説明

血液成分のサンプリングシステム及び血液成分のサンプリング方法並びに採血管

【課題】クローズドシステムで無菌的に検査用採血管に血液サンプルを採取でき、この検査用採血管を血液検査機にセットすることで、検査用採血管に装着した栓体より血液を採集し、血液検査を実施することが出来る採血管、サンプリングシステムを提供すること。
【解決手段】採血管13は、筒状で弾性を有する本体13.1を有する。当該本体13.1は、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気が前記バッグ本体2方向に排出される。外圧を解除することにより基の形状に戻る時に生じる陰圧により、バッグ本体2内に収納された血液成分を血液成分のサンプリングシステムの第二チューブを経て、当該本体13.1内に、無菌的に採取することができる。本体13.1の下部に、略筒状体13.6を延設し、当該略筒状体13.6の側部に、第二チューブ5を筒体13.6の外に引き出すことのできる開口部13.7を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査に使用される血液成分(本発明で、血液成分とは、全血、血小板、血小板濃厚液、血漿、赤血球、白血球等の全てのものを含む)のサンプリングを容易に行うことのできる血液成分のサンプリングシステム及び血液成分のサンプリング方法並びに採血管に関する。特に、血小板濃厚液のサンプリングに好適に使用できるサンプリングシステム及び血液成分のサンプリング方法並びに採血管に関する。
なお採血管は、血液分析装置で好適に使用できるが、その特有の形態に応じて、採血の用途であれば何でも使用できる。
以下、血小板濃厚液のサンプリングシステム及び血液成分のサンプリング方法並びに採血管の例について説明する。
【背景技術】
【0002】
図9は、現在実施されている血小板濃厚液のサンプリングシステム31(「サンプリングバッグ」ともいう)及び血液成分のサンプリング方法の概略図である。(A)はサンプリングシステム、(B)はセグメントチューブ、(C)はセグメントチューブから試験管に血小板濃厚液を移している図である。
〈1〉第1チューブ34より、バッグ本体32(容量:800ml/「血小板保存用バッグ」ともいう)内に、血小板濃厚液を採取する。
〈2〉バッグ本体32から血小板濃厚液を第2チューブ35より、子バッグ33内に採取する。
〈3〉血小板濃厚液で満たされた第2チューブ35の一部(「セグメントチューブ」ともいう)を、チューブシーラー(図示せず)で切断する。
〈4〉セグメントチューブの下方端部をカッター等で開口して、当該開口部より血小板濃厚液を試験管(36)に移し、血液検査機にて血液検査を行う。
〈1〉から〈3〉は、クローズドシステムで無菌的に操作できるため、衛生区域で実施されるが〈4〉は、血小板濃厚液を試験管に移す際に、血小板濃厚液をこぼしたり、飛散させる可能性があるため暴露区域で行われる。
【0003】
特許文献1には、採血バッグ(84)にチューブ(204)を介して、サンプルコンテナ(200、250)を接続し、当該サンプルコンテナ(200、250)内に採取した血液(血液成分)をバクテリア検出に使用する旨を記載した発明が開示されている。
サンプルコンテナ(200、250)内の血液サンプルを採取した後、チューブ(204)を二箇所でシールし、これらのシール間でカットすることにより、採血バッグ(84)から切り離している。
特許文献1の図2に記載のサンプルコンテナ(200)は、ほぼ1.5mLから4mLの血小板凝縮物でこのバルブ[サンプルコンテナ(200)]を満たすように軽く圧迫される(圧搾される)。
【0004】
特許文献1の図3に記載のサンプルコンテナ(250)は、袋状に形成され、重力落差(フロー)によって、製品バッグ84からの1.5ml乃至4mlか選択された量の血小板凝縮物でバッグを満たすように、ライン204もしくはクランプの壊れやすいコネクタ(図示されず)を開くことによって満たされる。
【0005】
特許文献2には、袋状のバッグ本体の上端に、先端に採血針を装着した採血チューブを接続し、採血チューブの途中に分岐部を配置し、前記分岐部に、先端に穿通針を接続した分岐採血チューブを装着し、前記穿通針の外周に真空採血管(試験管)の装着溝を形成した針ホルダーを配置または前記分岐採血チューブの端部に真空採血管(試験管)の装着溝を形成した針ホルダーを接続した、採血バッグの発明が記載されている。
【0006】
特許文献3(4)には、パッケージ(36)と生物学的流体、特に血液を取出すためのバッグシステム(1)とを含む組立体の発明であって、バッグシステムがパッケージ内に滅菌状態で収容されており、パッケージはバッグシステムを使用する前に開放されるように配置されており、バッグシステムは、少なくとも一つの流体収集バッグ(2)に連通している流体取出装置と、バッグシステムに分離可能に結合された少なくとも一つのサンプリング用容器(15)を含んでいて収集されるべき流体をサンプリングするサンプリングバッグ(9)とを含んでいる組立体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−524445(図2、図3、段落番号[0046]から[0048])
【特許文献2】実用新案登録第3013313(図1、図3、段落番号[0005])
【特許文献3】特開2004−249110(要約の蘭、図1)
【特許文献4】特開2004−249111(要約の蘭、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、以下のとおりである。
特許文献1の図2に記載の発明では、サンプルコンテナ(200)には、血液サンプルを採取する部材(例えば口部、栓等)が付いていないので、サンプルコンテナ(200)内に採取した血液サンプルを、検査用器具[試験管等]に移す時に、サンプルコンテナ(200)の一部を、カッター等で開口しなければならない。このため血液成分こぼすこともあり、無菌的に血液サンプルを検査用試験管採取することができない。
特許文献1の図3に記載の発明では、クローズド状態で、重力落差(フロー)により、血液成分を収集するため、血液成分を速やかに収集できない場合がある。
【0009】
特許文献2に記載の発明では、針ホルダー(10、20)に装着されている針キャップ(8、19)を一度取り外し、穿通針(7、17)を露出して、それからこれに真空採血管(16)の口部(16a)を接続するので、クローズドシステムになっておらず無菌が損なわれる。また、操作が煩わしく、穿通針(7、17)に作業者の指等が接触するおそれがあるので、必ずしも安全とはいえない。
特許文献3(4)に記載の発明は、サンプリングバッグ(9)に、さらに血液サンプルの採血用の中空針(16)と、サンプリング用容器(15)を含んでいるため、特許文献2と同様に、操作が煩わしく、中空針(16)に作業者の指等が接触するおそれがあるので、必ずしも安全とはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明は、バッグ本体(2)と、血液を当該バッグ本体(2)内へ導入する第一チューブ(4)と、血液を採血管に導入する第二チューブ(5)を有する血液成分のサンプリングシステム(1)に装着される採血管(13)であって、
採血管(13)は、筒状で弾性を有する本体(13.1)と、鍔部(TU)と胴部(BD)を有する栓体(13.3)とを有し、
当該本体(13.1)の一方端に、前記栓体(13.3)を装着し、他方端に、前記血液成分のサンプリングシステム(1)の第二チューブ接続部(13.2)を装着し、
前記本体(13.1)は、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気が前記バッグ本体(2)方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、
前記バッグ本体(2)内に収納された血液成分を、前記第二チューブ(5)を経て、前記本体(13.1)内に、採取することができるように形成され、
本体(13.1)の下部に、略筒状体(13.6)を延設し、
当該略筒状体(13.6)の側部に、血液成分のサンプリングシステム(1)の第二チューブ(5)を前記筒体(13.6)の外に引き出すことのできる開口部(13.7)を形成した採血管(13)を提供する。
[2]本発明は、バッグ本体(2)と、血液を当該バッグ本体(2)内へ導入する第一チューブ(4)と、血液を採血管に導入する第二チューブ(5)を有する血液成分のサンプリングシステム(1)に装着される採血管(23、23A)であって、
筒状で弾性を有する本体(23.1)と、鍔部(TU)と胴部(BD)を有する栓体(23.3)とを有し、当該本体(23.1)の一方端に、栓体(23.3)を装着し、前記本体(23.1)の側部に、第二チューブ接続部(23.2)を装着し、
前記本体(23.1)は、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気が前記バッグ本体(2)方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、前記バッグ本体(2)内に収納された血液成分を、前記第二チューブ(5)を経て、当該本体(23.1)内に、採取することができるように形成され、
第二チューブ接続部(23.2)の下部に、第二チューブの装着溝(23.6)を形成し、
前記第二チューブ装着溝(23.6)の下部に、段部(23.132)を形成し、第二チューブ(5)の切断した端部を、前記段部(23.132)の第二チューブ装着溝(23.6)に、係止することができるように形成した採血管(23、23A)を提供する。
[3]本発明は、血液を収納するバッグ本体(2)と、さらに当該バッグ本体(2)内の血液を採取する[1]または[2]に記載のいずれか1つに記載の採血管(13、23、23A)とを有し、
一方端が前記バッグ本体(2)に連通し、他方端が血液成分の貯留容器に接続可能な部材を有し、血液を前記バッグ本体(2)へ導入する第一チューブ(4)と、
一方端が前記バッグ本体(2)に、他方端が前記採血管(13、23、23A)に、それぞれ連通し、血液を前記採血管(13、23、23A)へ導入する第二チューブ(5)を有する、
血液成分のサンプリングシステム(1)を提供する。
[4] 本発明は、[1]または[2]に記載の採血管(13、23、23A)を有する[3]に記載の血液成分のサンプリングシステム(1)使用し、
〈1〉血液成分を、第一チューブ(4)を経て、血液成分のサンプリングシステム(1)のバッグ本体(2)内に採取するステップ、
〈2〉採血管(13、23、23A)の本体(13.1、23.1)は、ポンピングすることにより、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気がバッグ本体(2)方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、前記バッグ本体(2)内に収納された血液成分を、前記第二チューブ(5)を経て、前記採血管(13、23、23A)の本体(13.1、23.1)内に、無菌的に採取するステップ、
〈3〉前記第二チューブ(5)の前記採血管(13、23、23A)の本体(13.1、23.1)に近い部分を、チューブシーラーでシールして、切断し、血液分析装置のホルダー(H)に設置するステップ、
〈4〉前記血液分析装置の血液採取部材を、前記採血管(13、23、23A)の栓体(13.3、23.3)に穿刺して、血液成分の測定を行うステップ、
以上のステップを含むことを特徴とする血液成分のサンプリング方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
〈1〉採血管13は、血液分析装置のホルダーHに配置する際に、本体13.1(略筒状体13.6)下部に、第二チューブ5がなく、第二チューブ5は、略筒状体13.6内の空間S内に収納されているので、ホルダーHに配置したときの安定性がよい。
〈2〉採血管(23、23A)は、血液分析装置のホルダーHに配置する際に、本体23.1下部に、第二チューブ5がなく、第二チューブ5は、本体23.1側部の装着溝23.6、23.7に装着されているので、ホルダーHに配置したときの安定性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の血液成分のサンプリングシステムの概略図である。
【図2】採血管の参考例を示す一部拡大斜視図である。
【図3】採血管のその他の参考例を示す一部拡大斜視図である。
【図4】本発明の採血管の実施例を示す一部拡大斜視図である。
【図5】図4の採血管の使用方法の一例を一部拡大斜視図である。
【図6】採血管のその他の実施例を示す概略図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図である。
【図7】採血管のその他の実施例を示す概略図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図である。
【図8】(A)、(B)、(C):血液成分のサンプリングシステムによる血液成分のサンプリング方法の一例を示す概略図である。
【図9】(A)、(B)、(C):従来の血液成分のサンプリングシステム及び血液成分のサンプリング方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[血液成分のサンプリングシステム1]
本発明の血液成分のサンプリングシステム1は、図1に例示するように、血液成分を収納するバッグ本体2と、さらに当該バッグ本体2内の血液成分を採取する採血管(3、3A、13、23、23A)(図2から図7参照)とを有する。
バッグ本体2は、血液成分をバッグ本体2へ導入する第一チューブ4(血液成分導入チューブ)と、バッグ本体2内の血液成分を採血管(3、3A、13、23、23A)へ移送する第二チューブ5(血液成分排出チューブ)を有する。
【0014】
第一チューブ4は、一方端がバッグ本体2に接続され、他方端が血液成分の貯留容器等(図示せず)と接続可能な部材を有する。当該接続可能な部材とは、例えば「コネクタ」であってもよいし、当該第一チューブ4の端部を、血液成分の貯留容器等(図示せず)に接続されるチューブと、直接、市販の無菌接続装置を使用して接続できるように、加工した形状(例えば溶着等による「密封・シール部」)であってもよい。
第二チューブ5は、一方端がバッグ本体2接続され、他方端が採血管(3、3A、13、23、23A)に接続される。
【0015】
[採血管3、3A、13、23、23A]
採血管(3、3A、13、23、23A)は、図2から図7に例示するように、細長い筒状で弾性を有する本体(3.1、13.1、23.1)と、鍔部(TU)と胴部(BD)を有する栓体(3.3、13.3、23.1)とを有する。
図2から図6の採血管(3、3A、13、23)は、本体(3.1、13.1、23.1)の一方端(上部)には、略筒状体(3.4、13.4、23.4)を形成している。
略筒状体(3.4、13.4、23.4)は、図2から図6に例示するように、本体(3.1、13.1、23.1)の中で、最大径を有する部分で、切欠部SSが二箇所形成されている。当該切欠部SSは、栓体(3.3、13.3、23.3)を、天面から装着しやすいように形成したもので、三箇所以上形成してもよい。
図7の採血管23Aは、本体23.1の一方端(上部)[上部縁部23.11]が最大径を有する。
【0016】
図2から図5の採血管(3、3A、13)は、当該略筒状体(3.4、13.4)から反対側の他方の一端部(下部)に向けて、大径部(3.11、13.11)、移行部(3.13、13.13)、小径部(3.12、13.12)を順次形成している。
図6の採血管23の本体23.1は、当該略筒状体23.4から反対側の他方の一端部(下部)に向けて、先細りとなるようにテーパ状に形成されている。
図7の採血管23Aの本体23.1は、一方端(上部)[上部縁部23.11]から反対側の他方の一端部(下部)に向けて、先細りとなるようにテーパ状に形成されている。
図6と図7の採血管(23、23A)は、また本体23.1の途中(略中腹部)に段状の移行部(第一段部)23.13を形成し、さらにチューブシーラーで溶着切断した第二チューブ5を収納できる溝部23.6を、本体23.1の長さ方向に形成している。
【0017】
図2から図6の採血管(3、3A、13、23)は、略筒状体(3.4、13、4、23.4)の内部空間に栓体(3.3、13.3、23.3)の鍔部TUを(圧入により)装着している。
図2から図5の採血管(3、3A、13)では、大径部(3.11、13.11)の内部空間に、栓体(3.3、13.3)の胴部BDを(圧入により)装着している。
図7の採血管23Aでは、略筒状体(3.4、13、4、23.4)の代わりに、後述するように、キャップ23.5で、栓体23.3を、本体23.1上部(の空間)に固定するようにしている。
これらにより栓体(3.3、13.3、23.3)を、本体(3.1、13.1、23.1)に安定して装着することができ、後述する血液分析装置の血液採取部材(先端が鋭利で、中が中空となった針のようなもの)を穿刺する時の負荷にも十分耐えることができる。
【0018】
図2から図5の採血管(3、3A、13)では、本体(3.1、13.1)の径を、上部から下部に向けて、略筒状体(3.4、13、4)、大径部(3.11、13.11)、小径部(3.12、13.12)の順に小さく形成し、図6から図7の採血管(23、23A)では、本体23.1(の径)を、前記のように先細りとなるようにテーパ状に形成しており、また切断した第二チューブ5を収納できる溝23.6を形成しているため、後述するように血液分析装置のホルダーHの装着溝HMに容易に装着することができる。
【0019】
図2、図4、図5の採血管(3、13)は、本体(3.1、13.1)の小径部(3.12、13.12)の下部に、第二チューブ接続部(3.2、13.2)を形成し、これに第二チューブ5に接続している。
図3の採血管3Aは、本体3.1の小径部3.12の下部ではなく、小径部3.12の上側部に、第二チューブ接続部3.2Aを形成し、これに第二チューブ5を接続している。
【0020】
図6、図7の採血管(23、23A)は、本体23.1の側部(略中腹部)に、第二チューブ接続部23.2を形成している。当該第二チューブ接続部23.2は、図6に例示するように、本体23.1の壁面内に形成された孔(空間)で、本体23.1の略中腹部から上部方向に、栓体23.3の胴部BDの底部近傍に至るまで形成されている。
第二チューブ5を当該孔(空間)に、挿入して接続するようになっている。
また第二チューブ接続部23.2の孔(空間)は、連通孔23.5を介して、本体23.1の内部空間と連通している。
【0021】
図2の採血管3と図3の採血管3Aの違いは、前者が本体3.1の小径部3.12の下部に、第二チューブ接続部3.2を形成し、これに第二チューブ5に接続しているのに対し、後者が小径部3.12の上側部に、第二チューブ接続部3.2Aを形成し、これに第二チューブ5を接続している点のみで、その他は実質的に同じである。
図3の採血管3Aの例示では、第二チューブ接続部3.2Aを形成する位置は、小径部3.12の上側部(移行部3.13の近傍)で記載されているが、この位置に限定されな
い。大径部3.12の領域内、または小径部3.12の略中腹部から小径部3.12の上部の領域であればどこでもよい。
【0022】
採血管3のように、本体3.1(小径部3.12)の下部に、第二チューブ接続部3.2を形成(配置)すると、第二チューブ(5)を切断後、当該第二チューブ(5)の残りの部分が短ければほとんど問題はないと思われるが、あまり長いと、後述するように採血管3を血液検査機のホルダーHに収納する時に、第二チューブ接続部3.2に接続した第二チューブ5が嵩張り、ホルダーH内に収納しづらく、また第二チューブ5が、ホルダーの底部に接触して安定性が悪くなることが懸念される。当該ホルダーHの形状にもよるが、大部分のホルダーHは、底が平または丸底等の形状であるから、当該ホルダーHの底に
直接、第二チューブ5が接触するような構造は、あまり歓迎されない。できれば図3の採血管3Aように本体3.1の側部に第二チューブ5を装着する構造、または図4(図5)の採血管13のように、本体13.1の下部に形成した略筒状体13.6の内部空間に第二チューブ5を収納する構造、図6(図7)の採血管23、23Aのように、本体23.2の側部に形成した溝23.6(23.7)に、第二チューブ5を装着できる構造のほうが好ましい。
【0023】
また図4(図5)の採血管13は、本体13.1の小径部13.12の下部に、さらに略筒状体13.6を延設し、略筒状体13.6の長さ方向の側部に、本体13.1の長さ方向に沿って、(側面からみた形状が)矩形状の開口部13.7を(二箇所)形成したものである。
【0024】
開口部13.7は、第二チューブ5を略筒状体13.6の外に引き出し、また再び内部に戻すことができるように形成したもので、形状・構造・数は、当該目的を達成できるものであれば、図示したものに限定されない。
略筒状体13.6の底部は、開放され、平坦に形成されている。
略筒状体13.6も、第二チューブ5を略筒状体13.6の外に引き出し、また再び内部に戻すことができるように形成したもので、当該目的を達成できるものであれば、図示したものに限定されない。
さらに詳述すれば、図5(A)に示すように、第二チューブ5を、開口部13.7より、外に出して、チューブシーラー(図示せず)により、切断する。
図5(B)に示すように、血液検査装置のホルダーHに収納した際、略筒状体13.6の内部空間S内に、切断した残りの第二チューブ5が収まり、ホルダーH内で安定する。
また、略筒状体13.6を、採血管13(小径部13.12)の下部に設置することで、後述する血液分析装置でサンプリングする時に、ホルダーH内に配置する時に、支えとなり作業性も安定する。
【0025】
また図6(図7)の採血管(23、23A)は、さらに、第二チューブ装着溝23.6の途中に、第二段部23.132を形成し、当該第二段部23.132の第二チューブ装着溝23.6に切断後の第二チューブ5の端部を、係止して、装着できるようにしている。
さらに、第二チューブ装着溝23.6の下部には、第二チューブ5の残りの端部を装着するための溝23.7を形成している。
以上のように、切断後の第二チューブ5の端部を、前記のように第二チューブ装着溝23.6、23.7に装着(係止)することにより、後述する血液分析装置のサンプリング
時、切断後の第二チューブ5の端部が、作業の障害にならないようにしている。
【0026】
なお図2から図6の採血管(3、3A、13、23)は、略筒状体(3.4、13、4、23.4)の内部空間に栓体(3.3、13.3、23.3)の鍔部TUを装着している。
さらに図2から図5の採血管(3、3A、13)では、大径部(3.11、13.11)の内部空間に、栓体(3.3、13.3)の胴部BDを(圧入により)装着し、図6の採血管23では、本体23.1上部の内部空間に、栓体23.3の胴部BDを(圧入により)装着している。
以上で栓体(3.3、13.3、23.3)は、十分な強度をもって、本体(3.1、13.1、23.1)に装着されると考えられる。
【0027】
なお本体(3.1、13.1、23.1)は、ポンピングを繰り返すので、より安全を期して、栓体(3.3、13.3、23.3)が本体(3.1、13.1、23.1)から絶対に外れることがないようにするのがより好ましい。
図7の採血管23Aでは、略筒状体(3.4、13、4、23.4)の代わりに、キャップ23.5で、栓体23.3を、本体23.1上部(の空間)に固定するようにしている。
【0028】
さらに詳述すれば、図7の採血管23Aでは、本体23.1上部の内部空間に、栓体23.3の胴部BDを装着するとともに、本体23.1の上部縁部23.11の天面に、栓体23.3の鍔部TUの底部を装着し、当該栓体23.3にキャップ23.5を被せて固定する。
本体23.1の上部縁部23.11端部に、キャップ23.5の底部壁面23.52の溝23.53を装着し、栓体23.3を、キャップ23.5の天上壁面23.51と底部壁面23.52と、及び本体23.1の上部縁部23.11により囲んで固定することができる。
これにより、栓体23.3は、本体23.1のポンピングを複数繰り返しても、本体23.1より外れることはない。
図7の採血管23Aのその他の形状・構造・使用方法は、図6の採血管23と実質的に同じであるから詳細な説明は省略する。
【0029】
採血管(3、3A、13、23、23A)の本体(3.1、13.1、23.1)は、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気がバッグ本体2方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、バッグ本体2内に収納された血液成分を、前記第二チューブ5を経て、本体(3.1、13.1、23.1)内に、採取することができるように形成されている。
採血管(3、3A、13、23、23A)の構成材料は、以上の性能を有する材料であれば特に限定されないが、なかでも、第2チューブとの接着性、内部の視認性、ポンピング性を考慮して、柔軟性を有するポリ塩化ビニル(ポリ塩化ビニル100重量部に対して、DOP、TOTM等の可塑剤を20から80重量部配合したもの)が好ましい。当該ポリ塩化ビニルと同様の物性を有する、熱可塑性エラストマー、合成樹脂も使用可能である。
【0030】
[採血管3(図2)の操作方法]
図8の例示に沿って説明する。(A)、(B)、(C)はいずれも、作業区域が衛生領域(無菌室内等での作業区域で、大気中の雑菌等と接触する機会がない領域)である。
〈1〉血液成分を、第一チューブ4を経て、バッグ本体2内に採取する。
〈2〉本体3.1は、ポンピングすることにより、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気がバッグ本体2方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、前記バッグ本体2内に収納された血液成分を、前記第二チューブ5を経て、当該本体3.1内に、採取する。
〈3〉本体3.1に近い位置で、第二チューブ5を、チューブ溶着装置でシールして、切断し、血液分析装置のホルダーH[図5(B)参照]に設置する。
〈4〉血液分析装置の血液採取部材(先端が鋭利で、中が中空となった針のようなもの)を、栓体3.3に穿刺して、本体3.1から血液を採取後、血液分析装置の検出部で血液成分の測定を行う。
【0031】
[採血管3A(図3)の操作方法]
図8に記載した採血管3(図2参照)の代わりに、採血管3A(図3参照)の第二チューブ接続部3.2Aに第二チューブ5の端部を接続する。
前記〈1〉、〈2〉と同様にバッグ本体2内に収納された血液成分を、前記第二チューブ5を経て、当該本体3.1内に、採取する。
〈3〉´本体3.1に近い位置で第二チューブ5を、チューブ溶着装置でシールして、切断し、血液分析装置のホルダーHに設置する。採血管3Aでは、本体3.1(小径部3.12)の下部に第二チューブ5がなく、本体3.1(小径部3.12)の上側部に第二チューブ5があるので、ホルダーHに配置したときの安定性がよい。前記〈4〉と同様に、血液成分を血液分析装置で測定する。
【0032】
[採血管13(図4、図5)の操作方法]
図8に記載した採血管3の代わりに、採血管13(図4、図5参照)の第二チューブ接続部13.2に第二チューブ5の端部を接続する。
前記〈1〉、〈2〉と同様にバッグ本体2内に収納された血液成分を、前記第二チューブ5を経て、当該本体13.1内に、採取する。
〈3〉´´図5(A)のように、第二チューブ5を、開口部13.7より引き出して、本体13.1(略筒状体13.6)に近い位置で、チューブ溶着装置でシールして、切断する。
切断した残りの第二チューブ5を開口部13.7より略筒状体13.6内の空間Sに戻して(収納して)、血液分析装置のホルダーHに配置する。採血管13では、本体13.1(略筒状体13.6)下部に、第二チューブ5がなく、第二チューブ5は、略筒状体13.6内の空間S内に収納されているので、ホルダーHに配置したときの安定性がよい。
前記〈4〉と同様に、血液成分を血液分析装置で測定する。
【0033】
[採血管23(図6)の操作方法]
図8に記載した採血管3の代わりに、採血管23(図6参照)の第二チューブ接続部23.2に第二チューブ5の端部を接続する。
前記〈1〉、〈2〉と同様にバッグ本体2内に収納された血液成分を、前記第二チューブ5を経て、当該本体23.1内に、採取する。
〈3〉´´´本体23.1に近い位置で、チューブ溶着装置でシールして、切断する。
切断した残りの第二チューブ5端部を、第二段部23.132の第二チューブ装着溝23.6に係止して、装着する。さらに、残りの第二チューブ5端部を溝23.7に装着して、血液分析装置のホルダーHに配置する。
採血管23では、本体23.1下部に、第二チューブ5がなく、第二チューブ5は、本体23.1側部の装着溝23.6、23.7に装着されているので、ホルダーHに配置したときの安定性がよい。
前記〈4〉と同様に、血液成分を血液分析装置で測定する。
【符号の説明】
【0034】
1 血液成分のサンプリングシステム
2 バッグ本体
3、3A 採血管
3.1 本体
3.11 大径部
3.12 小径部
3.13 移行部
3.2、3.2A 第二チューブ接続部
3.3 栓体
3.4 略筒状体
13 採血管
13.1 本体
13.11 大径部
13.12 小径部
13.13 移行部
13.2 第二チューブ接続部
13.3 栓体
13.4 略筒状体
13.6 略筒状体
13.7 開口部
23、23A 採血管
23.1 本体
23.11 上部縁部
23.13 移行部(第一段部)
23.132 第二段部
23.2 第二チューブ接続部
23.3 栓体
23.4 略筒状体
23.5 キヤップ
23.51 天上壁面
23.52 底部壁面
23.53 溝
23.6 第二チューブ装着溝
23.7 第二チューブ(端部)装着溝
4 第一チューブ(血液成分導入チューブ)
5 第二チューブ(血液成分排出チューブ)
6 採血針
H ホルダー
HM (ホルダー)装置溝
BD(栓体)胴部
TU(栓体)略筒状体
S 空間部
SS 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグ本体(2)と、血液を当該バッグ本体(2)内へ導入する第一チューブ(4)と、血液を採血管に導入する第二チューブ(5)を有する血液成分のサンプリングシステム(1)に装着される採血管(13)であって、
採血管(13)は、筒状で弾性を有する本体(13.1)と、鍔部(TU)と胴部(BD)を有する栓体(13.3)とを有し、
当該本体(13.1)の一方端に、前記栓体(13.3)を装着し、他方端に、前記血液成分のサンプリングシステム(1)の第二チューブ接続部(13.2)を装着し、
前記本体(13.1)は、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気が前記バッグ本体(2)方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、
前記バッグ本体(2)内に収納された血液成分を、前記第二チューブ(5)を経て、前記本体(13.1)内に、採取することができるように形成され、
本体(13.1)の下部に、略筒状体(13.6)を延設し、
当該略筒状体(13.6)の側部に、血液成分のサンプリングシステム(1)の第二チューブ(5)を前記筒体(13.6)の外に引き出すことのできる開口部(13.7)を形成した、ことを特徴とする採血管(13)。
【請求項2】
バッグ本体(2)と、血液を当該バッグ本体(2)内へ導入する第一チューブ(4)と、血液を採血管に導入する第二チューブ(5)を有する血液成分のサンプリングシステム(1)に装着される採血管(23、23A)であって、
筒状で弾性を有する本体(23.1)と、鍔部(TU)と胴部(BD)を有する栓体(23.3)とを有し、当該本体(23.1)の一方端に、栓体(23.3)を装着し、前記本体(23.1)の側部に、第二チューブ接続部(23.2)を装着し、
前記本体(23.1)は、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気が前記バッグ本体(2)方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、前記バッグ本体(2)内に収納された血液成分を、前記第二チューブ(5)を経て、当該本体(23.1)内に、採取することができるように形成され、
第二チューブ接続部(23.2)の下部に、第二チューブの装着溝(23.6)を形成し、
前記第二チューブ装着溝(23.6)の下部に、段部(23.132)を形成し、第二チューブ(5)の切断した端部を、前記段部(23.132)の第二チューブ装着溝(23.6)に、係止することができるように形成した、ことを特徴とする採血管(23、23A)。
【請求項3】
血液を収納するバッグ本体(2)と、さらに当該バッグ本体(2)内の血液を採取する請求項1または請求項2に記載のいずれか1つに記載の採血管(13、23、23A)とを有し、
一方端が前記バッグ本体(2)に連通し、他方端が血液成分の貯留容器に接続可能な部材を有し、血液を前記バッグ本体(2)へ導入する第一チューブ(4)と、
一方端が前記バッグ本体(2)に、他方端が前記採血管(13、23、23A)に、それぞれ連通し、血液を前記採血管(13、23、23A)へ導入する第二チューブ(5)を有する、
ことを特徴とする血液成分のサンプリングシステム(1)。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の採血管(13、23、23A)を有する請求項3に記載の血液成分のサンプリングシステム(1)使用し、
〈1〉血液成分を、第一チューブ(4)を経て、血液成分のサンプリングシステム(1)のバッグ本体(2)内に採取するステップ、
〈2〉採血管(13、23、23A)の本体(13.1、23.1)は、ポンピングすることにより、外圧を加えることにより潰れて、内部の空気がバッグ本体(2)方向に排出され、その後、外圧を解除することにより、基の形状に戻ろうとする時に生じる陰圧により、前記バッグ本体(2)内に収納された血液成分を、前記第二チューブ(5)を経て、前記採血管(13、23、23A)の本体(13.1、23.1)内に、無菌的に採取するステップ、
〈3〉前記第二チューブ(5)の前記採血管(13、23、23A)の本体(13.1、23.1)に近い部分を、チューブシーラーでシールして、切断し、血液分析装置のホルダー(H)に設置するステップ、
〈4〉前記血液分析装置の血液採取部材を、前記採血管(13、23、23A)の栓体(13.3、23.3)に穿刺して、血液成分の測定を行うステップ、
以上のステップを含むことを特徴とする血液成分のサンプリング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−83661(P2013−83661A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277837(P2012−277837)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2009−142190(P2009−142190)の分割
【原出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】