血圧計
【課題】簡便構成で、血圧値を高精度に計測する。
【解決手段】血圧計10aは、腕帯12aと本体16aとを有する。腕帯12aは、筒状のハウジング30と、ハウジング30内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋32と、マイクロホン34とを有する。マイクロホン34は、空気袋32に設けられ、加圧手段18によって加圧された状態で被測定者の上腕に押し付けられて、振動を検出する。本体16aは、加圧手段18と、マイクロホン34によって計測された信号から音成分を取り出すK音用フィルタ62と、脈波成分を取り出す脈波用フィルタ64と、K音用フィルタ62を通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求めるコロトコフ部74と、脈波用フィルタ64を通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求めるオシロメトリック部76とを有する。
【解決手段】血圧計10aは、腕帯12aと本体16aとを有する。腕帯12aは、筒状のハウジング30と、ハウジング30内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋32と、マイクロホン34とを有する。マイクロホン34は、空気袋32に設けられ、加圧手段18によって加圧された状態で被測定者の上腕に押し付けられて、振動を検出する。本体16aは、加圧手段18と、マイクロホン34によって計測された信号から音成分を取り出すK音用フィルタ62と、脈波成分を取り出す脈波用フィルタ64と、K音用フィルタ62を通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求めるコロトコフ部74と、脈波用フィルタ64を通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求めるオシロメトリック部76とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のハウジングと、ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋と、空気袋に対して空気を給気及び排気する加圧手段とを有する血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理のため日常的に血圧を計測することができるように、家庭用の血圧計が普及しつつある。家庭用の血圧計は、血圧を正確に計測するだけではなく、操作方法が簡単で、廉価且つコンパクトであることが望ましい。
【0003】
アームイン式の血圧計(例えば、特許文献1)では、上腕を挿入して所定のボタン操作をするだけで自動的に血圧を計測することができることから家庭用に好適である。
【0004】
血圧計における血圧計測方法には主にコロトコフ方式とオシロメトリック方式がある。コロトコフ方式では空気袋にコロトコフ音(以下、K音ともいう。)を検出するセンサを設け、空気袋の圧力状態とK音の発生及び消滅に基づいて血圧値(最高血圧及び最低血圧)を求める。コロトコフ方式は、血圧値を高い精度で求めることができるとともにセンサを上腕に密着させてK音を検出することから空気袋の容量の影響がないという特徴があるが、反面、周囲の騒音及び振動の影響を受ける。
【0005】
オシロメトリック方式は、空気袋の圧力状態と該空気袋の振動脈波の変動状態に基づいて血圧値を求める。オシロメトリック方式では、センサの位置は空気袋に連通している箇所ならどこにでも配置可能であるとともに周囲の騒音や振動の影響が少ないという特徴があるが、反面、空気袋の容量が大きいと圧力変動が生じにくく、計測誤差が大きくなる。すなわち、コロトコフ方式及びオシロメトリック方式はそれぞれ長所と短所を有している。
【0006】
特許文献2に記載の血圧計は、オシロメトリック方式の血圧計であって、カフの下流側で発生するK音以外にもカフの上流側で発生する脈音を検出するため、複数のマイクロホンの信号をそれぞれ帯域フィルタを通して制御部に供給することが開示されている。
【0007】
特許文献3に記載の血圧計は、コロトコフ方式とオシロメトリック方式の両方を併用するものであって、K音を検出するマイクロホンの信号を帯域通過フィルタを通して制御部に供給するとともに、空気袋の脈波振動を検出する圧力センサの信号を制御部に供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4186839号公報
【特許文献2】実公平6−14721号公報
【特許文献3】特許第2551668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アームイン式の血圧計(すなわち、血圧を測定するために空気袋を上腕に巻き付ける必要のない方式)では、太い上腕に対しても計測可能であるように筒状のハウジングは適度に大径に設定されている。一方、細い上腕に対しても計測が可能であるように内部の空気袋は内径側に向かって十分に膨脹可能な構成となっている。
【0010】
ところが、このように十分な膨脹を可能にするためには、空気袋の容量を大きくする必要があり、オシロメトリック方式では計測精度が低下する。
【0011】
特許文献1記載のアームイン式の血圧計は、オシロメトリック方式であって、空気袋の容量を小さくするために螺旋状の空気袋を巻き取る巻取機構が設けられており、ある程度高精度で血圧値が求められると考えられるが、巻取機構の存在により複雑化、大型化及び製品価格の高騰が避けられない。
【0012】
また、特許文献2及び3に記載の血圧計も複数のセンサを用いることによりある程度高精度で血圧値を求めることができるが、上述したコロトコフ方式及びオシロメトリック方式の短所を完全に解消することは困難である。
【0013】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、簡便構成でありながら血圧値を高精度に計測することのできる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る血圧計は、被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の音成分を取り出す第1フィルタと、前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出す第2フィルタと、前記第1フィルタを通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求める第1演算部と、前記第2フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める第2演算部とを有することを特徴とする。
【0015】
このような血圧計では、簡便構成でありながら血圧値を高精度に計測することができる。ここでいう筒状とは、上腕が挿入可能な孔部を有する形状であればよく、例えばテーブル載置可能な形状も含む。
【0016】
前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値の適否を判断する判断部と、前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値を表示する表示部とを有し、前記判断部は、前記第1演算部によるコロトコフ方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第1演算部によって求められた血圧値を表示し、それ以外で前記第2演算部によるオシロメトリック方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第2演算部によって求められた血圧値を表示してもよい。これにより、第1演算部及び第2演算部によって得られる血圧値を補完的に利用できる。
【0017】
前記センサは、圧電センサであってもよい。
【0018】
前記第1フィルタの帯域通過周波数は、40Hz〜60Hzを含む周波数であり、前記第2フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含むとよい。
【0019】
本発明に係る血圧計は、被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出すフィルタと、前記フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める演算部とを有することを特徴とする。
【0020】
このような血圧計ではノイズの影響がない。また、センサは、被測定者の上腕に対して押し付けられることから、空気袋の容量と無関係に脈波の検出がなされる。
【0021】
前記フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含むとよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る血圧計によれば、コロトコフ方式とオシロメトリック方式により血圧値を求めるので、両者の短所を補って高精度な計測が可能になる。センサは、コロトコフ方式による第1演算部とオシロメトリック方式による第2演算部で共用されるので、部品点数が多くならない簡便構成である。センサは、加圧手段によって加圧された状態で被測定者の上腕に押し付けられることにより振動を検出し、さらに第2フィルタによって脈波成分が抽出されることから、空気袋の容量の影響を受けずにオシロメトリック方式を実現できる。空気袋の容量の影響がないことから、空気袋巻取機構が不要であり、腕帯が軽量、簡便構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係る血圧計の斜視図である。
【図2】第1の実施形態における腕帯の分解斜視図である。
【図3】展開した状態の空気袋の斜視図である。
【図4】展開した状態の空気袋の分解斜視図である。
【図5】第1の実施形態における腕帯における部品の配置を示す一部省略斜視図である。
【図6】第1の実施形態における腕帯の正面図である。
【図7】第1の実施形態における本体のブロック構成図である。
【図8】本実施の形態に係る血圧計によって血圧を計測する様子を示す図である。
【図9】血圧計測の手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態における本体のブロック構成図である。
【図11】第2の実施形態における腕帯における部品の配置を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る血圧計について第1及び第2の実施形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0025】
図1に示すように、第1の実施形態に係る血圧計10aは、いわゆるアームイン式であって、被測定者の上腕が挿入される腕帯(カフ又はマンシェットとも呼ばれる。)12aと、チューブ14によって該腕帯12aに接続されてテーブル等に載置される本体16aとを有する。腕帯12aはチューブ14の長さの範囲内で自由に移動可能であり、被測定者はリラックスした任意の姿勢で血圧を計測することができる。血圧計10aは商用交流電源又は電池(二次電池を含む。)によって駆動される。
【0026】
本体16aは、腕帯12aに対して空気を給気及び排気する加圧手段18と、被測定者の血圧を計測する制御部20と、制御部20によって求められた血圧を表示する表示部22と、操作ボタン24とを有する。加圧手段18は、加圧ポンプ18a及び排気バルブ18b及び圧力センサ18c等から構成される。
【0027】
図2に示すように、腕帯12aは、筒状で硬質のハウジング30と、ハウジング30内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋(エアバッグ又はブラダーとも呼ばれる。)32と、空気袋32の内周面に設けられる2つのマイクロホン(センサ)34と、ノイズセンサ35と、空気袋32が露呈されないように覆う柔軟な布カバー36とを有する。布カバー36は、軸方向及び周方向に伸縮可能なストレッチ素材で形成されている。マイクロホン34は空気袋32によって被測定者の上腕が圧迫された状態で振動(コロトコフ音(以下、K音という。)及び脈波を含む)を検出してその信号を制御部20に供給する。
【0028】
マイクロホン34はセラミック式の圧電センサであって、基本的にはK音を検出するためのものであるが、その構造上、体表面に発生する脈波も同時検出可能である。
【0029】
ノイズセンサ35は、マイクロホン34に対して血流以外のノイズ(例えば、周囲の騒音や本体16aに触れたときの振動)が検出される場合に、その検出信号をキャンセルすることができ、正確に上腕の測定箇所からK音を検出することができる。
【0030】
ハウジング30は、持ちやすく且つ上下方向の向きが規定されるように上部にハンドル38が設けられている。ハウジング30は、例えば、重さが350g程度、外径が140mm程度、内径が135mm程度である。ハウジング30は軽量であるため、上腕に装着したときに上腕への巻き付け型の腕帯と比較して違和感が少ない。ハウジング30及びハンドル38は、樹脂によって構成されている。空気袋32は、チューブ14によって加圧手段18に接続されており、給気及び排気がなされ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫するように環状になっている。空気袋32は、製造段階でハウジング30に組み込む前には、図3に示すように展開されている。
【0031】
以下、腕帯12a及びその構成要素の説明については、上腕が挿入される縦方向をX方向、ハウジング30の周に沿う方向をY方向とする。腕帯12aで、被測定者が上腕を挿入したとき、肘に近い側をX1側、肩に近い側をX2側とする。腕帯12aについて上腕の挿入方向を理解しやすくするため、例えばX1方向側をやや細くしてもよい。
【0032】
図3及び図4に示すように、空気袋32は、樹脂シート40と、3つのスポンジ(クッション材)42と、4本のXベルポーレン(補強材)44aと、1本のYベルポーレン44bと、2つのポケット46とを有する。樹脂シート40は、例えば幅120mm程度、長さ420mmm程度の透明なウレタンシートである。スポンジ42は、例えば1個の重さが0.8g程度の軟質ウレタンフォームである。Xベルポーレン44a及びYベルポーレン44bは、例えば発泡ポリエチレンの薄板である。Xベルポーレン44aの重さは例えば2g程度、Yベルポーレン44bの重さは例えば10g程度である。
【0033】
樹脂シート40は、中央部でY方向の屈曲線48において2つ折りにして周囲が溶着されて袋状となり、空気袋32のベース体を形成する。樹脂シート40は、端部に設けられたノズル50を有する。ノズル50は、例えばウレタン塩化ビニールであって、チューブ14に接続される。樹脂シート40において、内周側となる部分(図4において屈曲線48よりもX1側)を内周面40aとし、外周側となる部分(図4において屈曲線48よりもX2側)を外周面40bとする。内周面40aの端部には、外周面40bに対して折り返す折り代40cが設けられている。
【0034】
3つのスポンジ42は、それぞれY方向(幅)が40mm程度、X方向(長さ)が65mm程度、高さが25mm程度であり、X1方向に向かって薄くなる傾斜面42aを有する。3つのスポンジ42のうち両脇側2つが設けられている箇所には、その内側にポケット46が配置され、マイクロホン34は、スポンジ42の傾斜面42aに配置される。このような配置によれば、スポンジ42によってマイクロホン34が上腕に密着しやすくなり、K音の検出を正確に行うことができる。また、スポンジ42を設けることにより空気袋32内のデッドスペースが確保され、初期状態における形状が適切に保たれるとともに、空気袋32への空気の供給量を少なくできる。
【0035】
図5に、腕帯12aにおけるいくつかの部品を示し、これらの部品の位置関係が理解しやすいように、外側のハウジング30は仮想線で示し、空気袋32及び布カバー36は省略している。ここで、2つのマイクロホン34は左右対称位置に配置されている。
【0036】
図6に示すように腕帯12aでは、空気袋32の外周面40bはハウジング30の内周面(上記の通り内径135mm程度)に固定されており、それ以上外側に広がることはない。空気袋32の内周面40aは、加圧ポンプ18aから加圧されることによって内側に向かって移動することになり、空気袋32としては縮径することになる。空気袋32は空気が供給されることにより、内径側に向かって適度に加圧膨脹して上腕の周囲を圧迫することができる。この加圧力は圧力センサ18c(図1参照)の信号に基づいて制御される。
【0037】
血圧計10aの腕帯12aでは面ファスナーにより上腕へ腕帯を巻き付ける方式と異なり、上腕に計測帯を巻き付ける必要がなく、該腕帯12aに上腕を挿入するだけでよい。一方、上腕の太さは被測定者によって相当に異なることから、上腕を圧迫するための空気袋32の膨脹量は十分に確保されている。
【0038】
図7に示すように、制御部20は血圧計10aの全体を統合的に制御する部分であって、CPU60がベースとなって構成されており、K音用フィルタ(第1フィルタ)62と、脈波用フィルタ(第2フィルタ)64と、ノイズセンサ用フィルタ65と、A/D変換器66と、ポンプドライバ68と、バルブドライバ70と、記憶部72とを有する。
【0039】
マイクロホン34及びノイズセンサ35の信号は図示しないアンプを介してK音用フィルタ62、脈波用フィルタ64及びノイズセンサ用フィルタ65に入力するとよい。2つのマイクロホン34の信号の加算機能(図7の加算点)及びノイズセンサ35及びノイズ検出部77によるノイズキャンセル機能は、公知の手段によって行われる。
【0040】
K音用フィルタ62は、マイクロホン34によって計測された信号から可聴周波数の音成分を取り出す帯域通過フィルタで、K音の取り出しに適するように30Hz〜120Hz、より好適には40〜60Hzの信号を取り出す。
【0041】
脈波用フィルタ64は、マイクロホン34によって計測された信号から可聴周波数以下の圧力変動である脈波成分を取り出す帯域通過フィルタで、脈波の取り出しに適するように0.3Hz〜30Hz、より好適には0.5Hz〜20Hzの信号を取り出す。K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64の通過周波数は、設計条件によってある程度変更してもよい。
【0042】
K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64では、最高血圧検出時と最低血圧検出時でカットオフ周波数を変更してもよい。K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64はアナログ回路、デジタル回路及びソフトウェア機能等いずれの手段で実現してもよい。
【0043】
ノイズセンサ用フィルタ65は、除去するべきノイズの成分を抽出するようにカットオフ周波数が設定されている。
【0044】
A/D変換器66は、K音用フィルタ62、脈波用フィルタ64及び圧力センサ18cのアナログ信号をデジタル値に変換してCPU60に供給する。変換速度等の要求仕様に基づいて、A/D変換器66は、K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64の信号用と、圧力センサ18cの信号用に分けてもよい。
【0045】
ポンプドライバ68及びバルブドライバ70は、CPU60の作用下に加圧ポンプ18a及び排気バルブ18bの制御をする。
【0046】
記憶部72は、CPU60のプログラム、変数及び血圧計測値等を記憶する部分であり、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等を含む。
【0047】
CPU60は、ソフトウェア処理部として、K音用フィルタ62を通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求めるコロトコフ部(第1演算部)74と、脈波用フィルタ64を通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧を求めるオシロメトリック部(第2演算部)76と、ノイズセンサ用フィルタ65を通して得られたノイズ成分に基づいて、K音及び脈波成分からノイズを除去するノイズ検出部77と、血圧計測の動作手順を規定するシーケンス部78と、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76によって求められた血圧値の評価をする結果判断部80とを有する。
【0048】
コロトコフ部74とオシロメトリック部76は、説明の便宜上2つに分けて示しているが、実際上は機能の一部が重複し、又は見かけ上1つのプログラム部として設けられていてもよい。
【0049】
コロトコフ方式による血圧の測定を概略的に説明すると、圧力センサ18cの圧力信号を監視しながら動脈の血流がなくなるまで空気袋32を加圧しておく。次いで、排気バルブ18bを操作して空気袋32内の圧力を低下させていく。やがて、動脈の血流が再開してK音が発生するのをマイクロホン34及びK音用フィルタ62によって計測し、この時点の圧力を最高血圧として記憶しておく。マイクロホン34は左右対称位置に設けられていることから計測上腕が右手及び左手のいずれの場合でもK音を計測可能である。2つのマイクロホン34の信号は、例えば加算値として扱うと処理が容易となる。もちろん、個別信号として処理をしてもよい。マイクロホン34の信号はノイズセンサ35及びノイズ検出部77によってノイズをキャンセルして計測精度が向上する。
【0050】
空気袋32内の圧力を2mmHg/sec程度でさらに低下させていくと、やがてK音は消滅するので、この時点の圧力を最低血圧として記憶する。
【0051】
オシロメトリック方式による血圧の測定を概略的に説明すると、空気袋32に対する加圧及び減圧はコロトコフ方式と同様に行い、動脈の血流が再開すると脈波振幅が急激に増大する。この時点の圧力を最高血圧として記憶しておく。空気袋32内の圧力をさらに低下させていくと、脈波振幅は更に増大していきピークをむかえる。この圧力は平均血圧である。以降、脈波振幅は減少していくがある圧力になると急激に脈波振幅が減少する。この時点の圧力を最低血圧として記憶する。脈波は周波数が低いためノイズの影響を受けにくい。
【0052】
結果判断部80は、コロトコフ部74によって求められた血圧値の適否を判断し、正常であればその値を表示部22にmmHg又はPa単位で表示する。表示させる。ここで、正常とは、健康状態のバロメータとしてではなく信号状態の適否であることはもちろんである。コロトコフ部74による血圧値の適否は、例えば、その値自体や、K音の音圧レベル、ノイズの大きさ、音の発生間隔(通常発生しうる心拍数との比較)等に基づいて行えばよい。コロトコフ部74によって求められた血圧値は、例えば文字「K」を併せて表示してもよい。表示部22には脈拍、脈圧等の付帯情報を表示させてもよい。
【0053】
結果判断部80は、コロトコフ部74によって求められた血圧値が正常でないときには、オシロメトリック部76によって求められた血圧値の適否を判断し、正常であれば該血圧値を表示部22に表示する。オシロメトリック部76による血圧値の適否は、例えば、脈が弱く、脈波の認識が行えず血圧を決定できない状況となっていないかの判断を行えばよい。オシロメトリック部76によって求められた血圧値は、例えば文字「O」を併せて表示してもよい。コロトコフ部74及びオシロメトリック部76によって求められたいずれの血圧値も正常でないときには所定のエラー表示をする。
【0054】
シーケンス部78は、操作ボタン24の操作に基づいて各部の動作を制御する。概略的には、操作ボタン24によって血圧計測の開始操作がなされると、加圧ポンプ18aを駆動して圧力センサ18cの信号を監視しながら空気袋32を所定圧力まで加圧する。このとき、オシロメトリック部76の作用下に脈波を検出しながら概略の最高血圧を計測し、該最高血圧よりもやや高い圧力になった時点で加圧を終了する自動加圧方式としてもよい。これにより、空気袋32の加圧力を低減させて計測時間の短縮、エネルギ消費の抑制及び被測定者への負担軽減を図ることができる。自動加圧方式はノイズの影響を考慮するとコロトコフ部74で行うことは困難であるが、脈波用フィルタ64を通した脈波信号に基づくオシロメトリック部76によって適正に行うことができる。
【0055】
シーケンス部78は、空気袋32の加圧終了後、排気バルブ18bを適量だけ開いて空気袋32を徐々に減圧するとともに、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76に対してそれぞれ血圧計測の指示を行い、コロトコフ方式及びオシロメトリック方式による血圧計測が並行して行われ、最高血圧、最低血圧の順に求められる。コロトコフ部74、オシロメトリック部76による血圧計測がそれぞれ終了し、又は空気袋32が規定の終了圧力まで低下すると、シーケンス部78は排気バルブ18bを全開として空気袋32の圧力を0に戻すとともに、結果判断部80に対して計測結果の判断及び表示の指示をする。
【0056】
シーケンス部78は、操作ボタン24の操作を監視し、血圧の計測中において所定の中断操作がなされたときには対応する所定の処理を行う。また、所定の操作に基づいて、脈拍値や過去の計測値等の表示制御を行う。シーケンス部78は、図9に示す手順の制御を行う。
【0057】
次に、このように構成される血圧計10aの作用について説明する。被測定者は図8に示すように腕帯12aに上腕を挿入しておく。血圧計10aにおいては、腕帯12aが本体16aと別体構造であることから被測定者は前屈みにならずにリラックスした姿勢で計測が可能になる。しかも腕帯12aは加圧ポンプ18aや、特許文献1のような空気袋巻取機構等がない小型で軽量構成であることから被測定者の負担にならず、血圧が上がることがなく、正確な血圧を測定することができる。血圧計10aは、操作ボタン24の操作に基づいて制御部20の作用下に血圧の測定を開始する。制御部20は、コロトコフ方式及びオシロメトリック方式によって並行的に血圧の測定をする。
【0058】
先ず、図9のステップS1において、加圧ポンプ18aの作用下に空気袋32に空気を給気して膨脹させ、上腕の周囲を圧迫する。
【0059】
ステップS2において、脈波用フィルタ64及びオシロメトリック部76の作用下に、空気袋32に発生する脈波の検出を行う。
【0060】
ステップS3において、脈波の大きさに基づいて加圧の終了判断をする。十分に加圧がなされると動脈の血流がなくなって脈波が急激に小さくなることから加圧を終了する(ステップS4)。これによって不必要に強く加圧することがなく、被測定者の個人差に応じて計測時間を短縮できる。脈波が検出されなくなってから、多少の余裕をみてそれよりも所定量だけ加圧を継続するとよい。
【0061】
ステップS5において、空気袋32の加圧が終了した後、排気バルブ18bを適度に開き、該空気袋32を徐々に減圧する。安定した計測状態を得るために、空気袋32は略定速の減圧とする。
【0062】
ステップS6において、コロトコフ部74はK音用フィルタ62を通過したK音の大きさを検出する。
【0063】
ステップS7において、オシロメトリック部76は脈波用フィルタ64を通過した脈波の大きさを検出する。
【0064】
ステップS8において、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76は、K音及び脈波が発生したことに基づいて、それぞれ最高血圧値を仮に決定する。K音及び脈波がそれぞれ発生しないときにはステップS4へ戻る。
【0065】
ステップS9において、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76は、K音及び脈波が発生している状態から消滅することに基づいて、それぞれ最低血圧値を仮に決定する。K音及び脈波がそれぞれ消滅しないときにはステップS4へ戻る。
【0066】
ステップS10において、コロトコフ部74及び結果判断部80がステップS8及びS9で仮に求められたコロトコフ方式(図9中、K音法と記す。)による最高血圧値及び最低血圧値の適否を上記の通り判断する。コロトコフ方式による最高血圧値及び最低血圧値がそれぞれ正常であるときにはステップS11へ移り、異常があるときにはステップS12へ移る。
【0067】
ステップS11においては、コロトコフ方式による最高血圧値及び最低血圧値を表示用の血圧値として決定し、所定の表示準備処理(例えば、各血圧値及び文字「K」の表示をするためのパラメータ設定)をする。
【0068】
一方、ステップS12においては、オシロメトリック部76及び結果判断部80がステップS8及びS9で仮に求められたオシロメトリック方式(図9中、OSC法と記す。)による最高血圧値及び最低血圧値の適否を上記の通り判断する。オシロメトリック方式による最高血圧値及び最低血圧値がそれぞれ正常であるときにはステップS13へ移り、異常があるときにはステップS16へ移る。
【0069】
ステップS13においては、オシロメトリック方式による最高血圧値及び最低血圧値を表示用の血圧値として決定し、所定の表示準備処理(例えば、各血圧値及び文字「O」の表示をするためのパラメータ設定)をする。
【0070】
ステップS11及びS13の後、ステップS14においては、排気バルブ18bを全開として空気袋32を高速で減圧する。
【0071】
ステップS15においては、ステップS11又はS13で決定された最高血圧値及び最低血圧値を表示部22に表示する。
【0072】
他方、ステップS12で異常と判断されたときには、ステップS16において空気袋32の排気処理をした後、ステップS17において所定のエラー表示をする。
【0073】
上述したように、本実施の形態に係る血圧計10aでは、コロトコフ方式とオシロメトリック方式により血圧値を求めるので、両者の短所を補って高精度な計測が可能になる。マイクロホン34はコロトコフ部74とオシロメトリック部76で共用されるので、部品点数が多くならない簡便構成である。マイクロホン34は、加圧ポンプ18aによって加圧された状態で被測定者の上腕に押し付けられることにより振動を検出し、さらに脈波用フィルタ64によって脈波成分が抽出されることから、空気袋32の容量の影響を受けずにオシロメトリック方式を実現できる。空気袋32の容量の影響がないことから、空気袋32の巻取機構が不要であり、腕帯が軽量、簡便構成となる。
【0074】
また、結果判断部80により、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76によって得られる血圧値を補完的に利用できる。
【0075】
さらに、加圧手段18、制御部20及び表示部22は、チューブ14を介してハウジング30とは別体に設けられた本体16aに設けられている。従って、被測定者は本体16aの位置に拘束されない自由な姿勢で血圧の計測ができ、計測精度が向上するとともに、腕帯12aは軽量且つコンパクトとなって扱いが容易である。また、面ファスナー式のように上腕に巻き付ける必要がなく、上腕を挿入するだけでよい。腕帯12aは本体16aが置かれたテーブルとは離れているため、該テーブルの振動の影響がなく計測精度が向上する。
【0076】
従来のテーブル載置型のアームイン式血圧計は、上腕を挿入したときに腕帯部に体重をかけてしまうことを考慮するために高強度構成とする必要があるが、血圧計10aでは腕帯12aに対して体重がかかることがなく、該腕帯12aを無駄に高強度にする必要はない。
【0077】
また、オシロメトリック方式の血圧計は、空気袋の巻取機構を設けるためにさらに高強度構成とする必要があるが、血圧計10aでは巻取機構も不要であって該腕帯12aを簡便に構成できる。
【0078】
次に、第2の実施形態に係る血圧計10bについて説明する。血圧計10bについて、血圧計10aと同じ部分については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0079】
図10に示すように、血圧計10bは、腕帯12b、チューブ14及び本体16bを有する。本体16bは、本体16a(図7参照)からK音用フィルタ62及びコロトコフ部74を省略した構成である。
【0080】
図10及び図11に示すように、腕帯12bは1つのセンサ82を有する。センサ82は加圧手段18によって加圧された状態で、被測定者の上腕に押し付けられて、動脈の脈波を検出するためのものであり、前記のマイクロホン34と同じでもよい。センサ82は、例えば、上腕の上面部に当接する位置における、スポンジ42の傾斜面42aに設けると、上腕に対して押し付けられやすい。図11は図5に準じて、外側のハウジング30は仮想線で示し、空気袋32及び布カバー36は省略している。
【0081】
このような血圧計10bによれば、基本的にはオシロメトリック方式であることからノイズの影響なく血圧の計測をすることができる。センサ82は、被測定者の上腕に対して押し付けられることから、空気袋32の容量と無関係に脈波の検出がなされる。従って、特許文献1のような空気袋の巻取機構が不要であり、腕帯12bは小型、軽量である。血圧計10bはコロトコフ方式にも転用可能である。
【0082】
本発明に係る血圧計は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
10a、10b…血圧計 12a、12b…腕帯
14…チューブ 16a、16b…本体
18…加圧手段 18a…加圧ポンプ
18b…排気バルブ 18c…圧力センサ
20…制御部 30…ハウジング
32…空気袋 34…マイクロホン(センサ)
42…スポンジ 62…K音用フィルタ(第1フィルタ)
64…脈波用フィルタ(第2フィルタ) 74…コロトコフ部(第1演算部)
76…オシロメトリック部(第2演算部) 82…センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のハウジングと、ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋と、空気袋に対して空気を給気及び排気する加圧手段とを有する血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理のため日常的に血圧を計測することができるように、家庭用の血圧計が普及しつつある。家庭用の血圧計は、血圧を正確に計測するだけではなく、操作方法が簡単で、廉価且つコンパクトであることが望ましい。
【0003】
アームイン式の血圧計(例えば、特許文献1)では、上腕を挿入して所定のボタン操作をするだけで自動的に血圧を計測することができることから家庭用に好適である。
【0004】
血圧計における血圧計測方法には主にコロトコフ方式とオシロメトリック方式がある。コロトコフ方式では空気袋にコロトコフ音(以下、K音ともいう。)を検出するセンサを設け、空気袋の圧力状態とK音の発生及び消滅に基づいて血圧値(最高血圧及び最低血圧)を求める。コロトコフ方式は、血圧値を高い精度で求めることができるとともにセンサを上腕に密着させてK音を検出することから空気袋の容量の影響がないという特徴があるが、反面、周囲の騒音及び振動の影響を受ける。
【0005】
オシロメトリック方式は、空気袋の圧力状態と該空気袋の振動脈波の変動状態に基づいて血圧値を求める。オシロメトリック方式では、センサの位置は空気袋に連通している箇所ならどこにでも配置可能であるとともに周囲の騒音や振動の影響が少ないという特徴があるが、反面、空気袋の容量が大きいと圧力変動が生じにくく、計測誤差が大きくなる。すなわち、コロトコフ方式及びオシロメトリック方式はそれぞれ長所と短所を有している。
【0006】
特許文献2に記載の血圧計は、オシロメトリック方式の血圧計であって、カフの下流側で発生するK音以外にもカフの上流側で発生する脈音を検出するため、複数のマイクロホンの信号をそれぞれ帯域フィルタを通して制御部に供給することが開示されている。
【0007】
特許文献3に記載の血圧計は、コロトコフ方式とオシロメトリック方式の両方を併用するものであって、K音を検出するマイクロホンの信号を帯域通過フィルタを通して制御部に供給するとともに、空気袋の脈波振動を検出する圧力センサの信号を制御部に供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4186839号公報
【特許文献2】実公平6−14721号公報
【特許文献3】特許第2551668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アームイン式の血圧計(すなわち、血圧を測定するために空気袋を上腕に巻き付ける必要のない方式)では、太い上腕に対しても計測可能であるように筒状のハウジングは適度に大径に設定されている。一方、細い上腕に対しても計測が可能であるように内部の空気袋は内径側に向かって十分に膨脹可能な構成となっている。
【0010】
ところが、このように十分な膨脹を可能にするためには、空気袋の容量を大きくする必要があり、オシロメトリック方式では計測精度が低下する。
【0011】
特許文献1記載のアームイン式の血圧計は、オシロメトリック方式であって、空気袋の容量を小さくするために螺旋状の空気袋を巻き取る巻取機構が設けられており、ある程度高精度で血圧値が求められると考えられるが、巻取機構の存在により複雑化、大型化及び製品価格の高騰が避けられない。
【0012】
また、特許文献2及び3に記載の血圧計も複数のセンサを用いることによりある程度高精度で血圧値を求めることができるが、上述したコロトコフ方式及びオシロメトリック方式の短所を完全に解消することは困難である。
【0013】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、簡便構成でありながら血圧値を高精度に計測することのできる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る血圧計は、被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の音成分を取り出す第1フィルタと、前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出す第2フィルタと、前記第1フィルタを通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求める第1演算部と、前記第2フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める第2演算部とを有することを特徴とする。
【0015】
このような血圧計では、簡便構成でありながら血圧値を高精度に計測することができる。ここでいう筒状とは、上腕が挿入可能な孔部を有する形状であればよく、例えばテーブル載置可能な形状も含む。
【0016】
前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値の適否を判断する判断部と、前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値を表示する表示部とを有し、前記判断部は、前記第1演算部によるコロトコフ方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第1演算部によって求められた血圧値を表示し、それ以外で前記第2演算部によるオシロメトリック方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第2演算部によって求められた血圧値を表示してもよい。これにより、第1演算部及び第2演算部によって得られる血圧値を補完的に利用できる。
【0017】
前記センサは、圧電センサであってもよい。
【0018】
前記第1フィルタの帯域通過周波数は、40Hz〜60Hzを含む周波数であり、前記第2フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含むとよい。
【0019】
本発明に係る血圧計は、被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出すフィルタと、前記フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める演算部とを有することを特徴とする。
【0020】
このような血圧計ではノイズの影響がない。また、センサは、被測定者の上腕に対して押し付けられることから、空気袋の容量と無関係に脈波の検出がなされる。
【0021】
前記フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含むとよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る血圧計によれば、コロトコフ方式とオシロメトリック方式により血圧値を求めるので、両者の短所を補って高精度な計測が可能になる。センサは、コロトコフ方式による第1演算部とオシロメトリック方式による第2演算部で共用されるので、部品点数が多くならない簡便構成である。センサは、加圧手段によって加圧された状態で被測定者の上腕に押し付けられることにより振動を検出し、さらに第2フィルタによって脈波成分が抽出されることから、空気袋の容量の影響を受けずにオシロメトリック方式を実現できる。空気袋の容量の影響がないことから、空気袋巻取機構が不要であり、腕帯が軽量、簡便構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係る血圧計の斜視図である。
【図2】第1の実施形態における腕帯の分解斜視図である。
【図3】展開した状態の空気袋の斜視図である。
【図4】展開した状態の空気袋の分解斜視図である。
【図5】第1の実施形態における腕帯における部品の配置を示す一部省略斜視図である。
【図6】第1の実施形態における腕帯の正面図である。
【図7】第1の実施形態における本体のブロック構成図である。
【図8】本実施の形態に係る血圧計によって血圧を計測する様子を示す図である。
【図9】血圧計測の手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態における本体のブロック構成図である。
【図11】第2の実施形態における腕帯における部品の配置を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る血圧計について第1及び第2の実施形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0025】
図1に示すように、第1の実施形態に係る血圧計10aは、いわゆるアームイン式であって、被測定者の上腕が挿入される腕帯(カフ又はマンシェットとも呼ばれる。)12aと、チューブ14によって該腕帯12aに接続されてテーブル等に載置される本体16aとを有する。腕帯12aはチューブ14の長さの範囲内で自由に移動可能であり、被測定者はリラックスした任意の姿勢で血圧を計測することができる。血圧計10aは商用交流電源又は電池(二次電池を含む。)によって駆動される。
【0026】
本体16aは、腕帯12aに対して空気を給気及び排気する加圧手段18と、被測定者の血圧を計測する制御部20と、制御部20によって求められた血圧を表示する表示部22と、操作ボタン24とを有する。加圧手段18は、加圧ポンプ18a及び排気バルブ18b及び圧力センサ18c等から構成される。
【0027】
図2に示すように、腕帯12aは、筒状で硬質のハウジング30と、ハウジング30内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋(エアバッグ又はブラダーとも呼ばれる。)32と、空気袋32の内周面に設けられる2つのマイクロホン(センサ)34と、ノイズセンサ35と、空気袋32が露呈されないように覆う柔軟な布カバー36とを有する。布カバー36は、軸方向及び周方向に伸縮可能なストレッチ素材で形成されている。マイクロホン34は空気袋32によって被測定者の上腕が圧迫された状態で振動(コロトコフ音(以下、K音という。)及び脈波を含む)を検出してその信号を制御部20に供給する。
【0028】
マイクロホン34はセラミック式の圧電センサであって、基本的にはK音を検出するためのものであるが、その構造上、体表面に発生する脈波も同時検出可能である。
【0029】
ノイズセンサ35は、マイクロホン34に対して血流以外のノイズ(例えば、周囲の騒音や本体16aに触れたときの振動)が検出される場合に、その検出信号をキャンセルすることができ、正確に上腕の測定箇所からK音を検出することができる。
【0030】
ハウジング30は、持ちやすく且つ上下方向の向きが規定されるように上部にハンドル38が設けられている。ハウジング30は、例えば、重さが350g程度、外径が140mm程度、内径が135mm程度である。ハウジング30は軽量であるため、上腕に装着したときに上腕への巻き付け型の腕帯と比較して違和感が少ない。ハウジング30及びハンドル38は、樹脂によって構成されている。空気袋32は、チューブ14によって加圧手段18に接続されており、給気及び排気がなされ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫するように環状になっている。空気袋32は、製造段階でハウジング30に組み込む前には、図3に示すように展開されている。
【0031】
以下、腕帯12a及びその構成要素の説明については、上腕が挿入される縦方向をX方向、ハウジング30の周に沿う方向をY方向とする。腕帯12aで、被測定者が上腕を挿入したとき、肘に近い側をX1側、肩に近い側をX2側とする。腕帯12aについて上腕の挿入方向を理解しやすくするため、例えばX1方向側をやや細くしてもよい。
【0032】
図3及び図4に示すように、空気袋32は、樹脂シート40と、3つのスポンジ(クッション材)42と、4本のXベルポーレン(補強材)44aと、1本のYベルポーレン44bと、2つのポケット46とを有する。樹脂シート40は、例えば幅120mm程度、長さ420mmm程度の透明なウレタンシートである。スポンジ42は、例えば1個の重さが0.8g程度の軟質ウレタンフォームである。Xベルポーレン44a及びYベルポーレン44bは、例えば発泡ポリエチレンの薄板である。Xベルポーレン44aの重さは例えば2g程度、Yベルポーレン44bの重さは例えば10g程度である。
【0033】
樹脂シート40は、中央部でY方向の屈曲線48において2つ折りにして周囲が溶着されて袋状となり、空気袋32のベース体を形成する。樹脂シート40は、端部に設けられたノズル50を有する。ノズル50は、例えばウレタン塩化ビニールであって、チューブ14に接続される。樹脂シート40において、内周側となる部分(図4において屈曲線48よりもX1側)を内周面40aとし、外周側となる部分(図4において屈曲線48よりもX2側)を外周面40bとする。内周面40aの端部には、外周面40bに対して折り返す折り代40cが設けられている。
【0034】
3つのスポンジ42は、それぞれY方向(幅)が40mm程度、X方向(長さ)が65mm程度、高さが25mm程度であり、X1方向に向かって薄くなる傾斜面42aを有する。3つのスポンジ42のうち両脇側2つが設けられている箇所には、その内側にポケット46が配置され、マイクロホン34は、スポンジ42の傾斜面42aに配置される。このような配置によれば、スポンジ42によってマイクロホン34が上腕に密着しやすくなり、K音の検出を正確に行うことができる。また、スポンジ42を設けることにより空気袋32内のデッドスペースが確保され、初期状態における形状が適切に保たれるとともに、空気袋32への空気の供給量を少なくできる。
【0035】
図5に、腕帯12aにおけるいくつかの部品を示し、これらの部品の位置関係が理解しやすいように、外側のハウジング30は仮想線で示し、空気袋32及び布カバー36は省略している。ここで、2つのマイクロホン34は左右対称位置に配置されている。
【0036】
図6に示すように腕帯12aでは、空気袋32の外周面40bはハウジング30の内周面(上記の通り内径135mm程度)に固定されており、それ以上外側に広がることはない。空気袋32の内周面40aは、加圧ポンプ18aから加圧されることによって内側に向かって移動することになり、空気袋32としては縮径することになる。空気袋32は空気が供給されることにより、内径側に向かって適度に加圧膨脹して上腕の周囲を圧迫することができる。この加圧力は圧力センサ18c(図1参照)の信号に基づいて制御される。
【0037】
血圧計10aの腕帯12aでは面ファスナーにより上腕へ腕帯を巻き付ける方式と異なり、上腕に計測帯を巻き付ける必要がなく、該腕帯12aに上腕を挿入するだけでよい。一方、上腕の太さは被測定者によって相当に異なることから、上腕を圧迫するための空気袋32の膨脹量は十分に確保されている。
【0038】
図7に示すように、制御部20は血圧計10aの全体を統合的に制御する部分であって、CPU60がベースとなって構成されており、K音用フィルタ(第1フィルタ)62と、脈波用フィルタ(第2フィルタ)64と、ノイズセンサ用フィルタ65と、A/D変換器66と、ポンプドライバ68と、バルブドライバ70と、記憶部72とを有する。
【0039】
マイクロホン34及びノイズセンサ35の信号は図示しないアンプを介してK音用フィルタ62、脈波用フィルタ64及びノイズセンサ用フィルタ65に入力するとよい。2つのマイクロホン34の信号の加算機能(図7の加算点)及びノイズセンサ35及びノイズ検出部77によるノイズキャンセル機能は、公知の手段によって行われる。
【0040】
K音用フィルタ62は、マイクロホン34によって計測された信号から可聴周波数の音成分を取り出す帯域通過フィルタで、K音の取り出しに適するように30Hz〜120Hz、より好適には40〜60Hzの信号を取り出す。
【0041】
脈波用フィルタ64は、マイクロホン34によって計測された信号から可聴周波数以下の圧力変動である脈波成分を取り出す帯域通過フィルタで、脈波の取り出しに適するように0.3Hz〜30Hz、より好適には0.5Hz〜20Hzの信号を取り出す。K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64の通過周波数は、設計条件によってある程度変更してもよい。
【0042】
K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64では、最高血圧検出時と最低血圧検出時でカットオフ周波数を変更してもよい。K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64はアナログ回路、デジタル回路及びソフトウェア機能等いずれの手段で実現してもよい。
【0043】
ノイズセンサ用フィルタ65は、除去するべきノイズの成分を抽出するようにカットオフ周波数が設定されている。
【0044】
A/D変換器66は、K音用フィルタ62、脈波用フィルタ64及び圧力センサ18cのアナログ信号をデジタル値に変換してCPU60に供給する。変換速度等の要求仕様に基づいて、A/D変換器66は、K音用フィルタ62及び脈波用フィルタ64の信号用と、圧力センサ18cの信号用に分けてもよい。
【0045】
ポンプドライバ68及びバルブドライバ70は、CPU60の作用下に加圧ポンプ18a及び排気バルブ18bの制御をする。
【0046】
記憶部72は、CPU60のプログラム、変数及び血圧計測値等を記憶する部分であり、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等を含む。
【0047】
CPU60は、ソフトウェア処理部として、K音用フィルタ62を通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求めるコロトコフ部(第1演算部)74と、脈波用フィルタ64を通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧を求めるオシロメトリック部(第2演算部)76と、ノイズセンサ用フィルタ65を通して得られたノイズ成分に基づいて、K音及び脈波成分からノイズを除去するノイズ検出部77と、血圧計測の動作手順を規定するシーケンス部78と、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76によって求められた血圧値の評価をする結果判断部80とを有する。
【0048】
コロトコフ部74とオシロメトリック部76は、説明の便宜上2つに分けて示しているが、実際上は機能の一部が重複し、又は見かけ上1つのプログラム部として設けられていてもよい。
【0049】
コロトコフ方式による血圧の測定を概略的に説明すると、圧力センサ18cの圧力信号を監視しながら動脈の血流がなくなるまで空気袋32を加圧しておく。次いで、排気バルブ18bを操作して空気袋32内の圧力を低下させていく。やがて、動脈の血流が再開してK音が発生するのをマイクロホン34及びK音用フィルタ62によって計測し、この時点の圧力を最高血圧として記憶しておく。マイクロホン34は左右対称位置に設けられていることから計測上腕が右手及び左手のいずれの場合でもK音を計測可能である。2つのマイクロホン34の信号は、例えば加算値として扱うと処理が容易となる。もちろん、個別信号として処理をしてもよい。マイクロホン34の信号はノイズセンサ35及びノイズ検出部77によってノイズをキャンセルして計測精度が向上する。
【0050】
空気袋32内の圧力を2mmHg/sec程度でさらに低下させていくと、やがてK音は消滅するので、この時点の圧力を最低血圧として記憶する。
【0051】
オシロメトリック方式による血圧の測定を概略的に説明すると、空気袋32に対する加圧及び減圧はコロトコフ方式と同様に行い、動脈の血流が再開すると脈波振幅が急激に増大する。この時点の圧力を最高血圧として記憶しておく。空気袋32内の圧力をさらに低下させていくと、脈波振幅は更に増大していきピークをむかえる。この圧力は平均血圧である。以降、脈波振幅は減少していくがある圧力になると急激に脈波振幅が減少する。この時点の圧力を最低血圧として記憶する。脈波は周波数が低いためノイズの影響を受けにくい。
【0052】
結果判断部80は、コロトコフ部74によって求められた血圧値の適否を判断し、正常であればその値を表示部22にmmHg又はPa単位で表示する。表示させる。ここで、正常とは、健康状態のバロメータとしてではなく信号状態の適否であることはもちろんである。コロトコフ部74による血圧値の適否は、例えば、その値自体や、K音の音圧レベル、ノイズの大きさ、音の発生間隔(通常発生しうる心拍数との比較)等に基づいて行えばよい。コロトコフ部74によって求められた血圧値は、例えば文字「K」を併せて表示してもよい。表示部22には脈拍、脈圧等の付帯情報を表示させてもよい。
【0053】
結果判断部80は、コロトコフ部74によって求められた血圧値が正常でないときには、オシロメトリック部76によって求められた血圧値の適否を判断し、正常であれば該血圧値を表示部22に表示する。オシロメトリック部76による血圧値の適否は、例えば、脈が弱く、脈波の認識が行えず血圧を決定できない状況となっていないかの判断を行えばよい。オシロメトリック部76によって求められた血圧値は、例えば文字「O」を併せて表示してもよい。コロトコフ部74及びオシロメトリック部76によって求められたいずれの血圧値も正常でないときには所定のエラー表示をする。
【0054】
シーケンス部78は、操作ボタン24の操作に基づいて各部の動作を制御する。概略的には、操作ボタン24によって血圧計測の開始操作がなされると、加圧ポンプ18aを駆動して圧力センサ18cの信号を監視しながら空気袋32を所定圧力まで加圧する。このとき、オシロメトリック部76の作用下に脈波を検出しながら概略の最高血圧を計測し、該最高血圧よりもやや高い圧力になった時点で加圧を終了する自動加圧方式としてもよい。これにより、空気袋32の加圧力を低減させて計測時間の短縮、エネルギ消費の抑制及び被測定者への負担軽減を図ることができる。自動加圧方式はノイズの影響を考慮するとコロトコフ部74で行うことは困難であるが、脈波用フィルタ64を通した脈波信号に基づくオシロメトリック部76によって適正に行うことができる。
【0055】
シーケンス部78は、空気袋32の加圧終了後、排気バルブ18bを適量だけ開いて空気袋32を徐々に減圧するとともに、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76に対してそれぞれ血圧計測の指示を行い、コロトコフ方式及びオシロメトリック方式による血圧計測が並行して行われ、最高血圧、最低血圧の順に求められる。コロトコフ部74、オシロメトリック部76による血圧計測がそれぞれ終了し、又は空気袋32が規定の終了圧力まで低下すると、シーケンス部78は排気バルブ18bを全開として空気袋32の圧力を0に戻すとともに、結果判断部80に対して計測結果の判断及び表示の指示をする。
【0056】
シーケンス部78は、操作ボタン24の操作を監視し、血圧の計測中において所定の中断操作がなされたときには対応する所定の処理を行う。また、所定の操作に基づいて、脈拍値や過去の計測値等の表示制御を行う。シーケンス部78は、図9に示す手順の制御を行う。
【0057】
次に、このように構成される血圧計10aの作用について説明する。被測定者は図8に示すように腕帯12aに上腕を挿入しておく。血圧計10aにおいては、腕帯12aが本体16aと別体構造であることから被測定者は前屈みにならずにリラックスした姿勢で計測が可能になる。しかも腕帯12aは加圧ポンプ18aや、特許文献1のような空気袋巻取機構等がない小型で軽量構成であることから被測定者の負担にならず、血圧が上がることがなく、正確な血圧を測定することができる。血圧計10aは、操作ボタン24の操作に基づいて制御部20の作用下に血圧の測定を開始する。制御部20は、コロトコフ方式及びオシロメトリック方式によって並行的に血圧の測定をする。
【0058】
先ず、図9のステップS1において、加圧ポンプ18aの作用下に空気袋32に空気を給気して膨脹させ、上腕の周囲を圧迫する。
【0059】
ステップS2において、脈波用フィルタ64及びオシロメトリック部76の作用下に、空気袋32に発生する脈波の検出を行う。
【0060】
ステップS3において、脈波の大きさに基づいて加圧の終了判断をする。十分に加圧がなされると動脈の血流がなくなって脈波が急激に小さくなることから加圧を終了する(ステップS4)。これによって不必要に強く加圧することがなく、被測定者の個人差に応じて計測時間を短縮できる。脈波が検出されなくなってから、多少の余裕をみてそれよりも所定量だけ加圧を継続するとよい。
【0061】
ステップS5において、空気袋32の加圧が終了した後、排気バルブ18bを適度に開き、該空気袋32を徐々に減圧する。安定した計測状態を得るために、空気袋32は略定速の減圧とする。
【0062】
ステップS6において、コロトコフ部74はK音用フィルタ62を通過したK音の大きさを検出する。
【0063】
ステップS7において、オシロメトリック部76は脈波用フィルタ64を通過した脈波の大きさを検出する。
【0064】
ステップS8において、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76は、K音及び脈波が発生したことに基づいて、それぞれ最高血圧値を仮に決定する。K音及び脈波がそれぞれ発生しないときにはステップS4へ戻る。
【0065】
ステップS9において、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76は、K音及び脈波が発生している状態から消滅することに基づいて、それぞれ最低血圧値を仮に決定する。K音及び脈波がそれぞれ消滅しないときにはステップS4へ戻る。
【0066】
ステップS10において、コロトコフ部74及び結果判断部80がステップS8及びS9で仮に求められたコロトコフ方式(図9中、K音法と記す。)による最高血圧値及び最低血圧値の適否を上記の通り判断する。コロトコフ方式による最高血圧値及び最低血圧値がそれぞれ正常であるときにはステップS11へ移り、異常があるときにはステップS12へ移る。
【0067】
ステップS11においては、コロトコフ方式による最高血圧値及び最低血圧値を表示用の血圧値として決定し、所定の表示準備処理(例えば、各血圧値及び文字「K」の表示をするためのパラメータ設定)をする。
【0068】
一方、ステップS12においては、オシロメトリック部76及び結果判断部80がステップS8及びS9で仮に求められたオシロメトリック方式(図9中、OSC法と記す。)による最高血圧値及び最低血圧値の適否を上記の通り判断する。オシロメトリック方式による最高血圧値及び最低血圧値がそれぞれ正常であるときにはステップS13へ移り、異常があるときにはステップS16へ移る。
【0069】
ステップS13においては、オシロメトリック方式による最高血圧値及び最低血圧値を表示用の血圧値として決定し、所定の表示準備処理(例えば、各血圧値及び文字「O」の表示をするためのパラメータ設定)をする。
【0070】
ステップS11及びS13の後、ステップS14においては、排気バルブ18bを全開として空気袋32を高速で減圧する。
【0071】
ステップS15においては、ステップS11又はS13で決定された最高血圧値及び最低血圧値を表示部22に表示する。
【0072】
他方、ステップS12で異常と判断されたときには、ステップS16において空気袋32の排気処理をした後、ステップS17において所定のエラー表示をする。
【0073】
上述したように、本実施の形態に係る血圧計10aでは、コロトコフ方式とオシロメトリック方式により血圧値を求めるので、両者の短所を補って高精度な計測が可能になる。マイクロホン34はコロトコフ部74とオシロメトリック部76で共用されるので、部品点数が多くならない簡便構成である。マイクロホン34は、加圧ポンプ18aによって加圧された状態で被測定者の上腕に押し付けられることにより振動を検出し、さらに脈波用フィルタ64によって脈波成分が抽出されることから、空気袋32の容量の影響を受けずにオシロメトリック方式を実現できる。空気袋32の容量の影響がないことから、空気袋32の巻取機構が不要であり、腕帯が軽量、簡便構成となる。
【0074】
また、結果判断部80により、コロトコフ部74及びオシロメトリック部76によって得られる血圧値を補完的に利用できる。
【0075】
さらに、加圧手段18、制御部20及び表示部22は、チューブ14を介してハウジング30とは別体に設けられた本体16aに設けられている。従って、被測定者は本体16aの位置に拘束されない自由な姿勢で血圧の計測ができ、計測精度が向上するとともに、腕帯12aは軽量且つコンパクトとなって扱いが容易である。また、面ファスナー式のように上腕に巻き付ける必要がなく、上腕を挿入するだけでよい。腕帯12aは本体16aが置かれたテーブルとは離れているため、該テーブルの振動の影響がなく計測精度が向上する。
【0076】
従来のテーブル載置型のアームイン式血圧計は、上腕を挿入したときに腕帯部に体重をかけてしまうことを考慮するために高強度構成とする必要があるが、血圧計10aでは腕帯12aに対して体重がかかることがなく、該腕帯12aを無駄に高強度にする必要はない。
【0077】
また、オシロメトリック方式の血圧計は、空気袋の巻取機構を設けるためにさらに高強度構成とする必要があるが、血圧計10aでは巻取機構も不要であって該腕帯12aを簡便に構成できる。
【0078】
次に、第2の実施形態に係る血圧計10bについて説明する。血圧計10bについて、血圧計10aと同じ部分については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0079】
図10に示すように、血圧計10bは、腕帯12b、チューブ14及び本体16bを有する。本体16bは、本体16a(図7参照)からK音用フィルタ62及びコロトコフ部74を省略した構成である。
【0080】
図10及び図11に示すように、腕帯12bは1つのセンサ82を有する。センサ82は加圧手段18によって加圧された状態で、被測定者の上腕に押し付けられて、動脈の脈波を検出するためのものであり、前記のマイクロホン34と同じでもよい。センサ82は、例えば、上腕の上面部に当接する位置における、スポンジ42の傾斜面42aに設けると、上腕に対して押し付けられやすい。図11は図5に準じて、外側のハウジング30は仮想線で示し、空気袋32及び布カバー36は省略している。
【0081】
このような血圧計10bによれば、基本的にはオシロメトリック方式であることからノイズの影響なく血圧の計測をすることができる。センサ82は、被測定者の上腕に対して押し付けられることから、空気袋32の容量と無関係に脈波の検出がなされる。従って、特許文献1のような空気袋の巻取機構が不要であり、腕帯12bは小型、軽量である。血圧計10bはコロトコフ方式にも転用可能である。
【0082】
本発明に係る血圧計は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
10a、10b…血圧計 12a、12b…腕帯
14…チューブ 16a、16b…本体
18…加圧手段 18a…加圧ポンプ
18b…排気バルブ 18c…圧力センサ
20…制御部 30…ハウジング
32…空気袋 34…マイクロホン(センサ)
42…スポンジ 62…K音用フィルタ(第1フィルタ)
64…脈波用フィルタ(第2フィルタ) 74…コロトコフ部(第1演算部)
76…オシロメトリック部(第2演算部) 82…センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、
前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、
前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、
前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の音成分を取り出す第1フィルタと、
前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出す第2フィルタと、
前記第1フィルタを通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求める第1演算部と、
前記第2フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める第2演算部と、
を有することを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1記載の血圧計において、
前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値の適否を判断する判断部と、
前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値を表示する表示部と、
を有し、
前記判断部は、前記第1演算部によるコロトコフ方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第1演算部によって求められた血圧値を表示し、それ以外で前記第2演算部によるオシロメトリック方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第2演算部によって求められた血圧値を表示することを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1又は2記載の血圧計において、
前記センサは、圧電センサであることを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血圧計において、
前記第1フィルタの帯域通過周波数は、40Hz〜60Hzを含む周波数であり、
前記第2フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含む周波数であることを特徴とする血圧計。
【請求項5】
被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、
前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、
前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、
前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出すフィルタと、
前記フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める演算部と、
を有することを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項5記載の血圧計において、
前記センサは、圧電センサであることを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項5又は6記載の血圧計において、
前記フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含む周波数であることを特徴とする血圧計。
【請求項1】
被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、
前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、
前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、
前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の音成分を取り出す第1フィルタと、
前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出す第2フィルタと、
前記第1フィルタを通して得られた音成分に基づいてコロトコフ方式によって血圧値を求める第1演算部と、
前記第2フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める第2演算部と、
を有することを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1記載の血圧計において、
前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値の適否を判断する判断部と、
前記第1演算部及び前記第2演算部によって求められた血圧値を表示する表示部と、
を有し、
前記判断部は、前記第1演算部によるコロトコフ方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第1演算部によって求められた血圧値を表示し、それ以外で前記第2演算部によるオシロメトリック方式の血圧値が正常であると判断した場合には、前記表示部に前記第2演算部によって求められた血圧値を表示することを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1又は2記載の血圧計において、
前記センサは、圧電センサであることを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血圧計において、
前記第1フィルタの帯域通過周波数は、40Hz〜60Hzを含む周波数であり、
前記第2フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含む周波数であることを特徴とする血圧計。
【請求項5】
被測定者の上腕が挿入される筒状のハウジング、及び、前記ハウジング内に設けられ、中に挿入された被測定者の上腕を圧迫する空気袋を備える腕帯と、
前記空気袋に対して空気を給気する加圧手段と、
前記空気袋の内周面に設けられ、前記空気袋によって前記被測定者の上腕が圧迫された状態で、振動を検出するセンサと、
前記センサによって計測された信号から所定周波数範囲の脈波成分を取り出すフィルタと、
前記フィルタを通して得られた脈波成分に基づいてオシロメトリック方式によって血圧値を求める演算部と、
を有することを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項5記載の血圧計において、
前記センサは、圧電センサであることを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項5又は6記載の血圧計において、
前記フィルタの帯域通過周波数は、0.5Hz〜20Hzを含む周波数であることを特徴とする血圧計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−200895(P2010−200895A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48203(P2009−48203)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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