説明

血圧測定装置および方法

本出願は、被検者の中心収縮期血圧(cSBP)を推定するための装置および方法に関し、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形および前記被検者の心周期における少なくとも2つの末梢血圧測定値を決定して、前記末梢血圧波形を伝達関数で処理し、前記被検者の脈拍の中心血圧波形の推定値を与える。前記被検者の心周期における前記少なくとも2つの末梢血圧測定値および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形は、前記被検者の末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定される。前記被検者の脈拍の前記中心血圧波形の推定値により、前記被検者の中心収縮期血圧の推定値が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の血圧を測定ならびに推定するための装置および方法に関し、より詳細には、被検者の中心収縮期血圧を推定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧(BP)は、血管壁に対して循環血が及ぼす力であり、主要な生命徴候の一つである。循環血の圧力は、血液が動脈、小動脈、毛細管および静脈を通じて流れるにつれて低下する。血圧という用語は、一般に、動脈圧、すなわち比較的大きい動脈内の圧力を意味する。動脈は、心臓から血液を送り出す血管である。
【0003】
動脈内血圧は、一般に振動性の態様で変化し、波形(時間に対する圧力のグラフ)として表示されることができる。動脈内のピーク圧は、収縮期血圧(SBP)として知られ、心周期開始近くに発生する。心周期の休止相に発生する動脈内の最低圧力は、拡張期血圧(DBP)として知られている。心周期全体を通じて生じる平均的圧力は、平均動脈血圧(MAP)として知られ、脈圧(PP)は、収縮期および拡張期圧の間の差である。
【0004】
既存の血圧監視装置で、腕等の末梢動脈における収縮期および拡張期血圧の測定値が得られる。しかし、収縮期血圧は、圧力波が反射されて上腕の末梢動脈に沿って伝搬することによって、心臓に近い大動脈根の上方で増幅されるため、上腕動脈、橈骨動脈または指動脈で測定される収縮期血圧は、大動脈根での中心収縮期血圧(cSBP)よりも高くなることが長い間認識されてきた。これはまた、中心脈圧と末梢脈圧との差になる。拡張期血圧については、心臓拡張期の間の圧力変化が緩やかであるため、中枢および末梢部位で同様になる。平均動脈圧も、中枢および末梢部位で同様である。末梢収縮期血圧(pSBP)と比べてcSBPは、心臓に対する負荷のより良い指標を与え、したがって心臓疾患により密接に関連するものであると考えられる。
【0005】
最近まで、中心血圧を測定する唯一の方法は、大動脈内へのカテーテル挿入であった。しかし、今日、cSBPを推定するために、非侵襲的方法(SphygmoCor(登録商標)、オーストラリアAtcor社)が使用できる。このシステムを使用して得られるデータは、cSBPがpSBPよりも実際に重要であることを示唆する。カフェ(導管動脈機能評価)研究において、例えば、より良い結果(すなわち、心臓血管死および事象の低減)を生み出す降圧療法は、比較的下部中心の、しかし腕ではない圧力と関連していた[1]。強心臓研究において、cSBPは、pSBPよりも心臓血管死の優れた予測因子であった[2]。これらの研究の結果、心臓血管薬の評価項目として中心血圧を使用することは好都合であると思われる。
【0006】
上記装置SphygmoCor(登録商標)には幾つか制限がある。高価で(従来のBP監視装置が1,000ドル未満であるのに対し、30,000ドルを超える)、操作に習熟した人材を必要とし、従来のBP監視装置よりも使用時間が実質的に長くなる。手動プローブを手首の橈骨動脈上に置き(操作者のためのスキルならびに訓練および患者による協力が必要となる)、血圧波形を生成する。次にこの波形を、通常、標準的BP監視装置によって上腕動脈から得られた従来のBP測定値から較正し、伝達関数を上記橈骨圧波形に適用してcSBPを求める。本システムのもう一つの短所は、上腕動脈血圧から較正する場合、上腕動脈と橈骨動脈間の血圧差により誘引される系統誤差が生じやすい。橈骨圧を大動脈圧に変換する伝達関数は複雑である。この伝達関数には多くの潜在的変異があり、そのような変異の相対的精度は確立されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Williams B, Lacy PS, Thorn SM, Cruickshank K, Stanton A, Collier D, Hughes AD, Thurston H, O'Rourke M. Differential impact of blood pressure-lowering drugs on central aortic pressure and clinical outcomes: principal results of the Conduit Artery Function Evaluation (CAFE) study. Circulation. 2006; l13: 1213-1225.
【非特許文献2】Roman MJ, Devereux RB, Kizer JR, Lee ET, Galloway JM, AIi T, Umans JG, Howard BV. Central pressure more strongly relates to vascular disease and outcome than does brachial pressure: the Strong Heart Study. Hypertension. 2007; 50: 197-203.
【非特許文献3】Munir S, Guilcher A, Kamalesh T et al. Peripheral augmentation index defines the relationship between central and peripheral pulse pressure. Hypertension 2008 January; 1(1): 112-8.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヒト被検者の中心収縮期血圧(cSBP)を推定するための装置を提供し、本装置は、
前記被検者の脈拍の末梢血圧波形および前記被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値を決定する非侵襲的血圧決定装置と、
伝達関数を前記末梢血圧波形に適用して前記被検者の脈拍の中心血圧波形の推定値を与えるプロセッサーとを含み、
前記心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形が、前記被検者の末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定され、かつ前記被検者の脈拍の前記中心血圧波形の推定値により、前記被検者の中心収縮期血圧の推定値が与えられる。
【発明の効果】
【0009】
驚くことに本願発明者らは、cSBPの推定に使用されることのできる被検者の脈拍の末梢血圧波形を決定するために、従来の非侵襲的血圧決定装置の使用が可能であることを発見した。これは、心周期における末梢血圧測定値を決定することのできる非侵襲的血圧決定装置への追加である。これまでは、従来の非侵襲的血圧決定装置は、被検者のcSBPの推定に使用できるとは考えられていなかった。これにより、一つの血圧決定装置を用いて、末梢血圧測定値および中心血圧(cSBP)の両方を決定することができることになる。前記SphygmoCor(登録商標)システムの様に、被検者の身体上で2つの異なる場所に2台以上の装置を使用する必要がない。
【0010】
本発明の装置において従来の非侵襲的血圧決定装置を使用できることにより、多くの利点が与えられる。それらは以下のとおりである:本発明の装置の使用に特別な訓練は不要である;本発明の装置自体の製造が比較的安価である;本発明の装置を比較的すぐ簡単に使用できる;本発明の装置は、末梢血圧決定場所と末梢血圧波形決定場所間の血圧差に起因するいかなる系統誤差も引き起こさない。
【0011】
心周期における任意の二つの異なった末梢血圧測定値を用いて、cSBPの推定値を与えることができる。好適な末梢血圧測定値は、末梢収縮期血圧(pSBP)、末梢拡張期血圧(pDBP)および末梢平均動脈圧(pMAP)である。
【0012】
一つの実施形態で、前記非侵襲的血圧決定装置は、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形および前記被検者のpSBP,pDBPならびにpMAPのうち少なくとも2つを決定する
ために使用される。もう一つの実施形態では、前記非侵襲的血圧決定装置は、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形、前記被検者のpSBPおよび前記被検者のpDBPを決定するために使用される。一つの代替的実施形態において、前記非侵襲的血圧決定装置は、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形、前記被検者のpSBPおよび前記被検者のpMAPを決定するために使用される。さらにもう一つの実施形態では、前記非侵襲的血圧決定装置は、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形、前記被検者のpDBPおよび前記被検者のpMAPを決定するために使用される。さらに一つの実施形態において、前記非侵襲的血圧決定装置は、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形、前記被検者のpSBP、pDBPおよびpMAPを決定するために使用される。この実施形態において、4つ全ての測定値(末梢血圧波形、pSBP、pDBPおよびpMAP)は、前記被検者の末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定されるべきである。心周期における3つの(またはそれよりも多くの)末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPおよびpMAP)が決定されると、cSBPのより正確な推定を得ることが可能である。
【0013】
前記中心収縮期血圧(cSBP)という用語は、心臓に近い大動脈内または大動脈根に生じる最高血圧を意味し、心収縮に起因する。
【0014】
前記末梢収縮期血圧(pSBP)という用語は、心収縮後に被検者の末梢動脈内に生じる最高血圧を意味する。
【0015】
前記末梢拡張期血圧(pDBP)という用語は、心拡張後に被検者の末梢動脈に生じる最低血圧を意味する。
【0016】
前記末梢平均動脈圧(pMAP)という用語は、心拍動全体にわたる被検者の末梢動脈内の平均動脈血圧を意味する。
【0017】
前記末梢動脈という用語は、被検者の心臓から遠い動脈を意味する。例えば、ヒトの末梢動脈は、心臓から約10cmを越える距離にある動脈である。末梢動脈という用語は広く使用されており、その意味は、当業者に十分公知である。
【0018】
前記血圧波形という用語は、時間に対して動脈内での圧力または圧力関連の変化をグラフ化することによって得られる振動波状の曲線を意味する。これは、末梢動脈(末梢血圧波形)、心臓に近い大動脈または大動脈根(中心血圧波形)において得られる。前記の血圧波形、末梢血圧波形および中心血圧波形という用語は広く使用されており、それらの意味は、当業者に十分公知である。
【0019】
前記脈拍という用語は、心臓の収縮から生じる被検者の動脈内圧波形を意味する。
【0020】
前記非侵襲的血圧決定装置は、被検者の脈拍の末梢血圧波形および被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値(例えば、被検者のpSBP、pDBPならびにpMAPのうちの少なくとも二つ)を測定または決定するために使用されることのできる任意の好適な非侵襲的血圧決定装置であってよい。好ましくは、前記非侵襲的血圧決定装置は、被検者の脈拍の末梢血圧波形、pSBP、pDBPおよびpMAPを測定または決定するために使用可能であるべきである。好ましくは、前記非侵襲的血圧決定装置は、オシロメトリック式非侵襲的血圧決定装置であり、換言すれば振動測定法を用いるものである。好適なオシロメトリック式血圧決定装置は、当業者に十分公知である。これらは一般に、オシロメトリック式血圧監視装置と言われる。十分公知で一般に用いられる血圧監視装置は、電子圧力センサー(変換器)付き血圧カフを含む。このような血圧監視装置を用いて、pSBP、pDBPおよびpMAPを測定することができる。これは、被検者の末梢動脈にカフを巻きつけ、pSBP、pDBPおよびpMAPを決定できる特定の圧力まで
それを膨らませて行う。
【0021】
本願発明者らは、血圧監視装置、特にオシロメトリック式血圧監視装置が、被検者の末梢血圧波形の決定に使用できることに気づいた。実際には、血圧監視装置のカフにおける圧力波形は、被検者の末梢血圧波形にぴったり一致しない可能性がある。しかし、このカフ圧力波形は、末梢血圧波形に関連付けられる。伝達関数が、末梢血圧波形を示すこのカフ圧力波形に適用される時、該伝達関数によって、カフ圧力波形と末梢血圧波形間の上記不一致が説明でき、それを排除することができる。
【0022】
一つの実施形態において、前記血圧決定装置は、末梢血圧波形の測定に使用できるカフを含む。末梢血圧波形の測定は、前記カフの内圧をpSBP〜pDBPの範囲にあるように調整することによって行うことができる。この圧力で、動脈壁の運動がカフ内の容積を変化させ、それにより末梢血圧波形を示す圧力変化(カフ圧力波形)を生じさせる。上述のように、このカフ圧力波形は、末梢血圧波形に厳密に対応しない可能性があるが密接に関連する。カフに取り付けられた圧力センサーは、圧力の変動を検出して動脈における脈拍波形を生成することができる。該波形は、前記プロセッサーによって記録されることができる。好ましくは、末梢血圧波形を決定するために使用されるカフ内圧は、被検者のpDBPに被検者の脈圧の5〜95%を加えたものに等しい。例えば、もし特定の被検者のpDBPが80mmHgでpSBPが120mmHgであれば、末梢血圧波形の決定に使用されるカフ内圧は、82mmHg(80+0.05(120−80))〜118mmHg(80+0.95(120−80))である。より好ましくは、末梢血圧波形の決定に使用されるカフ内圧は、pDBP+脈圧の10〜50%、さらにより好ましくはpDBP+脈圧の20〜40%、最も好ましくはpDBP+脈圧の約33%である。あるいは、被検者の末梢血圧波形の決定に使用されるカフ内圧は、50mmHg以上かつ被検者のpSBP以下である。好ましくは、被検者の末梢血圧波形の決定に使用されるカフ内圧は、50mmHg以上かつ被検者のpSBP未満である。一つの実施形態では、被検者の末梢血圧波形の決定に使用されるカフ内圧は、50〜65mmHgである。
【0023】
前記非侵襲的血圧決定装置は、一つの末梢血圧波形を測定することが可能であり、次に、該波形は伝達関数で処理されて中心血圧波形が推定される。好ましくは、前記非侵襲的血圧決定装置は、複数の末梢血圧波形を測定してそれらを平均し、一つの平均末梢血圧波形を求める。そして、前記プロセッサーが該平均末梢血圧波形に伝達関数を適用する。好ましくは、前記非侵襲的血圧決定装置は、少なくとも2個の波形、より好ましくは少なくとも5個の波形、最も好ましくは少なくとも10個の波形を決定する。好ましくは、前記非侵襲的血圧決定装置は、2〜30個の波形、より好ましくは2〜20個の波形、さらにより好ましくは5〜15個の波形、最も好ましくは約10個の波形を決定する。
【0024】
あるいは、前記非侵襲的血圧決定装置は、特定数の波形の測定よりもむしろ、所定時間の末梢血圧波形を決定することが可能である。好ましくは、前記非侵襲的血圧決定装置は、2〜30秒間の末梢血圧波形を決定する。より好ましくは、5〜20秒間の末梢血圧波形が決定される。さらにより好ましくは、5〜15秒間、さらにもっと好ましくは10〜15秒間、最も好ましくは約10秒間の末梢血圧波形が決定される。あるいは、前記非侵襲的血圧決定装置は、少なくとも2秒間、より好ましくは少なくとも5秒間、最も好ましくは少なくとも10秒間の末梢血圧波形を決定してもよい。前記特定の所定時間に測定された波形数は、その後で平均することができる。
【0025】
複数の波形を測定してそれらを平均することで与えられる利点は、圧力における短時間の拍動毎の変動による差が少なくなるので、より良い結果が達成されることである。
【0026】
血圧決定装置の厳密な大きさおよび性質は、被検者の心周期における前記少なくとも二
つの末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPならびにpMAPの少なくとも二つ)ならびに末梢血圧波形の、被検者の測定場所によって決まる。例えば、前記血圧決定装置は、ヒトの上腕で関連の血圧パラメーターを測定するように構成されていてもよい。該血圧決定装置は、ヒトの末梢動脈で関連の血圧パラメーターを決定するように構成される。好ましくは、前記末梢動脈は、上腕動脈、橈骨動脈、指動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈および後脛骨動脈から選択される。より好ましくは、前記末梢動脈は、上腕動脈(腕上方に位置する)である。
【0027】
驚くことに、本願発明者らは、末梢血圧波形が、被検者上において無数の末梢動脈で決定できることを発見した。従来、ほとんどの末梢動脈は、末梢波形の決定を可能にするだけの十分に明瞭で、はっきりとした力強い脈拍を与えるとは見なされていなかった。
【0028】
標準的な血圧決定装置を使用できることによって与えられる利点は、該装置により、中心血圧が同時に、またはほとんど遅延なく、かつ従来の血圧測定と同様に簡単に決定できることである。
【0029】
さらに、標準的な血圧監視装置に対する唯一の追加的必要条件がプロセッサーであること、すなわち必要な計算を実行するために既存のプロセッサーを用いることなので、製造コストの追加はほとんどない。
【0030】
前記プロセッサーは、以下のことができるように好適なプロセッサーであればいずれのものでもよい:末梢血圧波形および心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPならびにpMAPの少なくとも二つ)に関して、血圧決定装置から情報を受け取ることができる;そして、必要な計算を行い前記末梢血圧波形に伝達関数を適用することにより、被検者の脈拍の中心血圧波形の推定値を生成することができる。
【0031】
より詳細には、前記血圧決定装置が動脈の末梢血圧波形を測定する時、この波形は相対的なものであって、圧力の絶対値は与えられない。前記心周期における前記少なくとも二つの異なる末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPおよびpMAPの少なくとも二つ)は、該波形が動脈における血圧波形の絶対値として使用されることができるように該波形上の基準点として使用される。そこで前記プロセッサーは、該絶対末梢波形に伝達関数を適用して、絶対中心血圧波形の推定値を与える。この波形から、ピーク圧がcSBPの推定値に相当する。好適なプロセッサーは当業者に十分公知である。例えば、前記プロセッサーは、マイクロプロセッサーまたはディスクリートアナログもしくはディジタル回路であってもよい。好ましくは、前記プロセッサーはマイクロプロセッサーである。標準的な血圧決定装置には、既にプロセッサーを含むものもいくつかある。したがって、好適な調整により(例えば、好適なソフトを使用して)、そのようなプロセッサーを上述の方法に用いることができる。
【0032】
本発明の装置が複数の末梢血圧波形を測定する場合、前記プロセッサーは、該複数の波形を記録してそれらを平均し、一つの平均末梢血圧波形を求めて、それに対し伝達関数を適用することができる。あるいは、前記プロセッサーは、複数の末梢血圧波形の各々に伝達波形を適用して中心血圧波形の複数の推定値を求めた後、それらを平均して平均中心血圧波形を得ることができる。
【0033】
好ましくは、前記プロセッサーは、前記非侵襲的血圧決定装置の操作を制御して、前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPならびにpMAPの少なくとも二つ)および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形を前記血圧決定装置が決定できるようにする。例えば、前記非侵襲的血圧決定装置がカフを
含む一つの実施形態で、前記プロセッサーは、該カフの膨張および収縮を制御して前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPならびにpMAPの少なくとも二つ)を決定する。前記プロセッサーはまた、pSBPおよびpDBP間の圧力に対する該カフの膨張を制御して前記末梢血圧波形を決定する。あるいは、前記プロセッサーは、50mmHg以上pSBP以下の圧力に対する該カフの膨張を制御して前記末梢血圧波形を決定する。一つの実施形態において、前記プロセッサーは、50〜65mmHgの圧力に対する該カフの膨張を制御する。
【0034】
前記プロセッサーは、本発明の装置が機能できるように、任意の好適な形態で前記非侵襲的血圧決定装置に接続されることができる。前記プロセッサーは、直接または間接的に接続されることができる。例えば、前記プロセッサーは、ワイヤを介して前記非侵襲的血圧決定装置に直接接続されることができる。あるいは、前記プロセッサーは、無線相互作用を用いて間接的に前記非侵襲的血圧決定装置に接続されることができる。このようにすると、本発明の装置は適切に機能するが前記プロセッサーは前記非侵襲的血圧決定装置に物理的に接続されないという点において機能的な意味で、前記プロセッサーは前記非侵襲的血圧決定装置に接続される。
【0035】
前記伝達関数は、末梢血圧波形から中心血圧波形の推定値を与えるための任意の好適な伝達関数であってよい。前記伝達関数の性質は厳密には、関連のある血圧パラメーターを測定する被検者上の位置によって変化する。前記伝達関数は、心臓から末梢動脈への被検者の脈拍の伝播に関連する増幅を排除する。前記脈拍を、周波数領域で(例えば、脈拍周波数の倍数に等しい周波数の一連の高調波形の合計として)考えた場合、前記脈拍の急速に変化する成分のみが増幅されることは明らかである。前記脈拍の高周波数成分を減衰する伝達関数を用いることにより、増幅を排除することができ中心脈拍を回復できる。伝達関数の最も単純な形態は、バターワース(Butterworth)フィルター等の低域通過フィルターである。好ましくは、前記フィルターは、低域通過バターワース一次フィルター、より好ましくは、カットオフ周波数3.12Hzおよびゲイン0dBの低域通過バターワース一次フィルターである。別のタイプの低域通過フィルター、例えばベッセル(一次、カットオフ周波数3.12Hz)、チェビシェフ(一次、リップル3dB、カットオフ周波数3.12)、エリプティック(一次、通過域リップル3dB、阻止域リップル40db、カットオフ周波数3.12)および0.14*(サンプル周波数)ポイント
移動平均フィルターも使用してよい。あるいは、様々なカットオフ周波数が使用可能である。より複雑なフィルターまたはアルゴリズム、例えば(フーリエ解析により)時間領域または周波数領域において導出された伝達関数を代わりに使用してもよい。
【0036】
一つの実施形態で、本発明の装置は、パーセントで測定された末梢増幅係数(peripheral augmentation index:pAI)の推定値を提供することもできる。前記AIは、任意の好適な方法を用いて推定されることができる。例えば、前記AIは通常、末梢血圧波形の収縮期後期肩部から推定される。しかし、この方法の短所は、該収縮期後期肩部の特定が難しい可能性があることである[3]。該収縮期後期肩部の特定を必要としないで、AIを推定するための代替的かつ好ましい一つの方法は、以下の関係を用いることである:
pAI=(cSBP−DBP)/(pSBP−DBP)×100
式中、DBPは拡張期血圧であり、末梢および中心部位で実質的に同じである[3]。
【0037】
本発明はまた、被検者の中心収縮期血圧(cSBP)を推定する方法を提供し、本方法は、
前記被検者の脈拍の末梢血圧波形および前記被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値を決定する工程と、
前記末梢血圧波形を伝達関数で処理して前記被検者の脈拍の中心血圧波形の推定値を
与える工程とを含み、
前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形が、前記被検者の末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定され、かつ前記被検者の脈拍の前記中心血圧波形の前記推定値により、前記被検者の中心収縮期血圧の推定値が与えられる。
【0038】
上述されたように、前記少なくとも二つの末梢血圧測定値および前記末梢血圧波形を末梢動脈の実質的に同じ場所で決定することにより与えられる利点は、一台の機器の使用が可能であり、末梢血圧測定値決定の場所と末梢血圧波形決定の場所間の血圧差によって系統誤差が誘引されないので、前記方法の使用が比較的簡単になることである。
【0039】
前記少なくとも二つの末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPならびにpMAPのうちの少なくとも二つ)および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形は、任意の好適な方法で決定されてよい。好ましくは非侵襲的血圧決定装置が用いられ、より好ましくはオシロメトリック式非侵襲的血圧決定装置が用いられる。これらの装置を用いることのできる方法は前述されている。好ましくは、前記少なくとも二つの末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPならびにpMAPのうちの少なくとも二つ)および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形は、一つの血圧決定装置を用いて決定される。一つの血圧決定装置の使用により、前記3個またはそれ以上の数の血圧パラメーターを、被検者の末梢動脈上の同じ場所で決定することができる。
【0040】
もし非侵襲的血圧決定装置が、末梢血圧波形を決定するために使用され、かつ該装置がカフを含む場合、末梢血圧波形を決定する工程は、好ましくは、カフ内圧がpSBP〜pDBPの間にあるように前記カフ内圧を調整することを含む。前記カフ内圧の好ましい値は上述されている。
【0041】
好ましくは、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形を決定する工程は、複数の末梢血圧波形を記録することと、該波形を平均して一つの平均末梢血圧波形を求めることを含み、前記平均末梢血圧波形が伝達関数で処理される。あるいは、前記被検者の脈拍の末梢血圧波形を決定する前記工程は、所定時間の末梢血圧波形を記録することと、該所定時間に決定された該波形を平均して一つの平均末梢血圧波形を求めることを含み、前記平均末梢血圧波形が伝達関数で処理される。これらの工程の好ましい特徴は上述されている。
【0042】
前記末梢血圧波形は、任意の好適方法において伝達関数で処理されることができ、被検者の脈拍の中心血圧波形の推定値が与えられる。好ましくは、前記末梢血圧波形は、プロセッサーを用いて処理される。前記伝達関数は上述されている。
【0043】
前記被検者の末梢動脈では、前記少なくとも二つの末梢血圧測定値(例えば、pSBP、pDBPならびにpMAPの少なくとも二つ)および前記末梢血圧波形が決定されるが、前記末梢動脈は任意の好適な動脈であってよい。前記末梢動脈は、好ましくは上腕動脈、橈骨動脈、指動脈、足背動脈、後脛骨動脈、膝窩動脈および大腿動脈から選択される。より好ましくは、前記末梢動脈は上腕動脈である。
【0044】
好ましくは、前記方法はさらに、以下の関係:pAI=(cSBP−DBP)/(pSBP−DBP)×100を用いて末梢増幅係数(pAI)を計算する工程を含む。
【0045】
本発明はまた、被検者の中心収縮期血圧を推定するための非侵襲的血圧決定装置と共に使用されるための装置を提供し、本装置は、
前記被検者の脈拍の末梢血圧波形に伝達関数を適用して、前記被検者の中心収縮期血圧の推定値を与える前記被検者の脈拍の中心波形の推定値を与えるプロセッサーを含み、
前記プロセッサーが、被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値および被検者の脈拍の末梢血圧波形を、末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定する非侵襲的血圧決定装置に取り付けられる。
【0046】
好ましくは、前記少なくとも二つの末梢血圧測定値はpSBP、pDBPおよびpMAPのうちの少なくとも二つである。一つの実施形態において、被検者の心周期における三つの末梢血圧測定値、例えばpSBP、pDBPおよびpMAPが決定されることができる。
【0047】
さらに、本発明は、上述の方法における非侵襲的血圧決定装置の用途を提供する。
【0048】
また、本発明は、被検者の中心収縮期血圧の推定に使用するための非侵襲的血圧決定装置を提供する。ここで本血圧決定装置は、被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値および被検者の脈拍の末梢血圧波形を決定することができる。
【0049】
好ましくは、前記少なくとも二つの末梢血圧測定値は、pSBP、pDBPおよびpMAPのうちの少なくとも二つである。一つの実施形態では、被検者の心周期における三つの末梢血圧測定値、例えばpSBP、pDBPおよびpMAPが決定されることができる。
【0050】
本発明を、単に例示の目的で、図面を参照にしながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、実施例1に記載される方法を用いて腕用カフから得られたcSBPの推定値と、心臓カテーテル法に際して被検者29名の大動脈内に圧力変換器を直接挿入して得られたcSBPの測定値との一致を示すグラフである。測定値は、安静時およびニトログリセリン(NTG、cSBPを低下させる血管拡張薬)の投与後に得られる。
【図2】図2は、実施例2に記載される方法を用いて腕用カフから得られたcSBPの推定値と、心臓カテーテル法に際して被検者29名の大動脈内に圧力変換器を直接挿入して得られたcSBPの測定値との一致を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
実施例1
本願発明者らは、標準的なオシロメトリック式血圧監視装置内に組み込まれるものとまさに同様の技術を用いてcSBPを決定できる簡単な信号処理アルゴリズムを開発した。これは潜在的に、従来のBP測定値と同じ時間かつ同じ容易性でcSBPを決定することができる。さらに、唯一の追加的必要条件は信号処理なので、製造コストの追加は無く、初期ソフト開発およびパッケージングのみである。前記アルゴリズムは、大動脈根内に挿入された高忠実度先端圧力付きカテーテルで得られたcSBPの直接測定値と比較された。本方法は、安価で、ユーザートレーニングが不要であり、発生する系統誤差は小さいという点で、前記SphygmoCorシステムに関連する前記問題を解決する。
【0053】
本発明の方法は、ヒト患者の腕で標準オシロメトリック式血圧決定を実施して末梢収縮期血圧(pSBP)および拡張期血圧(pDBP)を決定することに基づく。これはカフを使用して行われ、そのやり方は十分公知である。該カフはその時、(pDBP+1/3×(pSBP−pDBP)、65mmHg、pMAPまたはpDBPに通常等しい一定圧力まで膨張させられて、最低でも10心周期間のカフ内圧が記録される。このようにして得られた波形をまとめて平均し、一つの平均末梢カフ波形(apcp)を求める。次に、一般化圧伝達関数(GTF)を該末梢波形に適用して中心波形の推定値を求める。中心収縮期BP(cSBP)を、この波形の上限から決定する。
【0054】
上記GTFは、腕用カフから得られた末梢波形を、cBPの推定を必要とした一般集団を代表する被検者サンプルでの心臓カテーテル法に際して、大動脈弓内に圧力変換器を挿入して直接測定された中心波形(cp)と比較し決定された。得られた計算結果の詳細は下記に記載される:
【0055】
一般化圧伝達関数を求めるための方法
末梢カフ圧波形は、末梢血圧波形に密接に関連しており、複数の波形が得られるように約10秒間獲得する。そして各圧脈拍を特定してそれらを平均し、処理するアルゴリズムのために平均圧脈拍を求める。そこから二つの方法がある:
【0056】
方法1
この方法では、伝達関数Hを使用し、主に周波数領域において以下のように計算を行う:
CP=H×PP
式中、CPおよびPPは、それぞれ、周波数領域における正規化中心圧脈拍および正規化末梢圧脈拍である。
【0057】
伝達関数Hは、以下のように所定の一群の測定値(ここでは、p‐患者群由来の測定値)に関する計算をすることによって求める:
(FFT()は高速フーリエ変換関数で、FFT-1()は逆高速フーリエ変換関数である

(Hi=1...pは長さnのp−複素ベクトルであり、各Hiは、各(cPi,pPi)の個別伝
達関数を表し、例えば:
CPi=Hi×PPi
ここで:CPi=FFT(cPi)およびPPi=FFT(pPi
iは、したがって以下のように定義される:Hi=CPi/PPi
(そしてHは、前記個別伝達関数全体の平均伝達関数である(すなわち、係数および位相
が平均される)。
注記:上記計算は全てベクトルについてなされるが、通常の行列−ベクトル代数によらず要素毎になされる。
【0058】
末梢血管脈拍(pP(t))から中心血圧脈拍(ecP(t))の推定値を決定するために、アルゴリズムが以下のように進行する:
PP=FFT(pP)
ECP=H×PP
ecP(t)=FFT-1(ECP)
【0059】
次に、ecP(t)が、平均動脈血圧および拡張期血圧から較正される。
【0060】
方法2
この方法では、全ての計算は時間領域内にとどまり、中心血圧脈拍の推定値を得るため、IIRフィルター(ARXモデル)を末梢血管脈拍に適用する。
【0061】
このIIRフィルターの係数(aiおよびbi)は、所定の一群の測定値(ここではp患者群由来の測定値)に関する計算を行って、以下のように求める:
【0062】
Xは、以下のような係数行列である:
【0063】
【数1】

【0064】
Yは、以下のようなp‐患者群の中心脈拍を含む正規化中心圧脈拍(cP(t))行列である:
【0065】
【数2】

【0066】
Aは、以下のようなIIRフィルター構造を表す行列である:
【0067】
【数3】

上記において、pP(t)は、正規化末梢圧脈拍である。
【0068】
したがって、係数は以下を解くことにより求められる:
【0069】
【数4】

そこで:
【0070】
【数5】

【0071】
次に、IIRフィルターをcP(t)に適用してecP(t)を回復し、これは、その後、動脈平均血圧および拡張期血圧から較正される。
【0072】
係数(nおよびm)の数字は、実際の中心脈拍と比較された推定中心脈拍(フィルター処理されたもの)の平均二乗誤差(RMS error)が、p‐測定値群全体について最小となるように選択される。
【0073】
非侵襲的にcBPを測定するためのこの方法の精度を、非侵襲的測定値と大動脈根内に挿入した高忠実度カテーテルを用いる心臓カテーテル法に際して得られた侵襲的測定値との比較によって評価した。本評価は、患者29名において安静時およびcBPを低下させる血管拡張薬のニトログリセリン(舌下錠、500mcg)投与後の両方で行った。腕での末梢血圧決定に関連する誤差を排除するため、カフ波形を一般化圧伝達関数の適用前に正規化して、該伝達関数を適用後に得られた圧力波形を、その後、平均および拡張期血圧から較正した。ベースライン時でなされた測定に関し、cSBPの非侵襲的測定および侵襲的測定間の平均差は、方法1で−2.9mmHg、方法2で−3.6mmHgとなり、その差の標準偏差(SD)は、方法1で6.5mmHg、方法2で7.0mmHgであった。ニトログリセリン投与中、当該平均差およびSDは、方法1でそれぞれ2.7および4.8mmHg、方法2でそれぞれ2.2および5.8mmHgとなった。
【0074】
実施例2
この方法では、実施例1と同様にして末梢波形を得る。腕における標準オシロメトリック式血圧決定を実施して、末梢の収縮期血圧(pSBP)および拡張期血圧(pDBP‐中心および末梢部位で同じ)を決定する。これはカフを使用して行われ、そのやり方は十分公知である。該カフはその時、65mmHg、DBPまたはpMAPに通常等しい一定
圧力まで膨張させられ、該カフの内圧が約10秒間記録される。このようにして得られた波形をまとめて平均し、一つの平均末梢カフ波形が得られる。この波形を、カットオフ周波数3.12Hzおよびゲイン0dBの低域通過バターワース一次フィルターを用いてフィルター処理し、pSBPが、フィルター処理した波形のピークとして得られる。この波形フィルタリングにより、心臓から上腕動脈への伝播に関連する増幅が効果的に排除される。バターワース低域通過フィルターは、波形フィルタリングのための一つの方法であるが、同様の特徴を有する他のフィルター類によって同様の結果が得られると考えられる。
【0075】
cBPを非侵襲的に測定するためのこの方法の精度を、非侵襲的測定値と大動脈根内に挿入した高忠実度カテーテルを用いる心臓カテーテル法に際して得られた侵襲的測定値との比較によって評価した。本評価は、患者29名において安静時およびcBPを低下させる血管拡張薬のニトログリセリン(舌下錠、500mcg)投与後の両方で行った。腕での末梢血圧決定に関連する誤差を排除するため、カフ波形はGTFの適用前に正規化して、該伝達関数を適用後に得られた圧力波形を、その後、平均および拡張期血圧から較正した。ベースライン時になされた測定に関し、cSBPの非侵襲的測定と侵襲的測定との平均差は−1.5mmHgとなり、その差の標準偏差(SD)は6.8mmHgであった。ニトログリセリン投与中、当該平均差およびSDはそれぞれ4.4および5.1mmHgとなった。
【0076】
図2のグラフは、上記アプローチを用いて腕用カフから得られたcSBPの推定値および大動脈内に圧力変換器を直接挿入して得られたcSBPの測定値の間の一致を示す。
【0077】
cSBPが分かったら、本発明の方法を用いて、以下の関係:AI=(cSBP−DBP)/(pSBP−DBP)により、増幅係数(AI)を測定することができる(AIはcSBP、pSBPおよびDBPに関連することが、今では公知であるからである)。AIは、SphygmoCorシステムにより提供される追加的な測定値である。該SphygmoCorでは、AIは橈骨圧波形の収縮期後期肩部から得られるが、特定するのが困難な場合がある。したがって、上述の発明の方法では、中心血圧および末梢血圧が決定されれば必ず決定され得る、比較的堅牢な尺度のAIを与える。
【0078】
参考文献
1. Williams B, Lacy PS, Thorn SM, Cruickshank K, Stanton A, Collier D, Hughes AD, Thurston H, O'Rourke M. Differential impact of blood pressure-lowering drugs on central aortic pressure and clinical outcomes: principal results of the Conduit Artery Function Evaluation (CAFE) study. Circulation. 2006; l13: 1213-1225.
2. Roman MJ, Devereux RB, Kizer JR, Lee ET, Galloway JM, AIi T, Umans JG, Howard
BV. Central pressure more strongly relates to vascular disease and outcome than
does brachial pressure: the Strong Heart Study. Hypertension. 2007; 50: 197-203.
3. Munir S, Guilcher A, Kamalesh T et al. Peripheral augmentation index defines the relationship between central and peripheral pulse pressure. Hypertension 2008 January; 1(1): 112-8.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の中心収縮期血圧(cSBP)を推定する方法であって、
前記被検者の脈拍の末梢血圧波形および前記被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値を決定する工程と、
前記末梢血圧波形を伝達関数で処理して前記被検者の脈拍の中心血圧波形の推定値を与える工程とを含み、
前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形が、前記被検者の末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定され、かつ前記被検者の脈拍の前記中心血圧波形の前記推定値により、前記被検者の中心収縮期血圧の推定値が与えられる方法。
【請求項2】
前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値がpSBP、pDBPおよびpMAPから選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記少なくとも二つの末梢血圧測定値がpSBPおよびpDBPである、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
前記少なくとも二つの末梢血圧測定値がpDBPおよびpMAPである、請求項1または請求項2の方法。
【請求項5】
前記少なくとも二つの末梢血圧測定値がpSBP、pDBPおよびpMAPである、請求項1または請求項2の方法。
【請求項6】
前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形が、一つの血圧決定装置を用いて決定される、いずれかの前記請求項の方法。
【請求項7】
前記血圧決定装置はカフを含み、前記末梢血圧波形を決定する工程が、前記カフの内圧を前記被検者のpDBPに前記被検者の血圧の10〜50%を加えた圧力に調整することを含む、請求項6の方法。
【請求項8】
前記伝達関数は、心臓から末梢動脈への前記被検者の脈拍の伝播に関連する増幅を排除するためのフィルターまたはアルゴリズムである、いずれかの前記請求項の方法。
【請求項9】
前記伝達関数はバターワース一次フィルターである、請求項8の方法。
【請求項10】
前記被検者の脈拍の末梢血圧波形を決定する前記工程が、
少なくとも10心周期に相当する少なくとも10個の末梢血圧波形を記録することと、
該波形を平均して一つの平均末梢血圧波形を求めることを含み、
前記平均末梢血圧波形が伝達関数で処理される、いずれかの前記請求項の方法。
【請求項11】
以下の関係:AI=(cSBP−DBP)/(pSBP−DBP)を用いて増幅係数(AI)を計算する工程をさらに含む、いずれかの前記請求項の方法。
【請求項12】
前記被検者はヒトである、いずれかの前記請求項の方法。
【請求項13】
前記末梢動脈は、上腕動脈、橈骨動脈、指動脈、足背動脈、後脛骨動脈、膝窩動脈および大腿動脈から選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
前記末梢動脈は上腕動脈である、請求項13の方法。
【請求項15】
被検者の中心収縮期血圧(cSBP)を推定するための装置であって、
前記被検者の脈拍の末梢血圧波形および前記被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値を決定する非侵襲的血圧決定装置と、
前記末梢血圧波形に伝達関数を適用して前記被検者の脈拍の中心血圧波形の推定値を与えるプロセッサーとを含み、
前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値および前記被検者の脈拍の前記末梢血圧波形が、前記被検者の末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定され、かつ前記被検者の脈拍の前記中心血圧波形の推定値により、前記被検者の中心収縮期血圧の推定値が与えられる装置。
【請求項16】
前記被検者の心周期における前記少なくとも二つの末梢血圧測定値が、pSBP、pDBPおよびpMAPから選択される、請求項15の装置。
【請求項17】
前記少なくとも二つの末梢血圧測定値がpSBPおよびpDBPである、請求項15または請求項16の装置。
【請求項18】
前記少なくとも二つの末梢血圧測定値がpDBPおよびpMAPである、請求項15または請求項16の装置。
【請求項19】
前記少なくとも二つの末梢血圧測定値がpSBP、pDBPおよびpMAPである、請求項15または請求項16の装置。
【請求項20】
前記非侵襲的血圧決定装置がオシロメトリック式非侵襲的血圧決定装置である、請求項15〜19のいずれか一項の装置。
【請求項21】
前記オシロメトリック式非侵襲的血圧決定装置はカフを含み、前記カフ内の圧力を前記被検者のpDBPに前記被検者の脈圧の10〜50%を加えた圧力に調整することにより、前記末梢血圧波形が決定される、請求項20の装置。
【請求項22】
少なくとも10個の末梢血圧波形が決定および平均されて平均末梢血圧波形が求められ、かつ前記プロセッサーが前記伝達関数を前記平均末梢血圧波形に適用する、請求項15〜21のいずれか一項の装置。
【請求項23】
前記伝達関数は、心臓から末梢動脈への被検者の脈拍の伝播に関連する増幅を排除するためのフィルターまたはアルゴリズムである、請求項15〜22のいずれか一項の装置。
【請求項24】
前記伝達関数はバターワース一次フィルターである、請求項23の装置。
【請求項25】
被検者の中心収縮期血圧を推定するための非侵襲的血圧決定装置と共に使用されるための装置であって、
前記被検者の脈拍の末梢血圧波形に伝達関数を適用して、前記被検者の中心収縮期血圧の推定値を与える前記被検者の脈拍の中心波形の推定値を与えるプロセッサーを含み、
前記プロセッサーが、被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値および被検者の脈拍の末梢血圧波形を、末梢動脈上の実質的に同じ場所で決定する非侵襲的血圧決定装置に取り付けられる装置。
【請求項26】
前記非侵襲的血圧決定装置が、被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値および被検者の脈拍の末梢血圧波形を決定することができる、請求項1〜14のいずれ
か一項の方法における非侵襲的血圧決定装置の用途。
【請求項27】
被検者の中心収縮期血圧の推定に使用されるための非侵襲的血圧決定装置であって、前記血圧決定装置は、被検者の心周期における少なくとも二つの末梢血圧測定値および被検者の脈拍の末梢血圧波形を決定することができる、非侵襲的血圧決定装置。
【請求項28】
診断に使用されるための請求項15〜24のいずれか一項の装置。
【請求項29】
中心収縮期血圧の診断に使用されるための請求項15〜24のいずれか一項の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−509123(P2012−509123A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536943(P2011−536943)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002703
【国際公開番号】WO2010/058169
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(500532757)キングス カレッジ ロンドン (14)
【氏名又は名称原語表記】KINGS COLLEGE LONDON
【Fターム(参考)】