその静電容量値が変化する。発振回路37は、圧力センサ33の静電容量値に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部20に入力する。
【0060】
加圧ポンプ駆動回路45は、制御部20から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ41の動作を制御する。排気弁駆動回路46は、制御部20から入力された制御信号に基づいて排気弁42の開閉動作を制御する。加圧ポンプ41は、固定用空気袋140の膨縮空間に空気を供給することにより固定用空気袋140の内部の圧力を加圧するためのものであり、その動作が上述した加圧ポンプ駆動回路45によって制御される。排気弁42は、固定用空気袋140の内部の圧力を維持したり、固定用空気袋140の膨縮空間を外部に開放して内圧を減圧したりするためのものであり、その動作が上述した排気弁駆動回路46によって制御される。圧力センサ43は、たとえば静電容量型の圧力センサであり、固定用空気袋140の内部の圧力に応じてその静電容量値が変化する。発振回路47は、圧力センサ43の静電容量値に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部20に入力する。
【0061】
図7は、本実施の形態における血圧計の制御部の動作フローを示す図である。次に、この図7を参照して、本実施の形態における血圧計の制御部の動作フローについて説明する。なお、このフローチャートに従うプログラムは、メモリ部22に予め記憶されており、制御部20がメモリ部22からこのプログラムを読み出して実行することにより、その処理が実行されるものである。
【0062】
血圧値を測定する際には、被測定者である使用者は予めカフ100Aを足200の被測定部位に装着し、この状態において本体10Aに設けられた操作部23を操作して血圧計1Aの電源をオンにする。これにより、電源部24から制御部20に対して電力が供給されて制御部20が駆動する。図7に示すように、制御部20は、その駆動後において、まず血圧計1Aの初期化を行なう(ステップS101)。
【0063】
次に、制御部20は、使用者の測定開始の指示を待ち、使用者が測定開始の指示を操作部23を操作することによって与えた場合に、排気弁42を閉塞させるとともに加圧ポンプ41を駆動して固定用空気袋140の加圧を開始し(ステップS102)、固定用空気袋140の内圧が所定値になるまでこれを上昇させ、所定値に達した時点で加圧ポンプ41の駆動を停止して固定用空気袋140の加圧を停止する(ステップS103)。なお、上記固定用空気袋140の内圧の所定値としては、静脈血の中枢への還流阻害防止の観点から拡張期血圧値と同等程度の圧力値とすることが好ましく、また30mmHg等の平均的に拡張期血圧値以下となる圧力や、前回の測定時の拡張期血圧値以下の圧力としてもよい。
【0064】
次に、制御部20は、排気弁32を閉塞させるとともに加圧ポンプ31を駆動して圧迫用空気袋130の加圧を開始してカフ圧を徐々に上昇させる(ステップS104)。この圧迫用空気袋130を加圧する過程において、制御部20は、公知の手順で拡張期血圧値および収縮期血圧値を算出する(ステップS105)。具体的には、制御部20は、圧迫用空気袋130のカフ圧を上昇させる過程において発振回路37から得られる発振周波数に基づき圧迫用空気袋130内のカフ圧を算出し、算出したカフ圧に重畳した動脈容積の変化に基づく微小な圧変化を脈波情報として抽出する。そして、制御部20は、抽出された脈波情報に基づいて血圧値を算出する。
【0065】
ステップS105において血圧値が算出されると、制御部20は、加圧ポンプ31を停止し、排気弁32を開放することで圧迫用空気袋130内の空気を完全に排気するとともに、排気弁42を開放することで固定用空気袋140内の空気を完全に排気し(ステップS106)、測定結果としての血圧値を表示部21に表示するとともに、当該血圧値をメモリ部22に格納する(ステップS107)。
【0066】
その後、制御部20は、使用者の電源オフの指令を待ってその動作を終了する。なお、以上において説明した測定方式は、圧迫用空気袋130の加圧時に脈波情報を検出するいわゆる加圧測定方式に基づいたものであるが、圧迫用空気袋130の減圧時に脈波情報を検出するいわゆる減圧測定方式を採用することも当然に可能である。
【0067】
以上において説明した本実施の形態における血圧計1Aおよびこれに具備される血圧計用カフ100Aにあっては、上述したように、装着状態において足背動脈231が位置する部分の足甲201の表面を覆うように圧迫用空気袋130が配置されるとともに、土踏まず202a部分の足底202の表面を覆うように固定用空気袋140が配置され、これら圧迫用空気袋130および固定用空気袋140がいずれも足200に向けて自在変形部材110および締付けベルト120によって押し付け固定されることになる。
【0068】
そのため、土踏まず202aが位置する部分において固定用空気袋140が膨張することにより、土踏まず202aが位置することで形成された足底202の凹状の窪みが、当該固定用空気袋140によって充填されることになり、足200に巻き付けられた締付けベルト120の外形が、なだらかな湾曲状となる。したがって、圧迫用空気袋130の膨張時において、締付けベルト120および自在変形部材110にその周方向に沿ってほぼ均等に張力がかかることになる。その結果、被測定部位を全周にわたってほぼ均等に圧迫することが可能になり、カフ100Aの位置ずれが防止できるとともに、締付けベルト120が周方向に移動して土踏まず202aの両側部分の皮膚がカフ100Aによって巻き込まれることが防止できる。
【0069】
よって、上記構成を採用することにより、被測定者への拘束が低減でき、被測定者に苦痛を与えることなく高精度に血圧値を測定することが可能な血圧計用カフおよびこれを備えた血圧計とすることができる。
【0070】
図8および図9は、本実施の形態における血圧計の制御部の他の動作フローおよびさらに他の動作フローを示す図である。上述した図7に示す制御部の動作フローは、圧迫用空気袋130の加圧開始に先立ち、固定用空気袋140の加圧を開始してこれを完了させるものであったが、本実施の形態における血圧計1Bにあっては、図8および図9に示す如くの制御部の動作フローを採用することも可能である。
【0071】
図8に示す制御部の動作フローは、圧迫用空気袋130の加圧と固定用空気袋140の加圧とを同時に開始させて血圧値を測定するものである。すなわち、図8に示すように、制御部20は、その駆動後において、まず血圧計1Aの初期化を行ない(ステップS201)、次に被測定者である使用者の測定開始の指示に基づき、排気弁32,42を閉塞させるとともに加圧ポンプ31,41を駆動して圧迫用空気袋130および固定用空気袋140の加圧を開始する(ステップS202)。
【0072】
当該ステップS202においては、圧迫用空気袋130の内圧と固定用空気袋140の内圧とが同等な値を示すように常に維持されるか、あるいは固定用空気袋140の内圧が圧迫用空気袋130の内圧よりも常に高い状態が維持されるように、制御部20が加圧ポンプ31,41の駆動を制御する。その際、制御部20は、公知の手順で拡張期血圧値および収縮期血圧値を算出する(ステップS203)。
【0073】
ステップS203において血圧値が算出されると、制御部20は、加圧ポンプ31,41を停止し、排気弁32を開放することで圧迫用空気袋130内の空気を完全に排気するとともに、排気弁42を開放することで固定用空気袋140内の空気を完全に排気し(ステップS204)、測定結果としての血圧値を表示部21に表示するとともに、当該血圧値をメモリ部22に格納する(ステップS205)。
【0074】
なお、図8に示す制御部の動作フローと近似の動作フローを利用して他の加圧測定方式または減圧測定方式を採用することも可能である。その場合には、圧迫用空気袋130の加圧と固定用空気袋140の加圧とを同時に開始させ、固定用空気袋140の内圧が所定値に達した時点で固定用空気袋140の加圧を停止し、固定用空気袋140の加圧の停止後に引き続き圧迫用空気袋130の加圧を継続して当該圧迫用空気袋130の加圧過程において加圧測定方式に基づいて血圧値を測定するか、あるいは固定用空気袋140の加圧の停止後に引き続き圧迫用空気袋130を加圧してその内圧が所定値に達した時点で減圧を開始し、当該圧迫用空気袋130の減圧過程において減圧測定方式に基づいて血圧値を算出するか、のいずれかを行なう。この場合、固定用空気袋140の加圧を停止する上記所定値としては、好ましくは30mmHg等の平均的に拡張期血圧値以下となる圧力値や、前回の測定時の拡張期血圧値以下の圧力値とされ、その他にも、圧迫用空気袋130の容積変化を検出し、その変化量が急増した(たとえば、前の拍の150%に増加した)際の圧力値とされてもよい。
【0075】
図9に示す制御部の動作フローは、圧迫用空気袋130の加圧と固定用空気袋140の加圧とを同時に開始させ、これらの内圧が所定値に達した時点で圧迫用空気袋130および固定用空気袋140の加圧の停止を行なってその後に血圧値を測定するものである。すなわち、図9に示すように、制御部20は、その駆動後において、まず血圧計1Aの初期化を行ない(ステップS301)、次に被測定者である使用者の測定開始の指示に基づき、排気弁32,42を閉塞させるとともに加圧ポンプ31,41を駆動して圧迫用空気袋130および固定用空気袋140の加圧を開始する(ステップS302)。
【0076】
次に、制御部20は、圧迫用空気袋130および固定用空気袋140の内圧が所定値になるまでこれを上昇させ、所定値に達した時点で加圧ポンプ31,41の駆動を停止して圧迫用空気袋130および固定用空気袋140の加圧を停止する(ステップS303)。なお、上記固定用空気袋140の内圧の所定値としては、拡張期血圧値と同等程度の圧力値とすることが好ましい。
【0077】
次に、制御部20は、排気弁32を開放して圧迫用空気袋130のカフ圧を徐々に下降させる(ステップS304)。この圧迫用空気袋130を減圧する過程において、制御部20は、公知の手順で拡張期血圧値および収縮期血圧値を算出する(ステップS305)。
【0078】
ステップS305において血圧値が算出されると、制御部20は、排気弁32に加えて排気弁42を開放することで圧迫用空気袋130内の空気と固定用空気袋140内の空気とを完全に排気し(ステップS306)、測定結果としての血圧値を表示部21に表示するとともに、当該血圧値をメモリ部22に格納する(ステップS307)。
【0079】
図10ないし図12は、本実施の形態に従った第1ないし第3変形例に係る血圧計用カフの模式断面図であり、図13は、本実施の形態に従った第4変形例に係る血圧計の機能ブロックの構成を示す図である。次に、これら図10ないし図13を参照して、本実施の形態に従った第1ないし第3変形例に係るカフおよび第4変形例に係る血圧計の構成について説明する。なお、図10ないし図12においても、図5と同様に、カフの表面の大部分を覆うこととなる外装カバーの図示は省略してある。
【0080】
(第1変形例)
図10に示すように、第1変形例に係るカフ100Bは、固定用空気袋140の大きさにおいて上述した本実施の形態におけるカフ100Aと相違している。具体的には、上述した本実施の形態におけるカフ100Aにおいては、固定用空気袋140の大きさが土踏まず202aと同等程度の大きさとなるように構成されていたが、本第1変形例に係るカフ100Bにあっては、その周方向長さが長大化され、装着状態において足200の周方向に沿って足底202の表面と足200の両側面とを覆う大きさに構成されている。
【0081】
このように構成した場合にも、土踏まず202aが位置する部分において固定用空気袋140が膨張することにより、土踏まず202aが位置することで形成された足底202の凹状の窪みが、当該固定用空気袋140によって充填されることになり、上述した本実施の形態におけるカフ100Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(第2変形例)
図11に示すように、第2変形例に係るカフ100Cは、固定用空気袋140の大きさにおいて上述した本実施の形態におけるカフ100Aと相違している。具体的には、上述した本実施の形態におけるカフ100Aにおいては、固定用空気袋140の大きさが土踏まず202aと同等程度の大きさとなるように構成されていたが、本第2変形例に係るカフ100Cにあっては、その周方向長さが長大化され、装着状態において足200の周方向に沿ってそのほぼ全周を覆う大きさに構成されている。その結果、固定用空気袋140は、圧迫用空気袋130の外周面をも覆う構成とされている。
【0083】
このように構成した場合にも、土踏まず202aが位置する部分において固定用空気袋140が膨張することにより、土踏まず202aが位置することで形成された足底202の凹状の窪みが、当該固定用空気袋140によって充填されることになり、上述した本実施の形態におけるカフ100Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0084】
(第3変形例)
図12に示すように、第3変形例に係るカフ100Dは、宛がい部材の構成において上述した本実施の形態におけるカフ100Aと相違している。具体的には、上述した本実施の形態におけるカフ100Aにおいては、宛がい部材が複数のパーツが連結されてなる自在変形部材110にて構成されていたが、本第3変形例に係るカフ100Dにあっては、これが単一の湾曲弾性板112によって構成されている。
【0085】
湾曲弾性板112は、足甲201の表面形状に沿う形状となるように半環状に形成された部材からなり、装着状態において圧迫用空気袋130の外側に位置している。湾曲弾性板112は、周方向に沿って一方端112aおよび他方端112bを有しており、自身の半環状形態を維持するとともに、径方向に弾性変形可能に構成されている。
【0086】
湾曲弾性板112は、圧迫用空気袋130に比較して剛性の高い部材にて構成されており、好適には可撓性の部材にて構成される。この観点から、湾曲弾性板112としては、たとえばポリプロピレン(PP)等の樹脂材料を原料として射出成形によって形成されたものや、プレス加工等によって成形されたアルミニウム(Al)またはその合金、黄銅等の金属材料からなるもの等が好適に利用される。
【0087】
湾曲弾性板112の一方端112aおよび他方端112bには、それぞれ挿通孔112a1,112b1が設けられている。挿通孔112a1,112b1は、いずれも湾曲弾性板112の表裏面を貫通するように設けられている。これら一対の挿通孔112a1,112b1は、いずれも締付けベルト120が挿通される孔であり、当該挿通孔112a1,112b1に挿通された締付けベルト120が足200に締め付けられることにより、湾曲弾性板112の浮き上がりが防止される。
【0088】
また、湾曲弾性板112の一方端112aと他方端112bとの間の所定位置には、固定用孔112cが設けられている。固定用孔112cは、湾曲弾性板112の表裏面を貫通するように設けられており、その内部には、湾曲弾性板112の軸方向に沿って棒状に延びる固定用の取付部112c1が設けられている。当該取付部112c1には、締付けベルト120の一端部120aが固定的に取付けられている。
【0089】
締付けベルト120は、装着状態において湾曲弾性板112の上記他方端112b寄りの部分を覆うように巻き付けられ、湾曲弾性板112の他方端112bに設けられた挿通孔112b1に対して外側から内側に向けて挿し込まれ、さらに湾曲弾性板112の一方端112aに設けられた挿通孔112a1に対して内側から外側に向けて挿し込まれて折り返されている。そして、締付けベルト120の折り返された部分は、折り返されていない部分の締付けベルト120に重ね合わされ、その他端部120b寄りの部分が面ファスナ122によって固定される。
【0090】
このように構成した場合にも、土踏まず202aが位置する部分において固定用空気袋140が膨張することにより、土踏まず202aが位置することで形成された足底202の凹状の窪みが、当該固定用空気袋140によって充填されることになり、上述した本実施の形態におけるカフ100Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(第4変形例)
図13に示すように、第4変形例に係る血圧計1Bは、上述した本実施の形態における血圧計1Aに比較して、圧迫用空気袋130および固定用空気袋140を加圧する加圧ポンプ31,41が共通化されて単一の加圧ポンプ51にて構成されている点において相違している。
【0092】
本第4変形例に係る血圧計1Bにあっては、本体10Bが、制御部20、表示部21、メモリ部22、操作部23および電源部24に加えて、圧迫用兼固定用エア系コンポーネント50を具備している。圧迫用兼固定用エア系コンポーネント50は、加圧ポンプ51と、一対の排気弁52A,52Bと、一対の圧力センサ53A,53Bと、一対の二方弁54A,54Bとを含んでいる。
【0093】
加圧ポンプ51は、エア管90を介して圧迫用空気袋130および固定用空気袋140に接続されている。ここで、二方弁54Aは、加圧ポンプ51と圧迫用空気袋130とを結ぶ経路に配設されており、二方弁54Bは、加圧ポンプ51と固定用空気袋140とを結ぶ経路に配設されている。また、排気弁52Aおよび圧力センサ53Aは、いずれもエア管91を介して圧迫用空気袋130に接続されており、排気弁52Bおよび圧力センサ53Bは、いずれもエア管92を介して固定用空気袋140に接続されている。
【0094】
このうちの加圧ポンプ51および排気弁52A,52Bは、圧迫用空気袋130および固定用空気袋140を加減圧するための膨縮機構に相当する。なお、本体10Bには、圧迫用兼固定用エア系コンポーネント50の付属回路として、加圧ポンプ駆動回路55、一対の排気弁駆動回路56A,56B、一対の発振回路57A,57Bおよび一対の二方弁駆動回路58A,58Bが設けられている。
【0095】
制御部20は、二方弁54A,54Bの開閉状態を二方弁駆動回路58A,58Bを介して制御することで加圧ポンプ51と圧迫用空気袋130および固定用空気袋140との連通状態を各種の状態に切り替える。これにより、圧迫用空気袋130のみを加圧する状態、固定用空気袋140のみを加圧する状態、およびこれら圧迫用空気袋130および固定用空気袋140の両方を加圧する状態の3状態の切替が可能になり、圧迫用空気袋130および固定用空気袋140を加圧する加圧ポンプを共通化して単一の加圧ポンプ51にて構成することが可能なる。したがって、当該構成を採用することにより、上述した効果に加えて、部品点数の削減が可能となって製造コストを抑制できる効果を得ることができる。
【0096】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における血圧情報測定装置用カフは、上述した被測定部位としての足200に巻き付けられて使用される足式脈波計用カフであり、本発明の実施の形態2における血圧情報測定装置用カフは、当該足式脈波計用カフを具備し、上述した足200中を延在する足背動脈231を当該カフに内包された膨縮袋としての空気袋を用いて軽圧迫し、この軽圧迫状態を維持しつつカフに設けられた脈波センサとしての光電センサを用いて足背動脈231の容積脈波を光学的な手法により測定する足式脈波計である。
【0097】
図14は、本実施の形態における脈波計用カフの装着状態を示す模式断面図である。まず、この図14を参照して、本実施の形態における脈波計用カフの構造について説明する。なお、図14に示す足の断面は、左足を末梢側から中枢側に向けて見た場合のものであり、理解を容易とするために、カフの表面の大部分を覆うこととなる外装カバーの図示は省略してある。
【0098】
図14に示すように、本実施の形態における脈波計用カフ100Eは、上述した本発明の実施の形態1における血圧計用カフ100Aと共通の構成を有しており、さらに脈波センサとしての光電センサ150を有している。具体的には、光電センサ150は、圧迫用空気袋130の内部でかつ自在変形部材110に接する側の圧迫用空気袋130の主面上に設けられている。ここで、光電センサ150に含まれる発光素子151および受光素子152は、それぞれ回路基板上に実装されており、当該回路基板が圧迫用空気袋130に取付けられている。
【0099】
ここで、カフ100Eに設けられた光電センサ150は、足200中を延在する足背動脈231に向けて光を照射する発光部としての発光素子151と、当該発光素子151による光の照射に伴って足背動脈231が位置する部分およびその近傍の生体組織を透過した光を受光する受光部としての受光素子152とを有している。受光素子152は、受光した光の光量に応じた出力信号を出力する。
【0100】
発光素子151および受光素子152としては、半導体発光素子および半導体受光素子が好適に利用される。動脈内容積変動を精度良く検出するためには、生体組織を透過し易い近赤外光を検出光として利用することが好ましく、発光素子151および受光素子152としては、この近赤外光を照射および受光可能なものがそれぞれ好適に利用される。より具体的には、発光素子151から照射されて受光素子152にて受光される検出光としては、波長940nm付近の近赤外光が特に好適に使用される。なお、検出光としては、上記940nm付近の近赤外光に限られず、波長450nm付近の光や波長1100nm付近の光等も使用可能である。
【0101】
図15は、本実施の形態における脈波計の機能ブロックの構成を示す図である。次に、この図15を参照して、本実施の形態における脈波計の機能ブロックの構成について説明する。
【0102】
図15に示すように、本実施の形態における脈波計1Cは、上述したカフ100Eに加え、本体10Cを具備している。本体10Cは、図6において説明した機能ブロックに加え、駆動部としての発光素子駆動回路61と、受光量検出部としての受光量検出回路62とをさらに備えている。
【0103】
発光素子駆動回路61は、制御部20の制御信号に基づいて発光素子151を発光させるための回路であり、所定量の電流を発光素子151に印加することにより、発光素子151を発光させるものである。発光素子151に印加される電流としては、たとえば50mA程度の直流電流が使用される。発光素子駆動回路61としては、好適には、発光素子151に所定のデューティでパルス電流を供給することによって発光素子151を周期的にパルス発光させる回路が利用される。
【0104】
このように発光素子151をパルス発光させることとすれば、発光素子151への単位時間当たりの印加電力を抑制することが可能になり、発光素子151の温度上昇を防ぐことが可能になる。なお、発光素子151の駆動周波数としては、検出すべき動脈内容積変動に含まれる周波数成分(おおよそ30Hz)よりも十分に高い周波数(たとえば3kHz程度)とすることにより、より精緻に動脈内容積変動を取得することが可能になる。
【0105】
受光量検出回路62は、受光素子152から入力された信号に基づいて受光量に応じた電圧信号を生成し、これを制御部20に向けて出力するための回路である。受光素子152によって検出される光の光量は動脈内容積に比例して変化するため、受光量検出回路62にて生成される電圧信号も動脈内容積に比例して変化することになり、これにより容積脈波が電圧値変動として捉えられることになる。ここで、受光量検出回路62は、たとえばアナログフィルタ回路、増幅回路、A/D(Analog/Digital)変換回路等の処理回路を含んでおり、アナログ値として入力された信号をデジタル値化した電圧信号として出力する。
【0106】
脈波計1Cにおいては、容積脈波の測定に際して足200の内部に位置する足背動脈231を圧迫用空気袋130を用いて軽圧迫状態に保つため、圧迫用エア系コンポーネント30は、圧迫用空気袋130に空気を供給または排出する役割を果たす。これに伴い、制御部20は、加圧ポンプ31および排気弁32の動作を制御するとともに、発振回路37から入力された信号に基づいて圧迫用空気袋130の内圧を検知し、これにより圧迫用空気袋130による足背動脈231への圧迫力を計測する。また、制御部20は、発光素子151を駆動するための制御信号を発光素子駆動回路61に入力する。さらに、制御部20は、受光量検出回路62から入力された電圧信号に基づいて容積脈波を取得する容積脈波取得部(不図示)を含んでおり、この容積脈波取得部によって取得された容積脈波情報が、測定結果として表示部21やメモリ部22に入力される。
【0107】
図16は、本実施の形態における脈波計の制御部の動作フローを示す図である。次に、この図16を参照して、本実施の形態における脈波計の制御部の動作フローについて説明する。なお、このフローチャートに従うプログラムは、メモリ部22に予め記憶されており、制御部20がメモリ部22からこのプログラムを読み出して実行することにより、その処理が実行されるものである。
【0108】
容積脈波を測定する際には、被測定者である使用者は予めカフ100Eを足200の被測定部位に装着し、この状態において本体10Cに設けられた操作部23を操作して脈波計1Cの電源をオンにする。これにより、電源部24から制御部20に対して電力が供給されて制御部20が駆動する。図16に示すように、制御部20は、その駆動後において、まず脈波計1Cの初期化を行なう(ステップS401)。
【0109】
次に、制御部20は、使用者の測定開始の指示を待ち、使用者が測定開始の指示を操作部23を操作することによって与えた場合に、排気弁42を閉塞させるとともに加圧ポンプ41を駆動して固定用空気袋140の加圧を開始し(ステップS402)、固定用空気袋140の内圧が所定値になるまでこれを上昇させ、所定値に達した時点で加圧ポンプ41の駆動を停止して固定用空気袋140の加圧を停止する(ステップS403)。なお、上記固定用空気袋140の内圧の所定値としては、拡張期血圧値と同等程度の圧力値とすることが好ましく、また30mmHg等の平均的に拡張期血圧値以下となる圧力や、前回の測定時の拡張期血圧値以下の圧力としてもよい。
【0110】
次に、制御部20は、排気弁32を閉塞させるとともに加圧ポンプ31を駆動して圧迫用空気袋130の加圧を開始してカフ圧を上昇させる(ステップS404)。当該加圧ポンプ31を用いた圧迫用空気袋130の加圧は、圧迫用空気袋130が足背動脈231を軽圧迫することが可能な所定の内圧に達するまで行なわれる。なお、上記加圧後は、圧迫用空気袋130の内圧が実質的に維持され、足200の軽圧迫状態が保持される。
【0111】
次に、制御部20は、発光素子駆動回路61を介して発光素子151の駆動を開始する(ステップS405)。これにより、発光素子151から足背動脈231を含む足200に向けて検出光が照射されるようになる。また、上記発光素子151の駆動と並行して、受光量検出回路62は、受光素子152から入力される信号に基づいてデジタル値化された電圧信号を生成し(ステップS406)、これを制御部20に入力する。
【0112】
制御部20は、入力された電圧信号に基づいて容積脈波を取得する(ステップS407)。取得された容積脈波は、測定結果としてメモリ部22に格納されるとともに、表示部21において表示される(ステップS408)。ここで、表示部21は、容積脈波をたとえば波形として表示する。
【0113】
このステップS406からステップS408からなる一連の動作は、所定の停止条件(たとえば、使用者による測定停止の命令の入力やタイマー回路による設定時間の経過等)が成立するまでの間、繰り返し行なわれる(ステップS409においてNOの場合)。そして、所定の停止条件が成立すると(ステップS409においてYESの場合)、制御部20は、発光素子駆動回路61に対して発光素子151の駆動停止の指令を行なう(ステップS410)とともに、排気弁32,42を開放することで圧迫用空気袋130内の空気および固定用空気袋140内の空気を完全に排気する(ステップS411)。
【0114】
その後、制御部20は、使用者の電源オフの指令を待ってその動作を終了する。以上により、時々刻々と変化する容積脈波をリアルタイムに取得することが可能になる。
【0115】
以上において説明した本実施の形態における脈波計1Cおよびこれに具備される脈波計用カフ100Eにあっても、上述の本発明の実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。すなわち、土踏まず202aが位置する部分において固定用空気袋140が膨張することにより、土踏まず202aが位置することで形成された足底202の凹状の窪みが、当該固定用空気袋140によって充填されることになり、圧迫用空気袋130の膨張時において、締付けベルト120および自在変形部材110にその周方向に沿ってほぼ均等に張力がかかることになる。したがって、被測定部位を全周にわたってほぼ均等に圧迫することが可能になり、カフ100Eの位置ずれが防止できるとともに、締付けベルト120が周方向に移動して土踏まず202aの両側部分の皮膚がカフ100Eによって巻き込まれることが防止できる。
【0116】
よって、上記構成を採用することにより、被測定者への拘束が低減でき、被測定者に苦痛を与えることなく高精度に容積脈波を測定することが可能な脈波計用カフおよびこれを備えた脈波計とすることができる。
【0117】
また、上記構成のカフ100Eとした場合には、上述したように、自在変形部材110および締付けベルト120によって足200をその周方向においてほぼ均等に締め付けることができるため、容積脈波検出手段としての光電センサ150に予期しない傾きが生じることが防止できる。したがって、当該構成のカフ100Eを具備した脈波計1Cとすることにより、高精度に容積脈波の測定が行なえることになる。
【0118】
以上において説明した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、外装カバーに設けられた面ファスナを用いてカフが被測定部位である足に固定されるように構成したものを例示して説明を行なったが、固定手段としては、他にも帯状のカフバンドや結束バンド、ラチェットベルトのようなものが利用可能であり、巻付け長さが装着される手首の周長に応じて調節できかつ確実に取付け状態が維持できるものであればどのようなものでも利用が可能である。
【0119】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、カフに内包される膨縮袋が、いずれもその膨縮空間に作動体としての空気が出し入れされることで膨縮する空気袋にて構成された場合を例示して説明を行なったが、当該空気袋に代えて、作動体として他の気体や液体が出し入れされることで膨縮する流体袋にて膨縮袋が構成されていてもよいし、作動体としてマイクロビーズ等が出し入れされることで膨縮する膨縮袋にてこれが構成されていてもよい。
【0120】
ここで、第2膨縮袋としての固定用膨縮袋を膨縮させる作動体を、第1膨縮袋としての圧迫用膨縮袋を膨縮させる作動体よりも難圧縮性の作動体とすれば、第1膨縮袋としての圧迫用膨縮袋の膨張時において、第2膨縮袋としての固定用膨縮袋に意図しない圧縮が生じないことになり、より高精度に血圧情報を測定することが可能になる。より詳細には、たとえば第1膨縮袋としての圧迫用膨縮袋を膨縮させる作動体として空気を用い、第2膨縮袋としての固定用膨縮袋を膨縮させる作動体として空気よりも難圧縮性の水や油等の液体、マイクロビーズ等を用いれば、より高精度に血圧情報を測定することが可能になる。
【0121】
また、上述した本発明の実施の形態2においては、光電センサを圧迫用空気袋の内部に設けた場合を例示して説明を行なったが、この他にも宛がい部材の内面側に光電センサを埋設したり、圧迫用空気袋の表面等に光電センサを取付けたりしてもよい。
【0122】
また、上述した本発明の実施の形態2においては、脈波センサとして光電センサを利用した場合を例示して説明を行なったが、この他にも脈波センサとしては、微弱な高周波電流を生体に印加することで生体インピーダンスを検出することが可能に構成されたインピーダンスセンサや、トノメトリ法で利用される接触式の感圧センサ等を用いることも可能である。
【0123】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例において示した特徴的な構成は、必要に応じて相互に組み合わせることが当然に可能である。
【0124】
さらに、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、血圧情報測定装置として収縮期血圧値、拡張期血圧値等の血圧値を測定する血圧計、および容積脈波を測定する脈波計を例示して説明を行なったが、本発明は、AI値に代表される動脈硬化度を示す指標や脈拍、平均血圧値、酸素飽和度等を測定可能にする血圧情報測定装置にもその適用が当然に可能である。
【0125】
このように、今回開示した上記各実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0126】
1A,1B 血圧計、1C 脈波計、10A〜10C 本体、20 制御部、21 表示部、22 メモリ部、23 操作部、24 電源部、30 圧迫用エア系コンポーネント、31 加圧ポンプ、32 排気弁、33 圧力センサ、35 加圧ポンプ駆動回路、36 排気弁駆動回路、37 発振回路、40 固定用エア系コンポーネント、41 加圧ポンプ、42 排気弁、43 圧力センサ、45 加圧ポンプ駆動回路、46 排気弁駆動回路、47 発振回路、50 圧迫用兼固定用エア系コンポーネント、51 加圧ポンプ、52A,52B 排気弁、53A,53B 圧力センサ、54A,54B 二方弁、55 加圧ポンプ駆動回路、56A,56B 排気弁駆動回路、57A,57B 発振回路、58A,58B 二方弁駆動回路、61 発光素子駆動回路、62 受光量検出回路、80,81,90〜92 エア管、100A〜100D 血圧計用カフ、100E 脈波計用カフ、110 自在変形部材、110a〜100c パーツ、110a1,110b1 挿通孔、110c1 取付部、112 湾曲弾性板、112a 一方端、112b 他方端、112a1,112b1 挿通孔、112c 固定用孔、112c1 取付部、120 締付けベルト、120a 一端部、120b 他端部、122 面ファスナ、130 圧迫用空気袋、140 固定用空気袋、150 光電センサ、151 発光素子、152 受光素子、200 足、201 足甲、202 足底、202a 土踏まず、203 足首、211 第一中足骨、212 第二中足骨、221 長母趾伸筋腱、222 短母趾伸筋腱、231 足背動脈、232 内側足底動脈、233 外側足底動脈。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足背動脈を圧迫して血圧情報を測定するために、足甲および足底を覆うように巻き付けられることで足に装着されて使用される血圧情報測定装置用カフであって、
装着状態において足背動脈が位置する部分の足甲表面を覆うように配置される第1膨縮袋と、
装着状態において少なくとも土踏まず部分の足底表面を覆うように配置される第2膨縮袋と、
装着状態において足甲および足底を覆うように足に巻き付けられることで前記第1膨縮袋および前記第2膨縮袋をそれぞれ足に向けて押し付け固定する固定部材とを備えた、血圧情報測定装置用カフ。
【請求項2】
前記第2膨縮袋が、装着状態において足の周方向に沿って足底表面を覆う大きさを有している、請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項3】
前記第2膨縮袋が、装着状態において足の周方向に沿って足底表面および足の両側面を覆う大きさを有している、請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項4】
前記第2膨縮袋が、装着状態において足の周方向に沿ってその全周を覆う大きさを有するとともに前記第1膨縮袋の外周面を覆っている、請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項5】
前記固定部材は、足甲および足底を覆うように足に巻き付けられる巻付け部と、前記巻付け部を足に巻き付けた状態を維持するための固定手段とを含んでいる、請求項1から4のいずれかに記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項6】
前記巻付け部は、装着状態において前記第1膨縮袋の外側に位置し、足甲表面に沿わせて宛がわれる非弾性の宛がい部材と、足に対して締め付けられることで前記宛がい部材を足甲表面に向けて押し付ける締付けベルトとを含んでいる、請求項5に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項7】
前記宛がい部材は、複数のパーツを前記巻付け部の周方向に並べて配置し、これら周方向に並べて配置された複数のパーツのうちの隣接するもの同士を回転可能に連結することで構成された自在変形部材にて構成されている、請求項6に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の血圧情報測定装置用カフと、
前記第1膨縮袋および前記第2膨縮袋を膨縮させる膨縮機構と、
前記第1膨縮袋内の圧力および前記第2膨縮袋内の圧力を検知する圧力検知部と、
前記圧力検知部によって検知された圧力情報に基づいて血圧値を算出する血圧値算出部とを備えた、血圧情報測定装置。
【請求項9】
前記第1膨縮袋および前記第2膨縮袋を膨縮させる際に、前記第2膨縮袋内の圧力が常に前記第1膨縮袋内の圧力と同等以上かあるいは拡張期血圧値程度に維持されるように、前記膨縮機構の動作が制御される、請求項8に記載の血圧情報測定装置。
【請求項10】
前記第2膨縮袋を出入りすることで前記第2膨縮袋を膨縮させる作動体が、前記第1膨縮袋を出入りすることで前記第1膨縮袋を膨縮させる作動体よりも難圧縮性である、請求項8に記載の血圧情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−210374(P2012−210374A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78283(P2011−78283)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】