説明

血液浄化システム

【課題】安全性を確保しつつ低コストで供給手段とそれぞれの血液浄化手段とを双方向に通信させて制御することができる血液浄化システムを提供する。
【解決手段】患者に血液浄化治療を施すためのダイアライザ5が取り付けられる複数の監視装置1と、該監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2とを具備し、前記供給手段とそれぞれの血液浄化手段とは双方向に通信可能とされた血液浄化システムであって、透析液供給装置2に種々制御のための制御用中央処理装置14及び監視用中央処理装置15及び通信のための通信用中央処理装置13を具備させるとともに、それぞれの監視装置1に制御用中央処理装置14及び監視用中央処理装置15に対応した制御用中央処理装置11及び監視用中央処理装置12及び通信用中央処理装置を具備させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、該血液浄化手段のそれぞれに透析液又は透析液原液を供給可能な供給手段とを具備した血液浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液浄化システムは、病院等医療現場における機械室に透析液供給装置を設置しておき、これとは別の場所である透析室(治療室)に透析用監視装置を設置するとともに、これら透析液供給装置と透析用監視装置とを配管で連結させて構成されている。透析液供給装置は、清浄水が供給されて所定濃度の透析液を作製するものである一方、透析用監視装置は、患者に透析治療を施すための血液浄化器(ダイアライザ)の数に対応して複数設置され、透析液供給装置で作製された透析液を配管を介して導入し、血液浄化器に供給する。
【0003】
すなわち、機械室に設置された透析液供給装置から透析室に設置された複数の透析用監視装置に分配して透析液を送液し、それぞれにおいてダイアライザに透析液を供給するよう構成されているのである。このように機械室で作製された透析液を各透析用監視装置に分配する血液浄化システムは、通常、「透析治療用セントラルシステム」と称される一方、血液浄化器毎(即ち透析治療患者の各々)に透析液の作製を行い得るものは、通常、「個人用透析装置」と称される。
【0004】
しかるに、従来より、透析液供給装置と各透析用監視装置とを電気的に接続しておき、透析治療工程時、配管の洗浄工程又は消毒工程時において、当該透析液供給装置(供給手段)から各透析用監視装置(血液浄化手段)に対して電気信号(工程信号)を送信するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、各透析用監視装置は、所定の電気信号(工程信号)を受信すると、その信号に応じた動作(ポンプの駆動や電磁弁の開閉等)が行われることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−16412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化システムにおいては、以下の如き問題があった。
近時の医療装置においては、情報の送信又は受信を行って種々制御を行わせる際、情報を送信する側及び受信する側の双方において複数の中央処理装置(具体的には、制御用中央処理装置及び監視用中央処理装置)を具備させ、何れかの機器又は部品に故障等の不具合が生じた場合であっても、当該複数の中央処理装置にて相互に監視し合い、患者の安全を保持する制御が維持されるよう構成されている。
【0007】
一方、本出願人は、血液浄化システムにおいて、透析液供給装置(供給手段)と各透析用監視装置(血液浄化手段)との間でLAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)を構築し、これらの間で双方向に通信を行わせて治療に関わる制御等を行わせることを検討するに至ったが、その場合、複数の中央処理装置同士をそれぞれ接続させる必要があることから、それら各中央処理装置にそれぞれ対応した複数のLANケーブルが必要となってしまい、コストが嵩んでしまうという不具合が想定される。かかる問題は、血液浄化手段が個人用透析装置とされたものにおいても同様である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、安全性を確保しつつ低コストで供給手段とそれぞれの血液浄化手段とを双方向に通信させて制御することができる血液浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、該血液浄化手段のそれぞれに透析液、透析液原液、清浄水又は消毒液を供給可能な供給手段とを具備し、前記供給手段とそれぞれの血液浄化手段とは双方向に通信可能とされた血液浄化システムであって、前記供給手段に種々制御のための複数の供給側中央処理装置及び通信のための通信用中央処理装置を具備させるとともに、それぞれの前記血液浄化手段に前記供給側中央処理装置に対応した複数の治療側中央処理装置及び通信用中央処理装置を具備させたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段における通信用中央処理装置及びそれぞれの前記血液浄化手段における通信用中央処理装置は、対応する中央処理装置を識別可能なタグ付けをして情報を送信するとともに、受信した情報に付与されたタグに対応した供給側中央処理装置又は治療側中央処理装置の何れかにその情報を送信することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化システムにおいて、前記複数の供給側中央処理装置及び治療側中央処理装置は、それぞれ一対の制御用中央処理装置及び監視用中央処理装置から成るとともに、当該制御用中央処理装置の制御内容を前記監視用中央処理装置で監視可能とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を前記血液浄化器に供給する監視装置から成ることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、前記水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、供給手段に種々制御のための複数の供給側中央処理装置及び通信のための通信用中央処理装置を具備させるとともに、それぞれの血液浄化手段に供給側中央処理装置に対応した複数の治療側中央処理装置及び通信用中央処理装置を具備させたので、安全性を確保しつつ低コストで供給手段とそれぞれの血液浄化手段とを双方向に通信させて制御することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、供給手段における通信用中央処理装置及びそれぞれの血液浄化手段における通信用中央処理装置は、対応する中央処理装置を識別可能なタグ付けをして情報を送信するとともに、受信した情報に付与されたタグに対応した供給側中央処理装置又は治療側中央処理装置の何れかにその情報を送信するので、より中央処理装置の対応関係を明確にして情報の送受信を行わせることにより安全性を向上させることができ、低コストにて供給手段とそれぞれの血液浄化手段とを双方向に通信させて制御することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、複数の供給側中央処理装置及び治療側中央処理装置は、それぞれ一対の制御用中央処理装置及び監視用中央処理装置から成るとともに、当該制御用中央処理装置の制御内容を監視用中央処理装置で監視可能とされたので、安全性をより確実に向上させて供給手段とそれぞれの血液浄化手段とを双方向に通信させて制御することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を前記血液浄化器に供給する監視装置から成るので、セントラルシステムに適用することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るので、当該個人用透析装置を有した血液浄化システムに適用することができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るので、当該個人用透析装置を有した血液浄化システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【図2】同血液浄化システムにおける監視装置の構成を示す模式図
【図3】同血液浄化システムにおける各装置の内部構成及び接続状態を示すブロック図
【図4】本発明の他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【図5】本発明の他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化システムは、透析液原液から所定濃度の透析液を作製するとともに、その透析液を複数の透析用監視装置に供給するためのものであり、図1に示すように、病院等医療現場における透析室A(治療室)に設置された複数の監視装置1と、当該医療現場における透析室Aとは別の場所である機械室Bに設置された透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4とから主に構成される。
【0023】
監視装置1(血液浄化手段)は、患者に血液浄化治療(血液透析治療)を施すためのダイアライザ5(血液浄化器)が取り付けられ、透析液供給装置2から供給された透析液を当該ダイアライザ5に供給するためのもので、透析室Aに複数設置されている。かかる監視装置1は、血液透析治療や他の制御内容(洗浄又は消毒)の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル1aが配設されている。
【0024】
より具体的には、透析室Aに設置された複数の監視装置1の各々は、図2に示すように、透析液供給装置2から延設された配管L1が引き込まれるとともに、図示しない排液手段に接続された配管L2を具備し、これら配管L1、L2に跨って複式ポンプP1が配設されて構成されている。このうち監視装置1内における配管L1には、当該配管L1を流れる液体の流量を検出する流量検出センサ7、当該液体の給液圧を検出する液圧検出センサ8、及び当該液体の電導度(濃度)を検出する電導度検出センサ9が配設されている。
【0025】
また、複式ポンプP1からは、配管L1と連通した透析液導入ラインL4と、配管L2と連通した透析液排出ラインL5が延設されており、カプラCを介して当該透析液導入ラインL4の先端をダイアライザ5の透析液導入口5aに接続し得るとともに、カプラCを介して当該透析液排出ラインL5の先端をダイアライザ5の透析液排出口5bに接続し得るよう構成されている。このように、各監視装置1には、それぞれ患者に応じたダイアライザ5が取り付けられるようになっており、当該ダイアライザ5には、患者の血液を体外循環させる血液回路6が接続されることとなる。
【0026】
複式ポンプP1のポンプ室は、図示しない単一のプランジャにより、配管L1に接続された送液側ポンプ室と、配管L2に接続された排出側ポンプ室とに隔成されており、当該プランジャが往復動することにより、送液側ポンプ室に送られた透析液又は洗浄液をダイアライザ5に供給するとともに、ダイアライザ5内の透析液を排出側ポンプ室に吸入するよう構成されている。さらに、監視装置1内には、複式ポンプP1をバイパスしつつ配管L2と透析液排出ラインL5とを連通する配管L3が形成されており、この配管L3の途中に除水ポンプP2が配設されている。かかる除水ポンプP2を駆動させることにより、ダイアライザ5内を流れる患者の血液に対して除水を行わせることが可能とされる。
【0027】
なお、複式ポンプP1に代えて、所謂チャンバ形式のものとしてもよいとともに、流量検出センサ7、液圧検出センサ8或いは電導度検出センサ9等のセンサ類は、任意のものを配設してもよく若しくは他の汎用的なものを加えるようにしてもよい。さらに、本実施形態においては、当該センサ類を配管L1に配設するようにしているが、他の配管(例えば配管L2)に配設するものとしてもよい。例えば流量検出センサ7、液圧検出センサ8或いは電導度検出センサ9等のセンサ類を配管L1又は配管L2の何れか一方に配設させたもの或いは両方に配設させたものとしてもよい。
【0028】
水処理装置4は、内部に濾過膜等を内在したモジュール(浄化濾過器)を具備し、原水を浄化して清浄水(RO水)を得るためのものであり、配管L8を介して溶解装置3と連結されて当該溶解装置3に清浄水を供給し得るとともに、配管L6、L7を介して透析液供給装置2と連結されて当該透析液供給装置2に清浄水を供給し得るよう構成されている。かかる水処理装置4で得られた清浄水は、透析液供給装置2にて透析液を作製する際に用いられたり或いは当該透析液供給装置2や監視装置1の配管等を洗浄する洗浄水としても用いられる。なお、水処理装置4を図示しない個人用透析装置や粉末状透析用薬剤を溶解する溶解装置等と連結し、これらに清浄水を供給するよう構成してもよい。
【0029】
また、水処理装置4は、水処理に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル4aが配設されているとともに、LANケーブルβと電気的に接続されるインターフェイス部16及び制御部17を具備している。そして、インターフェイス部16にて透析液供給装置2等から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部17による所定の動作(清浄水の作製等)が行われるようになっている。
【0030】
溶解装置3は、例えば所定量の透析用粉体薬剤が投入されるとともに、その透析用粉体薬剤と水処理装置4から供給された清浄水とを混合(ミキシング)して所定濃度の透析液原液を作製するためのものである。この溶解装置3は、透析液原液作製に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル3aが配設されているとともに、後述するLANケーブルβと電気的に接続されるインターフェイス部18及び制御部19を具備している。そして、インターフェイス部18にて透析液供給装置2等から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部19による所定の動作(透析液原液の作製等)が行われるようになっている。なお、溶解装置3は、配管L6を介して透析液供給装置2と接続されており、作製された透析液原液を透析液供給装置2に供給し得るよう構成されている。
【0031】
しかして、透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4は、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の通信が可能とされている。かかるLANは、本実施形態の如くLANケーブルβを用いるもの(有線)に限らず、無線で双方向の情報の通信が可能なもの(無線LAN)であってもよい。なお、当該LANに代えて、透析液供給装置2から溶解装置3及び水処理装置4に対して一方的に電気信号(工程信号)を送信し得るものとしてもよい。
【0032】
透析液供給装置2(供給手段)は、水処理装置4で得られた清浄水及び溶解装置3で作製された透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得るとともに、監視装置1(血液浄化手段)のそれぞれに作製した透析液を供給可能なものである。すなわち、透析液供給装置2は、配管L1を介して複数の監視装置1のそれぞれと接続されており、かかる配管L1を介して監視装置1のそれぞれに透析液、洗浄水及び消毒液等の所望の液体を供給し得るよう構成されているのである。なお、透析液供給装置2には、透析液供給や洗浄又は消毒に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル2aが配設されている。
【0033】
ここで、本実施形態に係る血液浄化システムにおいては、透析液供給装置2(供給手段)とそれぞれの監視装置1(血液浄化手段)とが、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の通信が可能とされている。これにより、本血液浄化システムにおいては、複数の監視装置1に関する個々の所定情報をそれぞれの監視装置1から透析液供給装置2に対して送信可能な構成とされている。
【0034】
すなわち、透析液供給装置2とそれぞれの監視装置1との間は、LANケーブルαを介在してLAN接続されているとともに、図3に示すように、透析液供給装置2にはLANケーブルαを介して監視装置1との間で通信するための単一の通信用中央処理装置10(通信CPU)と、複数の供給側中央処理装置を構成する一対の制御用中央処理装置11(制御CPU)及び監視用中央処理装置12(保護CPU)とが配設されている一方、監視装置1のそれぞれにはLANケーブルαを介して透析液供給装置2との間で通信するための単一の通信用中央処理装置13(通信CPU)と、複数の治療側中央処理装置を構成する一対の制御用中央処理装置14(制御CPU)及び監視用中央処理装置15(保護CPU)とが配設されている。なお、かかるLANは、本実施形態の如くLANケーブルαを用いるもの(有線)に限らず、無線で双方向の情報の通信が可能なもの(無線LAN)であってもよい。
【0035】
さらに、本実施形態においては、上記構成を前提として、透析液供給装置2における通信用中央処理装置13及びそれぞれの監視装置1における各通信用中央処理装置10は、対応する中央処理装置を識別可能なタグ付けをして情報を送信するとともに、受信した情報に付与されたタグに対応した供給側中央処理装置(制御用中央処理装置14若しくは監視用中央処理装置15)又は治療側中央処理装置(制御用中央処理装置11若しくは監視用中央処理装置12)の何れかにその情報を送信するよう構成されている。すなわち、本実施形態においては、透析液供給装置2の制御用中央処理装置14と各監視装置1の制御用中央処理装置11とが対応するとともに、透析液供給装置2の監視用中央処理装置15と各監視装置1の監視用中央処理装置12とが対応するようタグ付けされているのである。
【0036】
具体的には、透析液供給装置2から監視装置1に所定の情報を送信する場合は、制御用中央処理装置14の情報なのか或いは監視用中央処理装置15の情報なのかを識別可能なタグを付し、通信用中央処理装置13から各通信用中央処理装置10に送信する。この情報を受信した通信用中央処理装置10は、その付されたタグを参照し、当該タグに対応した治療用中央処理装置(制御用中央処理装置11若しくは監視用中央処理装置12)にその情報を送信する。
【0037】
同様に、監視装置1から透析液供給装置2に所定の情報を送信する場合は、制御用中央処理装置11の情報なのか或いは監視用中央処理装置12の情報なのかを識別可能なタグを付し、各通信用中央処理装置10から通信用中央処理装置13に送信する。この情報を受信した通信用中央処理装置13は、その付されたタグを参照し、当該タグに対応した治療用中央処理装置(制御用中央処理装置14若しくは監視用中央処理装置15)にその情報を送信する。
【0038】
例えば、制御用中央処理装置11は、それぞれの監視装置1における制御を行うもので、例えば当該制御用中央処理装置11によって所定の動作(治療前のプライミング、血液透析治療、返血、洗浄・消毒等)が行われるとともに、通信用中央処理装置10を介して所定の情報を透析液供給装置2に送信し得るようになっている。これに対し、監視用中央処理装置12は、制御用中央処理装置11の制御内容を監視し、機器又は部品の故障等により受信した情報に誤りがあると判断すると、制御用中央処理装置11の制御に代わって患者にとって安全な動作が行われるよう制御するものである。
【0039】
同様に、制御用中央処理装置14は、透析液供給装置2における制御を行うもので、例えば当該制御用中央処理装置14によって所定の動作(透析液の作製や当該透析液作製のための溶解装置3若しくは水処理装置4に対する指示等)が行われるとともに、通信用中央処理装置13を介して所定の情報を各監視装置1に送信し得るようになっている。これに対し、監視用中央処理装置15は、制御用中央処理装置14の制御内容を監視し、機器又は部品の故障等により受信した情報に誤りがあると判断すると、制御用中央処理装置14の制御に代わって患者にとって安全な動作が行われるよう制御するものである。
【0040】
上記の如く、通信用中央処理装置(10、13)は、例えばモニタに対する画面の表示、タッチパネルに対する入力検出、通信制御等のインターフェイス関連を行うものとされている。また、制御用中央処理装置(11、14)は、例えば透析液の温度制御、透析液のミキシング制御等、制御関係を司るものとされるとともに、監視用中央処理装置(12、15)は、例えば警報を監視してアラームアクションを行わせるものとされている。
【0041】
しかして、本実施形態においては、制御と監視(保護)とを分離させて一方が正常ならば他方が故障しても患者に危険が及ばないよう構成させることができるので、単一の故障では患者に危険を生じさせないシステムを構築することができる。このような目的を達成できるものであれば、制御用中央処理装置(11、14)と監視用中央処理装置(12、15)との関係は、上記実施形態の他、種々のものとすることができる。
【0042】
例えば、制御用中央処理装置(11、14)が「透析液の温度が目標温度になるまでヒータを制御する」のに対し、監視用中央処理装置(12、15)が「透析液の温度が警報点を超えたら透析液の流れを遮断する」よう制御するものとすれば、仮に、制御用中央処理装置(11、14)が故障した状態で透析液を加温したとしても、監視用中央処理装置(12、15)の制御(監視)が正常であれば、患者側に高温の透析液が供給されてしまうことはなく、危険を回避することができる。逆に、監視用中央処理装置(12、15)が故障により透析液を遮断することができなくても、制御用中央処理装置(11、14)の温度制御が正常であれば、透析液の加温は正常に行われ、危険を回避することができる。
【0043】
本実施形態によれば、透析液供給装置2に種々制御のための複数の供給側中央処理装置(本実施形態においては一対の制御用中央処理装置14及び監視用中央処理装置15)及び通信のための単一の通信用中央処理装置13を具備させるとともに、それぞれの監視装置1に供給側中央処理装置(制御用中央処理装置14及び監視用中央処理装置15)に対応した複数の治療側中央処理装置(本実施形態においては一対の制御用中央処理装置11及び監視用中央処理装置12)及び単一の通信用中央処理装置10を具備させたので、安全性を確保しつつ低コストで透析液供給装置2とそれぞれの監視装置1とをLANにて双方向に通信させて制御することができる。
【0044】
また、上記実施形態によれば、透析液供給装置2における通信用中央処理装置13及びそれぞれの監視装置1における通信用中央処理装置10は、対応する中央処理装置(制御用中央処理装置14若しくは監視用中央処理装置15の何れであるのか、又は制御用中央処理装置11若しくは監視用中央処理装置12の何れであるのか)を識別可能なタグ付けをして情報を送信するとともに、受信した情報に付与されたタグに対応した供給側中央処理装置又は治療側中央処理装置の何れか(すなわち、制御用中央処理装置14若しくは監視用中央処理装置15の何れか一方、又は制御用中央処理装置11若しくは監視用中央処理装置12の何れか一方)にその情報を送信するので、より中央処理装置の対応関係を明確にして情報の送受信を行わせることにより安全性を向上させることができ、低コストにて透析液供給装置2とそれぞれの監視装置1とを双方向に通信させて制御することができる。
【0045】
しかるに、本実施形態においては、透析液供給装置2に種々制御のための複数の供給側中央処理装置(一対の制御用中央処理装置14及び監視用中央処理装置15)及び通信のための通信用中央処理装置13を具備させるとともに、それぞれの監視装置1に供給側中央処理装置(制御用中央処理装置14及び監視用中央処理装置15)に対応した複数の治療側中央処理装置(一対の制御用中央処理装置11及び監視用中央処理装置12)及び通信用中央処理装置10を具備し、且つ、透析液供給装置2における通信用中央処理装置13及びそれぞれの監視装置1における通信用中央処理装置10は、対応する中央処理装置を識別可能なタグ付けをして情報を送信するとともに、受信した情報に付与されたタグに対応した供給側中央処理装置又は治療側中央処理装置の何れかにその情報を送信するので、物理的な通信経路(LAN)を共有させつつ制御(制御用中央処理装置(11、14)による制御)と保護(監視用中央処理装置(12、15)による制御)との独立性を保つことができる。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、複数の供給側中央処理装置及び治療側中央処理装置は、それぞれ一対の制御用中央処理装置(14、11)及び監視用中央処理装置(15、12)から成るとともに、当該制御用中央処理装置(14、11)の制御内容を監視用中央処理装置(15、12)で監視可能とされたので、安全性をより確実に向上させて透析液供給装置2とそれぞれの監視装置1とを双方向に通信させて制御することができる。
【0047】
特に本実施形態によれば、透析液供給装置2における単一の通信用中央処理装置10、及びそれぞれの監視装置1における単一の通信用中央処理装置13を介して通信が行われるので、1系統のLANケーブルαにて双方向の通信を行うことができ、これによりコスト削減に寄与させることができる。しかして、LANケーブルαの両端にそれぞれ単一の通信用中央処理装置10、13が形成され、そこから制御用中央処理装置及び監視用中央処理装置に対して選択的に情報を伝達し得るよう構成されているので、制御用中央処理装置及び監視用中央処理装置の数に応じて通信用中央処理装置及びLANケーブルを複数形成させる必要がない。
【0048】
しかるに、透析液供給装置2に形成されるべき供給側中央処理装置、及び監視装置1に形成されるべき治療側中央処理装置は、それぞれ複数の中央処理装置で構成されていれば足り、互いに同様の機能若しくは制御プログラムを有した中央処理装置を透析液供給装置2及び監視装置1のそれぞれに配設するようにしてもよい。この場合であっても、それぞれの中央処理装置にて制御内容を互いに監視し或いは補完して、機器又は部品の故障等により受信した情報に誤りがあると判断すると、一方の中央処理装置の制御に代わって他方の中央処理装置による制御が行われ、患者にとって安全な動作が行われるよう制御するものとされる。
【0049】
なお、本実施形態においては、複数の監視装置1(血液浄化手段)に関する個々の所定情報をそれぞれの監視装置1から透析液供給装置2(供給手段)に対して送信可能とされており、監視装置1の実際の状態を正確に把握しつつ透析液供給装置2の動作を行わせることができるよう構成されている。特に、送信される所定情報は、透析液供給装置2から監視装置1に送られた液の温度、圧力、濃度又は流量に関する情報を含むので、監視装置1におけるリアルタイムな情報を透析液供給装置2に送信することができ、監視装置1の実施の状態をより正確に把握させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置2から成るとともに、血液浄化手段は、当該透析液供給装置2から供給された透析液をダイアライザ5(血液浄化器)に供給する監視装置1から成るので、セントラルシステムに適用することができる。また、透析液供給装置2と監視装置1とは双方向に通信可能とされたので、当該透析液供給装置2と監視装置1との間で種々情報を通信させることができ、より適切且つ安全な血液浄化治療を行わせることができる。
【0051】
以上、本実施形態に係る血液浄化システムついて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上記の如きセントラルシステムから成るものに代えて、図4に示すように、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置4を有して成るとともに、血液浄化手段は、水処理装置4から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、ダイアライザ5(血液浄化器)に供給する個人用透析装置20から成るものに適用してもよい。この場合、個人用透析装置20は、それぞれ透析液原液或いは消毒液を収容したタンクT1を具備するとともに、水処理装置4と配管L9で連結され、当該水処理装置4から送液された清浄水及びタンクT1内の透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し或いは希釈した消毒液を作製し得るようになっている。
【0052】
すなわち、図1で示される実施形態においては、監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2(溶解装置3及び水処理装置4を含む)にて供給手段を構成させているが、血液浄化手段がダイアライザ5(血液浄化器)を有し、タンクT1内の透析液原液から透析液を作製可能な個人用透析装置20から成る血液浄化システムとしてもよいのである。
【0053】
さらに、例えば上記の如きセントラルシステムから成るものに代えて、図5に示すように、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置4、及び該水処理装置4で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置3を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該溶解装置3及び水処理装置4から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、ダイアライザ5(血液浄化器)に供給する個人用透析装置21から成るものに適用してもよい。この場合、個人用透析装置21は、それぞれ消毒液を収容したタンクT2を具備するとともに、溶解装置3及び水処理装置4と配管L10、L11でそれぞれ連結され、当該溶解装置3及び水処理装置4から送液された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し或いは希釈した消毒液を作製し得るようになっている。
【0054】
すなわち、図1で示される実施形態においては、監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2(溶解装置3及び水処理装置4を含む)にて供給手段を構成させているが、血液浄化手段がダイアライザ5(血液浄化器)を有し、供給手段側から送液された透析液原液及び清浄水から透析液を作製可能な個人用透析装置21から成る血液浄化システムとしてもよいのである。
【0055】
また、本実施形態においては、監視装置1及び透析液供給装置2にそれぞれ複数の供給側中央処理装置、治療側中央処理装置(制御用中央処理装置11、14、監視用中央処理装置12、15)及び通信用中央処理装置10、13が形成されているが、溶解装置3や水処理装置4にも同様に、それぞれ複数の中央処理装置及び通信用中央処理装置を形成して、透析液供給装置2との間で情報の送受信を行わせるようにしてもよい。なお、本実施形態においては、血液透析治療を行うシステムとされているが、他の血液浄化治療を行う血液浄化システムに適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
供給手段に種々制御のための複数の供給側中央処理装置及び通信のための通信用中央処理装置を具備させるとともに、それぞれの血液浄化手段に供給側中央処理装置に対応した複数の治療側中央処理装置及び通信用中央処理装置を具備させた血液浄化システムであれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 監視装置(血液浄化手段)
2 透析液供給装置(供給手段)
3 溶解装置
4 水処理装置
5 ダイアライザ(血液浄化器)
6 血液回路
7 流量検出センサ
8 液圧検出センサ
9 電導度検出センサ
10 通信用中央処理装置
11 制御用中央処理装置(治療側中央処理装置)
12 監視用中央処理装置(治療側中央処理装置)
13 通信用中央処理装置
14 制御用中央処理装置(供給側中央処理装置)
15 監視用中央処理装置(供給側中央処理装置)
16 インターフェイス部
17 制御部
18 インターフェイス部
19 制御部
P1 複式ポンプ
P2 除水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、
該血液浄化手段のそれぞれに透析液、透析液原液、清浄水又は消毒液を供給可能な供給手段と、
を具備し、前記供給手段とそれぞれの血液浄化手段とは双方向に通信可能とされた血液浄化システムであって、
前記供給手段に種々制御のための複数の供給側中央処理装置及び通信のための通信用中央処理装置を具備させるとともに、それぞれの前記血液浄化手段に前記供給側中央処理装置に対応した複数の治療側中央処理装置及び通信用中央処理装置を具備させたことを特徴とする血液浄化システム。
【請求項2】
前記供給手段における通信用中央処理装置及びそれぞれの前記血液浄化手段における通信用中央処理装置は、対応する中央処理装置を識別可能なタグ付けをして情報を送信するとともに、受信した情報に付与されたタグに対応した供給側中央処理装置又は治療側中央処理装置の何れかにその情報を送信することを特徴とする請求項1記載の血液浄化システム。
【請求項3】
前記複数の供給側中央処理装置及び治療側中央処理装置は、それぞれ一対の制御用中央処理装置及び監視用中央処理装置から成るとともに、当該制御用中央処理装置の制御内容を前記監視用中央処理装置で監視可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化システム。
【請求項4】
前記供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を前記血液浄化器に供給する監視装置から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項5】
前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、前記水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項6】
前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−249745(P2012−249745A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123390(P2011−123390)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】