説明

血小板凝集抑制組成物

【課題】
血栓症は血栓が生じた血管の部位によって多様な疾病を誘発するようになる。その中でも特に脳血管や心臓血管に生じた場合には脳卒中、脳出血、脳梗塞、心不全症、心筋梗塞、心臓麻痺等深刻な症状が発生し、半身不随を引き起こし、ひどい場合には死亡することもある。現在、血栓症を解決するために、血栓の生成を抑制する抗血栓剤及び血栓形成予防剤と、生成された血栓を溶解させる血栓溶解剤の研究開発が主に行われている。本発明は、幅広い飲食品に使用可能な血小板凝集抑制組成物及びそれを含有する飲食品、医薬部外品及び医薬品を提供することを目的とする。
【解決手段】 アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する血小板凝集抑制組成物及びそれを含有する飲食品、医薬部外品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓は、プラークの破裂等さまざまな原因によって活性化された血小板の血管内膜への粘着と凝集による血小板血栓、次いでフィブリノーゲン等の種々の凝固系因子が関与するフィブリン血栓へと進行する。身体が正常なときには、この血栓のもととなるフィブリンを溶かす働きをする線溶酵素が血栓予防をして、線溶酵素が不足するとフィブリンを溶解できなくなり、血栓ができるようになる。
形成された血栓は血管に沈着し、血管の断面積を減少させ、血液の循環を阻害し、その結果、血液が細胞及び組職で栄養分と酸素を正常に供給することができず、また、細胞及び組織の老廃物を排出できなくなり、毒性が蓄積される等の問題点が発生するようになる。
血管の中で、血栓といわれる血液の固まりが引き起こす症状を広義の血栓症(以下、単に「血栓症」と記載した場合は、広義の血栓症をいう)と呼び、血栓が原因になって起こる病態は狭義の血栓症と塞栓症に分けられる。狭義の血栓症は血栓が形成個所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することによる症状で、塞栓症は血栓が形成個所から剥がれて血流によって移動し、他の個所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することによって起こる病態のことを指す。
このような血栓症は血栓が生じた血管の部位によって多様な疾病を誘発するようになる。その中でも特に脳血管や心臓血管に生じた場合には脳卒中、脳出血、脳梗塞、心不全症、心筋梗塞、心臓麻痺等深刻な症状が発生し、半身不随を引き起こし、ひどい場合には死亡することもある。
【0003】
これら心疾患、脳血管疾患等を引き起こす重大な血栓は血流のうっ帯下で形成されるフィブリン血栓とは機序の点で異なり、動脈等の比較的速く豊富な血流の存在下で形成されていると考えられる。血流下では、凝固因子は活性化されても血流によって希釈されてしまうため血栓形成に至らない。しかし、損傷血管壁に粘着し、凝集して局所濃度を高める成分である血小板が血栓の形成により重要な役割を果たす。
血管内皮細胞が障害を受け剥離すると、血管内皮細胞下組織のコラーゲンが露出し、血管内皮細胞で合成されるvon−willebrand因子(vWF:VII因子)により、コラーゲンとvWF受容体(GpIb)の間に架橋を形成(粘着)される。さらに、血小板が例えばトロンビンのようなアゴニストによって活性化され、フィブリノーゲン受容体(GpIIb−IIIa)によりフィブリノーゲンを介して他の血小板と結合し、血小板凝集を引き起し、血小板血栓が形成される。従って、vWFよるコラーゲンとGpIbの間の架橋形成またはフィブリノーゲンとその他の血清蛋白質が、GpIIb−IIIaとの結合を抑制できるかどうかが血栓形成を予防する一つの重要な要件となる。
このvWFよるコラーゲンとGpIbの間の架橋形成を促進するアゴニストとしては、リストセチンがある。
【0004】
リストセチンは抗生物質であるが、その強力な副作用のために、医薬品市場から撤去されたが、リストセチンがインビトロでウサギの血小板を凝集させることが発見された。血液においては、ヒト血小板もリストセチンがインビトロでvWFに惹起させてGpIbとの結合能力を獲得して血小板凝集するが、フォンビルブラント症候群に冒されている患者の場合には血小板凝集は起こらないことから、vWFの生理活性をインビトロで測定する方法として、リストセチン惹起血小板凝集反応や、リストセチン存在下でのvWFのvWFへの結合を測定する方法に広く利用されている。
【0005】
現在、血栓症を解決するために、血栓の生成を抑制する抗血栓剤及び血栓形成予防剤と、生成された血栓を溶解させる血栓溶解剤の研究開発が主に行われている。
血小板凝集及び血栓形成予防剤として、アスピリン、チクロピジン、ヒルジン(トロンビン阻害剤)、トロンボキサンA2シンターゼ抑制剤、などが製品化されている。
【0006】
トロンビンは、他の経路とはほとんど無関係に血小板の凝集を起こすが、血小板が他のメカニズムによってあらかじめ活性化されていないと、実質的に有効な量のトロンビンが存在することはない。ヒルジンは、非常に効果的な抗血栓剤である。しかしトロンビン阻害剤は、抗血小板剤と抗凝血剤の両方として機能するため、やはり過剰な出血を起こす可能性がある。
アスピリンなどは、心筋梗塞などの疾患予防のための抗血小板療法用薬剤として広く用いられているが、アスピリンはADPによって誘起される血小板の凝集に対しては効果がないため、血小板の凝集に対する効果は限られており、胃腸障害などの副作用などがあり、このため、食品や医薬品の分野においては、安全性が高く、安価で実用性の高い抗血小板凝集療法用薬剤が求められている。
食品成分としては、ナットウキナーゼや多価不飽和脂肪酸、グルコサミン、タマネギの薄皮(例えば、特許文献1参照。)等の素材が知られているが、風味や性状等に問題があり、幅広く食品に応用できなかった。
また、最近では、キウイフルーツ抽出物(例えば、特許文献2参照。)についての特許が公開されたが、中性域での活性が弱いという欠点がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−171934号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2003−171294号公報(第2頁−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、幅広い飲食品に使用可能な血小板凝集抑制組成物及びそれを含有する飲食品、医薬部外品及び医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは様々な天然植物を利用して抗凝固成分を捜す目的で、多角的に研究検討した結果、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物に優れた抗血小板凝集活性があることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明で得られたアムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する血小板凝集抑制組成物は、vWFよるコラーゲンとGpIbの間の架橋形成による血小板凝集をおこすアゴニストであるリストセチンを加えた時の血小板凝集率、いわゆるリストセチン惹起血小板凝集試験によって測定した結果から、vWFよるコラーゲンとGpIbの間の架橋形成を抑制することに抗血小板凝集効果が高いことがわかった。
本発明はアムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する血小板凝集抑制組成物を各種飲食品及び医薬品等に利用して、血小板凝集による血栓の生成を抑制することで脳卒中、脳出血、脳梗塞、心不全症、心筋梗塞、心臓麻痺等のような心血関係疾患を予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いるアムラーとは、学名:エンビリカ・オフィシナル(Emblica officinale)又は、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus embilica)といい、トウダイグサ科コミカンソウ属に属する落葉の亜高木であり、インドからマレーシア地域及び中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。また、各地方又は言語により、各々固有の名称があり、余柑子、油甘、奄摩勒、エンブリック・ミロバラン、アーマラキー、マラッカノキ、マラッカツリー、インディアングーズベリー、アロンラ、アミラ、アミラキ、アミラキャトラ、ネリカイ、ネルリ、タシャ、カユラカ、ケムラカ、ナックホンポン等とも称されている。
【0012】
本発明において、アムラーの部位としては、果実が好ましく用いられる。その形態は、特に限定するものではなく、未熟果実、完熟果実、乾燥果実、果汁、果汁粉末等のいずれでも良い。
果汁又は果汁粉末の場合は、そのままでも使用できるが、生果実又は乾燥果実等、水不溶性成分を含むものを使用する場合は、抽出により、水不溶性成分が除去されていることが効果を上げる点で好ましい。
抽出の際、生果実を使用する場合は、種子を除去した後、水を添加又は無添加で、抽出効率を高めるためにミキサー等により破砕、均質化したものを用いることが好ましい。
乾燥果実を使用する場合は、抽出効率を高めるために40メッシュ以下の粒度になるように粉砕されていることが好ましい。
【0013】
抽出方法は、抽出溶媒、抽出温度等、特に限定されるものではなく、抽出溶媒としては、水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンを使うことができる。親水性溶媒はメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの低級アルコール群より選ばれる1種類以上が操作性、抽出効率の点から好ましい。特に好ましくは、水、塩基、酸のいずれかである。
酸又は塩基を抽出溶媒に使用する場合、抽出物を中和させることが好ましい。中和反応によって生成された塩は、透析法やゲル濾過等、公知の方法により、取り除くことができる。水を抽出溶媒として用いた場合には、上記のような中和反応は必要なく、生成された塩を取り除く必要もないため、水を用いることが更に好ましい。
この時使用する酸としては、特に限定するものではなく、大部分の酸を使うことができるが、入手のしやすさの点及び操作性の点により塩酸、硫酸より選ばれる1種又は両者の併用が好ましい。
また、塩基としては、特に限定するものではなく、大部分の塩基を使うことができるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムより選ばれる1種又は両者の併用が好ましい。
抽出に使用される酸又は塩基の濃度は、抽出物を酵素処理する前であっても後であっても特に限定するものではなく、酸又は塩基の強さによって変化するが、操作性及び抽出効率の点より、0.01〜0.5モルの濃度を使用することが好ましい。
【0014】
上記の抽出において、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、タンナーゼまたは、セルラーゼ等の酵素を1種類又は2種類以上を組み合わせて併用することも可能である。
更に、上記の抽出において、抽出残渣に対して再度抽出工程を1回又はそれ以上繰り返すことで、抽出効率が向上し、収率が向上するので、好ましい。この場合の抽出に用いる溶媒は、同じでも良いし、別の溶媒を用いても良い。
【0015】
上記の抽出物は、そのままでも使用できるが、濾過、遠心分離及び分留により、不溶性物質及び溶媒を取り除くことにより、抗血小板凝集効果が高くなり、応用範囲も広がるので好ましい。
不溶性物質及び溶媒を取り除いた後、果汁又は抽出液をそのまま又は濃縮した後に有機溶媒を用いて分配を行い、それぞれの溶媒可溶画分を得る。これら溶媒可溶画分は、更に抗血小板凝集効果が高くなるので好ましい。有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの低級アルコールや酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、アセトン又はクロロホルムが使用できる。また可溶画分の純度を上げる為には、他の疎水性溶媒による分配を組み合わせることもできるが、エチルアルコール好ましい。これら溶媒の濃度としては、特に限定するものではないが、収率及び効果の点より、終濃度として20〜80%が好ましく、20〜60%が更に好ましい。
さらに純度を高める為に、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系などを母体とした疎水性樹脂を用いることも可能である。その場合、樹脂吸着後の溶離液としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコール及びアセトンを単独又は水溶液として使用できる。
抽出物及び画分はそのままでの使用も可能だが、必要であれば噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用することも可能である。
【0016】
本発明において抗血小板凝集とは、血小板の凝集を抑制することをいい、単に抗血小板(Antiplatelet)ともよばれる。抗血小板凝集活性は、例えば、例えば、全血血小板凝集測定装置(Aggregometer)を使用して、採取血液に、vWFよるコラーゲンとGpIbの間の架橋形成による血小板凝集をおこすアゴニストであるリストセチンを加えた時の血小板凝集率を測定する方法により確認することができる。
【0017】
本発明の血小板凝集抑制組成物は、飲食品、医薬品、飼料等に応用でき、好ましくは、人が手軽に摂食できる飲食品又は医薬品が好ましい。
本発明における飲食品とは溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等経口摂取可能な形態であれば良く特に限定するものではない。より具体的には、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等が例示される。
【0018】
本発明の血小板凝集抑制組成物の飲食品としての摂取量は、本発明の病気の状態、病人の体重、年齢、体質、体調等によって調整されるべきであるが、一般に1日あたり、血小板凝集抑制組成物として0.05g〜20g、好ましくは0.1g〜5gの範囲で適宜選択することができる。これを病気の状態や食品等の形態によって1日1ないし数回にわけて摂取することができる。
【0019】
本発明において、血小板凝集抑制組成物又は、それを含有する飲食品等に加工する際に、各種栄養成分を強化することができる。
強化できる栄養成分としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラル類及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他の食品や食品添加物として認可されている有用物質の1種又は2種以上が使用できる。
【0020】
本発明における医薬部外品及び医薬品とは、経口または非経口投与に適した賦形剤、その他の添加剤を用いて、常法に従って、経口製剤または注射剤として調製することができる。好ましいのは、経口製剤であり、最も好ましいのは、容易に服用でき且つ保存、持ち運びに便利な経口固形製剤である。
経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。このような固形製剤においては、適宜の薬理学的に許容され得る坦体、賦形剤(例えばデンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、結合剤(例えばデンプン、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(例えばカルボキシメチルセルロース、タルクなど)、などと混合し、常法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等を調整することが出来る。経口液状製剤は、製薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エチルアルコールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与しての注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エチルアルコールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保管フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
本発明の血小板凝集抑制組成物の医薬品としての投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1人当たり有効成分約40mg〜3g/日、好ましくは100〜500mg/日である。
【0021】
以下本発明を、実施例にて詳細に説明するが、次の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0022】
(実施例1)血小板凝集抑制組成物の調製1
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせた後、凍結乾燥し、本発明の血小板凝集抑制組成物A35.0gを得た。収率は43.8%であった。
【0023】
(試験例1)抗血小板凝集活性の確認1
本発明の抗血小板凝集組成物の抗血小板凝集活性を、全血血小板凝集能測定装置(WBA−Neo:アイエスケ−社製)を使用して、健常人の血液200μLに、試料5μLを添加したのち、凝集を惹起させる物質として最終濃度が10μMになるように調整した硫酸リストセチン(アメリカン バイオケミカル :100mg/バイアル)22μLを加え、5分後の血小板凝集率を測定した。
別途、対照として水(試料濃度0mg/mL)を添加して、同じ方法で血小板凝集率を測定した。測定された血小板凝集率から、下記の数式によって、対照に対する抗血小板凝集活性(%)を計算した。
抗血小板凝集活性(%)=(対照の血小板凝集率−試料添加時の血小板凝集率)/対照の血小板凝集率×100
試料は、血小板凝集抑制組成物Aを蒸留水で希釈して1.25、2.5、5.0mg/mLと調製したもので、血小板凝集抑制組成物Aの濃度と各濃度での抗血小板凝集活性を測定した結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
上記表1の結果により、血小板凝集において本発明の血小板凝集抑制組成物は、vWFよるコラーゲンとGpIbの間の架橋形成を抑制することに抗血小板凝集効果が示唆された。また、血小板凝集抑制組成物の濃度を増加させることによって比例的に抗血小板凝集活性も増加することが確認できた。
【0026】
(実施例2)血小板凝集抑制組成物の調製2
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせて、減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液にエチルアルコールを加え、1Lになるように調製(最終エチルアルコール濃度80%)した後、4℃で24時間静置後、不溶性成分を沈殿させた。沈澱物を遠心分離で分離除去し、上清を減圧濃縮後、水1Lに再溶解し、濾過して不溶性成分除去後、濾液を凍結乾燥して本発明の血小板凝集抑制組成物B12.5g(収率15.6%)を得た。
同様にして、エチルアルコールの終濃度が20%、40%、60%にして、本発明の血小板凝集抑制組成物組成物C13.6g(収率17.0%)、D20.8g(収率26.0%)、E21.2g(収率26.5%)を得た。
【0027】
(実施例3)血小板凝集抑制組成物の調製3
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせた後、凍結乾燥し、乾燥物約37.0gを得た。その乾燥物35gにエチルアルコール1Lを加え、4℃で24時間静置後、不溶性成分を沈殿させた。沈澱物を遠心分離で分離除去し、上清を減圧濃縮後、水1Lに再溶解し、濾過して不溶性成分除去後、濾液を凍結乾燥して本発明の血小板凝集抑制組成物F3.5gを得た。
【0028】
(実施例4)血小板凝集抑制組成物の調製3
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2L加え、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを入れ、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせて、減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液に酢酸エチルを加え、500mLになるように調製(最終酢酸エチル濃度60%)し、よく攪拌後、4℃で24時間静置した後、酢酸エチル層を分離し、減圧濃縮後、濾液を凍結乾燥して本発明の血小板凝集抑制組成物G12.5gを得た。
【0029】
(実施例5)血小板凝集抑制組成物の調製4
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末100gに、蒸留水2Lを加え、さらにペクチナーゼ0.1g及びタンナーゼ0.1gを加えて、55℃で2時間抽出した。その後、90℃で30分間酵素失活させた。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、濾液をスプレードライし、本発明の血小板凝集抑制組成物H45gを得た。
【0030】
(試験例3)抗血小板凝集活性の確認2
実施例2で得られた血小板凝集抑制組成物B、C、D、E、実施例3で得られた血小板凝集抑制組成物F、実施例4で得られた血小板凝集抑制組成物G及び実施例5で得られた血小板凝集抑制組成物Hについて、5.0mg/mLの濃度で試験例1と同じ方法で血小板凝集率を測定し、抗血小板凝集活性を算出した。その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表3に示すようにどの血小板凝集抑制組成物も高い抗血小板凝集活性を示した。
【0033】
(実施例4)血小板凝集抑制組成物含有食品(錠菓)の調製
実施例1で得られた血小板凝集抑制組成物A5g、乳糖30g、DHA含有粉末油脂(サンコートDY−5;太陽化学株式会社製)12g、ショ糖脂肪酸エステル4g、ヨーグルト香料4gを混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して1錠が300mgの本発明の血小板凝集抑制組成物含有飲食品(錠菓)を得た。
【0034】
(実施例5)血小板凝集抑制組成物含有飲料の調製
実施例2で得られた血小板凝集抑制組成物A5g及び、1/5濃縮グレープフルーツ透明果汁2.1g、エリスリトール30g、クエン酸結晶2.5g、クエン酸三ナトリウム0.5g、L−アスコルビン酸0.5g、乳酸カルシウム1.93g、CCP0.15g、グレープフルーツ香料1.0を水に混合溶解して、全量を1000mLとし、それを100mLの瓶に充填し、キャップで密栓した後、90℃、30分間加熱殺菌をして、本発明の血小板凝集抑制組成物含有飲食品を得た。
【0035】
(実施例6)血小板凝集抑制組成物含有飲料(野菜果汁混合飲料)の調製
実施例2で得られた血小板凝集抑制組成物C0.2g及び、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)3gを市販の野菜果汁混合飲料100mLに添加混合溶解して、本発明の血小板凝集抑制組成物含有飲食品(野菜果汁混合飲料)を得た。
【0036】
(実施例7)血小板凝集抑制組成物含有クッキーの調製
実施例2で得られた血小板凝集抑制組成物D4g及び、市販のケーキミックス粉200gを容器に入れた後、バター35gを入れ、木杓子で混ぜ合わせた。それに溶き卵25gを加えて、なめらかな生地になるまで良く練った。小麦粉を振った台の上に生地を取り出し、さらに小麦粉を振って麺棒で5mmの厚さに伸ばし、丸型で抜き、それを170℃のオーブンで10分間焼いて、1個約5gの本発明の血小板凝集抑制組成物含有クッキーを得た。
【0037】
(実施例8)血小板凝集抑制組成物含有ヨーグルトの調製
実施例5で得られた血小板凝集抑制組成物H1g、市販の脱脂乳(明治乳業社製。蛋白質含量34%)95g、及び市販の無塩バター(雪印乳業社製)35gを温水0.8Lに溶解し、均質化し、全量を1Lに調整した。次いで、90℃で15分間加熱殺菌し、冷却し、市販の乳酸菌スターター(ハンゼン社製)3g(ストレプトコッカス・サーモフィラス2g及びラクトバシラス・ブルガリクス1g)を接種し、均一に混合し、100mLの容器に分注,充填し、密封し、37℃で20時間発酵させた後、冷却し、本発明の血小板凝集抑制組成物含有ヨーグルトを得た。
【0038】
(実施例9)血小板凝集抑制組成物含有経口流動食の調製
カゼインナトリウム(DMV社製)50g、卵白酵素分解物(太陽化学社製)42.5g、デキストリン(松谷化学社製)100g水1Lに溶解し、水相をタンク内に調製した。これとは別に、MCT(花王社製)45g、パーム油(不二製油社製)17.5g、サフラワー油(太陽油脂社製)35g、レシチン(太陽化学社製)0.7g、消泡剤(太陽化学社製)1gを混合溶解し、油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、更に、ホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約260gを調製した。この中間製品粉末200gに実施例2で得られた血小板凝集抑制組成物C4g、デキストリン(松谷化学社製)156g、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)18g、少量のビタミンとミネラルおよび粉末香料を添加し、均一に混合して、血小板凝集抑制組成物を含有する経口流動食約380gを得た。
【0039】
(実施例10)血小板凝集抑制組成物含有錠剤の調製
実施例3で得られた血小板凝集抑制組成物G10g、結晶セルロース5g、トウモロコシデンプン13.8g、乳糖32.5g、ヒドロキシプロピルセルロース3.3gを混合し、顆粒化した。この顆粒化物にステアリン酸マグネシウム1.0gを加え、均一に混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して一錠が130mgの本発明の血小板凝集抑制組成物含有錠剤を得た。
【0040】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下の通りである。
(1) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする血小板凝集抑制組成物。
(2) アムラーの果実又は果汁の抽出物が、アムラーの果実又は果汁から水、塩基、酸、親水性溶媒により抽出されていることをより抽出されていることを特徴とする前記(1)記載の血小板凝集抑制組成物。
(3) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物が、アムラーの果実又は果汁から水により抽出されていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の血小板凝集抑制組成物。
(4) 親水性溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの群より選ばれる少なくとも1種類以上の低級アルコールであることを特徴とする前記(1)又は(2)の血小板凝集抑制組成物。
(5) アムラーの果実又は果汁の抽出物から有機溶媒のいずれか1種類又は2種類以上により分画されていることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物。
(6) 有機溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、又はクロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(5)記載の血小板凝集抑制組成物。
(7) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物がエチルアルコールにより分画されていることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物。
(8) アムラーの果実、果汁、葉又はその抽出物が、エチルアルコールにより沈殿成分として分画されていることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物。
(9) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物が、エチルアルコールで分画する際のエチルアルコール濃度が、20〜80%であり、そのエチルアルコール可溶画分であることを特徴とする前記(8)記載の血小板凝集抑制組成物。
(10) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物が、エチルアルコールで分画する際のエチルアルコール濃度が、20〜60%であり、そのエチルアルコール可溶画分であることを特徴とする前記(8)記載の血小板凝集抑制組成物。
(11) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物が、疎水性樹脂を用いたクロマトグラフィーやカラムにより純度を高めることを特徴とする前記(1)〜(10)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物。
(12) 疎水性樹脂が、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系などを母体とすることを特徴とする前記(11)記載の血小板凝集抑制組成物。
(13) 前記(1)〜(12)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物を含有することを特徴とする飲食品。
(14) 前記(1)〜(12)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物を含有することを特徴とする医薬品。
(15) 前記(1)〜(12)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物を含有することを特徴とする医薬品。
(16) 前記(1)〜(12)いずれか記載の血小板凝集抑制組成物を含有することを特徴とする飼料。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明で得られたアムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有するの血小板凝集抑制組成物は、血小板凝集において、vWFよるコラーゲンとGpIbの間の架橋形成を抑制による抗血小板凝集効果が高く、各種飲食品及び医薬品等に利用して、血小板凝集抑制組成物による血栓の生成を抑制することで脳卒中、脳出血、脳梗塞、心不全症、心筋梗塞、心臓麻痺等のような心血関係疾患を予防することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする血小板凝集抑制組成物。
【請求項2】
アムラーの果実又は果汁の抽出物が、アムラーの果実又は果汁から水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンからなる群より選ばれる少なくとも1種により抽出されていることを特徴とする請求項1記載の血小板凝集抑制組成物。
【請求項3】
アムラーの果実又は果汁の抽出物の有機溶媒による分画物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の血小板凝集抑制組成物。
【請求項4】
有機溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、又はクロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の血小板凝集抑制組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の血小板凝集抑制組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載の血小板凝集抑制組成物を含有することを特徴とする医薬部外品。
【請求項7】
請求項1〜4いずれか記載の血小板凝集抑制組成物を含有することを特徴とする医薬品。

【公開番号】特開2006−137701(P2006−137701A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328536(P2004−328536)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】