説明

血小板凝集測定装置

【課題】医薬の作用の決定でき、自動化することもできる血小板凝集測定装置を提供。
【解決手段】2個の電極6を有する少なくとも1個の測定キュベット1と、試験すべき液体14を動かすための装置10と、接触エレメント7を介して電極に接続される測定および評価電子機器8,9を備えた血小板凝集を測定かつ記録するための血小板凝集測定装置であって、測定キュベットが2個の隣接して配置された、上方に開口している部分空間2,3を含み、その空間は下部5にて相互に連絡しているだけであり、電極が測定キュベットの底部に挿入される金属球6として設計されており、液体を動かす装置が実質的にシーリング方式にて一の部分空間2の上に設置され得、定期的かつ交互に低圧および過圧を発生する、ポンプ装置11〜13であることを特徴とする血小板凝集測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の電極を有する少なくとも1個の測定キュベットと、試験すべき液体を動かす装置と、接触エレメントを通して該電極に接続した測定および評価電子機器とを備えた、血小板凝集を測定かつ記録するための血小板凝集測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板凝集作用を測定かつ記録するのに、既知の型の血小板凝集測定装置(DE69821364T2)が用いられる。蛋白に富む流体(血漿)において、血液は3種の主たる群の細胞、具体的には:赤血球、白血球および血小板を有する。血小板は特定の物質および化学物質と接触すると、それらは凝集付着反応に曝されうる。この場合、血小板はその形状を変え、略球状となる。その過程において、血小板は長い付着物を成長させ、この結果として血小板は粘着性となる。ついで、血小板は相互に、そして損傷組織に付着することとなる。
【0003】
この凝集作用は、例えば手術の際に極めて重要である。凝集作用は、特定の医薬により低下させることができるが、医薬に対して人々は異なる反応を示すため、ある医薬が実際に凝集作用を低下させるかどうかを確認することが必要である。
【0004】
既知の方法において、血小板に富む血漿サンプルの凝集反応は、そのサンプルの透明度を測定することで分析される。しかしながら、この目的のためには、血液を複雑な方法にて遠心分離により分離する必要があり、その結果として、血小板の特性が変わるかもしれない。
【0005】
上記した先行技術にて、この欠点は、2つの電極を覆う血液を混合することで回避されている。血小板が電極に沈着するならば、電気抵抗の測定値が上昇するであろうし、凝集作用もこの方法で測定され得る。他の方法とは異なり、測定は血液を用いて行うこともできる;遠心分離は不要である。
【0006】
この既知の血小板凝集測定装置の欠点は、第1に、電極が延性であり、それで測定の際に電気特性が一定でないことである。血液を動かすのに使用される攪拌棒はその近辺にて局所的に血液を激しく動かすのに対して、その攪拌棒からさらに離れているところにある領域はあまり動かされない。ヒトまたは動物の体内での生理学的過程と一致するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許第69821364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かくして、本発明の目的は、電極の電子特性が変わることなく、より均一に動く血液にて測定を行うことができる血小板凝集測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のかかる目的は、測定キュベットが、2つの隣接して配置され、上方に開口し、その下部にて相互に連絡されているだけの部分空間を含むこと、電極が測定キュベットの底部に挿入される金属球として設計されること、および液体を動かす装置が実質的にシーリング方法にて一の部分空間上に設置することができ、定期的かつ交互に低圧および過圧を発生させるポンプ装置であることで、達成される。
【0010】
その測定キュベットは、2つの隣接して配置され、上方に開口した部分空間を含む。該部分空間はその下部領域にて相互に接続されている。この場合、該電極は、測定キュベットの底部に挿入される金属球として設計されており、測定の際の電子特性が常に一定で同じであるように、一定の間隔で設置されており、不変的な表面を有する。ついで、ポンプ装置が実質的にシーリング方法にて一の部分空間の上に設置され、該ポンプ装置がこの部分空間にて定期的かつ交互にわずかに低くおよびわずかに過剰な圧力を発生させる。この結果として、液体(例えば、血液)は一の部分空間と別の部分空間を往復運動し、各々のケースにて該球を通り過ぎる。安定した血流を示す、このケースの動きはまた、ヒトおよび動物の体内における血液の流れ特性に相当する。
【0011】
目的に応じて、金属球はキュベットの底部に成型または圧縮される。該球は非腐食性材料、特にステンレスでできているのが好都合である。しかしながら、他方で、金属球はまた、非腐食性材料、特に金などの貴金属で被覆され得る。
【0012】
もう一つ別の有利な実施形態において、金属球は試薬で被覆されている。
【0013】
ポンプ速度を変えることができるならば、種々の流速を得ることができる。
【0014】
目的に応じて、ポンプはシリンダーおよび偏心運動により往復運動可能なピストンを有する。偏心運動の速度を変えることで、ポンプ周波数またはポンプ速度を変えることが可能である。
【0015】
目的に応じて、部分空間は、その上にポンプ装置を設置することのできる、実質的に平行な壁面を有する。
【0016】
しかしながら、別の部分空間は、目的に応じて、血液サンプルの挿入を簡単にするために、漏斗のように上方に広がっている。
【0017】
目的に応じて、金属球を測定電子機器に接続する、接触エレメントは弾性であるように設計される。このことが種々のキュベットの交換または測定ステーションへの挿入を容易にする。
【0018】
複数の測定キュベットが相互に隣り合うように配置されている場合に、このことは特に有利である。この場合、金属球がその接触エレメントの助けを借りて電子機器に接続されること、および1個または複数のポンプ装置を測定キュベットに配置し、そこで駆動させることにより、個々のキュベットが同時に測定および評価電子機器に接続され得るように装置に対策を講じることができる。
【0019】
測定キュベットは単一用途の部材として製造され得る。ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレンおよび類似プラスチックから選択される血液−適合性プラスチック材料から由来の射出成形部材である場合に、特に好都合である。
【0020】
添付図面を参考にして有利な実施形態を基礎に本発明を例示方式にて記載する:
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一駆動期における本発明の血小板凝集測定装置のデザインを模式的に示すものである。
【図2】第二駆動期における血小板凝集測定装置のデザインを示す。
【図3】測定キュベットの別の実施形態を模式図にて示す。
【図4】図3の測定キュベットを上からの平面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示されるように、測定キュベット1は2つの部分空間2および3を有する。この場合、部分空間2は実質的に平行な壁面を有し、その一方で部分空間3は上方に漏斗のように広がっている。2つの部分空間2および3は中間壁4で分けられ、その壁だけがその下部にて経路5で開放したままである。ここで、2つの金属球6に対して、特に底部に成型されるか、圧縮され、弾性の接触エレメント7を介して測定電子機器8に接続され、例えば9上にその測定結果をグラフ表示することが可能となる対策を講じる。ポンプ装置10は、偏心ドライブ13を用いて上下に動くことができるピストンを備えたシリンダー11を有しており、測定キュベット1の第1の部分空間2上に実質的にシーリング方式にて配置される。図1に示される操作状態にて、ピストン12はトップ位にあり、かくして血液14は第1の部分空間2にくみ上げられる。図2に示される操作状態にて、ピストン12は底部にあり、かくして血液14を第2の部分空間3に押し出す。この往復運動の間に、血液14は金属球6上を通過する。血小板の凝集作用が生じれば、これら2個の電極6の間にて測定される電子抵抗の増加がある。したがって、血液の凝集行動を測定し、特にその上で分配される医薬の関数として測定することが可能である。このことは、例えば、特定の医薬(例えば、アセチルサリチル酸)が有効であるかどうか、それがどのように作用するのか決定することができる。
【0023】
ここで、測定は実験室および手術室のいずれでも行うことができる。自動化することもできる。これは、特に複数のキュベット1が隣接して配置されている、図3の装置を用いる場合のケースである。ついで、個々のキュベット1は同時に弾性の接触部7を用いて測定電子機器8に接続され得る。ポンプ装置10または複数のポンプ装置が、一旦、キュベット上に配置されると、測定は同時にすべてのキュベットに対して行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の電極(6)を有する少なくとも1個の測定キュベット(1)と、試験すべき液体(14)を動かすための装置(10)と、接触エレメント(7)を介して電極(6)に接続される測定および評価電子機器(8、9)を備えた血小板凝集を測定かつ記録するための血小板凝集測定装置であって、測定キュベット(1)が2個の隣接して配置された、上方に開口している部分空間(2、3)を含み、その空間は下部(5)にて相互に連絡しているだけであり、電極が測定キュベット(1)の底部に挿入される金属球(6)として設計されており、液体を動かす装置(10)が実質的にシーリング方式にて一の部分空間(2)の上に設置され得、定期的かつ交互に低圧および過圧を発生する、ポンプ装置(11−13)であることを特徴とする、血小板凝集測定装置。
【請求項2】
金属球(6)がキュベット(1)の底部に成型または圧縮されていることを特徴とする、請求項1記載の血小板凝集測定装置。
【請求項3】
金属球(6)がステンレスでできていることを特徴とする、請求項1または2記載の血小板凝集測定装置。
【請求項4】
金属球(6)が被覆されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。
【請求項5】
金属球(6)が銀、非腐食性材料、貴金属および/または試薬で被覆されていることを特徴とする、請求項4記載の血小板凝集測定装置。
【請求項6】
ポンプ速度を変えることができることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。
【請求項7】
ポンプ装置(10)がシリンダー(11)および偏心ドライブ(13)により往復運動可能であるピストン(12)を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。
【請求項8】
ポンプ装置(10)が隔膜ポンプであることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。
【請求項9】
その上にポンプ装置(10)を設置しうる部分空間(2)が実質的に平行な壁面を有するのに対して、別の部分空間(3)が漏斗のように上方に広がっていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。
【請求項10】
接触エレメント(7)が弾性であるように設計されていることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。
【請求項11】
複数の測定キュベット(11)が相互に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。
【請求項12】
金属球(6)がその接触エレメント(7)の助けを借りて電子機器(8、9)に接続されること、1個または複数のポンプ装置(19)を測定キュベット(1)の上に配置し、それを駆動させることにより、個々のキュベット(1)が同時に測定および評価電子機器(8、9)に接続され得ることを特徴とする、請求項11記載の血小板凝集測定装置。
【請求項13】
キュベット(1)がポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリエチレンから選択される血液−適合性プラスチック材料から由来の射出成形部材であることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の血小板凝集測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−265102(P2009−265102A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104298(P2009−104298)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(509115432)
【氏名又は名称原語表記】Holger BEHNK
【Fターム(参考)】