説明

血液試料中の特定成分の濃度測定方法および装置

【課題】血液試料に含まれる赤血球に起因する測定誤差を適切に補正することができるようにする。
【解決手段】血液試料を移動させるための流路24を有する分析用具2を用いて血液試料中の特定成分を測定する方法であって、ヘマトクリット値に相関させたヘマトクリット情報を取得する第1ステップと、ヘマトクリット情報を反映させて、血液試料の特定成分の濃度を演算する第2ステップと、を含む濃度測定方法において、第1ステップでは、血液試料が流路2を満たす速度に基づいて、ヘマトクリット情報を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液試料に含まれる特定成分(たとえばグルコース、コレステロールあるいは乳酸)の濃度を、血液試料のヘマトクリット値の影響を抑制しつつ測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中におけるグルコース濃度など生体情報を知ることは、種々の疾患の発見・治療に重要である。血液中の生体情報を得る方法としては、バイオセンサなどの分析用具を用いる方法がある。この方法は、分析用具に設けられた反応試薬層に血液試料を供給して試薬と反応させ、そのときの反応生成物に基づいて血液試料における特定成分の濃度に応じた情報を、光学的手法あるいは電気化学的手法を利用して検出するものである。このような方法においては、血液試料として血球を含む全血などを用いる場合には、測定結果がヘマトクリット値(全血液に対して赤血球が占める容積比率(%))による影響を受けるため、正確な測定は困難である。そのため、ヘマトクリット値の影響量を把握した上で、この影響量に基づいて測定結果を補正する方法が提案されている。
【0003】
その一例として、光学的手法を利用した濃度測定において、ヘマトクリット値を赤血球の色素の赤色濃度に相関させて把握する方法がある(たとえば特許文献1参照)。この方法では、500〜590nmの波長範囲で赤色濃度を測定する一方で、ヘマトクリット値と赤色濃度との関係を示す検量線からヘマトクリット値が決定される。
【0004】
光学的手法を利用した濃度測定における他の例としては、約700nmの波長の光を用いて赤血球に基づくバックグラウンド吸収を補正する方法もある(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
一方、電気化学的手法を利用した濃度測定においては、高周波にてインピーダンスを測定することでヘマトクリット値を算出した上で補正を行なう方法がある(たとえば特許文献3参照)
【0006】
しかしながら、赤色濃度によりヘマトクリット値を算出する方法では、赤色濃度が赤血球の酸化・還元状態の影響を受けるためにヘマトクリット値を正確に測定するのは困難である。すなわち、検量線は一義的に定められた条件(酸化・還元状態)において決定されたものであるのに対して、実際の赤血球の酸化・還元状態は測定に供される血液試料毎に異なるものである。そのため、検量線を用いて赤色濃度からヘマトクリット値を算出する方法では、ヘマトクリット値を正確に測定できず、ヘマトクリット値に起因する測定誤差を適切に補正するのは困難である。
【0007】
また、約700nmの波長の光を用いてバックグラウンド吸収を補正する方法では、赤血球の吸収ピーク(500〜590nm)から大きく離れた波長の光を用いてヘマトクリット値の影響を把握するものである。そのため、測定されるバックグラウンド吸収は、赤血球での吸収のみならず、他の成分での吸収を含むものであり、赤血球の影響を特異的に把握することができない。その結果、赤色濃度を測定する場合と同様に、ヘマトクリット値に起因する測定誤差を適切に補正するのは困難である。
【0008】
一方、インピーダンスを測定する方法は、分析用具に対してインピーダンスを測定可能な電極を設ける必要があるために、光学的手法を利用した濃度測定に適用するのが困難である。
【0009】
【特許文献1】特開2000−262298号公報
【特許文献2】特公平8−20364号公報
【特許文献3】特開2004−163411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、血液試料に含まれる赤血球に起因する測定誤差を適切に補正することができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面においては、血液試料を移動させるための流路を有する分析用具を用いて血液試料中の特定成分を測定する方法であって、ヘマトクリット値に相関させたヘマトクリット情報を取得する第1ステップと、上記ヘマトクリット情報を反映させて、血液試料の特定成分の濃度を演算する第2ステップと、を含む濃度測定方法において、上記第1ステップでは、血液試料が上記流路を満たす速度に基づいて、上記ヘマトクリット情報を得ることを特徴とする、血液試料中の特定成分の濃度測定方法が提供される。
【0012】
第1ステップでは、たとえば血液試料が上記流路を移動するときの光吸光量の変化に基づいて、ヘマトクリット情報を得られる。
【0013】
第1ステップでは、ヘマトクリット情報は、たとえば流路に設定された測光エリアにおける血液試料の移動方向の上流側の領域での第1光吸光量の変化と、測光エリアにおける上記移動方向の下流側の領域での第2光吸光量の変化と、に基づいて取得される。ヘマトクリット情報は、同一または略同一サンプリングタイムにおける第1光吸光量と第2光吸光量との差分値を、複数のサンプリングタイムについて積算した積算値として得るのが好ましい。
【0014】
第1ステップではまた、第1光吸光量の変化と第2光吸光量の変化との間の時間的ずれに基づいて、ヘマトクリット情報を得ることもできる。
【0015】
第1ステップではさらに、光吸光量の変化率に基づいて、ヘマトクリット情報を得ることもできる。より具体的には、ヘマトクリット情報、たとえば変化率のタイムコースにおける傾きに基づいて、光吸光量が変化しはじめてから変化率が0になるまでの時間に基づいて、あるいは変化率の最大値(絶対値基準)に基づいて得ることができる。
【0016】
第2ステップでは、たとえば測光エリアに光を照射したときに分析用具から進行してくる光に基づいて上記特定成分の補正前濃度を演算する一方で、第1ステップにおいて得られる積算値に基づいて補正量を演算し、上記補正前濃度を上記補正量によって補正して最終濃度が決定される。
【0017】
測光機構としては、たとえば500〜590nmの波長範囲にピーク波長を有する光を出射可能なものが使用される。
【0018】
本発明の第2の側面においては、血液試料を移動させるための流路を有する分析用具を用いて血液試料中の特定成分を測定する装置であって、ヘマトクリット値に相関させたヘマトクリット情報を光学的手法により取得するための測光機構と、ヘマトクリット情報を反映させて、血液試料中の特定成分の濃度を演算する演算手段と、を含む濃度測定装置において、上記測光機構は、血液試料が上記流路を満たす速度に相関させて上記ヘマトクリット情報を検出できるように構成されていることを特徴とする、血液試料中の特定成分の濃度測定装置が提供される。
【0019】
測光機構は、たとえば流路に設定された測光エリアにおける血液試料の移動方向の上流側の領域および下流側の領域での光吸収量を区別して検出できるように構成される。
【0020】
測光機構は、たとえば測光エリアにおける上流側および下流側の領域に光を照射するための第1および第2検知用発光素子を備えたものとされる。第1および第2検知用発光素子は、たとえば上記移動方向に並んで配置される。測光機構はさらに、第1および第2検知用発光素子からの光を分析用具に照射したときに測光エリアを透過した光を受光するための受光装置と、第1検知用発光素子から出射されて測光エリアにおける上記移動方向の上流側の領域を透過した光を選択的に受光させる一方で、第2検知用発光素子から出射されて測光エリアにおける上記移動方向の下流側の領域を透過した光を選択的に受光させるためのアパチャと、を備えたものとすることもできる。
【0021】
アパチャは、たとえば分析用具から進行してくる光を透過させるための開口部を有するものとされ、開口部は、平面視において、第1および第2検知用発光素子の中間に位置させられる。
【0022】
測光機構はまた、第1および第2検知用発光素子をパッケージ化した発光装置を備えたものとすることもできる。発光装置は、血液試料中の特定成分の濃度を反映した濃度情報を得るために利用される1以上の濃度演算用発光素子をさらに備えていてもよい。この場合、1以上の濃度演算用発光素子は、上記移動方向において第1および第2検知用発光素子の間に位置するように配置されるとともに、第1および第2検知用発光素子とともにパッケージ化するのが好ましい。
【0023】
第1および第2検知用発光素子としては、500〜590nmの波長範囲にピーク波長を有する光を出射可能なものが使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る濃度測定装置および測定方法ついて、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1に示した濃度測定装置1は、比色センサ2を用いて、全血などの血液試料中の特定成分(たとえばグルコース、コレステロールあるいは乳酸)の濃度を測定するように構成されたものである。
【0026】
比色センサ2は、0.1〜3μL程度の微量な血液試料を用いて光学的手法により血液試料の分析を行えるように構成されたものであり、使い捨てとして構成されている。図2および図3に示したように、比色センサ2は、全体として板状の形態を呈しており、長矩形の第1および第2板材21,22を、一対のスペーサ23を介して接合した形態を有している。
【0027】
この比色センサ2は、血液を保持するためのキャピラリ24を有している。キャピラリ24は、毛細管力により血液を吸引可能なものであり、各要素21〜23により規定されている。このキャピラリ24は、キャピラリ24の内部に血液を導入するための開口25、およびキャピラリ24の内部の空気を排出するための開口26を介して外部と連通している。このようなキャピラリ24では、開口25を介して供給される血液が、キャピラリ24の内部において生じる毛細管力により吸引され、開口26に向けて移動させられる。
【0028】
第1板材21は、たとえばPET、PMMA、ビニロンにより透明に形成されたものであり、その表面には試薬部27が設けられている。試薬部27は、キャピラリ24の内部に配置されるものであり、発色剤を含んだものとして構成される。試薬部27は、たとえば血液試料に対して溶解しやすい固体状に形成される。このような試薬部27では、キャピラリ24に血液試料を導入したときに、血液試料により試薬部27が溶解させられてキャピラリ24の内部に血液および発色剤を含む液相反応系が構築される。もちろん、試薬部27は、架橋ゲルなどを用いて発色剤を第1板材21に固定化した構成であってもよい。
【0029】
発色剤としては、公知の種々のものを用いることができるが、電子授受により発色したときの吸収波長が、血液試料(赤血球)の吸収波長からずれたものを用いるのが好ましい。このような発色剤としては、たとえばWST−4(2-Benzothiazoyl-3-[4-carboxy-2-methoxyphenyl]-5-[4-(2-sulfoethylcarbamoyl)-phenyl]-2H-tetrazolium)あるいはMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium
bromide)を用いることができる。
【0030】
試薬部27はさらに、電子伝達物質あるいは酸化還元酵素を含んだものとして構成してもよい。そうすれば、血液試料中の特定成分と発色剤との間の電子授受をより速く行うことができるようになるため、測定時間を短くすることが可能となる。電子伝達物質および酸化還元酵素は、試薬部27とは分離して設けても良い。
【0031】
第2板材22は、たとえばPET、PMMA、ビニロンにより透明に形成されたものであり、その表面にはマスク28が設けられている。このマスク28は、比色センサ2に対してノイズ光が入射するのを制限するとともに、後述する測光機構3における発光素子40,41,42,43から出射された光が比色センサ2の内部に入射するのを許容するためのものであり、スリット29を有している。スリット29は、試薬部27の直上において、キャピラリ24に沿って延びるように形成されている。このようなマスク29は、たとえば黒色顔料を含んだペースト材料を用いたスクリーン印刷などの公知の成膜手法により形成することができる。
【0032】
図3に示したように、濃度測定装置1は、血液中の特定成分の濃度に相関する情報およびヘマトクリット値に相関する情報を光学的手法により得るための測光機構3を備えている。この測光機構3は、透過型として構成されたものであり、発光装置4、出射用アパチャ5、受光装置6および受光用アパチャ7を備えている。
【0033】
発光装置4は、比色センサ2に光を照射するためのものであり、濃度測定装置1に比色センサ2を装着した状態において、比色センサ2の試薬部27の直上に位置するように配置されている。この発光装置4は、比色センサ2のキャピラリ24における血液の移動方向D1,D2に並ぶように配線基板44に実装した4つの発光素子40,41,42,43を、透光性樹脂45により封止したものである。なお、発光装置4においては、透光性樹脂45を省略してもよい。
【0034】
4つの発光素子40〜43は、補正用発光素子40,41および測定用発光素子42,43を含んでおり、配線基板44にパターン形成された配線によって個別に駆動(点灯・消灯)が可能なように構成されている。
【0035】
補正用発光素子40,41は、血液のヘマトクリット値に相関する情報得るために利用されるものであり、D1,D2方向(キャピラリ24での血液の移動方向)に一定距離だけ離間して配置されている。補正用発光素子40,41としては、たとえばLEDが使用されるが、血液(赤血球)における吸収の高い波長範囲(500〜590nm)にピーク波長を有する光を出射可能なものを使用するのが好ましい。補正用発光素子40,41として赤血球での吸収の光を出射可能なものを使用すれば、ヘマトクリット値に相関する情報を得る際に、赤血球以外の成分での吸収の影響を少なくできる。そのため、赤血球の影響を特異的に把握することが可能となり、ヘマトクリット値に起因する測定誤差を適切に補正することができる。
【0036】
一方、測定用発光素子42,43は、血液における特定成分の濃度に相関する情報を得るために利用されるものである。より具体的には、測定用発光素子42は測定用の光を出射するものであり、測定用発光素子43は参照用の光を出射するためのものである。測定用発光素子42としては、たとえば600〜700nmの波長範囲にピーク波長を有する光を出射可能なLEDが使用される。その一方で、測定用発光素子43としては、たとえば800〜950nmの波長範囲にピーク波長を有する光、好ましくは800〜910nmの波長範囲にピーク波長を有する光を出射可能なLEDが使用される。
【0037】
図3および図4(a)に示したように、出射用アパチャ5は、比色センサ2へ照射すべき光を規定するためのものであり、濃度測定装置1に比色センサ2を装着した状態において、発光装置4と比色センサ2との間に位置するように配置されている。この出射用アパシチャ5は、開口部50を有するとともに、たとえば樹脂などにより全体が黒色に形成されている。開口部50は、長円形の平面視形状を有しており、各発光素子40〜43において出射された光を開口部50において透過させることにより比色センサ2に対する光の照射状態を制限するように構成されている。
【0038】
図3に示したように、受光装置6は、比色センサ2を透過した光を受光するためのものであり、発光装置4に対向し、かつ濃度測定装置1に比色センサ2を装着した状態において、比色センサ2の試薬部27の直下に位置するように配置されている。この受光装置6は、エリアセンサとして機能するフォトダイオード60を有している。
【0039】
図3および図4(b)に示したように、受光用アパチャ7は、フォトダイオード60へ入射させるべき光を規定するためのものであり、濃度測定装置1に比色センサ2を装着した状態において、比色センサ2と受光装置6との間に位置するように配置されている。この出射用アパチャ7は、開口部70を有するとともに、たとえば樹脂などにより全体が黒色に形成されている。開口部70は、平面視において、円形であるとともに補正用発光素子40,41の中間に位置している。すなわち、補正用発光素子40,41は、開口部70に対して、オフセットしている。
【0040】
図3、図4(a)および図4(b)に示したように、測光機構3では、平面視において補正用発光素子40,41が受光用アパチャ7の開口部70に対してD1,D2方向にオフセットしている。そのため、補正用発光素子40から出射された光と補正用発光素子41から出射された光とでは、比色センサ2における異なった領域を透過した光がフォトダイオード60において受光される。より具体的には、補正用発光素子40が開口部70に対して相対的にD2方向(キャピラリ24における血液の移動方向の上流側)に位置することから、フォトダイオード60においては、補正用発光素子40から出射された光については測光エリア20におけるD1方向(上流側)に位置する上流側領域20Aを透過した光が受光される。その一方で、補正用発光素子41が開口部70に対して相対的にD2方向(キャピラリ24における血液の移動方向の下流側)に位置することから、フォトダイオード60においては、補正用発光素子41から出射された光については測光エリア20における相対的にD2方向(下流側)に位置する下流側領域20Bを透過した光が受光される。
【0041】
そのため、キャピラリ24に血液を導入した場合には、血液の移動過程において、補正用発光素子40から出射されてフォトダイオード60で受光される光の光量のタイムコースと、下流側に配置された補正用発光素子41から出射されてフォトダイオード60で受光される光の光量のタイムコースとは、以下に説明するように異なった挙動を示すこととなる。
【0042】
図5、図6(a)および図6(b)に示したように、血液BLがD2方向に移動する過程においては、血液BLが測光エリア20の上流側領域20Aに到達する前は、補正用発光素子40,41から出射された光は、血液BLにより吸収されることがないため、フォトダイオード60においては、補正用発光素子40および補正用発光素子41から出射された光についての受光量(比色センサ2(測光エリア20)の透過光量)は略一定となる。
【0043】
図5、図7(a)および図7(b)に示したように、血液BLが上流側領域20Aに到達した以降は、血液BLにより補正用発光素子40から出射された光が吸収される。その一方で、上流側領域20Aにおける血液BLが占める割合は、図7(b)および図8(b)に示したように血液BLがD2方向に移動することより大きくなる。そのため、フォトダイオード60においては、補正用発光素子40から出射された光についての受光量(透過光量)は、図5に示したように血液BLのD2方向への移動とともに小さくなる。これに対して、補正用発光素子41から出射された光は、血液BLが下流側領域20Bに到達するまでは血液により吸収されることがないため、フォトダイオード60においては、補正用発光素子41から出射された光についての受光量は変化することなく一定となる。
【0044】
図5、図8(a)および図8(b)に示したように、血液BLが下流側領域20Bに到達した以降は、血液BLにより補正用発光素子41から出射された光が吸収される。その一方で、下流側領域20Bにおける血液BLが占める割合は、図8(b)および図9(b)に示したように血液BLのD2方向への移動のより大きくなる。そのため、フォトダイオード60においては、図5に示したように補正用発光素子41から出射された光についての受光量(透過光量)は、血液BLの進行とともに小さくなる。
【0045】
図5、図9(a)および図9(b)に示したように、血液BLが上流側領域20Aを超えた場合には、補正用発光素子40から出射された光は、血液BLが上流側領域20Aの全ての領域を占めることとなる。そのため、フォトダイオード60においては、補正用発光素子40から出射された光についての受光量は一定となる。血液BLが上流側領域20Aに達した時点では、血液BLが上流側領域20Bの全ての領域を占めていないので、フォトダイオード60においては、補正用発光素子41から出射された光についての受光量は引き続き小さくなる。
【0046】
図5、図10(a)および図10(b)に示したように、血液BLが下流側領域20Aを超えた場合には、下流側領域20Bの全ての領域を血液BLが占めることとなる。そのため、フォトダイオード60においては、補正用発光素子41から出射された光についての受光量は一定となる。
【0047】
以上の説明から分かるように、キャピラリ24に血液BLを導入した場合には、血液BLの移動過程において、図5に示したように、補正用発光素子40から出射されてフォトダイオード60で受光される光の透過光量のタイムコースと、補正用発光素子41から出射されてフォトダイオード60で受光される光の透過光量のタイムコースとは、フォトダイオード60での受光量が小さくなり始める時間(0,t1)と、フォトダイオード60での受光量が略一定値に収束する時間(t2、t3)が異なったものとなる。
【0048】
ここで、補正用発光素子40と補正用発光素子41との間におけるフォトダイオード60での受光量(透過光量)が小さくなり始める時点(0,t1)、あるいは補正用発光素子40と補正用発光素子41との間におけるフォトダイオード60での受光量(透過光量)が略一定値に収束する時点(t2、t3)は、血液BLの移動速度に依存する。また、受光量が小さくなり始めてから(0,t1)、略一定値に収束するまでの時間(t2,t3−t1)もまた、血液の移動速度に依存する。その一方で、血液の移動速度は、血液の粘性の影響を受けるものであるとともに、血液の粘性はヘマトクリット値(Hct)の影響を受けるものである。そのため、補正用発光素子40と補正用発光素子41との間におけるフォトダイオード60での受光量の小さくなる受光量が小さくなり始める時点(0,t1)、あるいは補正用発光素子40と補正用発光素子41との間におけるフォトダイオード60での受光量が略一定値に収束する時間(t2、t3―t1)は、血液のHctを反映したものとなる。そのため、先のパラメータを利用することにより、血液のHctが血液の特定成分の測定に与える影響量を把握できるようになり、Hctの影響を低減するための補正を行なうことが可能となる。また、先のパラメータばかりでなく、先のパラメータと相関関係のあるパラメータ、たとえば同一時間における補正用発光素子40と補正用発光素子41との間におけるフォトダイオード60での受光量の差Δ、この差Δの積算値(2つのタイムコースで囲まれる領域の面積)、あるいは吸光度の変化率(タイムコースの傾き)を利用して、血液のHctが血液の特定成分の測定に与える影響を把握することも可能である。
【0049】
また、測光機構3では、発光装置4として補正用および測定用発光素子40〜43がパッケージ化されたものを用いており、極めて簡易な構成によりヘマトクリット値に影響を把握することができるばかりか、1つの発光装置4(測光機構3)により、ヘマトクリット値に相関する情報と特定成分の濃度に相関する情報とを得ることができる。
【0050】
図6に示したように、濃度測定装置1は、測光機構3の他に、制御部10および演算部11をさらに備えている。
【0051】
制御部10は、補正用および測定用発光素子40〜43の点灯・消灯あるいは演算部11の動作を初めとする各種の動作を制御するものである。
【0052】
演算部11は、フォトダイオード60での受光量に基づいて、Hctの影響を考慮しつつ血液中の特定成分の濃度を演算するものである。この演算部11では、補正用発光素子40,41からの光を比色センサ2に照射したときに得られる受光量のタイムコースに基づいてHctの影響量(補正量)を演算する一方で、この補正量を勘案しつつ、測定用発光素子42,43からの光を比色センサ2に照射したときに得られる受光量に基づいて特定成分の濃度が演算される。演算部11はまた、必要に応じて、Lot補正および温度補正に関する演算を行なうように構成される。
【0053】
次に、濃度測定装置1の動作の一例について説明する。
【0054】
濃度測定を行なう場合には、まず濃度測定装置1に比色センサ2を装着し、比色センサ2の開口25を介して、キャピラリ24の内部に血液を供給する。このとき、キャピラリ24において生じる毛細管力により、血液BLがキャピラリ24の内部を進行する。血液BLの進行過程においては、血液BLにより試薬部27が溶解させられ、キャピラリ24の内部に液相反応系が構築される。血液BLの進行は、血液BLが開口26に到達したときに停止する。
【0055】
液相反応系においては、グルコースなどの特定成分から取り出された電子が発色剤に供給されて発色剤が発色し、液相反応系が着色される。試薬部27において酸化還元酵素および電子伝達物質が含まれている場合には、酸化還元酵素が血液中のグルコースと特異的に反応してグルコースから電子が取り出され、その電子が電子伝達物質に供給された後に発色剤に供給される。したがって、発色剤の発色の程度(液相反応系の着色の程度)は、特定成分から取り出された電子の量、すなわち特定成分の濃度に相関している。
【0056】
一方、濃度測定装置1においては、測光機構3により比色センサ2の測光エリア20における透過光量の変化が検出される。より具体的には、制御部10により、補正用発光素子40,41の点灯・消灯を、それらの補正用発光素子40,41の相互で、タイミングをずらして繰り返し行なう。補正用発光素子40,41の点灯・消灯のサイクルは、たとえば0.005〜0.5secとされる。
【0057】
その一方で、受光装置6では、補正用発光素子40,41から出射された光のうち、測光エリア20を透過するとともに、受光用アパチャ5の開口部50を通過した光を、時間をずらせて交互に受光される。すなわち、受光装置6では、測光エリア20の上流側領域20Aを透過した光と、測光エリア20の下流側領域20Bを透過した光と、が交互に受光される。図5に示したように、受光装置6での受光量(透過光量)は、比色センサ2のキャピラリ24を血液が移動するにしたがって、先に測光エリア20の上流側領域20Aでの透過光量が小さくなり、次いで測光エリア20の下流側領域20Bでの透過光量が小さくなる。その一方で、透過光量は、先に測光エリア20の上流側領域20A透過した光が一定値に収束し、次いで測光エリア20の下流側領域20Bでの透過した光が一定値に収束する。
【0058】
一方、演算部11では、測光エリア20の上流側領域20Aを透過した光の量と、測光エリア20の下流側領域20Bを透過した光の量をそれぞれ区別し、複数のサンプリングタイムにおいて把握する。そして、演算部11においては、測光エリア20の下流側領域20Bを透過した光の量が一定値に収束した場合には、測光エリア20に血液BLが供給されたことを認識し、上流側領域20Aを透過した光の量(吸光度)と下流側領域20Bを透過した光の量(吸光度)に基づいてヘマトクリット値に関するヘマトクリット情報を取得する。
【0059】
このヘマトクリット情報は、同一または略同一サンプリングタイムにおける上流側領域20Aを透過した光の量(吸光度)と下流側領域20Aを透過した光の量(吸光度)の差分値Δを、複数のサンプリングタイムについて積算した積算値として取得する。
【0060】
もちろん、ヘマトクリット情報は、差分値Δの積算値以外として得ることもできる。たとえば、ヘマトクリット情報は、上流側領域20Aでの透過光量(吸光度)のタイムコースと下流側領域20Aでの透過光量(吸光度)のタイムコースとの時間的ずれ量(t1、t3−t2、あるいは{t1+(t3−t2)}/2)、透過光量(吸光度)の変化率(タイムコースの傾き)などにより取得することができる。
【0061】
演算部11においてはさらに、積算値などのヘマトクリット情報に基づいて、後において行われる濃度演算に必要な補正量を決定する。補正量は、積算値などのヘマトクリット情報と補正値との関係を示す補正用検量線に基づいて決定される。
【0062】
このように、濃度測定装置1では、ヘマトクリット情報は血液BLが比色センサ2の測光エリア20を移動するときの透過光量の変化に基づいて得られる。すなわち、ヘマトクリット情報は、赤血球濃度に依存する移動速度(粘性)を光学的に検出ことにより得られる。このような方法では、ヘマトクリット情報は、赤血球の酸化・還元状態に影響をさほど受けることなく、赤血球濃度を適切に反映したものとして得ることができる。その結果、個々の血液試料ごとに適切にHct(またはそれに相関する情報)を検出することができるようになり、Hctの影響を適切に補正してより測定精度を向上させることが可能となる。
【0063】
また、ヘマトクリット情報を、測光エリア20における上流側および下流側領域20A,20Bでの透過光量の変化に基づいて取得するようにすれば、一箇所のみにより透過光量の変化を測定する場合に比べて、より適切にHctに関する情報を得ることができる。すなわち、複数個所により透過光量の変化を測定するようにすれば、個々の比色センサ2の感度のバラツキなどといった比色センサ2の特性に起因する検出誤差の影響を低減することが可能となる。
【0064】
次いで、制御部10は、測光エリア20の下流側領域20Bを透過した光の量が一定値に収束してから一定時間経過後に、測定用発光装置4の発光素子42,43を順次点灯させる。このとき、受光装置6では、比色センサ2を透過した光が受光される。
【0065】
一方、演算部11においては、受光装置6での受光量(透過光量あるいは吸光度)に相関させた信号に基づいて、血液中のグルコースなどの特定成分の濃度を一次的に演算する。この演算は、予め定められた透過光量(吸光度)と特定成分の濃度との関係とを示す濃度演算用検量線に基づいて行なわれる。演算部11ではさらに、先に得られた補正量により一次的な演算値に補正して、最終的な濃度を決定する。この最終的な演算結果は、濃度測定装置1のディスプレイ12に表示される。
【0066】
もちろん、ヘマトクリット情報に基づいて、補正量を透過光量(吸光度)として取得してする一方で、実測された透過光量(吸光度)を先に補正し、補正後の透過光量(吸光度)を濃度演算用検量線に当てはめて濃度演算を行なってもよく、また、Hctに応じた複数の濃度演算用検量線を準備し、得られるヘマトクリット情報から、最適な濃度演算用検量線を選択して濃度演算を行なうようにしてもよい。
【0067】
本発明は、先に説明した実施の形態には限定されない。たとえば、Hctの影響は、比色センサにおける測光エリアの1箇所での透過光量の変化を検出することにより把握することもできる。すなわち、測光エリアでの透過光量の変化の微分曲線は、たとえば図12に示したようにピークを有するものとなるため、ピークの高さP(透過光量の変化率の最大値(絶対値基準))あるいは透過光量が変化する時間範囲Tに基づいて、Hctの影響量を検出するようにしてもよい。この場合には、発光装置4における検出用発光素子の数は、少なくとも1つあればよく、1つの検出用発光素子を使用して透過光量の変化率の最大値あるいは透過光量が変化する時間範囲Tを取得することができる。また、複数(たとえば2つの検出用発光素子40,41)の検出用発光素子を使用して上記ピークの高さPあるいは上記時間範囲Tを取得するようにしてもよく、この場合には、上記ピークの高さPあるいは上記時間範囲Tは、たとえば複数の検出用発光素子のそれぞれによって得られる値の平均値として算出してもよい。
【0068】
また、測光機構3は、必ずしも比色センサ2を透過した光に基づいてヘマトクリット情報を検出するように構成する必要はなく、比色センサ2などの分析用具において反射した光に基づいてヘマトクリット情報を検出できるようにしてもよい。さらに、ヘマトクリット情報の検出は、必ずしも試薬部27が設けられた領域において行なう必要はなく、試薬部27からずれた領域において行なってもよい。また、測光機構3の受光装置6において、補正用発光素子40のための受光素子と補正用発光素子41のための受光素子とを個別に設けてもよく、また発光装置における補正用発光素子を3個以上設けてもよい。
【0069】
本発明はまた、比色センサを用いて光学的手法により濃度測定を行なう場合に限らず、電気化学的手法により濃度測定を行なう場合にも適用することが可能となる。この場合、測光機構における濃度測定用の発光素子は省略される。
【実施例1】
【0070】
本実施例では、先に説明した濃度測定装置1および比色センサ2を用いて、Hctの異なる3種類(Hct25%、Hct40%、Hct55%)の試料を使用したときの透過光量の経時的変化を検討した。透過光量の測定は、グルコース濃度を200mg/dlに調整した試料を下記表1に示す構成の比色センサ2に供給したときの吸光度を、0.033sec毎に測定することにより行なった。また、補正用発光素子40,41としては、中心波長が570nmであるLEDをD1,D2方向に1.6mm離間させて配置したものを用い、受光用アパチャ5の開口部50は直径が2.0mmの円形に形成した。吸光度の測定結果については、図13(a)〜図13(c)に示した。これらの図においては、横軸を時間(秒)であり、縦軸は0秒値(上流側領域20Aに血液が到達した時点)に対する相対値である。
【0071】
【表1】

【0072】
図13(a)〜図13(c)からは、Hctが大きくなるほど透過光量の変化率が小さく、吸光度が低下しはじめてから略一定値に収束するまでの時間が長くなっており、上流側の発光素子(補正用発光素子40)でのタイムコースを示す曲線と下流側の発光素子(補正用発光素子41)でのタイムコースを示す曲線とによって囲まれる領域の面積が大きくなっている。そのため、たとえば透過光量が低下しはじめてから略一定値に収束するまでの時間、透過光量の変化率あるいは2つのタイムコースが示す曲線によって囲まれる領域の面積とHctとを相関させることにより、Hctが測定結果に与える影響を低減することが可能となる。
【実施例2】
【0073】
本実施例では、実施例1と同様な手法により得られる透過光量の測定結果(タイムコース)に基づいて、2つのタイムコースによって囲まれる領域の面積とHctとの関係を評価した。面積は、同一時間での補正用発光素子40からの光の透過光量(相対値)と補正用発光素子41からの光の透過光量(相対値)の差分を、0.033sec毎に演算し、それらを積算した積算値として評価した。その結果については、図14に示した。この図においては、横軸はHct、縦軸は積算値であり、5回の測定結果を示してある。
【0074】
図14から分かるように、Hctが大きくなるほど、積算値が大きくなっており、積算値がHctを相関関係があることが分かる。この相関関係は、最少二乗法により、下記数式1として近似することができるため、積算値を演算することによりHctを把握できるとともに、Hctが測定結果に与える影響の程度を把握することができることがわかる。
【0075】
【数1】

【実施例3】
【0076】
本実施例では、実施例2で得られた相関関係(数式1)に基づいてHctの影響を低減した結果が得られる否かを検討した。この検討においては、試料として、グルコース濃度およびHctの異なる9種類のもの(グルコース濃度については60mg/dl、200mg/dlおよび400mg/dlの3種類、Hctについては25%、40%および55%の3種類)を用いた。測定用発光素子としては、中心波長が660nmであるLEDを用いた。透過光量の測定は、同一の試料につき、5回行い、その平均値として図15(a)に示した。図15(a)においては、縦軸をHct、横軸をHct40%のときの透過光量を基準としたときのバイアスとして示した。
【0077】
一方、実施例2で得られた関係式に基づいて、透過光量を補正した場合について検討した。より具体的には、まず、9種類の試料のそれぞれについて積算値を演算し、その積算値を上記数式1に当てはめることによりHctを演算した。次いで、上記数式1より得られたHctを、予め設定した下記表2の補正テーブルにしたがって線形補間によって補正量を演算し、その補正量により測定値を補正した。補正後の吸光度の値については、5回の測定の平均値として図15(b)に示した。
【0078】
【表2】

【0079】
図15(a)および図15(b)を比較すれば分かるように、補正前においてはバイアスがかなり大きくなっているのに対して、補正後においてはバイアスが著しく小さくなっている。この結果から、積算値を利用してHctについての補正を行なった場合には、Hctの影響が適切に低減された測定結果が得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る濃度測定装置の一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示した濃度測定装置で使用する比色センサの一例を示す一部を分解して示した斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示した濃度測定装置の要部を示す平面図である。
【図5】図1に示した濃度測定装置において測定される受光量の一例を示すグラフである。
【図6】(a)は図1に示した濃度測定装置の動作を説明するための図3に相当する断面図であり、(b)は図4(b)に相当する平面図である。
【図7】(a)は図1に示した濃度測定装置の動作を説明するための図3に相当する断面図であり、(b)は図4(b)に相当する平面図である。
【図8】(a)は図1に示した濃度測定装置の動作を説明するための図3に相当する断面図であり、(b)は図4(b)に相当する平面図である。
【図9】(a)は図1に示した濃度測定装置の動作を説明するための図3に相当する断面図であり、(b)は図4(b)に相当する平面図である。
【図10】(a)は図1に示した濃度測定装置の動作を説明するための図3に相当する断面図であり、(b)は図4(b)に相当する平面図である。
【図11】図1に示した濃度測定装置のブロック図である。
【図12】本発明に係る濃度測定方法の他の例を説明するための受光量の微分値のタイムコースを示すグラフである。
【図13】実施例1における受光量の測定結果をグラフであり、(a)はHct25%、(b)はHct40%、(c)はHct55%がときのものをそれぞれ示している。
【図14】実施例2におけるHctと差分値の積算値との関係を示すグラフである。
【図15】実施例3の結果を示すものであり、(a)は補正前におけるHct40%を基準としたときの受光量のバイアスを示すグラフであり、(b)は補正後におけるHct40%を基準としたときの受光量のバイアスを示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
1 濃度測定装置
11 演算部(演算手段)
2 比色センサ
20 (比色センサの)測光エリア
20A (測光エリアの)上流側領域
20B (測光エリアの)上流側領域
24 キャピラリ(流路)
3 測光機構
4 発光装置
40 補正用発光素子(第1検知用発光素子)
41 補正用発光素子(第2検知用発光素子)
42,43 測定用発光素子(濃度演算用発光素子)
5 受光用アパチャ
50 (受光用アパチャの)開口部
D1,D2 移動方向
BL 血液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料を移動させるための流路を有する分析用具を用いて血液試料中の特定成分を測定する方法であって、
ヘマトクリット値に相関させたヘマトクリット情報を取得する第1ステップと、
上記ヘマトクリット情報を反映させて、血液試料の特定成分の濃度を演算する第2ステップと、
を含む濃度測定方法において、
上記第1ステップでは、血液試料が上記流路を満たす速度に基づいて、上記ヘマトクリット情報を得ることを特徴とする、血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項2】
上記第1ステップでは、血液試料が上記流路を移動するときの光吸光量の変化に基づいて、上記ヘマトクリット情報を得る、請求項1に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項3】
上記第1ステップでは、上記ヘマトクリット情報は、上記流路に設定された測光エリアにおける血液試料の移動方向の上流側の領域での第1光吸光量の変化と、上記測光エリアにおける上記移動方向の下流側の領域での第2光吸光量の変化と、に基づいて取得される、請求項2に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項4】
上記第1ステップでは、上記ヘマトクリット情報は、同一または略同一サンプリングタイムにおける上記第1光吸収量と上記第2光吸収量との差分値を、複数のサンプリングタイムについて積算した積算値として取得される、請求項3に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項5】
上記第2ステップでは、上記測光エリアに光を照射したときに上記分析用具から進行してくる光に基づいて上記特定成分の補正前濃度を演算する一方で、上記第1ステップにおいて得られる積算値に基づいて補正量を演算し、上記補正前濃度を上記補正量によって補正して最終濃度を決定する、請求項4に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項6】
上記第1ステップでは、上記第1光吸光量の変化と上記第2光吸光量の変化との間の時間的ずれに基づいて、上記ヘマトクリット情報を得る、請求項3に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項7】
上記第1ステップでは、上記光吸光量の変化率に基づいて、上記ヘマトクリット情報を得る、請求項2に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項8】
上記第1ステップでは、上記変化率のタイムコースにおける傾きに基づいて、上記ヘマトクリット情報を得る、請求項7に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項9】
上記第1ステップでは、上記光吸光量が変化しはじめてから上記変化率が0になるまでの時間に基づいて、上記ヘマトクリット情報を得る、請求項7に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項10】
上記第1ステップでは、上記変化率の最大値(絶対値基準)に基づいて、上記ヘマトクリット情報を得る、請求項7に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項11】
上記測光機構として、500〜590nmの波長範囲にピーク波長を有する光を出射可能なものを使用する、請求項1ないし10のいずれかに記載の血液試料中の特定成分の濃度測定方法。
【請求項12】
血液試料を移動させるための流路を有する分析用具を用いて血液試料中の特定成分を測定する装置であって、
ヘマトクリット値に相関させたヘマトクリット情報を光学的手法により取得するための測光機構と、
上記ヘマトクリット情報を反映させて、血液試料中の特定成分の濃度を演算する演算手段と、
を含む濃度測定装置において、
上記測光機構は、血液試料が上記流路を満たす速度に相関させて上記ヘマトクリット情報を検出できるように構成されていることを特徴とする、血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項13】
上記測光機構は、上記流路に設定された測光エリアにおける血液試料の移動方向の上流側の領域および下流側の領域での光吸収量を区別して検出できるように構成されている、請求項12に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項14】
上記測光機構は、上記測光エリアにおける上流側および下流側の領域に光を照射するための第1および第2検知用発光素子を備えている、請求項13に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項15】
上記第1および第2検知用発光素子は、上記移動方向に並んで配置されている、請求項14に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項16】
上記測光機構は、
上記第1および第2検知用発光素子からの出射光を上記測光エリアに照射したときに上記測光エリアを透過した光を受光するための受光装置と、
上記第1検知用発光素子から出射されて上記測光エリアにおける上記移動方向の上流側の領域を透過した光を選択的に受光させる一方で、上記第2検知用発光素子から出射されて上記測光エリアにおける上記移動方向の下流側の領域を透過した光を選択的に受光させるためのアパチャと、
をさらに備えている、請求項14または15に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項17】
上記アパチャは、上記分析用具から進行してくる光を透過させるための開口部を有しており、
上記開口部は、平面視において、第1および第2検知用発光素子の中間に位置している、請求項16に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項18】
上記測光機構は、上記第1および第2検知用発光素子をパッケージ化した発光装置を備えている、請求項14ないし17のいずれかに記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項19】
上記発光装置は、上記血液試料中の特定成分の濃度を反映した濃度情報を得るために利用される1以上の濃度演算用発光素子をさらに備えており、
上記1以上の濃度演算用発光素子は、上記移動方向において上記第1および第2検知用発光素子の間に位置するように配置されているとともに、上記第1および第2検知用発光素子とともにパッケージ化されている、請求項18に記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。
【請求項20】
上記第1および第2検知用発光素子は、500〜590nmの波長範囲にピーク波長を有する光を出射可能なものである、請求項12ないし19のいずれかに記載の血液試料中の特定成分の濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−303968(P2007−303968A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132687(P2006−132687)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】