説明

血液脳関門破綻抑制剤

本発明の目的は、血液脳関門破綻抑制剤を提供することである。本発明によれば、下記式(I):


(式中、Rは、水素原子、アリール基、アルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同してアルキレン基を表し;Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又はアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキルメルカプト基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、血液脳関門破綻抑制剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む血液脳関門破綻抑制剤に関する。
【背景技術】
血液脳関門(blood−brain barrier)とは、血液から脳組織内への物質の移行を制限する関門であり、これにより脳は有害物質から保護されている。ニコチン、カフェイン又はヘロインなどの脂溶性物質は血液脳関門を容易に通過できるが、極性物質又は強電解質などの非脂溶性物質は一般に血液脳関門を通過しにくい。一方、脳の代謝に必要なD−グルコース等の水溶性物質はキャリアーによって血液脳関門を透過して脳組織へ運ばれることが知られている。脳毛細血管においては、隣接する内皮細胞同士がタイト・ジャンクションと呼ばれる緊密な結合を形成し、細胞間の隙間から漏出しないようになっており、そのため、脳内に出入りする物質は原則として脳毛細血管内皮細胞を通過しなくてはならないとされている。上記のように、脳毛細血管内皮細胞は、脳への栄養物質だけでなく細胞膜に発現している種々の輸送系によって薬物を脳内へ輸送する。
多発性硬化症、髄膜炎、脳炎または脳膿瘍などの中枢神経系の炎症性疾患では血液脳関門が破綻しており、髄液中に存在する炎症性サイトカインであるTNF−αやIL−1βが高値を示すことが報告されている(S.L.Hauser,et al.,Cytokine accumulation in CSF of multiple sclerosis patients:frequent detection of interleukin−1 and tumor necrosis factor but not interleukin−6.Neurology,40:1735−1739(1990))。
一方、下記式(I):

(式中、Rは水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、Rは、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報を参照)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報を参照)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報を参照)、及び血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報を参照)等が知られている。
また、上記式(I)の化合物のうち、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを有効成分とする製剤は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている。この「エダラボン」は、活性酸素に対して高い反応性を有することが報告されている(Kawai,H.,et al.,J.Phamacol.Exp.Ther.,281(2),921,1997、及びWu,TW.et al.,Life Sci,67(19),2387,2000を参照)。このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリーラジカルを消去することで、細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルスカベンジャーである。しかしながら、これまでエダラボンが血液脳関門の破綻を抑制できるか否かの検討については全く報告がない。
【発明の開示】
本発明の課題は、血液脳関門破綻抑制剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として、インビトロおよびインビボの系を用いて、式(I)で示されるピラゾロン誘導体が血液脳関門破綻を抑制する効果について検討した。その結果、上記ピラゾロン誘導体の投与により、血液脳関門の破綻を抑制し、中枢神経系の炎症性疾患の患者の神経症状を緩和できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、下記式(I):

(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、血液脳関門破綻抑制剤が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、血液脳関門の透過性の増大を抑制する作用を有する血液脳関門破綻抑制剤、並びに、髄液中における炎症性サイトカインの量の増大を抑制する作用を有する血液脳関門破綻抑制剤が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。
本発明の別の側面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎又は脳膿瘍の予防及び/又は治療のための医薬が提供される。好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである。
本発明のさらに別の局面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、血液脳関門破綻を抑制する方法;並びに、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量をヒトを含む補乳動物に投与する工程を含む、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎又は脳膿瘍を予防及び/又は治療する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、血液脳関門破綻抑制剤の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用;並びに、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎又は脳膿瘍の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、血液脳関門共培養モデルの概要(左の図)、並びに、作製した共培養モデルにおけるフルオレッセインナトリウム拡散速度とTEER(Transcellar endothelial electrical resistance)との相関(右の図)を示す。図1において、PSendoは内皮細胞層におけるフルオレセインの透過クリアランスを示す。トランスウェルのapical側(内皮細胞の側)のメディウム中にフルオレセインを添加して、basolateral側(アストロサイトの側)のメディウムへのフルオレセインの透過を観測している。一定時間までにbasolateral側に透過したフルオレセイン量を、apical側メディウム中フルオレセイン濃度で割った値である。実験上は内皮細胞層+トランスウェルのフィルター+アストロサイトの各層を合わせたトータルの透過クリアランス(PStotal)が測定されるため、トランスウェルのフィルターにアストロサイトだけを培養した場合の透過クリアランス(PSastro+filter)も同時に用いて補正している。補正式:1/PStotal=1/PSendo+1/PSastro+filter。
図2は、TEERに対するTNFα(tumor necrosis factor alfa)およびIL1β(interleukin−1 beta)の影響を調べた結果を示す。
図3は、TEERに対するNF−κB(nuclear factor−κB)阻害薬およびiNOS(inducible nitric oxide synthase)阻害薬の効果を示す。α−MSHはalfa melanocyte−stimulating hormoneを示す。
図4は、NO産生量に対するNF−κB阻害薬およびiNOS阻害薬の効果を示す。
図5は、TEERに対するエダラボンの効果を示す。
図6は、EAEラットにおけるTNFαとIL−1βの量並びにBBB透過性を調べた結果を示す。
図7は、EAEラットにおけるTNFαとIL−1βの量並びにBBB透過性に対するエダラボンの効果を示す。CSFは脳脊髄液を示す。
図8は、EAEモデルラットにおいて薬剤を投与しない群(コントロール)、デキサメタゾンを投与した群、及びエダラボンを投与した群について、肢神経麻痺スコアを評価した結果を示す。i.p.は腹腔内投与を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明による血液脳関門破綻抑制剤、並びに多発性硬化症、髄膜炎、脳炎又は脳膿瘍の予防及び/又は治療のための医薬(以下、本発明の薬剤とも称する)は、本明細書に定義する式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含む。
本発明で用いる式(I)で示される化合物は、互変異性により、以下の式(I’)又は(I”)で示される構造をもとりうる。本明細書の式(I)には、便宜上、互変異性体のうちの1つを示したが、当業者には下記の互変異性体の存在は自明である。本発明の医薬の有効成分としては、下記の式(I’)又は(I”)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。

式(I)において、Rの定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
、R及びRの定義における炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
及びRの定義における炭素数3〜5のアルキレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、メチルトリメチレン基、エチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基、メチルテトラメチレン基等が挙げられる。
及びRの定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。Rの定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
本発明の薬剤の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
本発明の薬剤の有効成分としては、式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
本発明の薬剤の有効成分としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の医薬の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
本発明の薬剤の投与量は特に限定されないが、通常は、有効成分である式(I)で示される化合物の重量として一般に経口投与の場合には一日あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5〜50mg/kg体重、であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2〜3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
本発明の薬剤としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をそのまま投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記の物質と薬理学的及び製剤学的に許容される添加物を含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。
薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。
経口投与に適する医薬組成物には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
注射あるいは点滴用に適する医薬組成物には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の添加物を用いることができる。
本発明の薬剤の形態は特に限定されず、当業者に利用可能な種々の形態をとることができる。経口投与に適する薬剤として、例えば、固体の製剤用添加物を用いて錠剤、散剤、顆粒剤、硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、又はトローチ剤などを調製することができ、液状の製剤用添加物を用いてシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤などを調製することができる。また、非経口投与に適する医薬として、注射剤、点滴剤、吸入剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを調製することができる。なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明の医薬において上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明の薬剤は、中枢神経系の炎症性疾患における血液脳関門の破綻を抑制するのに有効である。中枢神経系の炎症性疾患としては、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎および脳膿瘍などが挙げられ、特に好ましくは多発性硬化症および髄膜炎である。本発明の薬剤は好ましくは、血液脳関門の透過性の増大を抑制する作用、並びに髄液中における炎症性サイトカイン(TNF−αまたはIL−1β等)の量の増大を抑制する作用を発揮することができる。
本発明の薬剤の投与経路は特に限定されず、経口的又は非経口的に投与することができる。非経口投与の投与経路も特に限定されず、静脈内、筋肉内、皮内、皮下に注射投与することができる。
また、本発明の薬剤は、血液脳関門の破綻に先立って予防的に投与しておくことができる。また、血液脳関門の破綻を起こした患者に対しては、症状の悪化の防止ないしは症状の軽減などを目的として、本発明の薬剤を該患者に投与することができる。
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
合成例:3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(以下、エダラボンと称す)の合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0g及びフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5〜128.5℃
実施例1:血液脳関門共培養モデルを用いたエダラボンの血液脳関門破綻抑制作用の評価
(1)血液脳関門共培養モデルの作製
血液脳関門共培養モデルは既報の方法で作製した(Eur.J.Pharm.Sci.,12:215−222,2001)。具体的には、脳微小毛細血管内皮細胞とラットアストロサイトを単離し、Transwell TMフィルターの両面に培養させて共培養モデルを作製した。以下、その方法を説明する。
脳毛細血管をウシ脳から単離した。髄膜および白質を除去し、灰白質を10%胎児ウシ血清を添加したDMEM(DMEM+S)に回収した。血管断片をWheatonホモジナイザーを用いて手動ホモジナイズにより調製し、150μmのナイロンメッシュ上に捕捉した。血管を、DMEM+S中においてコラゲナーゼ、トリプシン及びDNAseIで37℃で1時間消化し、200μmのナイロンメッシュで濾過した。脳毛細血管画分は、凍結混合物(10%DMSOを含む胎児ウシ血清(FCS))中に再懸濁し、−80℃で保存した。
アストロサイトは新生Wisterラット(Harlan,Zeist,The Netherlands)から単離した。単離した皮質を断片化し、DMEM中トリプシン−EDTAとともに37℃でインキュベートした。懸濁物を120及び45μmのナイロンメッシュでそれぞれ濾過し、プラスチック組織培養フラスコ(Greiner,Alphen a/d Rijn,The Netherlands)中でDMEM+S中で37℃10%CO下で3日間培養した。その後、培地は2日毎に交換した。コンフルエントの時点で、培養物は1:3の分割比でポリ−D−リジン被覆フラスコにトリプシン−EDTAを用いて継代し、再度コンフルエントまで生育させた。次いで、アストロサイト馴化培地を1日おきに2週間回収し、液体窒素中にて凍結混合物中に保存した。
脳毛細血管を、IV型コラーゲン及びフィブロネクチンを被覆したプラスチック組織培養フラスコに播種し、4時間接着させた。その後、培地を増殖培地(50%(v/v)アストロサイト馴化培地および125μg/mlヘパリンを加えたDMEM+S)に交換し、成長する細胞(主として脳毛細血管内皮細胞、若干の周皮細胞)を37℃で10%CO下で培養した。
インビトロ血液脳関門モデルは、IV型コラーゲン被覆Transwellポリカーボネートフィルター(表面積0.33cm;孔径0.4μm;Corning Costar,Cambridge,MA,USA)上に調製した。約70%コンフルント(脳毛細血管の播種の4又は5日後)の時点で、脳毛細血管内皮細胞をトリプシン−EDTAで約1分間処理し、周皮細胞は下層に付着させたままにした。アストロサイトを45,000細胞/フィルターの密度でフィルターの底に播種することによって、脳毛細血管内皮細胞およびアストロサイトの共培養物を調製した。アストロサイトをフィルターの底に10分間接着させ、その2又は3日後に脳毛細血管内皮細胞を継代した。脳毛細血管内皮細胞は30,000細胞/フィルターの密度で播種した。脳毛細血管内皮細胞とアストロサイトの共培養物を、最初の2又は3日間は125μg/mlのヘパリンを補充したDMEM+Sで、そして最後の2又は3日間はDMEM+S又は分化培地(即ち、5μg/mlのアポトランスフェリン、8μg/mlのプトレッシン、2.5μg/mlの亜セレン酸ナトリウム、312.5μMの8−(4−クロロフェニルチオ(CPT))−cAMP、17.5μMのRO−20−1724、及び1μMの全トランス型レチノイン酸を補充したDMEM+S)で緊密な単層になるまで培養した。脳毛細血管内皮細胞の単層も同様に培養したが、50%(v/v)アストロサイト馴化培地を培地に添加した。
作製した共培養モデルの概要を図1の左図に示す。作製した共培養モデルにおけるフルオレッセインナトリウム拡散速度とTEER(Transcellar endothelial electrical resistance)との相関を図1の右図に示す。TEERはミリポア社ミリセル−ERS(カタログ番号:MERS00001)で測定した。
(2)TEERに対するTNFαおよびIL1βの影響
上記の血液脳関門共培養モデルを用いて、細胞に、TNFα(50ng/mL)および/またはIL−1β(5ng/mL)を加え、透過性をTEERとしてミリポア社ミリセル−ERS(カタログ番号:MERS00001)で測定した。TNFαおよびIL−1βはTranswellTMフィルターのBBB共培養モデルの基底外側に添加した。結果(n=3、平均±SEM、*P<0.05)を図2に示す。図2の結果から分かるように、TNFα(50ng/mL)および/またはIL1β(5ng/mL)を加えることにより、TEERは有意に減少した。
(3)NF−κB阻害薬、iNOS阻害薬及びエダラボンによるTEER減少からの回復
細胞に、NF−κB阻害薬であるBAY11−7082(CALBIOCHEM社)(10μM)又はα−MSH(Sigma社)(1μM)、iNOS阻害薬である1400W(CALBIOCHEM社)(0.5nM)又はエダラボン(10μM)の存在下において、TNFα(50ng/mL)および/またはIL1β(5ng/mL)を加え、透過性をTEERとしてミリポア社ミリセル−ERS(カタログ番号:MERS00001)で測定した。また、培養液中のNOをグリース法で測定した。
結果(各実験について、n=3、平均±SEM、*P<0.05)を図3から図5に示す。図3は、TEERに対するNF−κB阻害薬およびiNOS阻害薬の効果を示す。図4は、NO産生量に対するNF−κB阻害薬およびiNOS阻害薬の効果を示す。図5は、TEERに対するエダラボンの効果を示す。図3〜図5の結果から分かるように、NF−κB阻害薬、iNOS阻害薬又はエダラボンを添加することにより、TNFαまたはIL1βによるTEER減少を回復させることができた。
実施例2:実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルを用いたエダラボンの血液脳関門破綻抑制作用の評価
EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)モデルラットを既存の方法に従い作製した(Int.J.immunopharmacol,7:497−503,1995)。先ず、等量のモルモット脊髄、無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び不完全フロイントアジュバンドから成る脳炎誘発性エマルジョンを調製し、10mg/mlのMycobacterium tuberculosisH37Ra(Difco Laboratories)を補充した。これを、各ラット(近交系雄Lewisラット、体重200〜250g)の両後肢足蹠に皮下投与により0.1mlずつ接種することにより、EAEモデルラットを作製した。対照ラットには、脊髄なしのエマルジョンを接種した。
対照ラットおよびEAEモデルラットについてエダラボンを投与した場合と投与しない場合について、血漿および髄液中のTNFα及びIL−1Βの濃度、髄液/血漿タンパク質比、並びに血液脳関門透過性(20分目におけるフルオレセインナトリウム静注の脳/血漿濃度(Kp,app)を測定した。Kp,appはapparent distribution ratioを示し、フルオレセイン静脈内投与後の脳組織中濃度を血漿中濃度で割った値(×100により%表示)である。なお、脳組識の比重は1として換算している(濃度の単位が/g組織重量のため)。エダラボンの投与量は3mg/kg/日(腹腔内投与)とし、感作(抗原溶液の投与)10日後から24時間おきに3日間(=感作10日後、11日後、12日後の3回)投与した。結果(各実験について、n=3、平均±SEM、*P<0.05)を図6および図7に示す。
図6および図7の結果から分かるように、EAEモデルラットでは対照ラットと比較して、髄液中のTNFα及びIL−1Βの濃度が上昇し、髄液/血漿タンパク質比が上昇し、また血液脳関門透過性(フルオレセインナトリウム静注脳/血漿濃度)も上昇した。しかし、図7の結果から分かるように、これらの作用は、エダラボンの投与により抑制されることが実証された。
また、EAEモデルラットにおいて薬剤を投与しない群(コントロール)、デキサメタゾン(1mg/kg/日、腹腔内投与)を投与した群、及びエダラボン(3mg/kg/日、腹腔内投与)を投与した群について、肢神経麻痺スコアを評価した。肢神経麻痺スコアは、以下の基準で評価した。

評価の結果(各実験について、n=3、平均±SEM、*P<0.05)を図8に示す。図8の結果から分かるように、EAEモデルラットにおける肢神経麻痺スコアは、エダラボンの投与によりデキサメタゾンの投与の場合と同様に回復した。
上記した実施例1および実施例2の結果から、エダラボンは血液脳関門システムを保護して、多発性硬化症モデルでの神経症状を保護できることが実証された。
【産業上の利用可能性】
本発明の薬剤は、中枢神経系の炎症性疾患における血液脳関門破綻を抑制するために有用である。
本出願が主張する優先権の基礎となる出願である特願2003−004813の明細書に記載の内容は全て、本明細書の開示の一部として本明細書中に引用により取り込むものとする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):

(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、血液脳関門破綻抑制剤。
【請求項2】
血液脳関門の透過性の増大を抑制する作用を有する、請求項1に記載の血液脳関門破綻抑制剤。
【請求項3】
髄液中における炎症性サイトカインの量の増大を抑制する作用を有する、請求項1又は2に記載の血液脳関門破綻抑制剤。
【請求項4】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項1から3の何れかに記載の血液脳関門破綻抑制剤。
【請求項5】
下記式(I):

(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎又は脳膿瘍の予防及び/又は治療のための医薬。
【請求項6】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
下記式(I):

(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、血液脳関門破綻を抑制する方法。
【請求項8】
血液脳関門の透過性の増大を抑制することにより血液脳関門破綻を抑制する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
髄液中における炎症性サイトカインの量の増大を抑制することにより血液脳関門破綻を抑制する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項7から9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
下記式(I):

(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎又は脳膿瘍を予防及び/又は治療する方法。
【請求項12】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
血液脳関門破綻抑制剤の製造のための、下記式(I):

(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用。
【請求項14】
血液脳関門破綻抑制剤が、血液脳関門の透過性の増大を抑制する作用を有するものである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
血液脳関門破綻抑制剤が、髄液中における炎症性サイトカインの量の増大を抑制する作用を有するものである、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項13から15の何れかに記載の使用。
【請求項17】
多発性硬化症、髄膜炎、脳炎又は脳膿瘍の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための、下記式(I):

(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用。
【請求項18】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項17に記載の使用。

【国際公開番号】WO2004/063167
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507671(P2005−507671)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000105
【国際出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】