説明

血液細胞の保存

長期間貯蔵し保存し得る血小板懸濁液の保存のための方法および組成物を、本発明において提供する。該方法および組成物は、血小板および1種以上のクエン酸塩を含む混合物を使用する。そのような血小板混合物は、急速にまたは遅速冷却して、患者に使用する前に数日間保存し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本特許出願は、2003年8月4日に出願した米国仮特許出願第60/492,419号の権利を主張し、該米国仮特許出願は、その全体を本明細書に参考として取り入れる。
(技術背景)
血小板は、ヒト血液の主要成分の1つである。血液は、血漿、赤血球(エリトロサイト)、白血球(ロイコサイト)および血小板(トロンボサイト)から基本的に構成されている。血小板は、骨髄中で、巨核球と称される巨大細胞によって産生される。血小板は、実際には、真の細胞ではなく、膜および顆粒含有細胞質とのフラグメントであると一般に理解されている。さらに詳細には、血小板は、巨核球由来の外膜および細胞質を含み、巨核球は、顆粒、濃密体、濃密管状系およびミトコンドリアを含有している。
血小板が、血液凝固過程の不可欠成分であり、出血制御において活性な役割を奏することは周知である。血小板は、損傷血管の内皮細胞および基底膜内面に特異的に付着し、そこで、止血または凝固を誘発してそれらに関与する。さらに、炎症メディエイターは、この接触に応答して或いは損傷組織により放出されたメディエイターまたは他の血小板に応答して放出され得る。血小板によって放出される重要なメディエイターとしては、セロトニンおよび凝固因子がある。損傷血管または他の血管破損は、そのような付着を介して血小板によって修復され、そして、このタイプの損傷に対する確実な応答が、血小板凝集およびフィブリン形成即ち安定した凝固をもたらす血小板分泌によってさらに増幅される。
【0002】
血小板輸血は、低血小板数患者の臨床管理の重要な局面である。正常血小板数は、cu/ml当り約150,000〜約400,000個の範囲である。相対的に低い血小板数は、がん治療および他の理由に基づき得る。ある種の患者は止血のための輸血を必要とし、或いはこれらの患者の血小板は機能的に欠損している。血小板は、通常、上述したように損傷または血管破損部位において凝集し、他の血小板が増幅性の生物学的作用即ち凝固カスケード(他の生物学的作用を刺激する)において応答する多くのメディエイターを放出する。正常な循環性血小板は、円盤状形態を有する。刺激に応答して、円盤状物は、球形に膨潤し、最終的に破壊する点までさらに膨潤し得る。この観察される形状変化と同時に、血小板は種々のメディエイターを放出し、これらメディエイターの多くは、血小板内に含有されている顆粒により放出される。血小板の形態は、一般に、顕微鏡観察により判定し得る。これらの形態を維持する血小板の能力は、血小板を穏やかな低張条件に供し、膜が過剰水を排出するときの円盤状への戻りを追跡することによって試験し得る。この試験は、いわゆる低張ショック応答(HSR)であり、血小板の膨潤中にインタクトなままであり且つ血小板の水排出により機能する血小板膜の能力を確認する。もう1つの血小板機能試験は、血小板が刺激物に応答して膨潤するときの血小板形状の変化をモニターする。この試験は、いわゆる形状変化の度合(ESC)である。これらの方法は周知であり、これらの測度を判定する商業的な計器が存在している。
【0003】
血小板輸血剤の調製過程は、全血由来の生成物として血小板を分離することによって典型的に開始する。血漿中の濃縮血小板バッグは、アフェレーシスまたはフェレーシス(他の成分をドナーに戻しながらのドナープロセス中の遠心分離)により或いは全血からの重力後の選択的除去または血液細胞の遠心沈降により得ることができる。抗凝血剤中に集めた全血の遠心分離による調製は、赤血球を取り除きながら懸濁液中に血小板を残存させる遅速回転およびその後の血小板を血漿から沈殿させて減容量の血漿中への再懸濁を可能にする急速回転(血小板濃縮物を生成させる遅速/急速法)、或いは赤血球と血小板を沈降させる急速回転(血小板は赤血球上部のバフィコート中にある)並びにその後の一定量の血漿と一緒の上記バフィコート層の取出しおよび遅速回転を実施しての懸濁バフィコートからの残存赤血球の除去(バフィコート血小板を生成させる急速/遅速法)のいずれかにより得る。典型的には、クエン酸ナトリウムが血小板製剤を調製するのに使用する抗凝固剤であり、クエン酸塩の最終濃度は、血漿中の血小板生成物中で血漿中約15mMまでである。
血小板の生物学的活性を維持するのみならず血小板をその後の臨床使用において適切に保つ適切な条件で身体から分離後の血小板を保存することは、極めて重要である。骨髄から出た後の体内の血小板の平均寿命は8〜10日である。循環性血小板の平均予測寿命は4〜5日であり、これは、血小板集団全体における平均である。一方、血小板バッグにおいては、室温では5日を越えないで保存するという血小板保存のための現行基準および承認方法が存在する。この保存期間は、pH変化のような代謝作用、臨床使用性の喪失、並びに製剤を汚染し得る少量の細菌の増殖によるリスクによって限定されている。臨床医によっては、さらに厳しい基準を採用し、3日よりも長く保存した血小板の使用を拒否している。上記の比較的短い保存期間およびそのような保存期間中の細菌増殖のリスクは、現在の血小板保存法に関連する大きな欠点および問題点である。
【0004】
今日、ある種の懸濁液中血小板は、通常の冷蔵または凍結温度範囲内の低下温度でも保存されている。冷温は細菌増殖を抑制するように普通作用するものの、冷蔵庫温度での血小板は、活性化されるようになり、形状を変化させ、機能を喪失させることが知られており、輸血した場合循環により消失する。即ち、低温保存は、血小板を非機能性にして臨床上の使用性を殆ど有さないとみなされている。DMSOのような凍結防止剤の存在下での凍結温度における低温保存法のような、他の血小板保存方法も報告されている。この凍結方法は、漸次的に温度を低下させることを典型的に含み面倒である。低温保存からの血小板の回収もまた面倒であり、輸血において使用する前に、DMSOおよび/または他の成分の除去を必要とする。凍結自体の効果からの予測血小板回収率は比較的低く、収率は、その後の凍結防止剤または他の薬剤除去のための洗浄によってさらに低下する。満足し得る臨床使用は、そのような血小板保存方法においては未だ報告されていない。
本発明は、血小板を冷蔵庫温度に冷却し且つ多日間冷蔵庫温度で血小板を保存するための解決法および方法を提供する。これらの方法を使用して保存した血小板は、機能性および臨床的有用性を残したままである。
【0005】
(本発明の概要)
本発明は、血小板を、血小板機能および臨床使用性を保持しながら、長期間保存するための方法および解決法を開示する。本発明は、血小板とクエン酸塩を混合することにより血小板懸濁液を調製することを含む。さらなる保存料、とりわけ、炭水化物、グリセリンおよびポリビニルピロリドンも、上記懸濁液に添加し得る。
幾つかの実施態様においては、その後、上記懸濁液は、冷蔵庫温度に冷却し、これらの温度で長期間保存し得る。この冷却は、上記懸濁液を氷/水浴に入れる、上記懸濁液を冷蔵庫に入れる、また上記懸濁液を瞬間冷却するような種々の方法により達成し得る。好ましい実施態様においては、上記懸濁液の保存は、冷却速度に依存しない。その後、血小板は、温め得、使用または輸血に備える。
【0006】
(発明の詳細な説明)
本発明は、血小板保存のための改良された方法および解決法を開示する。本明細書において開示する方法は、血小板の機能および臨床使用性を保持しながら、血小板を保存し得る期間を延長させるのに使用し得る。本発明の1つの局面においては、保存すべき血小板をクエン酸塩と混合して混合物を調製する。血小板は、遠心分離およびアフェレーシスのような当該技術において公知の任意の方法によって得ることができる。血小板は、ヒトまたは他の動物種から得ることができる。
上記血小板混合物中のクエン酸塩濃度は、好ましくは約37.5mMである。他の実施態様においては、クエン酸塩濃度は、約15mM、約22.5mMまたは約52.5mMであり得る。それより高いまたは低いクエン酸塩濃度も使用し得る。クエン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウムのような任意のクエン酸塩を使用し得る。2種以上のクエン酸塩が混合物中に存在し得る。好ましくは、クエン酸塩混合物を使用する場合、クエン酸塩の約30%以上、約40%以上または約40%〜約80%が、クエン酸カリウムの形にある。
幾つかの実施態様においては、上記クエン酸塩は、クエン酸ナトリウムではない。他の実施態様においては、使用するクエン酸塩の濃度は、少なくとも15mMである。さらに他の実施態様においては、血小板を1種以上のクエン酸塩と混合し、冷温で保存し、保存は冷却速度に依存しない。
さらなる物質を、上記血小板混合物に、一緒にまたは任意の組合せで添加し得る。そのような物質は、グルコース、スクロースもしくはマンニトールのような炭水化物、または他の適合性炭水化物であり得る。炭水化物は、上記混合物の約0.5%〜約2%またはそれ以上を構成し得る。グリセリンのような他の添加物も上記混合物に添加し得る。使用するグリセリンの量は、上記混合物の約1%〜約2%の量であり得る。ポリビニルピロリドン(分子量 10,000〜40,000)も、好ましくは許容し得る粘度値までの量で、上記混合物中に添加し得る。好ましい実施態様においては、血小板は、約30mM〜約45mMのクエン酸塩、約0.25%〜約0.75%のグリセリン、および約0.5%〜約2.5%のポリビニルピロリドン(平均分子量 10,000〜12,000)を含有する溶液中に懸濁させる。
【0007】
上述の添加剤を含有しない、その全てをまたは任意の組合せを含有する血小板混合物は、該混合物を氷/水浴に入れる、該混合物を冷蔵庫の棚に置くまたは該混合物を瞬間冷却するような、種々の方法によって冷却し得る。上記混合物を瞬間冷却する1つの方法は、上記混合物を低温アルミニウム被覆バッグ中に注入することによる。
上記混合物の冷却は、秒当り約0.3℃の速度、分当り約1℃〜約2℃または分当り約0.2℃でさえ、或いはそれより遅くであり得る。幾つかの好ましい実施態様においては、上記血小板混合物の保存は、冷却速度には依存しない。
本明細書において説明する混合物は、冷蔵庫温度で冷却し得る。冷蔵庫温度は、好ましくは約2℃〜約5℃であるが、約0℃〜約7℃の温度も含み得る。
一旦冷却すると、血小板は、所望する長期間において冷蔵庫に保存し得る。保存時間は、5日間、7日間、10日間またはそれより長期であり得る。使用において必要な場合、血小板は、約20℃以上、約22℃以上、約37℃、または約47℃の温度に温め得る。その後、血小板は、使用または輸注し得る。
本発明の幾つかの実施態様の利点は、インタクトな生存血小板を計数し、これを冷却前の血小板数と比較して、インタクトで回収し且つ破壊または他の結果により喪失しなかった血小板のパーセント割合を得ることによって実証し得る。
血小板は、例えば、顕微鏡観察によって円盤形態を維持しているかについて評価して、球形に変化したまたはバルーン状に膨潤した血小板と比較した円盤形のままである血小板の割合を確認し得る。血小板の機能および生存力は、低調条件に応答する膜機能(HSR)および作用薬に対する応答においての形状変化(ESC)の分析により評価し得る。血小板が十分に堅固で且つ機能性である場合、血小板は、正常な生理条件下で、例えば、輸血後に、球形から円盤形へ修復し、機能性を増大し得る。
好ましくは、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%またはそれ以上の血小板を血小板懸濁液から回収する。さらに、好ましくは少なくとも約10%、約20%、約30%、約50%またはそれ以上の血小板は、本発明の方法および解決法を使用する低温保存において、少なくとも約2日間、約3日間、約5日間、約7日間、約10日間、好ましくはそれ以上に亘って、その円盤形態および機能を維持する。好ましくは、血小板の実質的割合が、機能性であり、生存しているとみなされる。円盤形態および機能は、本発明の方法および解決法を使用する低温保存において、好ましくは、約2日間、約3日間、約5日間、約7日間、約10日間、さらに、それ以上の期間維持される。好ましくは、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%またはそれ以上の血小板は、本発明の方法および解決法を使用する低温保存において、少なくとも約2日間、約3日間、約5日間、約7日間、約10日間、好ましくはさらにそれ以上の期間、円盤形態および機能を維持する。
【0008】
1つの実施態様においては、アフェレーシスによって得られた約30mlの血小板濃縮物を、約60mMのクエン酸カリウムと2.4%のグルコースからなり、約7.2のpHを有する等容量の溶液と混合する。該懸濁液を、氷/水浴内で約0.3℃/秒にて、或いは懸濁液バッグを冷却が約1℃/分〜約2℃/分の速度にある冷蔵庫の棚上に置くことによって冷却する。もう1つの実施態様においては、上記懸濁液は、約4℃に本質的に瞬間冷却する低温アルミニウム被覆バッグに上記懸濁液を注入することによって急速に冷却する。バッグは、冷蔵庫で約5日間保存し、その後、37℃の浴槽内で温め得る。この方法を使用し保存した血小板は、HSRにより測定したときにその機能の約25%〜約50%を、また、約2℃で保存し約37℃に温めた後ESCにより測定したときにその機能の約10%〜約25%を保持していた。
もう1つの実施態様においては、アフェレーシスによって得られた等容量の血小板濃縮物を、約60mMのクエン酸カリウムと約1%のグリセリンからなる等容量の溶液と、または等容量の約60mMのクエン酸カリウム、約1%のグリセリンおよび約3.4%のポリビニルピロリドン(平均分子量10,000)と混合する。バッグを上述したように処理し、保存する。この方法で保存した血小板は、正常な円盤形態の指標である渦流活動を示していた。
また、血小板は全血から通常の遠心分離法により調製し得、得られた血漿中血小板懸濁液を、約60mMのクエン酸カリウムと1%グリセリンからなる等容量の溶液と混合する。懸濁液を、冷蔵庫温度に冷却し、約10日間保存する。懸濁液は、約0℃〜約7℃、好ましくは約2℃〜約5℃に冷却し得る。約10日間の保存後、懸濁液は、約22℃〜約37℃に温め得る。約10日間の低温保存後、この方法によって保存した血小板は、約6%〜約13%の正常円盤形態、21のHSR、1のESC、および検出可能な渦流を示していた。即ち、本発明の方法を使用して、血小板は、約10日間またはそれ以上の長期で保存し得る。
本明細書において開示する方法は、PCT特許出願PCTUS02/20878号に記載された方法および組成物と組合せて使用し得る。
【0009】
以下の非限定的な例は、本発明の幾つかの好ましい実施態様の実証を意図する。当業者であれば、他の代替的な実施態様を実施して本明細書で説明するような本発明の効果および利益を達成し得ることを容易に認識し得ると理解すべきである。
(実施例)
クエン酸カリウムを含む血小板の保存
以下の条件を試験した:参照としての2.4%のグルコースと一緒の60mMのクエン酸カリウム添加剤、グルコースの代りの種々の濃度の保護剤としてのグリセリン、クエン酸カリウムと一緒の添加剤としてPVP、およびグリセリンとPVPの混合物を使用した。バッグ11〜15は、2℃の冷蔵庫内で5日間保存した。


【0010】
クエン酸カリウム(60mM)/2.4%グルコース
60mM クエン酸カリウム:3.89gのクエン酸カリウム(一水和物)を190mlの脱イオン(d.i.)水に添加し、200mlに適量する。
60mMクエン酸:0.252gのクエン酸(一水和物)を19mlの脱イオン水に添加し、20mlに適量する。
198mlの60mMクエン酸カリウムに、4.8gのグルコースを添加し、溶解する。
60mMクエン酸を60mMクエン酸カリウムに添加することにより(約2ml)、pH 7.2に滴定する。
クエン酸カリウム(60mM)/1%グリセリン
60mM クエン酸カリウム:上述したような原溶液を使用する。
60mM クエン酸:上述したような原溶液を使用する。
98mlの60mM クエン酸カリウムに1gのグリセリンを添加し、混合する。
60mM クエン酸を60mM クエン酸カリウムに添加することにより(約1g)、pH 7.3に滴定する。
クエン酸カリウム(45mM)/2%グリセリン
45mM クエン酸カリウム:2.92gのクエン酸カリウム(一水和物)を195mlの脱イオン水に添加し、200mlに適量する。
45mM クエン酸:6.0mlの上記60mM クエン酸を用い、2.0mlの脱イオン水を添加し、混合する。
97mlの45mM クエン酸カリウムに、2.0gグリセリンを添加し、混合する。
45mMクエン酸でpH 7.3に滴定する。
【0011】
クエン酸カリウム(45mM)/1%グリセリン/3.4%PVP
45mM クエン酸カリウム:上記で製造したようにして使用する。
45mM クエン酸:上記で製造したようにして使用する。
98mlの45mM クエン酸カリウムに、1.0gのグリセリンと3.4gのPVP-10を添加し、混合する。
溶液はpH 7.1であり、45mMクエン酸での滴定は必要でなかった。
クエン酸カリウム(60mM)/1%グリセリン/3.4%PVP
60mM クエン酸カリウム:上記で製造したようにして使用する。
60mM クエン酸:上記で製造したようにして使用する。
95mlの60mMクエン酸カリウムに、1.0gのグリセリンと3.4gのPVP-10を添加し、混合する。
溶液はpH 7.2であり、60mMクエン酸での滴定は必要でなかった。
各溶液のpHおよび浸透圧は、下記のとおりである。


【0012】
APCを、ガンブロ(Gambro)セパレータによって集め、搖動機上で室温にて1夜静置した。35mlのACD-Aを含有する総容量257ml。
血小板数は0.91×106/μlであり、ESC = 22.8、HSR = 90.0、渦流 = 10であった。
バッグは、上述したように調製し取扱った。添加剤は、添加したときは室温であった。バッグを、2℃で5日間、冷蔵庫内の棚上で静置して保存した。バッグを冷蔵庫から取出したとき、各バックを渦流について点数付けした。バッグを37℃の水浴に5分間置き、その後、37℃のインキュベーター中に37℃で合計90分間置いた。
渦流を0〜10の尺度で点数付けた:0 = 渦流なし、10 = 優れている。


【0013】
ESCおよびHSRをChrono-Log SPA 2000で測定した。


ESCおよびHSRを、バッグを冷蔵庫から取出したときと、90分の37℃インキュベーション後の再度採取したサンプルにおいて測定した。


本試験においては、対照血小板は、室温での保存中劣化した。興味あることに、37℃でのインキュベーション後よりも前の方で、より渦流性のようであるが、渦流は添加剤中のPVPにおいて最大であった(バッグ14および15)。ESCは参照試験添加剤においては低かったが、この場合も、ESCはグリセリンの存在により改善されていた(バッグ12、13、14および15)。PVPは、渦流を除いて差異はないようであった。
【0014】
試薬供給元
クエン酸、一水和物、Sigma C7129、ロット48F-0111
グリセリン、グリセリン米国薬局方、Bergen Brunswig社、NDC 24385-033-94
グルコース、Sigma G5767、ロット121K08902
クエン酸カリウム、Sigma P1722、ロット90K08241
ポリビニルピロリドン、Sigma PVP-10、ロット102K0153
ガンブロ(Gambro)からのACD-A
デキストロース一水和物 2.45g/100ml(ラベル当り)
クエン酸ナトリウム二水和物 2.2g/100ml
無水クエン酸 0.73g/100ml
クエン酸塩濃度の計算
クエン酸ナトリウム 22.0/294.1 = 74.8mM
クエン酸 7.3/192.1 = 38.0mM
合計 112.8mM
APC中で、43×112.8/300 = APC中16.2mMのクエン酸塩
【0015】
クエン酸カリウム/2.4%グルコース添加剤を使用しての試験
5通りの試験を、60mM クエン酸塩と2.4%グルコースをpH7.1〜7.2、310mOsm/Lで含有するクエン酸カリウム添加剤を使用して実施した。この添加剤を等容量の血小板濃縮物に添加して、この添加剤からの30mM クエン酸塩と1.2%グルコースの最終分布を与えた。血小板濃縮物は約15mM クエン酸塩であるので、保存中の最終クエン酸塩濃度は、約37.5mMである。
下記の表から理解し得るように、この添加剤は、血小板を2℃で5日間保存し且つ室温で5日間保存した対照血小板のHSR活性の約50%およびESC活性の25%でもって回収するのを可能にする。
急速冷却は、バッグを氷/水浴中で振回して約0.3℃/秒の全体的速度を達成することによって実施した。遅速冷却は、冷蔵庫内の棚に置くことにより実施し、約1℃〜2℃/分であった。超急速冷却は、血小板懸濁液を低温アルミニウム被覆バッグ中に走行させることによって実施し、このバッグにより、血小板懸濁液を4℃前後に瞬間的に冷却させた。






【0016】
表1:室温(RT)対照血小板に対する低温保存血小板のHSR比較

【0017】
表2:室温(RT)対照血小板に対する低温保存血小板のESC比較

【0018】
本発明をその特定の実施態様に関連して説明してきたが、本発明はさらなる変更が可能であることを理解されたい。本出願は、本発明の原理に一般的に従い、さらに本発明が関連する技術の公知または慣例的実施の範囲内であり且つ上述の本質的な特徴に当てはまり得るような展開事項を含む本発明のあらゆる変更、使用または適応化に及ぶものとする。

特許、特許明細書および刊行物を含む本明細書において引用した全ての参考文献は、既に詳細に合体させているまたは合体させていないの如何にかかわらず、その全体を参照として本明細書に合体させる。
現在のところ本発明を十分に説明しており、当業者であれば、本発明は、本発明の精神および範囲を逸脱することなくまた不必要な実験を行なうことなく、広範囲の等価のパラメーター、濃度および条件において実施し得ることを認識されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物を調製することを含み、該混合物が血小板とクエン酸塩を含み、該クエン酸塩が少なくとも約15mMの濃度で存在することを特徴とする、血小板の保存方法。
【請求項2】
前記混合物を冷却することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
混合物を調製することを含み、該混合物が血小板とクエン酸塩を含み、該クエン酸塩がクエン酸ナトリウムではないことを特徴とする、血小板の保存方法。
【請求項4】
前記混合物を冷却することをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
血小板とクエン酸塩を含む混合物を調製すること、および該混合物を冷却することを含む血小板の保存方法であって、該血小板の保存が前記混合物の冷却速度には依存しないことを特徴とする、血小板の保存方法。
【請求項6】
前記冷却を、前記混合物を冷蔵するかまたは前記混合物を氷/水浴に入れることにより実施する、請求項2、4または5記載の方法。
【請求項7】
前記冷却を、前記混合物を瞬間冷却することによって実施する、請求項2、4または5記載の方法。
【請求項8】
前記瞬間冷却を、前記混合物をアルミニウム被覆バッグに入れることにより実施する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記混合物を約2℃〜約5℃で冷却する、請求項2、4または5記載の方法。
【請求項10】
前記冷却を、秒当り約0.3℃、分当り約1℃〜約2℃または分当り約0.2℃の速度で実施する、請求項2、4または5記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を、約5日間、約7日間または約10日間冷却する、請求項2、4または5記載の方法。
【請求項12】
前記血小板を、アフェレーシスにより、または遠心分離法により取得する、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項13】
前記クエン酸塩が、ナトリウム塩である、請求項1または5記載の方法。
【請求項14】
前記クエン酸塩が、カリウム塩である、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項15】
第1クエン酸塩と第2クエン酸塩を使用する、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項16】
前記第1クエン酸塩が、カリウム塩である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記カリウム塩が、前記混合物の約30%〜約80%の濃度で存在する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記クエン酸塩が、前記混合物の約20mM〜約25mMの濃度で存在する、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項19】
前記クエン酸塩が、前記混合物の約35mM〜約40mMの濃度で存在する、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項20】
前記クエン酸塩が、前記混合物の約50mM〜約55mMの濃度で存在する、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項21】
前記混合物が、炭水化物をさらに含む、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項22】
前記炭水化物が、グルコース、スクロース、マンニトールまたはこれらの混合物である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記炭水化物が、前記混合物の約0.5%〜約2%の濃度で存在する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記混合物が、グリセリンをさらに含む、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項25】
前記グリセリンが、前記混合物の約1%〜約2%の濃度で存在する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が、ポリビニルピロリドンをさらに含む、請求項1、3または5記載の方法。
【請求項27】
前記混合物が、ポリビニルピロリドンをさらに含む、請求項24記載の方法。

【公表番号】特表2007−501255(P2007−501255A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522729(P2006−522729)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/025344
【国際公開番号】WO2005/013689
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501177104)ヒューマン バイオシステムズ (2)
【Fターム(参考)】