説明

血痕採取キット

【課題】簡単な作業で血痕を採取することができるとともに、採取した血痕の保管も容易な血痕採取キットを提供する。
【解決手段】テープ基材11と、テープ基材11に積層された改ざん防止層12と、改ざん防止層12に積層された粘着剤層13と、粘着剤層13の中央部に設けられた吸液部14と、吸液部14を被覆するようにして粘着剤層13に積層された剥離材15とからなる血痕採取テープ1と、その血痕採取テープ1を貼付する台紙2とにより血痕採取キットを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犯罪現場等に残された血痕の採取および保管が可能な血痕採取キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、犯罪現場等に残された血痕を採取・保管する場合には、乾燥している血痕に精製水を加えて血痕を溶解させ、得られた血液をガーゼ等に吸液させ、それをラベル付きのサンプルビン、さらにはビニール袋に入れて保管することが行われている。
【0003】
採取した血痕は、DNA鑑定等の分析に付されるが、正確な分析を行うためにも、血痕採取時に手袋やピンセットが必要なため作業が煩雑であり、また、血液を吸収したガーゼ等は保管し難いという問題もあった。
【0004】
血痕採取方法として、重合硬化可能な2種類の組成物を使用して、血痕を重合硬化物に接着、移行させる方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特公平6−95093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような血痕採取方法によっても、血痕採取作業の煩雑さは改善されておらず、また、血痕が移行した重合硬化物の保管も容易ではない。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、簡単な作業で血痕を採取することができるとともに、採取した血痕の保管も容易な血痕採取キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、血液を吸収することのできる吸液部を備えた第1のシートと、血液を吸収した前記吸液部を被覆することのできる第2のシートとを備えており、前記第1のシートまたは前記第2のシートには、前記第1のシートと前記第2のシートとを互いに接着することのできる粘着剤層が設けられていることを特徴とする血痕採取キットを提供する(請求項1)。なお、本明細書において「シート」には、テープの概念も含まれるものとする。
【0008】
上記発明(請求項1)においては、第1のシートの吸液部に血痕の血液を吸収させた後、その吸液部を被覆するようにして第1のシートと第2のシートとを互いに接着することができるため、手袋やピンセット等を必要とすることなく、簡単な作業で血痕を採取することができ、採取した血液の保管も容易である。特に、第1のシートと第2のシートとの接着体もシート状であるため、保管スペースを多く必要としない。
【0009】
上記発明(請求項1)において、前記第1のシートは、基材と、前記基材に積層された粘着剤層と、前記粘着剤層の一部に積層された前記吸液部と、前記吸液部を被覆するようにして前記粘着剤層に積層された剥離材とを備えていることが好ましい(請求項2)。かかる第1のシートは、製造および取扱いが容易である。
【0010】
上記発明(請求項1,2)に係る血痕採取キットには、前記第1のシートと前記第2のシートとが接着された後においても、前記吸液部が吸収した水分を外部に蒸発させることのできる経路が形成されていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
また、上記発明(請求項2)においては、前記第1のシートと前記第2のシートとが接着された後においても、前記吸液部の側端部の一部が外部に開放され得るように、前記吸液部は前記粘着剤層の一部に積層されていることが好ましい(請求項4)。
【0012】
上記発明(請求項3,4)によれば、吸液部から水分が蒸発し易く、分析時までに吸液部に雑菌等が繁殖することを抑制することができる。
【0013】
上記発明(請求項2〜4)において、前記基材および前記粘着剤層は、透明な材料から形成されていることが好ましい(請求項5)。かかる構成によれば、血痕採取時に、吸液部における血液の吸収状況を確認し易い。
【0014】
上記発明(請求項1〜5)において、前記吸液部は、綿布からなることが好ましい(請求項6)。
【0015】
上記発明(請求項1〜6)において、前記第2のシートは、所定の情報を記入することのできる台紙であることが好ましい(請求項7)。かかる台紙は、採取した血痕を鑑定する際に、その血痕の情報を特定するのに非常に有用であり、また情報の記入もし易い。
【0016】
上記発明(請求項1〜7)において、前記第2のシートにおいて前記吸液部に接触する接触部は、非吸水性になっていることが好ましい(請求項8)。かかる構成によれば、吸液部が吸収した血液が第2のシートの基材等に移行することを防止することができる。
【0017】
上記発明(請求項1〜8)において、前記第2のシートにおいて前記吸液部に接触する接触部は、除去可能な保護材によって保護されていることが好ましい(請求項9)。かかる構成によれば、吸液部が接触する接触部に指の皮脂等が付着することを防止して、血液の分析を正確に行うことができる。
【0018】
上記発明(請求項1〜9)において、前記第1のシートおよび前記第2のシートのいずれか一方または両方は、互いに接着した前記第1のシートと前記第2のシートとを剥離したときに、剥離したことが明らかになる改ざん防止機能を有することが好ましい(請求項10)。かかる発明によれば、吸液部が吸収した血液が他の血液に替えられる等の改ざんを防止することができる。
【0019】
上記発明(請求項10)において、前記粘着剤層と、前記第1のシートの基材または前記第2のシートの基材との間には、層内剥離性を有する層が設けられていることが好ましい(請求項11)。
【0020】
上記発明(請求項1〜11)において、前記吸液部は、血痕を溶解させることのできる液体を含有しており、かつ、前記液体が蒸発しないようにカバーされていてもよい(請求項12)。かかる発明によれば、血痕に精製水を加えなくても、簡単に血痕を採取することができる。
【0021】
上記発明(請求項12)において、前記第1のシートは、水蒸気透過性の低い包材により包装されていてもよい(請求項13)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の血痕採取キットによれば、手袋やピンセット等を必要とすることなく、簡単な作業で血痕を採取することができるとともに、採取した血痕の保管も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る血痕採取キットにおける第1のシート(血痕採取テープ)の平面図(a)および側面図(b)であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係る血痕採取キットにおける第2のシート(台紙)の平面図(a)およびそのA−A断面図(b)であり、図3は、同実施形態に係る血痕採取キットにおいて血痕採取テープを台紙に貼付した状態を示す平面図である。
【0024】
本実施形態に係る血痕採取キットは、図1に示す血痕採取テープ(本発明の第1のシートに対応)1と、図2に示す台紙(本発明の第2のシートに対応)2とから構成される。
【0025】
図1(a),(b)に示すように、血痕採取テープ1は、テープ基材11と、テープ基材11に積層された改ざん防止層12と、改ざん防止層12に積層された粘着剤層13と、粘着剤層13の中央部に設けられた吸液部14と、吸液部14を被覆するようにして粘着剤層13に積層された剥離材15とから構成される。
【0026】
テープ基材11は、他の層を支持できるものであればよいが、血痕採取時における取扱い性の観点から、ある程度剛性を有するものであることが好ましい。また、血痕の採取状態を確認し易くするために、テープ基材11は透明であることが好ましい。
【0027】
かかるテープ基材11の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂などの樹脂からなるフィルム、またはそれらの積層フィルム等を使用することができ、それらの中でも特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0028】
テープ基材11の厚さは、材料の種類にもよるが、10〜200μmであるのが好ましく、特に20〜100μmであるのが好ましい。
【0029】
改ざん防止層12は、台紙2に貼り付けた血痕採取テープ1を台紙2から剥離したときに、剥離したことが明らかになる改ざん防止機能を有するものであればよい。
【0030】
層内剥離性を有する改ざん防止層12は、台紙2に貼り付けた血痕採取テープ1を台紙2から剥離したときに、粘着剤層13を台紙2に残したまま、改ざん防止層12の厚み方向の途中で剥離し、再度の貼付をできなくするものである。このとき、所定の文字や記号が現れるようにしてもよい。
【0031】
この改ざん防止層12も、血痕採取時における血痕の採取状態を確認し易くするために、透明であることが好ましい。
【0032】
かかる層内剥離性を有する改ざん防止層12としては、例えば、特公平5−87837に開示されているものを採用することができる。具体的には、樹脂バインダーを主材とし、これに粉末フィラーを混在させたものを使用することができる。樹脂バインダーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、塩素化エチレンビニルアルコール、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレンビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂バインダーを使用することができる。粉末フィラーとしては、平均粒径が0.5〜5μm程度の無定形シリカ、ガラスビーズ等を使用することができる。配合比としては、樹脂バインダー100質量部に対して、粉末フィラー10〜150質量部、特に20〜100質量部であることが好ましい。
【0033】
改ざん防止層12の厚さは、通常、1〜10μmであるのが好ましく、特に1〜5μmであるのが好ましい。
【0034】
粘着剤層13は、血痕採取テープ1を台紙2に確実に貼付することができるものであれば、特に限定されないが、血痕採取時における血痕の採取状態を確認し易くするために、透明であることが好ましい。
【0035】
粘着剤層13を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系、エチレン−酢酸ビニル系等の粘着剤が挙げられるが、中でも残留モノマーが少なく、採取した血液へのコンタミネーションのおそれの少ないアクリル系またはシリコーン系の粘着剤が好ましい。
【0036】
粘着剤層13の厚さは、通常、10〜50μmであるのが好ましく、特に20〜40μmであるのが好ましい。
【0037】
吸液部14は、血痕を精製水等に溶解させて得られた血液を吸収する部分であり、血液吸収性を有する材料からなる。吸液部14の大きさは、分析に必要な血液量を確保するために、1〜10cm程度であることが好ましい。
【0038】
吸液部14の材料は、吸収した血液の分析の観点から、繊維集合体であるのが好ましい。繊維集合体は、編織物であってもよいし、不織布であってもよい。繊維集合体を構成する繊維の種類としては、吸液性に優れるとともに、DNA鑑定等の分析に悪影響を及ぼし難い木綿が好ましい。すなわち、吸液部14は綿布からなるのが好ましい。
【0039】
綿布の目付量は、20〜200g/mであるのが好ましく、特に40〜100g/mであるのが好ましい。
【0040】
本実施形態では、吸液部14は平面視矩形になっており、相対向する2辺(図1(a)中、上下の2辺)の位置は、テープ基材11、改ざん防止層12および粘着剤層13の長手方向の2辺の位置に一致させられている。すなわち、吸液部14の相対向する2つの端面(図1(a)中、上下の端面)は、血痕採取テープ1が台紙2に貼付された後においても、外部に開放された状態となる。これにより、吸液部14から水分が蒸発し易くなる。
【0041】
本実施形態における剥離材15は、2枚の剥離シート151,152からなり、第1の剥離シート151は、粘着剤層13の一方の端部から吸液部14の中央部まで至るように設けられており、第2の剥離シート152は、粘着剤層13の他方の端部から吸液部14の中央部まで至り、一部第1の剥離シート151の上に重なるようにして設けられている。
【0042】
剥離材15をこのような2枚構成にすることにより、血痕採取テープ1により血痕を採取する際に、2枚の剥離シート151,15を粘着剤層13に付けたまま、互いに開くようにして吸液部14を露出させることができるため、取扱い性に優れ、指等が吸液部14に触れるおそれが低いものとなる。ただし、剥離材15の構成はこれに限定されるものではなく、1枚の剥離シートが粘着剤層13および吸液部14の全体に設けられる構成であってもよい。
【0043】
剥離材15の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0044】
剥離材15の厚さは、通常10〜250μm程度であり、好ましくは20〜200μm程度である。
【0045】
一方、台紙2は、血痕を採取した血痕採取テープ1を貼り付ける対象となるものであり、図2に示すように、台紙2の基材21は、血痕採取テープ貼付部20aと、所定の情報を記入することのできる情報記入部20bとを備えている。図2に示すように、本実施形態における所定の情報の項目としては、事件名、採取年月日、採取場所、採取者、立会人およびNo.(整理番号)が例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0046】
台紙2の大きさは、血痕の鑑定前に行う写真撮影を考慮して、縦10〜30cm、横10〜30cm程度であることが好ましい。
【0047】
基材21の材料としては、通常の筆記具によって文字を記入することのできる通常の紙であれば、特に限定されることはない。
【0048】
基材21の血痕採取テープ貼付部20aにおける中央部は、血痕採取テープ1の吸液部14が接触する接触部22となっており、吸液部14よりも大きい矩形状となっている。この接触部22は、吸液部14が吸収した血液が台紙2の基材21に移行しないように、非吸水性になっていることが好ましい。
【0049】
かかる非吸水性の接触部22は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のメジウムを印刷すること、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムを、粘着剤を介して貼付することによって形成することができる。ただし、分析を正確に行うために、吸液部14が接触する接触部22には指の皮脂等を付着させないことが好ましく、そのためには印刷によって接触部22を形成することが好ましい。
【0050】
上記と同様の理由により接触部22の汚染を防止するために、本実施形態では、接触部22は保護材23によってカバーされている。保護材23は、接触部22を汚染することなく、接触部22に剥離可能に密着し得るものであれば特に限定されることはない。そのような保護材23としては、例えば、自己接着性を有する樹脂フィルム、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の樹脂フィルムの他、微粘着力を有する再剥離性粘着シートなどを使用することができる。
【0051】
以上説明した血痕採取キットを使用して血痕を採取するには、あらかじめ台紙2における保護材23を接触部22から剥がしておき、乾燥している血痕に精製水を加えて血痕を溶解させ、液体状の血液とした後、血痕採取テープ1の2枚の剥離シート151,152を粘着剤層13に付けたまま、互いに開くようにして吸液部14を露出させ、露出した吸液部14を血液に接触させてその吸液部14に血液を吸収させる。このとき、血痕採取テープ1のテープ基材11、改ざん防止層12および粘着剤層13が透明であると、吸液部14の血液の吸収状況を確認し易い。
【0052】
そして、吸液部14を台紙2の接触部22に接触させながら、2枚の剥離シート151,152を互いに引き離すようにして粘着剤層13から剥離して粘着剤層13を露出させ、露出した粘着剤層13を接触部22の両脇部分に圧着する(図3参照)。
【0053】
このようにして血痕採取テープ1を台紙2の血痕採取テープ貼付部20aに貼付したら、情報記入部20bに所定の情報を記入する。以上の通り、本実施形態に係る血痕採取キットによれば、手袋やピンセット等を必要とすることなく、簡単な作業で血痕を採取することができる。また、血痕採取後の血痕採取キットはシート状であるため、保管スペースを多く必要とせず、整理も極めて容易である。
【0054】
血液の分析は、写真撮影を行った後、血痕採取テープ1を台紙2から剥離して、吸液部14を所定の処理に付すことにより行うが、血痕採取テープ1は、改ざん防止層12を有するため、血痕採取テープ1が台紙2に貼付されている限り、血痕採取テープ1はまだ台紙2から剥離されておらず、したがって血液すり替え等の改ざんはされていないと判断することができる。
【0055】
また、血痕採取テープ1の吸液部14は、血痕採取テープ1が台紙2に貼付された後においても、外部に開放された状態となり、吸液部14から水分が蒸発し易いため、分析時までに吸液部14に雑菌等が繁殖することを抑制することができる。
【0056】
〔第2の実施形態〕
図4は、本発明の第2の実施形態に係る血痕採取キットにおける第1のシート(血痕採取テープ)の平面図(a)および側面図(b)であり、図5は、本発明の第2の実施形態に係る血痕採取キットにおける第2のシート(台紙)の平面図(a)およびそのB−B断面図(b)であり、図6は、同実施形態に係る血痕採取キットにおいて血痕採取テープを台紙に貼付した状態を示す平面図である。
【0057】
本実施形態に係る血痕採取キットは、図4に示す血痕採取テープ(本発明の第1のシートに対応)3と、図5に示す台紙(本発明の第2のシートに対応)4とから構成される。
【0058】
図4(a),(b)に示すように、血痕採取テープ3は、テープ基材31と、テープ基材31の中央部に粘着剤層32を介して設けられた吸液部33とから構成され、包装体34により包装されている。
【0059】
テープ基材31、粘着剤層32および吸液部33の材料は、第1の実施形態に係る血痕採取テープ1のテープ基材11、粘着剤層13および吸液部14の材料と同様のものを使用することができる。
【0060】
本実施形態では、吸液部33は精製水を含有している。吸液部33の精製水の含有量は、吸液部33を血痕に接触させた際に、軽い押圧で若干染み出る程度の量であることが好ましい。吸液部33が精製水を含有していることにより、血痕採取時に、血痕に精製水を別途加える必要がなく、吸液部33をそのまま血痕に接触させることにより、血痕を精製水に溶解させて血液とし、その血液を吸液部33に吸収させることができる。
【0061】
吸液部33が含有している精製水が吸液部33から蒸発しないように、血痕採取テープ3は包装体34により密封包装されている。包装体34は水蒸気透過性の低い包材からなることが好ましく、具体的には、透湿度が10g/m・24h以下、特に1g/m・24h以下である包材からなることが好ましい。かかる包材としては、例えば、ポリエステルフィルムとアルミホイルとを積層し、アルミホイル側にヒートシール性の樹脂層を設けたものなどを使用することができる。また、ポリエステルフィルムにアルミホイルを積層する代わりに、ポリエステルフィルムに金属蒸着したものを使用することもできる。
【0062】
本実施形態における包装体34は、2枚の平面視長方形状のシート状包材の周縁部を互いに接着してなるものであり、それによって血痕採取テープ3を密封包装している。
【0063】
一方、図5に示すように、台紙4は、基材41に血痕採取テープ貼付部40aと、情報記入部40bとを備えている。血痕採取テープ貼付部40aの中央部は、血痕採取テープ3の吸液部33が接触する接触部42となっており、その接触部42の両脇には、平面視矩形状の改ざん防止層43と粘着剤層44とが下からその順に積層されている。そして、2つの粘着剤層44には、それらの間に位置する接触部42をカバーするように、剥離材45が積層されている。すなわち、本実施形態では、接触部42は剥離材45によって汚染が防止されている。
【0064】
台紙4の基材41、接触部42、改ざん防止層43、粘着剤層44および剥離材45の材料は、第1の実施形態に係る台紙2の基材21および接触部22、ならびに血痕採取テープ1の改ざん防止層12、粘着剤層13および剥離材15と同様のものを使用することができる。
【0065】
以上説明した血痕採取キットを使用して血痕を採取するには、あらかじめ台紙4における剥離材45を粘着剤層44から剥がしておき、血痕採取テープ3を包装体34から取り出して、吸液部33を血痕に接触させ、吸液部33が含有している精製液に血痕を溶解させて血液とし、その血液を吸液部33に吸収させる。このとき、血痕採取テープ3のテープ基材31が透明であると、吸液部33の血液の吸収状況を確認し易い。
【0066】
そして、図6に示すように、吸液部33を台紙4の接触部42に接触させ、血痕採取テープ3のテープ基材31を、接触部42の両脇部分の粘着剤層44に圧着する。このようにして血痕採取テープ3を台紙4の血痕採取テープ貼付部40aに貼付したら、情報記入部40bに所定の情報を記入する。
【0067】
以上の通り、本実施形態に係る血痕採取キットによれば、手袋やピンセット等を必要とすることなく簡単な作業で、さらに血痕に精製水を加える必要なくして、血痕を採取することができる。また、血痕採取後の血痕採取キットはシート状であるため、保管スペースを多く必要とせず、整理も極めて容易である。
【0068】
血液の分析は、写真撮影を行った後、血痕採取テープ3を台紙4から剥離して、吸液部33を所定の処理に付すことにより行うが、台紙4は、改ざん防止層43を有するため、血痕採取テープ3が台紙4に貼付されている限り、血痕採取テープ3はまだ台紙4から剥離されておらず、したがって血液すり替え等の改ざんはされていないと判断することができる。
【0069】
また、血痕採取テープ3の吸液部33は、血痕採取テープ3が台紙4に貼付された後においても、外部に開放された状態となり、吸液部33から水分が蒸発し易いため、分析時までに吸液部33に雑菌等が繁殖することを抑制することができる。
【0070】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0071】
例えば、台紙2における保護材23は省略され、台紙2全体が包装体によって包装されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る血痕採取キットは、犯罪現場等に残された血痕の採取および保管に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る血痕採取キットにおける第1のシート(血痕採取テープ)の平面図(a)および側面図(b)である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る血痕採取キットにおける第2のシート(台紙)の平面図(a)およびそのA−A断面図(b)である。
【図3】同実施形態に係る血痕採取キットにおいて血痕採取テープを台紙に貼付した状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る血痕採取キットにおける第1のシート(血痕採取テープ)の平面図(a)および側面図(b)である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る血痕採取キットにおける第2のシート(台紙)の平面図(a)およびそのB−B断面図(b)である。
【図6】同実施形態に係る血痕採取キットにおいて血痕採取テープを台紙に貼付した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1,3…血痕採取テープ(第1のシート)
11,31…テープ基材
12,43…改ざん防止層
13,32,44…粘着剤層
14,33…吸液部
15,45…剥離材
34…包装体
2,4…台紙(第2のシート)
21,41…基材
20a,40a…血痕採取テープ貼付部
20b,40b…情報記入部
22,42…接触部
23…保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を吸収することのできる吸液部を備えた第1のシートと、
血液を吸収した前記吸液部を被覆することのできる第2のシートと
を備えており、
前記第1のシートまたは前記第2のシートには、前記第1のシートと前記第2のシートとを互いに接着することのできる粘着剤層が設けられている
ことを特徴とする血痕採取キット。
【請求項2】
前記第1のシートは、
基材と、
前記基材に積層された粘着剤層と、
前記粘着剤層の一部に積層された前記吸液部と、
前記吸液部を被覆するようにして前記粘着剤層に積層された剥離材と
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の血痕採取キット。
【請求項3】
前記第1のシートと前記第2のシートとが接着された後においても、前記吸液部が吸収した水分を外部に蒸発させることのできる経路が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の血痕採取キット。
【請求項4】
前記第1のシートと前記第2のシートとが接着された後においても、前記吸液部の側端部の一部が外部に開放され得るように、前記吸液部は前記粘着剤層の一部に積層されていることを特徴とする請求項2に記載の血痕採取キット。
【請求項5】
前記基材および前記粘着剤層は、透明な材料から形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の血痕採取キット。
【請求項6】
前記吸液部は、綿布からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の血痕採取キット。
【請求項7】
前記第2のシートは、所定の情報を記入することのできる台紙であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の血痕採取キット。
【請求項8】
前記第2のシートにおいて前記吸液部に接触する接触部は、非吸水性になっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の血痕採取キット。
【請求項9】
前記第2のシートにおいて前記吸液部に接触する接触部は、除去可能な保護材によって保護されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の血痕採取キット。
【請求項10】
前記第1のシートおよび前記第2のシートのいずれか一方または両方は、互いに接着した前記第1のシートと前記第2のシートとを剥離したときに、剥離したことが明らかになる改ざん防止機能を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の血痕採取キット。
【請求項11】
前記粘着剤層と、前記第1のシートの基材または前記第2のシートの基材との間には、層内剥離性を有する層が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の血痕採取キット。
【請求項12】
前記吸液部は、血痕を溶解させることのできる液体を含有しており、かつ、前記液体が蒸発しないようにカバーされていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の血痕採取キット。
【請求項13】
前記第1のシートは、水蒸気透過性の低い包材により包装されていることを特徴とする請求項12に記載の血痕採取キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139599(P2007−139599A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334323(P2005−334323)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】