説明

血圧計

【課題】一つのカフを用いながらも簡単な構成で血圧を正確に測定することができる電子血圧計を提供すること。
【解決手段】電子血圧計において、カフは、カフ幅を調節可能にするカフ幅調節機構を備える。このカフ幅調節機構は、カフ帯に内包された広幅空気袋と、この広幅空気袋に内包された狭幅空気袋とを備える。使用者は、太さ選択スイッチ23bを操作することにより、上腕の太さに応じてカフ幅を指定することができる。また、電子血圧計において、CPU21は、使用者が指定したカフ幅に対応する血圧算出定数を用いて血圧を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張可能な袋がカフ帯に内包されてなるカフを長さ方向に沿って測定対象部位に巻装し、測定対象部位の脈動に伴う袋の圧力変化から演算部によって血圧を算出するように構成された血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の血圧計において、カフは、その長さ方向に沿って測定対象部位(例えば、上腕)に巻装される。カフの幅方向への長さ(長さ方向に直交する方向の長さ、カフ幅という)が測定対象部位の太さに適合していないと、正確な血圧測定ができないことが知られている。そこで、特許文献1には、カフ幅の異なるカフを複数用意し、測定対象部位の太さに応じてカフを変更することにより、正確な血圧測定を行うようにした血圧計が開示されている。
【0003】
また、血圧計としては、カフの測定対象部位に対する巻装の仕方の違いや、太さの違いがあっても、血圧測定の際に脈波振幅を補正することで正確な血圧測定を行うようにした血圧計も提案されている(特許文献2参照)。具体的には、血圧測定中に脈波データを取得すると同時に、空気袋に一定の容積変化を与え、その応答からカフの巻装の仕方や太さの違いを判別して脈波振幅の補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−403号公報
【特許文献2】特開2010−142418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の血圧計においては、測定対象部位の太さに応じて複数のカフを必要とし血圧計の部品点数が増加してしまうとともに、太さに応じたカフの付け替えに手間が掛かってしまう。また、特許文献2の血圧計においては、脈波振幅の補正を行うために、シリンダ等の専用の回路部が必要となり、さらには補正用の演算部も必要であり、構成が複雑であり、部品点数も増加してしまっている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、一つのカフを用いながらも簡単な構成で血圧を正確に測定することができる電子血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明の血圧計は、膨張可能な袋がカフ帯に内包されてなるカフを長さ方向に沿って測定対象部位に巻装し、該測定対象部位の脈動に伴う前記袋の圧力変化から演算部によって血圧を算出するように構成された血圧計であって、前記カフは、前記長さ方向に直交する幅方向への長さであるカフ幅を調節可能にするカフ幅調節機構を備え、前記演算部は、前記カフ幅調節機構によって調節されたカフ幅、及び前記測定対象部位の太さに応じて血圧算出定数を調整して血圧を算出することを要旨とする。
【0008】
上記構成において、前記カフ幅調節機構は、調節後の前記カフ幅を指定するカフ幅指定部と、前記測定対象部位の太さを判断する太さ判断部と、前記カフ幅指定部によって指定されたカフ幅情報と、前記太さ判断部によって検出された太さ情報とに基づいて、前記カフ幅情報と前記太さ情報との適合性を判断する適合性判断部と、前記適合性判断部による判断結果を報知する報知部と、を備えることが望ましい。
【0009】
上記構成において、前記カフ幅調節機構は、前記袋を複数有するとともに、各袋に連通するチューブを複数有することが望ましい。
上記構成において、前記カフ幅調節機構は、前記袋を一つ有するとともに、前記カフの長さ方向にスライドしながら前記カフの幅方向で前記袋内の空間を複数に区画する区画手段であることが望ましい。
【0010】
上記構成において、前記カフ幅調節機構は、前記袋を一つ有するとともに、前記カフを長さ方向に沿って挟持しながら前記カフの幅方向で前記袋内の空間を複数に区画する挟持部材であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つのカフを用いながらも簡単な構成で血圧を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態における電子血圧計の斜視図。
【図2】(a)は、第1実施形態のカフ及び空気袋を示す斜視図、(b)は、空気袋を示す図2(a)のb−b線断面図。
【図3】第1実施形態における電子血圧計のブロック図。
【図4】(a)は、幅狭空気袋内の圧力と時間の関係を示すグラフ、(b)は、広幅空気袋内の圧力と時間の関係を示すグラフ。
【図5】表示部の表示を示す模式図。
【図6】(a)は、第2実施形態におけるカフを示す斜視図、(b)は、カフを示す図6(a)の6b−6b線断面図。
【図7】第2実施形態における電子血圧計のブロック図。
【図8】カフの別例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明を電子血圧計に具体化した第1実施形態について図1〜図4に従って説明する。
【0014】
図1に示すように、電子血圧計1の本体20には、測定対象部位としての上腕に巻装されるカフ10が、チューブ2を介して接続されている。カフ10は、帯状をなすとともに、長さ方向に沿って上腕に巻き付けられる。また、カフ10は、膨張可能な袋としての空気袋12がカフ帯11に内包されて形成されている。図2に示すように、カフ10の長さ方向Y1に対し直交する方向(矢印Y2の延びる方向)をカフ10及び空気袋12の幅方向とするとともに、幅方向に沿ったカフ10の長さをカフ幅とする。
【0015】
図2(a)及び(b)に示すように、空気袋12は、長尺状の広幅空気袋12aに、長尺状の狭幅空気袋12bが内包されて形成されている。広幅空気袋12aの幅方向への長さは、カフ帯11の幅方向への長さとほぼ同じに設定されるとともに、狭幅空気袋12bの幅方向への長さは、広幅空気袋12aの幅方向への長さより短く設定されている。また、広幅空気袋12aには、広幅用チューブ2aが接続されるとともに、狭幅空気袋12bには狭幅用チューブ2cが接続されている。広幅用チューブ2aには狭幅用チューブ2cが内包されるとともに、チューブ2は、これら広幅用チューブ2aと狭幅用チューブ2cとを積層して形成されている。
【0016】
次に、本体20の構成について説明する。図3に示すように、本体20内には、空気袋12に空気を供給するためのポンプ27が内蔵されるとともに、このポンプ27の供給ポート(図示せず)には継手27aが接続されている。継手27aには切替弁29が設けられるとともに、継手27aには切替弁29を介してチューブ2が接続されている。そして、切替弁29の切替により、ポンプ27と各空気袋12a,12bとの連通状態が切り替えられる。また、継手27aには、各空気袋12a,12bの圧力を測定するための圧力センサ30が設置されている。
【0017】
そして、本体20のCPU21には、ポンプ27、切替弁29、及び圧力センサ30が信号接続されるとともに、CPU21は、ポンプ27、及び切替弁29の駆動を制御するとともに、CPU21には圧力センサ30からの検出結果が入力される。
【0018】
加えて、CPU21には、電子血圧計1の駆動を制御するプログラムや、各種情報を記憶するためのメモリ24が信号接続されている。また、メモリ24には、CPU21が血圧を算出するときに用いられる血圧算出定数、上腕の太さを判定する際の閾値等が記憶されている。この血圧算出定数は、上腕の太さに応じた血圧を算出するために用いられる定数のことである。
【0019】
本体20の表面には、電子血圧計1を操作するための操作部23及び各種情報を表示する報知部としての表示部22が設けられている。操作部23には、血圧測定を開始するために操作される測定開始スイッチ23aと、カフ幅の太さを指定するために操作される太さ選択スイッチ23bと、過去に測定された血圧を表示部22に表示させるために操作される呼出スイッチ23cとが配置されている。そして、各スイッチ23a〜23cは、CPU21に信号接続されている。なお、太さ選択スイッチ23bを操作することにより、カフ幅を「細い」又は「太い」の2段階で切り替えることができるようになっている。したがって、本実施形態では、太さ選択スイッチ23bがカフ幅を指定するカフ幅指定部として機能するとともに、指定されたカフ幅情報は、CPU21に入力されるようになっている。
【0020】
次に、CPU21が行う制御について説明する。
CPU21は、太さ選択スイッチ23bによって「細い」が選択されたときは、狭幅用チューブ2cを介して狭幅空気袋12bとポンプ27を連通させるように切替弁29を制御する。一方、太さ選択スイッチ23bによって「太い」が選択されたときは、CPU21は、広幅用チューブ2aを介して広幅空気袋12aとポンプ27を連通させるように切替弁29を制御する。その結果、膨張する空気袋12が異なり、カフ10のカフ幅が変更される。よって、本実施形態では、各空気袋12a,12b、各チューブ2a,2c、及び切替弁29がカフ幅調節機構として機能する。
【0021】
また、電子血圧計1による血圧測定においては、血圧の測定開始から空気袋12の圧力が、予め設定された基準圧力に達すると、上腕の圧迫が開始されるようになっている。ここで、図4(a)及び(b)に示すように、空気袋12に空気が供給され、空気袋12の圧力が高められる際、その圧力の高まる早さは、上腕の太さ、及びカフ幅により異なることがわかっている。具体的には、上腕の太さが細いほど空気袋12の圧力は早く上昇し、カフ幅が狭いほど圧力は早く上昇する。
【0022】
そして、本実施形態では、CPU21は、空気袋12への空気の供給開始から時間を計測し、圧力が基準圧力Pc1,Pc2に達するまでの時間を計測するとともに、その計測した時間に基づいて上腕の太さを判断する。具体的には、各空気袋12a,12bの圧力が基準圧力Pc1,Pc2に達するまでの時間に関して、予め閾値Th1,Th2が設定されており、CPU21は、実測時間と閾値Th1,Th2を比較して上腕の太さを判定する。なお、この閾値Th1,Th2は、広幅空気袋12aと狭幅空気袋12bで異なる値が設定されており、メモリ24に記憶されている。そして、CPU21は、圧力が基準圧力Pc1,Pc2に達するまでの時間が閾値Th1,Th2未満であれば「細い」、閾値Th1,Th2以上であれば「太い」と判断する。したがって、本実施形態では、CPU21が太さ判断部として機能する。
【0023】
さらに、CPU21は、判断した上腕の太さ情報と、太さ選択スイッチ23bの操作によって指定されたカフ幅情報とが適合するか否かを判断し、その判断結果を表示部22に表示する。したがって、本実施形態では、CPU21が適合性判断部として機能する。具体的には、CPU21は、判断した上腕の太さ情報と、太さ選択スイッチ23bの操作によって指定されたカフ幅情報とが適合(合致)する場合は、表示部22に判断結果は表示せず、適合しない場合は、カフ幅を変更する旨のメッセージを表示させる。
【0024】
また、CPU21は、判断した上腕の太さに応じて血圧算出定数を選択するとともに、その血圧算出定数を用いて血圧を算出し、演算部として機能する。そして、CPU21は、算出した最高血圧値、及び最低血圧値を表示部22に表示する。
【0025】
次に、上記構成の電子血圧計1の作用について説明する。なお、以下の説明においては、使用者によりカフ幅の太さ「細い」が選択されて血圧を測定する場合について説明する。
【0026】
使用者は、太さ選択スイッチ23bを操作して、カフ幅の太さを「細い」を選択する。すると、太さ選択スイッチ23bにより指定されたカフ幅情報はCPU21に入力される。そして、使用者は、上腕にカフ10を巻装し、測定開始スイッチ23aを操作する。CPU21は、指定されたカフ幅に応じて切替弁29を制御して、狭幅用チューブ2cを介してポンプ27と狭幅空気袋12bを連通させるとともに、広幅用チューブ2aを介したポンプ27と広幅空気袋12aとの連通を遮断させる。
【0027】
そして、CPU21が、ポンプ27を駆動させると狭幅空気袋12bは徐々に加圧されていき、膨張していく。狭幅空気袋12bの圧力が基準圧力Pc2に達すると、CPU21は、狭幅空気袋12bへの空気の供給開始から、基準圧力Pc2に達するまでに必要とした時間から、測定中の上腕の太さを判断する。
【0028】
そして、CPU21が判断した上腕の太さが「太い」場合、太さ選択スイッチ23bにより指定された「細い」カフ幅とは適合しないため、CPU21はポンプ27の駆動を停止させる。このとき、図5に示すように、CPU21は、「太い」の選択を促すメッセージを表示部22に表示させる。使用者は、メッセージを確認した場合は、太さ選択スイッチ23bを操作して、「太い」を指定し、測定開始スイッチ23aを操作し、測定を開始する。一方、CPU21が判断した上腕の太さが「細い」場合、CPU21は、指定されたカフ幅の太さと適合するため、測定を継続する。
【0029】
そして、カフ幅が細い場合には、狭幅空気袋12bの圧力が基準圧力Pc2に達すると、カフ10の内周が上腕を圧迫し、血管が圧迫される。血管が圧迫されると、血管の脈動に伴い、狭幅空気袋12bに圧力変化が生じる。CPU21は、圧力の変化に対する脈波の変化から、血圧を算出する。このとき、CPU21は、細い上腕用に設定された血圧算出定数を選択し、その血圧算出定数を用いて血圧を算出する。そして、CPU21は、算出した血圧(最高血圧値及び最低血圧値)を表示部22に表示し、測定を終了する。
【0030】
一方、使用者が太さ選択スイッチ23bにより指定したカフ幅の太さが「太い」場合、CPU21が判断した上腕の太さが「太い」である場合、CPU21は血圧の測定を続ける。一方で、判断した上腕の太さが「細い」場合、CPU21は、「細い」カフ幅の選択を促すメッセージを表示部22に表示させる。
【0031】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電子血圧計1は、カフ幅調節機構を用いてカフ10のカフ幅を調節可能になっているため、1つのカフ10でありながら上腕の太さに合わせて適切なカフ幅を選択することができる。よって、上腕の太さに対応できるように複数のカフを用意する場合と比べて、電子血圧計1の部品を減らすことができる。
【0032】
(2)電子血圧計1において、選択されたカフ幅に応じた血圧算出定数を選択して血圧を補正し、算出するようにした。このため、上腕の太さに応じて血圧の補正を行うために、別途機械的な構成を必要とせず、電子血圧計1の構成を簡単にしながらも、血圧を正確に測定することができる。
【0033】
(3)CPU21は、使用者によって指定されたカフ幅の太さと、実際に測定した上腕の太さとが適合しない場合は、カフ幅の太さを変更する旨を表示部22を表示する。このため、上腕の太さに適したカフ幅で血圧測定を行うことができ、血圧を正確に測定することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を電子血圧計に具体化した第2実施形態について図6〜図7に従って説明する。
【0034】
図6(a)に示すように、カフ35の幅方向の両側には、カフ35長さ方向全体に亘ってスライド移動可能なスライダ41が取り付けられている。スライダ41は略コ字状をなすとともに、互いに対向する先端部41aの間にカフ35が挟まれている。また、図6(b)に示すように、カフ帯36に内包された空気袋37は、カフ帯36に比べて長さ方向及び幅方向が僅かに短く設定され、カフ帯36より一回り小さい長尺状に形成されている。そして、空気袋37の幅方向の両側には、つまみ部37aが形成されるとともに、これらつまみ部37aはカフ帯36を貫通してカフ35の表面に引き出されている。
【0035】
さらに、カフ35の長さ方向の一端において、各スライダ41の移動先となる位置それぞれにはボタンスイッチ43が固定されている。各ボタンスイッチ43は、各スライダ41との接触によりOFFからONに切り替えられるようになっている。
【0036】
空気袋37の内面において、幅方向の両側には係止部材44が空気袋37の長さ方向に延びるように形成されるとともに、各係止部材44と対向する位置には被係止部材46が空気袋37の長さ方向に延びるように形成されている。そして、対向する係止部材44と被係止部材46とを係止させることにより空気袋37内の空間を区画可能になっている。
【0037】
空気袋37を介した各係止部材44の外側には、スライダ41が配置されており、スライダ41を移動させることで係止部材44を被係止部材46に向けて押圧することができるようになっている。すなわち、スライダ41のスライド移動に伴う係止部材44の押圧により、係止部材44を被係止部材46に係止することができるようになっている。
【0038】
そして、2つの係止部材44を被係止部材46に係止させると、空気袋37の幅方向の中央に第1空気室48が区画されるとともに、第1空気室48の一側方に第2空気室49が区画され、第1空気室48の他側方に第3空気室50が区画される。2つの係止部材44のうち一方の係止部材44を被係止部材46に係止させた場合、第2空気室49又は第3空気室50以外の空気室に空気が供給され、カフ幅が一段階短く調節される。また、両係止部材44をそれぞれ被係止部材46に係止させた場合は、第1空気室48のみに空気が供給され、カフ幅が最も短くなるように調節される。また、いずれの係止部材44も被係止部材46に係止させない場合は、空気袋37全体に空気が供給され、カフ幅は調節されない。したがって、係止部材44と被係止部材46とから空気袋37内を複数に区画する区画手段が構成されるとともに、カフ幅調節機構が構成されている。
【0039】
次に、図7に従って、第2実施形態の電子血圧計1の電気的構成について説明を行う。
図7において、第1の実施形態と異なる点は、チューブ2が2層構造ではなく、単層のチューブである点と、太さ選択スイッチ23bがない点と、ボタンスイッチ43がCPU21に信号接続されている点であり、他の構成は同一である。
【0040】
次に、上記構成の電子血圧計1の作用について説明する。
使用者は測定開始スイッチ23aを操作する前に、カフ幅を調節する。使用者の上腕の太さが「太い」場合、使用者はいずれのスライダ41も移動させない。すなわち、係止部材44を被係止部材46に係止させず、カフ35のカフ幅を調節しない。一方、使用者の上腕の太さが「細い」場合、使用者は両スライダ41を移動させて、両係止部材44をそれぞれ被係止部材46に係止させ、カフ幅を調節する。さらに、使用者の上腕の太さが「標準」の場合、2つの係止部材44のうち一方のスライダ41を移動させて、一つの係止部材44を被係止部材46に係止させ、カフ幅を調節する。なお、係止部材44と被係止部材46を係止させて、カフ幅を狭くした状態において、カフ幅を広くする場合は、つまみ部37aを引っ張ることにより、係止部材44と被係止部材46の係止を解除して行う。
【0041】
カフ幅の調節の際に、スライダ41を移動させ、スライダ41をボタンスイッチ43に接触させると、CPU21にはボタンスイッチ43からON信号が入力され、カフ幅情報としてCPU21に入力される。そして、測定開始スイッチ23aが操作されると、CPU21は、入力されたON信号に応じて、使用者が指定したカフ幅を検出する。具体的には、両ボタンスイッチ43からON信号がCPU21に入力されていれば、使用者は「細い」を指定したことになり、1つのボタンスイッチ43からON信号がCPU21に入力されていれば、使用者は「標準」を指定したことになる。そして、両ボタンスイッチ43からON信号が出力されていなければ、使用者は「太い」を指定したことになる。よって、スライダ41とボタンスイッチ43とからカフ幅指定手段が構成されている。
【0042】
そして、第1の実施形態と同様に、CPU21は、空気袋37の圧力が基準圧力に達すると、空気袋37への空気の供給開始から、基準圧力に達するまでに必要とした時間から、上腕の太さを判断する。そして、CPU21が計測により判断した上腕の太さ情報と、ボタンスイッチ43からのON信号に基づいて得られたカフ幅情報とが適合しない場合、CPU21はポンプ27の駆動を停止させるとともに、カフ幅の変更を促すメッセージを表示部22に表示させる。その後、第1の実施形態と同様に、上腕の太さに応じた血圧算出定数を用いて血圧が測定される。
【0043】
上記第2実施形態によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(3)と同様の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(4)空気袋37の内面に、空気袋37の長さ方向に延びる係止部材44を設けるとともに、この係止部材44と係止する被係止部材46を空気袋37の長さ方向に延びるように設けた。そして、係止部材44と被係止部材46させることにより、空気袋37を幅方向で区画して、カフ幅を調節可能にした。よって、簡単な構成でカフ幅を調節することができる。
【0044】
(5)係止部材44と被係止部材46とを係止させるためのスライダ41を、カフ35の長さ方向にスライド移動可能に設けるとともに、このスライダ41の移動先にボタンスイッチ43を設けた。そして、スライダ41を移動させてカフ幅を調節した際、スライダ41をボタンスイッチ43に接触させると、ボタンスイッチ43からCPU21にON信号が入力されるようにした。よって、使用者によるカフ幅の指定と同時に、CPU21にはカフ幅の指定に関する情報が入力される。したがって、使用者は、カフ幅指定に関する情報を操作部23の操作によって入力する必要がなく、血圧測定を簡単に行うことができる。
【0045】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、袋として空気袋12,37に換えて、空気以外の流体、例えば液体やジェルが供給される袋に変更してもよい。
【0046】
・第1及び第2実施形態において、CPU21が実測により判断した上腕の太さと、使用者が選択した上腕の太さとが異なるときに、CPU21は測定を中止せず、そのまま測定を続けるようにしてもよい。
【0047】
・第1及び第2実施形態において、電子血圧計1は、空気袋12,37を加圧中に血圧を検出する加圧式電子血圧計としたが、空気袋12,37を減圧中に血圧を検出する減圧式電子血圧計に具体化してもよい。
【0048】
・第1及び第2実施形態において、血圧算出定数は手動で変更するようにしてもよい。
・第1実施形態において、広幅空気袋12aが内包する空気袋の数を増やしてもよい。
・第2実施形態において、スライダ41、係止部材44、及び被係止部材46を2つずつ設けたが、その数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0049】
・第2の実施形態においては、空気袋37の区画は、係止部材44と被係止部材46との係止により行ったが、これに代えて、図8に示すようにしてもよい。すなわち、カフ35(空気袋37)を幅方向の複数箇所で挟持部材60により挟むことにより空気袋37内を区画するようにしてもよい。この場合、挟持部材60がカフ幅調節機構として機能する。なお、カフ35には、挟持部材60を配置する目安となるライン(図示せず)が表示されるとともに、ライン上にボタンスイッチ43が設置されている。そして、挟持部材60で空気袋37を区画すると、挟持部材60によりボタンスイッチ43がONに切り換えられて、CPU21にON信号が入力されるようになっている。挟持部材60は、可撓性を有する一対の棒材61の両端を固定具62で固定することにより構成され、棒材61を引っ張った状態で移動、又は取り外しすることができる。
【0050】
なお、ラインの数は増やしてもよい。
・各実施形態では、報知部として表示部22に具体化したが、報知部を音声だけで各種情報を報知するスピーカに変更してもよい。
【0051】
・各実施形態では、測定対象部位として上腕に具体化したが、上腕に限らず手首やその他の部位に変更してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
【0052】
(イ)膨張可能な袋がカフ帯に内包されてなるカフを長さ方向に沿って測定対象部位に巻装し、該測定対象部位の脈動に伴う前記袋の圧力変化から演算部によって血圧を算出するように構成された血圧計であって、
前記カフは、前記長さ方向に直交する幅方向への長さであるカフ幅を調節可能にするカフ幅調節機構を備え、
該カフ幅調節機構は、調節後の前記カフ幅を検出するカフ幅検出部と、
前記測定対象部位の太さを判断する太さ判断部と、
前記カフ幅検出部によって検出されたカフ幅情報と、前記太さ判断部によって検出された太さ情報とに基づいて、前記カフ幅情報と前記太さ情報との適合性を判断する適合性判断部と、
前記適合性判断部による判断結果を報知する報知部と、を備えることを特徴とする血圧計。
【符号の説明】
【0053】
1…血圧計としての電子血圧計、2…チューブ、2a…カフ幅調節機構を構成する広幅用チューブ、2c…カフ幅調節機構を構成する狭幅チューブ、10,35…カフ、11,36…カフ帯、12,37…袋としての空気袋、12a…カフ幅調節機構を構成する広幅空気袋、12b…カフ幅調節機構を構成する狭幅空気袋、21…演算部、太さ判断部、適合性判断部としてのCPU、22…報知部としての表示部、29…切替弁、44…カフ幅調節機構としての区画手段を構成する係止部材、46…カフ幅調節機構としての区画手段を構成する被係止部材、60…カフ幅調節機構としてのカフ幅調節機構としての挟持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張可能な袋がカフ帯に内包されてなるカフを長さ方向に沿って測定対象部位に巻装し、該測定対象部位の脈動に伴う前記袋の圧力変化から演算部によって血圧を算出するように構成された血圧計であって、
前記カフは、前記長さ方向に直交する幅方向への長さであるカフ幅を調節可能にするカフ幅調節機構を備え、
前記演算部は、前記カフ幅調節機構によって調節されたカフ幅、及び前記測定対象部位の太さに応じて血圧算出定数を調整して血圧を算出することを特徴とする血圧計。
【請求項2】
前記カフ幅調節機構は、調節後の前記カフ幅を指定するカフ幅指定部と、
前記測定対象部位の太さを判断する太さ判断部と、
前記カフ幅指定部によって指定されたカフ幅情報と、前記太さ判断部によって検出された太さ情報とに基づいて、前記カフ幅情報と前記太さ情報との適合性を判断する適合性判断部と、
前記適合性判断部による判断結果を報知する報知部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【請求項3】
前記カフ幅調節機構は、前記袋を複数有するとともに、各袋に連通するチューブを複数有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の血圧計。
【請求項4】
前記カフ幅調節機構は、前記袋を一つ有するとともに、前記カフの長さ方向にスライドしながら前記カフの幅方向で前記袋内の空間を複数に区画する区画手段であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の血圧計。
【請求項5】
前記カフ幅調節機構は、前記袋を一つ有するとともに、前記カフを長さ方向に沿って挟持しながら前記カフの幅方向で前記袋内の空間を複数に区画する挟持部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の血圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147995(P2012−147995A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10028(P2011−10028)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】